企業に衝撃走る BEPSのCFC税制見直し

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すべての所得に実質分析 !?
企業に衝撃走る
BEPS の CFC 税制見直し
OECD(経済協力開発機構)が進める BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸
食と利益移転)プロジェクトの行動計画 3(外国子会社合算税制の強化)の公開討議草案の
内容に対して企業に衝撃が走っている。特定外国子会社等のすべての所得について事業活動
に伴う能動的所得か事業活動の伴わない受動的所得かを実質分析により判定する必要に迫ら
れ、日本の CFC 税制の実務が 180 度変わる可能性があるからだ。このまま行動計画 3 が予定
どおり今年 9 月に完了した場合には、近々日本でも OECD の勧告に沿った税制改正が行われ
る可能性が高い。日本の大手企業からはすでに OECD の提案では「実務が回らないのでは」
といった懸念の声も挙がっている。また、今回の見直しは、大企業だけでなく、海外子会社
がある中小企業も対象になってくるだけに今後の改正動向には留意しておくべきといえよう。
特定外国子会社等のすべての所得を判定、事務負担が増大に
OECD は 4 月 3 日、BEPS 行動計画 3 の公
で合算の有無を判定するという建付けである
開討議草案を公表した(5 月 1 日まで意見募
ことには変わりない。一方、公開討議草案で
集)
。BEPS 対策の観点から効果的な CFC 税
は、日本の制度とは異なったアプローチが提
制(外国子会社合算税制)の見直し案を提示
案されている。取引アプローチ
(Transactional
している。なかでも企業に衝撃が走っている
approach)と呼ばれるものであり、事業体で
のが「CFC 所得の定義」の見直しである。
はなく、個々の所得に着目し、実質分析を行
まだ勧告に至っていない検討段階の案だが、
なった上で、BEPS の懸念がある所得(①配
これが実現すれば、日本の CFC 税制の仕組
当、②利子及び他の金融所得、③保険所得、
みが根本から覆される恐れがあるからだ。
④販売及び役務提供の所得、⑤ロイヤルティ
日本の場合、特定外国子会社等(CFC:
及び他の IP(知的財産)所得)のみを合算す
Controlled Foreign Company) は、 適 用 除
るものである。
外基準を満たさない場合、その所得は能動的
BEPS 対策として効果的だが……
か、受動的かに関係なくすべて合算されるこ
確かに、問題のある所得のみを合算すると
とになる。いわゆる事業体アプローチ(Entity
いう意味で、理論的には BEPS 対策としては
approach)だ。もちろん、適用除外基準を満
効果的とみられる取引アプローチだが、導入
たした場合でも資産性所得の合算課税がある
された場合には大きな問題がある。前述した
という意味では、日本の制度は純粋な事業体
とおり、すべての所得について 1 つ 1 つどの
アプローチではないが、まずは事業体ベース
ような内容の所得かを判定しなければなら
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No.592 2015.4.27
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【参考】 日本の外国子会社合算税制(CFC税制)の概要
制度の対象外
適用除外判定
次の全て要件を満たす
① 事業基準
主たる事業が株式の保有等でな
いこと(※)
(※)被統括会社の株式保有を主たる事
業とする統括会社は除外
いずれかを
満たさない
③ 管理支配基準
本店所在地国において事業の管
理、支配及び運営を自ら行って
いること
資産性所得
あり
全て満たす
資産性所得
なし
(※)
卸売業を主たる事業とする統括会社
に係る被統括会社は除外
合算課税なし
非関連者基準(卸売業など7業種)
(※)
主として関連者(50%超出資)
以外の者と取引を行っていること
適
用
除
外
④ 所在地国基準(下記以外の業種)
主として所在地国で事業を行っ
ていること
【資産性所得】
①株式等の配当
所得・譲渡益
②債券等の利子
所得・譲渡益
③使用料
等
資産性所得の合算
② 実体基準
本店所在地国に主たる事業に必
要な事務所等を有すること
会社単位の合算課税
◆納税義務者の範囲
イ 直接及び間接の保
有 割 合が10 % 以 上
である居 住 者・内 国
法人株主
ロ 直接及び間接の保
有 割 合が10 % 以 上
である同族株主グル
ープに属する居住者・
内国法人株主
租税負担割合が20%未満の国
又は地域に所在する外国関係会社
特殊
関係者
(個人・
法人)
特定外国子会社等
居住者
又は
内国法人
外国関係会社
同族株主
グループ
居住者・内国法人等が合計で50%超を直接及び間接に保有
居住者
又は
内国法人
(出典:財務省(※一部税制改正を反映)
)
ず、事務負担が増大し、課税当局との解釈を
適用除外となっている法人であっても、少な
巡るトラブルが生じる恐れがあるからだ。
からず影響を受ける可能性が生じている。
現行の日本の CFC 税制であれば、特定外
国際的な調和は困難
国子会社等に該当したとしても事業基準など
そもそも CFC 税制については、各国間と
の要件をすべて満たせば適用除外とすること
りわけ米国と欧州において制度の隔たりが大
ができる。その後、適用除外になったもので
きく、OECD として統一的な基準を示すこ
も、資産性所得については合算されることに
とは容易ではないと見られている。日本と同
なるが、前述した④販売及び役務提供の所得
様に事業体アプローチを採用するフランスで
のような広範な所得分類はなく、また、1 つ
も、産業界から公開討議草案の内容に強い疑
1 つの所得について「実質分析」を行うこと
問の声が上がっている。あるべき税制に関す
もない。しかし、公開討議草案が提案する取
る国際的な合意がない中で OECD から勧告
引アプローチは、どこまでを実質分析の対象
がなされれば、各国間の税制の違いが、さら
とするのか不透明であり、現在 CFC 税制の
なる二重課税を発生させることも予想される。
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No.592 2015.4.27
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