4 月21日(火)の講義資料 - So-net

数学基礎特論
2015年4月21日(火)
ベクトル空間(線形空間)
空集合でない集合:
任意の
(1)
に対して
(2)
が成り立つとき集合
をベクトル空間と呼ぶ。
ベクトル空間は和と定数倍の演算に対して閉じた空間
ベクトル空間(線形空間)
 部分空間
 ベクトル空間に属する要素(ベクトル)の
線形結合
 ベクトルの線形独立・線形従属
 ベクトル空間の次元
有限次元ベクトル空間
無限次元ベクトル空間
 有限次元ベクトル空間に対する基底
基底の線形結合でその有限次元ベクトル空間内の
任意のベクトルを1通りに表すことができる。
(線形)ノルム空間
ベクトル空間
実数
の要素
に対して、
が決まり、つぎの3つの条件を
満足するとき、
を のノルムという。
である。
に対して、
1. すべての
ときのみである。
ただし、等号成立は
に対して
2. すべての
が成り立つ。
3. すべての
と任意の実数
が成り立つ。
に対して、
ノルムが定義されたベクトル空間を
(線形)ノルム空間と呼ぶ。
この講義でよく用いるノルム空間の紹介
ベクトル空間
個の実数
を組にしたもの
が全体からなるベクトル空間
での加法
での実数倍
でのノルム
に対して
(5)
(5) 式がノルムであるための3条件は満足する。
に対して、
1. すべての
ときのみである。
ただし、等号成立は
に対して、
1. すべての
ただし、等号成立は
ときのみである。
なので、
明らかに
である。
となるのは
ときなので、
のときのみである。
すなわち、
のときのみである。
に対して、
1. すべての
ただし、等号成立は
2. すべての
に対して
が成り立つ。
準備がいるのでちょっと後回し。
3. すべての
と任意の実数
が成り立つ。
3. すべての
と任意の実数
が成り立つ。
に対して、
に対して、
より、
なので、
3. すべての
である。
と任意の実数
が成り立つ。
に対して、
2. すべての
に対して
が成り立つ。
2. すべての
に対して
が成り立つ。
コーシー・シュヴァルツの不等式 (
に対して
が成り立つ。
バージョン)
コーシー・シュヴァルツの不等式の証明
とする。
を実数とし、
すべての に対して、
である。
についての2次方程式
すべての に対して、
なので、
この2次方程式は、重解あるいは複素数を持つ。
判別式
2. すべての
に対して
が成り立つ。
コーシー・シュヴァルツの不等式
でのノルム
に対して
(5)
ノルムの3条件を満足することが分かった。
(5) 式のノルムの定義により
は線形ノルム空間をなす。
以上は、
次元の有限次元の線形ノルム空間に
ついて説明した。
学部のときに勉強した線形代数学は
有限次元の線形空間(線形ノルム空間)に関する
さまざまな性質や構造について取り扱う学問である。
つぎに、 無限次元の線形ノルム空間について
説明する。
無限次元の線形空間(線形ノルム空間)について
取り扱うことで線形代数学と微分積分学(解析学)を
統一的に取り扱うことができるようになる。
(線形)ノルム空間
ベクトル空間
実数
の要素
に対して、
が決まり、つぎの3つの条件を
満足するとき、
を のノルムという。
である。
に対して、
1. すべての
ときのみである。
ただし、等号成立は
に対して
2. すべての
が成り立つ。
3. すべての
と任意の実数
が成り立つ。
に対して、
ノルムが定義されたベクトル空間を
(線形)ノルム空間と呼ぶ。
ベクトル空間にノルムを導入する理由
を線形ノルム空間とする。
とする。
(1) ノルム空間に属する2つの要素に対して
近い要素なのか、遠い要素なのかを
定量化できる。
の値が小さければお互い近い要素
の値が大きければお互い遠い要素
ベクトル空間にノルムを導入する理由
を線形ノルム空間とする。
おけるベクトル列
(2) ノルム空間における極限(収束)の
考えを定義できる。
が成り立つならば
ベクトル列
が
のときあるベクトル
に収束するという。
(実数の集合)
実数の集合:数直線上の点
0
実数の集合
加法
通常の足し算
実数倍
通常の掛け算
は通常の足し算・掛け算に対して
ベクトル空間となる。実数もベクトルといえる。
(実数の集合)におけるノルム
に対して
(絶対値)
ノルムの3条件を満足する。
この数列の集合の特徴
のとき
が成り立つ。
:自然数
数列
1.2
1
0.8
数列の番号は大きくなると
数列の値も大きくなる。
0.6
0.4
0.2
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
単調増加な数列
次の不等式は に関わらず
成り立つ?
