H26栃木県青年農業者海外派遣研修の様子

農業後継者育成確保基金事業
雄 飛
Italy
公益財団法人
Tochigiken
栃木県農業振興公社
Agricultural
URL http://www.tochigi-agri.or.jp
Public
Corporation
E-Mail [email protected]
Netherlands
France
平成 26 年度
栃木県青年農業者海外派遣研修
Tochigi's Young Farmer Overseas Study
平成26年度 栃木県青年農業者海外派遣研修報告書
<参考>
平成26年度 栃木県青年農業者海外派遣研修事業スケジュール
雄飛
目
次
1
2
3
4月
1日
平成26年度栃木県青年農業者海外派遣研修実施要領決定
4月
1日
関係機関への実施通知
4月
1日~
7月
1日
6月13日
参加募集期間
参加申し込み締め切り
7月16日
研修生選考会
7月16日
研修生決定
公益財団法人栃木県農業振興公社 理事長あいさつ
平成26年度栃木県青年農業者海外派遣研修団 団長あいさつ
8月
6日
第1回事前研修会
8月29日
第2回事前研修会
役員及び研修生紹介
9月19日
9月19日
第3回事前研修会
結団式
あいさつ
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
目で見る海外派遣研修・・・・・・・・・・・
1
3
4
4
研修日程
・・・・・・・・・・・・・・・・
9
5
研修行程
・・・・・・・・・・・・・・・・
10
6
研修日誌
・・・・・・・・・・・・・・・・
11
9月29日
9月29日~10月
(10日間)
10月 8日
11月
8日
出発式
海外派遣研修実施
帰国式
7日
事後研修会
解団式
平成26年度(第27回)
栃木県青年農業者海外派遣研修報告書
7
班別研修レポート
・・・・・・・・・・・・
20
8
個別研修レポート
・・・・・・・・・・・・
28
雄 飛
発
行
日:平成27年3月
編集・発行:公益財団法人栃木県農業振興公社
(農政対策部青年農業者対策担当)
9
副団長レポート
・・・・・・・・・・・・・
〒320-0047 栃木県宇都宮市一の沢2-2-13
TEL 028-648-9515
42
印
刷:株式会社
アートプレス
海外派遣研修参加者に期待する
公益財団法人栃木県農業振興公社
理
事
長
吉
沢
崇
当公社が主催する「平成26年度栃木県青年農業者海外派遣研修」が大きな成果を収め
無事帰国することができました。
この研修は、今回で27回目の開催となりますが、農業後継者育成確保基金事業の一環
で行っており、明日の本県農業を担う青年が海外の農業事情等について調査・研修をする
ことにより、国際化の進展に対応し得る優れた担い手として、これからの地域農業の発展
に向けて活躍することを目的に実施しております。
今年度は、9月29日から10月8日までの10日間、オランダ・イタリア・フランス
の3ヵ国に総勢16名を派遣しました。
今年度は、オランダ・イタリア・フランスの3ヵ国を巡りました。オランダにおいては
「大規模施設園芸のトマト経営・鉢花経営・アールスメール花市場、いちご経営」の視察、
「酪農・乳製品農家」では農業後継者との意見交換を行いました。イタリアでは「大規模
稲作経営」、「都市近郊の大規模有機野菜経営」を視察するとともに「スローフード」を
研修しました。更にフランスでは「全国青年農業経営者センター」でEUにおける農業政
策を学び、「郊外の有機畜産農家」の実状を調査しました。3か国での研修は、それぞれ
の国で農業を担っているトップランナーの経営者に直に接し、その農業経営の実態や経営
者マインドを学ぶことを主眼に、EUにおける農業政策の現状や「スーパーマーケット」
に訪れ農産物の流通・販売状況等を学ぶことを内容に実施しました。
また、研修に参加した団員の皆さんには、事前研修を通してそれぞれの目的や課題を明
確にして研修に臨んで頂きましたので、団員一人ひとりがそれぞれに大きな成果を持ち帰
る事ができたのではないかと思っております。
現在、農業をめぐる情勢はTPP交渉に代表されるとおり、国際化が避けて通れない状
況にあり、農業者自身が国際感覚を身に着け、世界に通用する農業経営を展開していくこ
とが求められています。
このような中、研修は10日間という短い日程でありましたが、意欲と希望に満ちた本
県農業の担い手である青年たちが、その柔軟な感性で変化を続ける世界の「食と農」の最
先端の実態を目の当たりにし、日本とヨーロッパの違いを肌で感じるとともに、改めて日
本の「食と農」を見直し、新たな経営目標やその実現に向けてのしっかりとした行動計画
が出来たものと確信いたしますとともに、10日間寝食を共にし築いた絆は、今後の人生
において大きな財産となったことと思います。
最後に、この研修事業の実施に御尽力を頂いた関係機関・団体、関係者の皆様に心から
感謝を申し上げますとともに、参加した団員の皆さんが、地域農業のリーダーとして、ま
た、世界に通じる農業経営者として県内各地で活躍されますよう御期待いたします。
-1−1−
海外派遣研修に参加して
平成26年度 栃木県青年農業者海外派遣研修団
(公益財団法人 栃木県農業振興公社常務理事兼栃木県なかがわ水遊園長)
団
長
髙橋 啓一
9月29日から10日間「平成26年度栃木県青年農業者海外派遣研修団」の団長とし
て、15名の団員と共に、ヨーロッパの農業情勢について調査・研修を行い、大きな成果
を収めることができました。旅行に先立ち、大きな飛行機事故やエボラ出血熱騒ぎがあり
ましたので、無事羽田空港に着いた時は安堵しました。
今年度は、オランダ・イタリア・フランスの3ヶ国において、経営、生産、流通、販売
及び農政など優れた事例を調査・研修し経営者等と意見を交換して参りました。
オランダでは、広大なガラス温室で最先端技術を駆使した園芸栽培と独自の販売方法を
取り入れている「大規模施設園芸2戸(トマト経営・いちご経営)」
、2haの施設で十数
種類と多種にわたる花を家族労働主体で生産している「中規模花卉農家」と世界最大規模
の「アールスメール花市場」を視察しました。また、夫が搾乳した牛乳で妻がチーズを加
工生産するなど夫婦分業体制で6次産業に取り組む酪農家(乳牛65頭)では、若い後継
者と意見の交換を行いました。
イタリアでは、320haの敷地で大型機械を駆使した土地利用型農業のほかペンショ
ンやレストランなど多角経営を行っている「大規模稲作農家」、ミラノ郊外で環境保全に配
慮し多彩な野菜を有機農法で生産し直売している「都市近郊型野菜農家」を視察するとと
もに、ミラノ市内のレストランで「スローフード」についても学びました。
フランスでは、パリ郊外で自由放牧を取り入れ鶏・羊などを飼育しながら卵・食肉・チ
ーズ・蜂蜜なども製造し直売をしている「有機畜産農家」
、日曜日の朝に開催される有機農
産物中心の「マルシェ」を視察・調査するとともに、「全国青年農業経営者センター」にお
いては同国の農業政策を学ぶととも意見を交換しました。
参加した団員各自がそれぞれ目的をもってこの研修に臨んでおり、10日間の限られた
期間でありましたが、青年の柔軟な感性でヨーロッパの先進事例を見て肌で感じて、日本
の農業・農村や「食と農」について改めて見つめ直し、今後の各自の進むべき方向等も見
えてきたのではないかと思います。この研修で得たことは、団員一人々にとって大きな財
産となり、今後の農業経営に役立ち地域農業の発展にも寄与するものと確信いたします。
また、10日間寝食をともにしながら団員同士で語らい・助け合いながら信頼の絆を深
め、今後の人生において長きにわたり付き合える仲間を得たことは、この研修のもう一つ
の大きな成果ではないかと思います。
最後に、この研修事業の実施に御尽力をいただきました関係機関・団体、関係者の皆様
に心から感謝申し上げますとともに、団員各位が研修成果を生かしながら農業の担い手と
して世界に通用する農業経営を目指し、県内各地で活躍されるよう期待いたします。
−2−
平成26年度栃木県青年農業者海外派遣研修 役員及び研修生紹介
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
菊地 正美
髙橋 啓一
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
副 団 長 :栃木県農業振興公社
団 長 :栃木県農業振興公社
㻌
農政対策部
青年農業者対策担当GL
常務理事兼
なかがわ水遊園長
㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌㻌 飯 岡 学
㻌 班長:宇都宮市
㻌 水稲・麦・アスパラガス
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌 川又 将長
㻌 副班長:大田原市
㻌 水稲・麦・飼料作物・和牛
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌
澳原 大介
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
記録:矢板市
㻌
㻌 水稲・いちご
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
藤田 剛史
㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌㻌 益 子 巧
㻌 班長:那須塩原市
トマト・ブロッコリ・ホウレンソウ
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
吉澤 康晴
㻌 副班長:宇都宮市
㻌 水稲・トウモロコシ
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌 㻌 㻌川
㻌 㻌 㻌澄
㻌 㻌聖
㻌 人
記録・写真:真岡市
㻌
㻌 水稲・にら・玉ねぎ
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌 㻌 橋本 貴之
㻌 班長:真岡市
㻌 水稲・いちご
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌 田野井仁史
㻌 副班長:鹿沼市
㻌 水稲・花き(輪菊)
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌 㻌 㻌渡
㻌 㻌 㻌邊
㻌 㻌亮
㻌 太
記録:大田原市
㻌
㻌 トマト
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
菊 地 望
写真:大田原市
写真:那須塩原市
水稲・麦・トマト・露地野菜
水稲・麦・そば
−3−
㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌 㻌 中村 順一
㻌 班長:上三川町
㻌 水稲・いちご・玉ねぎ
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌 小玉 裕貴
㻌 副班長:益子町
㻌 水稲・麦・大豆・そば
㻌㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌
㻌 㻌人
㻌㻌見
㻌 㻌 㻌公
㻌 㻌也
記録・写真:那須塩原市
㻌
㻌水稲・飼料作物・レンコン
㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
㻌
㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌
㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌
目で見る海外研修
大規模いちご農家
アールスメール花市場
ダム広場
チーズ加工農家
−4−
大規模トマト農家
大規模鉢花農家
オランダ風車
アムステルダム運河クルーズ
−5−
最後の晩餐が描かれている
「サンタマリア・デッレ・グランツィエ修道院」
ドゥオモ大聖堂
ビットリオ・エマヌエル2世アーケード
大規模稲作農家
大規模有機野菜農家
スローフード研修
−6−
エッフェル塔
パリの朝市(マルシェ)
凱旋門
大規模有機畜産農家
全国青年農業経営者センター
−7−
ヨーロッパの農業情勢
(第1回事前研修)
班別研修課題の設定
(第2回事前研修)
フランス語講座
(第3回事前研修)
出発式
帰国式
研修成果の報告会
(事後研修・解団式)
結団式
−8−
平成26年度 栃木県青年農業者海外派遣研修10日間 日程表
月日曜 国
1
2
3
発
着
地
名
日 アグリプラザ
9/29 本 成田空港
(月)
成田空港
アムステルダム
9/30
(火)
10/1
(水)
時 刻
適
要
食事
発
着
発
着
05:45 専用バス
バスにて成田へ(友部経由)
08:30
10:30 KL-862 空路アムステルダムへ出発(直行便)
15:00 専用バス
ホテルへ
アムステルダム泊
大規模農家視察へ
アムステルダム滞在 7:30
専用バス
【午前】トマト農家
(VAN DER LANS TOMATOES)予定
【午後】花卉農家
(NICO VAN OS)予定
市内ビール工場視察
レストランにて夕食
アムステルダム泊
オ
専用バス アールスメールの花市場視察へ
ラ アムステルダム滞在 7:00
【午前】いちご農家
ン
(KALTER AARDBEIEN) 予定
ダ
【午後】酪農・乳製品生産農家
(KAASBEORDERIJ KOOPMAN)予定
ホテルにて夕食
アムステルダム泊
アムステルダム滞在 9:00
4
交通機関名
10/2
(木)
専用バス
アムステルダム半日市内視察
ダム広場、運河クルーズなど
市内
発 14:30
オランダ料理の昼食後、空港へ
アムステルダム 発 17:00 KL-1621 空路ミラノへ
ミラノ
着 18:40
専用バス
ホテルへ
昼:機内
夕:レストラン
朝:ホテル
昼:レストラン
夕:レストラン
朝:ホテル
昼:レストラン
夕:ホテル
朝:ホテル
昼:レストラン
夕:ホテル
ミラノ泊
ミラノ
5
滞在 7:30
10/3
(金) イ
タ
リ
ア
18:30
ミラノ
6
パリ
8
9
07:15
10/4
(土)
ミラノ
パリ
7
発
着
滞在
10/5
(日)
フ パリ
ラ
ン
10/6 ス
(月)
10/7
(火)
専用バス
パリ
ホテル
空港
パリ
滞在
ミラノ近郊の大規模農家視察へ
【午前】稲作農家
朝:ホテル
(TENUTA CASTELLO RICE)予定
*問題点・後継者探し等の議題について懇談 昼:レストラン
