平成 年度 日本医師会医療情報システム協議会

昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
広島県医師会速報(第
号)
年(平成
年) 月
日( )
平成 年度 日本医師会医療情報システム協議会
医療情報の取り扱いはどうあるべきか?~医療におけるI
Dのあり方~
と き 平成 年 月 日㈯ : ~
月 日㈰ : ~
ところ 日本医師会館 大講堂 広島県医師会常任理事 牛尾 剛士
平成 年度日本医師会医療情報システム協議会が「医療情報の取り扱いはどうあるべきか?
~医療におけるI
Dのあり方~」をメインテーマとして、平成 年 月 日㈯、 日㈰の両日、日
本医師会館大講堂において開催され、当会から、檜谷義美副会長、牛尾剛士常任理事、水野
正晴常任理事、渡邊弘司常任理事、大谷博正常任理事らが出席した。また、「ひろしま医療
情報ネットワーク(HMネット)」の運営WGから、志田原泰夫委員長、藤川光一統括本部長も
出席した。
日目は、石川広己日本医師会常任理事が総合司会を務め、横倉義武日本医師会長、今年
度開催担当県の沖縄県医師会宮城信雄会長の挨拶の後、川出靖彦、富田雄二、牛尾剛士各運
営委員が座長を務めるセッションⅠ「地域医療連携(事務局)セッション」が行われた。
日目は、大橋勝洋、大島鉄朗両運営委員が座長を務めるセッションⅡ「日医I
T戦略セッ
ション~ORCA・日医認証局の今後の発展に向けて」
、続いて登米祐也、佐久本嗣夫、藤原秀
俊両運営委員が座長を務めるシンポジウム「医療情報の取り扱いはどうあるべきか?~医療
におけるI
Dのあり方~」が行われた。
閉会式では、来年度当番県である広島県医師会檜谷義美副会長が来年度の開催日の発表と
開催に向けて挨拶を述べた。
日間による参加者は総数
名であった。
開会挨拶
日本医師会長 横倉 義武
本日はご多忙のなか、このように多数の皆さ
ま方にご参集いただき、心より御礼を申し上げ
ます。
さて、日本医師会は、社会保障・税番号制度
における個人番号-いわゆるマイナンバーを医
療現場で利用することに反対する姿勢を明確に
するため、三師会合同で「医療等I
Dに係る法制
度整備等に関する声明」を取りまとめ、平成
年 月 日に、私と三塚日本歯科医師会副会
長、山本日本薬剤師会長が合同記者会見を行っ
た。声明文では、マイナンバーとは異なる医療
等I
Dの必要性を示し、関連法制度の整備、それ
らの仕組みを監視する第三者機関設置の必要性
を求めた。
このような状況から、今年度の協議会は、
「医
療情報の取り扱いはどうあるべきか?~医療に
おけるI
Dのあり方~」をメインテーマに取り上
げた。医療分野等の連携、医学・医療の研究の
推進などに利用でき、かつ、個人情報の保護の
観点からも全国で利用可能な安全・安心な医療
分野等専用の番号(符号)制度の確立が早急に
( )
年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
必要と考えている。こうした背景を踏まえて、
本協議会でご議論いただきたいと思っている。
また、I
Tを利用した地域医療連携の事例報告
や地域医療連携のスペシャリストによるパネル
ディスカッション、今後も日本医師会が医療分
野のI
T化のイニシアチブをとるためのI
T戦略
セッションをプログラムとして用意した。
昨年度、日本医師会は認証局の実務を行う
「日本医師会電子認証センター」を設置した。医
師資格情報を格納するI
Cカードである「医師資
格証」の発行も始まっている。
そして、 の都道府県医師会が地域受付審査
局(LRA)を開設いただき、運営に多大なご協
力をいただいている。この場をお借りして、御
礼申し上げる。
最後に、この協議会が先生方にとり有意義な
ものとなることを祈念して挨拶させていただく
とともに、今年度の協議会の運営に多大なるご
協力をいただいた宮城会長に感謝を申し上げ、
私の挨拶とする。
沖縄県医師会長 宮城 信雄
本日はご多忙のなか、このように多数の皆さ
ま方にご参集いただき、心より御礼を申し上げ
ます。また、本日こうして医療情報システム協
議会の開催を無事迎えられたことを心より嬉し
く思っている。これもひとえに運営委員会の先
生方のお力添えのお陰であり、担当県を代表し
て御礼申し上げるとともに一言ご挨拶申し上げ
る。
今年の協議会は、大きく分けて つのセッショ
ンを開催する。
まず つ目は、これまで別の部屋で開催してい
た事務局セッションとして、地域連携のスペ
シャリストによるディスカッションを行う。
つ目は、昨年と同じく日医認証局についてお
話をしていただくとともに日医I
T戦略について
ご説明いただく。
