材粋砂寄動特性の 誠験法と評価締果 プラスチ“ ノ 安田 武夫* 2.プラスチックの各種試験法(続き) 本規格は,定められた条件下でのプラスチックおよ びプラスチック複合材料の引張特性を測定するための 2−4.機械的性質の試験・評価方法(2) 一般原則を規定する。 2−4−6.引張特性(続き) JIS K7162∼7165はIS0527シリーズの各パート ③試験法 のおのおのの材料に適するように,数種の異なった形 引張特性の試験法は,JIS K7113−19畠5およびJIS の試験方法を規定する。 K7161一・舳11〕,JIS K7162一舳・・〕に規定されている。こ これらのJISが適するとした材料は以下のとおり。 の言亭,JIS K7161,JIS K7!62等はIS0527シリー ズめ一蔀を翻訳し,技術的内容を変更することなく作 JIS K7162:型成形,押出成形および注型用プラス 成された規衝である二・ JIS K7163:板およびフィルム ・本連載岬では1二甲際整倉の申で1SO規情のl1・化 チツク JIS K7164:等方性および面内等方性繊維強化 の動き’につ^で述べてきた。今後も・国際規格である プラスチック ISO規格が翻訳されゴIS規梧となる流れに変わりはな・ JIS K71651一方向繊維強化プラスチツク い。本連載でもこの流れに沿って,今後の試験法の紹 本試験方法は,試験片の引張挙動を調べる目的,な 介を行う際は,ISO規格に基づいたものについて優先 らびに規定された条件下での引張強さ,引張弾性率, 的に行うこととする。原則として,それ以外のJIS規 および引張応力一ひずみ特性を測定する目的に用い 格は規格番号の紹介のみとしたい。 る。 なお,今回紹介したJIS K7ユ13は,日本規格協会発 行「JISハンドブック プラスチック試験編」3〕に記載 本試験方法は,とくに,つぎの材料に適する。 があるので必要のある方はご参照願いたい。 可塑性プラスチック材料(非強化,各種強化コンパウ 一型成形,押出成形,および注型の硬質,半硬質熱 ここでは,IS0527−1:1993を日本語翻訳したもの ンドを含む。硬質・半硬質熱可塑性樹脂の板,フィル のうち,前述のJISハンドブックに掲載されている ム) JISK7ユ61を主として紹介したい。このハンドブツク 一硬質,半硬質熱硬化性成形材料(各種強化コンパ ではIS0527関運のJIS規格は今後JIS ウンドを含む。硬質・半硬質熱硬化性型成形樹脂板, K7ユ63∼7165まで規格化されると予告されている。こ 積層板を含む) れらは,最近規格化されたか,または近い将来規格化 一繊維強化熱硬化および熱可塑性複合材料(一方向 される見込みである。 性強化および非一方向性強化材料) JIS K7161(プラスチックー引張特性の試験方法第 一サーモトロピック液晶ポリマー 1部:通則)の概要は以下のとおりである。 一硬質発泡材料,発泡材料を用いたサンドイッチ構 ・適用範囲 造物には適さない。 本試験方法は,規定の寸法に型成形した試験片,ま ‡Takeo YASUDA,安田ポリマーリサーチ研究所所長 〒168−O082東京都杉並区久我山4−27−7 104 たは型成形品,積層品,フィルム,押出成形板,注型 板のような完成品もしくは半完成品を切削もしくは打 プラスチックス 表1推奨試験速度 速度(mm/min) 1 2 5 ε’→ ε舳 ε〃 ε柵 許容範囲(%〕 ±20}1 σ月 σ〃 σ月 σ〃 ±20 ±20 10 ±20 20 土10州 50 ±10 b σ} ユ00 土ユ0 200 ±10 500 レ 土10 σ凋 *1:この許容範囲はIS05893に規定されているものより狭い。 a 、”/ o σ月 σ〃 d σよ 抜によって機械加工した試験片を用いる。場合によっ ては多目的試験片(IS03167)を用いることもできる。 ・装置は,IS05893=1985Rubber and plastics test equipment−Tensi1e,Hexura1and compression α2 α1 ε1ε2 ε出 ε} ε} 兀% εB types(constant rate of traverse)一Description、に ε〃 ε〃 ε〃 ε→ 従うものとする。 