三陸岩手におけるサケ類の遺伝特性分析 岩手大学三陸水産研究センター 水産•養殖部門 マイクロサテライト(ms)DNA8座からみたサケ(シロザケ)の遺伝特性 •漁獲量が減少傾向にある回帰サケ(シロザケ)資源の回復•維持 •資源維持に貢献する系群を基にしたサケの資源管理•増殖法の提言 •DNAマーカーによるサケ系群の有無(河川間の遺伝的分化と遺伝構造の有無)や遺伝的多様性の調査 •サケ資源に対する津波による影響を遺伝子を用いて評価 沿岸後期群内の集団間の遺伝的分化係数(Fst) (10,000回試行). msDNAマーカー8座を使用 沿岸前期群内の集団間の遺伝的分化係数(Fst) (10,000回試行). 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (One114, One102, Omm1070, 1,安家川(1月) 1,安家川(9月) 2,気仙川(12月) 0.0007 2,安家川(11月) 0.0124 Omy1011, Omi112, oki1, OKM4, 3,津軽石川(11月) 0.0020 0.0004 3,気仙川(10月) 0.0076 0.0032 4,津軽石川(1月) 0.0009 0.0016 0.0009 4,盛川(10月) One111) 0.0044 0.0051 0.0024 5,甲子川(12月) 0.0013 0.0012 0.0011 0.001 5,片岸川(10月) 6,織笠川(10月) 7,小久慈川(10月) 8,有家川(11月) 9,田老川(10月) 10,千歳川 11,遊楽部川 0.008 0.0018 0.0021 0.0022 0.0075 0.0023 0.0022 0.0012 0.0007 0.0065 0.0037 0.0014 0.002 0.0013 0.0004 0.0116 0.0021 0.0025 0.0032 0.0004 0.0006 0.0003 0.0042 0.0075 0.0042 0.0016 0.0032 0.0033 0.0024 0.0053 0.0085 0.0111 0.0075 0.0061 0.0092 0.0065 0.0077 0.0137 0.0080 0.0075 0.0119 0.0082 0.0062 0.0092 0.0076 0.0074 0.0117 0.0064 0.0076 , 統計的に集団間で分化していると判断 (ボンフェローニ補正,P < 0.05) 採集河川 有家川 久慈川 安家川 葛丸 13 0.0007 0.0012 0.0029 0.0126 0.0094 0.0118 0.0123 0.0119 0.0112 0.0076 - 津軽石川 稗貫川 豊沢川 12 図, 近隣結合法に基づき推定 された三陸岩手サケの遺伝的 類縁関係.各数値はブーツスト ラップ値を示す(1,000回試行) 田老川 簗川 彦部 11 三陸岩手サケの遺伝的類縁関係 小本川 雫石川 6,盛川(12月) 0.0016 0.0018 0.0022 0.0036 0.0007 7,片岸川(12月) 0.0013 0.0013 0.0021 0.0022 -0.0008 0.0001 8,織笠川(12月) 0.0025 0.0021 0.0013 0.0028 0.0002 0.0016 0.0002 9,久慈川(1月) 0.0008 0.001 0.0013 0.0018 -0.0014 0.0005 -0.0006 -0.0001 10,小本川(12月) 0.002 0.0017 0.0026 0.0029 0.0013 0.0017 0.0016 0.0019 11,田老川(12月) 0.0018 0.0028 0.0021 0.0021 0.0008 0.0004 0.0004 0.0007 12,遊楽部川 0.0088 0.0073 0.0089 0.0096 0.0131 0.0111 0.0126 0.0122 13,千歳川 0.0116 0.0105 0.0116 0.0126 0.0119 0.0102 0.0111 0.0109 , 統計的に集団間で分化していると判断 (ボンフェローニ補正,P < 0.05) 10 織笠川 猿ケ石川 和賀 甲子川 片岸川 胆沢川 砂鉄川 衣川 盛川 気仙川 磐井川 図,サケの採集地点. 