つ目は、医療におけるI
Dの在り方について、
行政側から説明いただいたあと、医療における
I
Dの現状や問題点を発言していただく。
例年に比べセッション自体は少ないが、ひと
つひとつ内容の濃いものになるのではないかと
思っている。
最後に、本日ご参加いただいた先生方に有意
義な会となるよう祈念して担当県の挨拶とする。
号)
昭和
年
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日 第
種郵便物承認
Ⅰ.地域医療連携(事務局)セッション
座長 運営委員
川出 靖彦、富田 雄二、牛尾 剛士
① さどひまわりネット
新潟県厚生連佐渡総合病院外科部長
佐藤 賢治
地域医療再生基金を用い、新潟県佐渡医療圏
における地域医療連携システム「さどひまわり
ネット」を構築した。域内の病院・診療所・歯
科診療所・保険薬局・介護施設を双方向に結び、
参加施設が保有する医療・介護情報を施設規模
や電子カルテの有無を問わずに収集するシステ
ムである。情報は、レセコンを含む医事会計シ
ステムを核に、外注を含む検査システム、X線
や内視鏡などの画像機器・システム、薬局シス
テムなど既存機器から原則自動で収集され、業
務フローの変更を求めない。介護施設とも情報
交換が可能で、健診データも取得する。また、
種々のコミュニケーションツールや業務連携支
援ツールとして「コミュニケーションボード」
と呼ばれる機能を実装し、連携に必須な情報参
照とコミュニケーション機能を実現した。医師
不足を解消するため医師が増えたが地域を網羅
できず隙間は埋まっていない。地域医療連携の
必要性は変わらない。
「さどひまわりネット」は域内施設から構成さ
れるNPO法人佐渡地域医療連携推進協議会が運
営し、参加施設からの利用料で自立運用してい
る。 割 を 越 え る 住 民 が 同 意 し、域 内 施 設 の
%が参加する地域医療連携システムとなって
いる。
「さどひまわりネット」は、レセプトから
のデータ抽出がメインで、共通I
Dを利用してい
るが、カードの紛失などによる事故や事務作業
量の軽減のためにカードの発行は行っていない。
また、在宅診療支援に関するツールも利用して
いる。
参加施設すべてが情報提供者となっており、
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種郵便物承認
広島県医師会速報(第
介護連携やコミュニケーションツールの充実を
図り、必要以上の保守体制を持たないようにす
ることで、運営費用を抑えている。
費用確保は切実な問題だが、受益者負担は行
えていないので、今後は患者からの負担も検討
したい。
② おきなわ津梁ネットワークの取り組み
沖縄県医師会副会長 安里 哲好
沖縄県医師会理事 比 嘉靖
沖縄県医師会事務局業務 課長 平良 亮
沖縄県は近年、全国の平均寿命 位はおろか、
中高年層においてあらゆる疾病が全国最低レベ
ルとなり、今や長寿命県のイメージは遠い過去
のこととなってしまった。
そこで、沖縄県医師会では、中高年層の早世
阻止と働く世代のメタボリックシンドローム対
策および糖尿病対策などを重要な課題と考え、
県民の保健・医療に寄与することを目的に、脳
卒中連携パスの運用を主目的とした「おきなわ
津梁ネットワーク」事業を平成 年 月より展
開している。
おきなわ津梁ネットワークには、全市町村
( 市町村)と協会けんぽ沖縄支部、後期高齢者
医療広域連合から提供いただいた特定健診・長
寿健診データが過去 年分集積されるとともに、
各医療機関で行う検査データなどを随時集積す
る仕組みを構築している。これにより、患者か
ら同意を得、ネットワークに登録した時点で過
去に受けた特定健診情報などを参照することが
でき、適切な医療提供および重症化対策を図る
ことが可能となる。また、特定健診情報が保存
されていない場合は特定健診を受診していない
ということになるため、医療機関において必要
に応じ効果的な受診勧奨を実施することが可能
となる。
セキュリティはガイドラインに則っており、
VPN通信を行い、暗号化も行っている。患者同
意は患者、医療機関、医師会が保管できる複写
式とし、同意した患者のみにカードを発行して
いる。カードを提示しない場合、参加している
医療機関であっても患者情報を閲覧できないよ
うにしている。
今年度は、ORCAなどのレセコンから基本情
報や処方情報などの情報を自動的に取得するた
めの機能拡張や、薬剤師会との連携による処方
情報や調剤情報の集積機能、歯科医師会や看護
協会、理学療法士会や作業療法士会など、各在
宅医療関係団体と連携した在宅医療情報共有機
