95号

ISSN 1346-6089
水循環
貯留と浸透
第
号
95
水循環 貯留
と浸透
特 集 / この
Journal of Hydrological System
ARSIT
Association for Rainwater Storage
and Infiltration Technology
年の東京の水環境を振り返る∼2020東京オリンピックに向けて∼
50
特集/この50年の東京の水環境を振り返る
∼2020東京オリンピックに向けて∼
Special Edition : Look back on the last 50 years of the Water environment in Tokyo
∼towards the Tokyo Olympic 2020∼
http://www.arsit.or.jp
公益社団法人
雨水貯留浸透技術協会
15
’
2015
VOL.
95
公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会
ASSOCIATION FOR RAINWATER STORAGE
AND INFILTRATION TECHNOLOGY
■グラビア ………………………………………………… 2
旧中川の整備 / 隅田川スーパー堤防の整備 / 東京オ
リンピック水構想 / 水位低下後の旧中川 / 小名木川
「塩の道」の再生
■ 水 想
水循環 貯留と浸透
循環について考える
(建設コンサルタントの好循環について)
Journal of Hydrological System
(株)建設技術研究所 代表取締役社長 村田 和夫
……………………………………………………………… 3
2015
VOL.
95
■特集
この50年の東京の水環境を振り返る
~2020 東京オリンピックに向けて~
・内容紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
・報文
江東区長 山﨑 孝明・・・・・ 6
江東区における水環境の変遷と未来のまちづくりに向けて
東京都建設局河川部 計画課長 小林 一浩・・・・ 11
東京都における治水事業 50 年の取り組み
(公社)日本水道協会 理事長 尾﨑 勝・・・・ 16
東京の水資源を振り返る
水循環研究所 理事長 小磯 明
オリンピックを迎える東京の河川と東京湾の水質
水循環研究所 所長 飯田 輝男・・・・ 22
東京下水道のあゆみ~普及から再構築へ、2020 年とその先へ~
東京における河川改廃の歴史的背景に関する一考察
隅田川を中心とした魅力ある水辺整備
東京都下水道局計画調整部 計画課長 新谷 康之・・・・ 30
東京都土木技術支援・人材育成センター 石原 成幸・・・・ 35
東京都建設局河川部 低地対策専門課長 岡上 樹・・・・ 40
■雨水貯留浸透に係わる事業及び制度紹介 シリーズ NO.52
・大野市における地下水保全の取組み
大野市産経建設部 建設整備課 帰山 寿章・・・・ 44
■水循環レポート
・第 7 回雨水ネットワーク会議全国大会 2014 in 福井を終えて
福井工業大学工学部 准教授 笠井 利浩・・・・ 47
■トピックス
・研究の現場を訪ねて(39)
天昇電気工業(株)営業本部
雨水貯留浸透技術協会 平田 京子・・・・ 51
■協会活動の紹介
・技術評価認定
雨水技評第 20 号 -2「プラダム工法」
秩父ケミカル(株)・・・・ 52
■雨水技術コーナー
・若手の声(37)「雪貯蔵プロジェクト~パッピーなスノーへ~」
福井工業大学工学研究科 笠井研究室 前川 翔太・・・・ 55
・出版物・文献紹介コーナー
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56
■雨水協会のページ
・雨水協会の動き(2014.9.16~2014.12.15)・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
・会員名簿・投稿のご案内・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58
・雨水協会の刊行物案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59
■次号内容予告・編集委員会委員名簿・編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
■雨水協会ホームページのご案内
雨水協会ホームページでは、協会のプロフィール、刊行物、助成制度、技術評価認定、会員名簿、入会案内、協
会案内図などを掲載しておりますのでご活用下さい。
(http://www.arsit.or.jp )
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
▼旧中川の整備
▼隅田川スーパー堤防の整備
(報文:
「東京都における治水事業 50 年の取り組み」参照)
▼東京オリンピック水構想
(報文:
「オリンピックを迎える東京の河川と東京湾の水質」参照)
▼水位低下後の旧中川
▼小名木川「塩の道」の再生
(報文:
「隅田川を中心とした魅力ある水辺整理」参照)
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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水 想
水 想
循環について考える
(建設コンサルタントの好循環について)
村田 和夫
Kazuo MURATA
株式会社 建設技術研究所
代表取締役社長
昨年、(公社)雨水貯留浸透技術協会の事業
が減少し、投資もできず、従業員が離職し、就
展開に関係する重要な法律、
「水循環基本法」
業環境も劣悪になります。
と「雨水の利用の推進に関する法律」が施行さ
これまで建設コンサルタントの経営を悪循環
れました。水循環基本法では人の活動と環境保
にしてきた力の一つが、終わりの見えない公共
全に果たす水の機能を適切に保った「健全な水
投資の削減でした。
この力が変わり始めました。
循環」の維持・回復の推進を基本理念としてい
国土強靭化基本法の制定、大規模地震への対
ます。また「水循環」を「蒸発、降下、流下ま
応、維持管理対策、予算の下げ止まり、品確法
たは浸透により海域に至る過程で、地表水、地
の改正などです。社会資本の整備には時間を要
下水として河川の流域を中心に循環すること」
します。安定経営は社会資本整備を担う組織の
と定義しています。このように「循環」とは対
必要条件です。担い手の確保など建設コンサル
象物の一連の現象の繋がり、運動のプロセスを
タント自身もこの動きを確実なものとする努力
示しています。循環を維持するためには力が必
が必要です。
要です。水循環では太陽が力(エネルギー)を
(一社)建設コンサルタンツ協会は 2013 年の
補充しています。力の作用によって、スパイラ
設 立 50 周 年 を 契 機 に、 今 年 度 か ら 新 た な ビ
ルアップといわれる好循環になるか悪循環にな
ジョンのもと新中期行動計画を策定し活動をし
るかが分かれます。
ています。新ビジョンのタイトルは、
「建設コ
少し異なる循環
(建設コンサルタントの経営)
ンサルタントビジョン 2014〜自律した建設コ
について考えます。
成果品の品質の維持・向上、
ンサルタントへの転換〜」です。ここでは、
「国
顧客の信頼獲得、受注と利益の確保、従業員の
民の視点に立って事業ニーズを把握し、関連学
就業環境の改善(長時間労働の解消など)が循
協会等との連携を図り、自らシナリオを検討し
環しています。技術競争市場の確立が前提です
適切な解を提案する自律した建設コンサルタン
が、良質な成果品の提供が顧客の信頼獲得と次
ト」を目指して、3 つの基盤(倫理基盤、品質
の特定(受注)につながり、売上げと利益の向
基盤、経営基盤)の確立と 4 つの改革の柱を掲
上が期待できます。得られた利益で技術開発や
げました。詳細は(一社)建設コンサルタンツ
就業環境の改善、従業員の昇給や優秀な人材の
協会のホームページを参照してください。「技
獲得に投資ができ、社内が活性化し、さらに質
術に優れ、経営に優れた建設コンサルタント」
の高い成果品を提供することができます。株主
が持続して活躍できる好循環を作り出す自助努
にとっては増配が期待できます。好循環をつく
力の提案です。このビジョンの策定に携わった
るためには、循環過程の何処かを改善する力が
一人として、皆様にご高覧いただければ幸いで
必要になります。一方、逆の循環もあります。
す。この一年、素晴らしい年になるように努め
技術開発を怠り品質が低下すると、受注と利益
ていきたいと思います。
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
特集/内容紹介
特集/‌この 50 年の東京の水環境を振り返る
~2020 東京オリンピックに向けて~
Look back on the last 50 years of the Water environment in Tokyo
~ towards the Tokyo Olympic 2020 ~
■報 文 江東区における水環境の変遷と未来のまちづくりに向けて
Transition of water environment and future prospect for town planning in Koto-ward
江東区長 山﨑 孝明 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.6-10]
江東区は、2020 年東京オリンピック・パラリンピックの競技場が多く建設される日本でも有数の水の都で
す。しかしそれ故に、過去幾多の水災害等に見舞われて来ました。江東区長として、実体験を交えて 0 m 地
帯の苦難の歴史と「水彩都市」としての未来への展望を語ります。
■報 文 東京都における治水事業 50 年の取り組み
River improvement project of Tokyo Metropolitan government for the past 50years
東京都建設局河川部 計画課長 小林 一浩 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.11-15]
先の東京オリンピックから 50 年、東京の水害に対する安全性は飛躍的に向上した。東京の地形は東西に長
くひらけており、西に高く東に低い地形となっている。このため都ではそれぞれの地域特性に合わせた治水対
策を行ってきた。本稿では、東部低地帯の河川及び区部の台地や多摩部の中小河川について、この 50 年にお
ける東京都の治水対策の取り組みと、今後の河川整備の取り組みを紹介する。
■報 文 東京の水資源を振り返る
Review of the water resources of Tokyo
公益社団法人 日本水道協会 理事長 尾﨑 勝 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.16-21]
オリンピックが再び東京で開催される。前回のオリンピック開催直前、東京は厳しい渇水に見舞われた。当
時、東京の水道水源は、多摩川と江戸川が主体であり、利根川・荒川の水源は開発途上の段階だった。本稿で
は、前回オリンピック当時の水事情を振り返るとともに、首都東京のこれまでの水源確保の歩み、これからの
水資源の展望について述べる。
■報 文 オリンピックを迎える東京の河川と東京湾の水質
The water quality of rivers and bay in Tokyo where Olympic be held
