今津 孝次郎 - 愛知東邦大学

教員の自己点検・自己評価報告書
所属学部
人間学部
所属学科
職 位
氏
名
子ども発達学科
教授
今津孝次郎
最終学歴
学 位
専門分野
京都大学大学院教育学研究科博士課程(単位取得満期退 博士(教育学,
教育学,教育社会学
学)
名古屋大学)
Ⅰ 教育活動
○目標・計画
(目標)
2013 年 4 月に初めて本学人間学部に赴任し,子ども発達学科の授業担当となったので,学生たちの学習実
態を把握しつつ,どのような保育分野に関する授業を展開するのが相応しいかについて検討すること。
(計画)
前期は学生理解に主眼を置き,後期は授業方法の検討に主眼を置く。また 3 年生の専門演習では,これま
で取り組んできた小・中学校での外国人児童生徒教育を保育所に応用して「多文化保育」をテーマに掲げ,
保育所の見学も実施しながら,多文化保育の指導法について探究する。
○担当科目(前期・後期)
(前期)人間学概論(分割),教育学概論,保育原理,教育実習研究,専門演習Ⅰ
(後期)保育課程論,保育者論,教育実習事前研究,教職実践演習,専門演習Ⅱ
○教育方法の実践
・専門演習では,外国人の園児と児童が多く在籍する名古屋市内の2保育所と 1 小学校の訪問を実現させ,
保・小の連携を知ることができ,ゼミ生にも強力な啓発機会となった。
・教職実践演習は,中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」
(2006 年 7 月)の
なかで,その開設が要望されたもので,7 年経過した 2013 年度後期より,ようやく教職の必修新科目とし
て全国一斉に開始されるに至った。この新科目のねらいは①4 年間の教職課程を総括する,②理論と実践を
総合的に把握する,③大学と教育現場の協働体制を推進する,の三点である。そこで,近隣の私立幼稚園
から園長や主任をゲストスピーカーとして 3 人招き,講義ではカバーできない分野に関する実践的講話を
柱立てにした。受講生からは,内容が身近に感じられ 4 月からの保育職に大いに役立つと好評であった。
この方式は次年度も続けていきたい。
○作成した教科書・教材
保育原理や保育課程の授業でも,これまで実際に集めてきた多文化保育に関する写真を教材として用いな
がら,実践紹介を織り込んで講義したところ,受講生が大いに関心を寄せた。保育の実際に関する具体例
を挙げることが理解しやすいようである。
○自己評価
・保育の根底にあるのは児童福祉の考え方であり,福祉は元来が社会学の一分野であるから,私が訓練を受
けてきた社会学の知見をふんだんに盛り込むことで,保育関連の講義を幅広く充実させることに役立った。
保育の現場とどのように連携していくかについては,なお課題が残されている(訪問回数,見学記録の書
き方など)
。
・来年度からの小学校教員養成課程の導入を念頭に,今後 4 年間の教育方針の参考になればと,私個人で始
めた名東区内小学校訪問は,2013 年 5 月から 2014 年 2 月までの9カ月間に,全 19 小学校すべてを廻るこ
とができた。各校長からの聞き取りから「学校訪問を 4 年間の柱とし,教育実習は最終的なまとめとする」
方針など,多くの教訓を得ることができたのは思いがけない成果である。
Ⅱ 研究活動
○研究課題
当初掲げた研究課題は二つである。
(1)
「社会人を対象にした教員養成の研究」
:現在の小中学校の教員年齢は,50 代が退職に向かうのに対し
て 20 代が増加する一方,30~40 代が少ないといういびつな構成になっており,職場をまとめるべき中堅層
教員増へのニーズがある。他方,現役職業人のなかには密かに教員を志望する者がいて,これまでは大学通
1
信教育が受け皿となってきた。そこで,これまで見落とされがちであった,20 代後半から 40 代までを中心
とした社会人対象の教員養成の可能性について諸調査を踏まえながら研究する。
(2)
「多文化保育の教育プログラム開発」
:特に愛知・岐阜・三重の東海三県では外国人住民が増加すると
ともに,保育所で外国人園児が増えている。しかも国籍は日本籍でも国際結婚などに伴う「外国を背景とす
る子ども」も目立ってきている。そうした多文化保育の実態と保育上の新たな課題については未だ十分に検