を予定(昼食もここで摂ります)
【午後】大規模野菜農家
(AZIENDA AGRICOLA CORBARI)予定
夕:レストラン
夕食はスローフードのレストランにて
ミラノ泊
専用バス
ミラノ半日市内視察へ
朝:ホテル
サンタ・マリア・デレ・グラツィエ教会、スカラ座
ビットリオエマヌエル2世ア-ケ-ド、ドゥオモ等 昼:レストラン
ミラノ風カツレツの昼食
15:50 AF-1013 空路、パリへ
夕:ホテル
17:20 専用バス
着後、ホテルへ
パリ泊
パリの朝市を視察
08:00
専用バス
凱旋門、エッフェル塔、シャンゼリゼ通り等を 朝:ホテル
主に車窓見学
ルーブル美術館へ
昼:レストラン
12:00
レストランにて昼食
午後は自由行動
夕:各自
パリ泊
8:45
専用バス
視察研修へ
郊外の大規模農家訪問へ
朝:ホテル
(FERME DE LA NOUE)予定
全国青年農業経営者センター訪問
昼:レストラン
フランスの農業関連についてレクチャー
パリ市内スーパー視察へ
レストランにてさよなら夕食会
夕:レストラン
パリ伯
発 07:45 専用バス
空港へ
着 08:30
発 10:50 AF-272 空路帰国の途へ(直行便)
朝:ホテル
昼:機内
機内泊
10
10/8 日 羽田
(水) 本 羽田
宇都宮
着 06:00
発 07:00
着 10:30
朝:機内
専用バス
宇都宮へ
着後解散
*現地の状況により出発時間等は変更になる場合があります。
−9−
平成26年度栃木県青年農業者海外派遣行程
ヨーロッパ地図
− 10 −
研修日誌
9月29日(月) 晴れのち曇り
○日本出発
早朝5時30分、出発式の後アグリプラザから
専用バスで成田に向かう。
10時30分成田空港からKL862便でオランダ、
アムステルダム・スキポール空港へ、直行便
で現地時間15時に到着。そこから専用バスで
ホテルへ、現地時間15時30分に到着。
日本との時差7時間で実質12時間のフライト
により行程は比較的楽であった。
アムステルダム・スキポール空港(現地到着)
9月30日(火) 曇り時々晴れ
○オランダ
◎オランダについて
オランダ アムステルダムの街並と路面電車
ネーデルランドの由来は「低い土地」とい
う意味。国土面積は九州とほぼ同じ大きさで、
そのうち46%に当たる192万haが農用地である。
ライン川下流の低湿地帯に位置し、国土の
1/4が海面より低い干拓地である。
半径500㎞圏内にフランス、イギリス、北欧
を含んだ1億6千万人の消費人口を抱え、ヨ
ーロッパ経済の中心地となっている。街並み
は17世紀の世界貿易で栄えた黄金時代の面影
− 11 −
が今も残っている。
オランダの農業は、平坦肥沃な地勢や豊富
な水資源により、園芸・畜産を中心とした農
業が発展している。また、農産物の一大輸出
国であり、農産物輸出額は893億USドルで、米
国に次ぐ世界第2位(2011年)である。
主要な農畜産物は、花き類、じゃがいも、
トマト、キュウリ、牛肉、チーズ等である。
園芸は天然ガスを利用した施設園芸が盛ん
であるほか、広大な農地を利用した球根生産
が盛んに行われている。また、花きの生産や
流通の環境負荷低減への取り組みを認証する
MPSがいち早く取り入れられている。
---------------------------------------【オランダ・メモ】
○モデルハウスの様なオランダの住宅
オランダではガーデニング人気が高くて、
専門ショップやグッツが充実している。その
影響もあってか車窓から見たオタンダの住宅
(庭)は皆、モデルハウスの様に美しかった。
○オランダ人は大きい
今回訪問した国では特にオランダ人が足が
長く大きかった。ホテルや空港等の洗面台や
トイレはオランダ人の体格に合わせて作って
あり「踏み台」がほしいと思った(日本人に
は子供用の便器がフィットする)。
---------------------------------------◎大規模トマト生産農家
<VAN DER LANS TOMATOES>
家族経営でありながら会社組織として運営。
今回の視察先に32ヘクタール、ゼーランドに
20ヘクタールの農場を所有。積極的にイノベ
ーションを行い、採算性トップを目指してい
ます。フルーツトマトを年間通して生産し、
特に房どりトマトの生産に力を入れています。
収穫したトマトはグループのパック専門工場
へ出荷されますが、ハウス内から自動ロボッ
トカートで運んでいます。オランダでは特に
冬季の日照時間が短いので補光を行う必要が
あり、ハウス内の温度調整にばかりではなく、
補光のためにも多量の電力が必要となります。
当農場では14機のCHPを備え、エネルギー
の効率化に努めています。
CHPシステムとは、Conbined Heat and
Powerの略。熱と電力を同時に供給し、発電時
に発生した二酸化炭素を栽培にも取り入れる
システムです。発電時に発生した湯をハウス
の加温に使用し、電力は補光に使用します。
また、二酸化炭素はハウス内で栽培促進に使
用します。
到着すると視察の前に、外部からもたらさ
れる新たな病害虫の侵入を防止するための保
護衣と靴カバーが渡され着用した。
6haのトマト温室はさすがに大きく、トマ
ト工場そのものだった。収穫作業は暖房パイ
プをレールにした台車を使い、1房に5玉つ
いたトマトを房ごとに収穫しその場で化粧箱
に詰めている(出荷調整の手間がかからず極
めて省力)。
視察したトマトは昨年の11月11日に定
植したもので、茎の長さは10mを超えており、
今年10月中に収穫は終了予定である。
10aの反収は90t(かつては65~68t)と極
めて多い。出荷量は週2~3万ケース(1ケ
ース5kg)にもなり、主にイタリアに出荷し
ているとのことだ。なお、青いトマトはトル
コに出荷するそうで、食文化の違いによって
需要も異なっている。
般の会社が労働者を雇用する形態であった。
販売単価は、現在は60セント/kgくらいと
のことだが、年間の平均では70セント/kgく
らいでないと経営は厳しいとのことであった。
◎大規模花き生産農家(鉢花農家)
<NICO VAN OS>
この花農家は、アムステルダムより70㎞、
海岸に近いプールデイクにある花壇用、観賞
鉢用の花十数種類を栽培している花農家です。
柔軟性をモットーに顧客の相談に応じ包装
に至るまで細かな注文に対応するように心掛
けています。カンパニュラ、ゼラニウム、プ
リムラ、菊、バレンチノ、ポインセチア等々
多種にわたる色とりどりの花をご覧頂けます。
高設・底面給水法によるスプレーマムの育苗の様子
複合環境制御による房どりトマト栽培の様子
栽培法は、ロックウール栽培で、複合環境
制御によりトマトに最適な環境(温度、湿度、
施肥、炭酸ガス施用)づくりを行い、受粉は
マルハナバチを使用している。また農薬を最
小限に抑えるため天敵昆虫を利用している。
暖房は天然ガスを利用し、1㎥当たりのガ
ス燃料から最大の効果をあげる高エネルギー
管理(コジェネレーション自家発電)で暖房、
電気、二酸化炭素を賄い、余剰な電気は売電
している。
また、温室の半分3haは16,000LXの人工照
明を行い栽培の安定化を図っている。
環境負荷低減のための取組も積極的に行っ
ており、水は雨水を集め貯留したものと地下
40mの地下水を活用しているほか、栽培廃液
も約30%を再利用している。
6haのトマト栽培にポーランド人など外国
人労働者のほか、繁忙期には労働派遣会社を
利用し約30人を雇用している。1時間当たり
の賃金は15~20€とのこと。オランダでは、一
− 12 −
◎ビール工場を見学
ハイネケンの本社工場を見学し、ハイテク
技術を駆使したビール造りの歴史等を学んだ。
生ビールがうまかった!!
ハイネケン本社の工場前にて
10月1日(水)
○オランダ
晴れのち曇り雨
◎アールスメール花き市場
<FLORAHOLLAND AALSMEER>
アムステルダムより13㎞のアールスメール
(オランダ語でウナギの湖の意味)にある世
界最大の花市場です。1968年に栽培業者の協
同組合として誕生し、市場の建物は組合会員
の共同所有となっております。総面積は8万8
千平方㎞でサッカーグラウンドの125倍に相当
します。オランダには7つの花市場がありま
すが、取引シェア45%を占めております。
取引の80%は輸出されますが、空港に近いと
いう地の利便性をいかして、競り落とされた
商品は直接空港に運ばれます。このため各国
の検疫官が市場内の配送センターに常駐して
おり、日本からも農林水産省より2名派遣され
ております。
この会社はアールスメールの市場を含め6
ヵ所(内1ヵ所はドイツ)を所有している。
この様な動きの中、今後オランダにおける
花の生産は減少するとの予測から、国内産は
高級品に、安いものは外国産にとの棲み分け
が進むとのことであった。
コンピューターで競りをするバイヤー
ここでセリ落とされた花は、ドイツを筆頭
にイギリス、フランス、中東などに輸出され
ている。
輸送はユーロ圏内は主にトラックだが、こ
の市場はスキポール空港に近く、ロシア、ア
メリカ、日本等に空輸されている。
台車に積まれた大量の切り花
この市場は会員制で運営され4,000軒の組合
員で組織され、市場で働く人は1,800人、輸出
業者やその他の業者を含めると建物全体で12,
000人が働いている。
年間の売り上げが40億€と世界最大の商業取
引場の一つとなっている
この花市場には5つの競り会場があり、内
4つは切り花用で1つは鉢物用である。競り
に使われる電子掲示盤は全部で13個あり、5
つの会場のバイヤー用座席は合計2千席ある。
競りは6時半から始まり、競り下げ方式で
1電子掲示盤当たり1分間に15件処理され、
全商品が競り落とされるまで続く。
出荷される花の情報は予め農家がメールで
入力している。セリの掲示盤には農家の信頼
性を4段階、花の質を3段階で評価したもの
を併せて掲示している。また、遠隔地でもネ
ットでセリに参加できることから、直接競り
会場に来るバイヤーは近年減少している。
競りにかける花の動向は、オランダ産のも
のが全体の75%で、近年イスラエル、ケニア
等からの輸入と合わせて、オランダの生産者
がアフリカ等に農場を持ちそこから輸入する
花が多くなっている。
− 13 −
◎大規模イチゴ生産農家
<KALTER AARDEBEIEN>
元は20haの敷地でチコリやアンディーブ等
の野菜栽培をしておりましたが、将来の経営
状況を見越し、2002年に1haのビニールハウス
を購入していちご農家に発展しました。2011
年にはアントレプルナー(起業家の意味)・オ
ブ・ザイヤーを受賞しています。現在ビニー
ルハウスで12万株のいちごを栽培しておりま
す。栽培品種はELSANTAで 品質も味
も保ちやすく大量生産に適しています。さら
に新しいプロジェクトとして、2010年3月より
「キッチン・ガーデン」というショップを併
設オープンし、自家製イチゴジャムやオリジ
ナルグッズの販売もしています。
イチゴ自販機の上に巨大イチゴ
大型ハウスの入り口に、売店「キッチン・
ガーデン」があり、自家で栽培しているイチ
ゴや果物のほか、地域で採れる野菜類やチー
ズ、ジャムなどの加工品が販売される地域の
直売所となっている。この大型ハウスは既存
の施設がある土地が住宅地となるため、新た
に移転整備したもので、今年で3年目の生産
とのこと。面積は1.6haとまさに大規模な施設
である。
イチゴの収穫は3月中旬~翌1月中旬まで
と10ヵ月にも及び、スーパーや果実店、レス
トラン等に出荷しているが、国内だけでなく
イギリスやドイツ、デンマークへも販路を広
げている。
栽培は高設栽培で、収穫しやすい高さ(日
本の高設栽培より少し高い)に設定しており、
特徴的なのは、20㎝程度の底の無い正方形の
プランターにイチゴ4株を植え、ロックウー
ルの上に乗せて栽培している。
栽培に当たっては、受粉にミツバチとマル
ハナバチを併用し、着果の安定や奇形果の発
生対策を行うとともに、炭酸ガスを使うこと
によって、1割ほどの増収に繋げている。
収量は収穫期間が長いこともあり、10a当
たり13tを超えている。
ここでも環境に配慮し、液肥用に雨水を利
用したり、地下2,000mにある73℃の地下水を
保温に利用している。
地下温水管利用の高設いちごポット栽培
収穫作業における雇用管理は、各人の収穫
物の重量を量るとともに、収穫物の痛みや着
色状況をチェックし作業能率と品質確保を行
っている。しかし、作業の速さなど能力によ
る賃金差別はつけていないとのことであった。
出荷用のパックは顔写真入りの生産者情報を
掲載し、PRと責任の所在を明確にしている。
◎チーズ工房を持つ酪農家
− 14 −
<KAASBOERDERIJ KOOPMAN>
1971年創立、家族経営行っている酪農農家
です。1985年以降は、夫婦二人でチーズ作り
をメインに行っています。ご主人は牛の世話
や乳搾り、奥様はチーズバックを温め、流れ
てくる牛乳からチーズを作っています。乳牛
65頭を所有し牛乳の生産量は年間50万リッタ
ーで、毎日100㎏のチーズを生産しています。
ゴーダとエダムチーズの両方を生産している。
この農場は、ほぼ日本と同規模の飼育頭数
の乳牛から搾乳し、生乳とチーズづくりを行
っている。草地面積は45haで生草主体にトウ
モロコシを栽培している。
貯蔵室の中でチーズの熟成中の様子
オランダでは肥育頭数は糞尿処理の関係か
ら牧場(草地)の面積で飼育頭数が決められ
ており、この農場では飼育している牛すべて
で搾乳をし、育成牛は分業で委託している。
この農場で製造・販売されるチーズは、ブ
ランド商品として各方面から引っ張りだこで
ある。1工程1,000ℓの生乳から180kgのタンパ
クや脂質がとれそれがチーズとなるが、その
加工技術はもちろんのこと原料の生乳づくり
が大切であるとのことであった。今、農の6
次産業化が注目を集めている中で参考となる
事例であった。
10月2日(木) 晴れ
○オランダからイタリア
◎アムステルダム市内視察
アムステルダムは人口82万人のオランダ
の首都である。アムステルダムは北のベネチ
アとも呼ばれ、100km以上の運河と90の島々、
1,500の橋から成り立っている。放射線状に張
り巡らされたこの運河は、世界遺産にも登録
されている。
街並みは、17世紀の建造物がその姿をとど
め、その煉瓦造りの古い建物と現代建築の建
物が見事に調和し美しい街並を形成している。
町の中心はダム広場で、近くに王宮がある
ほか多くの博物館や美術館があり、交易の中
心都市として繁栄してきた。
発する。縦列駐車するときはサイドブレーキ
を引かないのだとか。
ミラノ市内の街並みと石造りの建物
オランダ
---------------------------------------◎大規模土地利用型(稲作)農家