水循環研究所 理事長 小磯 明 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.22-25]
水循環研究所 所長 飯田 輝男 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.25-29]
第一部 オリンピックと東京の河川の水質
東京は玉川上水網を骨格としてできた町である。しかし、第 18 回オリンピックで多くの小河川、運河や堀
が失われ水質汚染、地盤沈下等の公害対策は後手にまわった。下水道普及率 100% を達成し、順流部の河川の
水質は大幅に向上しているが、感潮域の河川の水質は、雨天時の排水が残留するため向上していない。東京の
河川回復のためには、玉川上水の復活が急務である。夏のオリンピック開催のためには、他ダムから援助水が
必要である。
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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特集/内容紹介
第二部 オリンピックと東京湾の水質
東京都内湾は埋立てにより浅場と干潟がなくなり、アサリ等の浄化作用と酸素供給が減少した。しかし、冬
の東京都内湾は透明度が高く実にきれいである。最近では冬の赤潮の発生はなくなったが、夏は常に赤潮が発
生し、COD が冬の 3 倍から 5 倍の海となる。いわゆる二次汚濁が起きている。赤潮の発生により、上層は酸
素が増えるが、下層は逆に酸素不足になる。このため底泥からリン、窒素が溶出する。さらなる赤潮や青潮の
発生を招く。
■報 文 東京下水道のあゆみ ~普及から再構築へ、2020 年とその先へ~
History of Sewage Works in Tokyo ~Road to completion of popularization and challenge
Innovative sewerage service toward the yer 2020 and afterwards~
東京都下水道局 計画調整部 計画課長 新谷 康之 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.30-34]
東京の下水道は、東京を取り巻く社会経済等が変化していく中、2020 年東京オリンピック・パラリンピッ
クの決定、さらに、猛烈な豪雨による甚大な被害の頻発、東日本大震災後のエネルギー事情の変化などを背景
に、浸水対策や公共用水域の水質改善に資する合流改善、高度処理の取組強化など、施策の充実を図ってい
る。
■報 文 東京における河川改廃の歴史的背景に関する一考察
Historical background concerning urban river modifications in Tokyo
東京都土木技術支援・人材育成センター 石原 成幸 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.35-39]
過去における東京の河川改修は、都市改造の制度面等における特異性に起因して、多くの河川改廃が行われ
てきました。現在、東京では次期の東京オリンピック開催決定を受けて、様々な都市施設の再改造計画が大き
く動き始めております。本報では改めて、過去のまちづくりと河川との関係を見直すことにより、首都東京に
おける水辺環境の向上、オリンピックを契機とした都市改造へのあり方の一考察になればと考えます。
■報 文 隅田川を中心とした魅力ある水辺整備
Creation of attractive riverfront mainly along Sumida River
東京都建設局 河川部 低地対策専門課長 岡上 樹 [ 水循環 貯留と浸透 第 95 号 /pp.40-43]
東部低地帯(東京区部の東側)では、地盤沈下の影響でこれまで高潮や洪水等の被害を幾度も受けてきた。
都では、この東部低地帯を水害から守るため防潮堤や護岸、水門、排水機場の整備等を進め、既に高潮や洪水
に対する安全性は確保されている。本稿では、隅田川を中心とした東部低地帯の河川における様々な魅力ある
水辺の環境整備の取り組みについて紹介する。
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
特集/報文
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
江東区における水環境の変遷と未来のまちづくりに向けて
Transition of water environment and future prospect for town planning in Koto-ward
キーワード:地盤沈下、水質、治水、下水道、水辺の活用
山﨑 孝明
Takaaki YAMAZAKI
江東区長
1. 江東区の原風景
元もと江東区は東京湾の浮州や小島であり、
平成 25 年 9 月 8 日の決定以降、江東区と言
徳川家康の江戸入府以降の埋め立てで現在の区
えば、「2020 年東京オリンピック・パラリン
の原型を成して以降は、水清い隅田川の淡水
ピックの競技場が沢山ある区」というイメージ
魚・海水魚や中川のキス・ウナギ、砂町海岸先
が定着しつつあります。
の海苔・貝の養殖など、豊富な海・川の恵みを
享受していました。
これは、大正時代まで続き、
明治末期以降の工業化による水質悪化に押され
昭和 37 年に深川・砂町両漁業協同組合が解散
して幕を閉じました。
(現在は、釣船などの遊
漁が主体)
江東区の原風景の一つとしては、人や物をの
せて行きかう舟とアサリのぶっかけ飯(深川め
し)
を食べて仕事に出る漁師達の姿があります。
しかし本区は、水に生息する生物を採る事と
舟運を活用した産業の発展と二つの恩恵を受け
ていましたが、近代工業化の落とし穴にはま
り、苦難の時代を過ごすこととなったのです。
2. 区の地勢・歴史
近代工業の発展で区は、地盤沈下と水質汚濁
図–1 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競
技場マップ(2014 年 4 月)
の 2 つの重荷を背負うこととなりました。
地盤沈下は、工業化進展に伴う地下水の汲み
しかし、昔を知る人々の中には、
「深川の水
上げ量の増加によって大正期に入ってから大き
かけ祭り」、「木材の街・木場」
、
「下町の人情」
くなり、工業用水道を敷設し、地下水の汲み上
などの胸を張れることが多々あるにも関わら
げ規制を行うなどの対策が取られて昭和 48 年
ず、「水害」、「夢の島のごみ」
、
「臭い川」など
(南砂 2 丁目)
ごろに落ち着くまで、最大で 4.6m
と言ったマイナスのイメージを持っておられる
も沈下しました。江東区は、所謂ゼロメートル
方も少なくありません。
地帯となったのでした。
プラス・マイナスどちらのイメージかは別に
この地盤沈下の激しい時代は、竣工時にはす
して、江東区が「水の都」であることは誰もが
でに 1 m 以上も低くなっている堤防すら存在す
認めるところだと思います。
る状況で、河川の護岸は何度も嵩上げされて行
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
き、河川は人から遠い存在となって行きました。
そして江東区は、幾度となく台風などによる
災害を被ることとなったのです。
写真–1 昭和 45 年小名木川、左は嵩上げした新護岸
写真–3 キティ台風による堤防の破損(南砂町 5 丁目
海岸堤防)
中でも昭和 24 年のキティ台風の被害は甚大
、住戸の全
で、死者 13 名(東京全体で 18 名)
壊 403 戸(東京全体で 896 戸)にのぼり、床上・
このような甚大な水害の多発を受けて、東部
床下浸水に至っては 3 万戸以上にのぼりまし
低地帯では様ざまな施策が行われました。
た。当時 6 歳だった私は、春から背負う大切な
大きく分けて 3 つ、①下水道の整備、②外郭
ランドセルを抱えて屋根裏へ逃げて一命を取り
堤防と水門の整備、③内部河川の整備です。
留めましたが、あっという間に水かさが増して
下水道は、1964 年の東京オリンピック開催
きた時の恐怖は、今も忘れることができません。
までに環状 6 号線以内の整備を優先・完了しま
した。しかし、江東区内は 40 %の普及率であ
り、特に区東部地域はほとんど未整備で、昭和
43 年に 60 %まで普及したものの 100 %に達し
たのは、平成に入ってからでありました。
下水道の未整備は、水害を引き起こすととも
に河川の水質悪化を招き、悪臭など区民に負担
を与えていました。大学時代に私は、友人から
自分の住む街を臭いと言われ、非常に悔しい思
いをしました。その時の悔しさが私の政治家と
しての原点であり、区民全てが江東区を誇りに
思える街にしたいと思ったのです。
外郭堤防と水門の整備は、昭和 41 年に完成
して、それ以降の本区内の水害は、劇的に減少
することとなります。
そして、内部河川の整備では、治水上不必要
な河川を埋め立てるとともに、区内西側河川の
護岸を耐震化し、区内東側河川の水位を強制的
写真–2 キティ台風、小名木川電停付近浸水深さ 2 m
に下げることとなりました。
内部河川の整備は、現在も進行中ですが、埋
め立てられた河川は親水公園として、耐震護岸
上は散策路として、区民に憩いとうるおいを与
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
える空間として有効活用されています。
こうして見ると、本区の歴史は、まさに災害
もう一つ、江東区の地勢・歴史として忘れて
や公害と戦う苦難の歴史であったと言えます。
ならないのは、埋め立ての歴史です。
しかし、水害対策に努めてきたことで、昔と
江東区の成り立ち自体が、江戸時代の埋め立
は違った形ではありますが、うるおいの水辺空
てですが、日本が近代化されたのち、国の発展
間を手にすることができたこと、区民の犠牲の
の重要基盤として港湾計画が立てられ、海面の
もとに作られた埋め立て地でスポーツ施設が造
埋め立て・整備が推進されたのです。
られたり 2020 年のオリンピック競技が開催さ
ところが、埋め立てについては、港湾施設と
れることなど、苦難を乗り越えた先に新たな発
して利用に供するために行うだけでなく、東京
展がもたらされてきました。
という大都市から発生するごみを処理すると言
河川を埋め立てたり上空に高速道路を建設し
う側面も有していたのです(全ての埋め立てが
たことに異を唱える方もおられますが、江戸の
ごみで行われたわけではない)
。
原風景のままではいられない、日本が近代化し
本稿冒頭に記述した「夢の島のごみ」は、昭
国民全体が豊かになるために通らなければなら
和 40 年代に「ごみ戦争」とまで呼ばれるに至
なかった道であることを鑑みれば、先人たちの
りましたが、ごみ運搬車による交通渋滞 ・ 事故
成したことに感謝こそすれ異を唱えることが
の発生や埋め立てられるごみによる悪臭 ・ ハエ
あってはならないと思います。
もしも、不都合があれば、先人たちのように
の大量発生など区民生活を脅かす事態になりま
改良・改善に努めて行けば良いのです。私は、
した。
上部を高速道路が走り日当たりのよくない竪川
現在は、ごみ処理方法の高度化と「自区内処
理の原則」による清掃事業の進展により、悪臭
河川敷公園をリニューアルするにあたっては、
やハエの発生などといった事態こそありません
高速道路(屋根)がある事を強みと捉えて、
が、中央防波堤外側埋立処分場や新海面処分場
フットサル場やカヌー・カヤック練習場などを
への埋め立ては現在も続き、依然交通問題は存
作って雨でも遊べる公園として整備しました。
在しており、今後もごみ問題における「負担の
このように知恵を絞って、水の都、水彩都市
江東をもっと良くして行きたいと思います。
