パンフレット 詳細版(PDF:20ページ, 12.4MB)

NTT DATA
Technology
Foresight
2015
ビジネスの未来を拓く
NTT DATA Technology Foresight は、
NTT データが年に一度導き出す「情報社会トレンド」
と
「技術トレンド」。
将来の社会が抱える課題をいち早く見いだし、
新たな価値創造を進めるための羅針盤です。
未来のテクノロジーが社会やビジネスに与える影響を予見し、
さまざまなお客様と共に将来ビジョンを描き実現していくことで、
よりよい社会を目指します。
NTT データは、NTT DATA Technology Foresight を経営戦略に組み込み、
ビジネス環境の変化を先取りした技術開発やサービス創出に取り組んでいます。
Looking ahead : Technology trends driving business innovation.
技術の将来展望が
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中長期的にお客様のビジネスへ
大きなインパクトを与える「近未来の展望」
IST04
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情 報 社 会トレンド
IST01
個の影響力拡大が社会の変革を促す
IST02
オープンな共創や連携が加速する
IST03
価値の源泉は
無形資産の活用へとシフトする
フィジカルとデジタルの融合が
持続性と迅速性をもたらす
m
Information Society Trend
We anticipate four key trends will have a significant impact
on our clients’ medium to long-term business.
個の影響力拡大が
社会の変革を促す
個人の影響力拡大が既存の社会や業界に変革を起こす。
事業者や公的機関などの提供者は、
「個」
を意識すると同時に
業界の常識や慣行を見直し、既存業務を顧客中心に再構築する必要がある。
インターネットの普及は情報力格差を
アは、
単なる個人間のコミュニケーション
に企業や組織が応えたものである。流通
づいた不規則な区割り
縮小させた。携帯電話やスマートフォン
手段から企業や組織と個人をつなぐ主要
業界だけでなく、製造、物流、広告、
マスコ
になるかもしれない。自治
等のモバイル機器の普及は、利用者によ
ツールへと用途を拡大しつつあるが、今
ミなど多くの業界にも影響が及んでいる。
体等には住民に選ばれるため
る個人や組織、種々の情報等への常時
後は企業間でのビジネスツールとしても
今後は、場所、状況、心理状態などまで反
の努力をすることが必要となる。住
アクセスを可能にし、
ソーシャルメディア
活用が進むと予想される。これは、消費
映した情報やサービスの提供などにつな
民の力に頼ることで住民による自治の
の浸透は利用者の発信力を向上させた。
者や従業員の選択を企業や組織が受け
がる可能性がある。
概念が拡大する可能性もある。
個の力を結集させることが容易になり、
相
入れたことを意味する。BYOD
対的に個の力は提供者の力を凌ぐほどに
だけでなく生活の様々なシーンに広がり、
企業や組織と労働者の関係も変化し
今後、個の力のさらなる強化につなが
まで高まっている。力関係の変化が社会
スマートフォンは鍵、
ID、決済手段、セン
ている。専門性の高い業務に外部の労
ると考えられるのがウェアラブルデバイ
の変革を促している。
サーなどへと用途が拡大しつつある。こ
働力を活用するクラウドソーシングが普
スである。キー入力が不要になれば、
ス
れは単にツール選択の問題ではなく、企
及し、大企業でも利用するところが出てき
マートフォンを上回るスピード、
正確性で
消費者市場発の変化が社会全
業や組織と顧客の接点が顧客のコント
た。今後は組織に属さず仕事をする労
種々の情報へのアクセスが可能になる。
やスマートフォンなども登場している。
「忘
体に波及している。モバイル
ロール下に移行することを意味し、企業
働者が増えると考えられる。企業や組織
利用者の利便性や能力を向上させる手段
れられる権利」は、
公共の知る権利や報道
機器とソーシャルメディ
や組織が従来型の提供者の論理を見直
が重要な業務を外部の専門性の高い労
として期待は高いが、
広く普及するために
の自由などとバランスを取りながら確立
し、顧客接点を顧客中心に見直すことに
働者に頼ることになれば、外部の労働者
は利用者および周囲の負担感の緩和に
されていくであろう。
つながっている。今後、
組織運営の変革、
の力が相対的に高くなる。企業や組織の
加え、
ウェアラブルデバイスならではの活
業界慣行の見直しなどにまで発展する可
オープン化、
ソーシャル化をもたらし、中
用方法の確立、
および利用者へ効果をわ
能性がある。
央集権的で固定化された構造から柔軟な
かりやすく伝えていくことが必要である。
アメーバ型構造への変革がもたらされる
企業内での活用が拡大しつつあるが、個
個人の属性に合わせた製品、サービ
かもしれない。非正規雇用に対する社会
人向けには自身の行動や状態などを定量
ス、情 報などを提 供するパーソナライ
の価値観に影響を与え、制度や政策等の
的に記録することで健康増進や自己の認
見直しにつながる可能性もある。
識等に役立つ Quantified Selfなどの分
は職場
※1
ゼーションは、画一的な製品・サービ
野から徐々に浸透すると考えられる。
スの一方通行的な提供では顧客
満足が得られなくなったこと
国や自治体等の行政機関と住民の関
係も変化し始めている。従来は、個人は
個の影響力拡大はプライバシーに対す
生活の場所を移動することでしか帰属す
る考え方にも影響を及ぼしている。一部
る自治体等を選ぶことはできなかった。
ではプライバシーに対する意識が希薄化
最近は居住地を変更せずに住民投票で
する一方、過去の情報を「忘れられる権
帰属先を選ぶ時代が到来する兆しがあ
利」が認められるようになり、
個人の情報
る。今後住民の力がさらに強まると、自
のコントロール力が高まった。情報を消
治体等の境界が個々の住民の判断に基
去する機能を備えたソーシャルメディア
※1 Bring Your Own Deviceの略で、私 物のス
マートフォンを職場に持参し、組織の情報等にアクセ
スすることを認める制度
Information Society Trend
We anticipate four key trends will have a significant impact
on our clients’ medium to long-term business.
オープンな共創や
連携が加速する
多くの人、
あらゆるモノがインターネットにつながり、
イノベーションが起こる。
共創や連携から関係が動的に変化する新たなエコシステムが構築される。
インターネットによる情報の自由な流
広く普及するまでにはまだ時間がかかる
を介して製造設備や部品等に組み込ん
通がオープンな共創や連携を可能にし
と想定されるが、今後は国境を越えて労
だセンサーや個体識別タグなどを相互に
た。ヒト、
モノ、
カネの流れについても、
イ
働者の間に徐々に浸透することが見込ま
連携させ、生産計画や製造工程などの自
ンターネットのように一元的な管理機構
れる。
動かつ動的な制御が行われている。オ
は存在しないが、参加主体が相互に連携
ペレーションの最適化が在庫の適正化、
しつつ全体としてバランスを取りながら
モノの流れのインターネット化は、産
稼働率向上、廃棄ロス削減などにつなが
価値を共創するオープンなしくみが実現
業界で始まっている。インダストリー
り、
コストの大幅削減に寄与する。製造
しつつある。社会のしくみのインターネッ
4.0あるいはインダストリアル・インター
設備や部品等の連携が強化されることか
ト化が進んでいる。
ネットなどと呼ば
ら、設計変更などを伴う顧客要望への柔
れ、インターネット
軟な対応も可能になる。製品に組み込
テレワークやウェブ会議システムなど
まれたセンサーから得られる情報は、製
の普及により、物理的・空間的移動を伴
品開発やメンテナンス計画等への活用が
わないヒトの自由な「移動」が可能になっ
期待される。
た。遠隔地での就労や組織に属さずに
専門性の高い仕事をする労働者が現
れるなど、ヒトの流れのインター
ネット化が 始まりつつある。
心理的な障壁などもあり、
複数の工場の連携は物流業も巻き込
んで、物流をコストとして捉えるので
はなく戦略的に活用しようとす
る変 革につながっている。
在 庫の機 動 的な流 通
は、納期短縮、在庫
圧縮などの効果があるが、特定の荷主向
ンなどでも受け入れられるようになってき
遊休資産のシェアリングを始めたり、
大企
けのクローズドなしくみから脱却し、倉庫
た。価値の保証や消費者保護のしくみが
業がクラウドファンディングを活用したり
や輸送手段などのアセットの柔軟な組み
なく、国により課税の扱いが異なるなどの
する事例もあり、必ずしも既存のしくみと
合わせが可能なオープンなしくみとする
課題があること、
および新たな規制を設け
相いれないとは限らない。制度や規制の
ことにより、
コスト削減や環境負荷低減な
る動きも見られることなどから投資の対
見直しを伴いながら、徐々に社会に定着
どとの両立も可能になる。今後は需給予
象としては未知数であるが、
決済手段とし
していくことが予想される。
測や経路の混雑状況等に基づき在庫の
ては徐々に社会に浸透していくであろう。
配置や量を動的に変化させ、
リアルタイ
単に残高や決済額をデジタルな情報とし
ムに最適な出荷場所および経路を判断し
て流通させることとは異なり、金融のしく
て出荷するインターネット型物流のニー
みそのものを変革する可能性がある。
ズが高まると予想される。トラックの自
動運転などにより移動速度も制御できる
オープンな共創や連携は組織に閉じら
ようになれば、
さらに効果的であろう。
れていたリソースの限界を取り去り、
イノ
ベーションの可能性を拡大する。一方で
カネのインターネット化と言えるのは、
これまで積み上げられてきたしくみの転
国家や中央銀行などの発行主体をもたな
換を促すことにもつながるため、社会的
い仮想通貨
である。需要と供給のバ
に受容されるまでには乗り越えるべき障
ランスにより価値が決まり、取引コストが
害も存在する。これまで順調に伸びてき
低く瞬時で自由な流通がグローバルに可
た個人間のシェアリングサービスなどで
能である。流通や価値を支えるのは仮想
も、既存事業者の抵抗に遭い規制の対象
通貨に対する人々の信頼である。決済
となる例も見られる。しかし、
このような
※1
手段としてのしくみが整いつつあり、
国によっては大手の流通チェー
サービスが普及するのは既存のしくみに
課題が存在するためでもある。自治体が
※1 ここでは Bitcoin、
Ripple、
Litecoinなどの暗号
化技術に基づくインターネット上の決済・送金のしく
みを指す。
Information Society Trend
We anticipate four key trends will have a significant impact
on our clients’ medium to long-term business.
