LC Technical Note HPLC用メタルフリーカラム使用のすすめ 152 GL Sciences Inc. アミノ酸、有機酸、テトラサイクリンやリン酸基含有化合物などには金属配位性の高い構造の化合物があります。 これらを分析する際に、金属の配位により錯体を形成しピーク形状や定量精度の悪化を引き起こすことがあります。 今までは、充填剤表面の残存金属がこの要因であると考えられていましたが、微量成分の高感度分析時には、充填 剤だけではなくカラム管やフリットなどの接液部分の金属が分析結果に悪影響を及ぼすことが判明してきました。 また、金属配位性化合物を分析する場合は、リン酸系移動相を使用することでピーク形状を改善する方法が取られ てきました。しかし、LC/MS(/MS)分析においてリン酸系移動相は、その特性からほとんど使用されません。 今回、このような問題を解決するツールとして、接液部分の材質をすべてPEEK製にしたメタルフリーカラムの効果 についてLC/MS/MSのアプリケーションを中心にご紹介します。 (K.Kanno) N NH NH2 OH ヒスチジン O O エチレンジアミン 四酢酸 P O OH OH HPLC分析において、化合物の隣接する位置に上記のような官能基を複数有す る化合物やリン酸基を有する化合物は金属の影響を受けやすくなります。 金属の影響 ○ ピークのテーリング ○ ピークが溶出しない ○ 感度低下 など ※ 本テクニカルノートのデータは接液部の金属を不活性化した装置で取得しています。 詳細はお問い合わせください。 バックナンバーやアプリケーション検索はこちらから・・・ http://www.gls.co.jp/hplc.html GL Sciences LC Technical Note 逆相分析例① テトラサイクリン テトラサイクリン類は金属配位しやすい化合物で、HPLC分析カラムでは充填剤表面の残存金属やカラムの 金属材質への吸着による悪影響が発生します。 残存金属が少なく、不活性度の高いカラムを使用することでLC/MS(/MS)で一般的に使用されるギ酸系移動 相でも感度が高くなります。 さらに、接液部に金属を使用しないメタルフリーカラムにするとより感度が高くなります。 Intensity, cps 1. 2. <ステンレスカラム> <ステンレスカラム> 他社ODS 粒子径:1.7 mm InertSustainSwift C18 粒子径:1.9 mm <メタルフリーカラム> InertSustainSwift C18 粒子径:1.9 mm 200 200 200 180 180 180 160 160 160 140 140 120 120 120 100 100 100 2 80 60 1 40 20 0 2.6 3.0 3.4 Time, min 60 40 40 20 20 2.6 充填剤の不活性度違い 3.0 3.4 Time, min 1 80 1 60 0 3.8 2 140 2 80 オキシテトラサイクリン テトラサイクリン 各2 mg/L 3.8 0 2.6 3.0 3.4 Time, min 3.8 カラムホルダーの違い ステンレス or メタルフリー HPLC条件 カラム : InertSustainSwift C18 (1.9 μm, 50 x 2.1 mm I.D.) 2. テトラサイクリン(Tetracycline) 他社カラム (1.7 μm, 50 x 2.1 mm I.D.) 移動相 : A) 0.1 % HCOOH in CH3CN B) 0.1 % HCOOH in H2O A/B = 10/90 – 1.5 min – 10/90 – 2.5 min – 90/10 , v/v 流量 : 0.4 mL/min カラム温度 : 40 ℃ 検出 : LC/MS/MS (ESI, Positive, MRM) 注入量 : 10 mL サンプル濃度 : 2.0 mg/L 1. Oxytetracycline(OTC) 2. Tetracycline(TC) Q1 460.9 445.0 Q3 326.2 154.0 Structures are created using Chemistry 4-D Draw which is provided by ChemInnovation Software, Inc. GL Sciences LC Technical Note 逆相分析例② リン酸基含有化合物 有機リン系農薬やヌクレオチドのようなリン酸基含有化合物は金属配位性の高い化合物の一つで、ステンレス材 質のHPLCカラムではピークが全く溶出しなかったり、形状が悪かったりすることがあります。このような化合物をメタ ルフリーカラムにて分析することで、問題点が改善する場合があります。 