第4章 生産衛生 乳生産衛生 7月8日 教科書175頁-185 6)乳生産衛生� • 乳房炎は乳生産効率お よび乳質低下の原因� • =乳生産の最大の阻害 要因� • 乳房炎による損失の約 70%は潜在性乳房炎に よって生じる減乳に起因� 乳房炎乳房と正常乳房の断面� 潜在性乳房炎とは� • • • • • 一般的に、目で見て乳房炎症状がなくても� �体細胞数が増加していたり、� �細菌検査で病原菌が検出される、� 乳房炎を潜在性乳房炎という� 臨床型乳房炎の80%はもともと潜在型� • 体細胞:乳中に出現する細胞の名称� • �����乳腺上皮細胞や白血球で構成� 体細胞数と乳成分� • 感染に伴い白血球が血管から乳腺腔へ遊走 し、乳腺上皮細胞の損傷や破壊がおこること で、乳汁合成能の低下が起こり減乳が生じる。� • 体細胞数14-19万/ml・・損失率5%� • ����22-38 万/ml・・・8%� • ����38-42 万/ml・・・9-18%� 乳房炎コントロールの目的� • 牛群の体細胞数を減らし、臨床型乳房炎の 発生を減少させる� (1) 生乳の衛生的基準�数値は覚える!� • 正常な生乳中の体細胞数は20 万/ml未満� • バルク乳中の体細胞数は30万/ml以下に設 定� • 体細胞:白血球と乳腺細胞で構成� • 細菌数は1万もしくは10万/ml未満� 伝染性乳房炎と環境性乳房炎� • 病原微生物が乳頭への接触・付着とそれに伴う乳 腺内へ侵入した乳腺の一連の炎症� • 感染様式から伝染性乳房炎と環境性乳房炎に分類� • 原因菌により感染源、感染経路および防除法が異 なる � 伝染性乳房炎と環境性乳房炎� • • • • 伝染性乳房炎� �黄色ブドウ球菌� �無乳性連鎖球菌� �その他の細菌� • • • • 環境性乳房炎� �環境性連鎖球菌� �大腸菌� �黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌� 伝染性と環境性の特徴� 項目� 伝染性乳房炎� 環境性乳房炎� 存在場所� 感染した乳腺� 牛の環境全般� 感染の移行� 牛から牛� 環境から牛� 年齢� 高年齢ほど� 年齢に無関係� 泌乳ステージ� 進むほど高まる� 乾乳初期と分娩前後� 対策� 感染牛の淘汰� きれいで乾燥した環境� • • • • 白血球の機能低下� �乾乳直後� �分娩前後� �夏から秋� • 白血球機能と乳房 炎発生の関係� i) 黄色ブドウ球菌� � • 感染源:感染分房の乳汁� • 感染経路:搾乳者の手指、タオル、ミルカー������������������ などを介して感染� • 病巣:乳腺内で小膿瘍を形成、抗生物質に対しても強い 抵抗性� • 治療:泌乳期治療、乾乳前治療および乾乳期治療が実施 されているが、一般に治癒率は低い(40 50% )� • 予防:感染牛の隔離、乳頭浸漬、搾乳順位� • 新規導入牛については乳汁の培養検査で本菌感染のない ことを確認� • 防除の主眼は適切な搾乳手順に基づいた搾乳衛生� 黄色ブドウ球菌による乳房炎は怖い!� • 乳房炎を発症させる細菌の中で、最も注意するものは黄色ブ ドウ球菌!� • 黄色ブドウ球菌による乳房炎は一度感染すると、投薬や乾乳 治療ではなかなか治りません。� • 従って乳房炎にかからないための対策が重要!� • また、感染力が非常に強く、放っておくと他の牛へ容易に感 染する!� • そのためにも、 細菌検査を実施して早期に的確な対処をす ることが重要!� <黄色ブドウ球菌による乳房炎の特徴>� • 体細胞数が常に20万 30万/mlで推移し、投薬 でもなかなか完治しない。� • 常時、菌が乳汁に出てくるものでないため、感染牛 の特定が難しい。� • 感染力が非常に強い。