新規LNGプロジェクトの進捗と見通し (豪州、北米、他) 2015年6月18日 調査部 永井 一聡 1 世界のLNG需要見通し 高需要ケース 低需要ケース 出所: IEA Natural Gas Information, 資源エネルギー庁委託調査「アジア・太平洋市場の 天然ガス需給動向調査報告書(2014年3月)」 を基にJOGMEC作成 2 世界のLNG生産能力推移と見通し 別添カラー資料3あり 出所:各種情報を基にJOGMEC作成 3 世界のLNG生産能力推移(2005~) 2017 Yamal 2017 Prelude 2017 CovePoint 2015 Gorgon 2015 AP LNG 2015 G LNG 2015 Sabine Pass 別添カラー資料4あり 2018 Cameron 2018 Freeport 2018 Corpus Christi 2016 Wheatstone 2016 Ichthys 出所:各種情報を基にJOGMEC作成 4 LNG生産能力は大幅拡大の局面 ・2014~2018年、世界各地でLNGプロジェクトが続々と起ち上がり。 操業開始済、建設中案件だけでも以下の生産能力が新たに追加。 アジア・豪州地域・・・合計約7000万トン/年 北米(メキシコ湾岸)・・・合計約6000万トン/年 ロシア・・・Yamal LNG 1650万トン/年 ・さらに、北米(メキシコ湾岸、北西岸)、豪州には、計画・提案中 プロジェクトも多数存在。 ただし、足元(~2020年)においては生産能力が過剰気味となる 状況が見えており、これらの実現性可否は不透明。 ・油価下落等の影響もあり、FID前のプロジェクトでは、既にスケジュ ールの遅延、計画の保留・中止を発表した案件も複数あり。 ・また、2019年以降には、東アフリカ(モザンビーク、タンザニア)の 大型LNGプロジェクト計画も控えている。 5 2014年~生産開始の主なLNGプロジェクト プロジェクト名 PNG LNG QC LNG Gorgon LNG AP LNG G LNG Wheatstone LNG Ichthys LNG Prelude FLNG Donggi Senoro LNG Sabine Pass LNG CovePoint LNG Cameron LNG Freeport LNG Corpus Christi LNG Yamal LNG 国 パプアニューギニア オーストラリア オーストラリア オーストラリア オーストラリア オーストラリア オーストラリア オーストラリア インドネシア アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ アメリカ ロシア 生産開始年 2014 2014 2015予定 2015予定 2015予定 2016予定 2016予定 2017予定 2015予定 2015~2017予定 2017予定 2018予定 2018予定 2018予定 2017予定 生産能力(万t/y) 690 850 1560 900 780 890 840 360 200 450(→1800) 525 1200 1320 1350 1650 出所:各種情報を基にJOGMEC作成 6 豪州の主なLNGプロジェクト 別添カラー資料5あり 出所:JOGMEC作成 7 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(豪州) ○Gorgon LNG ・参画企業:Chevron 47.3%、ExxonMobil 25%、Shell 25%、 大阪ガス 1.25%、東京ガス 1%、中部電力 0.417% ・液化能力:1560万トン/年(520万トン/年×3トレイン) ・2015年内に初カーゴ出荷予定 ○Australia Pacific LNG(AP LNG) ・参画企業:Origin Energy Limited 37.5%、ConocoPhillips 37.5%、 Sinopec 25% ・液化能力:900万トン/年(450万トン×2トレイン) ・CBMプロジェクト ・2015年内にLNG生産開始見込み ○G LNG ・参画企業:Santos 30%、PETRONAS 27.5%、Total 27.5%、KOGAS 15% ・液化能力:780万トン/年(390万トン×2トレイン) ・CBMプロジェクト ・2015年後半にLNG生産開始見込み 8 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(豪州) ○Wheatstone LNG ・参画企業: Chevron 64.14%、KUFPEC 13.4%、Woodside 13%、 PE Wheatstone 8%、九州電力 1.46% ・液化能力:890万トン/年(445万トン/年×2トレイン) (2500万トン/年まで拡張可能) ・2016年生産開始予定 ○Ichthys LNG ・参画企業:INPEX 62.245%、Total 30%、CPC 2.625%、 東京ガス1.575%、大阪ガス 1.2%、関西電力 1.2%、 中部電力 0.735%、東邦ガス:0.42% ・液化能力:840万トン/年(420万トン/年×2トレイン) ・2016年末までに生産開始予定 9 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(豪州) ○Prelude FLNG ・参画企業:Shell 67.5%、Inpex 17.5%、CPC 5%、Kogas 10% ・液化能力:360万トン/年(LNG) (130万トン/年(コンデンセート)、40万トン/年(LPG)) ・2017年生産開始見込み ・世界で始めてFloating