曲線邊 :もろい材料 曲線b,C:降伏点を示すもろくない材料 曲線d 1降伏点を示さないもろくない材料 試験速度は表1のとおり規定している。 ・試験片では,試験片の形状と寸法および作製法に ついて,「JIS K7162∼7ユ65のうち試験される材料に 図1代表的な応力一ひずみ曲線 適用する規格を参照する。」としている。 ・状態調節は試験される材料の規格に規定された方 次のつぎによって算出する。 法で行う。この規定がない場合,当事者問の協定で定 σ2■σ1 EF ε2’ε1 める。これもない場合はIS0291からもっとも適した 条件を選んで行う。 ・計算および結果の表示 ここに,E…:引張弾性率 (MPa) σ。:ひずみε。1O.0005において測定され 引張応力は試験片の初め(応力をかける前)の断面 た引張応力 (MPa) σ1:ひずみε1=O.0025において測定され 積をもとに,つぎの式によって算出する。 た引張応力 (MPa) 一応力の計算 F σ=7 一ポアソン比#2 必要な場合には,ポアソン比を互いに直交する2方 ここに,σ:引張応力 (MPa) 向のひずみの値をもとにつぎの式(5)によって算出す F:測定荷重 (N) る。 λ:試験片の初めの断面積 (mm2) 一ひずみの計算 引張ひずみは標線間距離をもとにっぎの各式によっ て算出する。 △Lo ε冊 μ祀=一 ε ここに,μ祀:ポアソン比,無次元の比 勉=ろ(幅),または勿=ゐ(厚さ)となり, 選択された方向を示す。 ε= 五〇 ε:縦ひずみ △工o ε(%)=100×丁 ε抽:横ひずみ,〃=ゐ(幅),または例=免(厚 さ) ここに,ε:引張ひずみ(無次元の比または%) ム。:試験片の標線間距離(mm) △ム:試験片の標線聞距離の増加(mm) 一弾性率の計算 引張弾性率は2点の規定されたひずみの値とともに *2:縦方向対法線方向のひずみ曲線の初期の直線部分におい て,引張方向のひずみεとそれに対応する引張方向と直交 する二つの軸のいずれか一方のひずみε”との負の比率。ボ アソン比はそれぞれの軸の方向により幅の方向と厚さ方向 とに示される。ポアソン比は長繊維強化材料に使用される。 Vol.5ユ,No.8 ユ05 また,JIS K7162では,JIS K716!の通 則で規定されたプラスチック材料のうち, ’ヨ 1 { つぎに示す材料に適する。 丁型碑形,押出成形,おキび注塑の疲質, わ ゐ 凹1−1 ■一一■r■■■’’’一一 ■■ Lo ヨ 工 工 試験片の形 IA ’3:全長 11:幅の狭い平行部分の長さ ≧IとO1〕 80±2 r:半径 を含む)。 1B 一型成形および注型用の硬質・半硬質熱 60.O±ヒO.5 硬化性材料(充填物入りおよび強化材(織 物用繊維は除く)入りコンパウンドを含 104∼1203〕 104∼1I3ヨ〕 ムo:標準間距離 各種強化コンパウンド(織物繊維を除く) (単位:mm〕 ( ≧602〕 20∼25 わ1幅の広い平行部分間の間隔 b2:端部の幅 あI:狭い部分の幅 乃1標準厚さ4〕 半硬算熱可塑性プラス†ツク材料(非強化, 20.0±ヒO.2 む)。 10.O±O.2 一サーモトロピック液晶ポリマー 4.O±O.2 50.0±O.5 一硬質発泡材料,発泡材料を用いたサン 115±1 工:つかみ具間の初めの間隔 (注〕射出成形などで直接成形する試験片は1A形多目的試験片,また,板などから 機械加工によって作る試験片は1B形多目的試験片を標準(Preferred)とする。 ドイッチ構造物には適さない。 JIS K7162で使用される試験片の形状 は可能な限り図2.に示すダンベル片の1A 形または!B形を用いる。試験片を直接成 形する場合1A形の,機械加工により作製 する場合は1B形の多目的試験片が望まし 1)材料によっては,つかみ具の中での滑りや破壊を防ぐために,つかみ部の長さ を大きくする必要が有る。 (たとえば,’ヨ己200mm〕 2)。=’[(1。一11)2+(あrあ1)21/4(わ。一わ1〕 3〕11,r,凸1およびあ2によって決まる。