◎眺めに 自動車部晶などの製造部晶において、部品不具 合の撲滅は永遠の課題である。とりわけ中国、東 南アジア、中南米などグローバルに工場展開する 自動車Tie‡・1、Tier2では部品不具合による仕損費 は経営を圧迫している。人件費の高騰やリコール 対策費など不具合の撲滅は大きなテーマである。 とりわけ、生産ラインのトレーサビリティ、その ための生産機、金型、治工具、各種センサー、工 場設備などとの管理ソフトと機器連携であるM2M 技術と自動認識技術は注目を浴びている。 翔的故 謂主塔 凋まう汲 第1国 アジア諸国の最低賃金の推移 (出典:ジェトロ報告書より作成) 諺 5 池 場 神 浄 測 持 場 愁 細 頗墾 自動認識への期等 ◎M2M、設備・個体の i子守;常 1.背景 以下に、製造業が直面している課題を示す。第 1図はアジア諸国の賃金推移を示す。年率10%前 後増えて且つ社会保険の整備等で、これまで10% 程利益を出していた海外工場も赤字に転落し始め た。また、海外」二場は不具合が多く、その仕損費 は国内工場の5−10倍になっており、その対策は 勢等禁 !■畠t く1鳩 t 第2図 製造原価に占める不具合仕損賛 (あるメーカーでの事例) 大きな課題である(第2図)。筆者の調査では、年 間60億円を売り上げる日系メーカーの仕損費は 5,000万円程で、再製作費、機会損失を考えると ものづくりには程遠い。 事実上3倍の1億5,000万円の損失である。人件費 2.自動車業界の現状 の安さを頼って改善、改革を怠ってきた企業は、 撤退さえ考えないといけない状況下にある。人材 面でも、せっかく育てた技術者・技能者・作業者 が仕事を覚えると辞めてしまい、安定した日本の 一方、自動車メーカー、部品メーカーではリコ ール、重大不具合が大きな問題になっている。会 社の存続すら危ぶまれる状況にあり、HONmなど では「桁違い品質」をTierl、Tier2、金型メーカ 関白蓼親撃aコほ41 絶滅 潔め 450 S湘 4鮪 7、舶 3義鎮 祁 拗 掬 憫 へ乾山 轟密筆環 ′○ ■V ヰ ︷J ﹁.▼‘ 間 閲 朋 閲 沸 義料∵撃慧還 昏粥 鍼ほ H掩 粥竜 持場 Hほ 博8 絹封 汚2 拇鏑 的銅 第3園 過去10年間のリコール届出件数及び対象台数の推移塀■ 第1表 リコール損失金額 メーカー トヨタ自動車 三菱自動車 内容 対象台数 アクセルコントロールの不具合 エンジン部品の不具合 車載用リチウム電池の不具合 タカタ エアバックの不具合 イグニッションスイッチの不具合 約708万台 約122万台 GSユアサ GM 費用 約6,500台 時期 毒 1,000億円 75億円 37億円 約800万台 447億円 約1540万台 1,700億円 2009年8月裏 2012年12月至 20−4年1月室 2014年8可 2014年5月 (出典:新開等の報道情報より) 一等に要求している。欧米メーカーは、日本の中 小の部品業者まで監査を行い、ダメだしをしてい る。 具体的に自動車メーカー各社が要求しているの は、生産設備から作業者に至るまでのTeil12、金 型メーカーを含めたトレーサビリティ網で、不具 合の収集、分析がリアルタイムに行え、不具合を 再発させないシステム構築である。そのシステム 化にむけた個体認識、M2M技術開発、管理システ ムへの期待は高い。 0 金型・生ま1保全電子カルテによる トレーサピリティ 1.金型電子カルテ※2 (1)電子カルテ機能概要 人間が生まれてから死に至るまでの医療履歴と DNAデータから病気の予知予防を目指す医療電子 カルテのように、金型製作から成形TRY拇亀に相 当)、量産、金型メンテナンス(生産履歴)、サー ビスパーツ成形、金型保管、廃棄(資産管理)を 行う不具合の予知予防を目指したシステムである。 (2)金型電子カルテの主な機能 現場で簡単かつ正確に不具合の記録がとりた い、速やかに関係者への伝達がしたい、不具合デ ータを履歴管理(カルテ)したいというニーズか ら開発が始まった。製品から、金型、金型部品、 メンテ、生産機、作業者にそれぞれQRコードを取 り付け、個体認識をする。