サントミックコホモロジーに関して 大垣 翔 ∗ 大阪大学 大学院理学研究科 数学専攻, 2014 年 2 月 コホモロジーとはある図形の集まりからベクトル空間の集まりへの対応のことである。例えば、 特異コホモロジーやドラームコホモロジーと呼ばれるものがある。このコホモロジーは図形の研究 を行う上で重要な役割を果たす。題目のサントミックコホモロジーもコホモロジーの一種で、図形 の集まりとして p 進数体の整数環上の滑らかな準射影的スキームなる図形全体をここでは考える (p は素数)。例えば、整数係数の多項式の零点全体から特異点を除いた図形はこの中に入る。 実数は定義される以前より人類が認識していた身近な数である。この実数は有理数体を完備化 することにより現れるが、p 進距離と呼ばれる距離で有理数体を完備化すれば p 進数なる数が現れ る。そこで「この世が実数でなく p 進数からなるならば、それはどのような世であるか」という問 題が考えられる。これを不毛な問いのように思われるかもしれないが、p 進数の世の研究を語らず して今日の整数論を語ることはできない。 実数の世には Deligne コホモロジーと呼ばれるコホモロジーがある。これはドラームコホモロ ジーに近いコホモロジーで、整数論においても重要であることが Beilinson [1] により示唆されて いる。サントミックコホモロジーとは Deligne コホモロジーの p 進数の世における類似物で、こち らの世界において Deligne コホモロジーと同様の重責を担うコホモロジーである(例えば [2] の序 文を参照せよ)。 先に挙げた特異、ドラーム、Deligne 等のコホモロジーは、ポアンカレ双対性、K¨ unneth の公式、 サイクル写像の存在等の共通した性質を有し、これらはコホモロジーを用いた図形の研究に際して 有用である。そこでサントミックコホモロジーに対しても、これらの性質を証明することは重要で あると考えられる。 今回は、サントミックコホモロジーに対してポアンカレ双対性等の上で述べた性質の証明を試み て得られた結果、及びそれら結果の応用について述べたい。 参考文献 [1] A. A. Beilinson, Higher regulators and values of L-functions. J. Soviet Math. 30 (1985), 2036–2070. [2] A. Besser, Syntomic regulators and p-adic integration I: rigid syntomic regulators. Israel J. Math 120 (2000), 291–334. ∗ [email protected] 1
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