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年(平成
年) 月
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能等を構築している。
③ ゆけむり医療ネットの概要
別府市医師会監事 矢田 公裕
別府市医師会事務次長 田能村祐一
ゆけむり医療ネットは、別府市医師会を中心
とした医療・保健・福祉を連携し、地域医療の
質の向上に資する事を目標としている医療連携
ネットワークである。主に、二次医療圏で完結
する医療連携を中心に、基幹病院と病院・診療
所をI
DLi
nkを用いた閉鎖されたネットワークに
よって結び、紹介された患者の同意の基にリア
ルタイムに病院・診療所へ診療情報(画像・検
査・薬剤情報・入院経過表など)を参照可能な
システムを構築している。医師会立の検査・健
診センターからも、検体検査や健診データを提
供しており、精密検査のために基幹病院を受診
したデータと時系列に閲覧できる。
在宅医療・介護については、医療と介護をつ
なぐ事を目標に多職種連携をテーマに人との連
携構築を重要視し、主治医との一般診療を妨げ
ないI
Tを用いた連携ツールの導入に関しては、
地域医療連携システムと同期できる仕組みを利
用している。
平成 年~ 年度においては、厚生労働省の
「処方箋の電子化に向けた検討のための実証事
業」に参加し、処方箋情報を電子化して保存す
る際に医師と薬剤師による電子認証と署名に保
健医療福祉分野公開鍵基盤(HPKI
)を用いて真
正性を担保し、紙で保存することとなっている
処方箋を電子化した場合にどのようになるかを
実証した。
また、平成 年度には総務省の「公的個人認
証サービス民間活用実証事業」に参加し、医療
機関窓口で現在加入している健康保険の資格情
報が即時確認できる仕組みと前回に引き続き処
方箋の電化について、平成 年 月 日~ 日の
ヵ月間で検証している。
ゆけむり医療ネットは診療支援による精度の
向上と地域住民の健康管理を目的にこれからは
「必要な時に」
「必要な人に」
「必要な情報を」提
供できるネットワークとして多くの病院や診療
所の医師・コメディカルおよび薬局が参加する
ことにより医療・保健・福祉を連携させ、地域
医療の質の向上に資する事を目標としている。
今後は、個の認証がキーになってくると考え
られる。医師はHPKI
カードによる医師資格の
認証、患者は個を識別するナンバーへの対応が
大きな課題となってくると考えられる。
( )
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地域医療連携はヒューマンネットワークによ
るチーム力が継続の最も必要となる。事務局も
含めたチーム力で地域連携を継続させていきた
い。
④ 道南 MedI
k
a
社会医療法人高橋病院理事長 高橋 肇
道南は複数医療圏からの患者が集まる地であ
るため、地域医療連携が必須の地であった。平
成 年 月、全国で初めて「I
DLi
nk」の試験稼
働を市立函館病院と当院間で行った。平成 年
月「道南地域医療連携協議会(道南Me
dI
ka
)」
を立ち上げ、同年 月からI
DLi
nkの本稼働が始
まり、平成 年 月末日時点で全国 都道府県
, 施設の参加となっている。
道南Me
dI
ka
自体は、平成 年 月にNPO法人
格を取得し、月例の理事会のほか医療介護連携
情報共有検討会を毎月実施している。情報提供
施設は 施設、情報閲覧施設が 施設で、登録患
者数は , 人あまり、 ヵ月のアクセス数は
多い時で 万件超となっている。
このシステムは、地域の医療施設をインター
ネットVPNでつなげることによって各施設が保
有している診療情報を公開・参照できるネット
ワークシステムで、閲覧可能な項目は、処方・
注射内容・検査データ、温度板、画像情報、各
種文書類などとなっている。自施設外の情報を
上手に使いこなす時代、地域単位で患者情報が
把握可能な時代になったと言える。
道南MedI
ka
では、I
DLi
nkに加え、地域包括
ケアシステムに対応した医療・介護・生活支援
統合ソフト『Per
s
onal
Net
wor
kぱるな』を開
発した。
地域医療連携のスペシャリストによる
パネルディスカッション
宮城県医師会常任理事:MMWI
N
日本医師会常任理事
長崎県医師会常任理事:あじさいネット
松江市医師会理事:まめネット
鶴岡地区医師会長:Ne
tU
新潟県厚生連佐渡総合病院外科部長:
さどひまわりネット
沖縄県医師会副会長:
おきなわ津梁ネットワーク
沖縄県医師会理事:
おきなわ津梁ネットワーク
