名誉会員 故 大場 健吉氏

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オレオサイエンス 第 15 巻第 4 号(2015)
名誉会員 故 大場 健吉氏
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オレオサイエンス 第 15 巻第 4 号(2015)
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追 悼
本会名誉会員・元会長 大場 健吉博士を偲んで
杉 山 圭 吉
(ライオン株式会社 顧問)
大場 健吉博士は,肺炎のため,1 月 24 日熱海市においてお亡くなりになりました。享年 78 歳でした。突
然のご逝去に,計り知れない悲しみと無念さを禁じえません。
大場さん(敬愛の情を込めて,こう呼ばせて頂きます)は,昭和 11 年名古屋市でお生まれになり,愛知県
立成章高等学校を経て京都大学農学部農芸化学科に進まれ,昭和 34 年同学科を卒業されました。直ちにライ
オン油脂(株)
(現ライオン(株))に入社され,冨山新一,森 昭両博士から薫陶を受けられ,界面活性剤の
環境への影響や安全性に関する研究に携わられました。昭和 37 年からは千葉大学医学部へ留学され,そこで
携わられた界面活性剤の生化学的研究,環境受容性に関する研究に対して昭和 46 年医学博士号を授与されま
した。合成洗剤の安全性論争に終止符が打たれたことは,大場さんのご貢献が大であり,その一端である「ア
ルキルベンゼンスルホン酸塩の生化学的研究」に対して昭和 40 年油脂技術優秀論文賞が授与されました。
この間,ライオン(株)においては,昭和 48 年環境衛生研究室長,同 55 年生物科学研究所長,平成 6 年に
は常務取締役研究開発本部長として研究開発を統括され,独創的な研究風土の醸成に心を砕かれました。
大場さんの研究に対するフィロソフィーを代表するものとして,奇数脂肪酸の特異な代謝メカニズムの解明
に基づく,育毛有効成分ペンタデカン酸グリセリドの開発が挙げられます。また,アラキドン酸やプロスタグ
ランジン類の生物生産という先見性のあるご研究に対して平成 10 年 2 度目の油脂技術優秀論文賞を,平成 11
年には京都大学から農学博士号を授与されておられます。
一方,大場さんの日本油化学会におけるご活動については,前身の油化学協会へ昭和 39 年に入会され,そ
の後,理事,副会長,さらには関東支部設立に伴い初代支部長をそれぞれ歴任され,平成 11 年度から 12 年度
にわたり第 23 代会長を務められました。特に国際交流に情熱を注がれ,平成 9 年には第 22 回 ISF 国際会議
と併催の第 1 回 JOCS/AOCS Joint Symposium(クアラルンプール)を企画され,その総合座長を務められま
した。平成 12 年には,JOCS/AOCS Joint Meeting の第 5 回会合を日米世界会議(JAWC 2000,京都)とし
て初めて日本で開催され,組織委員長として会議を大成功に導かれました。また,日本油化学会の運営におい
ては,各種の改革,活性化を図られ,積年の課題であった財政健全化に取り組まれて学会基盤の充実に尽力さ
れました。長年にわたる日米両油化学会へのご貢献により,平成 19 年には日本油化学会より名誉会員に,平
成 23 年には米国油化学会より Fellow に,それぞれ推戴されておられます。
私は,昭和 48 年のライオン(株)入社以来,42 年の長きにわたってご指導を頂くという幸運に恵まれ,語
り尽くせぬほど多くのことを学ばせて頂きました。仕事には厳しく,人には優しく,また,こよなく愛された
お酒をお供に談論風発,ときには「青樹」という雅号で短歌を楽しまれる幅広さをお持ちで,そのお人柄は,
多くの人を惹きつけてやみませんでした。私が平成 24 年ラクトフェリンの研究で日本農芸化学会の技術賞を
受賞した際には,わざわざ京都の授賞式に出席して下さり,懇親会では満面の笑みで祝福して頂いたことが,
最も印象に残っています。一昨年の秋,喜寿のお祝いに伺い,会食させて頂いたのが,最後の楽しい思い出で
す。昨 12 月入院されたと伺いましたが,年明けには,ここ数年恒例となっていたタイでの静養を楽しみにさ
れているとご連絡を頂きました。しかしながら,1 月になって容体が急変されていることを知りました。お身
内だけで見守りたいというご家族に無理を申し上げて,お見舞いに伺ったときには会話が叶わぬ状況で,6 時
間後には静かに息を引き取られたと連絡が入りました。ご家族葬にも関わらず,翌日の納棺にも出席させて頂
き,大場さんの最期に立ち会わせて頂けましたことは,大場さんと気持ちが通じ合った結果と思えてなりませ
ん。
これからは,一足先にご他界された和子夫人とご一緒に,安らかにお休みください。
茲に謹んで大場さんのご逝去を悼み,心からご冥福をお祈り申し上げます。
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