Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
液体水素用外部加熱型MgB2液面センサーの温度分布の
シミュレーション解析
Author(s)
奈良, 洋行 / 前川, 一真 / 武田, 実 / 藤川, 静一 / 松野, 優 /
黒田, 恒生 / 熊倉, 浩明
Citation
神戸大学大学院海事科学研究科紀要 = Review of
Graduate School of Maritime Sciences, Kobe University,
10: 74-81
Issue date
2013
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81005256
Create Date: 2014-10-30
神戸大学海事科学研究科紀要 第 10 号
液体水素用外部加熱型 MgB2 液面センサーの
温度分布のシミュレーション解析
Simulation Analysis of Temperature Distribution of External-Heating-Type
MgB2 Level Sensor for Liquid Hydrogen
奈良洋行*,前川一真**,武田 実,藤川静一***,松野 優***,黒田恒生****,熊倉浩明****
Hiroyuki NARA*, Kazuma MAEKAWA**, Minoru TAKEDA, Shizuichi FUJIKAWA***,
Yu MATSUNO***, Tsuneo KURODA****, Hiroaki KUMAKURA****
(平成 25 年 6 月 28 日受付)
Abstract
Recently, superconducting magnesium diboride (MgB2) level sensors such as self-heating-type MgB2
level sensor and external-heating-type MgB2 level sensor has been reported as new sensors for detecting the
level of liquid hydrogen (LH2), which is expected to be produced using sustainable/renewable energy in the
world. In the case of the latter level sensor, it is important to optimize the external heater of the MgB2 level
sensor, which can be applied a large shipping LH2 tank in the near future. To simulate the temperature
distribution of the MgB2 level sensor, thermal analysis of the sensor with the external heater was carried out
using software ANSYS mechanical APDL. Calculated results are discussed with parameters of roll of the
heater and interval of the heater.
(Received June 28, 2013)
1.はじめに
2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋
沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故以降、
我が国のエネルギー事情は緊迫しており、原子
力に替わる新たなエネルギーとして太陽光や風
力などの再生可能エネルギーに注目が集まって
いる。将来的に、海外で得られた再生可能エネ
ルギーを二次エネルギーとして水素に変換し、
その水素を液体水素(LH2:沸点 20.4 K)の状
態で我国へ海上輸送する WE-NET 計画(1)が再び
脚光を浴びている。しかし、水素は爆発範囲が
広く、拡散性も高く、漏れやすいなど管理を厳
重にしなければならない。そこで、本研究室で
は、液体水素用の液面計として高精度・高信頼
性の外部加熱型超伝導 MgB2(ニホウ化マグネ
シウム)液面計の開発を行ってきた(2)-(5)。
本研究では、この液面計を大型舶用液体水素
タンクに搭載する事を想定し、液面計の大型化
にとって重要である外部ヒーターの最適化を目
指し、シミュレーション解析によってセンサー
の温度分布を求めることを目的とした。本研究
では、汎用ソフト ANSYS mechanical APDL を
用いて 200 mm センサーの外部ヒーター100 回