価値の源泉は無形資産の
活用へとシフトする
蓄積される情報の種類、量が急速に拡大し、情報の分析と活用が高度化する。
価値の源泉は有形のモノや資産から知識、
デザイン、機能等の活用へと移行する。
特許権や商標権など無形資産の生み
が再認識され、製品を販売せずに機能の
の 1 以上が分析可能となるとする調査結
出す価値に対する関心が高まり、製品に
みを提供する製造業のサービス化も浸
果もある※1。技術革新により大量データ
ついて有形のモノと無形の機能やデザイ
透してきた。効果や便益等の価値は利
の蓄積、分析等が容易化したことで、
デー
ンなどを分離して把握することへの
用者の使い方や状況等により変化するた
タからより多くの価値を引き出すことが可
理解も進みつつある。製品は所
め、
有形のモノ自体に固有(不変)の価値
能になった。公共財としての情報活用も
有ではなく利用されることに
が存在するとする考え方からはパラダイ
期待されている。
より効果や便益等の価
ムシフトを伴う。新たな考え方が社会に
値が創出されること
浸透するには時間がかかるが、徐々に受
リアルタイムに記録されたデータや発
果が期待される。今後は、表
け容れられるようになるであろう。サー
信された情報をたどると、
これまで把握で
情やバイタルデータなどから顧客
ビス業においても、サービスを提供する
きなかった人々の行動が可視化できる。
の感情や本心を推測しながら最適な
行為から顧客の価値の源泉を分離し、顧
行動と生活習慣病などの慢性疾患の関係
判断に導くことなども行われるようになる
客価値を最大化することが求められるよ
については、
個人ごとに症状の悪化しやす
であろう。
うになってきた。たとえば、買物を効率
い行動パターンや気象などの環境条件を
的に済ませたい顧客と楽しみたい顧客で
割り出して再発・重症化を防ぐことや、
多
プライバシーに寛容なデジタルネイ
は、店の雰囲気、店員の応対、効率
くの患者データを統計処理することによ
ティブ世代は、
むしろ進んで情報を記録・
性、価格など、求める価値の優先
り特定の疾患と関連の深い条件等を明ら
公開しているが、今後は何を記録するこ
度は異なる。また、小売業であっ
かにすることができると期待される。行動
とが役に立つのかの判断が求められる。
ても提供する価値は商品の販売とは
パターンや環境条件と、
成功や失敗、
事故
その際には公共財としての情報の価値も
限らず、顔の見えるコミュニケーションか
や犯罪行為などとの関連が明らかになる
注目されるようになるであろう。プライバ
もしれない。金融、
医療、
福祉等のサービ
可能性もある。人々の移動情報は都市計
シーに関わる情報は収集した機関と情報
スも含め、顧客に提供する価値の再定義
画や交通網の整備、店舗や工場等の立地
源のどちらに帰属するかについての議論
が必要である。
の選定などに、
製品等に組み込まれたセン
もあり、今後の行方が注目される。情報
サーや消費者が発信する情報から把握で
源と収集者の利益を損なわず、一方で公
Opportunities: Rich Data and the Increasing
情報が生み出す価値に対する認識も
きる消費実態は新製品開発やマーケティ
共財としての価値を保護するしくみが整
Sponsored by EMC
深まっている。スマートフォンや生活の
ング等へ応用できるかもしれない。
わなければデータの悪用に対する懸念が
性向上、顧客満足度
向上、被害軽減などの効
払拭されず、
自由な流通と活用が妨げら
あらゆるシーンに配置されたセンサーに
より、人々は意識、無意識に関わらず日常
大量データ処理に機能を発揮する人
れる可能性が高い。社会的な規範や感
生活で大量の情報を生成・記録するよう
工知能は、家電製品の制御、音声・画像
情的な課題も大きく、結論が出るまでに
になった。1 年間に創出されるデータ量
認識、
自動翻訳など生活にも入り込みつ
はまだ数年を要すると思われるが、国際
は 2020 年には 44 兆ギガバイト
(=10
つある。医療診断、
弁護士・会計士業務、
社会ともバランスを取りながら制度的な
バイト)に達し、
蓄積されたデータの 3 分
不正検知などビジネスでの活用は、生産
整理が進むものと予想される。
21
※
1 I D C , “ T h e D i g i t a l U n i v e r s e o f
Value of the Internet of Things,” April 2014,
Information Society Trend
We anticipate four key trends will have a significant impact
on our clients’ medium to long-term business.
フィジカルとデジタルの融合が
持続性と迅速性をもたらす
人々がフィジカル
(リアル)
とデジタル、
オフラインとオンラインの境界を
意識せず自由に行き来するようになる。
両者の自然な融合が、新たな価値の創出や社会課題の解決を導く。
バイスはこれまでコンピュータの導入が
発見、早期治療や病状把握につながると
ノベーションを阻害することのないよう、
あまり進んでいなかった現場を含め、労
して、医療/研究目的での活用が進むと
社会の変化に応じた速やかなルールの見
働者の作業支援に使われることが見込ま
考えられる。一方で、
バイタルデータから
直しが必要である。
れる。人間とロボットやコンピュータが
感情やストレスレベルを推計し、
作業中の
補完しあうことで生産性の向上や新たな
事故防止やマーケティングなど、
ビジネ
価値の創出が期待される。
スに応用することも研究されている。静
脈や声紋などを使った生体認証は、個人
生活面ではオムニチャネル が高度化
認証や暗証番号を補完、代替するものと
フィジカルとデジタルの世界が融合し
店舗は eコマースとの競合を前提とした
決策に比べ資本的支出が抑制されるデジ
し、移動中にモバイルで注文・決済した
して普及すると考えられる。医療または
ている。実世界における種々の活動や判
戦略を余儀なくされ、
マスコミや出版業界
タルな解決策が重視されるようになると
商品を実店舗で並ばずに受け取れるよ
ビジネス目的で体内にマイクロチップを
断が、
ITを活用した機器やそれらの機器
でも電子媒体との共存のあり方が問われ
予想される。一方、発展途上国ではフィ
うになるなど、
人々は「待つ」ストレスから
取り込むことも一部では行われ始めてい
がもたらす情報に支えられるようになっ
ている。今後、社会のしくみはフィジカル
ジカルなインフラが充足されるまでの補
開放される。店舗によっては顧客の滞在
るが、
当人の意志による機能の制御が難
た。街歩きや買い物をしながらスマート
とデジタルの両方を前提としたものに転
完としてデジタルな解決策が有効である。
時間をできるだけ短くするという従来と
しいことから、
プライバシー上の課題が普
フォンを使用する人々は、
自分がフィジカ
換していくと考えられる。
社会の至る所にセンサーやカメラが設置
は逆の発想が必要となり、店舗デザイン
及の障害となる可能性が高い。
され、道路、交通機関、駐車スペースなど
にも影響を及ぼすと見られる。駅や空港
深刻化する都市問題に対しては、
アイ
は利用状況を、橋梁、建物、管路などの構
などのバーチャルストアも待ち時間を長
フィジカルとデジタルの境界が曖昧に
デアやデザインによるデジタルな対策の
造物は利用状況や倒壊・破損の危険性
eコ
いと思わせないしくみである。一方、
なることから、既存の法律や規制の枠組
重要性が増している。都市インフラの
などが監視の対象となる。スマートグリッ
マースは配送の革新により食料品の購入
みに収まらない事象が増えることが想定
老朽化に対し、長期的な需要減少
ドや自動運転車などの活用も期待され
や自宅以外での受け取りも可能になり、
される。特に問題が発生した場合の
が見込まれる中で都市インフ
る。市民の利用するスマートフォンのセ
選択の機会が拡大する。テレビや雑誌な
責任の所在などに懸念がある。イ
ラの老朽化が進む先進国
ンサーや発信する情報、検索キーワード
どのメディアに QRコードや電子透かし
なども集約すると有効な情報となる。
などを埋め込んだ ECサイトへの誘導も
ルな世界にいるのかデジタルの世界にい
るのかを意識しなくなった。小売業の実
では、
フィジカルな解
今後普及が拡大し、購買プロセスの簡素
労働現場ではロボットやウェアラブル
化、
短縮が見込まれる。
デバイスの活用が拡大する。産業用ロ
ボットは、隔離された環境での作業から
心 拍 数、呼 吸 数、体 温 等のバイタル
労働者と並んで作業する協働型に移行し
データも種々の形で活用が進む。ウェア
つつある。支援する作業を労働者から直
ラブルデバイスなどを使ったモニタリン
接教わったり、人間用の道具を使いこ
グは、健康意識の向上と行動変容を促す
なすことができるタイプも登場し
ている。一方、
ウェアラブルデ
だけでなく、慢性疾患患者や高齢者
などの在宅における病気の早期
※1 実店舗や ECなど、顧客と店舗をつなぐすべて
のチャネルをシームレスに統合する戦略
CASE STUDY
情 報 社 会トレンドに関 連した N T T グ ル ープ 取り組 み 事 例
個の影響力拡大が社会の変革を促す
顧客中心のアプローチによる革新的な銀行
価値の源泉は無形資産の活用へとシフトする
脳を知り、
脳に聞き、
脳を満足させる脳科学の産業応用で社会を変革
Hello bank!は BNPパリバグループ傘下の欧州最初のモバ
ヒトの意思決定や行動の 95%は無意識に行われていると
Italyのサービスデザインからシステム開発までを担当し
40 社超の企業や研究機関が参画する「応用脳科学コンソー
イル専業銀行である。NTTデータイタリアは、
Hello bank!