<TENUNTA CASTELLI>
イタリアのお米の産地として知られるVerc
elli地区(ミラノより80㎞)にある農場です。
1883年より家族経営を行っており、全320haの
敷地の内、250haで米を栽培しています。敷地
内には歴史のある館(結婚式等に利用)、ペン
ション、レストランがあります。当日の昼食
を敷地内のレストランでいただきながら説明
を受けました。昼食メニューは、前菜盛合せ
とお米3種(カルナローリ種は、高級種で一般
のレストランではほとんど提供されていませ
ん)の食べ比べをしました。日本のリゾット
と変わりませんが、チーズが濃厚でやや癖が
あり好みが分かれます。
イタリアの米栽培の90%をイタリア北部
で栽培している。今回の研修先では5人兄弟
で多角経営や分業を行っており、この農場の
主は稲作部門を任されて、ジャポニカ種のカ
ルナローリ米を作付している。アルプスの雪
解け水を利用して3月頃から播種(直播)し、
9月には収穫開始となります。
アムステルダムの運河クルーズにて
その後、アムステルダム・スキポール空港
からイタリア・リナーテ空港に向け17時発の
KL1621便に搭乗し、予定通り18時40分ミラノ
に到着したが、渋滞の影響でホテルには20時
過ぎの到着となった。
10月3日(金) 晴れ
○イタリア
◎イタリアについて
イタリア共和国は、国土面積は日本の4/5で、
内農地は51%である。
イタリア農業は、平均耕作面積が6.1haとE
Uの中でもギリシャに次いで小さい零細な経
営構造を持つ。そのため、EU共通農業政策
を基本としつつも、農業構造の改革がすすめ
られている。
主要農作物は小麦のほか、オリーブ、ぶど
う、果実・野菜である。米の生産は北部のロ
ンバルディア平原を中心にEU全体の5割相
当を生産している。
また、果実は輸出産業としての位置を確保
しており、ワインの生産量は世界第一位で消
費量もフランスと並んで多い。
---------------------------------------【イタリア・メモ】
○ミラノでは路肩縦列駐車が当たり前
ヨーロッパは石造りの古い街並みを大切に
している。そのため、車社会が進む中駐車場
の確保が出来ず、都市部では自動車が路肩に
所狭しと縦列駐車されている。車間距離がほ
とんど無いため、車を使用するときには、前
後の車をコツコツと十分広まるまで押して出
430馬力の大型汎用コンバイン
大規模機械を何台も所有しおり、トラクタ
ーは160馬力クラスを6台、クローラートラク
− 15 −
ター(キャタピラ式タイヤ)1台にGPS機能のレー
ザーベーラーを取り付けて耕運・整地をして
種まきを行っているとのことでした。また、
コンバインは汎用型の430馬力のモンスター機
械で、価格は1台5,000万円とのことでした。
収量は1ha当たり4~5トン、他の品種は
1ha当たり7~8トンの収穫量としていま
す。栽培面積の20%(50ha)を有機米とし
て作付し、値段は1トン当たり600ユーロ
と高値取引がされている。通常は、籾で業者
販売し、値段は1トン当たり300ユーロで
ある。また、7年物の古米も取引がされてい
たり、わらは敷料としてロールべーラで販売
されています。
自然農法に取り組んで20年、年間50~60
品目の野菜等を生産している。農産物直売所
を経営し、大消費地ミラノに近い立地条件を
活かして根強いリピータの引き合いを受けて、
年間3,000万円程度の売上を誇っている。
この経営を支えるメンバー3人で共同経営
者の取り交わしがされている。
◎スローフードレストラン研修
<TRATTORIA MIRTA>
スローフード運動発祥の国で、昔ながらの
イタリア料理を楽しめるミラノでの人気のあ
るレストランです。スローフードに関しての
レクチャーを受けながら及び夕食をお楽しみ
いただきます。
スローフードとは、ファストフードやファ
ミリーレストラン等のチェーンが世界中に広
まって行く中で、その土地の伝統的な食文化
や食材をを守ろうという運動、または食品全
体を指します。
1986年、イタリアのピエモンテ州ブラでス
ローフード協会が発足しました。モットーは、
①郷土料理や質の良い食品を守ること。②質
の良い食材の生産者を守ること。③消費者に
味の啓蒙を進めていくこと。
ここでは理念と伝統的な料理や食材を守り、
それらを提供する地元の小農家を守るという
ものである。その理念に基づきスローフード
協会(現在150カ国で1,300支部を組織する)
が形成されている。今回訪問したレストラン
はミラノ市内の繁華街にあるが、オーナーが
協会の役員をしており、地方にある郷土料理
や食材を発掘し提供している。
メニューは健康を考慮し地域の農家や食材
を大切に料理したものであった。
カントリーエレベーター規模の籾貯蔵庫
◎都市近郊型大規模有機野菜農家
<AZIENDA AGRICOLA CORBARI>
1978年に創設の有機農園で十数種類の野菜
と苗の栽培及び直売を行っております。ミラ
ノ近郊(20㎞)に位置しております。農園主の
アントニオは大自然を配慮し雑草や害虫など
も含めて生態環境の全体バランスを極力干渉
しない考えを貫きながら無農薬栽培方法を研
究し野菜を生産しています。レタスやほうれ
ん草、ルッコラ、ラディッシュチコリ、ジャ
ガイモ、トマト等、多種にわたる野菜を 4
ヘクタールの土地で生産をしています。
地元食材を利用した料理
10月4日(土) 晴れ
○イタリアからフランスへ
葉物野菜を中心にハウス内で育苗管理
− 16 −
◎ミラノ市内視察
ミラノは人口130万人のローマに次ぐイタリ
ア第2の都市である。過去200万人程の人口が
あったが、近年人々は郊外へと移住が進み、
ドーナツ化現象となっている。
日中は400万人の人々が集まる商業、金融、
ファッションの町となっている。
2015年EXPOが開催されることから、高
速道路等のインフラ整備が急ピッチで行われ
ている。
また、歴史的建造物が多く、レオナルド・
ダ・ビンチの「最後の晩餐」が描かれている
「サンタ・マリア・デレ・グラッツイエ教会や
世界最大のゴチック建築「ドウオーモ大聖堂」
はミラノのシンボルで多くの観光客が見学に
訪れている。
多く、中央部及びスイスやイタリアとの国境
付近には山地、山脈がある。気候は、地中海
性、海洋性、大陸性気候の3種の気候型に分
類される。
フランスは、EUの農業総生産額の19%を占
めるEU第一の農業国である。
国土面積に占める農用地面積(29,555千ha)
の割合は54%、耕地面積はEU全体の21%を
占めている。
---------------------------------------【フランス・メモ】
○歴史と繁栄を物語るパリの建造物
パリ市内には18世紀以前の歴史的な建造物
が多く原型をとどめている。巨大で当時の権
力者たちの繁栄と資金力の凄さが伺える。
○フランスではひさしのテーブルがおしゃれ
街の中のカフェやレストランにある「ひさ
し」の下には丸いテーブルが並び、パリ市民
は寒い中でもここでコーヒーやワインをゆっ
たりと楽んでいる。
----------------------------------------
10月5日(日)
○フランス
曇りのち晴れ
◎マルシェ(有機農産物中心の市場)
<MARCHE RASPAIL>
1989年から続く有機農産物中心の市場です。
有機栽培であることを認証された《AB》ラベ
ルの商品を扱い、無農薬、有機野菜、手作り
化粧品、果物、チーズ、パン、菓子等が購入
できます。BIO(ビオ)とは、EU圏では
オーガニックの事を指します。ABマークと
は、アグリカルチャー・ビオロジック(無農
薬有機農法)の略でフランス政府認証マーク
です。厳しい基準を取得することで、付加価
値が生まれます。また、☆印の葉っぱを模っ
たマークはEU圏共通マークとのことです。
でいて多くの人で賑わっていた。
ミラノのシンボル「ドゥオーモ大聖堂」
最後の晩餐・
「サンタ・マリア・デレ・グラッツィエ教会」
その後、ミラノリテーナ空港から15時50分
発AF1013便でパリのシャルル・ド・ゴール空
港へ。約2時間のフライトでホテルへは19時30
分に到着。
◎フランスについて
フランス共和国の国土面積は54.7万k㎡、日
本の約1.5倍の大きさで6,400万人が暮らす。
出生率は2を超えている。平野部は64%と
朝市マルシェの様子
− 17 −
パリには80ものマルシェ(市場)があり、
建物内の常設市場と道路や広場を利用して一
時的にたつ屋外市場の2つのタイプがありま
す。今回は街の中心部の屋外市場のマルシェ
を視察したこともあり、様々な店が建ち並ん
販売されている物の単価が安いことや、バ
ラ売りや量り売りが殆どで、庶民の買い物の
場となっている。
特に果物は全体的に安く、過剰包装もなく
並べてあり、日本のような高級果実のイメー
ジはなかった。
◎有機畜産農家
<FERME DE LA NOUE>
1989年に設立された有機畜産農家で、パ
リ近郊(60㎞)に位置し、野菜農場の他に広
大な敷地を利用して自由放牧を行っています。
鶏、豚、羊などを飼育し、卵、食肉、チーズ、
蜂蜜の製造と直販も行っています。ファーム
ステイの受け入れも行っていて自家製の新鮮
な食材による美味しい食事も定評があります。
15年前に農地を借りてスタート。
(牧場面積
は44ha、畑・果樹園1ha)有機畜産の認証を取
得(維持するのが大変とのこと:病気は自然
治癒)し、ヤギ56頭の乳で高級チーズを製
造する他に、羊120頭(ラム肉用)、120羽の養
鶏、採卵鶏30羽、牛2頭、馬1頭、ウサギ
少々を飼育している。年間売上は、3,000万円
程度である。
◎パリ市内視察及び自由行動
フランスの日曜日は会社(農場)等は殆ど
が休みとなり、マルシェの後はルーブル美術
館を視察し午後は班別の自由行動となった。
各班ごとに凱旋門やエッフェル塔、シャン
ゼリゼ通りなどフランスの文化、歴史、美術
品など見るとともに、地下鉄にもトライし団
員たちはパリの街並みを満喫した。度胸のあ
るものは、競馬での凱旋門賞や本場サッカー
の試合を見学するなどチャレンジ精神旺盛で
あった。
有機畜産農家のヤギの搾乳移動の様子
◎全国青年農業経営者センター
<CENTER NATIONAL DES JEUNES AGRICULTEURS>
1961年にカトリック青年農業会の力で全国
青年農業経営者センターが設立しました。青
年農協経営者たちの交換の場として作られま
したが、1976年よりセンター後援の援助金に
より現在までに2000件もの青年農業経営者の
増加を見ています。また、パリ市民へ農業へ
の親近感を与える催し物としてシャンゼリゼ
通りで行われる麦畑祭りを開催なども企圃も
しています。
2012年度、フランス領を含める地域、県、
地方に23箇所の窓口を持ちメンバー数50,000
名、35歳以下の青年農業家数100,000名となっ
ています。
【目的】
①青年農業家の保護、育成、代表をする事。
②コミットメントパワーとトレーナーの可能
性を提供する事。
③専門職としての農業家へのアクセスを促進
パリのシンボル「凱旋門」
パリのシンボル「エッフェル塔」
10月6日(月) 曇りのち雨
○フランス
− 18 −
する事。
④農村という環境を促進する事。
⑤農業家としての未来ビジョンを共有する事。
話しの中では、農業者の世代交代を支援す
ることを目的に挙げている。現在、農業者は
減っている。80万人(うち、経営体が50万
人、女性は25%を占めている)の農業者を見
ると耕種農家が比較的、裕福で畜産が厳しい
状況下に置かれている。また、零細化と大規
模化に2分する傾向にある。70%は小作農家
が占め、30%の自作農家が大規模傾向(500~
600ha規模)にある(平均は57ha程度)。
現在の共通農業政策の取組状況であるが、
政策は、2本の柱で実施されている。
1の柱は予算の83%を穀物と畜産の単一農
家に直接支払いをしている。その金額は1ha
当たり380€である。
2の柱は予算の17%で農村振興のために支
払われており(内容は環境、経営維持、就農
支援)その金額は1ha当たり70€となっている。
この予算はかなりの金額で、農業分野の予
算拡大は一部の国民から批判の声が上がって
いるが、農業の役割が理解されており関係者
はそれほど問題にしていないとのこと。
日本の農業政策もEUの共通農業政策を見
本として取組んできたものが多く、その意味
でもこれまでの取組の成果や今後の政策の方
向を注視していく必要があると感じた。
ヨーロッパ「さよならパーティー」の様子
10月7日(火) 曇り
○フランスから日本へ
ヨーロッパでの研修全日程を修了し、バ
スは一路シャルル・ド・ゴール国際空港へ。
空港で最後のお土産を買い、軽い食事をし
た後10時50分発、AF272便に搭乗した。
羽田空港へ約12時間のフライトと研修の疲
れで多くの団員は機内で深い眠りについた。
10月8日(水)
○日本
晴れ
日本時間で朝6時、羽田空港に到着。団員に
多少の疲れもみえたが、無事帰国できたこと
への安堵感がみられた。
久しぶりの日本の地での最初の食事は東北
道佐野SAであったが団員の殆どがラーメン
を注文した。
10時にはアグリプラザに到着。多くの職員
に迎えられ帰国式を行った後解散となった。
写真21:全国青年農業経営者センターでの意見交換
◎最後の晩餐
研修も終了し、帰国を明日に迎えた夕食は
「さよならパーティー」として会費を少し徴
収し研修の思い出を語り合った。
いつしか芽生えた仲間意識は団員の心の垣
根を取り払い、大変盛り上がった。帰国まじ
かで、団員が漏らした言葉は「日本に帰りた
くないなー」「おれも~」妙に意見が一致した。
− 19 −
盛大な出迎え受けた帰国式
班 別 研 修レポート
「ヨーロッパ各国農業の現状と日本との違い」
1班
1.国政に ついて
(1 )オランダ
技術開発を重視した予算配分をしており、農家
保護よりも研究開発を重視し農業予算の 22 %が
研究開発に投入されている。研究開発拠点を設置
し 一 貫 し た 研 究 体 制 を 行 う 拠 点 を 構 築す るた め
に、国内の農業大学と公的農業試験場を集約し、
ワーゲニンゲン大学を中心とするワーゲニンゲン
URを設立した。
これにより、ワーゲニンゲン大学が高度な研究
開発とマネジメント人材育成を担い、ワーゲニン
ゲン地域にワーゲニンゲン大学を中心に民間企業
の研究機関が集積したフードバレーが形成される
ことで、消費者ニーズから基礎研究まで一貫した
研究開発が可能となった。
(2 )イタリア
州 に よっ て 補 助 金 の 額 は 違 う が 有 機 農 業 に 多
く の 補 助金 が 出 さ れ て い る 。 地 域 の 伝 統 ・ 環 境