公平化」を求めて行かねばなりません。
これら、区民の長年の過酷な負担の上に成り
3. 50 年前と現在
立った埋立地は、夢の島の競技場など広く区
民・都民の利用に還元することが一番の利用法
1964 年東京オリンピックを契機に、東京の
であり、東京湾内で未だ帰属の決まっていない
都市基盤整備は飛躍的に向上しました。オリン
中央防波堤及び新海面埋立地が今後、江東区に
ピック開催が決定した昭和 34 年は、戦後 10 余
帰属するのは当然だと考えています。
年経ても多くの社会基盤が未成熟であり、オリ
ンピックを成功に導くために、近代化に向けた
多くの社会基盤整備が推進されたのです。
江東区内は、都内西部に比べると 1964 年ま
での整備は遅れをとっていましたが、その後の
整備で、今では集中豪雨による都市型水害でも
被害の少ない地域となっています。
水環境に関わる護岸・水門も下水道も河川整
備も見違えるほど充実しています。
護岸・水門は、東日本大震災を受けての新た
な想定のもとで、治水施設の補強を行っていま
す。下水道は、都市化によって雨が地面に浸透
図–2 中央防波堤埋立地
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
する割合が減ったことに対応する再構築を行っ
ています。内部河川整備も順調に進んでおり、
既に東京の社会基盤整備は世界でもトップクラ
スです。
しかしこれらは、生活する上での最小限の基
盤が整っているに過ぎません。2020 年東京オ
リンピック・パラリンピックを起点として、異
常気象によるこれまでの想定外の災害に対して
備えることは勿論ですが、先進国として成熟し
た一歩進んだ安全で快適な街を築いていかなく
てはなりません。
写真–4 平成 25 年 3 月旧中川・川の駅オープニング
イベント
交通網の整備やユニバーサルデザインの充実、
街並みの景観も良くしていく必要があります。
さらに、水辺の景観と利用については、世界
また、水辺のスポーツ育成として、小中学校
に追い付いていかねばなりません。
セーリング部を立ち上げたほか、カヌー・カ
これまで私が訪れた国々では、当たり前のよ
ヤックにも力を入れました。竪川河川敷公園で
うに人々が水辺に近づき、憩い、利用している
カヌー・カヤック場を整備し、区内中学校にカ
のです。大概の水辺には散策路があり、柵もな
ヌークラブを設立して機運を盛り上げたとこ
く、船着場があって船に乗ることができるので
ろ、現在では、国体選手の輩出と地元町会を中
す。また、水上スポーツが出来るところも多く
心としたカヌークラブの誕生、こどもカヌー大
あります。決して海水浴場など一部の場所だけ
会の開催、パラカヌー選手の育成と目覚ましい
ではないのです。
発展を見せています。
2020 年に向けて様ざまな施策が行われると
そのほか、舟運活性化のために防災船着場を
思いますが、水辺の復権も重要課題だと考えて
利用できるように条例改正をしたり、豊洲埠頭
います。
の水際緑地を官民連携で維持管理することを検
討しています。
4. 今後に向けた課題と展望
私をはじめ、区民・職員から様ざまな水辺の
これまで江東区では、親水公園や、水辺・潮
街を作り上げるアイディアが出てきます。しか
風の散歩道、じゃぶじゃぶ池、水上アスレチッ
しながら、多くの規制がアイディア実現の妨げ
クの整備や水上バス(現在は廃止)
・和船の運
となっている現実もあります。
行に力を入れてきました。その結果、かつての
安全・安心を確保するための規制は残さなく
水害の街は「水彩都市・江東」として、水辺の
てはなりませんが、視点の持ち方で変えられる
魅力ある街として生まれ変わりました。
ものもあるはずです。防災船着場を非常時に円
私 は、 平 成 19 年 に 区 長 に 就 任 後、 も っ と
滑に利用できるように日常的に舟運事業者に開
もっと魅力ある水辺にしたいとの思いで、区民
放することや、河川区域にカフェを設置するこ
がより水に親しむ施策を行ってきました。
とは、もう始まっています。
一つは、本区北東部の東大島にある旧中川を
整備して 「 川の駅」を作りました。そこに、水陸
両用バスの運行を誘致するとともに賑わい施設
を設置して地域のイベント等を開催しています。
-9-
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
思っているところです。
最後に、過去の歴史を大切にして、
「水害の
怖さを忘れてはならない」と言うことを強く申
し上げます。
地下水の汲み上げが地盤沈下を招き、多くの
人々を水害で苦しめ、それを克服するための治
水工事などに莫大な金額と長い時間を費やしま
した。当時は、知識不足と産業振興の発展のた
めと言うことで、やむを得なかったでしょう
が、同じことを繰り返すことは、許されざる愚
行となります。
現在進行中の基盤整備を着実に進めるととも
写真–5 小名木川塩の道でカヌークラブに声をかける
江東区長
に、近年の異常気象を考え、治水事業の更なる
充実を図らねばなりません。
そのほかにも、治水のため不可欠なコンク
これらを知ったうえで、新たな水辺の活用方
リート製の護岸が水辺の生物を棲みづらくして
法を実現して行くことが大切です。
いる一面もあります。江東区では、護岸にツル
2020 年東京オリンピック・パラリンピック
性の植物をはわす護岸緑化などの取り組みを進
に向けて、世界に誇れる水辺の街をつくり上げ
めていますが、地球温暖化が進む現在、生物多
ることは、私の大きな使命だと考えています。
様性の視点から水辺を捉えることも必要だと
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
特集/報文
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
東京都における治水事業 50 年の取り組み
River improvement project of Tokyo Metropolitan Government for the past 50 years
キーワード:低地河川、中小河川、治水対策、安全性
小林 一浩
Kazuhiro KOBAYASHI
東京都建設局 河川部
計画課長
1. はじめに
2. 低地河川の整備
昭和 39 年のオリンピック東京大会から 50 年、
東部低地帯は明治期以降、工場地帯として発
東京の水害に対する安全性は飛躍的に向上し
達したことにより、地下水の揚水などが増大
た。
し、地盤沈下が急激に進行した。元来、地盤が
東京の地形は、東西に長くひらけており、西
低く軟弱であったことに加え地盤沈下が進行し
に高く、東に低い地形となっている。
このため、
た結果、高潮、洪水、大地震等の自然災害に対
それぞれの地域特性にあわせた治水対策を行っ
して極めて脆弱な地域となっていた。A.P. +
ている。
3.15m の潮位となる高潮が発生し、浸水棟数 13
東部低地帯の河川では、高潮による被害を防
万棟以上、死者 122 名をもたらした昭和 24 年
止するため、隅田川をはじめ河川の整備を進
8 月のキティ台風など、東部低地帯は度々甚大
め、安全性が高まるとともに、まちづくりと一
な被害に見舞われてきた。
体となってスーパー堤防等を整備することによ
り、地震に対する安全性と地域環境が同時に向
上してきている。
区部の台地や多摩部の中小河川では、洪水に
よる浸水を防止するため、時間 30 ミリ対応か
ら時間 50 ミリ対応に整備水準を引き上げ、整
備を進めるとともに、早期に治水効果を発現す
る調節池を整備することなどにより、安全性が
向上し、浸水被害は確実に減少してきている。
本稿では、この 50 年における東京都の治水
対策の取り組みについて紹介する。
図–2 地盤高平面図
写真–1 キティ台風による被害(墨田区)
図–1 位置図
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水循環 貯留と浸透
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(1)高潮防御施設の整備
旧江戸川、綾瀬川)
において整備を進めている。
昭和 34 年名古屋地方に国内最大の高潮被害
スーパー堤防等整備後は川とまちを分断してい
をもたらした伊勢湾台風と同程度の台風が襲来
る防潮堤がなくなり、川に近づけるようになっ
した場合の高潮(A.P. + 5.1m )から東部低地帯
ている。
を守るため、東京高潮対策事業を昭和 38 年度
スーパー堤防等の整備に先行して、地盤改良
より開始し、防潮堤、護岸及び水門等の整備を
等による耐震対策を目的としたテラスを整備
進めている。隅田川等、主要河川については概
し、地域の安全性を確保するとともに、テラス
成し、高潮に対する安全性は向上している。
を住民に開放し川に親しめるようにしている。
(2)江東内部河川の整備
江東内部河川の護岸は、地盤沈下に対応して
行った度重なる嵩上げによって、極めて脆弱化
していた。このため地震水害を防止する対策を
昭和 46 年度から実施してきた。
江東三角地帯を東西の 2 地区に分け、比較的
地盤が高く、舟航などの河川利用も多い西側河
川では、耐震護岸方式による整備を行ってい
る。
地盤が著しく低い東側河川では、水門等で周
囲を締め切り、周辺地盤高程度に河川の平常時
水位を人工的に低下させたうえ既設護岸を切り
写真–3 隅田川スーパー堤防の整備
下げ、さらに高水敷の緑化や遊歩道の整備を行
(4)河川施設の耐震対策
い、水辺に親しめる川づくりを進めている。こ
のことにより、地震水害に対する安全性は高ま
これまでも防潮堤・護岸などの河川施設を、
り、人々が憩える空間が創出されてきている。
地震にも耐えられるよう整備を行ってきたが、
平成 7 年 1 月の阪神・淡路大地震の被害を受け、
耐震点検を実施した結果、構造強度が不足して
いる堤防・水門等が判明し平成 9 年度から耐震
対策事業に着手した。
護岸の耐震強化を行うことにより、東部低地
帯の満潮面以下の地域に住む約 150 万人の都民
が守られる。
(5)東部低地帯での安全性の向上
平成 13 年 9 月に東京地方を襲った台風 15 号
の際には、台風の接近と満潮が重なったことか
写真–2 旧中川の整備
ら、キティ台風時とほぼ同じ潮位である A.P. +
3.15m を記録した。
(3)スーパー堤防等の整備
しかしながら、主要河川の防潮堤や水門等が
地震に対する安全性をより高めるために、背
完成していたため、河川の氾濫による被害は発
後地の開発にあわせ、コンクリートによる直立
生しなかった。
の防潮堤を改築し、盛土による緩傾斜型堤防を
もし、高潮の防潮堤や水門の整備が充分でな
昭和 55 年度から、スーパー堤防を昭和 60 年度
かった場合は、氾濫面積約 174km 、被害家屋
から、東部低地帯の主要 4 川(隅田川、中川、
約 110 万棟、被害額約 40 兆円が発生したと想
水循環 貯留と浸透
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2
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
定される。
写真–5 狩野川台風による被害(石神井川)
(1)時間 50 ミリ対応の河川改修
中小河川で水害が多発するようになったこと
から河川改修を促進してきた。
昭和 47 年度からは一部の河川において、そ
写真–4 平成 13 年 9 月台風 15 号(隅田川)
れまでの時間 30 ミリ対応から、時間 50 ミリ対
応の整備を始め、現在では、都内を流れる 46
河川 324km を対象に整備を進めている。河川
整備にあたっては、護岸の整備を基本として、
洪水の一部を貯留する調節池や洪水の一部を迂
