PDFをダウンロード - 九州大学総合研究博物館

The Kyushu University Museum NEWS
March 2015
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九州大学総合研究博物館ニュース
第一
知らせ
お
の
化
格
転本
分館閉館、移
。
行 われます
年 の10月に
今
が
転
移
等の
。
年 、理 学 部
いたしました
移 転 から 9
ことに決 定
る
す
き、
転
工学 部 等 の
移
等が
の 解 体 に続
には 、農 学 部
学部 2 号 館
工
旧
、
。
り
その 3 年 後
ま
理が 始
越しをします
ャンパスの 整
等 への引っ
キ
館
崎
本
箱
部
て
学
し
り、旧工
それに並 行
年度に決ま
ます 。
の解 体も次
を本 格 化し
館
分
一
第
えての活 動
据
見
を
博 物 館の
館
い博 物
今 後は 、新し
茂二郎
総合研究博
物館第 7 代
館長
吉田
市役所1階にデザインミュージアムが出現しました
九州大学総合研究博物館 公開展示
「ふくおかをしあわせにするデザイン」
開催期間:2014 年12月20日(土)∼12月26日(金)
メイン会場:福岡市役所1階多目的スペース/サテライト:We Love 天神コミュニティガーデン
担当: 松本
隆史
開示研究系・助教
年末も押し迫る12月20日、福岡市役所
これは、当館の公開展示として、
「ふくおか
の1階に突如ミュージアムが出現しました。
をしあわせにするデザイン」をテーマに、
中には、周囲 360 度がスピーカーに囲ま
大学院芸術工学研究院の研究・教育成果
れた音響 装置や、空気砲による占いシス
を特集したイベントでした。
2013 年には、九 州大学と九 州芸 術工科
テムなど、体 験 できる作 品 が いっぱ い。
九 州 大 学 大 学 院 芸 術 工学 研 究 院 は、
大 学との統合 から10 周年を迎えたこと
1968 年に設立された九州芸術工科大学
を ル ーツ に 持 つ デ ザイン スク ー ル で、
「芸 工」の 愛 称 で 親 し ま れ て い ま す。
《 p.2 へ 続く》
ISSN 2187-865X
九州大学総合研究博物館ニュース
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催事・展示クローズアップ
《p.1 から続く》
か ら、今 年 度 の 総 合 研 究 博 物 館 公 開
ティブライブパフォー
普 段、収 蔵 品 の
展示は、芸工の最新の教育・研 究成果を
マンスや、古 楽 器 の
展 示 やハンズオン
ご紹介しました。
演 奏 会 など も 行 い、
を 行うことが 多 い
メイン 会 場とな った 、市 役 所1階 の
一時は立ち見も出る
当 館 で す が、デ ザ
スペースでは、インタラクティブ作品の他
など、多くの 来 場 者
インミュージアムの
にも、パブリックデザインの解 説、錯 視・
にお 越しいただきま
空 間を作ったのは
色彩の研 究、ふくおかの問題を解決する
した。天 神 ライオン
新しい 試 みでした。
ロボットのデザイン、活躍する芸工
マジックバルーンを体験
卒 業 生の紹介など、芸 術工学 研 究
広 場 前 に は、
市 役 所 を 訪 れ る 多くの 市 民 の 皆 様 や、
院 が 取り扱うデザインとその成 果
サテライト会 場
冬 休みに入るとたくさんの子 供たちにも
の多様性をご紹介しました。
を設け、3D 映像
ご来場いただき、九州大学のデザインの
また、会期中、モーションキャプ
の上映を行いま
取り組み について知 っていただく良い
した。
機会になりました。
チャーシステムを使ったインタラク
イメージラマのパフォーマンス
The Museum
of Music
−九大・芸工からひもとく
電子音楽の世界−
期間: 2014 年 12 月 20 日
(土)
Trübe
−かげと光の