ただし,記載した許容範囲であるこ乙 4)支障のない隈り優先的に使用する厚さ。 図2試験片!A形およびユB形 い。 一有効数字:引張応力および弾性率は有効数字3け ④各種プラスチック等の引張特性 たまで,ひずみおよびポアソン比は2 現在新計量法により計量単位は,国際単位系(SI) けたまで計算する。 が全面的に採用された。しかし,過去のデータには従 図1にJIS K7161に紹介された代表的な応力一ひ 来日本で採用されてきた非SI系で表示されているも のもある。したがって,本連載もこの単位系を便用し ずみ曲線を示す。 たデータの紹介を優先するが,非SI系のものも紹介す □45∼69 フェノール樹脂(木粉〕 ユリア樹脂いセル回一ス〕 メラミン硯脂=O・セルロース〕 [コ4君一8君 ポリエステル=ガラス櫨離〕 二11111 □6ト206 エポキシ樹脂げラス繊雑〕 [コ4ト76 ジアリルワタレート樹脂 {ガラス繊維〕 塩化ピニル樹脂1麗 ロヨ4∼62 □6.ト25 □34∼冒2 ポリスチレンー般用 S^N樹脂‘一般用〕 □66∼82 ^ 日 s 樹 脂 ポリエチレン(高密度〕 □34∼59 □22∼38 □48∼76 メタクリルメチル樹脂 □29∼3君 ポリプロピレン □14∼34 ポリ四ふっ化エチレン □62∼82 ポリアセタール 口69∼82 ポリアミド{6’6〕 {ホモポリマー〕 ポリカーポネート 日55∼66 □13∼62 ァセチルセルロース ポリフェニレンオキサイド ]76 □25∼ヨ昌 ■27 ア イ オ ノ マ ー 4一メチルペンテン・I樹脂 ジ ュ ラ ル ミ ン 7 ル ミ ニ ウ ム 木 材 フェノール樹岨冒{木粉) O.4∼O.8 ユリア樹脂〔o・セルロー刈 0.5∼1.O ’ラミン樹脂{o・セル回一ス〕 o.6∼o.9 ポりエステル〔ガラス繊雑〕 0.5∼2.0 エポキシ樹脂{ガラス域織 1.O∼6.0 塩化ピニル樹脂1麗 ポリスチレンー般用 SAN樹脂(一般用) 1.5−3.7 A B S 樹 脂 3.O∼60 50}800 ポ リ ェチ レ ン 2∼IO ポリプロピレン 200∼700 メタクリル酸メチル樹脂 ポリ四ふo化エチレン [====二====]200{400 司{リアミド ‘6 [=二二二ニコ60∼300 ポリァセクール‘ホモポI」マー〕 □一ト70 ポリカーポネート 口100∼1ヨO アセチルセルロース □トマO ポ1』フェニレンオキサイド ア イ オ ノ マ ー 4・メチルペンテン・I樹脂 □50∼80 □ヨ50∼450 皿15 炭 素 鋼 □1ト23 クロムモリプデン鋼 □7.5∼30.5 黄 銅 □ト57 チ タ ン □I2山28 口186∼196 コ. ム 伸び(%)(圧縮射出成形材料) 引張弾性率(MPa) 図3各種工業材料の引張強さの比較 =400∼1,OOO lO0 200 300400500600 700 0 100 200 300 400 500 600 700 106 2.O∼40 □300∼450 1.O∼2.5 □ 373∼4ヨ1 口69山108 569,6罧6□ 鋼 る場合があるのでご了解願いたい。なお,SI単位と従 □ヨト88 図4 各種プラスチックの破断時の伸びの比較 プラスチックス ナイロン12{未変†空) 230㌔350 ナイロン12(未変性) ナイ日ンl1(未変性) ナイロン引2{未変性〕 旧 r l…・{変性〕 ナイロン610〔未変性〕 □56∼65 口54∼67 .日49∼59 P−E (変性〕 ナイロン610{未変性) 工OO∼300□ ナイロン6{エストラマー〕 [=コ52ぺ71 ナイロン‘(エラストマー〕 160午270口 ナイロン1l{未変性〕 ナイロン612(未変性〕 口54∼58 □59㍗63 ナイロン6(未蛮性〕 ナイロン66く未変性) 口70∼82 ナイ[Iン6(未変性〕 ナイロン“{未変性〕 ホ1」カー赫一ト’棚けロイ〕 [==コ52∼83 ポりカーポネーH^田5=ア回イ〕 [コ72∼83 ポ1」涜一ポネーH非充瑚〕 □56∼66 ポ3』苗一ポネート{非充堀〕 U ポ リ マ ー □64∼8I □98∼137 