その取得された電子デ ータの組み合わせで様々な不具合事象の分析が即 座に行えるようになり、現場で対処した不具合シ ートの原因と対策が設計にフィードバックされる ようになり実際に不具合減少につながった。現場 と開発で分断されていた改善活動のPⅨ旭が回せる ※1:自動車メーカのリコール、損失金額国土交通省作成平成24年度リコール届出内容の分析結果 ※2:金型電子カルテ;プレス技術、平成26年3月号日刊工業新聞社 2 月珊白やⅦ盛Zロ怯4 スマホ・タブレットで 領事に電学情報牝 曹削こよる伝遷 珂㌢毎猟ここ 騨㌔)か1 二、かi,t ▲’三 「 ̄し・⊥Jトt■ して_・∵.’, − ̄ヽr−一㌦一W ̄仙W ̄■1’ ■・ ■一・■■一一■− →−■−■▼・r−・r・▼・−− 一 ・ ■,・.・‘一−‘一・一■一・・・・.一一■■〈一 一一一■1− r ′、′′ −▲一一■・一一− 一・一m一ノー〉 ■■ −l r ▼一 一.■,▼ ■_.■−.■ 明叫血沙 感適潤時 成形静品Aの生産ショットと不貞舎■メンテ定職 動画・写真・音声による情報収集 生産情報と連携した不具合分析 第5団 金型電子カルテの機能 第6図 QRコードによる金型倉庫・所在の管理 浄福白虚偽嶽aD154 3 ようになり、不具合を30%は削減できた。現場の 紙記録文化から電子データ化への転換には苦労し たが、タブレットに慣れると、様々な要求と利点 が兄いだされ機能が拡張された。 (3)電子カルテの拡張性 取得された生産ショットデータと不具合データを 活用し、部品の破損や不具合の発生予想を行うこ とにより、金型メンテナンス時期や設備保全の事 前通知が行える。 上記のように、QRで管理できるようになること 2.生産電子カルテ・設備保全電子カルテ で、金型在庫の管理や不具合未然防止のためのメ ンテナンスが可能になった。金型保管場所と金型 生産電子かレテ鋸は、工場内の生産に関連する 全ての機材とのM2M連携を目指している。成形機、 ロボットなどの生産機器・メンテ情報や、測定デ ータ、温度、湿度などの監視センサデータ、成形 個体堺を組み合わせることにより、多品種小ロッ ト傾向化で増え続ける金型の保管場所、廃棄まで の資産管理(打ち切り)が行える。また、すでに 管理増と金髪盛者 ORを鐙付け 条件との関連がモニタリングされ、不具合の予知 予防、トレーサビリティなどに役立てることが可 能である。 合せて、生産機器や集塵機器などの工場環境機 器の保全要員不足が課題となっており、特に海外 工場では疎かになりがちである。その結果、頻繁 なチョコ停や最悪ライン稼働停止に至ることも増 えてきた。保全対象の機器のQRコードを読み取れ ば、過去の保全記録は勿論、機器仕様、前回の保 全からの申し送り事項や補修部品の発注等タブレ ット一つで可能になり、現在、さまざまな現場の 要求に応えるぺく開発が進められている¢ 薫7国 電子カルテによる金型在庫・所在管理 生基準載∵や!き 111、 .■○▼− tヽ−ヽ■ 11ヽ▼ ’、11 カルテによるメンテナンス線番 七 不具合数の維移“WV㊦ 月次管理 室 ぬル予によるデ空禦」榊州」 第8国 メンテナンス時期の指示 ※3;生産電子カルテ;鰍C登録商標 4 月刊自軋甜ZOtSA 不具合の分析 生産に係る全ての情報を電子化・一元管理することで嚢化点を管理 不具合を未然防止・原価低減,生産性の向上を図る 型電子カルテ」とM2Mシステム連携 個体管理はqlに】−ド さ十十亨十十十十十藍 成形免停 取り出しロボット歎浄 薄汚一. き ‡ 定立二二ふ 成形機 コントローラ 成形条降分析 金型履歴t保管場蘇 第9図 生産電子カルテと保全電子カルテ (1)電子カルテと連動した開発設計システム 生産に迷惑を掛けない開発設計・量産立ち上げ の取り組みは重要だ。不具合を潰しこむ前に、不 具合を起こさない設計とスムーズな量産立ち上げ は必須である。その為には、今、現場で起きてい る不具合事象を的確にとらえ、設計源流へのフィ ードバックする仕組みが必要である。 ら手戻りなく短期間で量産立ち上げを行うかが課 題である。