インスタレーション−
期間: 2014 年 11月 22 日(土)∼30 日(日)
場所: 博物館第一分 館倉庫(旧知能機 械実習工場)
担当: 小西
郁
芸術工学府・博士後期課程
章
学術研究会と
バックヤードツアー
「人間・環境学会 (MER A) 第 105 回研究会」
期間: 2014 年 11月15 日
(土)
「全日本博物館学会 2014 年度
第 2 回博物館教育研究会・エクスカーション」
場所: 博物館第一分 館倉庫(旧知能機 械実習工場)
担当: 尾本
短い 会 期でしたが、
(日)
期間: 2014 年 12 月 28 日
芸術工学 研究院・教授
「Trübe」は、第 一 分 館 倉 庫 の 光 や 風
担当: 三島
美佐子
開示研究系・准教授
を視覚化し、空間を流れる時間と人の
関わりをテーマにした作品です。空間
《T he SI N E WAV E ORCHEST R A》の様 子
全体に吊した布の中を鑑賞者が自由に
M ER A 研 究 会「場 所 の 記 憶とミュー
歩き、時折見える工作機械や刻々と変
ジアム」が、第一 部・キャンパス建物見学
化する光、人の動作から生まれる風の
を 含 む バック
動きなどを体感することで、わたした
ヤ ードツアー、
ちをとりまく「環境」を共にそしてあら
第 二 部・研 究
たに感じてみたいと考えました。滞在
会として 実 施
時 間 が 1 時 間 を 超 え る 方 も 多 く、充 実
さ れ ま し た。
した作品展となりました。
移 転に伴う閉
c SHINOMIYA Yuji
鎖が来年度予
よいお天気に恵まれた第一部のツアー
九 州 大 学 および 九 州 芸 術 工 科 大 学
定されている第一 分 館 で 開 催されたこ
(現九州大学芸術工学部:芸工)にゆかり
の研 究会では、ミュージアム的なものの
のある作曲家や技術 者の電子音楽作品
あり方について深い議論がなされました。
について、レクチャーコンサートを行い
また、年 末 には、博 物 館 教 育 研 究 会 の
ました。日本 の 初 期の 作 品から最 近 の
エクスカーションとして、当館バックヤード
作品まで 5 つの作品を取り上げました。
会場の風 景
ツアーが実施されました。
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Close-up Event & Exhibition
2014 年
夏の昆虫展示
たものです。大きな生物ばかりが 注目を
模 様が特 徴です。姿は似たようなもので
集めがちですが、どの生き物も等しく自
も、模 様 が 異 なり、種 が 異 なるという、
然界で大 切な役割を担っていることをう
生物 多様 性のまた違った側 面をお見せ
ったえる内 容 で
できたかと思います。
(金)∼ 8 月 29日
(金)
期間: 2014 年 8 月1日
し た。小 松 さ ん
夏休みには糸島市の志摩歴 史資 料館
場所: 常設展示室
は九州大学熱帯
で世界各地のきらびやかなチョウやガを
農 学 研 究センタ
あつかった「すばらしい世界の蝶と蛾」と
ーで日本学 術 振
いう展示を行いました。これは九州大学
興会特別研究員
で行っている社会 連 携事 業の一環です。
「裏山の昆虫−小松 貴 写真展」
「おしゃれ虫 ・カタゾウムシ」
期間: 2014 年 9 月1日
(月)∼11月 30日
(日)
場所: 常設展示室
「裏山の昆虫」の様子と小松貴さん
(PD)として研 究していて、同時に写 真
「すばらしい世界の蝶と蛾」
(土)∼ 8 月 31日
(日)
期間: 2014 年 8 月2日
家としても活躍しています。
場所: 志摩歴史資料館
その 展 示 に 続
担当: 丸山
宗利
開示研究系・助教
当館収蔵の烏山邦夫標本より、約 2000
き、同じく常設展
示 室 で、
「 おしゃ
れ 虫 ・カ タ ゾ ウ
2014 年も毎年恒例の昆虫展 示を行い
ムシ」を行いまし
ました。
た。フィリピンを
常 設 展 示 室 で は、