別府市医師会監事:ゆけむりネット
登米 祐也
石川 広己
牟田 幹久
小竹原良雄
三原 一郎
別府市医師会事務次長:
ゆけむりネット
社会医療法人高橋病院理事長:
道南Me
dI
ka
田能村祐一
高橋 肇
上記 名により、地域連携における つのテー
マについてディスカッションを行った。
. 「連携の地域的範囲」について
・新たに地域連携を構築するのは難しい。強い
リーダーシップがないと難しい。ヒューマン
ネ ッ ト ワ ー ク は 必 須 と 考 え ら れ る の で、
ヒューマンネットがつながり得る範囲からや
るべきと考える。
・地域連携を広げるためには、小さな範囲で
行っている連携のノウハウをすべて提供する
一方で、地域での啓発は地域が責任を持って
やるからこそ広がると考える。
・やりたいと考える地区を加えていくだけで十
分で、やりたいと考えていない地区を加える
必要はなく、やっても上手くいかないだけで
時間と労力をかけてもなかなか成功しない。
・小範囲ネットワーク同士をつなげる場合も、
ポリシーや同意の取り方などが異なると、そ
の地区同士をつなげるのは非常に難しい。
・また、地域連携を広げるに際しても、それを
支える事務局などの力が必須で、事務局のマ
ンパワーが少ない地区を取り込むには、事務
負担の増加を十分に考えておかないと難しい。
・リーダーがいない地区での地域連携の構築は
非常に難しい。リーダーの地域医療連携のビ
ジョンや思想を上手く取り入れられるベン
ダーの協力も非常に大切と考える。
佐藤 賢治
. 「連携のためのデータ形式の統一」について
安里 哲好
比嘉 靖
矢田 公裕
・データ形式の統一としては、SSMI
XやSSMI
X が当たり前になってきている。でなけ
れば、お金や手間がかかるだけ。
・各病院にあるHI
S端末がSSMI
Xに対応してい
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広島県医師会速報(第
るか否かが重要で、対応するためには別途費
用が必要になっている現状から、なかなか進
まないといえる。よって、今後はSSMI
X出
力は法的に必須対応とするなどの国の対応な
どが必要と考えられる。
・データ形式よりも、コードマスターがそろっ
ていないため、それぞれの医療機関が独自に
持っているコードを標準マスターに変換させ
る機能を、医療機関ごとに構築する必要があ
るため、SSMI
X出力機能を有していても、実
際にSSMI
Xで出力が可能となるのにはハー
ドルが高くなる。
・I
DLi
nkとHumanBr
i
dge
が併記できるように
なるよう約束いただいているが、一向に進ま
ない。どちらかを選ぶかという事が、すなわ
ち自院の電子カルテを決めることに直結し、
結果的にベンダーの言いなりになってしまい、
価格設定などで問題がある
. 「地域医療連携は何を連携するか」
号)
年(平成
年) 月
日(
)
で月額利用料を払うことになると、費用対効
果として高すぎる価格設定となり、介護事業
者の価格の在り方が問題となっているケース
が多い。よって介護連携には医療連携のよう
なカルテ開示は必要ないと考える。
. 「日医認証局の利用」について
・現時点でカードを持つメリットがないため普
及しない。地域連携ネットワークのログイン
に使うためには不要。
・しかし、電子紹介状などの署名としての利用
は必要だと言える。
・ただ、この機能を導入するための構築費用、
維持費用について日医が統一したものを示せ
ば導入しても良いといえる。
・電子署名の機能を導入した場合、紙の紹介状
を作成し郵送する費用に比べれば、安くなる
ことはあっても、高くなることはない。事務
員が郵送する人件費などの削減につながるた
め、ぜひ取り入れたい。
医療連携について
・全般的に画像連携のニーズが高い。
・主治医の考えが知りたいため、結果的にカル
テ情報が公開されるに至った。
・多職種にわたって喜ばれるのは処方である。
・診療録を見たいがすべて見るのは不可能なの
で、現実的にはサマリーがあればよい。
・結果的に、ネットワークの根本的な考え方と
して、すべての情報を見せるのか、補完的な
一部の情報を見せるのかによって、必然的に
連携する内容は異なるといえる。
介護連携について
・介護連携において、その人に知って欲しいも
の、知って欲しくないものの区別は非常に複
雑だと言える。よって、職種などによって制
限を設けるのは必須といえる。
・医療と介護では、利用する内容が全く異なる
のに、同じデータを利用しようとすることに
無理があると言えるのではないか。よって、
病診連携システムとして構築したシステムで
介護連携を行うことは難しいのではないか?