50000 1:768.05>261.10(+) CE: -31.0 50000 1:768.05>261.10(+) CE: -31.0 45000 45000 40000 40000 35000 35000 30000 30000 25000 25000 20000 20000 15000 15000 10000 10000 5000 5000 分析条件 カラム 移動相 1 : InertSustainSwift C18 (1.9 μm, 50 × 2.1 mm I.D) : A) 5 mM HCOONH4 in H2O B) 5 mM HCOONH4 in CH3CN A/B=98/2-2 min-80/20 : 0.4 mL/min : 40 ℃ : LC/MS/MS (ESI, Positive, MRM) : 10 μL : Coenzyme A (Q1/Q3 = 768/261) 流量 カラム温度 検出 注入量 サンプル NH2 OH HS NH NH O O O O O P O P O CH3 OH OH CH3 0 0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 min 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 <ステンレスカラム> <メタルフリーカラム> Intensity, cps 6000 6000 2 5000 5000 4000 4000 3000 1000 1000 0 0 4 6 8 Time, min 流量 カラム温度 検出 注入量 サンプル 2000 1 2 12 3000 3 2000 10 <ステンレスカラム> HO 2 4 6 8 Time, min <メタルフリーカラム> カビ毒の一種であるフモニシンは、隣接する位置にカルボキシル基など が2つ以上あり金属配位性が強い化合物です。このような化合物は、ステ ンレス材質のHPLCカラムでは、カラム内壁やフィルターへの吸着によって ピーク形状の悪化が起こります。 感度UP ピーク形状改善 2 1500 CH3 R 8000 300 0.0 4000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Time (min) <ステンレスカラム> 0.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Time (min) <メタルフリーカラム> NH 2. FMOC-グリホシネート : InertSustain C18 (3 μm , 100 ×2.1 mm I.D.) : A) 0.1 % HCOOH ,10 mM HCOONH4 B) CH3CN A/B = 60/40,v/v : 0.2 mL/min : 40 ℃ : LC/MS/MS ( ESI , Positive. , MRM ) : 1.Fumonisin B1 (Q1/Q3 = 722/334) 2.Fumonisin B2 (Q1/Q3 = 706/336) 1.2e4 600 OH OH R: FMOC 1. FMOC-グリホサート O P フモニシン B1 1.6e4 900 OH OH 流量 カラム温度 検出 サンプル N O O 2 2.0e4 1200 N 1 2.4e4 1 R P 3.2e4 2.8e4 1800 O 分析条件 カラム 移動相 N : InertSustain C18 (3 μm, 150 × 2.1 mm I.D) : A) 5 mM HCOONH4 in H2O B) CH3CN A/B=95/5 -9.3 min - 37/63 : 0.25 mL/min : 40 ℃ : LC/MS/MS (ESI, Positive, MRM) : 10 μL : 1. FMOC-Glyphosate (Q1/Q3 = 390/168) 2. FMOC-Glufosinate (Q1/Q3 = 402/190) 3. FMOC-AMPA (Q1/Q3 = 332/110) 各2 mg/L 10 逆相分析例③ ジカルボキシル含有化合物 2100 1. コエンザイムA (500 mg/L) 分析条件 カラム 移動相 3 O N O OH HO P O OH min Time(mm) Time(mm) N フモニシン B2 GL Sciences LC Technical Note HILIC分析例① アミノグリコシド系化合物 アミノグリコシド系化合物はストレプトマイシン等のアミノ糖を含む配糖体抗生物質で、隣接した位置にヒドロキシル 基(-OH)やアミノ基(-NH2)が複数あるため、金属配位しやすい化合物です。 ステンレス材質の影響は、カナマイシン(KM)のように溶出しない化合物、スペクチノマイシン(SPCM)のようにピー ク形状がブロードになる化合物というように化合物の構造によって大きく異なります。 