平成 27 年度 自 平成 27 年 4 月 1 日 至 平成 28 年 3 月 31 日 事 業 計 画 書 平成 27 年度事業計画 第1 基 本 方 針 昨年の本道酪農は、飼料、資材、エネルギー価格の高騰をはじめとする生産コストに 係わる要素、さらに施設面での制約、労働力不足などが加わり、酪農家戸数並びに搾 乳牛頭数の減少から生乳生産が前年度を割り込む状況です。 これに対して行政・酪農・乳業は危機感を共有し、その結果平成 27 年度に向け乳価 および、加工原料乳生産者補給金の値上げが示されることとなりました。また、酪農に かかわる組織が一体となり、技術・施設等の面で底上げを図ることを目的とする畜産クラ スター事業に対して大きな財源が投入されることとなりました。さらに、酪肉近基本方針、 家畜改良増殖目標についても、酪農・乳用牛生産基盤を強化することを最優先課題と して見直し作業が進められています。 生産サイドではこのような流れを受け、すでに 23 カ月齢以下の乳牛頭数が増加傾向 を示すなど、明るい兆しも見え始めています。 しかし、TPP、農協改革など、農政の面では必ずしも予断を許せない状況にあること も確かです。また、食の安全の面では、前年度において大手外食チェーンで発生した 異物混入事故にみられるように、供給サイドの安全に取り組む責任の重さと、事故が発 生した場合に発生する事態の重大さが改めて認識された年でもありました。 このような中にあって当協会が有する情報は、検定情報では検定加入戸数として約 4,500 戸、加入率が全生産者の約 73%、検査情報では合乳が本道で生産される生乳 の 98%をカバーするものであり、本道酪農の現状を正確に反映するものであることから、 そこから見ることのできる生産阻害要因のサインを自ら評価すると共にそれを積極的に 発信します。さらに、先の畜産クラスター事業の一環として設立された北海道牛群検定 促進クラスター協議会の事務局として積極的にこれに取り組むことにより、効率的な乳 牛資源の確保と乳牛検定加入促進に努めてまいります。 また、公正な生乳検査を通じ生乳取引の適正化と一層の乳質の改善に資すると共に、 食の安全の確保や、新たな生産技術が生乳に及ぼす影響の解明を行うことなどにより、 生乳生産の一層の増産に向けた取り組みを行います。 このほか、組織運営の面では、電力や輸送コストの上昇等がある中で、負担の増加 につながることのないよう努めるとともに、平成 27 年度を開始年とし、今後 3 年間の運営 の柱となる中期計画を策定し効率的な運営を図ります。 -1- なお、本年 10 月に第 14 回全日本ホルスタイン共進会が安平町で開催されるので、 実行委員会メンバーとしてその運営にあたります。 第2 1 事 業 実 施 計 画 乳牛検定事業関係 (1) 牛群検定事業 ア 牛群検定の推進 牛群検定は、検定組合 98 ヵ所、検定農家 4,498 戸、検定牛 34.8 万頭規模 を基にして事業を展開する。 牛群検定の一層の推進を図るため、検定未加入農家を対象とした通称「お試 し検定事業」を実施するとともに、大規模検定農家に対する加入促進に向けた 乳検組合の体制整備への協力と、継続加入しやすい仕組み作りに努める。 検定組合における Web 化(パソコン・スマホで利用可能)により、通信ネットワ ークを介した情報提供が可能になったことから、この方法の一層の普及を図るた め、当協会の独自事業として通信網の整備等について助成を実施するとともに、 帳票発行のオプション化の検討を行う。また、AT 検定や自動検定の簡易化推 進、乳牛検定組合連合会を核とする地域関係者と連携ならびに協力の下で、牛 群検定事業の効率化を図り、加入促進と離脱防止に努める。 加えて、北海道牛群検定促進クラスター協議会の事務局として、性判別精 液・受精卵の活用を推進することで、本道における生乳生産基盤維持・拡充に 努める。 イ 乳牛検定組合に対する支援 検定成績の信頼性確保のため、検定立会ならびに適正な組合事務処理等に ついて確認・指導等を行うとともに、運営基盤の強化のために地域関係者と連 携し、助言・支援を行う。 ウ 検定情報活用の支援 地域が求める検定情報を提供し、これらの取り組み等に対して支援を行う。特 に、一昨年度より情報提供を行っている地域、TMR センターならびに大規模牛 -2- 群検定農家に関するデータ収集と、この利活用を促進する。 さらに地域における指導支援者の養成を図るため、研修会・講習会等の開催 と検定情報の見方と活用についての支援や助言を行う。 エ 検定業務の効率化の促進 検定業務の簡易化ならびに効率化を図るため、搾乳実態に応じた検定手法 等を検討する。大規模牛群検定の省力化対策として ICAR 承認済みの乳量計 を設置しているシステムから蓄積されている農場データを取り込み、活用方法を 含めた効率化に向けた検討を行う。 