関門海峡の航行安全DVDテキスト情報 関門海峡海難事例集 ( 参考資料 ) 財団法人 海技振興センター http://mhrij.or.jp/ 関門海峡海難事例集 ( 参考資料 ) 1. 関門海峡東部海域 巌流島以東の関門航路及びその付近海域で発生した衝突・乗揚海難で, 2002 年∼ 2006 年の 5 年間に海難審判で裁決のあったものは, 衝突が 10 件・20 隻,乗揚が 4 件・4 隻で,衝突船舶 20 隻のうち,実に 6 割に当たる12 隻が外国船となっている。発生地点別では, 早鞆瀬戸で衝突 4 件・乗揚 2 件,巌流島北東方の航路屈曲部付近で衝突 2 件・乗揚 2 件が発生している。 早鞆瀬戸での海難 4 パターンを次に示す。 (事例 2) 1 東流時,航路中央寄りの東行船が関門橋を通過後に下関側に圧流され,西行船と衝突する。 2 東流時,早鞆瀬戸で航路の中央又は少し左側から追い越しをかけた西行船が,反航船を認めて航路の右側にもどろうとして下関側 に圧流され,追い越そうとしていた同航船と衝突する。 (事例 3) 3 西流時,潮流が弱い航路境界線付近の東行船が,潮流が強い航路中央寄りの東行船を追い越す態勢となり,門司埼付近で追い 付いて衝突する。 (事例 1) (事例 4) 4 門司埼付近で,潮流の流向に対して大きな角度で進行したため,船首尾の受ける流圧差で回頭できなくなって乗り揚げる。 1.1 西流時の門司埼沖で, 外国船が油送船を追い越す態勢となって衝突 (事例1) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 36) K 丸: 油送船 999 トン 乗組員 8 人 空倉 博多港→大分港 船長 / 53 歳 二級海技士 ( 航海 ) 免許 海上経験 36 年 B 号: 貨物船 (マレーシア籍 ) 8,957 トン 乗組員 26 人 コンテナ312 個 中国大連港 → 関門港部埼検疫錨地 ( 水先人なし) 船長 / 43 歳 ( 国籍 インド) 海上経験 12 年 ( 関門海峡通峡経験 3 回 ) 発生日時場所: 2004 年12 月10 日19 時 15 分 関門海峡早鞆瀬戸 気象海象: 晴 北西風 風力 2 視界良好 ほぼ高潮時 西流約 3.6 ノット [ 海難の概要 ] K 丸は,船長が操船を指揮し,手動操舵により強い潮流を受けながら航路の右側を東行中,右舷後方から接近するB 号を認め たが,B 号が関門橋付近で追い越すことはないものと思い,その後 B 号の動静監視を行わずに進行,一方,B 号は,船長が操 船を指揮し,手動操舵により潮流が弱い航路の右側端を東行中,先航するK 丸に門司埼付近で接近しても,K 丸が航路に沿っ てゆっくりと右転するので追い越すことができるものと思い,追越しを中止することも,追越し信号を行うこともせずに進行。B 号は, 衝突の 2 分前に門司埼から離すため針路を左に転じ,関門橋下を通過後に針路を右に転じたが,右舷前方から西流を受けて 右転できずに衝突した。 壇ノ浦 鞆 早 瀬 戸 山口県下関市 kn 3.6 衝突 1分前 5分前 2 2分前 門司区 B号 (8,957 G/T) 35° 11 .3 kn 8分前 067 7 [ H16.12.10 19:15 ] 03 下関区 関 門 航 路 K丸 (999 G/T) 03 2 K丸 北九州市門司区 03 03 7 6. 4k n 2分前 台 灯 埼 司 門 関 門 橋 下関導灯 0 B号 5分前 0 0.3 海里 500m 1.2 東流時の早鞆瀬戸で, 東行船が航路の左側に圧流されて西行船と衝突 (事例2) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 36) F 丸: 貨物船 392 トン 乗組員5 人 石炭灰 280 トン 山口県徳山下松港→関門港小倉区 船長 / 71 歳 五級海技士 ( 航海 ) 免許 D 号: 貨物船 5,264 トン 乗組員13 人 空倉 韓国釜山港→水島港 船長 / 49 歳 ( 国籍 韓国 ) 通峡経験は豊富 ( 船長としての通峡は 2 回目) 発生日時場所: 2003 年 4 月20 日05 時 05 分 関門海峡早鞆瀬戸 気象海象: 小雨 風力1 西風 視程約 3 海里 東流約 4 ノット 山口県西部に濃霧注意報 [ 海難の概要 ] F 丸は,船長が自ら手動操舵に就き,関門航路の中央寄りを早鞆瀬戸に向けて西行した。