・システム上は同一だが、メモ機能などの一部
の機能だけに限って利用することで介護連携
を行っている。過去の電子カルテ情報は介護
職者には必要なく、主治医のメモなどの方が
単刀直入で不要な情報がないため価値がある。
・また、病診連携システムをそのまま介護シス
テムに利用するため、介護事業者が同じ条件
. 「運用資金の問題」について
・年間 億 千万円の保守費がかかっており、参
加医療機関による月額利用料だけでは運用が
難しく、賛助会による賛助会費で何とか賄っ
ている。
・ネットワークだけの維持だけであれば、月額
, 円で十分賄えるが、基金で拡充したシス
テムの維持にはそれだけでは難しいといえる。
よって、初期構築後、後から追加した個々の
システムについては必要、不必要などによっ
て取捨選択していかないといけないと思われ
る。
・全面的に医師会負担としているが、歯科、薬
科、介護も参加してきているため、それも含
めて全額医師会が負担すべきかという問題が
出てきており、今後は患者による受益者負担
についても検討するべきとの声が上がってき
ている。
・月額 , 円、薬局は月額 , 円とかなり
高額な月額利用料を設定しており、利用者の
ご理解がなければ決して続かない。他地区で
この月額利用料は全く参考になる金額とはい
えない。
・受益者負担として患者から 円でも徴収した
いと考えたが、それを徴収する事務手数料を
考えて断念した。
それぞれの地区による地域連携ネットワーク
(
)
年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
を運用している実体験をもとにした生の意見が
多く述べられた。
Ⅱ.日 医 I
T戦 略 セ ッ シ ョ ン ~ORCA・日医認証局の今後の発展に向けて~
座長 運営委員
大橋 克洋、大島 鉄朗
① 日レセと連携ソフト(電子カルテな
ど)の最新情報
日医総研主席研究員 上野 智明
日レセORCAは、導入医療機関が , を超
え、 .%のシェアとなった。
昨年度は、日医標準レセプトソフト(日レセ)
のクラウド化(開発コードネームGi
nbe
e
)につ
いて報告を行った。このクラウド化への取り組
みは、さらに低コストな請求プラットホームと
して、どこの医療機関からも利用できる日レセ
を目指すものである。
今後は電子カルテをはじめとするさまざまな
アプリケーションや診療支援機器から「レセプ
トエンジン」としての日レセの活用が期待され
る。このため、クラウド化と平行して日レセと
外部アプリケーションとのAPI
(Appl
i
cat
i
on
Pr
ogr
ammi
ngI
nt
er
f
ace:開発コードネーム HAORI
)の整備・強化に取り組んでいる。
ORCAプロジェクトでは今後、介護などのコ
ンテンツでもクラウド化とHAORI
対応を進め、
MI
_
CANを使った地域医療連携や、かかりつけ
連携手帳の電子化まで含めた医療介護現場のI
T
化を、
「より安価に、より扱いやすく」支援して
いきたいと考えている。
日医標準レセプトソフト(日レセ)をオープ
ンソースという形式で提供し続けてきた結果、
実に多くの周辺アプリケーションや診療支援機
器がさまざまな方法で連携されるようになって
おり、今後はこのHAORI
を使った連携方式を推
奨していく予定である。
業界 位として、大手メーカーの後追いで開
発していくのではなく、率先して一歩先を進む
ような開発を行っていきたいと考える。
② 「紹介状作成プログラム(MI
_
CAN)
と地域医療連携」について
日医総研主任研究員 西川 好信
ORCAプロジェクトでは、
「紹介状作成プログ
ラムf
or
地域医療連携(以下MI
_CAN)」を開発
し、平成 年 月に公開した。
MI
_
CANは、日医標準レセプトソフトに入力
号)
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
したデータを活用し、紹介状および診断書を作
成することができ、画像貼付機能も有している
ため、画像付紹介状も簡単に作成できる。
MI
_
CANは、検査データの結果取り込みや厚
生労働省の提唱するミニマムEHR連携基盤(地
域医療連携データ)への出力にも対応しており、
また市販ソフトとの連動も考慮して開発されて
いる。
日本医師会電子認証センターが発行する「医
師資格証(HPKI
カード)」と、「医師資格証対