1」 ポ リ マ ー ナイロン12{ヨO%O〕 ナイロン12{ヨO%O〕 口69∼73 ポリサルホン ナイロン1]〔ヨo}3ヨ咄o〕 ナイロンll{ヨo}ヨ5%o〕 口95∼l08 叩E{変性2ト300) P肥{変笹加%};o%o〕 □98∼118 P 旧 S □88,94 ,85 ホ■」工一テル甘ルホ刈非充堀〕 ポリサルホン ポ1」苗一ポネイトOO盟来請O〕 P P S ポリアリルサルホン ポ1』エーテル甘ルホ刈非充岨〕 □65∼69 ポリアリルサルホン 口65∼74 ナイロン‘{ヨo}ヨ5%o〕 ナイロン6{ヨO}ヨ5%O) 88∼177 ナイ回ン“{ヨo一ヨ5%o〕 ナイロン舶〔珊∼ヨ5%o〕 157∼196〔 78∼177 ポ1」売一ポネートO皿一珊明O〕 ポリカー赫一Nlト峨o〕 ポ3」アセクール‘コポりマー〕 □59∼63 ポリアセタール □46∼50 ポリアセタール {ホモポリマー,20%O〕 □59∼76 {ふっ素樹脂繊維充堀〕 □108∼147 ポリアセタール {コポリマー,25%G〕 PPS {40%O〕 ポ1」工一テルサルホ刈珊兜O〕 綱雌ポljエステル㈱o〕 98∼216 油駅11エステ川㎜〕㈱O〕 10ト300□ 60∼300= 口10∼15 口100∼130 □50∼95 □3∼5 □50∼ldO □3∼7 □4∼6 □1∼5 □10∼20 □30∼90 □2∼4 □3∼5 □40∼80 □09∼5 口8∼16 ポリアセタール ‘ホモポリマー.20%o〕 □2∼7 籔可壷睦ポ■」エステル=咀瑞o〕 □2∼3 ポリアセタール (コポリマー,25%O) □2∼4 □1∼5 旧PS (40%O〕 ホ,jエーテルサルホン{仙趾o〕 [========]127∼167 黒可里性ポ1』エステル{珀瑞o〕 137∼工77□ 液晶ポりエステル{LCP〕 I77∼216□ 50 100 150 □50∼60 ポ1」アセタール ポ1」了セタール=コポー』マー〕 {ふo素樹脂繊維充堀〕 口49∼53 黒可哩珪ポ■」エステル{岨緕o] 200,400□ 150∼350□ (ヨo%o〕 □3∼4 □1∼3 □2∼7 1 2345 10 20ヨ04050 IO0 200 400 300500 200 伸 び(%) 引張強さ(MPa) 図6 破断時の伸び(%) 図5引張強さ(MPa) フェノール構閉旨(ヨ倖弛一fヒ〕 口2,750∼4,l02 1木粉充狽〕 □5,510∼11,700 □6,90ト10,300 ユリア樹脂{ゼセル回一ス充頓〕 口7,600∼9,600 □5,510∼l l,700 メラミン櫛脂{o・セルロース充測 1メラミン・フェノー州。・セルローユ充剛 フーノール樹脂/若驚 □2,070}4,410 {oP布棚層) 口1,lll1ll.1ll エポキシ樹脂(非強化) {0F充坂) ジアリルフタレート樹脂(非強化〕 塩化ビニル樹脂(硬質) ポリスチレン(一般用) 口4.6−7,0 03.9㌔4.8 不飽和ポリエヌテル樹脂〔非強化〕 ■2,410 皿20,700 ユリア樹脂{血セルロース〕 メラミン樹脂〔皿セル日一ス) 口2,28ト3,2畠O □4.9∼9 エポキシ樹脂(ガラス繊維) □1ト35 [二=二]7∼21 ジアリルフタレート樹脂{ガラス繊維〕 [コ4I2∼7.7 ポリエステル(ガラス繊維) 口9,60ト15,200 □2,4IO∼4,140 [コ3.9∼9 塩化ピニル樹脂/緩警 口3.卜6.3 0.7∼2.5 SAN樹脂(」般用〕 ABS樹脂{一般用〕 □ 3,2君O山3,昌60 口1.86ト2,760 ポリスチレンー般用 口2,240∼3,240 S A N 樹 坦旨 A B S 樹 坦旨 □6.7∼8.4 P M M ^ 樹 田旨 ポリエチレン{高密度) メタクリル酸メチル樹脂 □2.2}3.9 ポリエチレン{商密度〕 工1,070∼1,090 ポリプロピレン ポリ四ふo化エチレン □1,140∼1,550 □390山550 ポ リ ア ミ ド 6 −2,620 ポリアミドイミド ポ リ イ ミ ド −4,450 口2,070 ポリアセタール{ホモポリマー〕 □ 3,100∼3,590 