巻の実験データ (4)を再現し、その後外部ヒータ
ー200 回巻及び巻線間隔を途中で変更した場合
のセンサーの温度分布を解析した。
2.超伝導 MgB2 液面センサーの測定原理
超伝導 MgB2 液面センサーの測定原理につい
て説明する。センサーは Fig.1 のように、液相
(LH2)部分では温度が超伝導転移温度 Tc より低
いため、センサーは超伝導状態になっており、
その電気抵抗がゼロになっている。一方、気相
(GH2)部分では温度が Tc より高いため、センサ
ーは常伝導状態になっており、電気抵抗が発生
する。このため、液面が変化するとセンサー全
体の電気抵抗が変化するため、センサーの電気
抵抗から液面の高さを求めることができる。液
面の高さ Ll は以下の式で求められる。
*
海事科学研究科博士課程前期課程
現在、(株)ヤスナ設計工房 勤務
**
海事科学研究科博士課程後期課程
***
岩谷瓦斯株式会社
****
物質・材料研究機構
Ll 
74
L
Ro  Rg 
Ro
(1)
ここで、L は液面計の長さ、R g は気相部の抵抗
値、Ro は超伝導転移温度直上のセンサー全体の
抵抗値である。
さらに、外部加熱型のセンサーの場合は、
LH2 の蒸発ガスによって気相部分の液面付近が
冷却されることを防ぐため、Fig.1 のようにセ
ンサーの周りに外部ヒーターがらせん状に巻か
れている。実験では、直径 0.32 mm、長さ 200
mm のセンサーにポリエステル被覆マンガニン
線(線径 0.20 mm、被覆径 0.23 mm)を 2 mm
間隔で 100 回巻いたものを使用した。
は微小六面体の辺の長さ、H は単位体積当たりの
発熱量、Q2 がセンサーあるいはヒーターから GH2
へと伝えられる伝熱量、 が熱伝達係数、Tw が固
体表面の温度、Tb が流体温度、A2 が伝熱面積を表
す。
4.モデルに与えた条件
次に、各解析でモデルに与えた条件について
説明する。センサーはクライオスタット (4)のサ
ンプル槽内に挿入されている。サンプル槽内は
完全に断熱されており、外部からの熱侵入は起
こらないとした。さらに、サンプル槽内の圧力
は大気圧(1 気圧)で変動しないものとし、LH2、
およびセンサーの液相に浸されている部分の温
度は 20.4 K で一定としている。また、解析の簡
略化のため、LH2 の蒸発や GH2 の対流は考慮し
ておらず、計算時間の短縮や計算量の削減のた
めにセンサーの中心軸に対する軸対象モデルを
使用している。そして、実験値との比較のため、
サンプル槽に LH2 が 140 mm の位置まで充填さ
れている状態を考えており、そのうちの液相部
20 mm、気相部 60 mm の範囲(合計 80 mm)をモ
デル化した。
初期条件には、過去の実験で測定した温度分
布(ヒーター入力 0 W)の平均値をサンプル槽内
の気相部分に与えている。さらに、境界条件と
して外部ヒーターの発熱と、センサーやヒータ
ーと GH2 間の熱伝達係数を与えている。ここで、
外部ヒーターの発熱量は単位体積あたりの発熱
量として与えており、らせん状に巻かれている
外部ヒーターをらせんの巻き数と同じ数の
Fig.2 のような輪が一定間隔で巻かれているも
のとしてモデル化している。よって、単位体積
あたりの発熱量 Q は次式で求められる(5)。
Q
1
(5)
Q E  2
n ( R2  R12 )    l
ここで、 QE は外部ヒーター全体の発熱量、 n
MgB2 sensor
GH2
Normal conducting
state
Heater
LH2
Superconducting
state
Fig.1 Measurement principle of an external-heatingtype superconducting MgB2 level sensor.
3.支配方程式
本研究の解析で使用している支配方程式につ
いて説明する。まず、同じ物質内での熱伝導に関
しては、(2)式のフーリエの法則に基づき、(3)式の
熱伝導の基礎微分方程式を用いた。また、GH2 と
センサー、GH2 とヒーターとの間の熱のやり取りは
(4)式の熱伝達の式を用いた。
T
dQ   
dA
1
1
n
c
T
t
(2)
dxdydz 
(3)
  
  
 x 

 
x
T


 
y 


 
y
T

 
z 


 
z
T

H  dxdydz


Q 2   Tw  Tb A2
Heater
(4)
CuNi
ここで、dQ1 は微小面積の法線方向に単位時間当
たりに流れる熱量、 は物体の熱伝導率、  T 、  T 、
n
T
、 T
y
z
MgB2
x
は任意の点における法線方向の温度勾配、
dA1 は微小面積、c は物体の比熱、 は物体の密
度、T は任意の点での温度、t は時間、dx 、dy 、dz
R0
l
R2
R1
Fig.2 Model of sensor and external heater.
