KM:JOH 25:49-57

人 文 科 学 と コ ン ピ ュ ー タ 25 一 6
(1995. 1. 27)
ニ ュ ー ミュー ジ ック に見 る恋 愛 風 景
久保正敏
国 立 民族 学 博 物 館 ・第 五 研 究 部
要旨
1965年 か ら1989年 まで の 間 に発 表 され たニ ュー ミュー
一ジ ク系 の 曲300余 を対 象 に 、歌詞 をデ ー タ入 力
す る と と もに、 歌詞 か ら曲 を分 類 す る項 目を設 定 し、そ れ に基 づ いた値 のデー タベ ー ス を作 成 した。 そ
の概 略 的 な分 析 結果 を報 告す る。25年 間 を5年 毎 の5つ の 期間 に 区切 って 、 分類 項 目値 の 変化 を見 る と、
以 下 の よ うない くつ か の特徴 を指 摘 で きる。
●1960年 代 に は 見 られ た 「若者 モ ノ」 は1975年 以降 減少 して い る。
●代 わ って 「恋愛 モ ノ」 が台頭 し、最 近 で は9割 近 くを 占め る。
● これ に呼 応 して、 歌詞 に友 人や 肉親 な ど恋 愛 対象 以外 の 人物 が登 場 す る 曲は 急減 す る。
● 歌詞 の時 間 的方 向 性 を見 る と、第1期 は未 来 指向 、第2,3、4期
は過 去 指 向 、第5期 は再 び未
来 指 向 が優 勢 とな る。
こ うした 変化 と、経 済 ・社 会 的変 化 、世 相 ・風 俗 、 ミュ0ジ シ ャ ンの世 代や 相 互 の影 響 、海 外 の洋 楽
か らの影 響 、 と言 った 諸現 象 との相 関 にっ い ての 詳 しい 分析 は 、今後 の課題 と した い。
Scenery
of Love
Affairs
Sung
Masatoshi
National
Museum
in Japanese
"New-Music"
KUBO
of Ethnology
Senri Expo Park, Suita, Osaka,
565 JAPAN
ABSTRACT
This paper reports a preliminary analysis of the text of Japanese songs categorized as "New-Music", made
during 1965 and 1989.
From a unique analytical viewpoint, several attributes of each song are evaluated, and
organized as a personal-computer-based
database.
By analyzing this database,
the following several changes
of songs during the period can be pointed out:
*The number of songs dealing with love affairs increses with the years;
*In the periods of
1965-1969 and 1985-1989 , the future-oriented songs are
ones, which may reflect the change of Japanese economic conditions.
49
dominant over
past-oriented
1.は
じめ に
以 前 、 筆 者 は 歌 謡 曲 を 旅 の 観 点 か ら分 析 した がD、
フ ォ ー ク ソ ン グや ニ ュ ー ミ ュー ジ ッ ク な ど 若 年 齢
層 に 愛 好 され る 歌 の 分 析 を オ ミ ッ ト して い た 。 今 回 、 これ ら の 歌 の 分 析 を 試 み るた め に 、 ヒ ッ ト曲 全 集
か ら 、1965年
か ら1989年 の 問 に 発 表 され た302曲 を 選 び 、OCR(光