北上川水系13ふ化場,沿岸11 ふ化場において,10月,11月,12月に採集が行われ, 平成24年度〜26年度までで現在15,000個体以上の サンプルが収集されている.. 三陸岩手のサケには沿岸前期群,沿岸後期群および北上川水系の3つのグループある.沿岸前期群内の河川集 団間で遺伝的に分化しているのに対し,沿岸後期群内の河川集団間では系群を見分けるのが困難かもしれない 過去の県内外間での種卵移入の影響が残っているのかもしれない(特に沿岸後期群) 遺伝子からみたサクラマスの遺伝特性 msDNAマーカー7座に基づく, STRUCTUREにより推定された遺伝構造(K=4; 1,000,000回試行) 各 遺 伝 ク ラ ス タ ー に 属 す る 確 率 の 割 合 •資源貢献しているサクラマス資源の管理増殖法の提言 •資源が減少しているサケの付加資源として期待 mtDNAマーカー: ND5-1F, ND5-3F (Kitanishi et al., 2007) msDNAマーカー: MAS02, MAS03, MAS20, MAS32, MAS43, MAS71, MAS78 (Tsukagoshi et al., 2015) 採集河川 久慈沿岸 安家川 mtDNA ND5遺伝子領域からみた各地点におけるハプロタイプの組成 小本川 100% 1 90% 閉伊川 80% 宮古沿岸 重茂 沿岸 山田湾 稗貫川 70% 60% 50% 40% 30% 20% 気仙川 10% 0% 安 家 川 秋 ( ) ( ) 安 家 川 春 小 本 川 閉 伊 川 山 田 湾 気 仙 川 久 慈 市 場 重 茂 沿 岸 広 田 湾 北稗 上貫 川川 水 系 ( 広田湾 msDNAマーカー7座に基づき計算された集団間の遺伝的分化係数(Fst) (10,000回試行). 千 歳 川 標 津 川 神 通 川 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1, 標津川 2, 徳志別川 0.01427 3, 千歳川 0.02139 0.01591 4, 神通川 0.03323 0.03449 0.03216 5, 安家川 0.02464 0.02921 0.03546 0.03724 6, 山田湾 0.02272 0.02379 0.02684 0.03217 0.0221 7,小本川 0.01954 0.01485 0.02424 0.02794 0.01485 0.01762 8, 閉伊川 0.02187 0.02413 0.02867 0.04081 0.01484 0.01829 0.01546 9, 気仙川 0.04499 0.03089 0.03426 0.05601 0.03688 0.00936 0.0315 0.02765 10, 重茂沿岸 0.01061 0.01472 0.02087 0.02498 0.00924 0.00693 0.00513 -0.00188 0.01405 11, 宮古市場 0.01354 0.00992 0.01506 0.02195 0.02 0.01235 0.0083 0.00366 0.01062 0.00049 12, 広田湾 0.02285 0.02596 0.03109 0.04039 0.03098 0.01341 0.0199 0.0055 0.01196 0.00506 0.00931 13,久慈市場 0.01299 0.01297 0.01926 0.02012 0.01187 0.00581 0.00207 0.00595 0.00695 -0.00523 -0.00162 0.00476 , 統計的に集団間で分化していると判断 (ボンフェローニ補正,P < 0.05) ) 三陸岩手のサクラマスは北海道や日本海側の河川遡上集団と遺伝的に異なる.また,県内の河川集団間でも遺 伝的に異なり,河川ごとの固有性が高い.さらに,三陸沿岸集団は岩手県の河川で再生産したものといえる. 他河川から移入するのではなく,在来親魚から種苗を生産する方法が増殖を効率的に行える 今後 新規に開発された高解像度の遺伝マーカーと未解析集団(特に,沿岸定置網捕獲集団)を追加し,沿岸資源に貢献している系群の有 無を明らかにする.また,遡上時期についてより細かいスケールや遺伝子型と形態情報に注目した解析などを進めて行く.
© Copyright 2024 ExpyDoc