「裏山の昆虫−小 松
中 心 に 生 息する
点の 標 本を展 示し、たい へ ん 壮 観 な展
貴 写真展」を行いました。福岡県に生 息
飛 べ ない 甲虫の
示内容となりました。
する身 近 でありながら一 般にその 存 在
な か ま で、宝 石
2015 年度もなにか昆虫の展示を行い
を知られていない昆虫やクモを対 象とし
のような 美 しい
科学描画
「すばらしい世界の蝶と蛾」の様 子
美しいカタゾウムシの一種
たいと思っています。お楽しみに。
のひとつとしての「科 学 描 画」に 着目し、
ま で 至 る、深
その本来 的な意 味 や芸 術 性との関わり
い 議 論となり
について、3名の演者の皆様よりお話い
ました。
公開講演会
ただきました。三中信 宏氏(農 業 環 境 技
翌 日 に は、
(土)
期間: 2015 年 2 月 21日
術 研 究 所)からは、見えないものや概 念
この公 開 講 演
を可 視 化 するという視 点、木 村 政 司 氏
会 に 連 動した
−科学と芸術のはざま−
場所: 旧工学部本館1階大講義室
連動ワークショップ
期間: 2015 年 2 月 22 日
(日)
場所: 21世紀交流プラザ I 多目的ホール
連動ミニ展示
(土)∼3 月 27 日(金)
期間: 2015 年 2 月 21日
場所: 常設展示室
主担当: 三島
副担当: 福原
美佐子
美恵子
ミニ展示・金平亮三のコーナー
(日本 大 学)からは、精 確に画くというこ
ワークショップ『毛糸で「描こう」!ポンポ
とだけ ではない 構 成 力の重 要 性、田中
ンでどんぐり』が開催されました。小さな
伸 幸 氏(高 知 県
お 子さん をはじめ、
立 牧 野 植 物 園)
楽しそうに 毛 糸で
か ら は、記 載 画
のドングリ作 成 を
では 必 要なもの
楽しまれていました。
開示研究系・准教授
を強 調し不 要な
連 動 ミ ニ 展 示
総合博物館・研究支援推進員
部 分を 省く事 や
「金 平 亮 三の 植 物
補 填 す る こ と、
幅広い話題が
画」は3/27まで
講演会の様 子
開 催 さ れ、見 事 な
「科 学 描 画ー科 学と芸 術のはざまー」
提 供されました。総 合 的 な 質 疑 応 答 で
植 物 描 画 22 点が、その元となった実 物
と題した公 開 講 演 会では、科 学 的 手 法
は、出版の状況や日本の文化のあり方に
標本などとともに展示されました。
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Series : Courses Related to the Museum
シリーズ・大学博物館の授業紹介
その4: 博物館情報学特論
博物館からの情報発信を考える
中西 哲也
分析技術開発系・准教授
大橋キャンパスでの講 義
箱崎キャンパスでの標本巡り
学生によるプレゼンとディスカッション(箱崎)
博 物 館 情 報 学 特 論 は、大 学 院 芸 術
は言えません。
標 本の活 用と情 報 発 信」について、各人
工学府のコンテンツ・クリエイティブデザ
博 物 館情 報 学 特 論 では、芸 術工学府
自由にアイデアをまとめてもらいます。
インコースの学生(修士、博士)を対象に、
の専門性を活かし、
「デザインやコンテンツ
3日目は、それぞれの学生がプレゼンを
後期集中講義として開講しています。
の素材としての学術標本の価値の再発見」
行い、議論を深めます。毎年、コンセプト的
博物館は一般に、標本・資料(実物)を
や、
「 新 しい 情 報 発 信 手 法 のアイデ ア
なものから、具体的な実 施 案まで、芸 術
収 集・保 存・展 示する場であると思われ
出し」を念 頭に、3 日間の集中 講 義を行
工学府の学生ならではの斬新なアイデア
がちですが、同時に、様々な情 報を創出
っています。
が 提案され 、有 意 義 な 議 論を 楽しんで
し、発信する場でもあります。現在、九州