学 文 字 読 み 取 り機 〉 で 歌 詞 を 読 み
と っ て パ ソ コ ン に 入 力 す る と と も に 、 タ イ プ 分 け の た め に 設 定 した い くっ か の 分 類 項 の 値 を 各 曲 に 与 え
て デ ー タ ベ ー ス を 作 成 した 。 こ れ に 基 づ い た 本 格 的 な 分 析 は これ か ら で あ る が 、 本 稿 で は 分 析 の 視 点 を
つ か む た め の 概 略 を 紹 介 した い 。
ソ ー ス と した 曲 集 は ド レ ミ楽 譜 出 版 社 『ニ ュー ミュ0ジ
ォー ク&ニ
ッ ク ベ ス ト222』 及 び 全 音 楽 譜 出 版 社 『フ
ュ ー ミ ュ ー ジ ッ ク決 定 版 』 で あ る 。 も ち ろ ん 、 こ こで 取 り上 げ られ た 曲 が ヒ ッ ト曲 だ とす る
根 拠 は 確 た る も の で は な い が 、 基 本 集 合 と考 え る こ とに す る。 ま た 、1975年 頃 か ら登 場 した
「
ニ ュー ミ
ュ ー ジ ッ ク 」 と い う呼 び 方 は 、1980年 代 中 頃 か らは ポ ッ プ ス 系 と 区 別 しに く く な っ て い る が2)、 本 稿 で
参 照 した 曲 集 に 従 い 、 ロ ッ クや ポ ップ ス も含 め た も の と 考 え て お く。 た だ し、 曲 集 に は 、 選 者 の 嗜 好 に
よ る た め か 、 最 近 の ロ ッ ク に 見 られ る よ うな 社 会 派 的 な 曲 は あ ま り含 ま れ て い な い よ うで あ る。 今 後 は 、
悉 皆 的 な デ ー タ 収 集 を 行 う必 要 が あ る と考 え て い る。 ち な み に 、 『オ リ コ ン 年 鑑 』 で は 、 日本 製 の ヒ ッ
ト曲 を 、 フ ォ ー ク&ロ
の を フ ォ ー ク&ロ
ッ ク 、 ポ ッ プ ス 、 演 歌 の3種
に 分 類 して お り、 シ ン ガ ー ・ソ ン グ ラ イ ター 系 の も
ッ ク 、 作 詞 家 ・作 曲家 ・歌 手 の 分 業 に よ る もの を ポ ップ ス と 一 応 見 な して い る が 、 結
局 の と こ ろ は 、 発 売 元 の 分 類 に 従 っ て い る との こ と で あ る 。
2.歌
詞 に よる分類
デ ー タ ベ ー ス 化 の た め に 設 定 した 分 類 項 は 、 歌 詞 の 話 者 、1人
称 代 名 詞 、2人
称 代名 詞 、 そ の他 の登
場 人 物 、 歌 詞 内 の 英 単 語 数 、 モ チ ー フ 、 恋 愛 フ ェ ー ズ 、 話 者 の 感 情 、 破 局 の パ ター ン 、 歌 詞 の 時 間 的 方
向 性 、 季 節 、 な ど で あ る。 時 間 的 方 向性 と は 、 歌 詞 の 内 容 が 過 去 に 向 か うの か 未 来 に 向 か うの か 、 とい
っ た 観 点 で 、 筆 者 が 独 自 に 判 定 した も の で あ る。 モ チ ー フ の値 域 と して は 表1に
が 「
恋 愛 」 の 場 合 に は 、 恋 愛 の 進 行 過 程 を 「恋 愛 フ ェ ー ズJ項
で 表2に
示 す も の を設 定 し、 値
示 す よ う に さ ら に細 分 して み た 。
恋 フ ェー ズ
届
人恋 し
かぬ思 い
恋の始 ま り
恋愛賛 歌
日常的愛 情風 景
や り直 し
愛す る決 意
包容 ・誘 導
逃避的
刹那
的愛
愛
モチーフ
若者
恋愛
・希望 の旅 立 ち
若者 ・悲壮決 別 の旅 立
若者 ・苦悩 悲哀放 浪
若者 ・友情激 励慰 め
・多感 な青春
肉親へ の思 い
女性賛 美
反戦
世直 し
悲観
コミカ ル
郷愁
若 い 日の思 い出
若 い 日へ の悔恨
旅情
失意
その他
表1 相手 け合
傷付