船長は,右舷側の陸岸との離岸距 離をとることに気を取られ,船首方から接近するD号の灯火に気付かないまま西行中,一方,D号は,門司埼沖を関門航路東口に 向けて順流で東行中,F 丸の灯火を視認していたものの,右転する時機が遅れたため,下関側へ圧流されて航路の左側に入り, 右舵 10 度をとって右回頭を始めたが,衝突した。 7分前 No.31 4分半前 2分前 山口県下関市 壇ノ浦 鞆 早 瀬 kn F丸 No.32 衝突 戸 6 14 . 2分前 6 .7 2 .5 43 kn D号 F丸 (392 G/T) 関 門 橋 [ H15.4.20 05:05 ] 11 9 14 . 6k n 路 関門港 D号 (5,264 G/T) 4分前 04 3. 5 関 門 航 台 灯 埼 司 門 下関導灯 56° 3 24 D号 北九州市門司区 0 0 0.3 海里 500m 関門航路を東行する船舶は,潮の流れる方向にかかわらず下関側に圧流される。特に,夜間の東流時に航路中央付近を東行 する船舶は,門司埼沖で転舵時機が遅れて最強流速域に入ると,下関側に圧流されるだけでなく,順流のため舵効が得にくく, 右回頭が十分にできないまま,西行船と接近することがあるので,注意が必要である。 1.3 東流6ノットの早鞆瀬戸で, 航路の左側から追越しをかけた外国船が油送船と衝突(事例3) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 36) K丸: 油送船 698トン乗組員 7 人 プロピレン717トン 千葉港→韓国蔚山港 船長 / 33 歳 三級海技士 ( 航海 ) 免許 S号: 貨物船 ( パナマ籍 ) 4,960トン 乗組員 23 人 コンテナ2,370トン 関門港田野浦区→中国寧波港 船長 / 41 歳 ( 国籍 中国 ) 船長経験 7 年 通峡経験数回 発生日時場所: 2005 年 4 月8 日01 時 48 分15 秒 関門海峡早鞆瀬戸 気象海象: 晴 無風 下げ潮末期 東流約 6 ノット [ 海難の概要 ] S号は,早鞆瀬戸に差し掛かり,K 丸を追い越すため関門航路の中央を西行中,関門マーチスが S号に対して VHF で「K丸を 追い越してはいけない。 」との情報提供を行ったが,S 号は,これに応答しなかった。S 号は,航路の左側に出て追い越しを続け ていたとき,東行船 2 隻の灯火を認め,少し右舵をとって航路の右側に戻ろうとしたところ,急激に下関側に圧流され,そのまま K 丸に衝突した。 7分前 No.31 9.6 7分前 山口県下関市 4分前 壇ノ浦 鞆 早 瀬 戸 4.8 kn 24 kn K丸 24 5 4分前 No.32 2分前 船 同航 1分前 衝突 K丸 (698G/T) 関 門 橋 6. 3 台 灯 埼 司 門 路 15° S号 (4,960G/T) 264 249 関 門 航 S号 6 [ H17.4.8 01:48] 北九州市門司区 0 0 0.3 海里 500m 関門航路及び関門第二航路を航行するときは,できる限り,航路の右側を航行しなければならない。また関門航路での無理な 追越しは禁止されており,並列航行も禁止されている。この事例のような,狭くて潮流が速い早鞆瀬戸での追越しは止め、あせ らず,急がず,潮に逆らわず,船間距離をとって航行しなければならない。 注:平成 24 年 5月から、港則法施行規則により早鞆瀬戸水路における追い越しが禁止されている。 1.4 霧中, 西流時の早鞆瀬戸で, 反航船を避けようとして左転中に乗揚 (事例4) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 36) E 丸: 油送船 998トン 乗組員 8 人 空船 ( 黒油 ) 伏木富山港→徳山下松港 船長 ( 船橋当直 ) / 53 歳 四級海技士 ( 航海 ) 免許 海上経験 35 年 発生日時場所: 2002 年 5 月5 日07 時 25 分 関門海峡早鞆瀬戸 気象海象: 霧 東北東風 風力1 視程約 200m 濃霧注意報発表中 西流約 4ノット 霧中,西流時の早鞆瀬戸で,反航船を避けようとして左転中に乗揚 [ 海難の概要 ] E 丸は,視界制限状態の関門海峡を東行中,関門橋手前でレーダーにより2 隻の漂泊漁船と反航船を探知した。E 丸は,航路 中央に寄って漂泊中の漁船を航過した後,関門橋下を通過したところで,航路の中央寄りを西行する反航船を視認し,左舵一 杯として門司埼沖で停止した反航船を避航した。