1日目は 大 橋 キャンパスの 講 義 室 で、
います 。
大学には約 750 万点の標本・資料があり
博物館における情報の分類、展示におけ
この 講 義 は、学 芸員 資 格 の取 得とは
ます が、その 大 部 分 は 学 内に分 散して
るマルチメディアの利用やネットワークを
直 接 関 係しませんが、芸 術 工学 府 で の
収 蔵され、九 州大学の学生を含め、一 般
活 用した情 報 発 信 等について、従 来 の
教育・研 究における標 本の活用や、将来
の人々の目に 触 れ る 機 会 はごく稀 で す。
基本的な概念を学んでもらいます。
の総合研 究博物館における展示手法や
九 州大 学 総合 研 究 博 物 館では、展 示や
2日目は、箱 崎キャンパスに収 蔵され
情 報ツールの開 発につながる事を大い
標 本データベースの構築、デジタル画像
ている岩石鉱 物、昆 虫、植 物、骨 格 標 本
に期待しています。
のアーカイブ等を行い、学内外への情報
等、様々な標本をじっくり見て回り、その
発 信に努めていますが、まだまだ十 分と
体 験を元に「九 大 博 物 館における学 術
館内探訪
さようなら第一分館
として開館しました。こ
展 示を 実 験 的・意 欲 的 に 実 施して、
こには全学的な改修工
学 内外 の方々に当 館の活 動の異色
事や移転に伴い保全が
性を印 象付けるとともに、好 評 価を
必要となった古人骨資
いただいてきました。しかしながら、
料・動 物 骨 格 標 本・考
箱崎キャンパスの売却に備えた解体
当 館の創 設 時には全く収 蔵 施 設
古学資 料・歴 史的工作 機 械など、当
整地の対 象となったため、収 蔵する
がなかったため、2005 年の工学部の
館に移管された資料の大半と鉱物標
資料類すべてを箱崎キャンパス内の
伊 都 への 移 転に伴い、旧 知 能 機 械
本を収蔵してきました。それらを様々
他建 物に移して閉 館することになり
工場
(約 4000 ㎡)
の貸与を受け、改修
な催事・行事の際に一般公開するとと
ました。5月には閉 館 式を実 施 する
を加えた後、2006年4月に
「第一分館」
もに、他博 物 館とは異なった催事や
予定です。どうかおいで下さい。
担当: 岩永
省三
総合研究博物館副館長
第一 分 館のスターだった工作 機 械たち
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Series : Museum Jobs from A to Z
シリーズ・大学博物館のお仕事紹介
世界一行きたい科学広場 2014 in 宗像
神獣鏡 3D ぬりえワークショップ
松本 隆史
舟橋 京子
開示研究系・助教
開示研究系・助教
三島 美佐子
開示研究系・准教授
博物館の収蔵品をよく観 察し
物として使 われて
に 取り込 まれ ます。そして、取り込 んだ
てみると、何 気なく眺 めている
いました。正 式 に
デ ー タ を、3Dプ リンタ で 印 刷 すると、
だけ では気 が つかない 様々な
は「半円方形 帯 神
複 製 が 出 来 上 が りま す。元 の 文 様 は、
発見があり、創造力が豊かにな
獣 鏡」と名 付 けら
ぬりえをするには細かすぎるので1.5 倍
れており、文様をよ
のサイズに拡大し、獣と神様の部 分 だけ
りま す。当 館 は、昨 年 8 月に 宗
獣と神様の部分の 3D データ
像ユリックスで開 催された「世界一行き
くみると、その名のとおり3 組の
「神様」
と
を、白色のプラスチックで 印刷しました。
「獣」
が 描かれており、その周 囲 に半 円と
これを10 個ほど作り、会場に用意しました。
たい 科 学 広 場 2014 in 宗 像」に参 加し、
けもの
四角が配置さ
会場では、参加
この科 学イベントには毎年参加していま
れています。
者の皆さんが、先
すが、今年度は新たな試みとして、3D 技
この 獣をよく
生の 解 説 を 聞 き
術を活 用した考古 資 料 の観 察のワーク
