有機化学1 練習問題(2015 年度版-2B)官能基の電子効果を理解しよう! 学籍番号 問1 官能基の電子効果に関する以下の文章の PC20 - 氏名 から適するものすべてを○で囲みなさい。 官能基はそれ自体で色々な反応を起こす一方で、結合している有機化合物に電子的な変化をもたらし、反応性や酸塩基性度の変化に影響 する。官能基が有機化合物に電子的な影響を与えることを、官能基の電子効果と呼び、(1)誘起効果(2)共鳴効果の2つに大別される。 (1)の誘起効果は2原子間の共有結合の電子対を電気陰性度の大きな原子側に偏らせる。例えば、プロパノール(A)と、3位にフッ素 (F)が結合した 3-フルオロプロパノール(B)の酸性度を比べてみよう。A と B の 共役酸、共役塩基 (A’, B’)を比較すると、B’ は電気陰性度の大きなフッ素原子により、矢印(←)で示した2原子間で電子対の偏り(電荷の偏り)が生じる。つまり、F の結合してい る炭素原子は陽性(+性)になるので、隣りの炭素から 結合電子対、非共有電子対、π電子 を引き寄せる。これが連続することで、酸 素原子上の-電荷は分散する(非局在化とよぶ)ことになり、B’は A’ (-電荷は非局在化しない)より 安定、不安定 として、電子求引性の F が結合した 3-フルオロプロパノール(B)はプロパノール(A)よりも、酸性度が フッ素基(F)は 電子供与、電子求引 となる。この結果 高く、低く なる。つまり、 性基として働いたことになる。このように、誘起効果は炭素原子に結合する官能基の原子との電 気陰性度の差による効果である。ほとんどの官能基は炭素原子よりも電気陰性度の大きなヘテロ原子を有するので、 電子供与、電子求引 性基となり、電子供与性基となるのは実質的にアルキル基だけである。 H H H H H H H C C C OH + H -電荷は分散できない(局在化) H C C C O H H H H H H A' プロパノール(A) 誘起効果で-電荷は分散する(非局在化) H H H H H H F C C C OH + H F H H H 3 F C C C O 2 sp 、sp 、sp C C C O H H H B' H H H B' 3ーフルオロプロパノール(B) (2)の共鳴効果は、官能基が H H δ - δ+ 混成炭素原子に結合しているときに多大な電子効果を及ぼす。応用例が最も多い、芳香族 化合物(C)で考えてみよう。ベンゼン環にカルボニル基(アルデヒド、ケトン、エステル、アミドなど)が結合すると、σ電子、π電子 移動を伴い、ベンゼン環上にプラス電荷をもつ共鳴構造を書くことができる。したがって、カルボニル基は 電子供与、電子求引 の 性基で あることがわかる。また、ベンゼン環とカルボニル基との間の単結合(共有結合の電子対)の誘起効を考えると、矢印(←)で示すように、 カルボニル基は 基は 電子供与、電子求引 電子供与、電子求引 も酸性度が 高く、低く 性を示す。したがって、共鳴効果と誘起効果のいずれの面から考えても、カルボニル基を含む官能 性を示すことになる。以上より、カルボニル基を有するフェノール(C’)は、フェノール(D)そのものより なる。また、官能基が反応性に与える影響として、芳香族ニトロ化反応は ベンズアルデヒドやアセトフェノン、安息香酸などのニトロ化反応は、ベンゼンの反応に比べて δ- O R O δ+ C R C O R O C R C O R 求電子、求核 置換反応であるから、 速く、同じ速さで、遅く O O R δ+ R C C C 進行する。 H, CH 3, OCH 3 δ+ など δ+ C ベンゼンよりも電子密度低い 一方、ヘテロ原子をもつアルコールやアミンなどがベンゼンに結合したときの誘起効果は 素原子や窒素原子上の 結合電子対、非共有電子対 造を書くことができるので、 電子供与、電子求引 ベンゼンに結合した OH 基は りも酸性度が 高く、低く 電子供与、電子求引 H O がベンゼン環のπ電子との間で共鳴でき、ベンゼン環上にマイナス電荷をもつ共鳴構 性を示すことがわかる。 共鳴、誘起 効果の方が、より大きく電子が移動するので、 基として働く。したがって、OH 基を有する安息香酸(D’)は、安息香酸そのものよ 速く、同じ速さで、遅く H O 進行する。 H O O R O H H O O δ- δδ- D である。共鳴効果は酸 なる。また、官能基が反応性に与える影響から、フェノールやアニソールなどの芳香族ニトロ化反応は、ベン ゼンのニトロ化反応に比べて H 電子供与、電子求引 OH C' ベンゼンよりも電子密度高い COOH D': R = H, CH 3
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