回させる分水路の整備を実施している。これら
の整備により、流域の水害に対する安全性が向
上してきた。
図–3 整備が遅れていた場合に想定された被害
3. 中小河川の整備
昭和 20 年代、相次いで台風が来襲し、全国
写真–6 改修後の神田川と流入時の神田川・環状七号
線地下調節池
各地の大河川で水害が発生した。東京において
も利根川水系の東部低地帯を中心に毎年のよう
(2)総合的な治水対策
に水害に見舞われ、東京の河川事業は東部低地
都市化の進展に伴い、雨水が地中へ浸透しに
帯の水害対策が中心であった。
くくなり、短時間のうちに雨水の大部分が河川
昭和 33 年 9 月、狩野川台風では区部の中小
河川に未曾有の水害が発生し、また、昭和 41 年
や下水道へ一気に流れ込むようになったため、
6 月、台風 4 号では、急速に開発が進んだ多摩
河川や下水道の能力を超えてしまい、水害が発
地域の未改修河川を中心に、水害が発生した。
生している。
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水循環 貯留と浸透
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このため、都では、昭和 61 年 7 月の「東京
都における総合的な治水対策のあり方について
本報告」に基づいて、河川整備や下水道整備に
加え、雨水流出抑制施設の設置などの流域対策
を実施している。
(3)中小河川の安全性の向上
時間 50 ミリ対応の現在の整備率は、調節池
などの整備による効果を加えて、約 77% に達
写真–7 平成 5 年台風 11 号の状況(神田川)
している。
整備を進めてきた結果、浸水棟数は大幅に減
少し、河川整備の効果があったことがわかる。
図–5 平成 5 年台風 11 号による浸水区域
図–4 近年の浸水棟数の変化
早期の河道整備が困難な区間では調節池の整
備を進めてきており、これまで 25 箇所の調節
池(トータルで約 200 万 m )を整備してきて
3
いる。
図–6 台風 11 号と台風 22 号の被害比較
その一つである神田川・環状七号線地下調節
4. ソフト対策
池は、水害が多発する神田川中流域の水害に対
する安全度を早期に向上させるため、都道環状
豪雨による水害発生時の被害を最小限に抑え
七号線の道路下に延長 4.5km、内径 12.5m のト
るため、IT 技術を活用して、水防関係機関等
ンネルを設置し、神田川、善福寺川及び妙正寺
に河川水位・雨量等水防に関する情報を迅速・
川の洪水 54 万 m を貯留する施設である。平成
的確に提供することを目的とした水防災総合情
9 年 4 月に供用を開始して以来、これまでに 36
報システムを平成 3 に稼働した。
3
平成 14 年には、都のホームページに雨量・
回の流入があり、調節池下流域の浸水被害軽減
に大きな効果を発揮している。
河川水位情報、気象注意報・警報など水防情報
平成 16 年 10 月の台風 22 号の際には、神田
をリアルタイムで提供している。
川中流域に多大な浸水被害をもたらした平成 5
また、地域の人々や区市町村が、自分たちの
年の台風 11 号と同じ規模の降雨があったにも
地域の浸水発生危険度や浸水予測区域を知り、
かかわらず、激特事業による護岸整備及び環状
避難行動や水防活動がスムーズに展開されるよ
七号線地下調節池の洪水貯留効果により、浸水
う、洪水ハザードマップの作成・公表を推進し
被害は激減した。
ている。
水循環 貯留と浸透
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
5. 今後の河川整備の取り組み
行うこととしている。また、複数の地下調節池
平成 23 年 3 月に発生した東日本大震災では、
をトンネルで連結し、流域を越えて相互に活用
想定を上回る津波等により東北地方を中心に甚
する広域調節池を整備することや、河川と下水
大な被害が発生した。そこで、平成 24 年 12 月
道との連携により内水被害を軽減することとし
に、最大級の地震が発生した場合にも、各施設
ており、検討を進めている。
が機能を保持し、津波等による浸水を防止する
この対策により、既往最大の浸水被害をもた
ことを目的とし、水門外側の堤防約 40km の耐
らした狩野川台風規模の豪雨や、時間 100 ミリ
震化と水門・排水機場全 22 施設の耐震・耐水
の局地的かつ短時間の集中豪雨に対しても河川
対策を平成 31 年度までに完了させるとした「東
からの溢水を防止することができる。
部低地帯の河川施設整備計画」を策定し、耐
震・耐水対策を推進している。より一層東部低
地帯の安全性を確保する取り組みを進めている。
図–8 環状七号線地下広域調節池(仮称)
これらハード対策には、多大な時間を要する
ことから、防災情報の提供や避難体制の確立な
どのソフト対策を関係機関と連携して実施して
いる。河川が溢れる恐れのあるときに発表する
防災情報である洪水予報を、神田川、芝川、新
芝川、目黒川及び渋谷川・古川で行っており、
さらに予報河川を増やすとともに精度の向上を
図–7 耐震対策のイメージ
図っていくことにしている。
6. おわりに
また近年、都内では、これまでの整備水準で
ある時間 50 ミリを超える豪雨が増加し、それ
昭和 39 年の東京オリンピックから 50 年。河
に伴う水害が頻発していることから、平成 24
川整備を進めてきた結果、東京の浸水被害は大
年 11 月に「中小河川における都の整備方針〜
きく減少した。
しかしながら、東京のような大都市では、都
今後の治水対策〜」
を策定した。この方針では、
目標整備水準を時間 50 ミリから、流域・河川
市化の進展による人口、資産の集積はもとより
ごとの特性を踏まえ、区部河川では時間最大
極めて高度に発達した都市構造が要因となり、
75 ミリ、多摩部河川では時間最大 65 ミリ(い
水害が発生した場合において、直接被害から波
ずれも年超過確率 1/20)に 40 年ぶりに引き上
及して生じる間接被害が大規模に拡大する危険
げた。
性がある。
整備の考え方としては、時間 50 ミリを超え
今後とも、都民が安心感を持って生活がで
る部分は調節池によることを基本とし、道路下
き、水害に強い「世界一の都市東京」の実現に
や公園等の公共空間を活用して効率的な整備を
向けて取り組んでいく。
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特集/報文
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
東京の水資源を振り返る
Review of the water resources of Tokyo
キーワード:オリンピック渇水、水資源開発、気候変動
尾﨑 勝
Masaru OZAKI
公益社団法人 日本水道協会
理事長
1. はじめに
増加などから東京の給水事情は厳しい状況に
オリンピックが再び東京で開催される。6 年
あった。
特に、昭和 36 年は前年に引き続き全国的な
後 の 2020 年、 東 京 が ど の よ う な 姿 で 世 界 の
人々を迎えるか、
「おもてなし」
が楽しみである。
降雨不足で、関東地方の降雨量は少なく、ま
昨年は前回五輪から 50 周年ということで、
た、年間を通じて施設能力を超える需要に対応
「アジア初の五輪、東海道新幹線や首都高速道
した給水によって多摩川上流の小河内貯水池及
路などの社会基盤が整備されて首都の姿が激変
び村山・山口貯水池の貯水量は急激に減少し
‥‥」といった当時の状況が新聞等で報じられ
た。当時、この 3 貯水池系統は、東京都全体の
た。東京水道に籍を置いた者として、東京五輪
施設能力の 1/2 を占め、都心のほぼ全域と西北
が開催された昭和 39 年は忘れることのできな
部に給水しており、都の水道の根幹を担ってい
い年である。“東京サバク”
、
“五輪は大丈夫か”
たため、深刻な給水危機に直面した。
このため、
の記事が新聞に躍る厳しい渇水に見舞われ「オ
昭和 36 年 10 月 20 日から制限給水に入った。
リンピック渇水」といわれた。当時、東京の水
その後も、降雨量に恵まれず、さらには急激な
道水源は、多摩川と江戸川が主体であり、利根
需要量の増加により給水事情は依然厳しい状況
川・荒川の水源は開発途上の段階だった。戦後
が続き、制限給水は、オリンピック開催の昭和
復興から高度経済成長期に入った昭和 30 年代
39 年度まで、実に 3 か年に及んだ。
は、東京の水道にとっても大きな変化の時代で
このような慢性的な渇水に対応するための応
あった。
急対策として、灌漑用水の節水要請、原水補給
本稿では、前回オリンピック当時の水事情を
施設の活用、漏水防止の強化及び相模川からの
振り返るとともに、首都東京のこれまでの水源
応援分水、さらには制限給水区域から除外され
確保の歩み、これからの水資源の展望について
ている江戸川系その他の浄水場系統でも、つと
述べてみたい。
めて節水して貯水池系への応援給水を行うなど
あらゆる措置を講じた。しかし、オリンピック
2. オリンピック渇水
直前の昭和 39 年 7〜8 月の給水事情は、6 月に
2.1 オリンピック渇水の概要
中川・江戸川系緊急拡張事業による日量 40 万
東京の水道は、明治 31 年 12 月に通水を開始
m が通水したにも拘らず最悪の事態に追い込
し、その後、都市の発展とともに施設拡張を繰
まれ、8 月 15 日から第 4 次制限強化(節減目
り返し、関東大震災や太平洋戦争などの大きな
標 50 %)の実施に至り、朝 4 時間、夜 5 時間
困難をも乗り越えながら水道水供給に努めてき
しか水が出ない状況となった。自衛隊の災害出
た。しかし、昭和 30 年代に入り、小河内貯水
動による応援給水や警視庁、米軍による応援給
池が昭和 32 年に完成したものの急激な需要量
水も行われ、小河内ダム集水地域上空で自衛隊
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
2.2 東京を救った荒川からの緊急取水
機から人工降雨実験も行った。
このような中、8 月 20 日、東京の水源地に
利根導水事業は、利根川からの導水工事がオ
もやっとまとまった雨が降り、減り続けてきた
リンピックに間に合わないが、関係方面に要請
小河内・村山・山口 3 貯水池の貯水量が 100 日
して、とりあえず荒川から取水する旨話し合い
ぶりに増加に転じた。一方で、将来水源の確保
がつき、当初の予定工期の昭和 40 年 3 月を昭
対策として進められていた利根導水事業の導水
和 39 年 10 月に繰り上げ施工することとなった。
工事の前倒しに伴い、荒川からの取水が 8 月
しかし、その後も都の給水事情は悪化する一方
25 日より可能となった。このことにより、1 日
だったため、予定をさらに早め 8 月 25 日通水
3 時間程度の給水という最悪の事態は回避さ
へと工期短縮が行われたのである。
水資源開発公団施工の秋ヶ瀬取水堰では、河
れ、徐々に給水状況は改善し、オリンピック開
催直前には第 1 次制限給水(節減目標 15 %)
川湾曲部の洪水敷上に一気に堰を築造し、完成
まで緩和された。この制限は翌 40 年 3 月まで
後に新川を開削して旧川を埋め立てる方法の採
継続されたが、10 月 10 日から開催された第 18
用や堰柱の重量軽減を図るために巻上塔は鉄構
回オリンピック東京大会を無事に迎えることが
造を採用して工程の短縮を図った。工事を始め
できた。
て 1 年ばかりという短期間での突貫工事を完成
させることができたのは、工事の昼夜兼行と機
械の増台などの関係者の努力はもちろんだが、
給水危機とは裏腹に降雨が全くなく、全日程が
作業可能であったためで、実に皮肉なもので