E 丸は,そのまま反転するつもりで左回頭中,潮流の影響により十分な回頭が できずに乗り揚げた。 0 0.5 海里 0 関門港 1,000m 壇ノ浦 [ H14.5.5 07:25] 乗場 弱潮流 山口県下関市 2分半前 反航船(停止) 4分前 戸 田野浦区 台 灯 埼 司 門 関 門 橋 下関導灯 瀬 早鞆 強潮流 小型漁船 (漂泊) 6分半前 04 1 6. 0k n 北九州市門司区 下関区 関 門 航 路 E丸 (998G/T) 門司区 潮流の流速は,各地点によって大きく異なる。この事例のように,潮流の流向に対して大きな角度で進行すると,船首尾で受ける 潮流の影響に差が出るため,転舵する際に意図した操船が行えないことがあり,大変危険である。 2. 関門海峡西部海域 巌流島以西の関門航路及びその付近海域で発生し,旅客船・貨物船・油送船が関連した衝突・乗揚海難で,2002 年∼ 2006 年の 5 年間に海難審判で裁決のあったものは,衝突 16 件 (32 隻 ),乗揚 14 件 (14 隻 )で、衝突 32 隻中16 隻が外国船となっている。発生 地点別では,大瀬戸で衝突 2 件,砂津航路付近で乗揚 4 件,関門航路・関門第二航路接続部付近で衝突 7 件,乗揚 2 件,藍島・ 白州周辺で乗揚 6 件,その他の海域で衝突 7 件,乗揚 2 件が発生している。発生時間帯別では,衝突の 68%,乗揚の 64%が 20 時台から翌 05 時台までに発生している。 関門航路と関門第二航路接続部付近での海難パターンを次に示す。 1 関門航路内で「小型船」( 関門港では 300トン以下 ) が,南下中の「小型船及び雑種船以外の船舶」を避けずに衝突(事例 1) 2 関門航路から出ようとする西行船が,関門航路南下中の船を避けずに関門第二航路内で衝突(事例 2) 3 関門航路を西行し,関門第二航路に出る場合,そのまま進行しようとすると,関門航路に沿って南下中の船と航路接続部付近で 出会うおそれが発生。夜間でも通航量が多く,複数の船に対して避航を要することもあるので,舵のみで避航するよりも,まず減速 すること。 関門航路 ( 大瀬戸 ),砂津航路付近での海難パターンを次に示す。 1 砂津航路出航中の船が,関門航路東行中の外国船と衝突(事例 4) 2 関門航路から砂津航路への入航船が,手前の船溜まりからの出航船を避けようとして航路外の浅瀬に乗揚 2.1 避航船である小型油送船が, 関門航路を南下する外国貨物船と衝突 (事例1) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 37) D 丸: 油送船 199トン 乗組員3 人 重油 240 キロリットル 徳山下松港→長崎港 船長 / 60 歳 五級海技士 ( 航海 ) 免許 海上経験 44 年 船長経験 36 年 甲板長 ( 船橋当直 ) / 51 歳 海技免許なし 海上経験 36 年 通峡経験豊富 N 号: 貨物船 ( パナマ籍 )4,186トン 乗組員 23 人 空倉 韓国木浦港→宇部港 船長 / 46 歳 ( 国籍 フィリピン) 通峡経験豊富 水先人 / 59 歳 水先経験 4 年 発生日時場所: 2003 年 2 月12 日21 時 17 分 関門航路・関門第二航路接続部 気象海象: 曇 風力 3 西北西風 視界良好 下げ潮の中央期 [ 海難の概要 ] D 丸は,関門航路を西行中,レーダーにより N 号を探知したが,N 号の動静監視を行わずに進行し,関門マーチスが D 丸に対し VHF で行った再三の N号に関する情報提供に気がつかなかった。一方,N号は,関門航路入航時,関門マーチスに VHF で位 置通報を行った際, 「小型の西行船と接近するおそれがある」旨の情報を得たが,西行する D 丸が自船の進路を避けてくれるも のと思い,警告信号を行わないまま進行し,両船は衝突した。 N号 六連島 No.6 馬島 No.5 5分前 和合良島 32 0 No.9 台場鼻灯台 2分前 下関市 3分前 No.10 [ H15.2.12 21:17] 竹 ノ 子 島 路 関門港 0 航 二 第 門 関 衝突 D丸 (199 G/T) 80° No.7 22 2分前 路 安瀬航 N号 (4,186 G/T) 3分前 No.8 彦島 5分前 No.11 D丸 路 若松航 0 1,000 0.5 2,000m 1.0 海里 No.12 No.13 路 0 航 門 関 500 危険の多い関門海域で,1 隻でも VHF を聴守しない船舶がいると周りの多くの船舶に多大な迷惑が及ぶ。