の心不
う愛
明
別れ の予感
の瞬 間
別れ の直後
別れ と見送 り
別れ と再 出発
初 な恋 思 い出す
後 生を願
再
日思い 出す
う
再会
そ の他
ニ ュー ミュー ジ ックの
表2 モチ ー フ
一50一
恋 愛 フ ェー ズ
す な わ ち、
特定 の 相手 が い ない
「
人 恋 し さ 」 の 状 態(例
えば
「
秋 で もな い の に 」「あ な た 」)か
ら、
片 思 い な ど の 「届 か ぬ 思 い 」 (「 待 つ わ 」「
恋 の 予 感 」「大 き な た ま ね ぎ の 下 で 」 な ど)を 経 て 、
「
恋 の 始 ま り」 (「シ ル エ ッ ト ・ロ マ ン ス 」「メ イ ン ・テ ー マ 」「シ ー ズ ン ・イ ン ・ザ ・サ ン」)に 至 り、
恋 愛 を謳 歌 す る 「
恋 愛 賛歌 」
(「 白い ギ タ ー 」「RIDE ON TIME」 「世 界 で い ち ば ん 熱 い 夏 」)の
段 階 に 入 る。
恋 愛途 中 には 、
「包 容 ・誘 導 」
(「愛 を 止 め な い でJ「守 っ て あ げ た い 」)
「
逃 避 的愛 」
(「 黒 の 舟 唄 」「闇 夜 の 国 か らJ「ドラ マ テ ィ ック ・レイ ン」)
「
刹 那 的愛 」
(「 き み の 朝 」「み ん な の うた 」)
「
傷 つ け 合 う愛 」 (「 青 春 時 代 」)
な ど 色 々 な 愛 の 形 が あ る。
ま た 、 心 が 一 度 離 れ た 後 「や り直 し」 を 決 意 した り(「 人 生 の 空 か ら」「ガ ラ ス のPALMTREE」)、
過 去 と 決 別 して 現 在 の 恋 人 を 「
愛 す る決 意」 を 表 明 す る 歌(「
ア メ リカ ン ・フ ィー リン グ」「
安 奈 」)
も あ る。 しか し 、 人 の 心 を 繋 ぎ止 め る こ とは 難 し く 、
「
別 れ の 予 感 」 (「 心 も よ う」「追 伸 」「
君 は 天 然 色 」)を
経 て、
「
別 れ の瞬 間 」
「別 れ の 直 後 」
(「順 子 」「
恋 人 よJ「愛 は か げ ろ う」「
涙 の リ ク エ ス ト」)
と言 っ た 破 局 を 迎 え る 。 た だ し、 必 ず し も皆 が 愁 嘆 場 を 演 じ る訳 で は な く 、
鷹 揚 に 相 手 の 去 る 姿 を 「見 送 る」 者 あ れ ば(「
心機 一転
フ レ ン ド」「 「
夢 を あ き らめ な い で 」)、
「再 出 発 」
(「 サ ボ テ ン の 花 」「明 日 に 向 か っ て 走 れ 」「シ ン グ ル ・ア ゲ イ ン 」)
を 健 気 に 誓 う者 も あ る。 時 間 が た て ば 余 裕 を もっ て 別 れ を振 り返 る
「
後 β思 い 出 す 」 歌(「
想 い 出 の 渚 」「12月
の 雨 」「ノ0サ
が あ る一 方 で 、 未 練 た らた ら と 「
再 生 を願 う」 も の(「
イ ド」)
想 い 出 ま く ら」「
迷 い 道 」「星 空 の デ ィ ス タ ン ス 」)、
ま た か っ て の 恋 人 と ゆ く りな く も 「
再 会 」 す る 場 面 を 歌 う歌 も あ る(「SWEET MEMORIES」 「
駅 」)。
以 上 の よ うに 、 恋 の 様 々 な 段 階 に お け る 心 の 機 微 を描 く歌 は 数 多 く 、 ニ ュ ー ミュ ー ジ ッ ク に 占 め る
「恋 愛 」 モ ノ の 比 率 は 大 き い 。 これ ら の 多 くは 、 夏 に 恋 が 生 ま れ て 秋 に 別 れ 冬 に 思 い 出 す 、 と言 う決 ま
り事 か ら逸 脱 し な い。 表3に
3.全
、 以 上 の 分 類 値 を 与 え た デ ー タベ ー ス の 内 容 の 一 部 を 示 し て お く。
体 の傾 向