あった。
また、荒川で取水した原水は、連絡管で朝霞
のポンプ所を通じ、東村山浄水場で浄水処理
後、配水するが、この原水連絡管約 17km も、
およそ 9ヶ月という非常に短期間で完成をみて
いる。
写真–1 応急給水(昭和 39 年度)
4)
図–1 利根川と多摩川との連絡施設(東京都水道局
ホームページに加筆)
これら、荒川取水の一連の工事は、水資源開
発公団との緊密な連携を図り、8 月 25 日を迎
写真–2 昭和 39 年の渇水時の小河内ダムと異常渇水
4)
を伝える新聞
え る こ と が で き た。 こ の 日、 荒 川 の 水 が 約
17km 先の東村山浄水場に届いた際には、拍手
と歓声がいつまでも消えなかったという。
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水循環 貯留と浸透
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3. 東京の水源開発のあゆみ
3.2 利根川水系における水源開発の実現
東京の安定給水に不可欠な水源は、現在、よ
利根川水系における水源確保については、東
うやく水道需要に見合う水量を確保するに至っ
京市会決議「大東京の水源は利根川に求められ
た。この間、幾度の渇水を経験する中で、関係
たし」
(大正 15 年)後、具体化に向けた調査が
者の並々ならぬ努力と長い道のりがある。
昭和 11 年頃から開始された。
3.1 多摩川系における水源開発と限界
この調査で驚くべきは、調査対象とした水源
前述したが、東京の水道は明治 31 年 12 月に
が広範囲にわたっていることである。利根川を
通水を開始し、経済・文化の中心地となった東
はじめ、三島湧水、相模川、荒川、見沼貯水
京の急激な発展と人口増に対応するため、水源
池、渡良瀬遊水地、飯沼貯水池、手賀沼、霞ヶ
の確保と施設の拡張に取り組んできた。当時、
浦など関東全域について広範囲に詳細な検討が
東京の発展は目覚ましく、明治末期から大正に
行われた。しかし、水利権調整の壁は厚く、東
かけて、新たな水源確保が必要となり、多摩川
京単独での水源開発は断念せざるを得なかった。
を水源とする村山貯水池、山口貯水池の築造案
この頃、群馬県が策定中だった奥利根の大貯
により、需要に見合う水源を確保することが計
水池築造を中心とする「利根川河水統制事業」
画された。
が動き始めたことを受け、都の水道用水の確保
一方、大正 15 年 3 月、東京市議会は「将来
を加えて、昭和 17 年に事業認可申請を行った
大東京実現の場合を予想し、本市水道事業上百
が、戦争により河水統制事業は着手に至らな
年の長計を立てられたし」という希望条件、同
かった。
年 9 月には「将来の水道拡張の水源は利根川に
その後、昭和 25 年に、奥利根の大貯水池と
求められたし」との建議を可決した。大正時代
しての矢木沢ダムの発電に関する権利が群馬県
まで、水道水源は多摩川を原資としていたが、
から日本発送電
(株)
(現東京電力
(株)
)に譲渡
昭和初期になると、東京市の計画配水量は、域
され、河水統制計画の実現の要望が再燃した。
内水道の限度を超えていた。しかしながら、当
昭和 27 年に、
「利根川特定地域総合開発」に矢
初、水源を利根川とする計画の予定もあった
木沢ダムが明記され、都は水道用水取水を群馬
が、農業用水利用者をはじめとする水利権の調
県に依頼した。これを契機にダム建設気運が高
整など解決すべき問題が多く、事業の緊急性を
まり、経済企画庁(現内閣府)のあっせんによ
考慮して、流量は少ないが域内河川である多摩
り群馬県、東京都、東京電力
(株)からなる「矢
川を最大限利用することとし、当時としては未
木沢ダム建設共同調査委員会」が発足した。し
曽有の大規模ダムを水道単独で建設することと
かし、水配分を巡って三者の意見は一致せず、
した。これが小河内ダムであるが、水利権紛争
結論を得ることができなかった。昭和 32 年、
等の問題解決や太平洋戦争のために工事の中断
建設省は多目的ダムの建設、管理を一元的に行
を余儀なくされるなど、様々な困難を経て、完
う特定多目的ダム法等水資源開発に関する法令
成したのは、昭和 32 年 11 月であった。小河内
を整備した。これを踏まえ、建設省が三者の意
ダム開発は、水道単独でかつ域内河川であるに
見を調整し、昭和 33 年に矢木沢ダムは、発電
も関わらず、水利調整に長期間を要するなど、
用水・かんがい用水・水道用水に洪水調節を加
水道単独での水源開発は限界を迎えていた。
えて、建設省の直轄施工とすることで合意を得
この当時、小河内ダムを主体とした拡張事業
た 。
5)
の大幅な遅延が予想される中、江戸川河水統制
これは、経済の発展に伴い産業基盤の整備拡
事業への参加、相模川からの分水協定、多摩川
充が急務となり、治水と利水を一貫させた総合
下流を水源とする拡張事業等も並行して進めら
開発を推進することに加え、利水者の費用負担
れた。
も軽減されるといった行財政面の充実という側
面からも評価できるものである。
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
この時期を境に、利根川を東京の水道水源と
しかし、利根川水系における水資源開発基本
して利用する計画が始まり、この計画の促進が
計画が決定され、東京の水道にとって、ようや
オリンピック渇水を救う一助となった。
く利根川水系の水源を確保する見通しが立った
さらに全国的にも、都市人口の増加に伴う水
ものの、ダム等の建設は、水源地域住民の生活
道用水、産業の発展に伴う工業用水など、都市
基盤の喪失や生活圏の分断など、地域環境に大
用水の需要が一気に増大し、これに合わせ、利
きな変化をもたらす例が少なくないため、計画
水者の長期的な水需要計画のもとに、水資源開
に対し大幅な遅れを来す実情にあった。
発のより広域にわたる体系的な枠組みによる水
従来のダム等の建設に伴う水源地域住民に対
源開発を進めることが必要となった。
このため、
する補償は、農地、家屋等への損失補償が主体
水系全体の長期的な水源開発を促進することを
であったため、ダム等建設に伴う影響を緩和し
目的に、昭和 36 年に水資源開発促進法及び水
水源地域の活性化を図ることを目的に、水源地
資源開発公団法のいわゆる水資源開発二法が制
域対策特別措置法(昭和 48 年制定)による地
定され、国の施策として水資源の総合的な開
域整備と水源地域対策基金(利根川・荒川水系
発、利用を図ることになった。この後、昭和
は昭和 51 年設立)による生活再建措置の制度
37 年に利根川水系における水資源開発基本計
が設けられ、地域振興及び生活再建等を図る
画が決定され、これにより、都の水道事業に
様々な事業にも取り組んでいる。
とって、利根川の水源を確保できる見通しが立
3.4 水道施設の整備と節水型都市づくり
ち始めた。
ダム等の開発の遅れ、水源確保の困難さなど
から、都は昭和 48 年、他都市に先駆け「水道
需要を抑制する施策」を発表し、節水型都市の
実現を目指すこととした。
具体的な取組としては、使用者の自主的節水
を促すため、都の広報媒体を利用するほか、水
道局独自の広報活動を展開し、合理的水使用に
ついて都民に積極的に訴えた。また、節水に関
する副読本を作成し、小中学校の教育の場を通
じ、水の有限性と節水の必要性の周知を図っ
た。さらに、節水型機器の開発を関連業界に要
請し、その普及を促進した。水道料金体系にお
写真–3 矢木沢ダムの写真(独立行政法人水資源機構
ホームページより)
いても使用水量が増加するほど、単価が高額と
なる逓増型料金体系を導入した。
3.3 困難化する水資源開発
あわせて、漏水防止対策の推進として、漏水
水資源開発基本計画については、その後、新
防止作業の実施、老朽管路の取り替え、漏水防
規ダムの追加や変更などにより、第 5 次水資源
止技術の開発などを進めた。これらによって、
開発基本計画まで改定されている。この間、水
現在では、漏水率が 2.2 %となり、世界最高の
資源開発に関しては、矢木沢ダム、下久保ダム
レベルに達している。
に続いて草木ダム、奈良俣ダム、滝沢ダム、
下水処理水の再生水については、地域ビル等
八ッ場ダム等の新規開発、埼玉合口二期、利根
の水洗トイレや清流復活事業として水辺空間を
中央事業といった農業用水の合理化事業、北千
よみがえらせる用途などとして活用している。
葉導水路、霞ヶ浦導水事業といった河川法によ
加えて、雨水利用の推進や工業用水道による雑
る流況調整河川など、多様な展開による水源開
用水供給の促進を図るなど総合的な施策を展開
発が進められた。
し、貴重な水資源の有効活用を図っている。
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水循環 貯留と浸透
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また、施設整備においては、利根川と多摩川
豪雨災害に関するニュースを多く耳にするが、
との原水連絡管を活用し、利根川水系の水質事
年降水量が増えているかというと、年降水量の
故時や渇水時などに、多摩川の水を最大限利用
経年変化のデータを見ると、そんなこともな
するなど、原水の効率的な運用を行っている。
い。
それどころか、傾向としては減少している。
このほかにも、給水所や送水幹線の整備、配水
また、最近の 20〜30 年間は少雨の年と多雨の
区域のブロック化、配水管網の整備など、施設
年の年降水量の開きが次第に大きくなってきて
及び施設間の相互融通機能等を総合的・体系的
いる。
に整備し、施設全体の機能をより充実させ、給
水の安定性及び信頼性の向上に努めてきた。
4. 東京の水源開発のあゆみ
4.1 現在の東京水道の水源状況
東京水道の水源は、これまで述べてきたよう
図–2 日本の年降水量の経年変化
に、様々な取組によって、前回のオリンピック
6)
当時と比べ、格段に充実してきている。
しかし、
計画中のダムが未完成であることや河床の低下
将来の気候変動予測では、年降水量に有意な
により取水に支障が生じるなど取水の安定性が
変化は見られないとしつつも、大雨による降水
低い水源を保有している状況もある。
量が増加する一方で無降水日の年間日数が増え
我が国のダム等の水資源開発施設は、一般に
るという 。つまり、降る時は降るし、降らな
10 年に 1 回の割合で発生する規模の渇水でも
い時は降らない。雨の降り方が更に極端になる
安定した取水が可能なように計画される(計画
と考えられる。最近では、米カリフォルニア州
利水安全度 1/10)。しかし、都の主要な水源で
で 500 年に1度ともいわれる水不足が発生して
ある利根川水系及び荒川水系では、人口や都市
おり、将来、日本においても今までに経験した
活動の集中により急増した水道需要を賄うた
ことのない大渇水が発生するかもしれない。
7)
め、計画利水安全度 1/5 で計画されており、淀
利根川では、融雪水の流出時期が農業用水の
川水系など全国の主要な水系と比べて低い計画
需要期とマッチしており、水を利用するうえで
である。さらに、国は、雨の降り方により、水
非常に大きな役割を果たしている。しかし、将
供給施設の安定供給可能量が計画時点に比べて
来の利根川上流域では、積雪深が減少する予測
低下していることを明らかにし、各水系の水資
や積雪・降雪期間が短くなる(期間の始まりは
源開発基本計画において反映している。
遅くなり、終わりは早くなる)予測
8)
がある。
利根川・荒川水系における第 5 次水資源開発
そうすると、融雪水が少なくなるうえ、温暖化
基本計画(平成 20 年)
では、安定供給可能量[近
で融雪時期が早まれば、農業用水の需要期に河
2/20]を供給の目標としており、ようやく全国