の特色を生かした食品生産の認証制度PDO
( 保 護 指定 原 産 地 の 呼 称 ) 、 P G I ( 保 護 指 定
地 域 の 表示 ) の 表 示 制 度 、 イ タ リ ア 独 自 の D O
Cワ イン(統制原産地の呼 称)の奨励。
飯岡
学
・
川又
将長
澳原
大介
・
藤田
剛史
を図ったこと、コストをしっかりと削減してい
くといったプロフェッショナル化が進んだた
め。また、農地として利用可能な平野が広がる
土地環境も大きな一 因となった。
そういった過程の中で機械化についていけな
くなった高齢農業者や小規模農家が農業から離
れ、より一層大規模 化が進んだようだ。
(2)大規模になったことによる利点と問題点
利点としては何より単純に収量を増やせると
いうことと、それに見合う分の機械を導入しや
すくなるという利点がある。そのことで作業も
より効率的にすることが可能となり、また同一
作物でも時期をずらして年間を通して収入を見
込めるといったこと が可能になっていた 。
問題点としては、何よりリスクが大きくなる
ことである。機械や新しいものを導入してそれ
が失敗だったときは規模が大きいほど非常に大
きな痛手となる。そのためこういったリスクに
ついてしっかりと向き合うことが重要になって
くると感じました。また、大規模化が可能な土
地となると都心部から離れやすいという面もあ
り、流通の面で不便もあったりするようであっ
た。
(3 )フランス
農 業 方針 法 と い う 政 策 で あ り 共 通 農 業 政 策 の
2003 年改 革や 2005 年に行 われた欧州連合の拡
大 、 加 速す る 市 場 の 自 由 化 協 議 な ど の 農 業 が お
か れ た 環境 の 変 化 に 鑑 み 、 農 業 者 の 経 営 安 定 化
及 び 農 業の 国 際 的 競 争 力 の 強 化 を 目 的 と し て 、
農 業 経 営の 法 人 化 促 進 、 農 業 収 入 の 強 化 、 消 費
者 ニ ー ズへ の 対 応 、 そ し て 環 境 配 慮 型 農 業 の 促
進を 主要な施策として規定 している。
具 体 的に は 、 安 定 し た 農 業 経 営 の 確 立 及 び 農
作 業 の 効率 化 、 雇 用 創 出 の た め に 法 人 化 を 推 奨
する ような内容である。
2.大規模 農家について
( 1 ) どの よ う に し て 大 規 模 化 を 可 能 に し た か
機 械 化と コ ン ピ ュ ー タ ー 管 理 に よ っ て 効 率 化
(3)大規模農家の ライフスタイルにつ いて
規模が規模なので、特別に大きなピークを作
らないこと、特別暇な時期を作らないことで、
年間を通してバランスよく仕事しているように
− 20 −
感 じ た 。た だ 、 ハ ウ ス 園 芸 以 外 の 作 物 で は そ う
も い か ない も の も 当 然 あ る の で 、 雇 用 人 数 を 増
や し た りし て 対 応 し て い る よ う で あ っ た 。 基 本
的 に は そこ ま で 日 本 と 変 わ ら な い の か な と も 感
じた 。
3.気候に ついて
(1 )日本の気候
日 本の気候は宇都宮のも のである。
平均気温は、最低が 9.2 度で、最高が 19.5 度
であった。年間を通して見ると 1 月が 2.7 度で最
も低く、最高が 8 月の 30.5 度であった。降水量
は 124.4mmであった。気候は東日本気候に属して
いるが、寒暖の差が大きく、冬は空気が乾燥して
いて夏は湿度が高く、年間を通して比較的雨量が
多い。
(2)オランダの気候
アムステルダムの平均気温は、最低が 6.7 度
で、最高が 13.4 度であった。年間を通して見る
と、12 月が最も低く最高が 7 月 8 月の 22 度であ
っ た 。 降 水量 は 51.5mmで日 本 の 方が 2.4 倍多
い。気候は西岸海洋性気候である。偏西風の影響
で比較的温暖な気候である。また、農業部門では
日本に比べて日照時間が短いので、施設栽培に適
していると思う。
った 。 降 水量 は 20.8mmで 日 本の 方 が 3.2 倍 多
い。気候は西岸海洋性気候。温暖で雨量が少なく
パリの気候は東京の四季とほぼ同じである。国土
が広いので地方により気候が異なっている。農業
部門では酪農などが盛んである。
4.流通について
(1)販売ルートについて
自分で販路を開拓したイチゴ農家。全て直売所
で売り切る野菜農家。
この二通りのルートが多かった。これらはその
農産物に付加価値やある程度のブランド力がない
とできない。また一種類では集客面に限りがあた
め、近所の複数の農家が団体となり野菜や加工品
を販売するケースが多い。日本で言うと直売所の
スモール版である。全て農協に販売を任せる農家
は今回みられなかった。
(2)農産物加工について
イチゴ農家では、自家製イチゴジャムを作って
自宅前の直売所で販売していた。アイスも販売し
ていたが、外部製品だった。同園のイチゴを入れ
た生イチゴアイスなど作れば、さらに購買効果が
あるのではないかと思った。
畜産農家ではチーズを作り、イチゴ園と同様に
自宅前の直売所で販売していた。値段は同じだが
味を 8 種類ほど作り消費者に選ぶという楽しみを
作る工夫をしていた。さらに消費者に楽しんでも
らうために、チーズの製造工程や牛の乳搾り風景
が、売り場から見えるようにガラス張りにした
ら、親子でも楽しめる売り場になるのではないだ
ろうかと思った。
ヨーロッパでも 6 次産業化は進んでいた。外部
委託より自家加工が多かった。自宅販売での消費
が主であり、加工品を販売店に卸すところはなか
った。
(3)イタリアの気候
ミラノの平均気温は、最低が 8.4 度でm最高が
17.1 度であった。年間を通して見ると、12 月 1
月が 0 度で最も低く、最高が 7 月の 29 度であっ
た。降水量は 67.8mmで日本の方が 1.8 倍多い。
気候は地中海性気候。国土が南北に細長く、気候
は温暖で四季もあります。農業部門では施設栽培
よりも稲作などが多く栽培されている。
(4)フランスの気候
パリの平均気温は 9.5 度で、最高が 16 度であ
− 21 −
「ヨーロッパの農業」
2班
1.視察概要
視察した農家・協同経営農場は計 7 ヶ所でその
概要は以下の通り。
(1)オランダ
①大規模トマト農家経営概要
家族経営でありながら会社組織として運営して
いる。農場は 32ha、視察先以外に 20haを所有し
ている。コンピューター管理、機械化を進め効率
化を図っている。販売会社やパッキング会社を経
営、出資を行って人材派遣業をするなど雇用にも
力を入れている。
②花農家経営概要
花壇用、観賞用の花を数十種類栽培している。
面積は 1.9haの中規模。既存のハウスを買い取る
方法で経営面積を拡大している。幅広い顧客のニ
ーズに対応できるように努めている。競合性が高
まってきている今、単価が上がらないため低コス
トに努めている。
橋本
貴之
・
田野井
渡邊
亮太
・
菊地
仁史
望
水田の水量や傾斜などにこだわりコンピューター
で管理をしている。
②野菜農家経営概要
1978 年から農場主は大自然に配慮し雑草や害
虫なども含め生態環境に極力干渉しない考えを貫
きながら完全有機栽培を行っている。数十種類の
野菜と苗の栽培と直売を行っている。有機栽培で
使用が認められている肥料や農薬も使用しないで
完全有機無農薬のため、病害虫に耐性を持った作
物になる。
(3)フランス
①有機畜産農家経営概要
1989 年に 15haの農場を買い開墾。3 頭のヤギ
と 5 頭のヒツジから出発。44haの広大な敷地を利
用して自由放牧を行っている。鶏、羊、豚、ヤギ
などを飼育して、卵、食肉、チーズの製造と直売
を行っている。予防接種なども基本的に行わない
ため、強い家畜となる。
③いちご農家経営概要
元は 20haの敷地で野菜等を栽培していたが、2
002 年にいちご農家に発展。雇用の関係上コンピ
ューター管理や栽培施設の工夫で労力の軽減を実
現している。市場以外にもスーパーなどの幅広い
顧客を持つことや、敷地内での直売、いちごのブ
ランド化で経営を伸ばしている。その他にも食育
する畑もあり幅広く活動している。
④酪農(チーズ農家)
家族経営で行っている酪農農家。チーズをメイ
ンで作っている。チーズの種類はエダムチーズ、
ゴーダチーズの定番の物や、クミンやニンニク入
りなどの消費者が好むチーズも作っている。
(2)イタリア
①稲作農場経営概要
1883 年より家族経営。全 302haの内 250haでお
米を栽培している。年間 1000 トンの収量がある。
2.視察研修を通しての考察
視察先のほとんどで、環境に合った栽培経営と
経営コストの削減を努力をしていた。
◇例えば大規模トマト農家では、気候の関係で曇
天が多いため、通年での出荷ができるようLEDナ
− 22 −
トリウムランプを利用した日照のコントロール、
CHP(熱と電力を同時に供給し、発電時に発生し
たCO2 を栽培に取り入れるシステム)を導入する
ことで電力は補光に使用し、CO2 は栽培促進に使
用している。発電時に出た湯はハウス内に張り巡
らされた温水管を通し、ハウス内の加温に使用し
ていた。また、労働者の個人データまで取ってい
てノルマが終わらなかった人にはアドバイスをし
て労働力のばらつきも無くそうとしている。
ンが多く含まれており、5 ~ 6mmくらいの粒の大
きさがイタリアで好まれるという。栽培方法や水
田の管理としては、日本のような田植えや代掻き
といったことはせずに、まず水田を平らにするた
めにプラウ、ロータリーで耕起したあとにレーザ
ーレベラーを利用し、トラクターで幅 6mの均す
機械を牽引して均平をとり、水を入れた後に直播
で橎種すると言っていた。水は全長 83km標高 30m
のカブールという灌漑用水を使っており、秒/110
3
cm溜めることができると言っていた。収穫前の 8
月半ばには水を抜いてしまい、収穫には 430 馬力
もあるコンバインで収穫する。これらの経営のほ
かにも敷地内には、結婚式場等に利用されている
館やペンション、レストランといった生産以外の
部門も経営していた。このようなスケールの違っ
た大規模な経営を見ることができて、非常に良い
刺激を受けることができた。
◇最後に、このような研修の機会を与えて下さっ
た栃木県農業公社をはじめ、各関係機関の皆様、
同行して下さった団長、副団長及び団員の皆様、
視察先の皆様に御礼を申し上げるとともにこれか
らの新しい農業を改革していくためにご協力お願
いいたします。
◇オランダのイチゴ農家では 1.7haの連棟ハウス
に天上からワイヤーで吊された台にプランターを
並べ、ドリップチューブによる水耕栽培を行って
おり、プランターの土は主にヤシガラを使用して
いた。日本でも水耕栽培は多いが日本では腰の高
さにプランターを設置するのに対して、オランダ
はプランターの高さが顔位のところにあり、収穫
時に目線のところにイチゴがくるように計算され
ていた。
◇ハウス内の温度管理は暖房ではなく地熱を利用
した 73 度の温水をパイプに通し、隣のキュウリ
ハウスを経由することにより水温を適温の 40 度
にし、さらにその後 35 度まで下がったお湯を種
の発芽に利用していた。燃料を使用しないで 3 種
類のハウスの温度管理を無駄なくかつ、環境への
配慮と効率化と従業員の負担低減を感じ取れた。
◇イタリアの大規模土地利用型農家(稲作農家)
では、1883 年から家族経営を行っており全 320ha
の経営面積の内、栽培面積 250haで水稲の栽培を
している。栽培品種として、ジャポニカ種のカロ
ナローリという米を栽培していて形は丸くデンプ
− 23 −
「ヨーロッパ農業と日本農業の比較」
3班
1.オランダ
(1)環境、気候や土壌について
環境、気候で日本と大きく異なるのは日照時間
の違いだ。ほとんどの施設で補光を行っている。
また、1 日の天気が晴れ、曇り、雨と変わりやす
いのも特徴だ。今回の視察先は大規模施設なので
天候に作業が左右されることがない。しかし、露
地栽培だと仕事の段取りを組むのが難しい気候で
ある。
(2)経営状況、雇用、流通について
経営状況は大きく 2 つに分かれる。1 つは日本
と同様に家族経営でその中に雇用を入れていると
ころと、経営者に雇われる形で生産者がいるとこ
ろだ。後者の方だと、栽培面積に対しての人数が
決まっている。日々の 1 人 1 人の仕事量を管理し
ている為必要な人数だけ雇用することができる。
また人材派遣会社を自社で持ち、他の隣国から労
働者を集い雇用している。この点はヨーロッパな
らではの仕組みだろう。
流通に関しては、自社便を持っているところが
ほとんどであった。また、日本の様に集荷場に持
ち込むのではなく、圃場まで集荷に来てもらって
いた。
益子
巧
川澄
聖人
・
吉澤
康晴
(3)日本との違い
今回の視察先は大規模施設栽培で作物の栽培を
管理し、同じ品目を周年で出荷している。施設で
の作業のために計画的に栽培できる。そのせいか
労務管理がしっかりされていた。先にも述べた
が、栽培面積に対する作業人数が決まっている。
それだけでなく 1 日の仕事量も決まっていた。農
場ではなく工場に近い雰囲気であった。その為に
余分な経費も減らせるし、また生産効率も上がっ
ている。
一方で投資のリスクを考えると、家族で経営し
ているところは必ずしも大規模化の流れに乗れる
わけではない。また大規模施設園芸が全国的に広
まって来た為に、伸び悩みが見られるのが現状
だ。施設が大規模な分コストも多くかかる。その
ため、暖房を利用するのに地熱やガスを利用した
り、トマトやイチゴはホルモン剤ではなく蜂を利
用したりと、コスト削減の工夫も見られた。
2.イタリア
(1)環境、気候や土壌について
環境や気候についてはあまり日本と変わらず、
大きく異なるのは日照時間と変わりやすい天気
で、イタリアの大規模稲作農家では、冷害の被害
もあるようで、少し肌寒い印象を受けた。
− 24 −
(2)経営状況、雇用、流通について
多くの農家では、家族経営でその中でアルバイ
トなどの雇用を入れ経営しています。稲作農家で
は総面積 320ha、多くの農機具を所有し 5 人のパ
キスタン人を雇っていた。
流通に関しては自分たちの販売ルートを持って
おり、自分で集荷場に運ぶのではなく、圃場に運
送会社が集荷に来ていた。
土壌は特に日本と変わらないようであった。
(3)日本との違い
日本との違いはやはり規模が一番にあげらる。
規模が大きい分仕事が大雑把になると思っていた
が、実際は会社組織のようなしっかりとした農業
経営をしていた。
また、大規模な経営が広まった為これ以上は伸
び悩んでいるという現状を話していた。施設が大