応署名ソフト」と組み合わせれば、安全に共有
可能な電子紹介状が作成できる。また、PDF加
工ソフトと組み合わせれば、医療現場で発生す
るさまざまな「医療文書」の電子化を行うこと
ができる。
平成 年 月頃公開予定の新機能の紹介や、今
後の開発予定を含めながら、医療機関運用の一
翼を担うことが期待される「MI
_
CAN」の概要
が紹介された。
③ 医師資格証の現状と今後の展開に
ついて
日医総研主任研究員 矢野 一博
医師資格証は、ちょうど 年前となる昨年の日
本医師会医療情報システム協議会から受付を開
始して発行を開始した。医師資格証を申請する
には、医師免許証の原本を確認すること、運転
免許証などの身分証の提示をすること、住民票
を提出することなど、厳格な本人と資格の確認
が必要となるが、これまで多くの医師に申請を
いただいた。また、その受付を実施する地域受
付審査局(Lo
c
a
lRe
c
e
pt
i
o
nAut
ho
r
i
t
y:LRA)
についても、 割を超える都道府県医師会に設置
をいただいている。この場を借りて御礼を申し
上げたい。
医師資格証の発行枚数も 枚となってきて
おり、徐々にではあるが普及の兆しを見せてい
る医師資格証は、現在、保有している医師から
さまざまな利用方法についてのご意見や提言を
いただいている。
そのひとつとして実現した例として「出欠管
理アプリケーション」がある。今後、これを発
展させて生涯教育受講の履歴管理や各学会との
連携なども計画している。スマートフォンに
よってカードの内容を確認するアプリケーショ
ンや、医師資格証会員ポータルサイトの開発も
進めている。
本来の機能であるHPKI
認証局の電子署名と
認証についても「MI
_
CAN」を利用していただ
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
広島県医師会速報(第
くほか、電子署名付与に関するAPI
を無償提供
する予定としており、さまざまな地域において
利用してもらえるように引き続き支援をしたい。
号)
年(平成
年) 月
日(
)
格証の発展などに取り組みたいと考えている。
「地域医療を支える」「将来の医療を考える」
「組織を強くする」の つの方針をもって進めて
いきたい。
④ 日医I
T戦略に望むこと
東京大学大学院医学系研究科 医療経営政策学講座特任准教授 山本 隆一
日医I
T戦略を考える上で重要なことは医療I
T
が、I
T整備の時代からI
Tを活用した情報の利活
用の時代に変わりつつあることである。ひとつ
の医療機関内の情報処理の合理化が主目的で
あった時代は終わり、多施設多職種で必要に応
じて、かつ安全に活用することの重要性は日に
日に増しているし、網羅的な情報を分析し制度
としての最適化を求める圧力も強い。
すでに先駆的な地域では情報の利活用に取り
組んでおり、またNDBをはじめとする大規模
データベースの活用も加速されつつある。利活
用には「必要に応じて」と「プライバシーを確
保して安全に」が最低限の条件であるが、必要
性も、プライバシーも本来は現場感覚が非常に
重要で、その意味では現場感覚が反映されなけ
れば真のニーズも安全も確保しがたく、無駄な
情報が飛び交い、ルーズな扱いや、逆に過剰な
安全管理が生じかねない。
日本医師会には現場感覚に基づく最適な利活
用を主導的に進めることが期待される。つまり、
医療におけるI
T化は一部の特別なことではなく
普遍的な必須ツールとして、しかし、現場の業
務を決して壊すようなことがないように進めら
れることを望む。
⑤ 日医I
T戦略について
日本医師会常任理事 石川 広己
日本医師会は、平成 年度に「日医I
T化宣
言」を公表した。この宣言は、医療現場に標準
化されたオンライン診療レセプトシステムを導
入することで、互換性のある医療情報のやりと
りを可能にし、このために日医が開発したプロ
グラムやデータベースはすべて無償で公開する
「ORCAプロジェクト」の指針を示した画期的な
内容であった。
それから 年が経過した現在、時代に即し、
将来を見据えた新たな「日医I
T化宣言」を策定
し、日医主導で進める医療のI
T化をさらに新し
いステージに進めるべく、医療I
T委員会で検討
を行っている。
今後は、ビッグデータの利活用や地域包括ケ
アによる連携、ORCAの継続的な発展、医師資
Ⅲ.シンポジウム 「医療情報の取り扱いはどうあるべきか?
