ISO 45001 規格の開発動向

ISO 45001 規格の開発動向
労働安全衛生マネジメントシステム規格の ISO 化が決定しました!
ついに労働安全衛生マネジメントシステム規格が ISO 規格化されます!OHSMS の ISO 規格化に対する新業務項目
提案(NWIP)が承認され、ISO ではプロジェクト委員会「PC283」を設置、規格番号は「ISO 45001」と決まりました。
さらには、ILO(国際労働機関)との協力体制も構築され、いよいよ OHS マネジメントシステムが国際規格として発
行されます。
もちろん、ISO 9001、14001 同様に ISO MSS の上位構造(High Level Structure)に基づいて規格開発が進められ
ており、発行目標時期は 2016 年 9 月頃を予定しています。発行時期は変更される可能性があります。
なお、ISO 45001 規格は発行され次第、OHSAS 18001 規格と置き換えられることが想定されています。
ISO 45001 の開発スケジュール
2013 年 6 月
2013 年 8 月
2013 年 10 月
2014 年 3 月
2014 年 7 月~10 月
2015 年 1 月
2016 年 9 月頃
ISO 45001 規格のための ISO/PC283 設立
第 1 回 PC283/WG1 会合(ロンドン)
WD1(作業用原案)作成
第 2 回 PC283/WG1 会合、CD1(委員会原案)作成(カサブランカ)
CD 投票(賛成が 3/2 未満のため、CD2 作成となる)
第 3 回 PC283/WG1 会合、CD2 作成(トリニダード)
DIS(国際規格原案)の作成、投票
FDIS(最終国際規格案)の作成、投票
ISO 45001 発行(予定)
*赤字のスケジュールは、今後変更される可能性があります。
ISO 45001 規格はこうなる!?
2014 年 7 月に発行された CD(委員会原案)の構成は次の表のようになっています。
ISO/DIS 45001 の構成
(下線部は労働安全衛生固有の箇条)
序文
7.4 情報、コミュニケーション、参加及び協議
1 適用範囲
7.4.1 情報及びコミュニケーション
2 引用規格
7.4.2 参加、協議及び代表者の選出
3 用語及び定義
7.5 文書化した情報
4 組織の状況
7.5.1 一般
4.1 組織及びその状況の理解
7.5.2 作成及び更新
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
7.5.3 文書化した情報の管理
4.3 OH&S マネジメントシステムの適用範囲の決定
8 運用
4.4 OH&S マネジメントシステム
8.1 運用の計画及び管理
5 リーダーシップ
8.1.1 一般
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
8.1.2 管理策の優先順位
5.2 方針
8.2 変更管理
5.3 組織の役割、責任及び権限
8.3 アウトソース
6 計画
8.4 購買
6.1 リスク及び機会への取組み
8.5 請負者
6.1.1 一般
8.6 緊急事態への準備及び対応
6.1.2 危険源の特定
9 パフォーマンス評価
6.1.3 法的及びその他要求事項の決定
9.1 監視、測定、分析及び評価
6.1.4 OH&S リスクの評価
9.1.1 一般
6.1.5 変更のための計画
9.1.2 順守評価
6.1.6 取組みのための計画策定
9.2 内部監査
6.2 OH&S 目的及びそれを達成するための計画策定
9.2.1 内部監査の目的
6.2.1 OH&S 目的
9.2.3 内部監査プロセス
6.2.2 OH&S 目的を達成するための計画策定)
9.3 マネジメントレビュー
7 支援
10 改善
7.1 資源
10.1 発生事象、不適合及び是正処置
7.2 力量
10.2 継続的改善
7.3 認識
2015-02
1
㈱グローバルテクノ©
ISO/CD 45001 規格のワンポイント解説
ISO/DIS 45001 規格のポイントを箇条ごとに解説します。
ISO 45001 規格の CD(委員会原案)は 2014 年 7 月に発行されました。日本規格協会の WEB ストアで、冊子又は
PDF 版を購入できます。
(邦訳あり)
http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/Com/FlowControl.jsp?lang=jp&bunsyoId=ISO%2FCD+45001%3A2014&
dantaiCd=ISO&status=1&pageNo=0
ISO45001 作成作業はまだ CD 段階のため、まだまだ不明な点や詳細に議論されていない点も多くありますので、
よくいただくご質問に基づき Q&A 形式で規格開発の背景も含めて解説します。
ISO/CD 45001 ワンポイント解説 ~ FAQ ~
Q1:労働安全衛生マネジメン A:ISO では過去二度にわたり、労働安全衛生マネジメントシステム規格化
トシステム規格が ISO 規
が提案され、そして否決されました。今回は 3 回目の提案となりますが、
格化される理由は何です
承認された背景としては以下の理由があると思われます。
か?
世界の労働災害事故における死亡者数は年間 234 万人に上るといわれて
います(ILO 調べ)
。この労働災害事故低減への対策としてマネジメント
システムの有効性が以前から期待されていました。
中でも「OHSAS18001」は世界的に大きく普及しており、事実上のグロ
ーバルスタンダードといえます。
OHSAS18001 を発行している「OHSAS プロジェクト・グループ」によ
ると、OHSAS18001 の認証件数は 2011 年末時点で 127 カ国 92,302 件と
なっており、「ISO Survey」と比較しても ISO9001 / ISO14001 に次ぐ認
証件数で国際的なニーズが非常に高いことがわかります。
このようなニーズから ISO と ILO(国際労働機関)との協力関係が合意
されたことで、一気に ISO 規格化へ向けて動き出したものと考えられま
す。
Q2:OHSAS18001 が ISO 規
A:OHSAS18001 がそのまま「ISO45001」となるわけではありません。
格となるのですか?