ポリカーボネート [==]3.5㌔8.4 □3.5∼6 ポリプロピレン □4.9㌔7.7 日3.O,3.9 ポリ四ふっ化エチレン □1.4∼3.5 ポりアミド(6’6) □6.3∼9.4 ポりアセタール=ホモポりマー〕 口7.O∼8.4 ポリカーポネート []5.6∼6.7 ポリフェニレンエーテル −2,380 回2,450}2.620 ポ リ ス チ レ ン 02.480 ポリフェニレンオキサイド ポリフェニレンサルフ7イ ポリエーテルサルホン 引張弾性率くMPa) 図7 ァセチルセルロース 03,300 皿2,410 102 103 104 105 各種プラスチックの引張弾性率 口1.3∼6.3 ア イ オ ノ マ ー □7.7 □2.5∼3.9 4一メチルペンテンー1樹脂 □2.呂 ジ ュ ラ 」レ ミ ン □38∼44 ァ ル ミ ニ ウ ム 鋼 □7∼11 木 材 一9}20 5ト70□ 0 10 20 30 40 50 来の非SI単位系との換算表は,すでに本連載の第一回 に記載したので参照願いたい。 60 70 引張強さ(kg/mm!) 図8 各種工業材料の引張強さの比較 各種工業材料とプラスチックの引張強さを図3 に4〕,プラスチックの引張破断伸びを図4に示す。また Vol.5ユ,No.8 ユ07 ポ/エステル(鶉孟) [==コ11∼21(比重1,7) エポキシ梛旨(欝孟) [=コ3.9∼1l.6(1.8) ナ イ ロ ン 66 □5.卜7.4(1.14〕 ボリカーボネート 口4.9∼7.O(1.2) ポリアセタール 硬質塩化ビニル樹脂 表2標準試験片の寸法 A 測定項目 (単位:mm) 長さ1 幅凸 厚さ免 弾性率 50±2 10±0−2 4±0.2 強さ 10一。十〇 口4.9∼5.9(1−43〕 □2I5∼4.5(1.4) 比強度の比較を図9に示す。硬鋼では,7.4∼8.9kg/ ジ ュ ラ ル ミ ン 口13.6∼15.7(2.8) ア ル ミ ニ ウ ム 硬 鋼 木 材 口2.6∼4.1(2.7) mm2,ジュラルミンではユ3.6∼15.7kg/mm2程度し □7.4∼8.9(7.85) かならないものが,ポリエステルガラス繊維クロス充 口14.3∼14.6(1.4〕 填品(FRP)では,21.0kg/mm2という大きな値とな O l0 20 30 40 引張強さ 比抗張力= kg/mm! 比 重 図9比抗張力の比較(同じ重量当たりの材料強度) る。 引張破断伸びは,複合材料である熱硬化性樹脂は非 常に小さく,熱可塑性樹脂で非強化グレードでは靭性 に大きな材料は,大きな値を示す。しかし,強化グレ ードの伸びは小さい。 性率を図5∼7に示す5〕。 金属材料の伸びは数%∼数10%の値である。工業材 料のうち,ゴムは非常に大きな値を示す。 各種業材料の引張強さを比較すると,図8に示すよ 引張弾性率は,熱硬化性樹脂が熱可塑性樹脂より高 うに鋼鉄では最高70kg/mm2以上,アルミニウム合金 い値を示し,とくに不飽和ポリエステル樹脂のガラス のジュラルミンで44kg/mm2程度の値を示すが,プラ クロス強化の積層板は高い値を示す。 スチック材料では熱硬化性樹脂のポリエステルガラス 繊維強化晶(FRP)が最大35kg/mm2でもっとも高い 値を示す。強度の高いエンプラ関係の材料では,スー 2−4−7.圧縮特性 パーエンプラの非強化グレードでは,PESの18kg/ 体,立方体,円柱形または円筒形のブロック状の試験 各種エンプラの引張強さおよび引張破断伸び,引張弾 ① 圧縮特性の測定方法(圧縮試験) プラスチック材料の圧縮特性を測定するには,直方 mm2がもっとも大きな値で,強化グレードでは,熱可 片を2枚の平行板面にはさみ,その両端から圧縮力(圧 塑性ポリエステルが22kg/mm2と高い値を示す。 縮荷重)を加えて破壊するまでの応力(圧縮応力)と また・最近目ざましい発展をしているLCPは,かな ひずみ(縮み)の関係を求める6〕。 り値のバラツキが大きいが,これは,分子構造が異な JIS規格ではISO規格であるIS0604■m93を日本 るためである。LCPの中では非常に強度の高いものが 語翻訳したJIS K7181■1叫7〕がある。 