75
は外部ヒーターの巻き数、 R1 はセンサーの中
心からシース材と外部ヒーターの境界面までの
半径、 R2 はセンサーの中心から外部ヒーター
と気体(液体)水素の境界面までの半径、 l は外
部ヒーターの幅を表す。また、センサーと GH2
の熱伝達係数については九州大学の研究グルー
プが行った解析で用いられた熱伝達係数の値
(700 W/(m2・K))を使用した(6)。ヒーターと GH2
間の熱伝達係数はヒーター100 回巻の実験値に
近い値となるよう設定した。さらに、ヒーター
と気体水素の熱伝達係数については不明なこと
から、今回の解析では調整パラメータとし、解
析結果がセンサーの全発熱量 6 W、9 W の時の
実験結果(文献(3)の実験結果)とほぼ一致するよ
うに調整した。そして、ヒーター入力値を変化
させた場合でも実験値に近い値となる熱伝達係
数の値を本解析で用いる熱伝達係数とした。こ
こで、熱伝達の計算で使用した GH2 の雰囲気温
度は初期条件で与えた温度を用い、この温度が
変化しないものとして計算した。
なお、以下の解析で示す温度はセンサーの
MgB2 部と CuNi 部の境界部分の温度を Fig.3 の
区間ごとに平均して表している。ここで、Fig.3
中の a はヒーター間隔を表す。
a
2
a
a
a2
2
Section
a
a
a2
2
a
a
a2
2
a
a
2
Fig.3 Dividing section to calculate
average temperature.
48 mm
Sensor
R1=0.16 mm
5.ヒーターを 100 回巻いた場合の解析
ヒーターを 100 回巻いた場合のセンサー温度
分布解析について説明する。Fig.4 に解析に用
いたモデルを、Fig.5 に Fig.4 をメッシュ分割し
たもののうち、液面付近の図を示す。
このモデルではサンプル槽は直径 96 mm、高
さ 200 mm の円柱形状になっていると仮定して
いる。そして、MgB2 液面センサーは中心から
直径 2R0 = 0.12 mm が MgB2 部、その外側が内
径 2R0 = 0.12 mm、外径 2R1 = 0.32 mm である
CuNi(7:3) の シ ー ス 材 、 さ ら に 外 側 に は 内 径
2R1= 0.32 mm、外径 2R2 = 0.72 mm で幅が l = 0.2
mm である外部ヒーターが 2 mm 間隔で巻きつ
いたモデルとなっている。ちなみに、実験で用
いたセンサーの直径は 0.32 mm、長さは 200
mm でこれに直径 0.2 mm のマンガニン線ヒー
ターが 100 回巻かれている。
また、メッシュ分割には Fig.5 のように、6
節点三角形要素で主に 2 次元の定常および時刻
歴伝熱解析に使用される PLANE35 と呼ばれる
要素タイプを使用しており、その節点数は
14291 個、要素数は 5413 個となっている。
このモデルに全体で 3 W、6 W、9 W、12 W、
15 W のヒーター入力を与えた場合の温度分布
解析を行った。ここで、前節でも述べたように、
ヒーターと GH2 の熱伝達係数は数値解析結果が
76
LH2
20 mm
80 mm
GH2
Fig.4 Analysis model (100 turns).
Sensor
Liquid surface
Heater
Fig.5 Mesh shape near liquid surface (100 turns).
センサーの全発熱量 6 W、9 W の時の実験結果
とほぼ一致するように決定している。
Fig.6 に液面から 20 mm 離れた位置での温度
の実験値と解析値を比較した図を示す。ここで、
ヒーターと気体水素間の熱伝達係数は 6 W を基
準にした場合では 1400 W/(m2・K)に、9 W 基準
にした場合では 1500 W/(m2 ・K)に設定した。
Temperature [K]
45
Experimental value
Analytic value (6 W base)
Analytic value (9 W base)
40
35
30
25
20
0
5
10
Heater input [W]
15
Fig.6 Experimental and analytic temperature at
a distance of 20 mm from liquid surface.
Sensor
Liquid
surface
Temperature [K]
Fig.7 Temperature distribution near liquid surface
(100 turns, Heater input of 3 W, 9 W based).
45
3W
40
6W
35
9W
30
12 W
25
Tc
20
0
15 W
10 20 30 40 50
Distance from liquid surface [mm]
Fig.8 Temperature distribution for a distance from
liquid surface (100 turns, 9 W based).