ISO45001 も ISO9001 や 14001 と同様に、附属書 SL を適用して開発さ
れます。
新規業務項目提案(NWIP)には、附属書 SL に OHSAS18001 を入れ込
んだ原案が添付されていましたが、ISO45001 の開発には OHSAS18001
だけでなく、ILO-OSH ガイドラインをはじめ各国の労働安全衛生 MS 規
格が参考規格として考慮されています。
Q3:なぜ「ISO18001」では
A:残念ながら、「18001」はすでに他規格※で使用されているため、
なく、
「ISO45001」にな
「45001」が割り当てられたとのことです。
るのですか?
※ ISO/IEC TR 18001:2004「情報技術-アイテムマネジメントのための
無線周波数識別-アプリケーション要求事項プロファイル」
Q4:ISO45001 が発行される
A:
「OHSAS プロジェクト・グループ」は ISO45001 発行後の OHSAS
と OHSAS18001 は廃止さ
18001 の扱いについて正式なコメントを表明していません。したがって、
れるのですか?
現時点で OHSAS18001 が廃止されるかどうかは不明です。
一方、ILO-OSH ガイドラインが廃止されることはありませんが、ISO
45001 の内容を反映して改訂するかどうかは未定とのことです。
なお、中央労働災害防止協会(中災防)では「JISHA 方式適格 OSHMS
認定」を ISO45001 発行後も継続し、加えて「ISO45001」認証審査も開
始する予定とのことです。
Q5:ISO45001 はいつ発行さ
A:2016 年 9 月発行を予定していますが、遅れる可能性はあります。
れるのですか?
2015 年 1 月現在、開発作業は CD 段階(委員会原案)にあり、その後
DIS(国際規格案)へ移行する予定でした。しかし投票の結果、否決され
次回は CD2(第二次委員会原案)へと移行することになります。その影
響で発行時期の遅れが見込まれています。
Q6:規格のタイトルは
A:規格タイトルについては ILO 側が「OSH」を主張していましたが、投票
「OHS」ですか? それ
の結果「OHS」が採用されています。正式には「Occupational health and
とも「OSH」ですか?
safety management system – Requirements with guidance for use」とな
ります。
2015-02
2
㈱グローバルテクノ©
ISO/CD 45001 ワンポイント解説 ~ FAQ ~
Q7:ISO45001 は OHSAS
A:上記のとおり、ISO45001 も ISO9001 や 14001 と同様に、附属書 SL を
18001 からどう変わるの
適用して開発されます。現在は CD 段階にあるため流動的ですが、附属書
ですか?
SL との関連では以下の問題が議論されているようです。
Q7-1:ISO45001 の「リス
A:
「リスク及び機会への取組み」については、やはり ISO 45001 において
ク」は OHSAS18001 どお
も論点の一つとなっていますが、CD 段階では二つの「リスク」が登場し
りですか? それとも附
ています。
属書 SL の「リスク」にな
一つは附属書 SL の「リスク」、もう一つは「OH&S リスク」です。
るのですか?
CD の 6.1 によると、「リスク」が「OH&S マネジメントシステムの運用
に関するリスク」であり、
「OH&S リスク」が従来どおりの「危険源に関
するリスク」という区別になっています。
国内委員会からは、附属書 SL の「リスク」を削除し、「OH&S リスク」
に統一することを CD へのコメントとして提出したそうです。今後の
CD2、DIS においてどのように整理されるのか、注目したいところです。
Q7-2:OHS における「機会」 A:CD では附属書に「機会」の例が掲載されています。
とはどのようなことが想
例えば、
「労働者からの意見募集」、「トップマネジメントの安全ツアー」、
定できますか?
「安全フォーラムへの参加」など…となっています。
Q7-3:
「トップマネジメントの A:
「労働者の参画」については、ILO からも強く意見が提出されているよう
リーダーシップ」は重要
です。
ですが、労働安全衛生分
“書きっぷり”の問題になると思いますが、CD では「労働者の参画」に
野では「労働者の参画」
関連して以下のような記述があります。
も同等に重要ではないで
・ISO45001 固有の用語として「労働者」が定義されています。ただし、
しょうか?
「労働者」以外にも「組織の管理下で働く人々」
「組織のすべてのメン
バー」
「組織の人々」などの言葉が使われている箇所もあります。
・トップマネジメントに対して「労働者との協議、参加のプロセスを懲戒
措置から保護することを含めて確立すること」が求められています。さ
らに OH&S 方針の中で、同様のコミットメントが要求されています。
・OHSAS18001 の「参加及び協議」が「参加、協議及び代表者」として
入っており、方針の策定から計画(箇条 5)
、運用(箇条 6)
、そしてパ
フォーマンス評価及び改善(箇条 9、10)にわたり労働者の参加を要求
しています。
2015-02
3
㈱グローバルテクノ©