:自然数
数列
成立
1.2
1
成立
0.8
成立
成立
0.6
0.4
0.2
不成立
0
0
2
4
6
に関わらず
8
10
12
14
16
が成立する定数
上界
の上界
この数列のように
:自然数
数列
上界が存在する数列を
上に有界な数列という。
1.2
1
0.8
0.6
0.4
最小上界
0.2
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
最小上界を上限値という。
は自然数の集合
:自然数
数列
上に有界な単調増加な数列
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
この数列の集合の特徴
のとき
が成り立つ。
:自然数
数列
0
0
2
4
6
8
10
12
14
-0.2
-0.4
-0.6
数列の番号が大きくなると
数列の値は小さくなる。
-0.8
-1
-1.2
単調減少な数列
この数列のように
:自然数
数列
下界が存在する数列を
下に有界な数列という。
0
0
2
4
6
8
10
12
14
-0.2
-0.4
-0.6
最大下界
-0.8
-1
-1.2
最大下界を下限値という。
は自然数の集合
:自然数
数列
下に有界な単調減少な数列
0
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1
-1.2
2
4
6
8
10
12
14
定理1
上に有界な単調増加な数列
または
下に有界な単調減少な数列
は収束する。
有理数
:整数
有理数:整数の比で表される数
分数で表される数
少数(循環小数を含む)で表される数
例:
無理数:分数で表すことのできない数
少数(循環小数を含む)で表せない数
数列
すべての に対して
有理数(分数で表される数)が
作る数列(有理数列)
数列
下に有界な数列
数列
単調減少な数列
数列
下に有界な単調減少な数列
数列
収束する。
極限値
数列
有理数の集合
・・
有理数の集合
有理数が作る数列
(有理数列)
さらに収束する。
・
・・
・
極限値は有理数ではない。
(無理数:分数で表せない数)
有理数列の極限値が有理数列でない。
有理数の集合は極限という演算について
閉じていない。
極限という演算を考える上での基本とする集合と
して、有理数の集合では不十分である。
有理数の集合に変更を加える必要がある。
有理数の集合
有理数で表せない数
(無理数)を含めていく
有理数の集合
無理数
有理数の集合にすべての有理数ではない数
(無理数)を含めて新しい集合を作る :実数の集合
有理数
・・
・
無理数
・・
・
実数の集合
実数列(有理数列を含む)
の極限はすべて実数の
集合内に存在する
ことがわかっている。
極限という演算を
考える上での基本とする
集合を実数の集合とする。
ノルム空間としての実数の集合
加法 通常の足し算
実数倍 通常の掛け算
おけるノルム
(絶対値)
実数列(有理数列を含む)の極限はすべて実数の集合
内に存在することがわかっている。
ノルム空間としての実数の集合 は
和や実数倍の他、極限の演算に対しても閉じている。
ノルム空間としての実数の集合
完備なノルム空間という。
は
実数列の極限はすべて実数の集合内に存在すること
すなわち、ノルム空間としての実数の集合
完備であることの基礎
実数列
が
である整数
に対して
を満足するとき、その実数列をコーシー列
(基本列)という。
ノルム空間としての実数の集合
は
すべてのコーシー列が収束するという性質を持つ。
ノルム空間としての実数の集合
完備なノルム空間となっている。
は
一般のノルム空間のコーシー列
:ノルムが定義されたベクトル空間
(線形)ノルム空間
おけるベクトル列
である整数
に対して
が成り立つときベクトル列
をコーシー列(基本列)という。
一般のノルム空間の完備性
:ノルムが定義されたベクトル空間
(線形)ノルム空間