� • 乳腺細胞を破壊し生産性を激減させる(破壊した乳 腺細胞は再生しない)。� ii) 無乳性連鎖球菌� • 原因菌:Streptococcus agalactiae� • 症状:乳量低下、細菌数の増加、体細胞数 増加� • 多くが潜在性乳房炎で推移� • 治療:泌乳期治療による治療効果は高い� • 予防:乳頭浸漬、乾乳期治療、適切な搾乳 方法� マイコプラズマ • • • • • • • • Mycoplasma bovis, M. californicum, M. bovigenitarium (1)疫学調査 ①泌乳期の牛が感染する。 ②発生に季節的変動はない。 ③伝染力は強く,集団発生することがある。 ④搾乳時に汚染乳汁を介して伝播することが多い。 ⑤新しく牛を導入した直後に発症し易い。 ⑥呼吸器病から続発することもある。 • • • • • • • • • • (2)臨床検査 ①泌乳量が短期間に激減する。 ②乳汁に多数の好中球が浸潤し,乳汁成分と凝集塊を形成する。軽度の場合は 肉眼的な変化は分かりにくいが,重度の場合は乳汁の固体成分と液体成分の 分離が認められたり,粘性の高い乳汁が分泌される。 ③臨床症状があるにも拘らず一般細菌が分離されない。 ④泌乳量の低下あるいは無乳が長期間持続する場合がある。 ⑤罹患分房は発赤,腫脹するが,疼痛を伴わない場合がある。 ⑥発症牛では抗生物質による治療は成功しない場合が多い。 ⑦菌分離陽性の不顕性感染牛もある。導入時に感染源となる。 iii) その他の微生物� � • 稀に� • Arcanobacterium pyogenes, � • Corynebacterium bovis� • 真菌� • がある。� 環境性乳房炎� i) 環境性連鎖球菌� • 感染源:牛床、敷料、パドック、乳房洗浄水� • 感染経路:汚染した環境に乳頭が接触する機会 を減らす� • 感染時期:新感染が特に多いのは乾乳後2週間 と分娩前後2 3週間で、牛舎環境を清潔で乾 燥した状態にすることが重要� ii) 大腸菌性乳房炎� • 感染時期:乾乳末期� • 発症時期:分娩時あるいは分娩後に急性臨床 型乳房炎を起こす� • 治療:乾乳期中の大腸菌感染は乾乳期治療 では防除が困難な場合が多い� iii) 黄色ブドウ球菌以外の� ブドウ球菌(CNS)� � • 乳汁から比較的高率に分離される� • 正常な乳頭表皮に認められ、乳腺への侵入に伴い 日和見感染� • 臨床症状:臨床症状はまれに見られる程度で、軽度� • 感染時期:乾乳期および分娩時に高率に認められる� • 予防:適正な搾乳方法を励行すると泌乳ステージの 進行に伴って減少� 第63回 • 搾乳時に感染乳汁により乳房炎を伝播するこ とが多いのはどれか • a Staphylococcus aureus • b Arcanobacterium pyogenes • c Pseudomonas aeruginosa • d Escherichia coli • e Streptococcus agalac=ae 1. ab 2 ae 3 bc 4 cd 5 de 第63回 • 搾乳時に感染乳汁により乳房炎を伝播するこ とが多いのはどれか • a Staphylococcus aureus • b Arcanobacterium pyogenes 豚の皮下膿瘍 • c Pseudomonas aeruginosa • d Escherichia coli • e Streptococcus agalac=ae 1. ab 2 ae 3 bc 4 cd 5 de 乳房炎の原因と誘因� 乳房炎の予防� • 乳房炎の早期発見が大切!� • ストリップカップで前搾りやPLテスター検査を行って、乳房炎 の早期発見、早期治療!