また、実態に即した 3 回搾乳 AT 検定や自動検定等の更なる多様化・簡易化 等に対応した開発を進める。 オ 研修会・講習会開催ならびに講師派遣 牛群検定事業の円滑な推進を図るため、乳牛検定組合連合会との連携の下 に、乳牛検定組合長協議会・検定員研修会を適宜開催する。さらに検定員養成 者研修等、実践的な内容を重点とする研修会や、指導支援者等のレベルアップ を図るため、地域に即した密着型の研修会を開催するほか、検定指導士認定講 習会を開催し、適格者について北海道知事の認定を申請する。 また、検定組合等が開催する研修会等に積極的に講師を派遣し、牛群検定 の普及推進に努めるとともに、乳牛検定組合事務局担当者のレベルアップを図 るため、昨年度に引き続き牛群検定 Web システムに係る研修会を開催する。 カ 大規模牛群検定設置機器に係る技術者養成実施 大規模牛群検定農家に設置されているミルクメーターの精度確保を目的とし て、各メーカーの協力のもと、ミルクメーター計量に関する技術者養成研修を開 催し、適切な計量検査が行えるよう協力する。 また、通常の手動式ミルクメーターについても、検定立会時の精度確保と保 守を目的とする研修会を開催し、計量精度の確保を図る。 (2) 後代検定事業 北海道内の改良団体で、今後の遺伝評価の研究・開発、後代検定の普及促進、 ゲノミック選抜の普及啓発推進方策について検討を行う。 後代検定事業の一層の推進を図るため、北海道乳牛改良委員会に参画し、こ れを核とした北海道としての新たな改良システムの構築に向け提言を行う。 -3- また、調整交配用精液の優良遺伝子としての先取りや経済的な優位性につい ての周知と理解醸成を図るため、ホームページ、リーフレットなどを活用するなど、 あらゆる機会を通じて周知を図る。 (3) 電子計算業務 ア 検定情報処理システムの補完と開発 牛群検定 Web システムについて、新規格への対応や利便性向上、運用拡大 に向けての負荷分散やシステムの二重化などの安定稼働についての対策、並 びに新しい簡易化検定へ対応するために各種システムの改修などを行う。主た る内容は次のとおり。 ・ Web システムやタブレット型検定情報収集端末への移行に伴うシス テムの補完と効率化。 ・ 現地 PC および Web システムとの連携強化のためのタブレット型端 末用システムの開発と補完。 また、検定組合におけるパソコン機器とタブレット型検定情報収集端末の更新、 通信回線の整備に係る助成を継続し、牛群検定 Web システムの普及に努め る。 イ 検定成績の電子データ提供と利活用 牛群検定 Web システムの活用を促進し、電子データのダウンロードによる情 報利用に加え Web 上での操作性の向上や視覚的な表現による情報提供につ いて検討を行う。また、関係団体との連携を強化し、酪農産業全体としての牛群 検定データの活用を促進する。 ウ 乳牛改良情報の活用手法と新たな遺伝評価活用 遺伝評価情報を活用した効率的な遺伝的改良に必要となる牛群改良情報 (帳票)の改訂と、Web システムによる改良情報の提供について検討を行う。ま た、生産形質のみならず耐久性形質(耐病・疾病等)を加味した選抜を可能に するために、抗乳房炎の遺伝評価について継続して検討を行うとともに体重記 録の利用可能性について調査を行う. 道内の改良団体、大学、研究機関との協力体制を構築し、技術的な交流や 情報交換を行う。また、ゲノミック評価の精度向上、普及定着のための課題を共 有しその解決に努める。 -4- 2 生乳検査事業関係 (1) 生乳検査事業 ア 合乳検査の実施 生乳取引に関わる公正の確保と乳質の改善、向上に資するため、指定生乳 生産者団体および乳業者からの申請により、合乳検査を実施する。なお、検査 対象乳量については 26 年度見込み対比 101%としている。 イ 個乳検査の実施 乳代配分および乳質改善に資するため、農協等からの申請により、個乳検査 を実施する。 ウ 個体乳検査 乳牛検定組合からの申請により、乳牛検定事業での個体乳検査を実施する。 エ 依頼検査 農協および工場等からの依頼により、生乳検査業務規程に基づく各種生乳 検査を実施するとともに、抗菌性物質検査用シャーレを農協等に提供する。 オ 生乳検査精度管理の充実強化 (一社)J ミルクが実施する生乳検査施設の認証制度の認証生乳検査施設と して、作業標準等に基づく適正な精度管理を行う。 また、公定法による成分検査に関わる国際的な技能試験の受検や国際水準 に準じた管理手法の運用による適正な精度管理に努める。 (2) 乳質改善支援業務 ア 乳質改善協議会への支援 北海道乳質改善協議会が取り進める抗菌性物質残留防止対策、乳質の更な る向上を目的とし、異常乳発生防止対策、乳房炎防除対策、生乳集荷業務向 上対策を支援するとともに、ミルカー管理技術者講習会等の各種研修会、委員 会並びに現地支援に積極的に協力する。 イ 個乳生菌数削減への更なる取り組み 取引合乳の安定的な品質確保のために、個乳生菌数データから一定レベル -5- を超える個乳を選定し、地区乳質改善協議会ならびに JA と連携し、生産現場 において生菌数削減に係る原因調査と改善指導を継続実施する。 ウ 生乳検査機器等の精度チェックと校正指導 指定生乳生産者団体からの依頼に基づき、農協等が所有する乳成分、体細 胞数測定機および細菌数測定法のクロスチェック(年 4 回)を実施するとともに、 乳業者が所有する乳成分測定機についてもクロスチェック(年 6 回)を実施し、 必要な場合には校正指導を行う。 エ 生乳取扱者技術認定講習会の開催 生乳取扱者の生乳等に関する基礎知識および生乳検査技術の水準向上を 図るため、「北海道生乳取扱者技術認定講習会」を開催し、適格者については 北海道知事に認定を申請する。 (3) 安全安心に向けた取り組み ア 生乳のトレーサビリティーの確保 指定生乳生産者団体が運用する生乳トレーサビリティーシステムに対して、本 会情報システムを介しての乳量・乳温情報の供給、並びに検査データの提供等 を行うことで協力する。 イ ポジティブリスト制度に関わる対応 生乳の安全・安心の確保を目的としてとり進められている生乳生産履歴の記 帳・記録の推進に協力するため、記帳様式の改善や搾乳衛生管理状況、農薬・ 動物用医薬品等使用記録と保管状況の現地検証に積極的に参加する。 また、(一社 )J ミルクが全国段階で行う農薬等の試験検証に協力するととも に、指定生乳生産者団体の依頼に基づき、道内における悉皆検査対象外抗生 物質残留に関する検証検査を行う。 (4) 調査試験業務 ア ケトン体検査に関する調査試験 乳牛の潜在性ケトーシスのスクリーニング検査用に開発された乳成分測定機 のケトン体パラメータについて、精度確認試験および実用化に向けた検討を行 う。 -6- イ ナチュラルチーズの有害菌に関する調査試験 乳等省令において、ナチュラルチーズの成分規格として基準値が定められた リステリア・モノサイトゲネスについて、定量および定性検査法に関する技術確認 を実施する。 ウ 多用な搾乳形態の乳質分析 大規模化や搾乳ロボットが導入されるなど、飼養形態が大きく変化するため、 これらに係わる新たな乳質の課題も考えられるので、関係団体と連携して異常 乳の分析等を行う。 エ 申請調査試験の実施 根室地域で展開されているマイコプラズマ乳房炎防除対策の一環として、 PCR 法を用い、バルク乳を試料とした同菌のスクリーニング検査を実施する。 (5) 効率的な検査体制の構築 酪農家戸数の減少も含めた生乳生産状況の急激な変化を受け、設備投資計画 を適宜見直すなどにより、コスト削減に努める。また、個乳検査等未委託地域と委 託について具体的な検討に着手する。 (6) 検査基幹システムの更改ならびに構築 平成 26 年度から 2 か年の計画で取り進めている検査基幹システムの更新に係り、 第 2 期(平成 27 年度)として、検査機能を強化するための新機能の追加構築を行 う。また、併せて、甚大な災害時等においても、速やかなシステム復旧が可能とな るよう BCP(事業継続計画)を考慮した体制を構築する。 なお、Web 上での合乳検査成績等の取り扱いについても検討を行う。 (7) その他 道が推進する道産食品独自認証制度の登録検査機関として、引き続きナチュラ ルチーズの認証に関わる審査実務の取り進めを行う。 3.総務関係 (1) 組織運営関係 ア 中期計画の策定 -7- 前年度まで 5 カ年の中長期計画に基づき業務運営を管理してきたところであ るが、酪農情勢の変化や酪農関連技術の進歩が早まる状況に対処するため、 本年度から期間を 3 カ年計画に改ため第 4 期中期計画(平成 27 年度∼平成 29 年度)を策定し、当協会の事業を取り巻く諸々の変化に柔軟な対応が図られ るよう努める。 イ 財務の健全化 公益法人は、財務管理において収支相償を義務付けられていることから、こ の達成を財務管理の基本とするが、対応が急がれる施設・設備の更新等につい て適宜関係者と協議し改善に努める。 (2) 基本事項への対応 次の事項について継続的に実施することとしている。 ア 公益法人としてのコンプライアンスの徹底 イ 個人情報保護に関する教育を通じた対策の徹底 ウ アウトソーシング等を通じた危機管理の徹底 エ 研修を通じた職員の能力の向上への取り組み -8-
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