いわれており、近年、無意識を探る脳科学の研究が盛んだ。
た。Hello bank! Italyのコンセプトとビジネスモデルを、
デ
シアム」の設立・運営など、
かねてより脳科学の産業応用に
ことと定義し、
ターゲット顧客の観察とインタビューを通じ
ティングや製品開発はもちろん、店舗の設計や人材育成、経
bank! Italyのセルフサービス・モデル、
複数のチャネルを駆
企業がお客様や従業員の「脳を知り、脳に聞き、脳を満足さ
ジタル機器を使いこなす顧客に最大の顧客経験を提供する
て革新的な商品、
サービス、機能の提供を実現した。Hello
使した顧客との交流、高度にパーソナライズされたサポート
取り組んでいる NTTデータ経営研究所は、企業のマーケ
営マネジメントにも脳科学の知見や研究成果を活用し、顧客
せる」取組みの支援を行っている。さらに、活動量や脈波と
などの特徴は、顧客中心のアプローチによる成果である。顧
いった様々な生理情報や、温度・湿度・照度などの環境情
ビジネスに革新をもたらすことが期待される。
ネットワーク、
ビッグデータ解析などの IT を脳科学と融合し
客中心のアプローチは伝統的な縦割り型組織に風穴を開け、
報を 24 時間連続で計測しライフログ化するなど、
センサー
て活用することで、
お客様に従来を超える快適感や満足感を
提供し、社員の生産性と満足度を高める経営をサポートして
いる。
オープンな共創や連携が加速する
リアルタイムビックデータ分析に基づくエネルギーマネジメント
フィジカルとデジタルの融合が持続性と迅速性をもたらす
コミュニケーションロボットで高齢者の自立生活を支援
従来は電力会社によるトップダウンで制御されてきたピーク
日本は世界で最も高齢化が進行しており、
65 歳以上の人口
仕組みを提供している。具体的には、
スマートメーター等の
という状況が予想されている。このような環境変化を見据
どで使用される電力データを収集し、
ビッグデータ分析技術
ムに把握し、状況に合わせた能動的な介護予防サービスを
電力を、利用者によるボトムアップ型の制御で削減していく
IoT(Internet of things)を活用することで、
ビルや工場な
を用いて週間、翌日、
当日の電力消費量の予測結果を算出す
る。この予測結果をフィードバックすることで、
各々の自主的
な省エネ行動を促進できる。本サービスでは予測モデルの
パラメーターを日々自動チューニングすることで予測精度を
比率は既に 25%を超え、
2035 年には 3 人に 1 人が高齢者
えて、
NTTデータでは、在宅高齢者の生活状況をリアルタイ
提供するシステム構築に取り組んでいる。具体的には、部屋
に設置した人感センサや、
ベッドの下に設置した圧力センサ
など、各種センサデバイスを通じてデータを収集し、高齢者
の生活状況を可視化する。その状況に応じてコミュニケー
高め、特に当日の予測結果はリアルタイムに更新する。この
ションロボットが高齢者に話しかける仕組みを検討してい
力系統の安定化、
ビルオーナーは予測結果を考慮した計画
防等を行う。将来的には対話データを分析することで認知
仕組みにより、電力会社は自発的なピーク電力削減による電
的なコスト削減や自家発電設備の運用が可能となる。
※本取り組みは米国 AutoGrid 社と NTTデータの共同サービスである。
る。ロボットとの対話を通じて服薬管理や安否確認、
転倒予
機能訓練や認知症早期発見につなげたい考えである。高齢
者の自立生活を支援することで、
高齢化社会における課題解
決の一助になるだろう。
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情報社会トレンドの実現に
大きな影響を与える技術トレンド
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技 術トレンド
TT01
コンピュータの透明化
TT02
生命や感情の科学
TT03
人工頭脳への挑戦
TT04
3D 文化の拡大
TT05
未来のモビリティ
TT06
インタラクティブコマース
TT07
クラウド超競争時代
TT08
デザインイノベーション
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
コンピュータの透明化
一般の生活において超臨場感技術※1を利用する場面が増える。
医療では人体にデバイスを埋め込む技術に注目が集まる。
コンピュータは自然に使えるだけでなく、存在を意識しないものに進化する。
メディア研究で有名なマーシャル・マ
クルーハン氏は、
全てのテクノロジーやメ
ディアは人間の身体を拡張する存在だと
主張している。これは、
自転車や道路は
足の拡張、電話は口の拡張、カメラは記
憶の拡張というように言語や衣服などを
含む全ての人工物は人間の機能や感覚
の延長線上に存在するという考えだ。し
かし、現実にはテクノロジーにより道具
の性能が高まる反面、人間が高度な道具
を使いこなせないという新たな課題が生
じている。
「使いこなせるようになる」と
いう考え自体が誤りであり、
すべてのテク
ノロジーはユーザが行動する時にまった
く気にならない「透明」な存在になるべき
だろう。
近年、デバイスを身に着けて利用する
近いデバイスと言える。ウェアラブル端
末は指輪型、腕輪型、時計型、
コンタクト
レンズ型、洋服型など多岐にわたり、
さま
ざまな製品が発売されている。ウェアラ
ブル端末で最も有名なのはメガネやヘル
メットを身に着けるタイプのヘッドマウン
ト型だろう。ヘッドマウント型は航空機
整備などの複雑な作業、医療のような専
門性が高い領域で既に採用が進んでい
る。現在、
コンシューマに最も受け
入れられそうなウェアラブルデ
バイスはスマートウォッチ
だ。心臓の鼓動でユー
ザを識別する、
体温
やストレス情報
を自然に収集するなど、
スマートウォッチ
間とデバイスの融合技術は飛躍的に進
場感技術が確立されれば仮想世界と本
にしか実現できない機能が注目されてい
歩している。セグウェイ発明者のディー
物の区別がつかなくなり、
デバイスはさら
る。さまざまな可能性が検討されている
ン・ケーメン氏が率いるベンチャー企業
に透明な存在になる。
ウェアラブルだが、普及速度はそれほど
DEKA 社は、自分が頭で考えたとおりに
加速しないと考えられる。ウェアラブル
動作する義手を開発した。このデバイス
透明化が行き着く先には何があるのだ
機器全般に言えることだが、製品が持つ
は、脳からの指示が筋肉に伝わる時に発
ろうか。失われた健康を回復するなどの
潜在的な可能性は絶大であるが、技術が
生する電気パルスを読み取り動作する仕
仕方のない理由ではなく、
自身の願望を
追い付かない印象だ。バッテリー、十分
組みだ。他にも体内に埋め込まれたチッ
かなえるために能力を拡張することはテ
な通信帯域、なめらかできれいな画面表
プで血糖値を測定するなどの研究が行わ
クロノジーエンハンスメントと呼ばれる。
示など、
クリアーするべき技術的課題は
れている。
テクロノジーエンハンスメントの例として
多い。ウェアラブルデバイスは洋服に合
は、
人間の限界を超える聴力、
暗闇でも見
わせて身に着けるものであるため、
デザイ
デバイスを透明な存在にするもう一つ
える視覚、機械の指を追加し指の数を 7
ン性も重要になる。
の方法には、デバイスを身に付けるので
本に増やす、などがある。透明化により
はなく、
デバイスを壁や机などに埋め込む
強力なテクノロジーを自由自在に扱えた
ウェアラブルが流行している。ウェアラ
ブルは必ずしも存在が気にならないデ
スマートウォッチなどのウェアラブルデ
アンビエントコンピューティングがある。
としても、人間は社会的な動物であるた
バイスではないが、
身に着けている
バイスが進化し、
まったく気にならない透
アンビエントコンピューティングは最も
め、
自分の思いどおりにならない場合があ
デバイスが行動に合わせて動
明な存在に進化するとどうなるのであろ
人間に負担をかけないデバイス利用方法