VHF の音声が聞こ えなければ,作動させていないことと同じなので、VHFの設置場所,音量などを確認し,必ず聴守すること。 2.2 航路を航行中の外国貨物船と航路外へ出ようとする外国貨物船が衝突 (事例2) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 37) C 号: 貨物船 ( 韓国籍 )2,305トン 乗組員13 人 鋼材 104 トン 韓国釜山港→神戸港 船長 / 61 歳 ( 国籍 韓国 ) 通峡経験豊富 A号: 貨物船 ( 韓国籍 )1,912トン 乗組員 8 人 コンテナ1,259トン 徳山下松港→韓国広陽港 船長 / 51 歳 ( 国籍 韓国 ) 通峡経験豊富 一等航海士 / 57 歳 ( 国籍 韓国 ) 通峡経験豊富 (自ら操船しての通峡経験はない。) 発生日時場所: 2003 年 6 月22 日04 時 30 分 関門第二航路 雨 南東風 風力 3 視程約 1.5 海里 気象海象: [ 海難の概要 ] 夜間,関門航路西口から入航し,南下中の C 号は,同航路を西行するA 号を視認後,衝突のおそれがある態勢で接近したが警 告信号を行わず続航中,また,関門第二航路へ向け,関門航路を西行し,同航路の航路外に出ようとした A 号は,一旦は C 号 を視認したものの,動静監視を十分に行なわず,関門航路に沿って航行するC 号の進路を避けないまま続航中,衝突した。 六連島灯台 六連島 C号 ①8分前 馬島 ②5分半前 11 .0 kn 31 0 21 7 32 C号 (2,305 G/T) A号 (1,912 G/T) ③2分半前 [ H15.6.22 04:30] 路 ④1分前 衝突 ④1分前 竹 ノ 子 島 路 安瀬航 関 門 第 二 航 0 ° 10 台場鼻灯台 31 0 ③2分半前 関門港 若松洞海湾口 防波提灯台 下関市 彦島 ②5分半前 9. 0k n 路 32 0 航 門 関 若松 航 戸 畑 航 路 路 ①15分前 0.1 500m 0 0 1.0 海里 A号 2km 台場鼻沖の航路屈曲部は,彦島,竹ノ子島に視界が遮られていて,互いに相手船を視認してからでは時間的余裕が少ない。レー ダーを活用するなど,早めに相手船の動静把握に努める必要がある。 2.3 関門航路から関門第二航路にかけ, 外国船が活魚運搬船を追い越す態勢で衝突 (事例3) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 37) A丸: 活魚運搬船 324トン 乗組員 6人 空倉 宇和島港→長崎県楠泊漁港 船長 / 51 歳 五級海技士 ( 航海 ) 免許 海上経験 23 年 一等航海士 ( 船橋当直 ) / 54 歳 四級海技士 ( 航海 ) 免許 海上経験 29 年 ( 通峡経験 2 回目) B号: 貨物船 ( 韓国籍 ) 3,981トン 乗組員 15人 コンテナ163 個 広島港 → 韓国蔚山港 船長 / 51 歳 ( 国籍 韓国)海上経験 26 年 ( 通峡経験船長として500 回くらい) 発生日時場所: 2004 年10月27日05 時 09 分 関門海峡西口 気象海象: 晴 北西風 風力 4 視界良好 上げ潮中央期 [ 海難の概要 ] A 丸は,関門航路を自動操舵により西行中,左舷後方から接近した B 号と衝突のおそれがあったが警告信号を行わないで進行, 一方,B 号は,関門航路を手動操舵により西行中,先航するA 丸に関門第二航路北側境界線付近で追い付いて接近する状況 であったが,追越しを中止しないで進行,A 丸は,B 号の右転を認めて右回頭を始めたが衝突した。 六連島 馬島 路 衝突 30 ④5分前 5 29 ⑥4分前 路 安瀬航 堺 港堺 [ H16.10.27 05:09] 7 5 港 29 31 5 ⑤2分前 ⑦2分前 345 関 門 航 ⑥1分前 ⑧1分前 ③7分前 B号 (3,981 G/T) ⑤5分前 ④7分前 航 門 関 二 第 台場鼻 灯台 関門港 下関市 A丸 (324 G/T) 30° 彦島 ②11分前 路 32 6 31 1 n kn 0k 路 A丸 航 門 関 戸 畑 航 路 若松 航 .0 11 . 