1.00e5 1.00e5 9.00e4 9.00e4 8.00e4 8.00e4 7.00e4 7.00e4 6.00e4 6.00e4 Intensity, cps Intensity, cps 4. KM 5.00e4 4.00e4 1. SPCM 5.00e4 4.00e4 3.00e4 3.00e4 1. SPCM 2.00e4 2.00e4 1.00e4 1.00e4 2. SM 3.GEM 0.00 2. SM 3. GEM 未溶出 4. KM 未溶出 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Time, min 0.00 10 11 12 13 14 15 <ステンレスカラム> 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Time, min 10 11 12 13 14 15 <メタルフリーカラム> H2N NH H NH H2N HO NH O OH R O HO HN NH2 R OH H2N NH OH O 1. スペクチノマイシン O O 2. ストレプトマイシン HO NH2 HO O OH O HO HO NH O HO NH2 HO 4. カナマイシン OH O OH NH2 HPLC条件 カラム : Inertsil Amide 検出 (5 μm, 150 x 2.1 mm I.D.) 移動相 : A) 0.1 % HCOOH in CH3CN B) 0.1 % HCOOH in H2O A/B = 70/30 – 10 min – 50/50 , v/v 流量 : 0.2 mL/min カラム温度 : 40 ℃ 注入量 : 10 mL NH2 NH 3. ゲンタマイシン サンプル濃度 : LC/MS/MS (ESI, Positive, MRM) Q1 1. Spectinomycin(SPCM) 351 2. Streptomycin(SM) 292 3. Gentamycin(GEM) 322 4. Kanamycin(KM) 243 : 500 mg/L OH O OH O HO O Q3 333 176 160 162 NH2 GL Sciences LC Technical Note HILIC分析例② アミノ酸 アミノ酸のなかでもアミノ基が2つ以上ある化合物※は金属の影響を受けやすくなります。 アミノ基が1つのロイシンやバリンなどはステンレスカラムとメタルフリーカラムで感度に変 化はありません。一方、ヒスチジンやアルギニンのようなアミノ基が複数あるアミノ酸は感度 やピーク形状にカラム材質が影響します。 感度UP ピーク形状改善 ※アミノ酸の金属配位の主はアミノ基とカルボ キシル基によるものと考えられます。 3.2e6 3.0e6 2.8e6 2.6e6 3.0e6 2.8e6 2.6e6 2.4e6 2.0e6 Intensity, cps 2.2e6 2.0e6 1.8e6 1.6e6 1.4e6 1.2e6 1 1.0e6 5 2 4 3 6.0e5 1.6e6 1.4e6 1.2e6 4.0 5.0 6.0 Time, min 2 6 7.0 3 4.0e5 7 3.0 1 6.0e5 2.0e5 2.0 1.8e6 8.0e5 6 4.0e5 1.0 4 1.0e6 8.0e5 0.0 5 3.2e6 5. Arginine 6. Lysine 7. Cystine 2.2e6 8.0 7 2.0e5 9.0 10.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 Time, min 7.0 8.0 ピーク形状比較(ヒスチジン) N OH 2.8e6 O 4. Histidine (His) 2.4e6 2.0e6 NH2 1.2e6 0.0 NH H2N ステンレスカラム OH NH メタルフリーカラム O 5. Arginine (Arg) HPLC条件 NH2 : Inertsil Amide (3 μm, 150 x 2.1 mm I.D.) 移動相 OH H2N : A) 100 mM HCOONH4, 0.1 % HCOOH in 75 % CH3CN 6. Lysine (Lys) B) 100 mM HCOONH4, 0.1 % HCOOH in H2O A/B = 100/0 – 3 min – 100/0 – 5.5 min – 70/30 , v/v 流量 : 0.3 mL/min カラム温度 : 40 ℃ 検出 : LC/MS/MS (ESI, Positive, MRM) 注入量 : 5.0 mL サンプル濃度 : 5 mM 10.0 NH2 NH 3.2e6 カラム 9.0 <メタルフリーカラム> <ステンレスカラム> Intensity, cps Intensity, cps 2.4e6 1. Leucine 2. Isoleucine 3. Valine 4. Histidine Q1 1. ロイシン 132 2. イソロイシン 132 3. バリン 118 4. ヒスチジン 155 5. アルギニン 175 6. リジン 147 7. シスチン 241 Q3 86 86 72 110 70 84 152 NH2 OH O 3. Valine (Val) 他のアミノ酸については、アプリケーション検索サイト『イナートサーチ』のLB315を参照ください。 