見 てみ ると、な
な がら 神 獣 鏡 を
ショップを行いました。
かなか愛らしい
観 察し、思い思い
今回、観察の対象に選んだのは神獣鏡
顔をしています。
の色で塗りました。
で す。いまから約1800 年ほど 前に中国
そして、考 古 学
で作られたこの鏡は、祭祀の道具や贈り
の岩永教 授に
「いろいろ観 察隊」ブースを出展しました。
しんじゅうきょう
半円方形 帯神獣 鏡
神 様と獣 の 位 置
は 説 明と観 察 に
参加者のみなさんの作品
よると、獣 は 胴 体 が 長く描 か れており、
よって 理 解 できま
神 様 は 獣 の背 中に乗 っているとのこと。
す が、細 か い 部 分
文様のデザインを理 解すると、愛着が 湧
や 色などに つ いて
いてきて、いろいろと興 味が出てきます。
は、解 釈 や 想 像 の
そこで、子 供達にもこの文 様を観 察し
余 地 が あ り ま す。
理 解してもらうために、ぬりえを作成しま
出 来 上がった作品
した。利用するのは、最新の3D 技術です。
はどれも個 性 的 で、
3Dスキャナで神獣鏡を撮影すると、立体
まさに十人十 色の、獣と神 様が出来上が
的 な 形 状 がデータとしてコンピュー タ
りました。
観察しながら塗り絵をします
これも博物館のお仕事
毛糸で 描こう!ポンポンでどんぐり
担当: 福原
美恵子
研究支援推進員
担当: 三島
美佐子
開示研究系・准教 授
ポンを作り、ドングリのかたちに整え
ました。どんぐりの 帽 子 には「巻き
も楽しみ な がら体 験 できた 2 時 間
巻きの模 様 があるよ」、
「 ライオンの
でした。
たてがみのよう」
、実の形には
「おかあ
さんのおっぱいみたい」との感 想が
平成 26 年度公開講演会のテーマ
こんな 木 の 実 でした。」とお友 達 に
飛び出す中、毛糸をくるくる巻いたり、
「科学描画」
に関連したワークショップ
伝える場面を想像して作ってください
ハサミでサクサク切る作業も楽しみ、
を 2 月 22 日に実 施し、小学生とその
との、私 たちか らの 提 案 を 受 け て、
時間内に2 種類のどんぐりを作ること
保 護 者を中心に 19人に参加いただ
参加者の皆さんは自身で選んだ本物
が できました。科 学 の 基 本 である
きました。
「 私が 観 察したどんぐりは
のどんぐりを見ながら、毛 糸のポン
「観 察」とその「記 録」を、子 供も大 人
いろいろな方向から見て形を整えています
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March 2015
シリーズ・九大博物館での研究の紹介
科学研究費補助金による研究:その10
眼の軟組織が保存された最古の魚類化石発見!
研究代表者:
田中 源吾
熊本大学沿岸域環境科 学教育研究センター
研究分担者:
前田 晴良
今回、アメリカ合 衆 国カンザス州から
高度な情報を含んでいるので非常に重視
産出した石炭紀後期(約 3 億年前)の棘魚
されています。そのため「化石鉱脈」
の研究
類の一種である「アカントーデス」の化石
は、現 在 の古生 物 学 における世 界 的 な
(写 真A)に、通 常 で は化 石 に残らない
潮流のひとつになっていますが、日本では
眼の軟 組 織が 例外 的に保存されている
この分野の研究が立ち後れていました。
ことを発見し、詳 細な分析を行いました。
しかし、九州大学・熊本大学などが連携
その結果、3 億年 前の魚 類に、1)色を
した 結 果、
「 化 石 鉱 脈」に 関 する日 本 初
識別する錐 体 細 胞、2)明 暗を識 別する
の 研 究 拠 点 が 九 州を中 心 に 形 成され
桿体細胞、3)昼夜ふたつの視覚様式を備
つつあります。今後、さらに連携を深めて
えていたことを示すユーメラニンが存在して
「日本待望の化石鉱脈のユニークな研究
きょく ぎょ
c G. Tanaka, Kumamoto Univ.