標準に追い付いたといえる。しかし、世界に目
を向けると、既往最大渇水に対応する目標の
ニューヨークや 50 年に 1 回を目標としている
ロンドンと比べ、安定性という点では、誠に心
もとないと感じる。
4.2 今後の水資源の展望
今後の水資源を考えるうえでは、気候変動の
影響が最も気になる。
最近、雨の降り方が変わったと感じている。
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
図–3 気候変動が水資源に与える影響(イメージ)
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
川流量が不足し、今まで以上にダムからの補給
たものの、半年後に完成し、これまで利根川の
が必要になる。さらには、ダムから安定的に供
水を東京に送り届けている武蔵水路でも、現
給できる水量が、今後の気候変動により一層減
在、改築事業が行われており、平成 27 年度に
少することも想定される。
事業が完了する予定で、次の東京大会時には新
東京水道では、利根川と多摩川との原水連絡
しい姿で東京への安定通水が確保されることと
管を整備し、相互融通による水源の有効活用を
なる。
図っている。また、鬼怒川上流のダムでは、
2020 オリンピック・パラリンピック東京大
五十里ダムと川治ダムを導水路で結ぶダム間連
会においても、関係者のたゆまぬ努力によっ
携により有効な水運用を図っている。ダム建設
て、世界各地からの選手や外国人旅行者を、日
適地が限られるなか、このように水資源を有効
本が世界に誇る水道文化“蛇口から直接飲める
に活用していく方策は有効と考える。
安全でおいしい水”で、おもてなしできること
また、近年、国内の事例もあるが、ダムの嵩
を感謝するとともに楽しみにしている。
上などにより、将来にわたり利水者が安定的に
水資源を活用できるような柔軟な発想による取
<参考文献>
組を期待したい。
1)東京都水道局:調査資料 No.10 、16
2)東京都水道局:東京近代水道百年史、平成
5. おわりに
11 年 11 月
1964 年東京五輪開催前の東京は、渇水とい
3)水資源開発公団利根導水路建設局:秋ヶ瀬
う危機的状況にあったが、関係者のたゆまぬ努
取水堰・朝霞水路工事誌、昭和 42 年 3 月
力により、大会に大きな影響を及ぼすことは無
4)東京都水道局:写真集 東京近代水道の 100
かった。時代が変わり、都市が大きく発展した
年、平成 10 年 8 月
現在、厳しい渇水が起きた時の影響は、当時と
5)独立行政法人水資源機構:広報誌「水とと
は比較できない程大きくなると思われる。
もに」2014 年 8 月号
オリンピック渇水から東京を救った荒川から
6)国土交通省水管理・国土本全局水資源部:
の緊急取水で、水を東村山浄水場に送り届けた
平成 26 年版日本の水資源、平成 26 年 8 月
原水連絡管は、現在、バックアップ機能の強化
7)環境省:日本国内における気候変動による
として、第二原水連絡管の整備が進められ、次
影響の評価のための気候変動予測について
の東京大会開催前の平成 30 年度完成を予定し
(お知らせ)
、平成 26 年 6 月 6 日
8)気象庁:地球温暖化予測情報第 8 巻、平成
ている。
さらに、前回の東京五輪には間に合わなかっ
25 年 3 月
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水循環 貯留と浸透
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特集/報文
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
オリンピックを迎える東京の河川と東京湾の水質
The water quality of rivers and bay in Tokyo where Olympic be held
キーワード:玉川上水、アオコ抑制樹木、広葉樹、赤潮、青潮、大腸菌、アンモニア、酸素不足、二次汚濁対策
小礒 明
飯田 輝男
水循環研究所理事長
水循環研究所所長
Akira KOISO
Teruo IIDA
第一部 オリンピックと東京の河川の水質
1. はじめに
共水域の水質は悪化した。各家庭に設置された
江戸 ・ 東京は玉川上水網を骨格としてできた
浄化槽はトイレ用の単独浄化槽で、炊事、洗
都であり、昭和 30 年代前半までの東京は江戸
濯、風呂の水は未処理で河川に流された。洗剤
(昭和
時代と変わらぬ水の都であった。1964 年
は分解しにくい ABS を使用したため、この泡
39 のオリンピックの開催のために短期間で下水
はいつまで消えないで残った。
道、道路、港湾、モノレール、首都高速道路、
新幹線等の整備を行い、第 18 回オリンピック
を無事に開催できた。しかし、多くの運河や堀
が失われ水質汚染等の公害対策は後手にまわっ
た。残されたのは、多くの源頭水源を失った中
小河川と、千鳥が淵を分断し日本橋と日本橋
川、渋谷川を覆う首都高速道路であった。そし
て地下水の利用の増大により地盤沈下が起き、
写真–1 昭和 54 年 12 月の多摩川の泡
その後、公害対策は進み、下水道は 100 %の
そのために巨大な河川堤防が築かれた。
普及率となり、各工場は排水基準を守ってい
2. 水質悪化とその後の推移
る。公共用水域の水質改善はある程度進んだ。
住宅地のスプロール化と工場の郊外への移転
しかし、東京の池や河川の維持用水が激減し、
に下水の普及が追いつかず、水路 ・ 河川の公
そのために水質は悪化するなどの環境問題はま
水循環 貯留と浸透
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
だ残されたままである。地盤沈下により感潮域
湾の中でも赤潮の発生の少ない水面でもある。
が拡大している低地の河川は干満に合わせて上
下するので、雨天時排水や赤潮の遡上の影響が
残りやすく、酸素不足による魚浮上事故が 5 月
から 9 月まで多く見られる。通常はコイ、フナ、
ハゼ、セイゴが斃死するのだが、ひどいときに
は酸素不足に強いウナギまで死んでしまう。
図–2 都内主要河川の BOD の推移
図–3 田園調布堰のアンモニアと多摩川アユ遡上の推移
(アンモニアの単位は mg/ℓ)
アユの生息に適した河川は多摩川以外に隅田
川の上流にある黒目川 ・ 落合川、柳瀬川があ
図–1 都内の消失河川・水路と清流復活事業
(東京都総合管内図を加筆)
り、これらの河川は遡上のしやすい河川形態で
東京都は水不足対策として、野火止用水
(昭
ある流路に落差工のない河川であり、かつ川底
和 59 年)、玉川上水下流域
(昭和 61 年)
、千川上
は礫と土で水草が生えており、アユが自生して
水(平成元年)に多摩上流水再生センター高度処
いる。
理水を放流している。また、渋谷川、目黒川、
野川は流域の国分寺市、小金井市、三鷹市、
呑川には落合水再生センターの砂ろ過水を平成
調布市、世田谷区の 4 市、1 区が雨水浸透ます
7 年から送水している。平成 14 年には、立会川
を設置し、湧水を増やし、都市河川である野川
へ東京駅周辺の浸出水を送り、姿見の池・野川
の水量と生態系を守りきった特別な例である。
へは、武蔵野線トンネル湧出水を送っている。
ただし、支流の仙川に三鷹市の東部下水処理場
はアンモニアの排出が多いため、野川には遡上
3. 河川の状況
できない状態となっている。
図–2 の BOD の 推 移 を 見 る と 主 要 河 川 で は
BOD の平均が 2 mg/ℓを切るなど、順調に良く
なっているが、下流域の東京湾の赤潮の発生日
数はこれに対応してはいない。
アユの遡上に関係のあるアンモニアの対策を
見てみると、多摩地域では流域下水道がアンモ
図–4 野川と空堀川の流量の推移
ニアの硝化を平成 8 年度からすすめきた。これ
4. 河川等の二次汚濁の防止
に加え、八王子市の下水の整備を最後に下水道
普及率が 98 %を超えた平成 21 年度からはその
都内では窒素分の多い河川が多く、冨栄養化
影響が多摩川の水質に見られる。多摩川のアユ
している。その影響で生物反応がおき、pH が
の遡上はこの成果といえる。アユはアンモニア
10 以上を示す時がある。水中の CO2 を吸収し
を嫌う魚である。多摩川沖
(ST.35)は東京都内
てアオコができる。窒素の少ない湖でもアオコ
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
が大発生するときがある。海での二次汚濁は、
河川でも湖でも同じように起きているのであ
る。これを防ぐには海岸地方における魚付林と
同様に、湖畔林、河畔林を植えることが必要で
ある。河川や池には昔からヤナギが植えられて
いるのはそのためで、アオコの成長抑制作用が
ある。野川最上流部の姿見の池は、武蔵野線ト
ンネル湧水を導入しているが、窒素 10mg/ℓ程
度と高くアオコが発生したが、現在はアオコ成
写真–5 小名木川のヤナギ
長抑制作用のあるユキヤナギとヤナギでアオコ
5. 玉川上水の再開で夏のオリンピックを冷やす
の発生を防いでいる。ユキヤナギは国分寺の日
2020 年の東京オリンピックは 7 月 24 日から
立中央研究所、北の丸公園の池、横十間川錦糸
8 月 9 日までの猛暑の夏に行われる。それまで
橋、隅田川支川の佃小橋でも既に植えられてい
に河川の水量を増やし、猛暑の東京を冷やすこ
た。昔から堤防や池のヤナギやユキヤナギは都
とが望まれる。それには、昭和 40 年まで流れ
民に親しまれていた。
ていた玉川上水の再開が必要である。野火止用
水、千川上水等の用水路及び神田川、目黒川等
の中小河川等へ流すためには毎秒 2 トンの水量
が必要である。導水の最終目的地は都心の皇居
のお壕、外濠から日本橋川である。
現在、9 月 21 日から 5 月 19 日までの 241 日
間(農閑期)毎秒 2 トンを多摩川水量確保対策
として、羽村から放流している。この水は水道
局が拝島堰で再取水し、玉川上水を通じて、東
写真–2 日立中央研究所大池
村山浄水場へ送っている。
この水は本来、玉川上水の下流に流すことの
できる水である。さらに、5 月 20 日から 9 月
20 日(農繁期)の夏場は羽村から玉川上水へ
直接放流できると、年間通じて毎秒 2 トン放流
可能となる。
玉川上水網を十分機能させ、水漏れを防ぐた
めには、雨水浸透ますの設置は欠かせない。ま
た、代替水源のある水道用地下水は揚水停止す
写真–3 桜田濠ヤナギの井戸
ることで、地下水位が上がり蒸発する水が増
え、気温が低下する。
多摩川上流域ではすでに東京都水道局が民有
林 1 万 6 千ヘクタールを平成 22 年から購入し
ており、平成 24 年から水質の向上がみられる。
小河内ダムでは平成 25 年後半から、26 年は平
均降雨量に達していないが、80 %程度の貯水
率を保ち、例年になく水量が多い。COD は最近
明らかに向上しており、25 年の COD 平均値は
0.98mg/ℓと全国的にみても素晴らしい水質と
写真–4 新宿御苑の池のヤナギ
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
なった。
③オリンピック時には小河内ダムの冷水を利用
して、玉川上水から大規模に配布する。
④地下水揚水を停止し、地下水を涵養し地下水
位を上げ、広大な面積からの蒸発を図る。
⑤アンモニアの排出量の削減により河川水質を
向上し、東京都内湾の赤潮と青潮を抑制し、
図–5 小河内ダム COD75 %値の推移
溶存酸素ゼロの海水の河川の感潮域への遡上
を防ぐ。
⑥河川だけでなく、排水量の多い下水排水出口
にもアオコ抑制樹木を植栽する。
第二部 オリンピックと東京湾の水質