~医療におけるI
Dのあり方~」
座長 運営委員
登米 祐也、佐久本 嗣夫、 藤原 秀俊
① パーソナルデータの利活用に関す
る制度改正について
内閣官房情報通信技術(I
T)総合戦略室
パーソナルデータ関連制度担当室 瓜生 和久
内閣参事官
年に個人情報保護法が成立してから 年
余り経過し、プライバシー保護にも配慮した
パーソナルデータの利活用のためのデータ利用
環境整備が喫緊の課題ということから、個人情
報保護法の改正が行われるようになった。
その背景として、情報通信技術の発展による
グレーゾーンが拡大したこと、所管の縦割りに
より柔軟な対応ができないこと、事業活動のグ
ローバル化などの環境変化が進み、データが国
境を越えて流通する時代となったことなどから、
各省で制度の見直し検討が始まった。
個人情報は、生存する個人に関する情報で
あって、氏名、生年月日その他の記述などによ
り特定の個人を識別することができるものであ
る。また他の情報と容易に照合することができ、
それにより特定の個人を識別することができる
こととなるものを指す。
一方、匿名加工情報は、特定の個人を識別す
ることができる記述などを削除し、第三者提供
する旨を公表したものを指す。匿名加工情報は
提供された側としても、削除された個人を識別
することができる記述を元に戻さないなどの制
約がある。
また、本人に対する不当な差別または偏見が
生じる可能性のある情報(人種、信条、社会的
身分、病歴、犯罪に関する情報)については、
本人の同意を得ない形での取得を原則禁止し、
第三者提供の特例の対象から除外されている。
個人情報については、提供日や取得経緯など
の情報について記録を残し一定期間保存する必
要があり、不正利用目的に対しての罰則も新設
される。
(
)
年(平成
年) 月
日
広島県医師会速報(第
I
T総合戦略本部のもとに設置された「パーソ
ナルデータに関する検討会」での議論を踏まえ
て策定された「パーソナルデータの利活用に関
する制度改正大綱」およびその後の個人情報保
護法等の改正法案の策定作業を踏まえて公表し
た「パーソナルデータの利活用に関する制度改
正に係る法律案の骨子案」の内容について検討
経緯を交えて説明された。
② 医療・介護等分野とI
T総合戦略・
マイナンバー等について
内閣府大臣官房番号制度担当室長 内閣官房社会保障改革担当室 内閣審議官 向井 治紀
地域における医師の不足・偏在、医療従事者
の負担増および超高齢化社会の到来による医
療・介護需要の増大、少子高齢化による現役世
代の負担増の現状を受け、国民が長く健康で自
立して暮らすことができる社会の実現を目指し
て、データを利活用した健康増進・管理や疾病
予防の仕組みの構築や、必要な時に効果的・効
率的な医療介護や生活支援サービスなどを安心
して受けられる持続的な体制の整備を進めてい
る。
マイナンバー制度については、個人番号と法
人番号があり、個人番号は 桁、法人番号は
桁の番号が割り当てられる。
個人番号の利用は、基本的に民から官に提出
する調書に利用するためのもので、法律および
省令で記載されている内容に限って利用できる。
よって、法律に記載していない範囲で個人番号
を利用すると違法となる。つまり、患者の個人
番号をカルテに記載する行為は違法にあたり、
従業員の個人番号は管理し、源泉や保健などに
利用することになる。
個人番号カードは、個人が申請することによ
り公布される。個人確認に利用することは可能
だが、その番号を利用した証拠に控えることは
違法行為となる。
個人番号制度における情報連携として、国が
すべての情報を一元管理するわけではなく、税
や保健に関する情報はこれまでどおりの所管が
管理するが、その情報に個人番号の項目が追加
されるのみで、すべての情報が不用意につなが
るものではない。
医療におけるI
Dは、マイナンバーである必要
はなく、特異分野における番号はそれぞれで構
築すればよいと考えられるが、全国民を対象に
する場合の採番を考えれば方法が限定され、ま
号)
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
た番号カードを全国民に配布するには膨大な予
算が必要となるため実質的に難しいと考える。
政府は平成 年 月 日に「世界最先端I
T国
家創造宣言」を閣議決定した。この創造宣言で
は、医療・介護等分野について、①効果的・効
率的で高品質な医療・介護サービスの展開、②
現役世代からの健康増進等、医療・健康情報等
の各種データの活用推進、が掲げられている。
創造宣言の内容について医療・介護等分野を
中心に説明するとともに、平成 年 月から通
知が開始されるマイナンバーについて、利用範
囲の拡大をはじめとする制度の利活用促進など、
現在政府を中心として行われている議論の最新
動向について説明された。
③ 医療等分野における番号制度の活
用等について
厚生労働省大臣官房参事官(情報政策担当)
鯨井 佳則