しか し 、 モ チ ー フ の す べ て が 恋 愛 と言 うわ け で は な く 、 友 情 や 若 い 日々 を懐 古 す る 歌 も あ る。 そ こ で 、
ニ ュ ー ミ ュ ー ジ ッ ク の 時 間 的 な 変 遷 を 捉 え る た め に 、 次 の よ うな5年 毎 の 区 間 、1965年 一1969年 の 第1
期 、1970年
第5期
一1974年 の 第2期
、1975年
一1979年 の 第3期
、1980年 一1984年 の 第4期
、1985年
一1989年 の
に 区 切 り、 発 表 年 に よ っ て 曲 を各 期 間 に 割 り振 っ て マ ク ロ な 傾 向 を 見 る こ と に す る 。 表4は
、ニ
ュ ー ミ ュ ー ジ ッ ク全 体 の 傾 向 を 見 た も の で 、 数 字 は 分 類 に 対 応 す る 曲 数 、 カ ッ コ 内 は 各 期 間 の 総 曲 数 を
母 数 とす る比 率 を%で
示 した も の で あ る。
ま ず 目 に つ く の は 、 英 語 の 歌 詞 を 含 ん だ 曲 、 恋 愛 を モ チ ー フ とす る 曲 、 さ ら に 、 映 画 ・テ レ ビ ド ラマ
主 題 歌 や コ マ ー シ ャ ル ・ソ ン グ と言 っ た タ イ ア ップ ・ソ ン グ が 、 年 を 追 う毎 に 増 加 して い る こ とで あ る 。
モ チ ー フ の 点 か ら見 れ ば 、 第1期
ー ジ ッ クJと
の フ ォ ー ク ・ソ ン グ に か な り見 られ た
い う呼 称 が 登 場 した 第2期
以 降減 少 し
「
若者 」 モ ノは、
、 「恋 愛 」 モ ノ が 主 流 を 占 め て 第4、5期
近 く に 達 し て お り、 ニ ュ ー ミ ュ ー ジ ッ ク の ほ とん どが 恋 愛 を テ ー マ とす る 状 況 で あ る 。
一51一
「ニ ュ ー ミ ュ
に は9割
表3-1 デ ー タ ベー ス の 一 部
一52一
表3-2 デ ー タベ ー ス の一 部
・53
こ うした状 況 と呼応 して、 歌詞 に友 人や 肉親 な ど恋愛 対象 以外 の人物 が 登場 す る曲 の比 率 も急 減 して
い る。
「
若 者 モ ノ」 に 見 られ る よ うな人間 的 な広が りが な く、 「
恋 愛モ ノ」で は 、恋愛 フ ェ0ズ がハ ッ
ピィな状況 では 、僕 と君 、わ た しとあなた 、 な ど二 人だ け の世界 が歌 われ 、二 人g時 空 間距 離 が 開い た
状 況で は 、 あい つ ・あの娘 ・あの 人 な どの 表現 で相 手 を参照 し、他 の人物 は眼 中 にな い わ けで あ る。
「
恋 愛 モ ノ」 が大 勢 を 占め る状 況 は歌詞 の時 間的 方向性 に も反 映 され て いて 、第1期 には 「
若 者 」モ
ノが支 える 「
未 来指 向」 の 曲が 「
過 去指 向」 を上回 っ ていた が 、その 後 「
恋 愛 」モ ノの歌 う 「過去 指 向」
が 「
未 来 指 向」 を圧 倒 す る。 しか し、面 白い こ とに第5期 には再 び 「
未 来 指向 」 が 「
過 去 指 向」 を上回
って い るが 、 これ は後 述す る よ うに恋 愛 モ ノの うちで 「未来 指 向」 が増 加 した こ とに よ る と思 わ れ る。
ただ し 「
過 去 指 向 」 とは 、歌詞 が過 去 だ けまた は現在 を参 照 しっ っ も主 に過 去 に向 か うもの 、
「
未来指
向」 とは、 過去 や 現在 を参照す る もの も含 むが 主 に未 来 に向 か うもの であ る。
時期
総数
若 者モ ノ
恋愛モノ
過去指向
未来指向
1965-1969
42
0
1(2.4}
11(26. 2)
18 (42.9)
11(26.2)
15 (35.7)
1970-1974
82
2 ( 2.4)
fi ( 7. 3)