LNGを採用 ・現在韓国サムソン重工(SHI)の造船所にて建造中 出所:Shell 10 北米の主なLNGプロジェクト 別添カラー資料6あり 出所:JOGMEC作成 11 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(北米) ○SabinePass LNG(アメリカ) ・参画企業:Cheniere ・液化能力:1800万トン/年(450万トン/年×4トレイン) ※第5、6トレイン(各450万トン/年)の拡張計画あり ・2015~16年第1, 2トレイン、2016~17年第3, 4トレイン生産開始予定 ・2015年内に第5, 6トレイン着工予定 ○CovePoint LNG(アメリカ) ・参画企業:Dominion Cove Point LNG ・液化能力:525万トン/年 ・2017年生産開始予定 ○Freeport LNG(アメリカ) ・参画企業:Freeport LNG Investment、ZHA FLNG、 Texas LNG Holdings、大阪ガス ・液化能力:1320万トン/年(440万トン/年×3トレイン) ※第4トレイン拡張計画あり ・2018年生産開始予定 12 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(北米) ○Cameron LNG(アメリカ) ・参画企業:Sempra 50.2%、GDF Suez 16.6%、 JLI(三菱商事、日本郵船) 16.6%、三井物産 16.6% ・液化能力:1200万トン/年(400万トン/年×3トレイン) ※第4、5トレイン拡張計画あり ・2018年生産開始予定 ○Corpus Christi LNG(アメリカ) ・参画企業:Cheniere ・液化能力:1800万トン/年(450万トン/年×4トレイン) ※第5、6トレイン拡張計画あり ・2018年生産開始予定 13 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(北米) ○Pacific North West LNG(カナダ) ・参画企業:Petronas 62%、Sinopec 15%、JAPEX 10%、 Indian Oil Corp. 10%、Petroleum BRUNEI 3% ・液化能力:1200万トン/年(600万トン/年×2トレイン) ・2015年6月最終投資決定(条件付) (カナダのLNGプロジェクトで初の最終投資決定) ・2019年操業開始予定 出所:Pacific North West LNG 14 日本企業の北米産LNG調達契約 液化加工契約保持者(売主) (基地事業者とは異なる) LNG引取者(買主) 大阪ガス 220万t/年(2018年から20年) Freeport LNG 中部電力 220万t/年(2018年から20年) 東芝 220万t/年(2019年から20年) 三菱商事 400万t/年 (2018年から20年) 東京電力 40万t/年(2018年から20年) 東北電力 30万t/年(2022年から16年) 東京電力 40万t/年(2018年から20年) Cameron LNG Cove Point LNG 三井物産 400万t/年 (2018年から20年) Engie(旧GDF Suez) 400万t/年 (2018年から20年) 住友商事・東京ガス 230万t/年 (2017年から20年) ※調達開始年は基地操業開始予定年とした 東邦ガス 30万t/年(2018年から20年) 関西電力 40万t/年(2018年から20年) 東京ガス 52万t/年(2020年から20年) 東北電力 27万t (2018年または2019年から20年) 東京ガス 140万t/年(2017年から20年) 関西電力 80万t/年(2017年から20年) 出所:各種情報よりJOGMEC作成 15 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(その他) ○Yamal LNG(ロシア) ・参画企業:Novatek 60%、Total 20%、CNPC 20% ・液化能力:1650万トン/年(550万トン/年×3トレイン) ・2017年生産開始予定 ・資金調達にも目途 ・夏季は北極圏航路でアジアへ(+欧州) 冬季は欧州地域でアイスクラスタンカー から通常LNGタンカーへの積み替えての 輸送も予定。 出所:Total, NOVATEK ○Donngi Senoro LNG(インドネシア) ・参画企業:Sulawesi LNG Development(三菱商事75%、KOGAS25%) 59.9%、 Pertamina Hulu Energi 29%、PT Medco LNG Indonesia 11.1% ・液化能力:200万トン/年 ・2015年7月出荷開始予定 16 新規LNGプロジェクトの進捗と見通し(その他) ○モザンビーク ①Mozambique LNG(Area 1) ・参画企業:Anadarko 26.5%、三井物産 20%、ONGC 16%、 ENH 15%、Bharat Petroleum 10%、PTTEP 8.5%、OIL 4% ・液化能力:1200万トン/年 (600万トン/年×2トレイン) ・初期開発コントラクターを選定 (まもなくFID見込み) ②Coral FLNG(Area 4) ・参画企業:ENI 50%、CNPC 20%、 Galp Energia 10%、ENH 10%、 KOGAS 10% ・液化能力:250万トン/年 ・2015年FID予定 ① ② 出所:Mozambique LNG 17 一方で遅延・中止となるLNGプロジェクトも ○Bonaparte