12 ③11分前 路 追い越し信号 他の船舶の左舵側 を追い越す場合 B号 ①22分前 他の船舶の右舵側 を追い越す場合 ②22分前 0.5 0 0.5 0 0.5 1 1 1.5 海里 2 ①23分前 3km 関門航路で追い越すことができるのは, 「当該他の船舶が自船を安全に通過させるための動作をとることを必要としないとき」か つ「自船以外の船舶の進路を安全に避けられるとき」に限られている。関門第二航路南北境界付近等,針路が交差する地点 での追越しは行わないこと。追越しができる場合には追越し信号を行い,また,VHF,警告信号,操船信号,AIS 等できる限 り全ての手段を使って,お互いの意図を把握すること。 2.4 砂津航路出航船が関門航路東行中の外国船と衝突 (事例4) (マイアニュースレター、 海難審判庁 No. 37) H 丸: 油タンカー 99トン 乗組員3人 重油 210 キロリットル 関門港小倉区→関門港下関区 船長 / 34 歳 五級海技士 ( 航海 ) 免許 海上経験 16 年 H 丸乗船経験 5 年 S 号: 貨物船 ( パナマ籍 ) 4,018トン 乗組員 22 人 コンテナ1,800トン 中国上海 → 京浜港横浜区 船長 / 41 歳 ( 国籍 中国 ) 海上経験 21年 船長経験 5 年 ( 通峡経験船長として100 回くらい) 発生日時場所: 2004 年 6月3日13 時 39 分 砂津航路北東の関門航路 気象海象: 晴 北東風 風力 2 視界良好 下げ潮末期 東流 2.5ノット [ 海難の概要 ] H 丸は,内航船の燃料油補給に従事する国際信号旗の備え付けを要しない油タンカーで,砂津航路を出航中,関門航路を航行 するS 号と出会うおそれがあったが,S号の進路を避けないで関門航路を横断進行し,一方,S号は,関門航路に沿って東行中, 砂津航路から関門航路に入航するH丸を認め,動静監視を行いながら進行し,H 丸に避航する気配がなかったが警告信号を行 わずに続航し,衝突した。 [ H16.6.3 13:39] S号 (4,018 G/T) 39° 航 門 関 S号 H丸 (99 G/T) ①6分前 路 1 14 . 14 0k n ②4分前 ③3分半前 ④3分前 衝突 112 ⑤2分前 ②5分前 kn ④2分前 導線 路 No.22 線 砂 .0 11 ③3分前 n 航 津 3 導 ①5分半前 5k 線 ⑤1分前 05 8. 導 ⑥1分前 H丸 大瀬戸第1号導灯 関門港では,関門航路とその他の航路を航行する船舶とが出会うおそれがある場合,その他の航路を航行する船舶は関門航 路を航行する船舶の進路を避けなければならない。その他の航路から関門航路に入航する船舶は,早期に減速するなどして, 確実に避けてから入航すること。 3. その他の海難事例 前例までは、組織改編前の海難審判庁発行の資料であるが、改編後の運輸安全委員会の刊行物で、次の海難事例を紹介している。 3.1 運輸安全委員会ニュースレター特集号《 平成 22 年 8月20日発行 》 [船舶事故事例集]関門海峡における事故 http://www.mlit.go.jp/jtsb/bunseki-kankoubutu/jtsbnewsletter/jtsbnewsletter_FINo4/FINo4_pdf/jtsbnl-FI04_all.pdf 3.2 運輸安全委員会ニュースレター第 12 号 《 平成 23 年10月5日発行 》 関門航路を東進中のコンテナ船が、先行している貨物船を追い越そうとした際、西進中の護衛艦の前路に進出して衝突、火災が 発生した事例。 http://www.mlit.go.jp/jtsb/bunseki-kankoubutu/jtsbnewsletter/jtsbnewsletter_No12/No12_pdf/jtsbnl-12_0208.pdf 3.3 運輸安全委員会ダイジェスト 事故、重大インシデント調査報告書、統計等が閲覧できます。 http://www.mlit.go.jp/jtsb/bunseki-kankoubutu/jtsbdigests/jtsbdigests_new.html 参照・引用文献 当海難事例集は次の資料を参考、引用して作成した。 (1) マイアニュースレター、海難審判庁 No. 36 2007 年 4月 (2) マイアニュースレター、海難審判庁 No. 37 2007 年 5月
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