ある。 JIS K7181(プラスチックー圧縮特性の試験方法) しかし・全般的にいってプラスチックの引張強さは の圧縮特性と引張特性との違いはあるが,内容的には 金属と比べるとその値は非常に小さい。 JIS K7161とほぼ同一である。 プラスチック成形品の強度比較では,同一形状の試 本規格に適する材料は,JIS K7162と同]である 料の強度比較と,相似形の試料について同一重量当た ・試験片で,標準試験片の寸法は表2のとおりであ りの強度を比較する場合があ乱 る。 引張強さの意味はあくまで,同じ切口断面の試料に ・計算と試験結果の表し方 ついての引張強さの比較で,結局“同一体積当たりの 一応力の計算 強さ”を示すことになる。すなわち,同一形状の試料 圧縮応力は,試験片の初め(応力をかける前)の断 についての比較値となる。しかし,近代工業は,自動 面積をもとにつぎの式にて算出する。 車,航空機等の交通機械では“軽くて強い”材料が要 求されている。すなわち・材料の特性項目で示すと‘‘同 F σ=7 一重量当たりの強さ”が問題となる。“同 重量当たり ここに,σ:圧縮応力 (MPa) の強さ”は比強度と呼ぱれる量で示される。その値は F:圧縮荷重 (N) λ:試験片の初めの平均断面積 (mm2) 一ひずみの計算 引張強さを比重の値で割って与えられる。 比強度=引張強さ 比重 108 圧縮ひずみは標線問距離をもとにっぎの各式(2)に プラスチックス よって算出する。 ポリェステル1鵠姦 △五〇 ユリア樹脂 メラミン樹脂 ε=丁 52 17∼28 17∼30 エポキシ樹脂1繋物墨 △Lo ε(%)二100×τr 13 ポリスチレン アクリル樹脂 8∼11 4.8}I2 ポリエチレン樹脂 ここに, 1I69以下 ナイロン6 5.O∼9.1 ε:圧縮ひずみ(無次元の比また ポリカーポネート は%) 硬質塩化ビニル Lo:試験片につけた初めの標線 7.7 7.O∼11.3 ステアタイト 間距離(mm) 45,91 アルミナ磁器 電気用陶器 △Lo:標線問距離の減少量(mm) 56∼110 17.5}35.0 一弾性率の計算 35 鋼鉄 圧縮弾性率は2点の規定されたひ ずみの値とともにつぎの式によって 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 算出する。 圧縮強さ{kg/mm2) σ2’σ1 E。= ε2■ε1 図10各種プラスチック材料と工業材料との圧縮強さ ここに,凪:圧縮弾性率 140 奄120 (MPa) ω:圧縮ひずみε。=O.0005において測定 ξ1・・ /w 犯弓 泉/イツ・ ぺ ・・ ^◇ 。ペナ r イ 脊 1.400 1.200 1,OOO{ =… 800 ) された圧縮応力 (MPa) q:圧縮ひずみε1=O.0025において測定 580 された圧縮応カ (MPa) 一有効数字:圧縮応力および弾性率は有効数字3け 僅60 鐸 出40 渠 たまで,圧縮ひずみは2けたまで計算 20 0 10 20 30 0 只 600邊 400出 200 只 ②各種プラスチック等の圧縮特性 図10に各種プラスチックおよび他の工業材料の圧 縮み率1%〕 図11各種プラスチックの圧縮応力一ひずみ曲線 縮強さを示す4〕。圧縮強さも,ガラス繊維クロス充填 PEEK/30%GF ■ ■ ■ ■ ■ PSFμO%GF ■ FRPがもっとも高い値を示している。鋼鉄は,約35 kg/mm2の値をもっているが,プラスチック材料では ふつうの成形品で10kg/mm2程度で低い。しかし,ガ ラス繊維クロス充墳ボリエステル成形品は52kg/mm 2の高い値をもち,鋼鉄の値を大幅に越えている。磁器 ㊥ ■ PBT/40%GF/ ↑ 昌1,500 ■ ■ PBT/15%GP ●PBTβO%GF 、、、・ヅ撫ヅ・㌻帥・胃 750 500 250 一 ポリアセタール ポリカーボネート 白o PBT.昆・4ロン。 ポリアミド ポリブロピレン ε R 硬質塩化ビニル樹脂 ポリアミ“ ポ1カーボネート ポリアセタール 1086420246810 (縮み〕 (伸び〕 ひずみく%) 図12各種熱可塑性樹脂の引張,圧縮挙動 Vol.5ユ,No.8 500 追 追 750 7 / / £ ポリプロピレン ㊨PSF/ .