きい分かかるコストも大きく、それを考えるとリ
スクがあると感じた。
3.フランス
(1)環境、気候や土壌について
環境、天気予報もあまりあてにならないほど、
天気が変わりやすい。降水量は少ない。気温は日
本と比べると少し肌寒い印象を受けた。
(2)経営状況、雇用、流通について
フランスの有機畜産農家では、広大な敷地にヒ
ツジ、ヤギ、鶏などを飼育していた。また、その
ヤギのミルクを使いチーズなどの生産、販売をし
ていた。
雇用については家族が主体となっていた。
流通については有機畜産ということで指定の場
所に持って行くことが決められており、コストと
時間がかかるとのこと。
4.まとめ
今回オランダ、イタリア、フランスと 3 カ国に
渡り視察を行った。日本とは違う点や日本より優
れている点も多くあったが、日本の方が優れてい
る点も多く見られた。「ヨーロッパで良いもの」
が必ずしも「日本でも良いもの」とは限らない。
また、その逆もある。大切なのは一方的な情報で
物事を判断するのではなく、様々な視点から情報
を取り入れ、自分たちの農業経営に対して良いも
のなのか悪いものなのかも見極められる能力だろ
う。
最後に今回の研修を行う上で多くのご支援やご
協力をして頂きました。今回の研修で得た経験や
知識を活かすも殺すも私次第だと思います。ご支
援頂いた方々の想いに答える為にもより一層精進
していこうと思います。
(3)日本との違い
日本の畜産は、主に肉牛や乳牛がメインだが、
視察先では牛の飼育はしていなかった。代わりに
様々な種類の家畜を飼育していた。ヨーロッパで
はヒツジやヤギの肉、加工品も頻繁に食す為需要
が 高 ま っ て い る 。 ま た 、 有 機 に 対 す る意 識が 高
く、肉や加工品の需要が高まっている。
− 25 −
「ヨーロッパの農業経営」
4班
中村
順一
人見
公也
・
小玉
裕貴
1.生産、栽培方法
今回オランダ、イタリア、フランスの三ヶ国を
視察し、それぞれの農家で特徴のある栽培に取り
組んでいた。
や、代掻きといった水を田に入れてからの作業は
行わず直播で作業していることが挙げられる。ま
た日本のように新米という感覚はなく 7 年物のお
米もあるそうだ。
◇まずオランダで訪れた大規模トマト農家では 1
2.5haの農場でトマトを栽培していた。フルーツ
トマト(カクテルトマト)や房取りトマトが主に
生産されている。
この農家の主な特徴としてCHPシステム(Conbi
ned Heat and Power)が挙げられる。このCHPシ
ステムとは熱と電力を同時に供給することが可能
なシステムのことで、熱はお湯を作りだしパイプ
を通じてハウスを加温することができ、電力はハ
ウス内の補光に用いられる。オランダは冬になる
と日照時間が短いことが特徴であり、トマトを通
年収穫するために補光が必要である。またこのシ
ス テ ム で 発 電 さ れ た 際 に 二 酸 化 炭 素 が排 出さ れ
る。この二酸化炭素はハウス内の栽培促進に利用
されていた。このことから、化石燃料の使用を減
らし、低コストで環境への負荷をできるだけ減ら
すシステムであることが分かった。
同 じ く オ ラ ン ダ の イ チ ゴ 農 家 で は 、地 熱を 利
用してお湯を作りだしパイプを通してハウスを加
温していた。しかし 1.7haのハウス全域にこのパ
イプを使っているのではなく、コストが高いガス
で暖房を行う区画もあった。いずれはパイプを通
してコスト削減を目指したいと言っていたため、
トマト農家と同じく低コストで環境を考えた経営
内容となっていた。
◇オランダで視察した花農家では花壇用、鑑賞鉢
の花を栽培していた。主にカンパニュラ、ゼラニ
ウム、プリムラ、キク、バレンチア、ポインセチ
アなどを栽培。特徴として、定植までを種苗業者
が代行するなど、分担化が進められていた。顧客
の要望を受け入れ、様々な対応をしてもらえる点
がこの花農家の良い点である。
◇次に、イタリアで 250haもの面積で水稲を栽培
している大規模土地利用型稲作農家ではジャポニ
カ米の他にカルナローリという高級品種のお米を
生産している。カルナローリとは有機栽培で作ら
れたお米で、デンプン質が多く、お米の形はジャ
ポニカ米より一回り大きい。そのためリゾットに
よく使われている。
こ の 農 家 の 特 徴 と し て 、 有 機 栽 培 の場 合に は
サトウダイコンを液体にしたものを田に撒くこと
2.流通まで
訪問した農家のほとんどに直売所があり、いか
に自分で生産した作物を売るかを工夫していた。
特にイチゴ農家では、袋詰めした全てのパッケー
ジに生産者の情報が分かるように生産者の顔入り
のカードが入れられていた。栽培したイチゴは青
果市場に卸すのではなく八百屋やイチゴ専門店、
顧客に売っていた。そうすることで市場より値段
を高く設定することができるメリットのほか、ブ
ランド化へと繋がっている。
◇酪農農家では牛乳を生産しチーズに加工し、自
身の持つ直売所にて販売していた。牛乳とチーズ
はどちらも出荷されていて、比率は 5:5 で、牛
乳が 1 ℓ 35 セント(47 円)、チーズは 60 セント
− 26 −
(82 円)となり加工すると高く出荷できること
がメリットである。
◇稲作農家については 1haあたり 4 ~ 5 tの収量
が見込まれていて、430 馬力の大型の汎用コンバ
インで収穫を行う。乾燥した後は籾のままで米加
工工場に出荷をする。米加工場にて精米を行い、
米粉に加工されているものもある。この稲作農家
の作ったカルナローリを直接消費者に売る場合 1
㎏あたり 5 ユーロ(約 700 円)で日本円にすると
一表あたり 42000 円となる。
3.経営のあり方、意識
見学した農家では、経営者、パートの従業員を
数人、海外からの派遣社員を雇っているという形
が多かった。農家によって忙しい収穫の時期や、
時期の移り変わりにハウス内を掃除する海外派遣
社員などを雇っていて、効率良く作業及び経営を
行っていた。
◇トマト農家では、農家だけで品種を決めるので
はなく、小売業者と共にどの品種を生産するかを
決めるという。そうすることで消費者の意見や求
められているものを知ることができ、品質を追及
することができるそうだ。消費者の意見を取り入
れるということは『一番売れるもの』を栽培して
い る と い う こ と に な る 。 一 つ の 品 種 にと らわ れ
ず、時代の流れによって利幅の大きい作物を作る
ことが大切なことであるとこの農家から学ぶこと
ができた。
◇フランスで行われた全国青年農業センターでの
意見交換では、家族経営の中小規模の青年農家を
応援する取り組みがあることが分かった。農業の
世代交代を目的としていて、農業を促進させる活
動や交付金の配布があることも知ることができ
た。5,000 人の青年農業者のうち 30 %は新規就
農だそうで、家で農業を元からしていなかった青
年農業者がいることも知ることができた。
◇今後は市場が国際化していく流れがフランスで
もあるということである。そこで青年農業者同市
でひとつの集団として共通の店を持つなどの取り
組みが行われている。共通意識をもち活動してい
る点が勉強になるところだった。
4.まとめ
今回ヨーロッパへの海外派遣研修に参加して、
農家が独自に農作物のブランド化図り販売してい
ることがとても勉強になった。また加工を行い自
らが持つ直売所にて販売していている農家もあ
り、面白い農業経営を学ぶことができた。
日本とヨーロッパでは農家を取り巻く条件が異
なるため、すべての先進的な技術や流通などを取
り入れることはできないが、できることから取り
入れて高生産的な農業を目指していきたいと考え
させられた研修であった。
最後に、このような研修の機会を与えてくださっ
た栃木県農業振 興 公 社 を は じ め 、 関 係 機 関 の 皆
様 、 同 行 し て く だ さ っ た団 長、 副 団 長 お よ び 研
修先の皆様 に 心 か ら 感 謝 致します。ありがとうご
ざいました。
− 27 −
個 別 研 修レポート
「ヨーロッパ農業から効率的な農業経営を考える」
1班
○はじめに
今回の海外派遣研修で様々な考えや経 営
方法を視察出来ました。また、ヨーロ
ッ パ 3 カ国の空気に触れることで沢山のこ
とを学ばせていただきました。その中のわ
ずかではありますが、このレポートとして
まとめていきたいと思います。
1.規 模 拡 大 の 手 法
EU政 策 に よ る も の も 強 い で す が 、 技 術
の進歩による機械化・プロフェッショナ
ル化が進んだことにより大規模化が可能
になってきました。また、品目を 1 種に
絞る等してより一層の効率化を図ったこ
と 、 特 定 品 目 に 絞 っ て も EU諸 国 と い う 多
様な輸出先があることも大規模化が進ん
だ大きな理由となっていまし た 。
2.販 売 ル ー ト の 確 保 、 販 路 拡 大 の 手 法
主にインターネットでまず商品を知っ
てもらうというのが多かったです。商品
に付加価値をつけるため、無農薬は強い
アピールポイントになっていました。ま
た、安定して商品の販売を可能にするた
めに同品目でも収穫時期をずらし年中販
売可能にする工夫もみられました。
3.6次 産 業 化 、 加 工 へ の 取 り 組 み 方
すぐ近くに直売所を作ってその直売所
も含めて経営してるという農家が多かっ
た で す 。 チ ー ズ に 関 し て は EUで か な り 消
費されているということもあり、乳牛か
らチーズ ま で 各 農 家 で 加 工 し て い く と
い う の は 自 然 な 流 れ だ っ た よ う に 感
じました。加工に限ったことではないで
すが、大規模であるため人件費をいかに
削るかについてかなり重きを置いて考え
てるようにも感じました。
4.作 業 自 体 の 効 率 化
何より機械化が進んでいること、大規
模だが品目自体が一種類であるため機械
も導入しやすいことも効率化を図るにあ
たって大きな利点のようでした。また同
時に人件費のコスト削減になることも重
要 な 点 で し た 。 また、労働者が働きやす
い環境を作ることにもしっかり気を回し、
班長
飯岡
学(宇都宮市)
オラ ン ダ の い ち ご 農 家 で は 作 業 の し や す
い腰を痛めない高さにいちごを設置する
工夫もみられました。
5.環 境 問 題 へ の 配 慮
農薬が高いこと、商品の付加価値とし
て無農薬で栽培することが自然と環境問
題への配慮につながっていると感じまし
た。また、ガスの使用から地熱の利用に
変えるなど環境問題にもしっかりと目を
向ける農家もいました。また、イタリア
の完全有機栽培農家では、経営理念とし
て失った自然を取り戻すことをテーマと
して様々な作物をバランスよく作ること
で 雑 草 は な い 、 雑 草 も 含 め て 商 品に な る
といった考え方で経営していました。
6.ま と め
何より感じたことは、大規模であれば
ある程いかにして効率化を図るか、いか
にして無駄・コストを削減するかしっか
り目を向けることが重要なテーマである
と感じました。また、全ての農業者から
それぞれに強い信念を持って農業に取り
組んでいるということを感じました。
ヨーロッパは特別に恵まれた農業地域
という訳ではなく、土の問題や輸送・販
売での距離の問題があ り ま し た 。 し か
し そ う い っ た 問題を工夫や考え方でク
リアしてきたというの は 、 こ れ か ら の
農 業 体 系 の 変 化 や 私 個 人 の 問題にぶつ
かったときに
今回の経験を
生かしたいと
思いました。
この様な機
会を与えてく
ださった関係
者の方々およ
び団員の皆様
に心から感謝
の気持ちを込
めて終わりに
します。
− 28 −
「海外研修を通しての将来の展望」
1班
◇今回の研修では、オランダ、イタリア、フラン
スの三カ国を訪れ、日本では味わえない文化に触
れてきました。毎食パンやポテトが出てきたり、
独特な味付けをされた料理、市内観光での歴史的
な建造物はとても新鮮であり、10日間という短
い時間ではありましたが、とても貴重な体験がで
きました。そして今回は農業研修ということで、
11軒もの農家、農業関係機関を訪れました。そ
の中でイタリア、フランスの農業共にプライドを
持 っ て 仕 事 を し て お り 大 変 参 考 に な った ので す
が、私は特にオランダでの農業が深く印象に残り
ました。
◇ オ ラ ン ダ の 国 土 は 日 本 の 九 州 程 度 の大 きさ で
す。日本と同様に農地面積が狭く、人件費が高い
で す 。 ま た 気 温 も 低 く 日 照 時 間 も 極 端に 短い で
す。それにもかかわらず世界有数の農産物輸出国
の地位を確立しています。これは農家一戸当たり
の農地面積が 25.9ha(2010 年)と日本の十数倍
以上広く、より効率的に農業が行われているから
だと考えられます。オランダの農業の特徴として
は施設園芸に特化していることです。少数の品目
に集中させることで農業法人の生産技術やリスク
マネジメント能力を向上させています。さらに農
業関連機関の競争力を強化する政策が高まり好循
環が生まれます。技術力も高く温度、湿度、光量
などの項目を総合的に制御する環境制御システム
を持っており、自動で温室内の環境変化を最小限
にしています。これにより人件費の削減を可能に
しています。政策は農業を産業の一分野とし、取
扱国の九つの重点分野に施設園芸が組み込まれて
いることから農業が重要視されていることが分か
ります。
副班長
川又
将長(大田原市)
ます。日本では農協が担っている機能ですが、オ
ランダでは各機能を民間企業が収益事業として提
供しています。そしてネットを活用して、世界各
地の色、大きさ、甘さ等の需要を徹底的にリサー
チし、一番高く売れるタイミングを予想し、それ
に合わせた生産体制をしいています。労務管理も
徹底し、高価なパートタイム労働者を無駄にせ
ず、収穫や栽培にもロボットを大量に導入し、こ
ちらでも人件費削減を図っています。オランダの
農業はこれらの要因でEUという大きな市場を生
かし成功を収めました。
◇稼げる品目に特化して、バイオ技術を使った品
種改良から施設園芸、代替エネルギー、ロボッ
ト、インターネットまで総動員した農業なら日本
こそ得意であると思います。しかし日本と農業大
国を比べると政治的な問題や地理的にも不利な状
況であり、すぐに成功するのは難しいと思いまし
た。これから日本の農業はどうやって戦っていく
かを考えるいい機会になったと思います。
◇最後に、今回の貴重な視察研修に参加する機会
をいただいた栃木県農業振興公社をはじめ関係機
関の方々、団長、副団長、そして同行した団員に