Fig.6 からどちらの解析でも実験値をおおよそ
再現できているが、特に 9 W を基準にした場合
の解析値のほうが実験値をより正確に再現でき
ていると考えられる。よって、以降のほかの解
析ではヒーターと気体水素の熱伝達係数は
1500 W/(m2・K)に設定した。
また、Fig.7 に GH2 とヒーター間の熱伝達率
が 1500 W / (m2・K)で、ヒーター入力が 3 W の
77
場合の液面付近の温度分布図を、Fig.8 にサン
プル槽内の液面からの距離に対するセンサー温
度を表したグラフを示す。ここで、これらのグ
ラフは 2 mm ごとにプロットされている。
Fig.7 より、ヒーターに近い地点とヒーター
から離れている地点で温度差が生じていること
がわかる。これはヒーターをマンガニン線の輪
として定義しているために生じる温度差であり、
他のヒーター入力値の場合も同じ結果になった。
さらに、Fig.8 からセンサーの温度分布は液面
付近で急激に上昇し、それより上部では一次関
数的に上昇していることがわかる。ここで、グ
ラフ中にある横線は超伝導転移温度(Tc =30 K)
を表す線であり、6 W 以上のヒーター入力で超
伝導転移温度を超える部分が出てきていること
がわかる。
また、過去の実験結果(4)のうち、液面から 40
mm 離れた付近での実験値(全実験の平均値)の
温度分布と比較すると、ヒーター入力 3 W で
2.4 K、6 W で 2.8 K、9 W で 2.7 K 解析値が低く
なった。以上の結果より、ヒーターをマンガニ
ン線の輪として定義しているために解析値が実
験値より低い値として出力されているが、おお
よそ実験値を再現できていることがわかった。
6.ヒーターを 200 回巻いた場合の解析
ヒーターを 200 回巻いた場合のセンサー温度
分布解析について説明する。Fig.9 に解析に用
いたモデルを、Fig.10 に Fig.9 をメッシュ分割
したもののうち、液面付近の図を示す。
このモデルでは外部ヒーターを 1 mm 間隔(長
さ 200 mm のセンサーで 200 回巻)で巻いた
MgB2 センサーを小型クライオスタットのサン
プル槽の中心に挿入したモデルである。サンプ
ル槽は直径 96 mm、高さ 200 mm の円柱形状に
なっていると仮定しており、MgB2 液面センサ
ーのモデル形状も外部ヒーターが 1 mm 間隔で
巻きついていること以外は 5 節のモデル形状と
同じである。
ま た 、 Fig.10 の よ う に メ ッ シ ュ 分 割 に は
PLANE35 の要素タイプを使用しており、節点
数は 14291 個、要素数は 5413 個となっている。
このモデルに全体で 3 W、6 W、9 W、12 W、
15 W のヒーター入力を与えた場合の温度分布
解析を行った。なお、熱伝達係数は 100 回巻 (9
W 基準)と同じである。
Fig.11 にヒーター入力が 3 W の場合の液面付
近の温度分布図を、Fig.12 にクライオスタット
の液面からの距離に対するセンサー温度を表し
た図を示す。ここで、これらのグラフは全て 1
mm ごとにプロットされている。
48 mm
Sensor
Sensor
R1=0.16 mm
Liquid
surface
20 mm
LH2
80 mm
GH2
Fig.9 Analysis model (200 turns).
Fig.11 Temperature distribution near liquid surface
(200 turns, 3 W).
Temperature [K]
40
Sensor
Liquid surface
Heater
3W
6W
35
9W
12 W
30
15 W
25
Tc
20
0
20
40
Distance from liquid surface [mm]
Fig.12 Temperature distribution for a distance from
liquid surface (200 turns).