討されていないし,保育士養成教育のカリキュラムのなかに具現化するに至ってはいない。そこで,異文化
理解教育の観点も含めて,多文化保育の教育プログラムを開発する。
○目標・計画
これら二つの課題に関する研究目標・計画の実施状況について報告する。
(1)
「社会人を対象にした教員養成の研究」について
関心を共有する近隣諸大学の研究者と共同で外部資金申請計画書を作成した。まず,平成25(2013)年度
「大幸財団人文社会科学系学術研究助成」に対して,
「高等教育の「ユニバーサルアクセス」段階における社
会人学生のキャリア開発」をテーマに掲げ,愛知東邦大学を通じて2013年6月に申請したが,競争倍率が高く
て残念ながら不採択となった。そこで,テーマを教員養成に絞り込み,同じメンバーによって,平成26(2014)
年度(~28年度) 科学研究費補助金(基盤研究(C))に対して,「社会人を対象にした教員養成プログラ
ムの開発」を研究課題に掲げて2013年11月に申請した。
一方,名東区内 19 小学校訪問時には,社会人を対象にした教員養成についても質問したところ,各校長か
ら教職の実態に関して貴重な参考意見を聞くことができ,本格的な調査を踏まえた社会人教員養成教育プロ
グラム開発の必要性を再確認した。
(2)
「多文化保育の教育プログラム開発」について
名古屋市内で外国人園児が多い保育所として,港区九番保育園と名東区梅森坂保育園が典型である。この
二園を学生と訪問して園内を見学するとともに,園長のインタビューをおこなったところ,九番保育園での
外国人園児の日本語学習が小学校との接続課題と関わるだけに,さらに調査すべき興味深い事例であること
が分かった。今後とも専門演習で継続して訪問調査をおこなう予定である。
他方,まだあまり知られていない「多文化保育」に関する講義を検討するために,実際に高校生を対象と
する模擬授業を二つ試みた。
・
「どうして日本の小学校にピアスをつけていってはいけないの」
(在日ブラジル人少女)と 質問されたらど
う答えますか?」愛知東邦大学オープンキャンパス模擬授業(2013 年 7 月 28 日)
・
「多文化時代の保・小連携」学校体験・大学見学バスツアー模擬授業(2014 年 3 月 26 日)
今後とも担当する各講義のなかでさまざまな形で多文化保育にも触れながら,将来的には「多文化理解教
育」講義の一分野として取り上げていきたい。
○過去の研究業績(特許等を含む)2008(平成 20)年 4 月以降の業績
(著 書)
<単 著>
1.『人生時間割の社会学』世界思想社,2008 年,全 368 頁
2.『教員免許更新制を問う』
(岩波ブックレット No.753)岩波書店,2009 年,全 71 頁
3.
『
〈ワードマップ〉学校臨床社会学-教育問題の解明と解決のために-』新曜社,2012 年,全 249 頁
4.『教師が育つ条件』岩波新書,2012 年,全 214 頁
<共編著>
1.『続 教育言説をどう読むか―教育を語ることばから教育を問いなおす―』新曜社,2010 年,全 284 頁
[樋田大二郎と共編著]
<監修書>
1.『先生・保護者のためのケータイ・スマホ・ネット教育のすすめ-「賢い管理者」となるために』学事
出版,2013 年,全 95 頁(金城学院中学校 高等学校編著)
2.『中高生のためのケータイ・スマホハンドブック』学事出版,2013 年,全 96 頁(金城学院中学校 高等
学校編著)
(学術論文)
1.「
『指導力不足教員』の現職教育―全国教育センター調査を中心に―」
『名古屋大学大学院教育発達科
2
学研究科紀要(教育科学)
』第 54 巻第2号,2008 年〔服部晃と共著〕
2.「あるブラジル国籍男子生徒のライフヒストリー―『グローバルな進路形成』に向けて―」
『中等教育
研究センター紀要』名古屋大学大学院教育発達科学研究科附属中等教育研究センター紀要第8号,
2008 年〔山崎香織と共著〕
)
3.「学校臨床社会学の構想」
『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要(教育科学)
』第 55 巻第2号,
2009 年
4.
「ケータイのリスクに対する高校生のエンパワーメント-学校臨床社会学的事例研究-」
『金城学院大
学論集』社会科学編,第 6 巻第 1 号,2009 年
5.