る。透明化の果てには「ルールに基づき
作すると考えれば透明に
うか。一つの方向性は人体にデバイスを
の一つと言える。将来的にはガラス窓や
行動できない」
「
、本当の幸福とは何か」と
埋め込むインプラントコンピューティング
会議室の壁が高精細スクリーンになり、
いう人間的で本質的な課題が残されるだ
である。動物にマイクロチップを埋め込
ジェスチャーやスマートデバイスで機器
ろう。
むのは既に一般化しているため、
インプラ
の操作を行う時代になるだろう。遠隔で
ント技術はある程度確立されている。動
会議に参加する人の映像や皆で共有する
物へのチップ埋め込みは単なる身元証明
情報はスクリーンに投影し、個人で閲覧
が目的だが、人間にデバイスを埋め込む
する情報はスマートデバイスで確認する
場合は治療が主な目的になるだろう。人
使い分けが浸透すると考えられる。超臨
※1 あたかも現在とは別の場所にいるかのような感
覚を人間の五感にもたらす技術。
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
生命や感情の科学
遺伝学、脳科学、心理学など人間の本質を理解する技術の研究が加速している。
深層心理、
ストレス対処法の効果、幸福の感じ方の違いなどが科学的に解明され、
ビジネスで利用され始める。
2014 年 10 月、カーナビやスマート
新しい細胞を生成していることが証明さ
最新の研究では、母親の愛情や強いス
フォンに搭載されている GPSのような位
れている。ここ数年で注目度が向上して
トレスの経験が遺伝子の働きに影響を与
置把握能力が脳内に存在することが認め
いるのは脳と幸福の関係だ。脳内物質
えることが分かってきた。これはエピジェ
られ、ジョン・オキーフ氏とモーゼル夫
であるセロトニンが幸福感に大きな影響
ネティクスと呼ばれる研究領域で、
多くの
妻にノーベル生理学賞が贈られた。近
を与えることが解明され、幸福に関する
愛情で育てられた子供は多くの遺伝子が
年、
脳に関する研究は劇的に進展し、
次々
様々な研究が進展している。遺伝子がセ
活性化し、
ストレス耐性が向上することが
に従来の学説が書き換えられている。一
ロトニンの分泌量を左右することから、
遺
証明されている。また、多くの研究で体
般に右脳は感性をつかさどり、左脳は論
伝子の個人差が幸福の感じ方に影響を
験する経験や訓練次第で脳の回路をあ
理をつかさどると言われているが、現在
与えていると考えられている。今後も遺
る程度思いどおりに組み替え可能である
は右脳と左脳に大きな違いがないと考え
伝子や幸福に関する研究は進み、生命や
ことも解明されている。この性質を利用
られている。脳細胞は生まれてから減り
遺伝学や脳科学の進展はビジネスにも
理に合わせて食べ物の色を調整する事例
品が 2015 年 4月に販売される予定だ。
感情のメカニズムを利用した新しいビジ
した治療法はマインドフルネス・ストレ
続けると考えられていたが、多くの研究で
影響を与え始めている。本人が本当に感
やゲーミフィケーションと呼ばれる手法
若返りビジネスは今後 10 年間で大きな
ネスが次々に作り出されていくだろう。
ス低減法と呼ばれている。この訓練法は
じている心理とヒアリングの回答結果に
で社員のモチベーションを向上させる取
市場になると考えられる。
2600 年前にブッダが提唱した仏教を起
ずれがあることは専門家の間では既知の
組みがある。
源とする瞑想や禅をベースにした治療法
事実であるが、
この問題に対応するため
で米国では 30 年前から医療機関で採用
脳波をもちいたニューロマーケティング
遺伝子の分野においても、
さまざまな
会構造が大きく変わる可能性もある。例
されている。先進的な企業では、社員の
が考案されている。従来のモニター調査
進展がある。1997 年に生まれた遺伝子
えば、学校教育におけるマラソンでは、最
ストレスはコストであるという認識が広が
では動画広告の全体としての印象は分か
操作された赤ちゃんは、来年の 2016 年
も早くゴールした人ではなく、最も体に負
り、
グーグル、
インテル、
ゴールドマンサッ
るが、印象に強く関係しているシーンまで
には高校を卒業する予定だ。ウズベキス
荷をかけた人が評価されるようになるか
クスなどが研修にマインドフルネスの考
は特定できなかった。しかし、脳波を利
タンでは遺伝子情報を利用し、将来のア
もしれない。平均寿命が 100 歳を超え
え方を取り入れ始めた。故スティーブ・
用すれば各シーンの心理を数値で可視
スリートを選別するプロジェクトが検討
れば、年金などの仕組みを抜本的に改革
ジョブズ氏が瞑想や禅に熱中して
化できるため、
動画広告の中でインパクト
されている。上海には遺伝子検査で才
する必要がでてくるだろう。我々は社会
を感じた場面や感情に響いたシーンを明
能の有無を検査するベンチャーも存在す
の根本を揺るがすような大きな変化に備
らかにできる。時にはユーザ自身が気づ
る。遺伝子レベルの解析は、老化の原因
えるため、今から先を見越した議論と準
かないレベルの感情変化をコンピュータ
までも明らかにしつつある。研究では、
備を行う必要がある。
が捉える場合もある。なぜ感情変化が生
人間の年齢で 60 歳に相当するマウスが
じたのかを後から真剣に分析することで、
20 歳にまで若返り、糖尿病が改善してい
深層心理をあぶりだすことも可能だ。脳
る。近い将来、年齢に起因する全ての病
波ではなく心理学を利用したビジネスも
気を若返りの薬で治療できる可能性もあ
注目を集めている。心理学を実際のビジ
るだろう。日本では従来の商品より 200
ネスに応用した例としては、お客様の心
倍の若返り効果を持つ物質を含む化粧
いたのも有名な話だ。
生命や感情に関する理解が進めば、社
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
人工頭脳への挑戦
脳回路を模倣したアルゴリズムが高度化し、
コンピュータは意味や概念を理解するようになる。
コンピュータの役割は知的作業の支援にシフトし、
人は創造的な仕事を多数並行して行えるようになる。
ディープラーニングと呼ばれる人工知
識の正解率がディープラーニングの登場
ンピュータが独力で猫の見た目の特徴を
を誇るディープラーニングだが、動作原
能技術が世界を席巻している。ディープ
により 2010 年の 71.8%から 2014 年
学ぶことに成功している。人工知能のも
理が従来型のコンピュータとは根本的に
ラーニングは 1950 年代から存在する
の 93.3%まで急激に改善している。
う一つの大きな進歩は、人工知能に記憶
異なるため、効率的に処理を行えない問
力をもたせることに成功した点だ。これ
題が存在する。この問題に対応するため
ニューラルネットワーク技術を進化させ
たもので、人間の脳神経細胞を模倣して
将来的にコンピュータは脳の神経細胞
はニューラルチューリングマシンと呼ば
米クアルコム社や米国防高等研究計画局
いる点に特徴がある。ディープラーニン
を模倣することで人間に近い思考力を持
れる技術で、例えば途中の処理結果を記
(DARPA※2)が 主 導する SyNAPSE ※ 3
グの登場により、
コンピュータが画像に写
つようになるだろう。人間は日常生活か
憶領域に格納しながら、人工知能に「並
プロジェクトでは脳神経細胞を模倣した
る物体の名前を言い当てる画像認識の
ら自然に「猫は四本足である」
「猫は生物
び替え」の処理を実行させることができ
チップを開発し、処理の高速化や電力消
性能が飛躍的に向上した。世界の研究
である」といった特徴を学ぶが、
ディープ
る。これは非常に画期的な進歩で、
この
費の低減を実現している。
者が集まる国際コンテスト ILSVRC ※ 1 で
ラーニングの進化によりコンピュータで
技術が進化すれば人工知能が論理的な
は、数年間進展が見られなかった画像認
も同様のことが実現可能になると推測さ
思考を身に着けることも不可能ではない
ビジネスにおいて人工知能という言
れる。2012 年に行われたグー