それぞれのヒーター入力値における温度分布
図を、ヒーターを 100 回巻にしていた状態での
温度分布図と比較すると、ヒーターに近い地点
とヒーターから離れている地点との温度差が
100 回巻の状態より小さくなっていることがわ
かった。これは、ヒーター間隔を狭くしたため、
センサーとヒーターが接触する部分が増えたた
め、100 回巻のときより均等にセンサーを加熱
できたためであると考えられる。これと似た現
象は実際の液面センサーの実験でも起こると考
えられる。
また、Fig.12 より、温度分布は 100 回巻のと
きと同様で、液面付近で急激に上昇し、それよ
り上部では一次関数的に上昇している。しかし、
センサーが超伝導転移温度を超えるのは 9 W 以
上のヒーター入力を加えたときであり、100 回
巻のときより大きなヒーター入力値が必要であ
ることがわかる。また、センサーの温度も 200
回巻の場合、100 回巻の場合より低くなってい
た。このように出力された理由は、ヒーターを
200 回巻いた状態で定義した単位体積あたりの
発熱量が 100 回巻いた状態より小さいためであ
ると考えられる。実際のセンサーでもヒーター
78
45
Temperature [K]
Fig.10 Mesh shape near liquid surface (200 turns).
4.59E+8 [W m^-3](100 turns)
4.59E+8 [W m^-3](200 turns)
9.18E+8 [W m^-3](100 turns)
9.18E+8 [W m^-3](200 turns)
40
35
30
25
Tc
20
0
20
40
Distance from liquid surface [mm]
Fig.13 Temperature distribution for a distance from
liquid surface (100 turns, 200 turns).
の巻き数を増やすとセンサーに巻くヒーターの
全長が長くなるため、ヒーターに加える総発熱
量が一定の場合、単位体積あたりの発熱量は小
さくなる。よって、実際のセンサーにおいても
ヒーターに加える総発熱量が一定の場合、200
回巻の温度が 100 回巻の温度より低くなること
が予想できる。以上の解析結果より、ヒーター
の巻き数は多くなりすぎると、ヒーターに加え
る総発熱量が一定の場合、単位体積あたりの発
熱量が小さくなるため、ヒーターの巻き数を増
たりの発熱量は 100 回巻時の 3 W: 4.59×108
W/m3 、6 W: 9.18×108 W/m3 、 9 W: 1.38×109
W/m3 、12 W: 1.84×109 W/m3 、15 W: 2.30×109
W/m3 であるとして解析を行った。
また、Fig.16、17 のようにメッシュ分割には
PLANE35 の要素タイプを使用しており、節点
数はモデル A が 11267 個、モデル B が 11298
48 mm
やすことがセンサーへの加熱の効果を必ずしも
上昇させるわけではないことがわかった。
次に、単位体積あたりのヒーターの発熱量が
一定の場合、ヒーターの巻き数に対して、セン
サーの温度分布はどのように変化するかを調べ
た。Fig.13 に単位体積あたりのヒーター発熱量
が 4.49×108 W/m3 でヒーターを 100 回、200 回
巻いたときの温度分布および発熱量が 9.18×
108 W/m3 でヒーターを 100 回、200 回巻いたと
きの温度分布を比較した図を示す。なお、100
回巻のグラフは 2 mm ごとに、200 回巻のグラ
フは 1 mm ごとにプロットされている。Fig.13
より、単位体積あたりの発熱量が一定の場合、
どちらの発熱量でもセンサーの温度はヒーター
の巻き数が 200 回のときのほうが 100 回のとき
より高くなっていることがわかる。このことか
ら、単位体積あたりの発熱量が同じ場合、巻き
数が多くなるとヒーターのセンサーへの加熱の
効果が上昇することがわかった。
Pitch:
1 mm
80 mm
Pitch:
2 mm
LH2
20 mm
50 mm
GH2
Sensor
R1=0.16 mm
7.ヒーターの巻き線間隔を途中で変更した場
Fig.15 Analysis model (model B).
合の解析
ヒーターの巻き方において、途中でそのヒー
Sensor
ターの巻き線間隔を変化させた場合の解析につ
いて説明する。Fig.14、15 に解析に用いたモデ Distance of 30 mm
ルを、Fig.16、17 に Fig.14、15 をメッシュ分割 from liquid surface
したもののうち、巻き線間隔が変化する付近
(液面から 30 mm 離れた付近)の図を示す。
この解析では、Fig.14 のように液面から 30
mm 上の位置を境界にしてその地点より下部の
ヒーター間隔が 1 mm、上部が 2 mm になるモ
Heater
デル(モデル A)と、Fig.15 のように下部が 2 mm、
上部が 1 mm になるモデル(モデル B)を考えた。
クライオスタットの形状やセンサーの直径など
は前節までに使用したモデルと同じモデル形状
Fig.16 Mesh shape near a point where the pitch of heater
で解析している。また、ヒーターの単位体積あ
is changed (model A).