「大学の開放」
『高等教育マネジメント』第 3 号,名古屋大学大学院教育発達科学研究科,2009 年
6.
「教育専門職博士課程 EdD の可能性と課題」
『日本教師教育学会年報』第 20 号,学事出版,2011 年
7.
「学校臨床社会学の『介入参画』法」
『教育学研究』第 78 巻第 4 号,2011 年 12 月
(学会発表)
(大学などでの学術シンポジウム報告も含む)
1.
「ライフステージ移行の社会的装置―時間社会学の視点から―」
(関西社会学会第 59 回大会,松山大学,
2008 年 5 月 24 日)
2.「
『指導が不適切な教員』の指導改善研修―文部科学省のガイドラインをめぐって―」
(中部教育学会
第 57 回大会,中部大学,2008 年 6 月 28 日〔服部晃と共同〕
)
3.「
『指導が不適切な教員』の指導改善研修」(平成 20 年度全国教育研究所連盟教育課題研究協議会,旭
川市,2008 年 9 月 18 日〔服部晃・佐々木信雄と共同〕
)
4.「
『指導が不適切な教員』の教師教育政策」
(日本教育社会学会第 60 回大会,上越教育大学,2008 年 9
月 22 日)
5.
「死を定義する社会」
(関西社会学会第 60 回大会,京都大学,2009 年 5 月 24 日)
6.
「人生時間割の社会学」
(日本時間学会第 1 回大会,山口大学,2009 年 6 月 14 日)
7.
「指導力不足教員と教員免許更新制」
(中部教育学会第 58 回大会,名古屋大学,2009 年 6 月 27 日〔服
部晃と共同〕
)
8.
「学校臨床社会学における『介入』法」
(日本教育社会学会第 61 回大会,早稲田大学,2009 年 9 月 12
日)
9.
「学校臨床社会学における倫理の問題」
(日本教育社会学会第 62 回大会,関西大学,2010 年 9 月 18 日)
10. 「Ed.D.と Ph.D.-名古屋大学大学院教育発達科学研究科の経験-」
(名古屋大学大学院教育発達科学
研究科・高等教育マネジメント分野創設 10 周年記念シンポジウム「大学職員と大学院-高等教育マ
ネジメントプログラムの課題と展望-」名古屋大学,2010 年 12 月 14 日)
11.
「教育専門職博士 EdD の可能性」
(日本教育社会学会第 63 回大会,お茶の水女子大学,2011 年 9 月 24
日)
12.
「臨床社会学の『介入参画』法」
(関西社会学会第 63 回大会,皇學館大学,2012 年 5 月 27 日)
13.
「外国人児童生徒教育の実践的研究課題-学校臨床社会学の立場から-」
(日本教育学会第 71 回大会・
公開シンポジウム「グローバル化時代の教育と職業-移民の青少年におけるキャリア形成をめぐっ
て-」
,名古屋大学,2012 年 8 月 25 日)
14.
「教師の『資質・能力』概念の再検討-六層構成の視点から-」
(日本教育社会学会第 64 回大会,同志
社大学,2012 年 10 月 27 日)
15.
「名古屋大学の EdD プログラムの成果と課題-PhD との相違を中心に」愛知教育大学・静岡大学共同教
科開発学シンポジウム(愛知教育大学,2014 年 3 月 9 日)
(特許)無
(その他)
<事典項目>
1.「文化遅滞-オグバーン」日本社会学会社会学事典刊行委員会編『社会学事典』丸善,2010 年
2.
「文化遅滞(W・F・オグバーン)
」作田啓一・井上俊編『命題コレクション 社会学』ちくま学芸文庫,
2011 年(初版 筑摩書房,1986 年)
<評 論>
1.「子どもとケータイのリスク」
『消費者情報』389 号,財団法人関西消費者協会,2008 年 3 月
3
2.