心から感謝いたします。ありがとうございまし
た。
◇具体的には技術開発を重視した政策を行ってお
り、農業予算の約 20 %も研究開発に投入されて
います。国内の農業大学と公的農業試験場を集約
しました。これにより民間企業研究機関をも集積
させ消費者ニーズから基礎研究までの一貫した研
究開発が可能になっています。またサポート体制
も農業法人が技術、金融、流通等までが担ってい
− 29 −
「ヨーロッパ型経営いちご栽培の実践」
1班
1.栽培技術
(1)オランダいちご農家
・頂果房(最初の果房)のみ収穫し、新しい株
に植え替える。(1 年/ 3 回転)
・3 月~翌 1 月までの収穫で、10a/ 15tの単収
(日本は 12 月~翌 5 月で、平均 10a/ 4t)
・子苗は全て購入し、夜冷室(-1 ℃/暗室)
に保管して、苗を冬眠させている。
・近隣キュウリ農家と協力しての地熱の利用
・病害中対策として、天敵の利用と硫黄くん煙
・収穫しながらパック詰め
・ミツバチとマルハナバチの併用
(2)他分野にて応用出来る部分
・新しいことには常に1列づつチャレンジ(トマト
農家)
・自然の殺虫剤(物理防除剤)をも使わない無
農薬栽培(野菜農家)
2.経 営
(1)オランダいちご農家
・売り先は全て自分で見つけている。
・直売所を作り同園のいちごのみならず、近隣
農家の農産物や加工品なども販売している。
・子供達に食育体験をさせるため、ハウス内に
野菜を育てている。
(2)他分野にて応用出来る部分
・自分で出資した会社に全て出荷し、販売して
いる。(トマト農家)
・ビール生産過程のVTR化や飲み方・注ぎ方講
座で、同社ブランド力の向上を図っている
(ハイネケン工場)
・近所の大学で農学の講師をしていて、そこか
ら研修生を招き入れている。(野菜農家)
記録係
澳原
大介(矢板市)
(2)実践に向けて
・新しいことに常に1列ずつチャレンジし、よ
り良い栽培方法を確立する。
→頂果房を多くとるための密植の実践。
→完全無農薬栽培への挑戦。
・収穫とパック詰めを同時で行うことは、取り
入れやすい。しかし、ほとんどがJA出荷向け
にラップをしてしまうため、ラップ無しでの
売り先の確保が課題である。
(3)5年後の未来
○栽培技術面
・密植による頂果房、腋果房の収量増加技術、
無農薬栽培技術を確立させる。
・収穫とパック詰めを同時で行う環境を整え、
生産の 20 %を消費出来るように売り先を確
保する。
○経営面
・生産量 50 %の売り先を自分で見つけ、いち
ごを顧客に届ける。
・食育いちごランドを作り、食育活動のための
いちごほ場や生産過程や摘み方などの体験を
してもらい地域貢献と未来の顧客に繋げる。
最後に、このような研修の機会を与えてくださ
った栃木県農業振興公社をはじめ、関係機関の皆
様、視察先の皆様にお礼申し上げます。ありがと
うございました。
3.実 践
(1)活用方法
・頂果房のみ収穫し、植え替える方法は日本で
の気候では適さないと思われるため、日本で
単価の高い頂果房と腋果房の時期の収量を増
やすための、密植を試みる。
・ハイネケン工場での生産過程の見せ方による
自社のブランディングは、いちごの食育活動を通
してブランディングすることに応用出来る。
− 30 −
「オランダのトマト栽培を見て感じたこと」
1班
◇私は、今回の海外派遣研修に参加して初めてヨ
ーロッパに行きました。私の家は周年でトマト栽
培を行っています。そのため今回の海外派遣研修
では、オランダのトマト栽培に興味があり参加し
ました。
◇今回見学をしたトマト農家では、ランスという
会社組織 の農家でした。総面積は 12.5haでし
た。栽培方法は冬春栽培を行っていました。日本
では 9 月から 7 月栽培が多いですが、オランダで
は 9 月から 11 月が多いそうです。ロックウール
ハウスでつるおろしの二本仕立てで栽培をしてい
ました。トマトの畝の通路に 2 本のレールが引い
てあり、一方は二酸化炭素が流れています。もう
一方には暖房の機能がありました。暖房には地熱
を利用しています。またこのレールは 2 つの利
用方法があります。1 つは収穫台車を通すためで
す。もう 1 つは高所作業車を通すためです。ハウ
スの真ん中の通路にはトマトの収穫前後の台車を
通すための自動のレールが 2 本引いてありました。
◇オランダでは日照時間が日本に比べて少ないの
で、ランスでは補光を重視していて 70 %を補光
で行っています。主に 11 月から 2 月に補光を多
く取り入れています。補光は 1 時間当たり 8MBの
電力を使用していますが、足りないため電力会社
から購入しています。
写真係
藤田
剛史(大田原市)
た。糖度は 5 度から 6 度であまり日本のトマトと
変わらないのですが、私は日本のトマトの方が甘
いと感じました。
◇次に雇用についてです。ランスでは人材派遣会
社を持っています。雇用形態は固定の雇用が 60
人おり、半分の 30 人は事務を行っています。ま
た土日などは学生アルバイトを 20 人前後雇用し
ているとのことです。雇用人数は 1ha当たり夏は
5 人で冬は 3 人を目安に雇用していました。これ
だけの大人数を雇用しているため給料の支払いは
固定の 60 人は会社が支払っているそうです。オ
ランダは税金が高いので少しでも税金の安い隣国
の国から派遣しているそうです。ここで働いてい
る方は、大半がルーマニア人などの外国人です。
私が見学に行ったときは平日でしたが若い外国人
の方が多く見られました。また 1 ハウスが広大な
ので日本では考えられませんが、ハウス内を自転
車で移動している方も多く見られました。
◇まとめになりましたが、オランダは九州ほどの
国土でありながら 1 軒の農家が栽培している耕地
面積は日本の数十倍もあり、驚きました。ロック
ウール栽培のため土壌栽培に比べて土壌障害や連
作障害のリスクは低くなると思いました。ここ数
年では無理ですが、今回の海外派遣研修で得た知
識と技術を私の家に少しでも取り入れていきたい
と思いました。
◇次に収穫についてです。収穫方法は房取りで収
穫をしていました。そのため収穫したトマトがす
べて赤いとは限りません。会社組織の仲間や小売
業者などと話し合いを行い、品種や出荷量などを
決定しています。収穫段数は計算上ですが 40 段
くらい収穫しているということです。収穫をした
トマトはグリーンパックというパッキング会社に
卸しています。オランダなどの北ヨーロッパでは
カクテルトマト等の小ぶりなトマトが好まれてい
るということです。消費者の意見を多く取り入れ
ており、現在は味の良いトマトが好まれているそ
うです。しかし、トマトを試食させて頂きました
が酸味が強くて正直甘さは感じられませんでし
− 31 −
「見て学んだヨーロッパ研修」
2班
1.苺生産
1 .7 h a の 連 棟 ハ ウ ス に 天 上 か ら ワ イ
ヤーで吊るされた台にプランターを並
べ、ドリップチューブによる水耕栽培を
行っており、プランターの土は主にヤシ
ガラを使用していた。日本でも水耕栽培
は多いが日本で腰の高さにプランターを
設置するのに対してオランダではプラン
タ ー の 高 さ が 顔 位 の と こ ろ に あ り 、
収 穫 時 に 目 線 の と こ ろ に イ チ ゴ が く
るように計算されていた。
ハウス内の温度管理は暖房ではなく地熱
を利用した73℃の温水をパイプに通し
隣のキュウリハウスを経由することによ
り水温を適温の40℃にし、さらにその
後35度まで下がったお湯を種の発芽に
利用していた。燃料を使用しないで3種
類のハウスの温度管理を無駄なくかつ環
境への配慮が感じ取れた。
日本との大きな違いを感じ取れたのは苗
植えである。日本ではハウスに植えた苗
でワンシーズン収穫するのに対してオラ
ンダでは購入した苗をすべて専用の冷蔵
庫( 日 本 で 言 う 夜 冷 庫 ) に 入 れ マイナ
ス1℃まで下げ最大で9ヶ月冷却保存
し、数回に分けて植えることにより収穫
の時期をずらしていた。収穫に関しては
頂果(1回目の花)のみの収穫で、実を
取り終えたら次の苗を植える、これをワ
ンシーズンに3回転行っていた。日本で
は1回目の花より2回目以降の花のが収
量が増えるが視察した圃場では頂果で約
25の花、反収で15トンと非常に多か
った。私感ではあるが苗を短い期間で交
換することにより病気や害虫のリスクを
減らすことができ収量アップにつながっ
ているように感じ取れた。
2.流
通
比較的直売所に直接買いに来る人も多
く3月~9月は消費者の約70%がオラ
ンダとのことであった。価格は1パック
500グラム3ユーロ、日本円にすると
約420円で販売されていた。9月頃に
班長
橋本
貴之(真岡市)
なると輸出量が増え出荷量の70%が輸
出になり遠いところだとドバイやアイル
ランドなどにも輸出を行っていた。
ヨーロッパでは農家同士の共同経営など
に力を入れており販売流通を潤滑に行え
るようになっていた。
3.雇
用
視察したイチゴ農家では家族2人、パ
ートナー1人、オランダ人8人、ポーラ
ンド人8人で経営しており従業員の約半
分は国外の人が 働 い て い た 。
オランダ内で従業員を探すのは比較的難
しく隣の国などから働きに来る人が多い
とのことであった。しかし腰を曲げる仕
事はなかなかやってくれる人が少なく、
腰を曲げずに仕事ができるよう工夫が多
く見られた。立ったまま仕事ができる水
耕栽培、ハウス内の温度を取るための配
管をレールとして利用した台車、足元の
コンクリート化、このような工夫は必要
な人材を確保しながら仕事の効率を上
げ、人件費を抑えることができとても理
にかなったやり方だと思った。
4.最後に
この研修で学んだこと見たこと、そして
出会った仲間たちと新し い 農 業 を 作 っ て
いけたらと思います。農業振興公社を
初めとする関係機関の皆様にお礼を申
し 上 げ ま す 。 あ り が と う ご ざ い ま し
た。
− 32 −
「日本との違い、海外の農業から学んだこと」
2班
1.日本とヨーロッパの農業の違い
最初の印象はどこの農家も規模が大き
く、圧倒されたことです。トマトや米や
畜産等の農家では10ha以上の面積
で、日本では見たことのない光景でし
た。作物の栽培の方法としては日本と同
じような方法でしたが、その国や土地柄
の影響が出ていました。
特に印象深かったのが、オランダで見
学した大規模 ト マ ト 農 家 で 、 日本のト
マト栽培ではあまり行われていない補
光を行っていました。これは、ヨーロ
ッ パ の 天 気 が 一 年 を 通 し て 曇 り が 多
く、特に冬場の日照時間の不足があげ
ら れ る た め で す 。 1 日 に 18 時 間 も 補 光
を行う場合もあるそうです。
花農家では、鉢物の菊、プリムラ、カ
ンパニュラなど、種類を多く回転を速く
して国内外や地域での顧客の細かな注文
に対応していました。この他にも大規模
経営をするために、コンピューターで温
度や肥料水量など様々な管理を行ってい
ました。日本でもコンピューター管理は
行われていますが、それ以上にデ ー タ を
利用した管理が行われていました。
また、流通の面でも日本との違いが見
えてきました。日本での生産物の流通
は、市場や消費者に届くまでに、JAな
ど中間業者を通すために自分から農産物
持っていく必要があります。中間業者を
通さない直売所でも運搬の手間がかかり
ます。今回の研修先では、生産者のもと
へスーパーなど販売元の業者が直接取り
に来るそうです。また、直売所も生産者
の敷地内に併設してあり、運搬のコスト
を削減していました。これらは、生産地
と販売元が離れていることが要因となっ
ています。
副班長
り
が
わ
た
田野井
仁史(鹿沼市)
赤い、甘くて柔らかい
好まれています。また
ない有機栽培への関心
め、有機農産物も求め
今回の研修先の場合、
物は現在の農産物の品質
コストの削減でした。ヨ
薬が高いため、農薬の使
めにコンピューターでの
て病害虫の発生を抑えて
作業し易い環境づく り や
産物、人気のでる農産物
費者の意見を参考にし、
る品種を栽培するなどの
した。
物、味の良い物
、化学肥料を使
も高まっている
られています。
生産者が求める
の向上や維持、
ーロッパでは農
用量を抑えるた
管理等を駆使し
います。さらに
、 より売れる農
を作るため、消
より味の良くな
工夫をしていま
3.まとめ
ヨーロッパでの農業は、天
通して変わりやすく曇天が多
れを考慮した栽培が行われて
栽培方法は多くのデータを元
ーターでの管理が行われてい
本でも、この様なデータ管理
ば、農業の品質の安定・向上
来る様になると思いました。
最後に、この様な貴重な研
与えてくださった栃木県農業
始 め と し た 関 係 者 の 皆 様 、
がとうございました。
2.ヨーロッパで求められてい る モ ノ
近年、ヨーロッパの農産物に消費者が
求めているのは、高品質な物になってき
ています。トマトやイチゴなどでは、よ
− 33 −
候
い
い
に
ま
が
が
が
た
ま
コ
し
進
誰
1
め
し
ン
た
歩
で
年
、
た
ピ
。
す
も
を
そ
。
ュ
日
れ
出
修の機会を
振興公社を
本当にあり
「オランダのトマト農家」
2班
1.施設・環境
オ ラ ン ダ の 気 候 は 暖 流 の 北大西洋海流の
影 響 を 受 け 、 高 緯 度 な が ら 温 暖 な 西岸海洋
性気候が 広 が る 。 季 節 に よ る 降 水 量 の 偏
り は あ ま り な く 、 毎 月 50mmか ら 80mmであ
る。 年 間 を 通 し て ほ ぼ 曇 天 で あ る 。
家族経営であり な が ら 会 社 組 織 と し
て 運 営 。 視 察 先 に 32ha、 ゼ ー ラ ン ド 州
に 20haの 農 場 を 所 有 。
施設は高軒高のグラスハウス。ロック
ウール養液栽培。養液、水をドリップ潅
水 し 、 LEDナ ト リ ウ ム ラ ン プ に よ り 補 光
も行っている。補光することにより冬季
でも収量を落とさず周年同じ量を出荷で
き る と い う 。 CHP( 熱 と 電 力 を 同 時 に 供
給 し 、 発 電 時 に 発 生 し た CO²を 栽 培 に 取
り入れるシステム。)を導入することで
電 力 は 補 光 に 使 用 し 、 CO²は 栽 培 促 進 に
使用している。発電時に出た湯はハウス
内に張り巡らされた温水管を通しハウス
内の加温に使用している。この 温水管は
台車のレールにもなっている。受粉はマ
ルハナバチが行い無農薬にこだわってい
るため天敵防除を主としている。更には
コンピューターにより生育ステージに合
わ せ た 管 理 を 行 っ て い る 。 こ れ に よ り 1m