48 mm
80 mm
GH2
Pitch:
1 mm
LH2
20 mm
50 mm
Pitch:
2 mm
Sensor
Sensor
R1=0.16 mm
Heater
Distance of 30 mm
from liquid surface
Fig.17 Mesh shape near a point where the pitch of heater
is changed (model B).
Fig.14 Analysis model (model A).
79
Temperature [K]
Distance of 30 mm
from liquid surface
Sensor
65
60
55
50
45
40
35
30
25
20
4.59E+8 [W m^-3]
9.18E+8 [W m^-3]
1.38E+9 [W m^-3]
1.84E+9 [W m^-3]
2.30E+9 [W m^-3]
Tc
0
Distance of 30 mm
from liquid surface
Fig.20 Temperature distribution for a distance from
liquid surface (model A).
Temperature [K]
Fig.18 Temperature distribution near a point where the
pitch of heater is changed (model A, 9.18 ×
108 W/m3).
10
20
30
40
50
Distance from liquid surface [mm]
38
36
34
32
30
28
26
24
22
20
Tc
Model A
100 turns
200 turns
0
20
40
Distance from liquid surface [mm]
Fig.21 Temperature distribution for a distance from
liquid surface (model A, 100turns, 200turns,
9.18×108 W/m3).
Sensor
のほうが 1 mm 間隔より大きくなっていること
がわかる。そして、ヒーターの巻き方を変化さ
せた場合、センサーの温度分布のようすはヒー
ターの巻き数の変わり目ですぐに変化している
ことがわかる。
Fig.20 に注目すると、モデル A では液面付近
個、要素数はモデル A が 5196 個、モデル B が
のヒーターの巻き線間隔が狭くなっていること
5035 個であった。
から、すべてのヒーター入力値において液面付
Fig.18、19 にモデル A、B における各単位体
近のセンサー温度が超伝導転移温度以上になっ
積あたりのヒーター発熱量が 9.18×108 W/m3 の
ている。そして、単位体積あたりの発熱量が
場合の巻き線間隔が変化する付近の温度分布図
9.18×108 W/m3 以上であれば、気相のほぼ全域
を、また、Fig.20、22 にモデル A、B における
でセンサー温度を超伝導転移温度より高く保て
液面からの距離に対するセンサーの温度を表し
るという結果が出た。しかし、ヒーターの巻き
た図を、Fig.21 に単位体積あたりの発熱量が
線間隔の変わり目で温度が急激に低下している
9.18×108 W/m3 の場合のモデル A とヒーター巻
様子も見て取れる。次に、Fig.21 のように単位
き数が 100 回(ヒーター間隔 2 mm) のモデル、
体積あたりの発熱量が 9.18×108 W/m3 の場合の
200 回(ヒーター間隔 1 mm) のモデルの温度分布
モデル A とヒーター巻き数が 100 回(ヒーター
を比較した図を示す。ちなみに、これらの図は
間隔 2 mm) のモデル、200 回(ヒーター間隔 1
巻き数間隔が 2 mm の部分は 2 mm ごとに、1
mm) のモデルの温度分布を比較すると、モデル
mm の部分は 1 mm ごとにプロットされている。 A のヒーター間隔が 1 mm の部分のセンサー温
Fig.18、19 の温度分布図より、モデル A、B
度は 200 回巻のセンサー温度と、2 mm の部分
に共通してヒーターに近い部分と離れている部
のセンサー温度は 100 回巻のセンサー温度とほ
分のセンサー温度の差はヒーター間隔が 2 mm
ぼ同じになった。そして、その温度分布の変化
Fig.19 Temperature distribution near a point where
the pitch of heater is changed (model B, 9.18
×108 W/m3).