ナイロン66 出 R500 1,OOO ■POMコポリマー 鍵1,OOO 冨 o 5 250 O○変性PPO ■■■PC/30%GF 舳 灘 100 0 OPFA OPTFE GF:ガラス繊維 0 500 1,OO0 1,500 引張強さ (kgf・om■2〕 図13エンジニアリングプラスチック(無充填および充填系)の圧 縮強さと引張強さの比較 109 いては,降伏点における圧縮応力,すなわち,降伏応 力をもって表すか,または一定のひずみ(縮み)を生 じたときの圧縮応力,たとえぱ,ひずみ量ユ%のときの 。子 圧縮応力(ユ%圧縮変形応力)等をもって表す。 2−4−8.せん断特性 ①せん断特性とは 図14せん断ひずみ (ずり変形) せん断特性とは,たとえぱ図14のように,物体の底 面を固定し,これに接する他の面に固定し,これに接 する他の面に接線外力Rを加え,これにより発生す る応力(せん断応カ)とひずみ(ずり変形)との関係 ガイドヒノ 目 によって示される機械的性質である。図において上面 試験片 ダイ 8 一 ■φ’25・40 Ml\1 の移動量を∂(mm),これに対する角度をθ,上面の面 『1〔〇一 半η曜s 積A(mm2),高さ∬(mm)とすると,接線において 作用する外力Rに対するせん断応力σ。は R σ・=兀 1 となる。 畠 プラスチック材料においては・せん断特性は一般に はあまり重要視されていない。しかし,熱硬化性樹脂 1 lb■串惣臨 bポンチ 1φ25.37) ②座金 (φ25.3ηφlO.③ナット{MlO) 積層板や熱可塑性樹脂のシートやフィルム類の打抜き (パンチング)加工において直接問題となる物性であ (φ253ηφl05) る。またせん断応力は物体にどのような外力がかかっ 臨 ③ナット{MlO) た場合にも・大小の相違はあるが必ず発生してい乱 図15せん断試験装置(JIS K7214) すなわち,せん断特性には前述の“直接的せん断特性” (単位:mm〕 の他に,曲げやねじりにおける曲げモーメントあるい 製晶の圧縮強さの値は,他の工業材料の値よりきわめ て大きい。もっとも大きなアルミナ磁器の値は はねじりモーメントによるものや,引張,圧縮におい て荷重を受ける断面の位置(たとえば引張あるレ)は圧 56∼110kg/mm2程度の高い値を示している。また,図 縮応力に対しある角度をもつ断面において)によって 11に各種プラスチックの圧縮応力一ひずみ曲線の例 付随的に発生する等・いわぱ“間接的”なものがある。 を呂〕,図12に各種熱可塑性樹脂の引張,圧縮挙動を示 す9〕。また,図13にエンプラの引張強さと圧縮強さの 関係を示す。 せん断特性の測定方法としては,JIS K7214■1眺5・10〕 (プラスチックの打抜きによる試験方法)に規定されて いる。この試験方法では,図15に示す試験装置を使用 これらの図より多くのプラスチックは圧縮強さの方 して,厚さ1.O∼12.5mmの50mm□の角板(または が引張強さより大きい傾向にあること.が分かる。 50mmφの円板)をポンチで打抜く方法で,せん断面は プラスチック材料の圧縮強さは,その引張強さにく ポンチの外形(25.37mm)と試験片の厚さとによって らべ一般には高い値である。熱可塑性樹脂のうち,ポ 形成される円柱の周囲面となる・〕。 リエチレン,ポリプロピレンおよび耐衝撃性ABS等 ②剛性率(横弾性率) 前述の図13で外力(せん断荷重P岳)によって上部平 面の移動量(変形量・ずり)は元の平面に対しての の弾性に當む材料では,荷重をかけるとまずふくらみ, さらに圧縮を続けると偏平状に押しっぶされるだけ で,完全に破断(または破砕)するには至らない。し かし,熱硬化性樹脂や一般用ポリスチレン等のように 硬質で,しかも比較的もろい材料では,圧縮により破 砕する。このため,このような材料については圧縮特 性は重視されるが,一般の熱可塑性樹脂ではそれほど ∂ ε岳=一=tanθ 亙 関係となるが,このε。をせん断ひずみ,またはすへり 変形量と呼ぶ。