²当 た り カ ク テ ル ト マ ト 45kg、 房 取 り ト
マ ト 55kgの 40 段 取 り を 実 現 し て い る 。
2.流通・雇用
販 売 会 社 に 100%出 資 し 、 5 戸 で パ ッ キ
ング会社も持っている。品種選定は小売
業者と一緒に決め、求められているもの
を生産し求められているようにパッキン
グをしている。そこからレストランや野
菜専門店に販売される。その他には人材
派遣業も行って い て 繁 忙 期 に は 、外国
人労働者の確保に努めている。今は、固
定 の ス タ ッ フ 約 30 人 、 人 材 派 遣 労 働 者 は
冬 150 人 、 夏 250 人 と 労 働 者 を 確 保 す
る。日本の農家ではありえない程の人数
を集めなくてはいけず、人材派遣業も持
たなくてはいけないのもうなずける。
ここでは労働者の個人データまで取って
記録係
渡邊
亮太(大田原市)
いてノルマが終わらなかった人にはアド
バイスをするなど労働力のばらつきもな
くそうとしている。
3.まとめ
これからの目標、展望を経営者に聞く
と算出したコストはほとんど削減するこ
とは無理に近く今のコストをいかに維持
していくかが課題でエネルギー、 人 材 、
は 変 動 し て い る の で 常 に 意 識 し て い
き た い と 言 っ て い ま し た 。 更 に 自 動
化 、 シ ス テ ム 、 地 熱 の 利 用 を 増 や
し 、 利 幅 を 上 げ て い き た い と の こ と
でした。
その姿はトマト農家ではなく完全にト
マトを生産、販売している企業であっ
た。企業の経営者として販売、コスト、
人材、システムの導入など様々なアイデ
ィアを考え、専門知識のある人を雇うと
いう企業そのものだった。
オランダには国内 5 か所に園芸生産者
や研究機関、関連企業等が集まったグリ
ーンスポートというクラスターを形成し
た場所がある。そういう政策もあり農業
者の専門知 識 も 多 く 、 農 業 者 の 要 望 が
形になりやすいようだ。
ただ日本のトマトの方がまだまだ味が
よく私は、変わらずおいしいトマトを作
り続けたいと改めて思いました。
最後に貴重な体験をくださった皆様あ
りがとうございました。
− 34 −
「ヨーロッパでの研修について」
2班
1.オランダ:大規模トマト農家
初めに視察した農家です。私は園芸部門に関し
ての知識はほとんど無いため、栽培技術に関して
はよくわからないのですが、私が今後経営の大規
模化を考えた時に、こちらの農家の考え方が印象
に残りました。大規模化をする上で問題となって
くるのが雇用体系ですが、規模が大きくなるほど
人件費の占める割合は多くなります。そのため雇
用で利益を上げるためには、どのような人を雇う
かが重要であると思いました。質問をしたところ
人材派遣や学生アルバイトを雇い、その中でもそ
の人の知識や興味にあうように仕事の内容を決め
ていくと言っていました。この様な雇い方なら規
模拡大をしても無駄なく効率の良い収益性の高い
経営ができると参考になりました。
2.イタリア:大規模土地利用型農家(稲作農場)
研修の視察の中で私が最も期待していた農家で
す。まず現地に到着してからの印象として、予想
はしていましたが平地でどこまでも広がる水田の
大きさにはスケールが違いすぎて本当に圧倒され
ました。
こちらの農家は 1883 年から家族経営を行って
おり全 320haの経営面積の内、栽培面積 250haで
水稲の栽培をしています。栽培品種としては、ジ
ャポニカ種のカロナローリという米を栽培してい
て形は丸くデンプンが多く含まれており、5 ~ 6m
mくらいの粒の大きさがイタリアで好まれている
そうです。米の相場は 5 €/kgで、約 4 万円/俵く
らいの値段で取引されているようです。栽培方法
や水田の管理としては、日本のような田植えや代
掻きといったことはせずに、まず水田を平らにす
るためにプラウ、ロータリーで耕起したあとにレ
ーザーレベラーを使用し、トラクターで幅6mの
均す機械を牽引して均平をとります。そして、水
を入れた後に直播で播種すると言っていました。
水は全長 83 ㎞標高 30 mのカブールという灌漑用
水を使っており、110 ㎤/秒溜めることができる
と言っていました。収穫前の 8 月半ばには水を抜
いてしまい、収穫には 430 馬力もあるコンバイン
で収穫します。丁度視察に訪れたときに、このコ
写真係
菊地
望(那須塩原市)
ンバインが置いてあり実際に座席に座ることがで
きたのですが、あまりの大きさに圧倒されるばか
りでした。これらの経営のほかにも敷地内には、
結婚式にも利用されている館やペンション、レス
トランといった生産以外の部門も経営していまし
た。このようなスケールの違った大規模な経営を
見ることできて、非常に良い刺激を受けることが
できました。しかしイタリアは、米の生産量はヨ
ーロッパで 1 位なのですが、世界的に見ると 0.5
%にも満たないということを言っていたので、こ
れには非常に驚きました。
3.まとめ
今回 10 日間の研修で三カ国の先進的なヨーロ
ッパ農業を視察することができて本当に刺激にな
りました。日本とヨーロッパでは土地の条件が違
うので、大きな機械を取り入れて大規模化を図る
というのは中々難しいところがあります。しかし
各農家で感じたことは、生産だけでなく、加工や
販売といったいわゆる 6 次産業化への取り組みを
している農家がほとんどで、非常に意識が高いと
感じました。これから農業を経営していく上で、
各農家でブランド意識を高め他の農家との差別化
を図ることも重要であると改めて感じました。
最 後 に 、 こ の よ う な 研 修 を 提 供 し てく だ さ っ
た、栃木県農業振興公社をはじめ、同行してくだ
さった団長、副団長、各関係者および団員の皆
様、視察先の方々に御礼申し上げたいと思いま
す。ありがとうございました‼
− 35 −
「ヨーロッパの農業を知る」
3班
今回3カ国に渡り多くの視察を行った
その中から何箇所かを例に挙げそれに関
しての所感や、今後の提案などを述べた
いと思う。(面積や規模、機材、施設に
関しては日本より大規模であるという事
は大前提とする)
1.生
産
オランダの大規模施設農家を例に挙げ
たいと思う。大規模の施設で周年の出荷
を行うべく、トマトならトマト、花なら
花と専門的に行っていた。日本との違い
はオーナー、マネージャーとワー カ ー と
の 関 係 が 確 立 し て い る こ と だ ろ う 。
ト マ ト 農 家 で は 1 ha辺 り 3 人 と 面 積 あ
たりの人数まで決まっていた。この数は
経験や感覚による物ではなく、仕事量や
時間などを事細かに記録していた為に出
た根拠のある人数であることに驚いた。
次に研究機関との連携が密であった。
自社に研究者を持ち、栽培の現場で研究
を行い実践の生産に用いるとのこと。研
究者は現場に、現場は研究者にとお互い
歩み寄っている印象を受けた。この点は
私達も早急に取組むべきだと思う。
また今回の視察では有機農家にも多く
伺った。ヨーロッパ全体で無農薬有機栽
培に関心が 高いといった点もあるが、農
薬の使用に関して規制が厳しく、また高
価だという事、経営規模が広大なため管
理が難しいと言う点も影響しているのだ
と考える。その為に私が今後この形式を
取り入れられるかと言うと現実的に厳し
いだろう。
2.経 営
ヨーロッパの農業と言っても、オランダ
の様にオーナーとワーカーという形態もあ
れば日本の様に家族経営と言う形態もあっ
た。その中で共通して出た言葉が「顧客の
ニーズに合わせて・・・」だった。恐らく
この顧客というのは「消費者」ではなく
「取引先」である。この意識が日本との決
定的な違いだろ う と 思 う 。
3.全国青少年農業経営者セ ン タ ー の意見交換会
班長
益子
巧(那須塩原市)
この意見交換会で新規就農に関しての
取り組みや現状を聞いた。まず最初に感
じたのは現状は日本と変わらないという
事だ。ヨーロッパでも流通を行う業者
(日本で言うところの市場の様なものと
考えた)に価格をコントロールされてい
る様なので、6 次化では無く生産者同士
で生産組織を作り販売を行い、販売の際
の間に入るものをなるべく少なくする事
が大切だろう。
4.食文化
これはイタリアでのスローフード体験を
挙げたいと思う。食事を行うのに長時間掛
ける の は 日本 に は 馴 染 ま な い と 思 う
が、作物が出来た背景、栽培方法や産
地の特徴、生産者などの情報を消費者
に与え共有するだけで、食事そのもの
の付加価値は上がると思う。イタリア
ま で の長時間は無理でも、何か一言添え
て提供して貰えたらいち生産者としては嬉
しい事だ。生産者が出来たら一番良いのだ
が、なかなか難しい為に、提供するレスト
ランやスーパーなどの売り場の方に言って
頂きたいと願う。そうなるとこれまでの売
場とは違った雰囲気になると思うし、ただ
糖度を表示しただけにはならないだろう。
これからは「食育」では無く、私たち1次
産業自体を取り上げた 、 言 う な れ ば 「 農
育」があっても面白いと思う。
最後にこの研修に参加して、「私たちと
は全く違った文化の中で生活している人が
いる」といった事を実際に見られただけで
も良い経験なり、まだまだ視野の狭さを再
確認した時間であった。
− 36 −
「ヨーロッパの農業」
3班
1.農業経営
①経営方針…ヨーロッパの農業の基本
的な経営方針として高品質の製品を大人
数及び大型の機械等を使用し、量産する
事で利益を得ています。
日本の農業と比較した際にまず感じた
のが、農薬使用の有無で日本の農業では
主に農薬を使用して生産性を高める方法
が主流であるが、ヨーロッパでは広大な
土地を有効に活用し生産した無農薬の有
機野菜が多いまた、量産を行うにあたり
作 業 者 の 人 数 も 日 本 と 比 較 し た 際 に
圧倒的に多いと感じました。
②雇用…雇用の面では先述した様に大
人数での農業が主になってくるためアル
バイト等を雇い、雇用の確保をしている
との事でした。
日本においては企業の参入等での大規模
農家もあるが、まだ経営者及びその家族
で補える規模の農業が主体であるため雇
用の形態に関しては違いを感じました。
2.流通・品質
流通に関しての出荷先は海外が多いと
の事で、物によっては約80%以上が海
外へと出荷されるとの事でした。これも
EUという組織があり、陸にてつながっ
ているヨーロッパならで は と 感 じ まし
た。また、インターネット等の媒体を通
す事で生産者から直接消費者へと販売も
しているとの事です。
日本は海に囲まれた地形ということも
あり国内消費が主になっています。人件
費等のコストを考慮すると現実的に海外
への輸出は困難だと思われます。品質に
関しては基本的に農薬をほとんど使用し
ない為に有機野菜が数多く生産されるヨ
ーロッパ農業に対し日本農業では、有機
野菜を生産している農家は存在するが少
数派であります。
3.生 産
①肥料…肥料については日本とさほど
変わりなく液肥等を与えることで生産性
の向上を図っている と の 事 です。
副班長
吉澤
康晴(宇都宮市)
②農薬…農薬は使用しない有機野菜を
生産している農家が多く、使用する農家
も必要最小限の量のみを使用しているそ
うです。
4.ま と め
今回海外研修にてヨーロッパの農業の
見学に伺ったが、顧客のニーズに合わせ
た農業が印象に残りました。多種多様な
顧客に合わせた生産を行うことで、生産
者及び消費者にもコスト面でのメリット
があると思われます。
また、今後の生産に関しても様々な付
加価値を付けた商品を生産していくこと
で減少傾向にある日本の農業の活性化も
担っていけると思われます。
また、ハウス等の施設 に お い て も 発
電 時 に 発 生 し た 二 酸 化 炭 素 を 再 利 用
す る な ど 環 境 に 配 慮 し た シ ス テ ム が
有 効 に 活 用 さ れ て い ま し た 。 我々農業
の生産者は自然のエネルギーを利用し生
産を行っている為、環境に配慮した生産
という部分は魅力的に感じました。
今回させて頂いた貴重な体験を今後の
活動に生かしていければと思います。
最 後 に な り ま す が 、 このような研修の機会
を与えてくださった農業振興公社の皆様と各関係
機関の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
ありがとうございました。
− 37 −
「海外派遣研修で学んだこと」
3班
記録・写真係
1.はじめに
今回の海外派遣研修では、ヨーロッパの農業者
が ど の よ う に 農 作 物 を 生 産 、 販 売 を して いる の
か。また、大規模とはどのようなものなのか興味
があったため参加しました。海外派遣研修を通じ
て感じたことをまとめたいと思います。
2.農作物の流通、販売について
ヨーロッパのほとんどの農家で自宅での販売を
していました。オランダのイチゴ農家ではイチゴ
のパックに自分たちの顔写真を載せ消費者に誰が
作っているのかを教え、かつブランド化し販売し
ていました。そして生産から販売までの経路が簡
略化されていると感じました。
また、他の農家では独自の販売ルートを持って
おり、運送会社が自宅まで取りに来るといった形
を取っているところもありました。
川澄
聖人(真岡市)
への変化、農家の大規模化など日本との共通点も
見られました。ヨーロッパでは農業主体の品質
か、市場主体の品質が主流であり、どちらにも農
家の考えが反映されていると思います。
消費者も規格にあった品質のものを良いと見る
動きがあります。つまり、規格主体の農業になっ
ているように思います。これは今回視察したヨー
ロッパとは大きく違う点だと感じました。
5.まとめ
今回のヨーロッパ研修は自分の中で非常に勉強
になりましたし、本当にいい経験となりました。
最後になりますが、このように貴重な視察研修
を企画して頂いた栃木県農業振興公社の皆様をは
じめ、各関係機関、団長、副団長、団員の方々、
そして私たちの研修を安全にサポートしていただ
いた荒井さんにはこの場を借りてお礼申し上げま
す。ありがとうございました。
3.生産と環境
ヨーロッパの農業は大規模農家が多く生産量は
多いです。また、規模が大きい農家ほど人員を必
要とし、中には派遣会社のようなシステムを持ち
会社組織のような農家もありました。日本でも有
機栽培や無農薬などの消費者に一定のニーズがあ
り向こうにも同様の傾向がありました。
オランダのトマト農家では、天敵を使って害虫
対策を行っていたほか、見学者には保護衣を着用
さ せ 害 虫 や 病 気 を 持 ち 込 ま せ な い 徹 底ぶ りで し