図A)アカントーデスの化石/ 九州大学総合研究博物館
昨 年 1 2 月 2 4 日 、英 国 の N a t u r e
拠 点」と し て の
Communications 誌 に、熊 本 大 学・九 州
重 責 を 果 た し、
大学などからなる国際協同研究チームに
世界に向けて
よる最 新の 研 究 成 果 が 公 表されました。
発信してゆきたい
眼は外界の情報を受容する重要な器官
と考えて います。
で、眼の獲得が 動物の進化を引き起こし
なお 2 月15 日
た原因のひとつと考えられています。その
(日)
に、九州大学
化 石 記 録 は、カンブリア紀 前 期(約 5 億
総合 研究博物館
2,000万年前)
にさかのぼり、三葉虫の複眼
に て、研 究 代 表
などが知られています。しかし、ほとんど
者 自 身(田 中)が、
軟組織のみからなる脊椎動物の眼の場合、
c G. Tanaka, Kumamoto Univ.
図B)網膜化石の電子顕微鏡写真/ レンズや 網 膜 に 相 当する組 織、および
いたことを初めて突き止めました(写真B)。
に 研 究 成 果 を 産 地 直 送 で 解 説 する
視神経などは、死後、真っ先に腐って分解
眼、筋肉、皮膚などが残された
「例外的に
サイエンストークを開き、とても盛況でした。
してしまうため、眼の進化に関する研究は
保存の良い化石(=化石鉱脈)」は、非常に
あまり進んでいませんでした。
稀ですが、過去の生物や生態系に関する
市 民 の 皆さま
(基盤研究 C(一般)
:層位・古生物学 平成24年∼26年度採択)
館内探訪
貴重図書250冊 が 寄贈されました
担当: 前田
晴良
分析技術開発系・教 授
可能なものも数多く含まれています。
例えば、Treatise on invertebrate
下さいました。それは、貴重な地質・
paleontology の旧版は、新版が出た
古 生 物 学 の 標 本 を 多 数 保 管 し、
現 在 でもよく利 用されますが、今と
寄 贈 図 書 を活 用 できる 研 究・教 育
なっては古本屋をあたる以外に手に
機 関としての本 学 博 物 館への 期 待
昨年、元・京都大学理学 研 究科 長
鎮 西 氏 は、この 分 野 で 世 界 的 に
入れる方 法はありません。今回寄贈
の表れにほかなりません。逆に身の
の鎮西清高・京都大学名誉教授より、
著 名な 研 究を行うかたわら、50 年
され た 250 冊 は、最 後 まで 鎮 西 氏
引き締まる思いです。早急に整 理を
地質・古生物学分 野の貴重図書:約
以上にわたって内外の専門学術文献
の座右に残されていたものです。
進め、活用させていただくつもりです。
250 冊が九州大学総合研 究博物館
を収 集されてきました。その中には、
鎮西氏は、なじみの深い京都大学
に寄贈されました。
絶 版となり現 在 で はもはや入手 不
で は なく本 学 を 寄 贈 先 に 選 ん で
The Kyushu University Museum NEWS
March 2015
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Series : Research at the Kyusyu University Museum
国際学術交流
アンダラス大学(インドネシア)とMoAを締結
丸山 宗利
開示研究系・助教 専門:昆虫学、動物学(標本管理)、分類学、系統学
このたび当館とアンダラス大学(数学・
実はその敷地は国立
て製 品 化してきた歴 史 的
自然 科 学 部)で 学 術 交 流 協定にかかる
公 園 につな がる野 生
背景があり、今までのよう
同意書(MoA)を締結しました。学術調査
生 物の宝 庫で、現 在で
に海 外で 容易に生物を採
において互いに便 宜 をは かり、将 来 的
も大 学の構内で、世 界
集をして、それを持ち出す
には留学生の交 換を行おうという趣旨の
的 に 絶 滅 寸 前 のトラ
ものです。
ということが できなくなり
トラの出る構内の森
つつあります。今回のよう
出 現するくらいです。2012 年に