電子カルテによりその蓄積されたノウ ハウの詰まったデータ活用が大きくQCDを左右す るカギとなる。具体的には、設計と金型、成形ノ ウハウのコミュニケーションを可能にする「SE電 承システム」「3D帳票」を開発した。このシステ ムにより、開発期間短鮪と不具合を未然に防止し、 (2)製品設計と金型、成形の同期設計 手戻りを無くすことができる。 金型・生産・保全電子カルテには多くの貴重な 現場データが蓄積される。開発工程では、設計か ①SE電承システム SE電承システムは、電子カルテより得られた生 l設計検討墳射 巾 品圏寧]轟[習堅堕]車 tセルフチェックの間違い防止日足跡隋能(設計の理由)t SE電承システム 第10図 SE電承システムによる同期設計 綱自別田引証‖ま4 5 産現場の不具合や生産性を阻害している開題をカ ルテで整理された情報として設計源流にフードバ ックするシステムである。設計者一金型設計者一 成形技術者のそれぞれのベテランならではの生産 技術検討項目とロジック、判断基準、過去トラ等 ジニアの育成にも活用されている。 ②3D帳票で00L 3D帳票とは、3次元ⅤIE耶RとmLを組み合わせ た帳票である。従来は各々単独で使用されていた がひとつにすることで様々な活用が試みられてい の現場情報、過去の機種情報を一つのシステムに る。紹介するのは、SE電承に組み込まれたTierl 集約し、ネットワークで同期的に生産技術検討を 行うシステムである。すでに導入運営されている の設計と金型メーカー間で使用されている「情報 交換3D帳票」である。設計データに対する金型メ メーカーでは、新人・若手の教育TOOL、海外エン ーカーからの「指摘事項」を客先の設計が遠隔で 珊ノー 草登.締り 血許 ‰ 間島点の抽出と製品へのフィードバック 尊昭衛が聯速筆縄た級挙 暖帯開署固面を逆転・紘東電ど操抒萄騎 某日図 3D帳票(XVL削)によるナしツジコミニュケーシヨン 第12図 不具合管理システム ※4:XVL;ラティステクノロジー社の3DViewerシステム 6 朗唱皿電離28相月 ⑳今後の電子カルテの機能描 7耶 八重Y等肇鵡噂絡 郷 地 ㈱ 抑 制 ︵U叶︺tリ■錮 晒 脚 脚 柳 卿 堺 偶 瀾 脚。 由損料凛∵輔 榊鵡詳 細 第13函 不具合件数と仕損費推移 コミュニケーションを図りながら、回答する形で お互いの検討事項をつぶしていく。実は、これが 次の設計にも生かされお互いのチェックシートと なり発展していく。不具合管理システムは、設計 時に生産技術より指摘された項目を設計トライの 結果と比較し、分析・ノウハウシート化している。 これにより、量産の前に不具合が出ないような設 計・金型・成形条件を確立する事ができる。 応用事例としては、成形メーカーと金型メーカ ー間で使用される「金型設計3D帳票」、購買部門 向けの「金型発注用3D帳票」、「受け入れ検査用3D 帳票」など要所、要所で活用されている。 ③電子カルテとSE電承、3D帳票による効果 不具合件数の減少もあるが、金額的にも仕損費 は30%減少した。今まで不具合収集はできていた が、分析まで手が回らなかった。しかし、「電子 カルテ」「SE電承と3D帳票」による事前の潰しこ みで、確実に原価低減につながることが証明され 1.電子カルテの「モノどこ機能」、 各種センサー、機器データ連携開発 モノによっては、金型部品が3,000点に及ぶ場 合があり、金型を納期通り組み立てるには金型部 品の入出庫と所在管理も必要である。勿論、生産 においても、材料や治工具の所在・部品管理は必 須である。電子カルテでは、「モノどこ」サービ ス機能を開発している。全ての生産に係る物品が 工場内のどこにあるか、在庫はいくつあるのかは 勿論、その治丁具のメンテ記録、精度記録、生産 記録等がQRコードをタブレットで認識すれば瞬時 にそのデータを見ることができる。社内外問わず、 部品図、部品、治工具に全てQRコードが付加され れば、場所・記録情報を探す手間は省ける。大型 モニターには工場内の保管場所が表示され、金型 の成形条件も見ることができるので古い金型での サービスパーツ成形などには相当便利である。 