80
60
55
Temperature [K]
の際、この位置を境界にしてその地点より下部
のヒーター間隔を 1 mm、上部を 2 mm にした
モデル(モデル A)と逆に下部を 2 mm、上部を 1
mm にしたモデル(モデル B)を考えた。解析の
結果、どちらのモデルでもヒーターの巻き線間
隔の変わり目で温度が急激に変化している様子
が見て取れた。その温度分布の変化はヒーター
の巻き方の変わり目を含む 3 mm の範囲で起こ
っていたが、実際にこれらのモデルのようなヒ
ーターの巻き方をして、今回の解析のようにヒ
ーターの巻き線間隔の変わり目でセンサーの温
度が急激に変化するかどうか確認する必要があ
る。
4.59E+8 [W m^-3]
9.18E+8 [W m^-3]
1.38E+9 [W m^-3]
50
1.84E+9 [W m^-3]
45
2.30E+9 [W m^-3]
40
35
30
25
Tc
20
0
20
40
Distance from liquid surface [mm]
Fig.22 Temperature distribution for a distance
from liquid surface (model B).
謝辞
本研究に対して、科研費挑戦的萌芽研究
(23656550)および基盤研究 A (24246143)の援助
を受けました。ここに謝意を表します。
はヒーターの巻き方の変わり目を含む 3 mm の
範囲で起こっていた。この様子は他の発熱量の
場合でも起こっていた。
一方、Fig.22 に注目すると、モデル B におい
てもヒーターの巻き線間隔の変わり目で温度が
急激に上昇していることがわかる。その温度分
布の変化はモデル A のときと同様、ヒーターの
巻き方の変わり目を含む 3 mm の範囲で起こっ
ていた。
参考文献
(1) WE-NET(World Energy Network; 水素利用国
際クリーンエネルギーシステム技術研究開発)
成果報告書(1998)
(2) M. Takeda, Y. Matsuno, I. Kodama, H.
Kumakura, and C. Kazama: Application of MgB2
Wire to Liquid Hydrogen Level Sensor ―
External-Heating-Type MgB2 Level Sensor, IEEE
Trans. Appl. Supercond. Vol.19 (2009) pp.764767.
(3) K. Maekawa, M. Takeda, Y. Matsuno, S.
Fujikawa, T. Kuroda and H. Kumakura: Thermal
response of MgB2 level sensor for liquid
hydrogen using external heater, Proceedings of
ICEC24-ICMC 2012 (2013) pp.59-62
(4) 前川 一真:液体水素用超伝導 MgB2 液面セ
ンサーの外部ヒーターに対する熱応答性およ
び液面検知特性、神戸大学大学院海事科学研
究科修士論文 (2012)
(5) 森田 剛至:液体水素用超伝導 MgB2 液面セ
ンサーの液面検知特性に対する外部ヒーター
の影響、神戸大学大学院海事科学研究科修士
論文 (2010)
(6) 柁川一弘、船木和夫、戸町恭平、田中和英、
神谷卓伸、岡田道哉、熊倉浩明:MgB2 線材
を用いた液体水素用超伝導式液位センサーの
数値シミュレーション、超伝導システム科学
研究センター報告 Vol. 6 (2009) pp. 68-76
8.まとめと今後の課題
まず、ヒーター100 回巻において、GH2 とヒ
ーター間の熱伝達係数を 9 W の時の実験値を基
準に決めた熱伝達係数 1500 W/(m2 ・K)に設定
した際、実験値に近いセンサー温度が出力でき
ることがわかった。よって、ヒーターと GH2 の
熱伝達係数は 1500 W/(m2 ・K)に設定した。そ
して、解析値はヒーターをマンガニン線の輪と
して定義しているために解析値が実験値より低
い値として出力されているが、おおよそ実験値
を再現できていた。
次に、ヒーターを 200 回巻にすると、100 回
巻の場合に比べて均等にセンサーが温められ、
ヒーターに近い地点とヒーターから離れている
地点との温度差が小さくなった。しかし、気相
部分にあるセンサー全体の温度は、ヒーターに
加える総発熱量が一定の場合、100 回巻より低
くなっていた。これは単位体積当たりの発熱量
が 100 回巻より小さくなっているためである。
一方、単位体積当たりのヒーターの発熱量が同
じ場合、センサーの温度はヒーターの巻き数が
200 回のときのほうが 100 回のときより高くな
っていた。
最後に、ヒーターの巻き線間隔を液面から
30mm 離れた位置で変更した解析を行った。そ
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