� • ブツが発見されたら、かかりつけの獣医さんか家畜保健衛生 所に依頼し、その乳房炎の発生原因となっている細菌を特定 するため個体乳の細菌検査を 実施!� • 原因菌が特定されることによって、その後の治療・予防方針 が大きく変わる!� 乳房炎:PLテスト • 60 C16 図16ABに示した生乳試験(PLテスト)に 関する記述として正しいのはどれか • 乳房炎乳のpHが酸性に傾く • 本誌薬にはアルコールが大量に含まれている • 乳房炎乳には白血球などの体細胞が多数含ま れている • Aが陰性、Bが陽性 • 色調変化だけを判定基準とする 乳房炎:PLテスト • 60 C16 図16ABに示した生乳試験(PLテスト)に 関する記述として正しいのはどれか • 乳房炎乳のpHが酸性に傾く 塩素、ナトリウムが 増えて上昇する • 本試薬にはアルコールが大量に含まれている • 乳房炎乳には白血球などの体細胞が多数含ま れている • Aが陰性、Bが陽性 • 色調変化だけを判定基準とする 体細胞数 乳房炎の予防� • ディッピングは仕方次第で効果がぜんぜん違います!� • ディッピングは、乳頭口や乳頭表面への細菌の増殖を抑える ためで、搾乳直後に付着した伝染性細菌(黄色ブドウ球菌や 無乳性連鎖球菌など)を殺菌 !� • 伝染性細菌は、搾乳時に感染乳汁から手やタオル、ミルカー などを介して牛から牛へと伝染します!� 57B20乳房炎の予防を目的として乳頭浸 漬に使用する薬剤としてもっとも適当なの はどれか • • • • • 抗生物質 ステロイド オキシトシン ヨードホール クロルヘキシジン 57B20乳房炎の予防を目的として乳頭浸 漬に使用する薬剤としてもっとも適当なの はどれか • • • • • 抗生物質 ステロイド オキシトシン ヨードホール クロルヘキシジン (3) 周産期の免疫と乳房炎� • 分娩後の泌乳開始時期は急激な生理反応が 起こり、易感染性が指摘� • 特に高泌乳牛の分娩直後、分娩後1 3週 間の甚急性乳房炎と環境性乳房炎は経済動 物としての価値を損失� • 周産期のリンパ球幼若化反応:分娩後に有意 に低下� 新規感染の発生率� 乾乳初期� 分娩� 乳汁中のラクトフェリン� 乾乳初期と分 娩前2週間は 新規感染が起 こりやすい � 乾乳中期は乳 汁中のラクト フェリンや抗体 濃度が上昇し、 新規感染は起 こりにくい。 乳房炎の薬剤治療� • 罹患分房は、冷湿布を施し急性症状を緩和しながら頻回搾 乳を行い、炎症産物、毒素などを排泄させた後に乳房炎軟 膏の乳房内注入を行う。 • 薬剤感受性試験で有効な薬剤を選択し、発症してから一般 的に3-5夜連続して乳房内注入で治療。 (4) 環境と乳房炎 � • 原因菌調査:環境性連鎖球菌・大腸菌群・CNS・黄色ブドウ 球菌� • 乾乳期から分娩直後の環境性連鎖球菌による乳房炎制圧 の重要性� • 季節:夏季の環境性乳房炎の増加と体細胞数の増加� • 生体の非特異的な感染性防御能の低下と感染との関連性� 新規感染の発生率� 乾乳初期� 分娩� a. 乳房炎除去と乳質向上に� 対する考え方� � ① 搾乳システムを点検し、適正な稼働状態を常時維持する� ② 適正な搾乳手順を守る� ③ 搾乳直後には効果が確認され許可されている乳頭浸漬剤で消毒する� ④ 分娩直後の牛に対しては環境性乳房炎の発生に留意し搾乳管理に注意を払う� ⑤ 感染牛の搾乳は最後に行う� ⑥ 牛舎環境を整備し常に清潔と乾燥に留意する� ⑦ 臨床型乳房炎の早期発見と治療方針を考える� ⑧ 乾乳期治療を行う� ⑨ 抗菌性物質の適正使用と残留防止に配慮する。� ⑩ ミルキングシステムの取り扱いと維持管理は乳房炎の発生と密接に関わっている ため乳房炎防除の重要な管理項目に入っている�
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