LNG(オーストラリア) ・参画企業:Engie(旧GDF Suez) 60%、Santos 40% ・2014年6月、プロジェクト見直しを発表 FLNGをコンセプトとして検討を進めていたが、 FLNGに加えて、パイプラインによってDarwinの陸上液化プラント へ輸送する等、他のオプションも考慮して再検討 ○Arrow Energy LNG(オーストラリア) ・参画企業:Shell 50%、Petro Chaina 50% ・2015年1月、プロジェクト中止を発表 ・ガス田開発は継続 ○Scarborough FLNG(オーストラリア) ・参画企業:ExxonMobil 50%、BHP Billiton 50% ・世界最大のFLNGをコンセプト ・2015年5月、BHP Billitonが事業としての優先度は下がったと発言 18 一方で遅延・中止となるLNGプロジェクトも ○Prince Rupert(カナダ) ・参画企業:BG Group ・2016年に建設開始を予定していたが、 LNGマーケット状況を考慮して計画を延期。 ○Lake Charles(アメリカ) ・参画企業:BG Group、Southern Union ・価格動向およびコスト動向を注視するとして、 FID時期を2015年から2016年に後ろ倒し。 ○Lavaca Bay(アメリカ) ・参画企業:Excelerate Energy ・最近の経済情勢を考慮して、計画保留 その他、進捗不透明なプロジェクトは多数・・・ 19 コスト低下を見込んでの計画後ろ倒しも ○Browse LNGプロジェクト ・参画企業:Woodside、Shell、BP、MIMI、Petro China ・Floating LNGを指向 ・「マーケットの大きな変化」に伴うコスト低下を見込んで、 (ある分野のコスト削減率は15~30%との発表あり) FEED実施時期を後ろ倒し。 2015年中盤にFEED作業に着手、2016年後半にFID予定。 出所:Woodside 20 その他にも提案中プロジェクトあり ○オーストラリアのLNGプロジェクト一覧 出所:IGU World LNG Report 2015 21 その他にも提案中プロジェクトあり ○アメリカのLNGプロジェクト一覧 出所:IGU World LNG Report 2015 22 その他にも提案中プロジェクトあり ○カナダ西海岸のLNGプロジェクト一覧 出所:IGU World LNG Report 2015 ⇒オーストラリア、北米ともLNGプロジェクト計画は乱立状態 23 LNGプロジェクトコスト低減に向けた動き LNGプロジェクトコスト 上流(ガス田)開発コスト + LNG液化基地建設コスト ・上流(ガス田)開発コスト 油価下落に伴う企業の活動削減・停滞により、サービス市場が緩和 ⇒ 今後の開発コストは低下の方向 ・LNG液化基地建設コスト(EPCコスト) ・エンジニアリングコスト(E) 液化トレインの標準化・モジュール化への取り組み ※これまでの液化トレインはプロジェクトの規模に応じてオーダーメイド → 標準化して製作された液化トレインの設置数を変更することで 各プロジェクトの規模に応じた生産能力に調整 ・建設コスト(C) 労働力市場の緩和に向けた取り組み ※同時進行プロジェクト数の調整等により労働力市場を緩和 24 新たなLNG輸出航路の出現 ○パナマ運河拡張 ・北米メキシコ湾岸からアジア向けのLNG通航ルート ※拡張後の通航可能船型 全長:366m、全幅:49m、喫水:15.2m ・2016年第2四半期に運用開始予定 ・今年4月29日に新運河通航料金が閣議決定 ○北極海航路 ・海水温上昇による北極海の氷減少に伴い新航路 ・既にノルウェー産LNG等のアジア向け輸送で実績あり ・ロシアYamal LNGのアジア向け輸送ルート ※Yamal LNGの出荷は、冬季は海面結氷のため、 アジア向けは夏季のみ、冬季は欧州向けに出荷 25 主なLNG輸送ルート(現状) 出所:各種情報よりJOGMEC作成 26 主なLNG輸送ルート(将来) 出所:各種情報よりJOGMEC作成 27 LNG価格の今後は?? 別添カラー資料7あり ・原油価格連動…油価60~80$/bbl(現在の価格~各機関の予測値) →LNG価格約9~11.5$/MMBtu ・H/H連動…H/H価格3~4.5$/MMBtu(現在の価格~米EIAの予測値) →LNG価格約9.5~11$/MMBtu ⇒LNG価格10~11$/MMBtuが一つのラインとなるか?? H/H連動 (右軸→) 原油価格連動 (←左軸) 出所:各種情報よりJOGMEC作成 28 (参考)日本のLNG輸入量(国別割合推移) 別添カラー資料8あり ※2014年までは実績、 2015年以降は現契約数量の積算 (公表されているもののみ) ? 出所:貿易統計、および各種情報よりJOGMEC作成 29 まとめ ・2014~2018年にかけて複数のLNGプロジェクトが起ち上がり、 LNG生産能力は大幅拡大の局面。 豪州・北米等、合計で約1億5000万トン/年の生産能力追加。 ・LNGプロジェクト間の競合は激化。 提案中プロジェクトは多数あるが、それぞれに課題もあり。 ・2020年までにおいては、LNG需給は緩和の見込み。 2021年以降は、これらに続く新たなプロジェクトの進捗も含め、 今後の需要の伸び次第。 ただし、需要の伸び率はLNG価格動向による影響が大きい。 ・LNG価格は多様化していくことが見込まれるが、 10~11ドル/MMBtuが何らかの目安になる可能性。 ・東アフリカの大型プロジェクトにも注目。 (巨大な資源量、新規参入、途上国として外貨獲得の機会) 30
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