と考えられる。近年の人工知能の研究
葉はバズワード化しているため必ずしも
は人間の脳神経を模倣する流れにあり、
グルの実験では、既に多数の
猫の動画をみるだけでコ
当たり前になるだろう。人工知能が人間
の常識にとらわれない独創性を発揮する
※1 正 式 名 は ImageNet Large Scale Visual
Recognition Challenge。
点も大事な注目点である。
※ 2 正 式 名 は Defense Advanced Research
ディープラーニングを利用している訳
人工知能の将来はどうなるのであろう
※3 正式名は The Systems of Neuromorphic
それはまさに人工的な頭脳開発への挑
ではないが、人工知能を活用したビジネ
か。フューチャリストとして有名なレイ・
戦と言えるだろう。
スは増加傾向にある。米ベンチャーの
カーツワイル氏は、早くて 2020 年前半、
Grok 社は大脳皮質のメカニズムに基づ
遅くても 2045 年までにコンピュータが
ディープラーニングは既に、音 声や
く独自の技術を開発し、
2014 年 1 月か
人間の思考力を超えると予言している。
画像を扱うサービスで利用されている。
らアマゾン・ウェブ・サービス上で通信
人工知能が人間を超えるスピードで技術
グーグルやアップルは自社のサービスに
ネットワークなどの異常検知サービスを
革新を起こすようになる歴史的転換点は
ディープラーニングを適用し、画像の検
提供している。最近ではコールセンタの
シンギュラリティと呼ばれ、
その期待と脅
索サービスや音声入力サービスの性能を
効率化にも人工知能が利用され始めた。
威について真剣に議論がされている。人
飛躍的に向上させている。フェイス
また、人工知能は人間の創造性や感性を
工知能は人間とは異なり、知識の複製が
ブックはディープラーニングをも
扱う領域でも利用が拡大している。画像
簡単で疲労も感じない。世界で初めて人
ちいてコンピュータが人物の顔
と文章を提供するだけで自動的にウェブ
間を超える人工知能を開発した企業は、
を識別する能力を人間と同レベル
サイトをデザインしてくれるサービスは
その頭脳を多数のコンピュータにコピー
にまで高めた。ディープラーニングに
2015 年春にリリースされる予定だ。他
し 365日 24 時間並列実行することで知
よりコンピュータが動画を理解する能力
にもロゴを自動でデザインする人工知能
的財産権を独占できる可能性がある。高
も向上している。将来的には人間と同様
や作曲を行う人工知能が存在する。今
度な人工頭脳は世界を変貌させる可能
の監視能力を持つ防犯カメラが登場し、
後のビジネスではコンピュータが作成し
性があるため、我々は注意して動向を見
カメラが経験則で不審者を怪しいと判断
たコンテンツを人間が手直しすることで、
守り、人工頭脳の特性を活かせる法制度
する日が来るだろう。既に驚異的な性能
創造的な仕事を多数並行して進めるのが
や環境の整備に務める必要がある。
Projects Agency。
Adaptive Plastic Scalable Electronics、神 経 形
態学的電子工学システムとも呼ばれる。
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
3D文化の拡大
誰もが簡単に 3D 技術を活用できる時代になる。
モバイル端末による 3Dセンシングが可能になり、3 次元造形技術の普及も進む。
3D 技術の活用は当たり前になり、文化として根付く。
2010 年にマイクロソフトから発売さ
され、
2014 年にはグーグルが推進する
3Dセンサーを利用した空 間 把 握の
れたゲーム機用センサーデバイスであ
Project Tangoから 3D 空 間 把 握 能力
方 式 には、三 角 測 量 や ToF(Time of
るキネクトは 3Dセンサーの利用を圧倒
を持つスマートフォンのプロトタイプが発
Flight)と呼ばれる光の反射を利用する
的に安価にした。キネクトは衝撃的な
表された。樹脂などを加工して簡単にモ
方式がある。赤外線を利用して空間を把
低価格に加え、
ジェスチャー操作などを
ノ造りができる 3Dプリンタは、学校教育
握する方式の場合は、太陽光の下では使
簡単に実現できる開発支援ツールの付
に組み込まれ、
コンシューマ向けにも発
えないなどの制限が存在するので注意が
属もあり、
マイクロソフトはおおよそ半年
売が拡大している。3Dバーチャル空間
必要だ。3Dセンサーを搭載するカメラ
で 1000 万台を売り上げることに成功
をブラウザやスマートフォンで軽快に動
を利用すれば通常の写真データに加え、
している。2013 年には Leap Motion
かすことが可能な Unityと呼ばれるゲー
カメラと物体間の距離を表す奥行データ
と呼ばれる両手の指の動きをミリ単位
ム用技術はビジネスにも利用され始め
も収集できる。奥行データがあれば、
カ
で解析できるデバイスが低価格で発売
た。今後は特別な知識や潤沢な資金が
メラから近い位置にいる人物のみを写真
行えば、
洋服の大きさを感覚的に分かるよ
築後に行う図面と実物の比較検証など、
3D 関連の技術は時間をかけて世の中
なくても 3 次元情報を個人が簡
データから切り出すことや背景のみを異
うになるだろう。近年は試着時の洋服の
多様な用途で活用されている。
に浸透していくだろう。ここ数年では大き
なる画像に差し替えることも簡単だ。
シワまでバーチャル空間で再現できるた
単に扱えるようになり、
3D 技
め、
ネットだけでなくリアルな店舗におい
誰もが簡単に 3Dセンサーを利用でき
単位でみるとエコシステム※1が確立され
最近は、
3Dセンサー付きのカメラで物
ても在庫の無い洋服を試着する仕組みが
るようになり、
さらに 3Dプリンタの普及が
るなど大きな変化が生じるはずだ。3D
体をあらゆる角度から撮影すれば、簡単
普及していくと考えられる。物件の間取
進めば、
個人によるモノ造りと販売が加速
関連の技術が普及するには、
3D技術を扱
に物体の 3Dモデルを作成できる。将来
り情報を単なる画像ではなく本物そっくり
するだろう。アマゾンは 3Dプリンタで製
えるソフトウェアの拡充や人材の育成が
的には、
自分の姿や形を立体で表現した
な 3Dバーチャル空間で提供している不
造された製品を販売する 3Dプリンタスト
必要になる。3Dセンサーの普及は、
製品
人型モデルを持ち歩く時代が到来するだ
動産企業も存在する。技術的には相当に
アを 2014 年に新設している。3Dデータ
形状のコピーが容易になるなどの負の影
ろう。自身の人型モデルがあればネット
リアルな空間を再現可能で、
ユーザは好
を登録しておけば、
製品が売れたときの製
響を与えながらも着実に社会に浸透し、
ショッピングで画面上の自分に試着をさ
きな視点から部屋を眺めることができる。
造や配送をサイト運営者が代行してくれ
最終的には 3D 技術がビジネスの中核を
自宅の家具を 3Dデータ化すれば、
自分が
るサービスも登場している。3Dプリンタ
担うようになるだろう。
所有している家具をバーチャルの部屋に
はプラスチック樹脂だけでなく、金属や生
配置することも可能だ。Oculus Rift(オ
地を使った製品も製造できる。3Dプリン
キュラスリフト)のようなバーチャルリアリ
タの進化はすさまじく、
ヒューレット・パッ
ティを体験可能なヘルメット型ディスプレ
カード社は他社より 10 倍製造速度が速
イを頭に装着すれば、実際に物件内を歩
いプリンタを 2016 年にリリースすると公
いているかのようなサービスも提供でき
表している。製造速度は 3Dプリンタが抱
る。3Dセンサーは他に、美しい映像を複
える大きな問題の一つであり、
この問題が
雑な形状をしている建造物に投影する最
解決されれば 3Dプリンタの普及がさらに
新のプロジェクションマッピング技術や建
加速する可能性もある。
術の利用者増加が新し
い文化を創造してい
くだろう。