江戸時代と現在を比較すると現在の東京都内
湾(湾奥)は海がなくなったように見える。浅
図–6 五日市樽の広葉樹化実験経過
(伝導率・水温・流出高)
瀬や干潟に恵まれ、海苔、アサリ、シジミ、ハ
図–6 は平成 16 年から観測を続けている五日
マグリ、アナゴの名産地であった。遠浅の海で
市樽地区における筆者らの実験である。ヒノキ
干満の大きい東京湾は特に海苔の養殖に適して
を切り、広葉樹を植えた。隣接の針葉樹と比較
おり、江戸時代から海苔ビシは昭和 37 年の内
すると、水温は 3 度、針葉樹よりも広葉樹の方
湾漁業権放棄まで大規模に行われていたが、オ
が低い、伝導率も 40 μS/cm 程度広葉樹が低い、
リンピックを前に消滅している。
流出高は広葉樹が 2 倍多い。
図–7 は筆者らが構築したオリンピック用の
水構想である。他ダムの支援を受けることを前
提にしている。これにより厳しい夏のオリン
ピックも可能であろう。
図–1 東京湾の概略図
わずかな間に堤防まで洗剤の泡で覆われた死
の海となったのである。
ゴミも多く、さすがに、
昭和 39 年(1964 年)の東京オリンピックでは
東京湾では何も開催されなかった。カヌーは相
図–7 東京オリンピック水構想(グラビア参照)
模湖、ヨットは江ノ島、ボートは戸田漕艇場で
6. 結論
行われた。
①森林の広葉樹化で水質が良く、夏 3 度低い
オリンピック後も埋め立てが進み、水面が大
幅に減っている。干潟や浅瀬もその多く消失し
水、水量 2 倍の水を確保できる。
ている。東京湾全体でも自然海岸は 10 %以下
②玉川上水の水路網を再開し、都内に自然水を
広く配布し東京の水環境を回復する。
となっている。その反省から葛西沖などに人工
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
なぎさ等が造られた。2020 年のオリンピックは
いる。東京都内湾は過栄養であるが、プランク
この東京都内湾で競技が行われる予定である。
トンが大発生すると、東京湾が一時的に栄養不
足になり、海苔の養殖の妨げになるときがあ
る。平成 24 年度にはプランクトンが異常発生
し COD が著しく高くなっている。
図–3 東京都内湾 COD 経年変化
写真–1 昭和 35 年海苔ビシ
図–4 東京湾の赤潮の季節別発生日数の推移
(千葉県資料)
写真–2 外堤防の洗剤の泡
一方、ヒートアイランド、地球温暖化で都市
の気温上昇起源の水温上昇による溶存酸素の減
少も加わり、貧酸素域の拡大が懸念される。こ
れは、りん、アンモニアの溶出を推進し、赤潮
や青潮の発生をもたらすのである。海水は淡水
と比べると溶存酸素量 1 mg/ℓ程度少ないの
で、十分注意する必要がある。それだけ、貧酸
素化しやすいからである。
さらに、雨天時には大腸菌がお台場等で検出
される。東京都内湾では赤潮、青潮、大腸菌の
写真–3 海外のゴミ
悪のトリオがオリンピックを待ち構えている。
東京湾に流入する COD 及び栄養塩類の窒素、
1. 東京都内湾における現状
りんの汚濁負荷量が減少しているが、昭和 50
冬の東京都内湾は透明度が高く実にきれいで
年代までには削減されていない。この図–5 の資
ある。最近では冬の赤潮の発生はなくなった。
料では特に下水処理場の負荷が減少していない
しかし夏は常に赤潮が発生し、COD が冬の 3 倍
と指摘されている。この図の傾向では 2020 年ま
から 5 倍の海となる。いわゆる二次汚濁がおき
でには削減が予想されるが、現実には 6 年後の
ている海である。
オリンピックまでにかなりの努力が必要である。
昭和 47 年から平成 25 年度までの調査を経年
なお、東京都多摩地域の下水道では平成 24
的に見てみるとでは、COD は若干改善されたに
年度には普及率は 99 %に達している。都に残
過ぎない。それでも最近は赤潮プランクトンの
された課題は処理水質の向上、雨天時排水の改
種類が変わり外洋性プランクトンが増えてきて
善となった。
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
場のアンモニア濃度は 11 月から 1 月にかけて
の冬よりも低い。図–9 、10 は昭和 47 年から
平成 25 年度までの月別平均濃度である。
図–5 陸域から東京湾への流入負荷の 10 年ごとの変動
(石井 ・ 大畑、2010 より)
図–9 ST.35 アンモニアの月変化
図–6 酸素水塊の規模(千葉県資料)
図–10 ST.35 アンモニアの月変化
東京都内湾では、毎年 10 月になると、表層
の水温が下がる。下層の水温より低くなり、酸
素が上層から供給される。また、溶存酸素を含
んだ外洋からの海水が湾奥にまで入り込んでく
図–7 貧酸素水塊の図(千葉県資料)
る。低層が嫌気性状態から一気に好気性状態に
2. 東京都内湾におけるアンモニアの動向
変わる。これにより、アンモニアの溶出がとま
アンモニアが硝化されるときに大量の溶存酸
るのと、プランクトンの摂取で底層のアンモニ
素を奪うので、アンモニアの多い大規模な下水
ア濃度が極端に減少する。しかし、川や下水道
排水口周辺は死の海となっている。アンモニア
から大量のアンモニアが流入し、冬の間にアン
は減少傾向にあるが、夏場はプランクトンに優
モニア濃度は上昇し、次の夏にプランクトンの
先利用されるので、6 月から 8 月にかけての夏
大量発生を繰り返している。
リンも 5 月から 9 月までは溶出のために下層
の濃度が上昇しているのが分かる。5 月から 9
月までの低層が貧酸素のときに溶出しているの
である。上層のリンは 4 月から 8 月プランクト
ンが吸収している。10 月から 1 月まではあま
り使われてはいない。
なお、6 月に異常に高い値があるが、60 年 6
月に大雨があったためである。
水質がある程度良くなると、プランクトンが
発生しやすくなる、その結果、上層の酸素は増
加傾向にあり、下層の溶存酸素は、流入汚濁量
図–8 東京湾の水質観測地点位置図
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
の減少にもかかわらず、減少傾向にある。上層
量の 76 %を占めている。多摩地域は全体の5%
溶存酸素との乖離が大きくなっている。
これは、
の排出量にすぎない。多摩川におけるアユの大
上層の水温が高く、下層の水温が低いなど、夏
量遡上は当然の結果である。
場に水温の強い成層がおき、酸素が下層までい
かないことも示している。
図–14 同B類型 4 地点アンモニアと大腸菌の推移
3. 2020 年夏のオリンピックを目指した対策
トライアスロンの会場予定のお台場では、大
図–11 ST.35 TP の月変化
雨の降った後に高濃度の大腸菌が検出される。
晴天時の大腸菌は、アンモニア濃度の減少に応
じて減少傾向にある。大腸菌は海では繁殖力は
なく、2 日ないし 3 日で死滅する。降雨後に滅
菌剤をボートで引き釣り散布してレース前に滅
菌することは十分可能である。
東京湾の改善の第一の対策はアンモニアを硝
化することにより削減することである。これに
図–12 ST.25. TP の月変化
より、赤潮の発生、青潮の発生を防ぎ、大腸菌
を削減することが可能となる。
第二は、アオコを抑制する樹木を水際に植え
ることである。河口部の近い隅田川ではヤナギ
が植えられていた。佃島の佃小橋周辺には、ユ
キヤナギが植えられ、夏でもアオコは出ていな
図–13 東京都内湾 BC 類型 8 地点の上層下層の平均
DO の推移
い。水中の CO2 を吸収してアオコが増殖するが、
ユキヤナギの落葉等に含まれる桂皮酸の誘導体
低層の貧酸素化は還元状態を引き起こし、ア
によりアオコの増殖を抑制するのである。
ンモニアやリン等の栄養塩の再溶出を招くだけ
海岸林、魚付林に利用されているには 10 種
でなく、硫化水素も発生させるので、青潮発生
類程度である。
「漁民の森」運動で植樹される
すると被害は甚大である。アンモニア対策は東
のはミズナラ、ヤマザクラ、ブナなど広葉樹が
京内湾における最重要課題であると見るべきで
ほとんどである。他にはタブノキ、スタジイ、
ある。しかも、アンモニアが低いときに大腸菌
ウバメガシ、クスノキ、ハゼノキ、オオシマザ
も減少する傾向にある。
クラが使われている。このうち、太字の樹木は
以上のことから、下水中のアンモニアの硝化
アオコ成長抑制樹木でもある。
を徹底的に進めるべきである。流域下水道から
第三は、干潟や浅瀬を増やし、貝やアマモの
のアンモニアの濃度は十分低いが、区部の下水
生産力即ち環境浄化能力を確保することであ
道からの濃度はそれに比べると高すぎるのが実
る。アサリは海水をろ過し、栄養を取り海水を
情である。隅田川に放流する各水質センターと
きれいにする。アマモの森は淡水の沈水植物と
芝浦水再生センターをあわせると都全体の排出
同様に水中に酸素を放出するとともに、魚貝類
水循環 貯留と浸透
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
のユリカゴの役割をはたす。これらはプランク
トンを捕食し、海をきれいに保つのである。い
かに酸素を増やし、酸素を保持するかである。
4. 結論
①汚濁負荷量は減少しているが、東京都内湾の
プランクトンは増加傾向にある。
②アンモニアが優先してプランクトンの増殖に
利用されている。
写真–6 同拡大図
東京都島しょ農林水産総合センター、小泉
③ランクトンの増加に応じて上層の酸素濃度が
5. おわりに
上昇している。反面、下層の酸素濃度が減少
写真–5(羽田沖)は今年 11 月に東京都内湾
している。貧酸素化が下層の底質からリン、
アンモニアの溶出を促進する。
に出現したブリの子供でイナダクラスの大きさ
④アンモニアの減少に応じて大腸菌群数が減少
であったが、サッパを追って湾奥まできた。17
本釣り上げ、胃の内容を調べたところイカや小
している。
魚を捕食していたとのことであった。東京湾で
⑤東京都内湾に流入する下水中のアンモニアの
は黄
(金)アジ、鴨居のマダイが有名であるが、
硝化を進めることが最重要である。
⑥夏は冬よりも水質が大幅に悪化するので、し
スズキの漁獲は多く漁業として成りたっている。
い二次汚濁対策としてアオコ成長抑制樹木や
東京都内湾は本来、漁業のできる魚場であ
魚付林の役目をする樹木の設置が必要である。
る。
隅田川でシラウオが獲れる日は近いと思う。
まずは赤潮・青潮をなくし、アサリが安定して
⑦天時排水は従来のとおり初期雨水の貯留と雨
採れるようにしたいものである。
水浸透で対応すべきものである
オリンピックが目前に迫った今こそ、東京都
内湾における赤潮プランクトンの発生を抑える
時である。
<引用文献>
1)東京都公共水域と地下水の測定結果(昭和
47 年度〜平成 25 年度)
2)東京都環境局写真集 東京の公害風景
3)消失河川、東京都総合管内図等から加筆作成
写真–4 通常の夏の赤潮
4)アオコ成長抑制樹木の検定(リーフディス
ク法)藤井義晴
5)東京都下水道局、数字で見る東京の下水道
6)小倉久子、
飯村晃、
杉島英樹:東京湾における
プランクトン出現状況の長期変動第 37 回日本
p.365
(2003)
千葉県
水環境学会年会講演集、
7)陸域から東京湾への流入負荷の 10 年ごとの
変動、石井、大畑
写真–5 平成 25 年 10 月羽田沖のブリの魚群
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
特集/報文
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
東京下水道のあゆみ~普及から再構築へ、2020 年とその先へ~
History of Sewage Works in Tokyo.