た。また、大規模経営では労働力としてパートを
何十人と雇っており、パートの技術の差による作
物への変化を抑えるため、作業のマニュアル化、
単純化、簡便化を行っていました。
4.日本との違い
今回の研修で勉強になったことは経営の目標を
持ち組織で共有することです。どこを見ても農業
者である以上に経営者としての誇りと自信を持っ
ていることに非常に感心し、日本とはまた違う意
見を聞くことができました。
また、風土や国民性の違いなど日本との違いも
多く見られましたが、雇用情勢や環境配慮型農業
− 38 −
「ヨーロッパの農業」
4班
私は上三川町でイチゴを生産しています。
今回、オランダをはじめとするヨーロッパの
先進農家の栽培技術や流通について学びたく
海外派遣研修に参加しました。見学した農家
の様子を報告します。
1.トマト農家
オ ラ ン ダ で 1 2. 5h aと 日 本 で は 見 た こ と の
ない規模のグラスハウスでトマトを栽培して
います。栽培方法はロックウールを使用して
の高設栽培で、それぞれの株元に養液チュー
ブが刺さっておりハウス内は整然としていて
まさに先進の植物工場といった様子でした。
保温には地熱を利用し通路にパイプをは
わ せ て 、 そ の パ イ プ を 収穫 用 台 車の レ ー ル とし
ても利用していました。また運搬もハウス内の
動脈となる通路にあるレールに台車をセットす
ると自動で運ばれるようです。ハウス内の環境
管理は、温度、湿度、光量、CO2 濃度など全て自
動管理システムにより状況に応じて 管 理 さ れ
ていました。害虫対策は消費市場の意
見も反映し、ほとんど農薬を使用せず
天敵となる虫を放ち予防していました。
周辺の農家と共同で販売会社を経営してい
て、そちらを通しイギリスやドイツの有力な
スーパーマーケットに卸すことで利益を確保
しているようです。また、やはり周辺の農家
と人材派遣会社も運営し、繁忙期、閑散期で
従業員の派遣先を変 え る こ と で 1 年 を 通
して仕事がなくならないようにし離職を
防ぎ作業の熟練度を上げることに成功し
ていました。従業員は東欧からの出稼ぎ
者が多くオランダ人や西ヨーロッパの先
進 国 の 者 は 少 な か っ たで す。
2.イチゴ農家
1.7haの ロ ッ ク ウ ー ル を 使 用 し た 高 設 栽 培
です。4つの区画に分け定植時期をずらすこ
とでほぼ通年で収穫できるようになっていま
した。オ ラ ン ダ に も 土 耕 で 栽 培 し て い る
農家はあるものの腰を曲げての収穫作業
は、収入を求めて出稼ぎに来る東欧の方
たちも嫌がるそうでオランダ国内の大半
が高設栽培にかわっているそ う で す 。
班長
中村
順一(上三川町)
保 温 に は 地 熱 を 利 用 し 温 水 が 通るパ イ プ
を 収 穫 用 台 車 の レ ー ル と し ても 利用 して い ま し
た 。 ト マ ト 農 家 と 同 じ で す 、こ のよ うな フ ォ ー
マ ッ ト が あ る よ う で す 。 台 車移 動の 際、 振 動 が
ほ と ん ど な い 特 性 を 利 用 し 収穫 時に パッ ク 詰 め
も し て 高 効 率 化 が 図 ら れ て いま した 。オ ラ ン ダ
の 気 候 が 夏 場 で も さ ほ ど 暑 くな りに くい こ と 、
温 度 が 高 く な り に く い 軒 の 高い グラ スハ ウ ス で
栽 培 を し て い る か ら こ そ で きる 手法 です 。 頂 花
房のイチゴのみを収穫し房のイチゴの収穫が終わっ
たらすぐに植え替えるそうです。日本では次の房、
次の房とどんどん果数が増えていくので
頂花房だけで収穫を終わらせることにと
て も 驚 い た のですが、この栽培法で年間単収
1 5 ト ン を あ げて い る そ う で す 。 副 次 的 に 、 病
害 虫 が つ き に くい と い う 利 点 が あ り ま す 。 販 売
は自社でヨーロッパの高級青果店に卸してお
り 、 パ ッ ケ ー ジン グ も 完 全 オ リ ジ ナ ル で 色 鮮 や
かでとても目立っていました。
3.まとめ
ヨーロッパでは変化の小さい気候、整理さ
れた広大な土地に環境変化の小さい特性を持
つ大型施設を利用して、工場のように季節に
よらない年間を通して同じ作業が出来る職場
環境の農家が目立った。また、上記以外のど
の農家でも農薬を極力使わない、徹底した環
境への配慮が見られた。
我が農園で も 今 回 学 ん だ 効 率 化 、 販 売 手 法
など有用性を確認し取り入れていきたい。
− 39 −
「ヨーロッパと日本の農業を比べて感じたこと」
4班
副班長
小玉
裕貴(益子町)
1.はじめに
我が家では益子町で水稲、麦、大豆、そばの作
付けを行っています。私は就農してからちょうど
2年が経ちました。我が家では土地利用型農業の
経営をしているので、イタリアの水稲農家での視
察が一番刺激を受けました。
耕栽培もあまり変わらないというのが正直な感想
でした。橎種から始まり、入水、刈り取りでも同
じ時期であるし、ほ場の面積ではイタリアの方が
10 倍も広いがいかに時間を有効活用するかなど
の作業効率化に関しては日本人もイタリア人も考
えていることは同じだと感じました。
2.イタリアの稲作について
視察先の稲作については、11 月に田んぼを耕
起しその後レーザーレベラーで均平をとり入水し
ます。4 月になると水を張った田んぼに橎種作業
をし、8 月になると水を抜き田んぼの水分を 22
%までに調整します。9 月には収穫が行われま
す。機械は 420 馬力の汎用コンバインで刈り幅が
660cmのものでした。
これからは小さな益子町から出て、大きな世界
で見てきた農業を益子町の仲間と共に、また、今
回の研修で出会った仲間と共に活気あふれる栃木
県にしたいと思います。
海外での研修の機会を与えて下さった栃木県農
業振興公社をはじめ関係機関の皆様に感謝を申し
上げます。ありがとうございました。
収穫した米の販売ルートは米加工工場へ行くの
と、兄弟のやっている飲食店に行くそうです。主
にリゾットになるそうです。
3.日本との比較
ヨーロッパでは直播が主流です。日本でも近年
直播を行っている農家もありますが、まだまだ田
植えが主流です。直播は定植をしないので労働時
間を大幅に減らすことができ、経費も削減できる
メリットがあります。また、ほ場を見るとあぜの
草刈りや除草作業はほぼしていないようでした。
そして私が一番日本と違うと感じたことは、田
一つ一つの面積です。私の住む益子町では 3、4
反の田んぼなのに対し、イタリアでは 3、4 町が
当たり前のように広がっています。これにより機
械が大きく動けるためより作業効率がよくなるの
です。
4.まとめ、感想
ヨーロッパでの稲作と我が家を比較してみまし
た 。 ま だ 我 が 家 で は 直 播 の 導 入 は し てい ませ ん
が、仮に直播をしたとしても年間を通して作業が
大きく変わることも、収量が大きく変わることも
ないと思います。イタリアの水耕栽培も日本の水
− 40 −
「現代のヨーロッパの農業」
4班
記録・写真係
1.はじめに
私は今年の 3 月に就農し、水稲とレンコン
を栽培しています。海外の農業にはとても興
味があり学生の時から行きたいと考えていま
した。そこで今回この研修に参加し、ヨーロ
ッパの農業を学び、私が感じたことをまとめ
たいと思います。
2.生産から販売までの経路、販路
オランダで訪問したイチゴ農家では 1.7haの面
積を 4 つの区画に分け収穫の時期をずらしながら
イチゴを大量生産していました。その生産したイ
チゴは八百屋や専門店、直接売ることができる顧
客、直売所で販売しています。直売所等で販売し
たほうが値段を高く設定することができ、収入の
向上に繋がっているそうです。生産したイチゴを
販売する際には、生産者の顔が入った写真入りの
カードがパッケージと共に入れられていました。
そこには農家の情報が記載されていて、ホームペ
ージのURLやTwitterのアカウントも記載してあり
ました。このようにパソコンやスマートフォンが
普及している現代であれば手軽に農家の情報が分
かるようになっていました。私はこの視察先で、
どれだけ自分の栽培した農作物を宣伝し、販売し
ていくことが大切なことかを実感することができ
ました。
直 売 所 で は 、 イ チ ゴ そ の も の だ けで は な く 、
イチゴジャムや野菜、その他加工品が販売されて
いました。また加工品は卸売業者から購入しそれ
をまた転売する形をとっていました。様々な商品
があれば商品の選択肢が広がり、一度来店して購
入できなかったものに対しては、二度、三度来店
し購入することも可能です。様々な商品を置いて
おくということはリピーターを増やす手段でもあ
ると私は感じました。また直売所内では生産者と
消費者とのコミュニケーションがたくさん取られ
ていて、“顔の見える農業”がパッケージに加え
られる写真だけではなく、直売所の現場で行われ
ていて消費者の安心に繋がっていると感じること
ができました。
3.若い世代の農家の役割や意識
フ ラ ン ス の パ リ 市 内 の 全 国 青 年 農業 経 営 者 セ
ンターで行われた討論会では、家族経営の中小規
模の青年農家を支援する活動があることを知りま
人見
公也(那須塩原市)
した。私が「若い世代の農家は楽しそうに農業を
行っていますか?」という質問をした結果、「農
業をし始めてから 5 年後でも 97%の人が続けられ
ているから、若い世代の農家も楽しく農業を続け
られているのではないか。」との返答がありまし
た。今後、市場が国際化していく中、ひとりで農
業をやっていくことは厳しいとフランスでは考え
られています。そのため、ひとつの集団として共
通の店を構えるなど、将来を見越して目標をもつ
ことが農業を辞めないで続けられるモチベーショ
ンとなっているのではないかと私は考えました。
4.ヨーロッパと日本
今回のヨーロッパ研修を通して、ヨーロッパの
農業は大量生産かつ独自の販売経路を獲得してい
るということが分かりました。しかし、ヨーロッ
パ産農作物の品質を日本産のものと比べると、甘
さや大きさともに劣っていると私は感じました。
そこで日本がヨーロッパから学ぶべきものは販売
方法だと思います。日本の農作物は美味しいで
す。その自信のある農作物を自らの力で宣伝しブ
ランド化を図り顧客を獲得していくことがこれか
らの日本に必要なことであると私は思います。
最後に、このような研修の場を与えてくださっ
た関係者の皆様、稲刈りの忙しい時期に海外研修
に行くことを応援してくれた両親、沢山の方々の
協力があって良い体験をすることができました。
Merci beaucoup!!!
− 41 −
「海外派遣研修全体を通して」
副団長
公益財団法人栃木県農業振興公社
農政対策部 青年農業者対策担当
このたび、副団長の任務を戴き、9 月 29 日から
10 月 8 日までの 10 日間、ヨーロッパ 3 ヵ国(オランダ、
イタリア、フランス)において髙橋団長の下、団員(青年農
業者)14 名とともに、海外派遣研修を遂行して参
りました。様々な研修先での視察調査を通し、五
感で学べたことは貴重な経験でした。私からは事
前研修を含めた一連の研修内容(結果)・感想等を
紹介し、参加者の参考にればと思います。
事前研修の実施
海外での研修を効率的かつ効果的に行うため、
事前研修会を実施しています。内容はヨーロッパの農
業情勢やEU共通農業政策(CAP)の変遷について講
義を受け、ヨーロッパ農業から何を学ぶか課題設定を
していただきます。特に研修生は個別レポートの作
成にあたり、事前に身につけた知識を現場で見聞
きし確認するための研修です。また、研修ではヨー
ロッパの生活文化を学び、日常会話の演習も行いま
す。研修生の仲間づくりでは、団結力を高めるた
め結団式や懇親会等も取入れ弾みをつけました。
1
研修中の行動
海外研修では団体行動が原則ですので研修生は
3 ~ 4 名の班編制に従い、役割を担っていただき
班長・副班長・記録係・写真係を構成するととも
に視察先の質問・記録、報告書の作成等に備えて
もらいます。楽しみの一つに自由行動が設けられ
ています。事前に班員同士で観光スケジュールを計画
立てて班別行動でパリ市内を散策いただきます。
2
出発式を経てヨーロッパ研修
出発 1 週間前に結団式を執り行い関係機関・団
体の見送りを経て研修生はいよいよ海外モードに入
って行きます。出発当日、アグリプラザを早朝 5 時
半に出発し成田からヨーロッパ研修が始まります。最
初の視察地オランダ(アムステルダム)への到着は、現地時
間で午後 3 時頃(日本時間で夜 10 時頃)になりま
す。ホテルに移動した後、市街散策と夕食を兼ねて
研修初日がスタートしました。2 日目以降からは研修
生のレポートを参照下さい《トマト農家⇒花卉農家・花
市場⇒苺農家⇒酪農・乳製品加工農家》。研修も
3
菊地
正美
4 日目午後には、イタリア(ミラノ)へ飛行機で移動し、5
日の研修に備えます。翌日は、ミラノ北部の大規模
稲作農家を視察し、大型機械を目の当たりにモチベ
ーションが高まります《⇒有機野菜農家⇒スローフード研
修》。一方、5 日目頃から緊張もほぐれ疲れも見
えはじめ、お互いがわがままになってきます。そ
こで国替え毎に部屋割りを変えたり健康管理に努
めます。6 日目午後には、フランス(パリ)へ飛行機で
移動し、翌日に備えます。7 日目に入ると朝市(マ
ルシェ)を見たり、各班毎の 1 日自由行動など、研修
は駆け足で過ぎて行きます。フランス最終日は郊外の
有機畜産農家を視察や、全国青年農業経営者センター
研修を済ませ、パリ市内でさよなら夕食会(宴)を
行い、翌日早朝には帰国の途に着きます。10 日
目の午前中には羽田からアグリプラザに到着し盛大
な出迎えを受け、帰国式を経て解散となります。
事後研修の実施
驚きと感動が美化され余韻が残る 1 ヵ月後に、
事後研修で反省を踏まえ報告書を作成します。併
せて、解団式を行い関係機関・団体の方々へ帰国
報告と感想等を発表します。
4
研修関係者の方々へのお礼
大きな病気やけがも無く、全員が無事に帰国で
きたことに感謝しつつ団員の皆さんには、ヨーロッパ
の農業経営者の努力を惜しまない姿を忘れずに、
自らの農業経営を確立して下さい。また、寝食を
共にした団員は一生の仲間(宝)です。これからも
交流を深めていただ
き、共に栃木県農業
を 担 う地 域 農 業 の リー
ダーとして活躍される
ことを心から期待し
ております。最後に
なりますが関係機関
・団体・職場の皆
様、団長をはじめ団
員の皆様に心からお
礼申し上げます。
(団長とパリのエッフェル塔にて)
5
− 42 −