3 ( 3.7)
11(13.4)
54 (65.9)
33 (40.2)
13 (15.9)
1975-1979
77
7 ( 9.1)
11(14.3)
fi ( 7. 8)
7(9.1)
60 (77.9)
25 (32.5)
16 (20.8)
1980-1984
64
26( 21.7)
2( 3. 1)
12(18.8>
fi ( 9. 4)
56 (87.5)
25 (39.1)
12 (18.8)
1985-1989
37
22 (59.5)
0
16(43.2)
4 (10.8)
32 (86.5)
11(29.7)
15 (4D. 5)
表4 英語歌詞 恋相手以外 N・ 映園 タ
入り
の人物登場 イア ッ プ
ニ ュ ー ミ ュ ー ジ ッ ク 全 体 の 傾 向:()内
図1 図2
16 (38. U
は 総 数 に 対 す る%を
ニ ュ ー ミ ュー ジ ッ ク の 時 間 的 方 向 性(移
示す
動 平 均)
景 気動 向の 一致 指 数(出 典:経 済企 画庁 編 『グ ラフが 語 る 日米 の景気 動 向』 平成6年11月 号)
一54一
こ の 時 間 的 方 向 性 に っ い て 、 も う少 し詳 し く 見 て み よ う。 図1の
いて
「
過 去指 向 」 と 「
未 来 指 向Jの
上 段 に 示 す の は 、5年
間の 期 間 につ
曲 数 を集 計 し 、 そ の 期 間 の 総 曲 数 で 除 した もの を 中 央 の 年 の 値 と し
て 割 り 当 て る と い う 、 単 純 な 移 動 平 均 法 に よ っ て 、1969年 か ら1989年 の 時 間 的 方 向 性 の 変 化 を 見 た も の
で あ る。 図1下
段は、
「
未 来 指 向 」 ÷(「
未 来 指 向 」+「
過 去 指 向 」) の式 に よって 求 めた
向 の 優 勢 度 」 の 移 動 平 均 で あ る。 こ の 折 れ 線 グ ラ フ を 見 る と 、 未 来 指 向 が 優 勢 な 時 期 は1970年
お よ び1985年 以 降 の 時 期 で あ る こ と が 示 され 、 前 述 の よ うな5つ
「
未来指
頃まで、
の時 間 区切 りが ほぼ 妥 当で あ る こと を
裏 付 け て い る と思 わ れ る。
こ う し た 変 化 の 背 景 を 探 る ヒ ン トを 求 め て 、 経 済 の 動 向 を 調 べ て み よ う。 図2に
図1と
は 、水 平の 時 間軸 を
対 応 付 け て 描 い た 景 気 動 向 指 数 を 示 す 。 景 気 動 向 指 数 は 、 景 気 に敏 感 な 経 済 指 標 を選 定 しそ れ ら
の 変 化 方 向 を合 成 す る こ と に よ り得 られ るが 、 一 致 指 数 が50%を
越 え て い る 時 に は 、 上 昇 して い る指 標
が 下 落 し て い る 指 標 よ り多 い こ とか ら景 気 上 昇 曲 面 に あ る と判 断 され る。 図2の
分 が 不 景 気 の 期 間 と され る 。 振 り返 っ て み れ ば 、1970年7月
ハ ッ チ ン グ を 施 した 部
ま で の 「い ざ な ぎ 景 気 」 の 過 熱 を 抑 え る た
め の 金 融 引 き 締 め に よ っ て 生 じた1970年 後 半 か ら1971年 い っ ぱ い の 不 況 、 そ の 間 の1971年._の
シ ョ ッ ク 、1973年10月
1978年12月
の 第 二 次 石 油 シ ョ ッ ク に 対 応 す る 金 融 引 き 締 め か ら生 じた1980年 か ら3年
大 の 不 況 、1985年9月
図2と
図1の
ドル ・
の 第 一 次 石 油 シ ョ ック が 引 き 起 こ した1974年 か ら1977年 に か け て の 断 続 的 な 不 況 、
間 にわ た る戦 後最