「教師の専門性発達と 10 年経験者研修の再検討―成人学習モデルから―」岐阜大学教育学部教員研修計
画委員会『教師教育研究』第 4 号,岐阜大学教育学部,2008 年 3 月
3.「時間社会学へのこだわり」世界思想社編集部編『世界思想-特集・時というもの-』35 号,世界思想
社,2008 年4月
4.「教員免許更新に課題山積(原題:教員免許更新制への疑問」
)
『日本経済新聞』,2008 年 10 月6日朝
刊
5.「ケータイとのつきあい方」
『葦』60 号,金城学院中学校,2009 年 3 月
6.「教職専門性の発達」
『教員免許更新講習・印刷教材集』放送大学,2009 年 6 月
7.「情報社会の生徒指導」
『教員免許更新講習・印刷教材集』放送大学,2011 年 7 月
8.「生徒指導とスクールソーシャルワーク」
『教員免許更新講習・印刷教材集』放送大学,2011 年 7 月
9.「
〔巻頭随筆〕子どもが地域と出会う場を創り出す学校」
『教育と医学』2012 年 2 月号,慶應義塾大学出版
会
10.「ケータイの賢い管理責任者となる-金城学院中高校 PTA 研修会の試み-」
『月刊高校教育』2012 年 8 月
号,学事出版
11.「
〔巻頭随筆〕いじめ問題の基礎知識」
『教育と医学』2013 年 2 月号,慶應義塾大学出版会
12.「学校の体罰防止-『懲戒』のガイドライン作れ-」
『朝日新聞』
〔私の視点〕,2013 年 2 月 23 日
13.「いじめ認識の弱点を乗り越える-『事件対処型』発想と『教育対応型』発想-」
『教育と医学』2013 年
11 月号,慶應義塾大学出版会
<書 評>
1.久冨善之[編著]
『教師の専門性とアイデンティティ-教育改革時代の国際比較調査と国際 シンポジウ
ムから-』勁草書房,2008 年,
『教育社会学研究』第 85 集,2009 年 11 月
2.自著『人生時間割の社会学』の書評に応えて(書評リプライ)
,
『ソシオロジ』第 55 巻 1 号, 168 号,
2010 年 5 月
3.元森絵里子[著]
『
「子ども」語りの社会学-近現代日本における教育言説の歴史-』勁草書房,2009 年,
『教育社会学研究』第 87 集,2010 年 11 月
4.自著『人生時間割の社会学』
【書評シンポジウム】
・
「著者による原著の紹介」
「書評にこたえて」
(小嶋秀
夫・岡本祐子・菅原育子・上野千鶴子・各氏の書評へのリプライ)
『児童心理学の進歩』2011 年版,
金子書房,2011 年 6 月
5.志水宏吉[編]
『格差をこえる学校づくり-関西の挑戦-』大阪大学出版会,2011 年,
『教育社会学研究』
第 90 集,2012 年 6 月
6.
「人間関係の解明に向けた生涯発達社会学的視点」
【書評シンポジウム】高橋惠子『人間関係の心理学-
愛情のネットワークの生涯発達-』東京大学出版会,2010 年,
『児童心理学の進歩 2013 年版,金子
書房,2013 年 6 月
7. 副田義也『教育基本法の社会史』
,
『社会学評論』64 巻 1 号,2013 年
8.自著『教師が育つ条件』の書評に応えて(書評リプライ)
,
『教育社会学研究』第 93 集,2013 年 12 月
○科学研究費補助金等への申請状況,交付状況(学内外)
<交付済および研究報告書>
平成 19~20(2007~2008)年度科学研究費補助金(基盤研究(C)
)
研究課題名:
「
『指導力不足教員』の現職教育に関する総合的研究」
研究代表者:今津孝次郎(研究分担者:服部晃)
交付総額 3,770,000 円
[科研報告]
『
「指導力不足教員」の現職研修に関する調査研究』第 1 号,名古屋大学大学院教育発達科学研
究科教育社会学研究室,2008 年 3 月,全 107 頁,[服部晃と共著]
[科研報告]
『
「指導力不足教員」の現職研修に関する調査研究』第2号,名古屋大学大学院教育発達科学研
究科教育社会学研究室,2009 年 3 月,全 77 頁,[服部晃と共著]
<申請したが不採択>
平成 25(2013)年度大幸財団人文社会科学系学術研究助成
研究課題名:
「高等教育の『ユニバーサルアクセス』段階における社会人学生のキャリア開発」
4
研究代表者:今津孝次郎(研究分担者:長谷川哲也・他 4 名)
