当院透析患者における栄養状態の現状

当院透析患者における栄養状態の現状
医療法人 大田姫野クリニック
岡田理江 小原一晃 福村宏 角昌晃 滋野和志
透析患者は加齢による筋肉量の減少,蛋白合成低
下や異化亢進などが加わり栄養障害に陥りやすく,
特に高齢透析患者はQOL・ADLの低下をきたし透析
困難症も発生しやすい.
当院では,高齢透析患者においても「よく食べ,しっ
かり透析」を目標に治療,指導にあたって予後改善
を目指している.
そこで,この指導がどのような結果になっているか年
代別に昨年1年間を振り返り,80歳以上と比較検討
したので報告する.
対象患者64名透析歴12ヶ月以上
外来透析患者男性39名 女性25名 うち糖尿(DM)25名
60歳未満
11名
平均透析歴 167ヶ月
60歳〜69歳
20名
平均透析歴 116ヶ月
70歳〜79歳
22名
平均透析歴 115ヶ月
80歳以上
11名
平均透析歴 82ヶ月
平均年齢
68.9歳
検討項目
・透析時間,血流量,透析方法
・Kt/V,体重増加,Alb
・GNRI,%CGR,nPCR,P,SMI
年代別に昨年1年間を振り返り,
80歳以上と比較検討したので報告する.
条件
60歳未満
60〜69歳
70〜79歳
80歳以上
透析医学会
調査
血流量
(ml/min)
325
323
305
259
197.3
治療時間
(分)
299
298
294
288
230
オンライン
HDF
全員
全員
全員
全員
約20,000人
2.4
2.2
2.0
1.8
80歳以上は年間を通して
高効率を保っています
1.6
1.4
60〜69
60未満
1.2
70〜79
80以上
1.0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
体重増加率(中1日)
体重増加率(中2日)
7%
7%
6%
6%
5%
5%
4%
4%
3%
3%
2%
80歳以上は年間体重
増加率5%前後で維持
60〜69
80以上
2%
1%
1%
0%
0%
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (月)
60未満
70〜79
80歳以上は年間体重
増加率3%前後で維持
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12
(月)
(g/dl)
5
100
GNRI
98
96
94
92
90
4
ALB
88
86
84
82
60未満
60〜69
70〜79
80以上
80
3
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
60未満 PCR
60〜69 PCR
80以上 PCR
70〜79 PCR
120
100
1.01
0.95
0.87
80
0.81
0.97
0.94
1.00
0.95
0.91
0.89
0.85
0.82
0.86
0.91
0.89
0.85
0.98
0.99
0.91
0.88
0.91
0.81
0.80
0.95
0.93
0.97
0.86
0.86
0.86
0.81
0.80
0.96
0.89
0.86
0.93
0.91
0.90
0.89
0.98
0.97
0.96
0.87
0.99
0.97
0.84
60
80歳以上の高齢者と
他の年代に変化なし
40
20
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
60未満 CGR
60〜69 CGR
110
108.3
105.5
100
101.7
101.2
98.4
105.0
103.6
103.0
100.6
106.1
105.0
103.7
100.1
104.9
102.0
100.6
104.0
102.7
101.0
70〜79 CGR
109.5
109.1
104.0
103.4
105.8
104.2
104.1
109.3
104.3
102.3
101.3
99.0
80以上 CGR
110.4
109.1
106.3
103.5
101.4
100.0
108.2
105.6
105.4
102.6
101.0
100.6
102.5
9月
10月
11月
107.2
106.6
104.5
95.0
90
80歳以上の高齢者と
他の年代に変化なし
80
70
60
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
12月
60未満
6
5.4
5
4
5.0
4.2
5.4
5.1
4.2
4.1
4.9
4.7
4.3
5.1
4.9
4.7
4.6
60〜69
5.1
4.9
4.6
4.4
5.2
5.0
80以上
70〜79
5.2
5.1
5.0
4.6
5.0
4.9
4.9
4.5
4.2
4.1
5.4
5.2
5.1
4.8
4.7
4.6
4.4
4.8
4.6
4.5
4.2
4.5
5.5
5.4
4.5
3.6
3
80歳以上の高齢者と
他の年代に変化なし
低リン血症は認めない
2
1
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
 80歳以上の高齢者は昨年1年間の経過から体重増加率3~5%
を超えることなく安定した透析ができた.
 一方食事内容や栄養の面が懸念されるが栄養状態が低下
する事もなく大きな変化はなかった.
 透析後の血圧低下がなく帰宅もスムーズで翌日の生活にも
透析の疲労,倦怠感がみられないとのこと.
 痩せることなく栄養状態も保持できる大きな要因
・十分な透析をする事
・オンラインHDF後の食欲が落ちない事
今回検討した結果,高齢者においても
十分な透析と十分な食事によって,QOL
を維持できていたと思われる.