の プ ラ ザ 合 意 に よ る 円 高 不 況 、 が 思 い 起 こ され る3)。
未 来 優 勢 の 変 化 と を 突 き 合 わせ て み る と 、 不 景 気 の 時 期 と未 来 指 向 の 優 勢 度 が 低 下 す る
時 期 と が ほ ぼ 重 な る よ う に 見 え る 。 こ の こ と だ け で 、 不 景 気 の 時 期 に は 未 来 指 向 が 弱 ま る 、 と断 言 す る
こ と は 現 時 点 で は 不 可 能 で あ る が 、 今 後 の 分 析 次 第 で は 、 歌 詞 の 時 聞 的 方 向 性 と経 済 動 向 と の 相 関 に つ
い て 知 見 が 得 られ る 可 能 性 は あ る だ ろ う。
4.恋
愛モ ノの傾 向
ニ ュ ー ミ ュー ジ ッ ク の 主 な モ チ ー フが 恋 愛 で あ る の で 、 以 下 で は 恋 愛 モ ノ に 注 目 して み よ う。 表5に
は 、 恋 愛 フ ェ ー ズ 、 時 間 的 方 向 性 、 話 者 の 感 情 の 各 分 類 項 に つ い て 主 な 値 の 変 化 を 示 し た。 恋 愛 フ 苫 一
ズ の 点 か ら は 、 恋 愛 賛 歌 ・日常 的 愛 情 風 景 な どハ ッ ピ ィ な 曲 は 第1期
か ら 時 代 が 下 る に つ れ 漸 減 して い
る の に 対 し、 別 れ の 瞬 間 や 別 れ の 直 後 を描 い た ア ン ハ ッ ピ ィな 曲 は第2,3、4期
3つ の 時 期 に は 「
過 去 指 向 』 がf未
来 指 向 」 を 上 回 っ て い る し、 話 者 の 感 情 の 点 か ら見 て も 「
未 練 ・淋
時間的方向性
恋 愛7ヱ ー ズ
時期
総数
に 多い。 また 、 この
恋 愛 賛歌 ・ 別れの瞬間
日常 的
別れの直後
後 日
思 い出 す
過去指向
zc>〉. n
8 (リ. 4)
未来指向
話者の感情
未 練 ・淋 し
懐 か しさ
さ ・悲 し さ
愛 情風 景
1965-1969
18
6 (33.3)
1970-1914
54
16 (29.6)
5( 9.3)
13 {24.1)
1975-1979
60
13 (21.1)
20 (33.3)
8 {13.3)
19(31.1)
1980-1984
56
7 (12.5)
10(17.9)
6(10.7)
25 (リ. 6)
1985-1989
32
6 (18.8}
i(3.1)
2( 6.3)
1 O t31.3)
表5 Zc>〉.サ
「恋愛 モ ノ」 の傾 向;()内
一55一
25 (46.3)
3 (16.7)
6(11.1)
10 (16.7)
9(16. 1)
3 (16.7)
6 (33.3)
18 (33.3)
6(11.1)
20 (33.3)
5 ( 8.3)
14 (25.0)
5 ( 8.9)
13 (40.6)
は総 数 に対す る%を 示す
3 ( 9.4)
4 (12.5)
し さ ・悲 し さ 」 が 強 い 。 と こ ろ が 第5期
に は 別 れ そ の も の を 歌 う 曲 が 減 少 し、 話 者 の 感 情 も 「
懐 か し さ」
が 主 流 と な り、 未 来 指 向 が 過 去 指 向 を 上 回 る とい う変 化 を示 す 。 図3に
は 、 図1と
同 じ方法 で求 め た
「
恋 愛 モ ノ」 の 時間 的 方向性 の 時 間変化 を示す 。
表5を
見 る と、
「恋 愛 モ ノ 」 の 時 間 変 化 は 、 第1期
2、3、4期
は 過 去 指 向 が 多 い も の の 悲 しみ の 少 な い 時 期 、 第
は 過 去 指 向 が 極 め て 強 くま た 悲 嘆 の 感 情 が 激 しい 時 期 、 第5期
と もに 未 来 指 向 の 大 き い 時 期 、 の3つ
は 感 情 が マ イ ル ドに な る と
の 傾 向 に 大 別 で き そ うで あ る。 あ る い は 、 第2、3、4期