な動きを感じないかもしれないが、
10 年
せるだけでなく、洋服のフィット具合
を数値で表現することも可能だ。
何度かネットショッピングを
※1 業界全体で収益を高めるために構築された特
定の仕組みのこと。
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
未来のモビリティ
自動運転車を中心とする新交通システムが都市の利便性、保険、物流、
エネルギー政策などに大きな影響を与える。
個人の移動手段は多様化し、特定地域の物流ではドローンが活用される。
未来の乗り物というと何を思い浮かべ
自動運転車が社会に与える影響には
すれば、渋滞をある程度緩和できる可能
計画にも影響を与えるだろ
るだろうか。現在最も注目されているの
何があるだろうか。交通事故の 93%は
性もある。マサチューセッツ工科大学の
う。次世代の自動車としてもう
は自動運転車で、都市の交通システムを
人間の判断ミスが原因と言われている
試算によれば、
シンガポールの交通需要
一つの注目点は、燃料自動車と電
革新すると考えられている。他にも都市
が、
自動運転が普及すれば交通事故によ
はシンガポールに現在存在する自動車
気自動車の覇権争いだ。どちらが主導
間を短時間で結ぶ高速鉄道、
現在の飛行
り死亡する人の数を大幅に減らすことが
の 3 割で満たせるそうだ。自動運転によ
権を握るかは諸説あるが各国で異なる状
機の倍速で飛行する航空機、個人向けの
できる。事故が激減すれば自動車保険に
るタクシーサービスが低価格で提供され
況になると考えるのが妥当だ。既にイラ
新しい移動手段など多数の次世代モビリ
対する人々の考え方も変わるだろう。新
れば、多くの人が自動車の利用をレンタ
ン、パキスタン、
アルゼンチンなどの国で
ティが考案されている。インターネット
興国では交通渋滞が深刻な社会問題化
ルで済まし、
自動車の数が激減する可能
は天然ガス自動車が利用されており、世
は情報の流通速度を劇的に高め、社会に
しているが、
カーシェアリングや個人保有
性もある。自動車の数が 3 割にまで低下
界で 1,400 万台普及している。水素を
も安心して運転ができ、電動であるため
動の効率化だけでなく、深海や火山口の
大きなインパクトを与えた。そして次の
の自動車をタクシーとして利用する UberX
すれば、駐車場の数も減り、政府の都市
動力とする燃料自動車は技術、
コスト、制
ガソリンのような専用ステーションを必
ようなフロンティア探索も実現していくだ
時代はモビリティが進化し、人やモノの
のような配車サー
度の面で多くの課題があり本格的な普及
要としないパーソナルモビリティは地域
ろう。次世代モビリティの実現には技術
移動を革新していく。今後は情報化とモ
ビスが普及
は 2030 年頃になると考えられる。もち
における交通の問題を緩和すると期待さ
が大きな問題になるが、それ以外にも乗
ビリティの進化が相互に影響を与え、社
ろんハイブリッドカーの延長線上にある
れている。パーソナルモビリティの形状
り越えるべき課題が存在する。その一つ
会構造をこれまでにない速度で変貌させ
電気自動車も次世代自動車の主役となれ
は自動車型だけでなく、
自転車型や立ち
が、新交通システムの社会的な受容だ。
ていくだろう。
る潜在力を秘めている。
乗り二輪車型など多岐にわたる。車いす
低い確率とはいえ自動運転車の誤動作に
もパーソナルモビリティと考えることがで
より人命が失われることが社会的に許容
モビリティの革新は物流にも大きな影
き、従来の福祉用途ではなく、
デザイン性
されるのか、社会の大きな変化について
響を与える。近年注目されているのはド
に優れた商品が販売されている。小型で
いけない人をどのように救済するのか、
な
ローンと呼ばれるラジコンヘリによる物
低速な移動手段は事故における被害も小
どの心理的な課題が存在する。人が新
流だ。ドバイやドイツでは既にドローン
さいため、
自動車よりも早く自動運転化さ
交通システムにより多くのメリットを享受
による配送サービスが計画されている。
れる可能性もある。既にイギリスやシン
するために、今後様々な取組みが行われ
遠くない将来、
自動運転車による自動配
ガポールでは低速で走行する電動の自動
ていくだろう。
送も実現されるだろう。徒歩と自動運
運転車に一般客を乗せ、公道上を走行す
転車の間を埋めると考えられているのは
る実験が行われている。
一人用の乗り物であるパーソナルモビリ
ティだ。地方では過疎化により公共交通
モビリティの進化は日本とロンドン間
機関が廃止され、
買い物に行けない高齢
を 4 時間で結ぶ超音速旅客機、
2027 年
者が増加している。都市においても収益
に日本で開業予定の約 400 キロを 40
悪化による大規模スーパーマーケットの
分で結ぶリニアモーターカー、高度 100
撤退により、
買い物難民が発生している。
キロを安全に飛行する民間宇宙船など多
自動車ほどの速度がでないため高齢者で
岐にわたる。また、
次世代モビリティは移
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
インタラクティブコマース
顧客接点のデジタル化が進み、人間と同等の接客力を持つウェブサイトや
ネットの情報拡散力を持つリアル店舗などが登場する。
顧客管理の対象は自社と接点のない潜在顧客にまで拡張される。
インターネットの登場により、人々の購
業企業は激しくぶつかり合う。この勝負
自社サイトに訪れる人を「閲覧のみの人」
買行動は大きく変化した。世界のeコマー
を制すのは、顧客接点の質的改善と拡大
と「購入を迷う人」に分類することも可能
ス市場は 2013 年時点で 1 兆ドルに到
を実現できた企業だ。顧客接点の改革
にしている。購入を迷う人には人間によ
達するほど生活に浸透し、
2018 年には
に成功した企業は、消費者と密に結びつ
る接客を行い、売り上げを伸ばしている
導入する企業も増えるだろう。この分野
2.5 兆ドルにまで成長する見込みだ。こ
く「インタラクティブコマース」を実現し、
企業もある。事業所を持たずにウェブサ
ムニチャネルを成功させるに
では会計や売上集計機能などを持つタブ
の拡大する市場をめぐり、
リアル店舗を
今後の市場をリードするだろう。
イトと販売員のみで営業を展開する企業
は、
ビッグデータ分析による流通
レット端末を無料で配布する企業も出現
も注目されている。今後は、
このようなリ
や業務の最適化が必須だと認識する
するなど、店舗業務の根幹部分を囲い込
eコマースの優位点は、
リアル店舗と比
アル店舗が持つ人間の接客力とウェブの
べきだろう。
む競争が既に始まっている。
較して消費者データの取得が容易なこと
効率性を合わせ持つ企業が増加するだ
だ。既に先進的な企業はウェブサイ
ろう。リアル店舗では逆に、
eコマースの
eコマースはリアル店舗の特長を、
リア
効率性を取り込む動きが加速している。
ジタルマーケティングが注目されている。
リアル店舗を使い分けていく必要がある。
ル店舗は eコマースの特長を取り込みな
オムニチャネルは手段であるため、本質
い機能の改善や犯罪行為の
ビーコンやフィジカルウェブと呼ばれる
IT 大手ベンダーは次々にマーケティング
がら進化するため、
eコマースとリアル店
的にはブランド力の向上や、顧客ロイヤリ
早期発見を実現してい
技術は商品に近づくだけでスマートフォ
ツールを販売する企業を買収し、
ソリュー
舗の境界線は薄れる傾向にある。購買
ンに様々な情報を表示できる。店舗内の
ションの拡充を進めている。近年はプロ
ティーの向上が重要だろう。そして、
オム
チャネルはオムニチャネル化し、
いつでも
カメラやセンサーを利用して買い物客の
モーション開始から効果測定までに必要
ニチャネルの実現ではテクノロジーばか
どこでも商品の発見、検討、購入、受取、
行動を分析し、店舗内の品ぞろえや商品
な一連の作業を自動化するマーケティン
りが注目されるが、組織形態や目標設定
返品、
アフターサービス依頼が可能にな