申請総額: 1,380,000 円
<申請 中>
平成26~28(2014~2016)年度 科学研究費補助金(基盤研究(C))
研究課題名:「社会人を対象にした教員養成プログラムの開発」
研究代表者:今津 孝次郎(研究分担者:長谷川哲也・他4名)
申請総額:4,870,000円
○所属学会
・ 日 本 教 育 社 会 学 会 会 員 ( 1971 年 よ り 。 1984 年 ~ 1989 年 お よ び 1993 年 ~ 1996 年 学 会 誌
『教育社会学研究』編集委員。1991 年~2001 年および 2003 年~2009 年,2011 年~現在,理事。2005
年~2007 年学会賞選考委員会委員)
・ 日 本 社 会 学 会 会 員 ( 1971 年 よ り 。 1987 年 ~ 1988 年 学 会 誌 『 社 会 学 評 論 』 専 門 委 員 。
1988 年~1991 年研究活動委員。1991 年~1994 年渉外委員会委員)
・日本教育学会会員(1988 年より。2000 年~2002 年学会誌『教育学研究』編集委員)
・ 日 本教 師教 育学 会会 員( 1991 年 よ り 。 1992 年 ~ 1996 年 学 会 誌『 日本教 師 教育 学会 年報 』
編集委員)
・関西社会学会会員(1971 年より。1989 年~1992 年および 1995 年~1998 年学会委員-理事相当-および
研究活動委員。2001 年~2003 年理事および学会誌『フォーラム現代社会学』編集委員。2007 年~2010
年理事。2008 年~2010 年学会奨励賞選考委員)
・中部教育学会会員(1975 年より。2001 年~2003 年理事および学会誌『中部教育学会紀要』編集委員)
○自己評価
・この 6 年間に単著を 4 冊も集中的に刊行できたのは,それまで 10 数年間蓄積してきた小さな研究成果が,
思いがけずにさまざまな執筆機会に恵まれたために一気に開花したものだと思う。それに,名古屋大学定
年退職のまとめにしたいという願望も出版を促進した。言うまでもなく,単著の刊行は急にできるもので
はなく,日頃からの科研費調査をはじめ,論文・評論の執筆や学会発表が総合されて実を結んだものであ
り,あらゆる機会を大事にしながら,研究成果をさまなざまな形で発表していく大切さを改めて噛みしめ
ている。
・なお,まだ研究レベルには達していないが,春からの授業中に学生の行動を見ていて,気になったスマー
トフォン(スマホ)利用について,年間最後の授業時間に子ども発達学科学生を対象にした簡単なアンケ
ートを実施した(1~4 年生全 123 人)
。その結果,2 割がスマホ中毒症の疑いがあり,5 割がその予備軍で
はないかと思われ,問題が無いと判断される層はわずかに 3 割であることが分かった。情報化が進むこと
は今の時代では当然であるが,他方では適切なメディアリテラシーが不可欠である。東邦高校にもスマホ
利用で似た状況があることを知ったので 3 月 25 日に東邦高校で先生方とスマホ利用実態について自由な懇
談会をおこなった。今後とも高大連携して,メディアリテラシー教育として何ができるか,ぜひ来年度の
課題にしていきたい。
Ⅲ 大学運営
○目標・計画
(目標)
第一の目標は,小学校教員養成課程を導入して子ども発達学科を教育学部として独立させる準備作業に携
わること。そして第二に,新たな教育学部での 4 年間の教育方針に関する概略を構想するための諸資料を入
手すること。
(計画)
大学再編準備室が工程表に従って精力的に書類作成に取り組んだ結果,ようやく 2 月に入って文科大臣よ
り認定書が届いた。4 月以来,想定外の出来事もあって,作業は難しい局面を迎えたこともあったが,無事に
第一の目標を達成できた。第二の目標については,名東区内全 19 小学校を研究者個人として訪問し,各校長
に初等教育の課題と小学校教員養成についてインタビューし,養成教育の方針設定に関する多くの貴重な助
言を得た。
5
○学内委員等
・大学再編準備室:毎回の会議に出席し,必要な準備作業に従事した。
・入試判定会議:受験生のさまざまな特徴を知りながら,教育学部の教育課題についても個人的に検討した。
・中高教職課程委員会:オブザーバー的な立場であったが,委員会の 8 割くらいには出席し,教員養成の最