な協定は、明白な手 続きのもと、現 地の
私が調査で訪れた際にその環境
研究者の同意を得たうえで、共同研 究を
の すばらしさに感 動し、継 続 的
前 提として調査を行う手続きの一つとい
な 調 査を行 いたいと思い、その
う意味もあります。
手 始めとして今 回の 協定に至り
国際交流は当館の重要な任務の一つ
ました。
です。これを皮切りにさまざまな機関との
さっそく今年の2月に私が指導
締結を進め、さらなる学 術調査と現地の
して いる大 学 院 生 物 資 源 環 境
知見への貢献を進めたいと考えています。
(亜 種 スマトラトラ)が
科 学 府 の 学 生 2 名(金 尾 太 輔・
有 本 晃 一)が 調 査に訪れました。
アンダラス大学理学部生物研 究所
それぞれ、
シロアリの巣に共生する
インドネシアのスマトラ島の西海岸に
昆虫とハシリハリアリというアリが専門で、
パダンという大きな町があり、そこにアン
今回の訪 問はそれらの採集が目的です。
ダラス大 学はあります。アンダラス大 学
現 在、生物 多 様 性 条 約の目的の 一つ
は1955 年に設 立され、ジャワ島 外では
として、ABS「遺伝資源の利用から生じた
最も古い大学です。15もの学部を有する
利 益 の 公正で 衡 平な配 分」が 議 論され、
総 合 大 学 で、パダンの 町の背 景に広が
締結への準備が進められています。これに
る丘陵 地に 5 キロ平方メートルの広大な
は先進国が後進国の生物資源(たとえば
敷地を持っています。
医 薬 品となる植物)を一方的に持ち出し
2015 年 2 月に大学院生が 訪れたときの様 子
館員活躍録
行徳直巳さん の蔵書受け入れ1
担当: 丸山
宗利
開示研究系・助教
書籍:
「昆虫はすごい」
が ベストセラー に
福岡県の昆虫相 解 明に貢 献された故 行 徳 直巳さん(1917∼2 0 0 8)の
丸山 宗利
蔵 書をご遺 族より寄 贈いただきました。昆 虫に関する戦前から最 近まで
地球上でもっとも高い多様性を誇る昆虫についての普及書
の貴重な本が 数多くあり、当館の重要な資 料となりました。貴重な標本も
いただきましたが、それについては次回紹介します。
ご自宅の書架にあった
貴重な戦前の蔵書
助教著
を出版しました。おかげさまで昆虫の本としては異例の好調
な売れ行きで、昨年 8月の発売開始以来、半年で11万部を
突 破しました。また中央 公 論 新社の新書 大 賞(7 位)に選
ばれ、各新聞に取り上げられるなど、話題となっております。
九州大学総合研究博物館ニュース
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Latest Information on Museum Activities
博物館活動の最新情報
March 2015
出展
● 世界一行きたい科学広場 in 宗像 2014
「標本いろいろ観察隊」
フィールドミュージアム本格始動!
期間:平成 26 年 8月9日
(土)
場所:宗像ユリックス(宗像市久原)
フィールドミュージアム部は、野外における
観 察 会を実 施しました。このたび農 学部 附属
教育・研修支援のために設けた館内組 織です。
演習林(林長・大槻 恭一教 授)のご協力のもと、
中 期 計 画 では社 会人 及び 学 生を対 象とした
演習林の施設・資料を活用して本 格的活動を
野 外 実 習 を 実 施 することを 掲 げ て いま す。
始めることになりました。3月 23 日の第一 回
平成 20・21年度に予行として学振の「ひらめき
交流会では、当館と演習林の密接な交流・連携
☆ときめきサイエンス」事業を活用して英彦山の
を進め、様々な事 業を立案・実 施していくこと
施設を利用した昆虫・植物・陸貝・岩石の野外
を確認しました。詳細は次号で。
サテライト巡回展示
● 福岡空港サテライト
期間:平成 26 年8月9日
(土)∼福岡県の蝶7、8
共催
● 自然史データベース説明会
平成 26 年10月27日
(月)
Activities of Exhibitions
& Conference