の 表 現 が ス テ レ オ ・タ イ プ で あ っ た が 、 第5期
は別れ
に は 恋 愛 の 機 微 を描 く 曲 が 増 え た 、 と 言 え る の か も 知 れ
な い。 例 え ば 、 別 れ て い く相 手 の 生 き 方 を 認 め て 送 り 出 す 、 と い う心 に 余 裕 の あ る 別 れ を 描 く 「
別れ と
見 送 り」 フ ェ ー ズ の 歌 が 、 第5期
に は 多 く見 られ る(表3-2参
照)。
5期 に は 、 男 が 振 られ るパ タ ー ン が 増 加 して い る 。 この よ うに 、 第4期
ま た 、表6に
示 す よ う に 、 第4、
以 降 には 、恋 愛 の風 景が 多 様化
して い る と 言 え そ う で あ る 。
これ ら が 、 経 済 動 向 、 社 会 情 勢 や 風 俗 、 ミ ュ ー ジ シ ャ ン や 周 辺 ス タ ッ フ の 世 代 交 代 、 な ど の 現 象 と ど
の よ う に 関 連 して い る の か も興 味 深 い 考 察 課 題 で あ る 。 例 え ば 、1981年5月
1982年10月
開 始 『俺 た ち ひ ょ う き ん 族 』 、
開 始 『笑 っ て い い と も』 、1985年4.月 開 始 『タ ケ シ の 元 気 が 出 る テ レ ビ』 な ど 一 連 の 元 気 印
の テ レ ビ番 組 、1988年7-9月
放 映 『抱 き し め た い 』 に 始 ま る トレ ン デ ィ ー ドラ マ が 描 く恋 愛 風 景 、1989
年2月 開 始 『い か す バ ン ド天 国 』 が き っ か け と言 わ れ る若 い ミ ュ ー ジ シ ャ ン の 台 頭 、 な ど は 、 ニ ュ ー ミ
ュ ー ジ ッ ク の描 く世 界 に 大 き な影 響 を 与 え て い る こ とが 予 想 さ れ る。
図3 「
恋 愛 モ ノ』の 時 間的 方 向性(移 動平 均)
男が 振 ら 女 が 振 ら
時期
総数 れ る ・裏 れ る ・裏
切 られ る 切 られ る
表6 「
恋 愛モ ノ」 にお け る
振 られ る男女
1965-1969
18
0
0
1910-1914
54
1
1
1975-1979
60
1
3
1980-1984
56
11
5
1985-1989
32
4
0
5,お
わ りに
本 稿 で 試 み た 分 析 は 、 デ0タ
ソ0ス
が 限 られ た も の で あ る上 に 、 恋 愛 経 験 が 豊 富 とは 言 い 難 い 男 で あ
る筆 者 の 独 断 に よ る モ チ ー フ 分 析 に 基 づ い て お り、 歌 に 描 か れ た 微 妙 な 恋 心 を 捉 え き っ て は い ま い 。 ま
た 、 世 相 ・風 俗 や 経 済 現 象 との 相 関 に っ い て の 分 析 も不 十 分 で あ る 。 今 後 は 、 悉 皆 的 な デ0タ
収 集 、海
外 ポ ッ プ ス か らの 影 響 へ の 目配 り 、 若 い 女 性 の 目に よ る モ チ ー フ の 見 直 し、 ミ ュ ー ジ シ ャ ン の 世 代 の 分
析 、 ミュ ー ジ シ ャ ン 同 士 の 影 響 、 さ ら に 、 メ ロデ ィ0の
コー ド進 行 の 分 析 な ど を含 め て 考 察 を 深 め 、 別
の 機 会 に 報 告 した い 。
注
(1)久 保 正 敏
「歌 謡 曲 の 歌 詞 に 見 る 旅 一 昭 和 の 歌 謡 史 私 論 一 」
『国 立 民 族 学 博 物 館 研 究 報 告 』15巻4号
pp. 943-986 1991 a
(2)『 オ リ コ ン 年 鑑 1984』pp.474-475。
(3)竹 内 宏 『昭 和 経 済 史 』 筑 摩 書 房 1988。
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