新状況を踏まえていくつかの意見を述べた。中学校現場との結びつきを強化する観点から,有志委員三人
と猪子石中学校を訪問し,ボランティア参加への具体的な道筋をつけることができた。ボランティア活動
は教員採用試験の準備としてもきわめて有効であると感じられた。
○自己評価
・教職課程認定は従来になく厳しさが増している。少子化に伴う教員減が避けられないという判断からか,
教職課程数や教員免許授与数を減らす政策が密かに実施されている現れかもしれない。そうであるならば,
新たな教育学部での教員養成を特徴ある独自なものとして充実する必要がある。
・名東区内全 19 小学校を訪問して,各校長から初等教育と小学校教員養成について詳しい話を聞くことがで
きたのは何よりの成果である。うち数校とはボランティア参加を介して連携できそうな感触なので,今後
とも連携プログラムを模索していきたい。
Ⅳ 社会貢献
○目標・計画
(目標)
従来から地域活動には可能な限り参画したいと念じてきた。大学の社会貢献役割を果たすためだけでなく,
専攻する教育社会学にとって,フィールドワークとも重なると考えるからである。
なお,これまでの社会的活動を挙げると以下のようである。
2006 年3月~2012 年 3 月 学校法人金城学院 評議員 (任期終了)
2007 年 4 月~現在
名古屋大学教育学部学生ボランティアグループ・ジェッツ
(名古屋市港区東海小学校日本語教室・支援活動)顧問
2008 年 9 月~2009 年 8 月
名古屋市学校教育研究協議会委員(第一専門部会長)
(任期終了)
2011 年 4 月~現在
愛知県立春日井西高校 学校評議員
(計画)
今も続く社会的活動のうち,もっとも重要なのは自宅近くに位置する春日井西高校の学校評議員である。
校長が「普通科高校のキャリア教育」をテーマに愛知県教育委員会の補助金を得て,総合的学習の時間を用
いた独自の教育開発を 3 年間にわたって展開してきて,最終年度である今年度末に成果発表をする際に様々
な助言をおこなった。そこで得られた経験の一部は上記の研究業績<評論>9.
「
〔巻頭随筆〕子どもが地域
と出会う場を創り出す学校」
『教育と医学』2012 年 2 月号,慶應義塾大学出版会,に書いた。
○学会活動等
上記○所属学会の欄に活動内容を記した。現在の学会役職としては,日本教育社会学会理事が任期継続中
である。
○地域連携・社会貢献等
・教員免許更新講習講師として,幼稚園・小・中・高校教員計 81 名(8 月 45 名+11 月 36 名)を対象に「教
育の最新事情」のうち①「教師の『資質・能力』を問い直す」
,②「
『評価』の目的・内容・方法を捉え直
す」を講義した。異なる学校種の教員が一同に会する機会は貴重なのでグループ討議を試みたところ,校
種を超えた相互討議は好評であり,来年度以降も続けたいと考える。
○自己評価
・教育学部がスタートすると,近隣の小学校との連携が重要になってくる。1.教育活動でも述べたように,
学生のボランティア参加を通じた連携が地域の社会貢献になると同時に,学生の教員養成教育の柱ともな
るように,養成計画を練り上げていきたい。
Ⅴ その他の特記事項(学外研究,受賞歴,国際学術交流等)
特になし
6
Ⅵ 総括
本学に赴任して 1 年が経った。学生の実態を踏まえた教育内容と教育方法上の諸課題や,本学の教育に引き
つける形での従来からの研究のいっそうの発展,そして大学運営の体制,さらには名東区と区内小学校の諸
特徴などに関する概略がおおよそ呑み込めてきたところである。
そこで,研究テーマとしては,
(1)
「社会人を対象にした教員養成の研究」と(2)
「多文化保育の教育プ
ログラム開発」の二つについて,新たな教育学部体制のもとでより具体的に探究していくことになるだろう。
また,高校生と大学生のメディアリテラーシー教育の開発については,Ⅱ研究活動<監修書>2.
『中高生
のためのケータイ・スマホハンドブック』の延長上に浮かび上がった課題ではある。幸いにも年度末になっ
て,東邦高校の校長および教頭そして生活指導と保健室担当教員との懇談会が急遽実現したことから,高大
連携の具体化として,来年度には重要な実践研究プロジェクトになりうるのではないか,と期待される。
7