ディスプレイの最適化も実現できる。在
グオートメーション技術や自社に接点の
にも注意を払う必要がある。
るだろう。企業側からみれば、消費者の
庫数をネットで公表し消費者を店舗に誘
無い潜在顧客を含む顧客情報をデータ
行動を把握可能になり、消費者のニーズ
導する方法や店員がコーディネートした
ベース化し、効果的なマーケティング施
に合わせた販促や販売が可能になる。オ
商品をネット上で紹介し販売につなげる
策を行うプライベート DMP
ムニチャネルの実現には様々な課題が存
など、
ITを活用したリアル店舗の強
ている。今後は、
このような仕組みと他
在するが、最も大きな課題は物流の最適
社から手に入れた SNSデータを融合さ
多数展開する大手小売と eコマース専
トの操作履歴を活用し、使いにく
る。データ分析は、
化も進んでいる。店員の生産性
顧客接点を拡大する方法としては、
デ
が登場し
※1
化だ。eコマースでは物流の改革が進み、
や顧客応対力を向上させる
せ高度なマーケティングを行う事例も増
24 時間利用可能なコンビニロッカーに
ため、タブレット端末を
えるだろう。
商品を届けるサービスや自宅まで 1 時間
で商品を届けるサービスが実現されてい
小売の状況は各国で異なる。例えば
る。リアル店舗側の対抗策としてはオム
中国では先進国以上に eコマースの利用
ニチャネルを促進し、全ての店舗に販売、
が拡大している。これは有名な eコマー
返品受付、配送拠点の機能を持たせるな
ス企業の方が、近くに存在するリアル店
どが考えられる。オムニチャネルは顧客
舗より信頼できるという中国固有の理由
の利便性を高めるが、同時に物流や顧客
があるからだと推測される。グローバル
対応を複雑にしてしまう問題がある。オ
企業は各国の事情を理解し、
eコマースと
※1 正式名は Data Management Platform。
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
クラウド超競争時代
クラウドの覇権争いが激化する。徹底した機能強化、性能改善、低価格化が行われ、
仮想化技術などのクラウド基盤部分に抜本的な革新が生じる。
ビッグデータ処理技術は用途に合わせ提供される。
2014 年 3 月に 開 催 され た Google
市販ソフトウェアが使えるようになるサー
40 回以上の価格引き下げを実施してき
サーバーを抱える企業では、
クラウド上で
いる。大規模クラウ
Cloud Platform Liveイベントでグ ー
ビス」だ。ムーアの法則は「半導体の集
た。米調査会社の Synergy Research
動作しているアプリケーションが本当に
ド事業者は自社で利用す
グルのウルス・ヘルツル上級副社長は、
積度が 18か月で 2 倍になる」ことを示し
Groupによれば、
アマゾンが提供するク
最新の設定なのか確証を持てなくなるこ
るサーバー機器を大手ベン
「ムーアの法則に従いクラウドの値下げ
ているが、
逆の見方をすれば「同性能であ
ラウドサービスは 2013 年に市場平均の
とも多い。不変インフラの世界では、
ほん
ダーではなく、中国や台湾に拠点
を行う」と発言した。ヘルツル氏が言及
ればハードウェアの価格は 18 か月で 2
47%を超える 52%の成長をみせた。マ
の少しでもソフトウェアに修正を加える時
を構えるハードウェア製造元から低価
するクラウドは分かりやすく言うと「クレ
分の 1に低下する」とも言える。クラウド
イクロソフト、
IBM、
グーグルも 2013 年
はサーバーの構築をゼロから自動でやり
格で直接購入している。フェイスブック
ジット決済を行えば数分後にサーバーや
の原価は電力費や施設費が含まれるた
に 2 倍近い成長をみせ、
アマゾンを猛追
直すことで、
過去に行われた全ての修正を
は Open Compute Projectと 呼 ば れ
め必ずしも 18 か月で半額になるわけで
している。クラウドの覇権争いは、
今後も
確実に反映し、
この問題を解決している。
るプロジェクトを推進し、
クラウドに最適
はないが、グーグルは恐るべきスピード
激化するだろう。
化された自社設計のサーバーや冷却設
でクラウドの価格を破壊する意向を表
クラウドの性能改善や運用の最適化は
備を開発している。特定の処理を高速に
明したことになる。この背景には巨
クラウドを構成する中核技術の一つ
クラウド提供者の競争力に直結する。特
実行できる特殊なプロセッサを導入する
人アマゾンの存在がある。ア
に 1 台のサーバーを複数のユーザで共
にクラウド全体の最適化は大きな問題
ことで、処理速度を向上させる取組みも
マゾンは 2006 年のクラウ
用可能にする仮想化技術がある。2013
だ。この問題に対応する有名なオープ
行われている。マイクロソフトは FPGA
リティレベルを攻撃前より
年に登場した Docker(ドッカー)はコン
ンソースソフトウェアとしては、
Docker
と呼ばれるプロセッサを搭載したサー
も確実に向上させる抗脆弱性
テナ型と呼ばれる新しい仮想化技術で、
の運用を支援する Kubernetes(クーバ
バーを 1,632 台統合し、検索サービス
の実現にも注目が集まると考えら
従来技術では数分かかるサーバーの起
ネティス)がある。ビッグデータなどの
の性能を 2 倍に向上させた。中国の百
れる。最先端の技術がクラウド上で安
動時間を数秒程度にまで短縮している。
分散処理を最適化するソフトウェアとし
度(Baidu)も FPGA
を利用し人工知
価に提供される時代においては、技術を
Dockerにはアプリケーションを効率的
ては、
YARNや Twitter が 導 入している
能の最先端アルゴリズムであるディープ
企業戦略に結びつける戦略的思考や人
に実行できる特徴に加え、現場で開発し
Apache Mesos(アパッチ メイソース)
ラーニングの処理を高速化させている。
の心を引き付けるコンセプト作りが今以
たアプリケーションをクラウドに配備する
が有名だ。近年のビッグデータ処理で
デプロイ作業を効率化できるメリット
は、
データの特性に合わせて異なる技術
今後、
クラウドはどの方向に進化するの
どのように作るかではなく、何をするかが
もある。また、
Dockerは近年流行
を使いこなすのが主流であり、
ビッグデー
だろうか。一つはクラウドへの人工知能
重要になり、個人やベンチャーがかつて
している「不変インフラ 」と
タへのリアルタイムアクセスを行う場合
機能の搭載だ。将来的には人工知能の
ない競争力を保持する超競争時代が到
呼ばれる方式の導入にも
は米クラウデラ社が開発する Impalaや
性能がクラウドを選択する重要なポイン
来するだろう。
適している。 多 数の
Apache Sparkなどのオープンソースソ
トになる可能性もある。また、
クライアン
フトウェアを利用する。ソーシャルネット
ト端末、
もしくはクライアント端末に距離
ワークのような人と人のつながりを表す
的に近いサーバーでメインの処理を行う
データを分析する技術やネットワークを
ことでレスポンスを向上させるエッジコン
自由自在にカスタマイズできる SDN /
ピューティングが進展すれば、従来とは
OpenFlow 技術の活用も進んでいる。ク
抜本的に異なる全体最適化技術が必要
ラウドの改善はハードウェアにも及んで
になるだろう。攻撃を受けた後のセキュ
ドサービス開始以来、
※1
※2
上に重要になる。今後の企業経営では、
※1 一 般 的には、
Immutable Infrastructureと
呼ばれている。
※2 プログラムで回路の組み換えが可能なプロセッ
サ、
正式名は Field-Programmable Gate Array。
Technology Trend
The following 8 technology trends are expected to have
the biggest influence on the world around us in the coming years.