「医療等分野における番号制度の活用等に関す
る研究会」(座長:金子郁容 慶應義塾大学政
策・メディア研究科教授)は、医療関係者や保
険者、情報政策の有識者らにより構成され、今
年 月から開催された。医療等分野の情報連携に
用いる番号のあり方、情報連携が想定される具
体的な利用場面、番号制度のインフラの活用の
考え方等について整理し、これらの検討の結果
について 月 日に中間まとめを公表した。こ
の「中間まとめ」の内容やこれまでの経緯、今
後の検討方針などについて説明された。
マイナンバーは「行政手続きにおける特定の
個人を識別するための番号の利用等に関する法
律」であり、個人番号の利用範囲は各種法律の
条項に記載されており、その範囲外での利用は
法律違反により罰せられる。
医療等分野での番号の活用は以下の つに分類
される。
・医療機関・介護事業者等の連携
・本人への健康医療情報の提供・活用
・健康・医療の研究分野
・医療保険のオンラインでの資格確認
・保険者間の健診データの連携
・予防接種の履歴管理
個人番号カードによる個人認証は、 桁の個
人番号ではなく、カード内の証明書を用いるこ
とが検討されており、極力番号を用いない運用
を考えている。
また、各分野で個人情報を持つことにより、
すべての情報が安易につながるように思われる
昭和
年
月
日 第
種郵便物承認
広島県医師会速報(第
が、各分野で個人を特定するためには、個人番
号とは異なった符号をそれぞれの分野における
機関が持っており、そのそれぞれの複数の符号
が 人のものであることをつなげられるものは情
報提供ネットワークのコアシステムのみであり、
厳密な管理により保管されるため、決して安易
に多くの情報が一元的につながることはない。
マイナンバーを使えば、医療情報連携が格段
に向上すると考えられているが、個人番号は
データの長期的追跡性の向上や分野横断的な情
報の利活用・分析に効果を発するが医療情報連
携が格段に向上するためには、個人番号がある
以前にインフラがあることが前提で、かつデー
タが標準化されていなければ、個人番号は効果
を発揮できない。
④ 医療におけるI
Dの現状、その問題
点について
日本医師会常任理事 石川 広己
日本医師会は、社会保障・税番号制度におけ
る個人番号(マイナンバー)を医療現場で利用
することに反対する姿勢を明確にするため、日
本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会合同で
「医療等I
Dに係る法制度整備等に関する声明」
を取りまとめ、平成 年 月 日に合同記者会
見を行った。声明文では、マイナンバーとは異
なる医療等I
Dの必要性を示し、関連法制度の整
備、それらの仕組みを監視する第三者機関設置
の必要性を求めた。
I
Tを用いた医療連携を促進するために、個人
を特定する何らかの番号・I
Dが必要であること
は否定しない。しかし、個人の資産とも紐付き、
唯一無二で悉皆性を持つマイナンバーを利用す
ることは、ひとたび事故が起きた時には、個人
のプライバシーや権利に取り返しのつかない事
態を招いてしまう。従って、マイナンバーとは
別の医療等分野の連携、医学・医療の研究の推
進などに利用でき、かつ、個人情報の保護の観
点からも全国で利用できる安全・安心な医療分
野等専用の番号(符号)制度の確立が必要と考
えられる。
こうした背景から、会内のプロジェクト委員
会として、「医療分野等I
D導入に関する検討委
員会」を設置し、本年 月のマイナンバーの通
知開始までに、具体的な提案を行いたい。この
シンポジウムでは、この問題に関するこれまで
の経緯と今後の方針について説明された。
号)
年(平成
年) 月
日(
)
閉会式
次期担当県挨拶 広島県医師会副会長 檜谷 義美
皆さまこんにちは。ただいまご紹介いただい
た、来年度この日本医師会医療情報システム協
議会の開催を担当させていただく、広島県医師
会の檜谷である。
本来なら会長の平松がこの場でご挨拶させて
いただくのだが、あいにく別の公務と重なり、
平松に代わりご挨拶をさせていただく。
改めて、本日ご参加の先生方の 日間に及ぶ熱
い協議をいただき、先生方の勢いに圧倒される
日間だったと感じている。
また、本協議会の開催にあたり、本年度当番
県として運営にご尽力された沖縄県医師会の宮
城信雄会長をはじめ、本協議会運営委員会の先
生方に敬意を表する次第である。
さて、広島県医師会が担当させていただく来
年度の本協議会の開催日は、平成 年 月 日㈯
と、 日㈰の 日間を予定している。
平成 年度より開催されている本協議会は、
今年でちょうど 年目の節目の年だが、来年度
開催のテーマや、講演いただく先生方について
は、運営委員会の先生方や、多くの関係者の
方々のご意見をいただき、広島県が責任を持っ
て開催したいと考えており、皆さま方のご支援、
ご協力を何とぞよろしくお願い申し上げる。
最後に、本協議会のますますのご発展を祈念
申し上げ、私の挨拶とさせていただく。