外力の変形量がその材料の弾性限度以 内である場合,このせん断ひずみ6〃とせん断応力 σ岳の関係は 重要視されていない。 完全に破断しないプラスチック材料の圧縮特性につ 110 プラスチックス 表3各種プラスチックスのせん断強さ・引張強さ・剛性率・縦弾性係数 類 せん断強さ(MPa) プラスチック 別 フ 熱 可 塑 性 樹 脂 剛性率G ビッカース硬さ 縦弾性係数(参考〕E ねじりせん断 (MPa〕 (MPa) 払 (GPa〕 木粉入 り 75 56 45 1,230 布 入 り 74 48 43 890 アスベスト入り 52 25 24 ユ,290 38 ユ リ ア樹脂 86 49 42 1,730 49 6.9∼10.3 メラミン樹脂 ポリエステル 80 58 51 1,310 50 8.2∼9−6 60 58 43 670 17 2.1∼4.ユ 素フイラーなし 53 59 51 ユ,140 1.350 25.8 29.1 2.7∼8.9 63 64 450 7,1 O.98∼2.55 12 600 4.9 0.4∼0.98 工 ノ 熱 硬 化 性 樹 脂 引張強さσ王 直接せん断 i ノレ 主Nフィラー入り 49 ナ イ ロ ン 6 67 ■ 52 17 22 ポリエチレン ポリプロピレン ポカーポネート 40 66 一 6 34 42.4 27.1 7.5 一 730 61 R σ8=一=G×ε占二G・tanθ 29.1 5−5∼1!.8 ■ 6,9∼20.6 ■ 1.08∼1.37 5−9∼9.8 σ’(MPa〕 λ となる。このG(MPa)は,剛性率(rigidity)または 10 020406080 横弾性係数あるいはせん断弾性係数とよばれる。この 100 80 横弾性係数(亙)がσ二E・εの関係より求められるこ 60 記 ε とを対比してみれば,いっそう理解しやすいであろ う6〕。 40 ぎ ③各種プラスチックのせん断特性 20 表3に各種プラスチックのせん断強さ,引張強さ, 剛性率,硬さ,縦弾性係数を示す11〕。また,図16に直 0 2 4 ’ 6 8 接せん断強さと引張強さの関係を示す。 引張強さσ。{kg/mm,) これらの図,表より熱硬化性樹脂では,直接せん断 強さは引張強さより大きく,熱可塑性樹脂では両者が (注)σ皿=σ・σ’ 近い値を示していることが分かる。また,ねじりせん 口=1.7 熱硬化性プラスチック =1.0 熱可塑性プラスチック 断強さは熱硬化性樹脂では引張強さと同等であり,熱 (=O.8軟鋼) 可塑性樹脂ではねじりせん断強さと引張強さとの間に 図16直接せん断強さと引張強さの関係 特に相関関係はないといえるデータである。 次回は機械的性質の試験・評価方法の曲げ特性等に 8)「プラスチック成形加エデータブック」p.40,㈹日本塑性加工 っいて述べる。 学会編 日刊工業新聞祉,昭和63年3月25日初版第1刷発 <参考文献〉 1〕JIS K7161一・雪咀(プラスチックー引張特性の試験方法 第1 部:通則〕 2〕JIS K7162■1葭胴(プラスチックー引張特性の言式験方法 第2 都:型成形,押出成形および注型プラスチックの試験条件) 3〕「JISハンドブック プラスチック試験編」1999年4月21日 行 9)「プラスチック・データブック」p.109,旭化成アミダス㈱ノ「プ ラスチックス」編集部共編 ㈱工業調査会1999年12月1日 初版第ユ刷発行 ユ0〕JIS K7214−1眈5(プラスチックの打抜きによるせん断試験方 法) 11〕山口1プラスチック年鑑,㈱工業調査会(1967) 第1版第1刷 日本規格協会発行 4)桜内雄二郎:「新版プラスチック材料読本」工業調査会,1998 隼4月1日,新版4刷発行 5)小太刀:東芝技術資料 6)「成形加工技術者のためのプラスチック物性入門」廣恵章利, 本吉正信共著 1996年1月31日第3版第1刷発行(日刊工 業新聞社〕 7)JIS K7181−1・帥(プラスチックー圧縮特性の試験方法) Vo工.51,No.8 111
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