デザインイノベーション
研究や設計業務において高度シミュレーション技術の適用が進む。
製品開発では生物模倣技術や 3Dプリンタの活用も行われる。
遠隔保守が普及し、業務全体がビッグデータにより効率化される。
2011 年、
ドイツは第 4 次産業革命を
ている。今後伸びていく技術の一つとし
にとらわれない独創的な形状を発見する
主導するためのコンセプト「インダスト
てはシミュレーション技術があり、実験の
ことができる。トポロジー最適化が注目
リー 4.0」をハノーバメッセ 2011で明ら
目的によってはシミュレーション技術が
されるようになった背景に 3Dプリンタの
かにした。インダストリー 4.0 は工場と
現実の実験を超越する場合もある。例
急速な価格破壊がある。これまでは、
ト
モノやサービスをインターネット経由で
えば自動車の砂上走行実験では、砂にセ
ポロジー最適化で斬新な形状を設計で
連携させ、新しい価値やビジネスモデル
ンサーを装着することはできないが、流
きても、それを製造する手段が存在しな
を創出する国家プロジェクトである。産
体解析法を利用すれば自動車が砂を巻
かった。しかし、高性能な 3Dプリンタが
官学が一体となり推進されるインダスト
き込む状況を詳細に可視化できる。もう
普及すれば従来では高コストすぎて生産
ものになり、個人に合わせたカスタムメイ
高度な専門性が必要とされる今日の
個人データの収集や人工知能分野で
リー 4.0 は、少子高齢化に悩むドイツで
一つシミュレーション技術で注目されて
できなかった形状を実用化できる可能性
ド製品の大量生産も不可能ではなくなる
現場では、複数のチームが連携して製品
は米国が主導権を握っている。そして、
労働力不足を解決する施策の一つとして
いるのはトポロジー最適化だ。トポロ
だろう。斬新な設計の実現においては、
やサービスを開発する必要がある。こ
脳や遺伝子などのバイオ分野では米国と
期待されている。
ジー最適化はコンピュータに強度
センタの自動化技術や人間と一緒
バイオミメティクス(生物模倣技術)も忘
の作業は常識や思い込みにより勘違い
欧州が激しい競争を繰り広げている。新
の生産ラインで働く協働ロボッ
れることができない。生物模倣により従
を起こしやすいため、設計図をデジタル
たな主戦場である製造業の革新では、
ど
トが普及すれば、工場の姿
来技術と本質的に異なる仕組みを取り入
化し、記載内容の標準化や検証作業の
こが主導権を握るのだろうか。綿密な標
は現在とは全く異なる
れることで、製品を次元の異なる領域に
自動化を行うのは有用である。設計プ
準化が必要なインダストリー 4.0の考え
導くことができる場合もある。
ロセスや製造プロセスをデジタル化し
が一般企業に普及するには 10 年近い年
ているのは、製 造 業だけではない。 建
月が必要だと思われるが、
この流れは着
IT 化により大きなインパクトを受ける
設や土 木 の 分 野では BIM/CIM
と
実に企業に浸透していく。そして高度な
のは製造工程だけではない。工場がイン
呼ばれるデジタル化が進んでいる。IT
IT 技術が設計や運用保守に適用され、見
ターネットに接続されれば、故障時に遠
業界でも設計のデジタル化が行われて
た目の美しさだけでなく、
プロセス、戦略、
隔保守による対応が可能になる。これま
おり、従来の手法と比較し生産性を大
ビジネスモデルの設計を含む広義の意味
では保守要員が現地に到着してから原因
きく向上させる超高速開発手法が実用
でのデザインにイノベーションが生じる
究明を開始していたが、
これからはたどり
化されている。IT の分野でもう一つ特
だろう。高度に IT 化された製造ラインの
着いたときには原因が判明していること
筆すべきは、
アジャイルや A/B テストと
実現は、個別にカスタマイズされた製品
も多くなるだろう。メンテナンスの概念も
呼ばれる価値積み上げ型の開発手法だ。
やサービスの増加を促す。そして最後は
変化すると考えられる。これまでのメン
ユーザからの評価を迅速に収集し、製品
本当に製品やサービスで心を動かすこと
テナンスは 1 年に 1 回検査するような定
にすばやくフィードバックするサイクルを
ができたかを問われる感性勝負の時代が
期メンテナンスが主流であったが、
ビッグ
何度も繰り返すことにより改善を積み重
到来するだろう。
データ分析で故障する確率が高い機器
ね、製品価値を最大化する手法はハード
を特定し、劣化した部品の保守を優先し
ウェアより変更が容易なソフトウェアと
て行う状態別メンテナンスも普及するだ
相性がよい。
や大きななどの制約を満たす
実はインダストリー 4.0で語られる技
形状を網羅的に考えさせ
術の多くは先進的な企業で既に実現され
る方法で、人間の常識
がでてくる。3Dプリンタに加え、配送
ろう。
※1
※1 正 式 名は Building Information Model /
Construction Information Modeling。
CASE STUDY
技 術トレンドに関連したN T T グループ 取り組み事 例
コンピュータの透明化
着用するだけで意識せずに生体情報を計測する機能素材 “hitoe”
人工頭脳への挑戦
人とコンピュータの自然な会話を実現する雑談対話技術
従来、心電位や心拍などの生体情報を取得するには専門の
「人工知能」には様々な技術ジャンルが含まれる。例えば、
がかかることが通常であったが、機能素材 ”hitoe”を使用し
ビッグデータ分析処理などのテーマが挙げられるが、
NTTは
機器を必要とし、体への接着や機材の持参など面倒な手間
機械翻訳、音声認識、画像認識、対話、推薦、
自然言語処理、
たウェアを着用すれば、
日常生活の様々なシーンにおいて生
これらの研究開発に取り組んでいる。NTTデータは、機械
バー生地に導電性樹脂を含浸することで、耐久性に優れ、
か
キスト化し議事録出力機能まで持つ「グローバル会議支援
体情報を快適かつ簡単に計測できる。”hitoe”はナノファイ
翻訳と音声認識を融合することで多言語の会話を翻訳・テ
つ生体信号を高感度に検出できる素材である。例えば職場、
システム」を開発している。NTTドコモは「雑談対話技術」
に計測を続けられるため、特に体を動かすシーンで安定した
はユーザの発話内容を解析し、文脈を考慮して自然な受け
学校、
スポーツ、
運転中など、
あらゆる生活環境下で意識せず
生体信号を取得できることが強みになっている。NTTデー
を提供している。雑談対話技術を用いれば、
コンピュータ
答えができる。事前に学習した膨大な知識を基に状況に応
タは、
”hitoe”のようなセンシングデバイスから得られる様々
じた柔軟な会話をするだけでなく、語尾を変化させる発話で
フラの整備に取り組んでいる。
し続けることで、将来は人間と等しいレベルで会話できるよ
なデータを分析・活用し、
より快適な生活を支える社会イン
※ “hitoe”は、
東レ株式会社と NTTが共同開発した導電性機能素材の登録商標。
生命や感情の科学
競争心理や達成感をビジネスに適用し意欲を高めるゲーミフィケーション
キャラクタ性も表現する。会話データを逐次取り込み改良
うになるだろう。
※雑談対話技術は NTTの基礎技術を用いて NTTドコモが開発したものである。
未来のモビリティ
ビッグデータを活用した渋滞予測・信号制御で渋滞を緩和
レベルアップやチームプレイやランキングといった “ゲーム
NTTデータは、車両から得られる位置情報や速度などの情
や自己満足感を得られ、モチベーションを高く維持できる。
シミュレーションすることで、渋滞を緩和するために最適な
法を様々なシステムに取り入れている。例えば、
システム運
た。本システムの実証実験は中国の吉林市で実施した。市
働率を天候で表現、業務改善実施数を住戸数で表現するな
計情報を組合せ、本システムにより最適な変更タイミングを
の要素 ”をビジネスに適用することで、楽しみながら達成感
NTTデータでは意欲を引き出すゲーミフィケーションの手
用保守部門では管理画面を街に例えて再現し、
サービス稼
ど、楽しく状況を把握できるよう工夫している。また、事務処
理を担当する部門では、仕事を実施する度に野菜が育ちポ
イントを得られる農園ゲーム形式のインタフェースを適用し
報を基に現在の交通状況を把握し、更に今後の交通状況を
信号の変更タイミングを導出・制御するシステムを開発し
内のバス約 200 台の GPS 情報と道路・交通量調査等の統
導出し、実際に市内の交差点の信号機 60 機の信号設定を
変更した。これにより渋滞が緩和され、
バスの運行時間が最
大で 27%改善される結果が得られた。現地の警察が体感
た。営業部門では、営業情報をシステムに登録すると、頻度
してわかるほどの改善であり効果を認められたため、
この信
形式を適用。このように、
人間の心理や感情を科学的なアプ
おけるスマートシティ関連プロジェクトへの展開に取り組む
や量や品質に応じてパズルのピースが貰えるパズルゲーム
ローチでビジネスに活用する事例を、今後更に増やしていく
予定である。
号機設定を継続して使用することが決まった。今後各国に
予定である。
CASE STUDY
インタラクティブコマース
スマートグラス環境における仮想キーボード入力でセキュアに認証
ウェアラブルデバイスの業務活用が期待される中、
スマート
グラスはキーボードやタッチパネルを持たないため、文字入
力等ができない課題がある。しかし、既存の各種業務システ
ムと連携した使い方をするには、
本人を認証するための IDや
パスワードの入力が必須となることが想定される。そこで、
NTTデータでは、
スマートグラスのディスプレイに仮想入力
キーボードを表示し、利用者のジェスチャーによって文字を
選択していくことで IDやパスワードを入力可能な技術を開
発した。本人にしか見えない AR
(拡張現実)
表示のキーボー
ドに対して現実の指を使って空中で操作するため、覗き見や
盗撮を防ぐだけでなく、痕跡が残らず高いセキュリティを確
保できる。NTTデータグループでは、
こうしたセキュリティ
対策のみならず、
ウェアラブルデバイスを利用した業務シス
テムの開発手法や、業務で使用する各種アプリケーション開
発を加速させていく。
デザインイノベーション
3Dプリンターを用いてチタン合金製イヤホン筐体の量産化を実現
株式会社 NTTデータエンジニアリングシステムズでは、
20
年近くにもわたり 3Dプリンターの技術開発やノウハウ構築
に取り組んできた実績を基に、
従来不可能であった形状を造
形するための最適手法や配置設計、表面処理品質を向上さ
せるレーザー照射パラメータ設計など、様々なノウハウを用
いて 3Dプリンターの活用を拡げている。その一例として、
チタン合金製で完全一体型形状の筐体を持つイヤホンの
3Dプリンターによる量産化を世界で初めて実現(※)した。
量産品の製造分野では、
コストや精度などで従来工法に遅
れをとっていたため 3Dプリンターの活用が進んでいなかっ
たが、
この成功を最初の事例として、今後様々な製造現場で
の産業的活用が拡がる可能性を秘めている。3Dプリンター
ならではの「機能形状」による価値向上も追及していく予定
である。
※ファイナルオーディオデザイン事務所株式会社による “ 世界で初めて 3Dプリンターによって製造されたチタン製イヤホン製品 ”
「final audio design LAB 01」
の開発に技術面で協力。