http://www.gls.co.jp/technique/inertsearch_lc/pdf/LB315.pdf O GL Sciences LC Technical Note <メタルフリーPEEKカラム価格表> UHPLC-PEEK カラム(粒子径3 μm以下に対応) 粒子径 2 μm (1.9 μm)* 3 μm 内径(mm) 2.1 4.6 5020-00531 5020-00527 5020-00532 5020-00528 5020-00533 5020-00529 5020-00534 5020-00530 5020-00539 5020-00535 5020-00540 5020-00536 5020-00541 5020-00537 5020-00542 5020-00538 長さ (mm) 50 100 150 250 50 100 150 250 充填剤 PEEK ステンレス UHPLC-PEEK カラム 注)標準カラムジョイント形式は、UP型です。 *InertSustainSwift C18を選択された場合は、2 μmではなく1.9 μmになります。 PEEKカラム(粒子径4 μm以上に対応) 粒子径 4 μm 5 μm 10 μm から選択 内径(mm) 2.1 4.6 5020-00520 5020-00521 5020-00510 5020-00522 5020-00511 5020-00512 5020-00523 5020-00513 5020-00524 5020-00515 5020-00516 5020-00525 5020-00517 5020-00526 5020-00518 長さ (mm) 30 33 50 75 100 150 200 250 300 充填剤 PEEK PEEKカラム 注)標準カラムジョイント形式は、UP型です。 <対応可能な充填剤> InertSustain®シリーズ ・InertSustain C18 ・InertSustainSwift C18 ・InertSustain C8 ・InertSustain NH2 ・InertSustain Phenylhexyl ・InertSustain Phenyl Inertsil® シリーズ ・Inertsil C8-4 ・Inertsil NH2 ・Inertsil ODS-4 ・Inertsil WP300 C4 ・Inertsil C8-3 ・Inertsil WP300 Diol ・Inertsil ODS-3 ・Inertsil Peptides C18 ・Inertsil Ph-3 ・Inertsil SIL-100A ・Inertsil ODS-SP ・Inertsil HILIC ・Inertsil WP300 C18 ・Inertsil WP300 SIL ・Inertsil ODS-P ・Inertsil Amide ・Inertsil WP300 C8 ・Inertsil CN-3 ・Inertsil ODS-EP ・Inertsil Diol 注)その他の充填剤も対応可能です。 各充填剤ごとに対応可能な粒子径が異なります。詳細については、別途お問い合わせください。 ジーエルサイエンスでは、分析ノウハウときめこまやかなフォローもお付けしたシステム提案を行っております。 お近くの営業所や カスタマーサポートセンター までお気軽にお問い合わせください。 ホームページはこちらから・・・ http://www.gls.co.jp/hplc.html 〒163-1130 東京都新宿区西新宿6丁目22番1号 新宿スクエアタワー30F TEL.03(5323)6611 FAX.03(5323)6622 TEL.03(5323)6611 TEL.06(6357)5060 TEL.045(985)7900 TEL.024(534)2191 TEL.029(858)3700 TEL.043(248)2441 TEL.048(667)1611 TEL.052(931)1761 TEL.082(233)1101 TEL.092(738)6633 FAX.03(5323)6622 FAX.06(6357)4580 FAX.045(985)7901 FAX.024(536)1518 FAX.029(858)3780 FAX.043(248)2485 FAX.048(667)1656 FAX.052(931)1814 FAX.082(233)1110 FAX.092(738)6636 カスタマーサポートセンター T E L . 0 4 ( 2 9 3 4 ) 1 1 0 0 FAX.04(2934)3361 東 大 横 東 筑 千 北 名 広 九 京 営 業 阪 支 浜 支 北 営 業 波 営 業 葉 営 業 関 東 営 業 古 屋 営 業 島 営 業 州 営 業 部 店 店 所 所 所 所 所 所 所 ジーエルサイエンス LC テクニカルノート
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