におけるすべてのコーシー列が
に属する要素に収束するとき
そのノルム空間 を完備なノルム空間
という。
完備なノルム空間は、極限の演算に関しても
閉じていることを保証する。
完備なノルム空間をバナッハ空間とも呼ぶ
ノルム空間
が完備であるかどうかは
どのようにノルムを定義しているかに依存する。
一般には完備になるようにノルムを定義する。
ベクトル空間
個の実数
を組にしたもの
が全体からなるベクトル空間
に対して
(1)
(1) 式でノルム定義されたノルムに対して
は完備なノルム空間となる。
(有限次元の線形ノルム空間は完備なノルム空間。)
集合
実数の無限数列
のうち、
(収束する) を満足するもの
すべてからなる集合
を満足する数列であると
いう意味。
に対して
のとき
における加法
における実数倍
と定義する。
実数の無限数列
のうち、
(収束する) を満足するもの
すべてからなる集合
は定義された加法と定数倍のもとで
ベクトル空間となる
その要素である
実数の無限数列
はベクトルである。
を満足する
ベクトル空間
に対して
と定義する。
ベクトル空間
はこのノルムにより
完備なノルム空間となる。
集合
区間
おいて定義された関数で
が可積分、すなわち
である関数全体からなる集合
(2乗可積分な関数全体からなる集合)
区間
おいて
2乗可積分な関数
に対して
のとき
における加法
における実数倍
と定義する。
集合
区間
で2乗可積分な関数全体からなる集合
は定義された加法と定数倍のもとで
ベクトル空間となる
区間
で2乗可積分な関数はベクトルである。
ベクトル空間
(3)
と定義する。
(3)式で定義されたノルムのもとで
完備なノルム空間となる
ノルム空間
区間
の完備性に関するコメント
で2乗可積分な関数全体からなるノルム空間
(3)
(3)式で定義されたノルムのもとで
完備なノルム空間となる
(3)
区間
で2乗可積分な関数
学部のときに学んだ積分
(3)式の積分の本当の意味
リーマン積分
ルベーグ積分
ルベーグ積分はリーマン積分と比べて
より広い関数を積分できる。リーマン積分では
積分できない関数で、リーマン積分が可能な
関数が存在する。
リーマン積分可能な関数の集合:
リーマン積分可能な関数列
収束する関数列
のときの極限
・・
・
・・
・
リーマン積分可能な関数の集合
完備な空間ではない。 (有理数全体が作る空間と同様)
リーマン積分可能な関数の集合
に
リーマン積分可能でないがルベーグ積分可能な関数を
を含めて新しい集合をつくる。
・・
・
この集合が
で
・・
・
(上の積分の意味はルベーグ積分)
上のノルムに対して
は完備なノルム空間となる。
とは言え、実用上(工学の問題において)
ルベーグ積分を必要とするような状況は
極めて少ない。
この講義では、上式の積分はリーマン積分の意味で
あると考えて差し支えない
ベクトル空間(線形空間)
空集合でない集合:
任意の
(1)
に対して
(2)
が成り立つとき集合
をベクトル空間と呼ぶ。
ベクトル空間は和と定数倍の演算に対して閉じた空間
ノルム
ベクトル空間
実数
の要素
に対して、
が決まり、つぎの3つの条件を
満足するとき、
を のノルムという。
である。
に対して、
1. すべての
ときのみである。
ただし、等号成立は
に対して
2. すべての
が成り立つ。
3. すべての
と任意の実数
が成り立つ。
に対して、
ノルムが定義されたベクトル空間を
(線形)ノルム空間と呼ぶ。
:ノルムが定義されたベクトル空間
(線形)ノルム空間
おけるベクトル列
である整数
に対して
が成り立つときベクトル列
をコーシー列(基本列)という。
:ノルムが定義されたベクトル空間
(線形)ノルム空間
におけるすべてのコーシー列が
に属する要素に収束するとき
そのノルム空間 を完備なノルム空間
という。
完備なノルム空間は、極限の演算に関しても
閉じていることを保証する。
完備なノルム空間をバナッハ空間とも呼ぶ