2.QRコードを金属に刻印する QR切削機の開発 電子カルテからQRコードを直接金属に刻印する QR切削機を開発中であり、6月には販売を開始す る予定である。現状は、特殊シートにプリントし ているが、QRコードからNC出力が行えるシステム とQR専用加工機のニーズが高い。金型には、銅板 にQRコードとメーカー、機種、製造年月日などの 文字情報も刻印できる。また、製品への刻印用と しての開発も進められている。 た。 ・金型/生産情報の入力 ・QR切削自動NC出力 ・金型電子カルテによる ィ∵‡十一一十 部品管理/生産管理 「 QR高速切削機 銅・銅板への割印 高速切削 第14園 QR切削機概要 明白や姐ZD15.4 7 ◎ おわりに:まとめ 筆者紹介 今現場で起きている不具合事象を電子カルテ で的確にとらえ、その改善ノウハウを設計源流へ のフィードバックし電承する。生産現場は、どん どんロボット化、自動化が進み、その進化の先に ある逆三角形の企業体が創造できる。「スマート エンジニアリング」は人間本来の武器である「創 造力」を生かす社会でもあり雇用も創出する。 佐藤声喜 ㈱馳C 代表取締役社長 <主なる乗務歴および資格> 三井金属鉱業㈱入社。開発設計者として自動車 ドアロック、シートデバイスの設計開発、HONmの GE、米国デトロイト勤務でChrysler向け開発に従事。 18鮒年㈱インクスを設立、常務取締役C印 営業から 設計、試作、金型、コンサル事業を統括。素形材セ ンター理事、光造形産業協会理事、川崎リサーチセ ンターフェロー歴任。 書籍;「コロナ社もの作り不思議百科」機械学会論 文C編73巻736号、74巻747号748号等。 KMC流斬日本型スマート(賢い)エンジニアリング 博士論文;「プロセスとナレッジの融合によるデジ 肇逆還廃幣監慧莞ツ喜。教会・愈駐機速へ¢転換協 タル開発システム」、2010年㈱馳C設立、代表取締役 ピラミッド型モデル 逆三角形技術楕零式モデル ■矩誓,  ̄さ■丁目1 社長。 堀口直樹 ¶ 銀鉱 旧・折の開発製造スタイル 次世代のものプくりスタイル 第15国 スマートエンジニアリングと逆三角形社会 ㈱払虻 執行役員 <主なる業務歴および資格> ㈱インクス入社。開発設計部として設計、光造形 (3Dプリンター)業務に従事。HO陀仏の3次元Ⅷ教育 (TOW教育)はじめ、大手自動車、自動車部品メー カーの3次元設計教育のインストラクターを経て、イ ンクスにて初となる金型工場の立ち上げ、金型事業 化を担う。その後、技術コンサルティングの営業と プロジェクト統括となり2010年㈱腿肥設立に参画、現 在に至る。 日本の製造業が世界をリードし続けるには、も のづくりの電子情報化戦略邪が必要である。日本 の最大の武器は世界一のものつくりノウハウだ。 ややもすると最新の生産設備投資に偏りがちであ るが、それだけでは差別化の時間が短い。最先端 の機械はお金があれば誰でも手に入る。重要なの は、その生産技術ノウハウの醸成と継承である。 世界最先端の日本ものづくりはITとノウハウを融 合した「電子カルテ」と「電承」敷6にあると考える。 ※5:金型における電子情報化戦略、平成26年3月号日本金型 工業会 ※6;電承;㈱KMC登録商標 8卵白甘甜2ロ15.4 大坪一紀 ㈱m虻 技術開発部 研究員 <主なる業務歴および資格> 住宅設備メーカー、一般住宅向け水回り衛生機器 の開発設計業務。中国事業所での開発・製造部門勤務、 海外拠点でのプロジェクト推進・開発設計支援。現 在㈱馳忙技術開発部所属。 く会社事業内容・近況> 当社はものづくり革新を目指すベンチャー企業で ある。主な事業は、開発・生技・生産に係る①技術 コンサルティング事業、電承・電子カルテ等の②ソ フト開発事業、金型・製造現場の効率肝を目指した 電研(自動工具研磨)、制御システム、工作機械の要 素技術開発等の③研究開発事業の3つが柱である。そ の分野の専門家(プロ)の集団で、ものづくりイノベ ーションを支援する。
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