場所:箱崎キャンパス21世紀交流プラザⅠ
● 学術研究会 人間・環境学会 第105 回研究会
「場所の記憶とミュージアム」
平成 26 年11月15日
(土)
場所:総合研究博物館第一分館倉庫
● Trübe ­かげと光のインスタレーション­
平成 26 年11月22日
(土)∼11月30日
(日)
展示・講演会関係の活動状況
場所:総合研究博物館第一分館倉庫
● The Museum of Music
公開展示
特別企画
● 「ふくおかをしあわせにするデザイン」
● 九州大学総合研究博物館サイエンストーク
∼九大・芸工からひもとく電子音楽の世界∼
平成 26 年12月20日
(土)
場所:総合研究博物館第一分館倉庫
博物館施設一般公開
「眼の軟組織が保存された最古の魚類化石発見!」
平成 26 年12月20日
(土)
∼ 12月26日
(金)
平成 27年2月15日
(日)
場所:メイン会場
場所:箱崎キャンパス旧工学部本館3階10 番講義室
福岡市役所1階多目的スペース
サテライト会場
● オープンキャンパスに伴う施設公開
● 公開講演会連動企画
We Love 天神コミュニティガーデン
平成 26 年8月2日
(土)∼8月4日
(月)
ミニ展示
場所:箱崎キャンパス
「科学と芸術のはざま−金平亮三の植物描画−」
特別展示
・ 総合研究博物館常設展示室
平成 27年2月21日
(土)∼3月27日(金)
・ 旧工学部本館 4 階第二会議室
場所:総合研究博物館常設展示室
「青山熊治画伯筆壁画」
ワークショップ
・ 列品室1
「毛糸で描こう!ポンポンでどんぐり」
・ 総合研究博物館第一分館
平成 27年2月22日
(日)
● 第 13 回 P&P 研究成果一般公開
場所:箱崎キャンパス21世紀交流プラザ I
「九州大学教育・研究の最前線」
● 九州大学社会連携シンポジウム
平成 26 年10月18日
(土)
∼11月14日
(金)
「双方向コミュニケーションの場づくりのためのワークショップ」
場所:伊都キャンパス椎木講堂ホワイエ
平成 27年3月6日
(金)
● 椎木講堂オープニング展示
「九州大学百年の至宝」
場所:天神ビル11階11号会議室(福岡市中央区天神)
第二期
平成 26 年5月12日
(月)
∼10月3日
(金)
テレビ出演
場所:伊都キャンパス椎木講堂1階ギャラリー
※施設調整のため途中中止
第三期
平成 26 年10月16日
(木)
∼11月25日
(火)
運営委員会
平成 26年 10月 28日 (書面回議)
場所:伊都キャンパス椎木講堂1階ギャラリー
平成 26年 12月 15日
● BS日テレ
「加藤浩次の本気対談!コージ魂!!」
学内連携企画
(丸山宗利助教)
平成 26 年11月30日
(日)
● NHK
「ダーウィンが来た!ツムギアリの空中城に密着!」
平成 27年 2月 20日
団体見学
(丸山宗利助教)
● 図書館展示
平成 27年2月22日
(日)
−標本にみる九州大学の研究−
平成 26年 9月 6日 文学部 90 年同窓会
第2弾「九州大学の考古資料と学術研究」
平成 26年 11月 12日 西日本鉄道株式会社
平成 26 年8月1日
(金)∼12月18日
(木)
平成 26年 11月 29日
∼ 11月 30日 大学史研究会
第 3 弾「九州大学の鉱石標本」
平成 26 年12月19日
(金)∼平成 27年2月27日
(金)
平成 26年 12月 9日 山口県立宇部高校
場所:箱崎キャンパス中央図書館2階エントランス 平成 26年 12月 26日 九州産業大学
平成 27年 2月 20日 入部小学校
常設展示コーナー
編集: 松本 隆史
デザイン: 古賀 桂子
印刷: 城島印刷株式会社 〒810-0012
発行 : 九州大学総合研究博物館
福岡市中央区白金 2-9-6
〒812-8581
TEL 092-531-7102
福岡市東区箱崎 6-10-1
TEL 092-642-4252
HP http: // www.museum.kyushu-u.ac.jp
FAX 092-524-4411 発行日: 平成 27年 3月31日
c 2015 The Kyushu University Museum