~Road to completion of popularization and challenge to innovative sewerage service toward the year 2020 and afterwards~
キーワード:2020 年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組、東京の下水道の歴史、貯留と浸透の取組
新谷 康之
Yasuyuki SHINTANI
東京都下水道局計画調整部
計画課長
1. 新たな時代を迎えた東京の下水道
のほうが工費を節減できる、④合流式は管径が
東京の下水道は、東京を取り巻く社会経済等
大きいため検査や修繕等が容易であるなどの観
が急激に変化していく中にあって、新たな時代
点から合流式とした。
を迎えていこうとしている。
しかしその後、第一次世界大戦、第二次世界
大戦により、下水道整備は停滞し、また、整備
2020 年東京オリンピック・パラリンピック
した下水道施設も各所に被害を受けた。
の決定、さらに、猛烈な豪雨による甚大な被害
の頻発、東日本大震災後のエネルギー事情の変
東京の下水道が、戦後の本格的な整備再開を
化などを背景に、合流改善や高度処理の取組強
果たした昭和 20 年代後期から 30 年代初めにか
化など、施策の充実を図っている。
けて、下水道事業に関係するいくつかの法律が
こうした状況を踏まえつつ本稿では、東京の下
制定された。その一つに、昭和 27 年の「地方
水道の歴史を振り返るとともに、2020 年東京オリ
公営企業法」がある。そして、都の下水道事業
ンピック・パラリンピック大会(以下、
「2020 年東
は昭和 27 年 10 月、同法の施行と同時に、その
京大会」
)及びその先を見据えた取組を紹介する。
全部を適用した。
昭和 34 年、第 18 回オリンピック大会を東京
2. 下水道の普及概成へ
で開催することが決定した。世界の注目を集め
(1)区部の下水道事業の始まりと躍進
るオリンピック開催都市として、その名に恥じ
東京における近代下水道は、明治初期に頻発
ない環境と施設を整備することが求められた一
したコレラ発生等の対策として明治 17 年より
方で、下水道普及率は、区部において昭和 33
建設された「神田下水」に始まる。その後、近
年時点でわずかに 19.8 %であった。
代産業の急速な発展と東京市への人口集中によ
東京都は、それまでの下水道の整備計画を見
り都市環境が悪化する中、明治 33 年に「下水
直し、区部全域に下水道を早期に普及すること
道法」が制定されたが、その法は下水道を単に
とし、下水道の整備を一層促進していった。そ
雨水や汚水を排除するための管きょ施設として
の結果、オリンピック開催の昭和 39 年には区
位置づけたにすぎないというものであった。
部で普及率が 26 %に上昇した。また、執行体
その後、下水道設計の認可が閣議決定され、
制も強化され、昭和 37 年には水道局より独立
現在の下水道計画の基礎となる「東京市下水道
した組織として、下水道局が発足した。
設計」を明治 41 年、東京市長が告示した。こ
区部における河川の水質汚濁は、すさまじい
の計画は、計画人口 300 万人、計画排水面積
勢いで悪化し、とりわけ隅田川の汚濁は重大な
5,780ha(現在の芝浦、三河島、砂町の 3 処理
社会問題となっていった。昭和 36 年には隅田川
区)、管きょ延長 825km を敷設するものであっ
花火大会や早慶レガッタが中止に追い込まれた。
た。排除方式については、①雨水排除対策を早
このような中で、水質汚濁などの公害は、社
急かつ効率的に進める必要がある、②分流式に
会問題から重大な政治問題となっていった。昭
よる工事二条化は困難、③分流式に比べ合流式
和 45 年、
「公害国会」が召集され、水質汚濁防
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
止法などが新たに制定され、公害対策基本法や
「21 世紀の下水道を考える懇談会」を設置した。
下水道法などが改正された。
翌年の懇談会の報告を受けて、平成 4 年に下水
下水道の普及が進み隅田川の水質が改善され
道局は、水環境、地球環境、まちづくりなどの
てきたことなどから、昭和 53 年、17 年ぶりに
新たな視点に立って展開する新たな下水道の基
隅田川花火大会や早慶レガッタが復活した。
本計画として、
「第二世代下水道マスタープラ
ン」を策定した。そしてその後、平成 6 年度末
に都民の悲願であった下水道の 100 %普及が区
部で概成した。
(2)多摩地域の流域下水道事業の始まり
多摩地域の下水道計画は、戦後の急激な人口
増加と産業の発展による市街化の拡大に対処す
るため、昭和 25 年に武蔵野市で始まった。
多摩地域の下水道整備の最大の課題は、膨大
注 1:普及率は、隅田川流域(板橋、北、練馬区)の普及率
注 2:水質は、小台橋地点の年間 BOD の値
(東京都環境局の資料をもとに作成)
な事業費を要する下水道整備を、個々の市町村
が実施するのでは、市町村の負担が大きすぎる
図–1 下水道整備と隅田川の水質
ことなどであった。
下水道の普及とともに、下水道による浸水対
そこで、東京都は多摩地域全体での早期環境
策は、都市の快適性・安全性を保持するため、
改善なども考慮し、下水道幹線や処理場を流域
着実な対策の実施が求められてきた。
下水道として整備することとした。
都市化の進展により、保水機能を失った都市
流 域 下 水 道 事 業 に 着 手 し た 昭 和 40 年 代 に
は、雨水が短時間のうちに河川や下水道に流れ
20 %程度であった多摩地域の下水道普及率は、
込み、それが浸水被害を引き起こすという危険
昭和 50 年代半ばには 50 %を超え、平成 22 年
に絶えずさらされるようになった。
度末に 99 %に達した。
昭和 56 年 7 月の集中豪雨による被害は、こ
3. 区部普及概成後の多面的展開
うした都市の構造そのものが原因となる、いわ
(1)主な経緯
ば都市型水害の典型といえるものであった。
下水道や河川の整備に加え、新しい雨水排除
100 %普及概成までに大きな建設投資を行って
システムの検討を含む総合的な治水対策に取り
おり、その財源の相当の部分を企業債としてき
組んでいくことが必要とされた。このため、下
たことから、最大時で約 3 兆円にも達した起債
水道局をはじめ、都の関係局で構成する「総合
の償還を優先するため、区部普及概成後の約 10
治水対策連絡会」を昭和 56 年に設置し、都市
年間、
大規模な建設投資の抑制を余儀なくされた。
型水害への効率的な対応を検討し、下水道につ
このような中にあっても継続して下水道サー
いては、下水道幹線やポンプ場の整備計画を策
ビスの維持・向上を図るため、下水道事業の
定し、浸水対策の強化を図っていった。
50 年先を展望した「下水道構想 2001」を平成
また昭和 59 年には、東京都と民間企業の資金
13 年に策定した。本構想においては、都民サー
と技術力を活用し、企業の経済性を発揮しながら
ビスの向上と事業の効率化の 2 つの視点を踏ま
下水道事業を支えることを目的として、東京下水
え各施策の取組方針を示した。
道サービス株式会社(以下、
「TGS 」
)が発足した。
その後、起債の償還が順調に進んだことを受
その後 TGS は、施設の維持管理をはじめ下水道
け、平成 22 年策定の『経営計画 2010』では、
整備に係る様々な業務を補完代行することで東
再構築事業などに必要な基幹施設整備を本格化
京の下水道を支え続け、今日に至っている 。
させることとした。さらに、これに続く『経営
平成元年に東京都は、知事の諮問機関として
計画 2013』では、再構築を始めとする主要
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
施策の中長期的目標を明示しつつ、各施策のス
た 75 ミリ対策地区等では、2020 年東京大会ま
ピードアップや「見える化」を考慮し策定した。
でに施設の整備効果を発現させることとしてい
(2)再構築
る。またハード整備だけでなく 、 情報提供など
下水道局では、区部普及概成直後の平成 7 年
のソフト対策の強化にも積極的に取り組み 、 よ
度より、老朽化対策にあわせて雨水排除能力の増
り精度の高い降雨情報をより多くのお客さまへ
強や耐震性の向上などの機能向上を同時に図る再
提供するなどにより 、 災害時の自助 ・ 共助の取
構築事業を推進している。区部の下水道管延長は
組を支援していく 。
(4)震災対策
16,000km だが、既にその 1 割の 1,500km が法定耐
下水道管の耐震化として、阪神淡路大震災で
用年数 50 年を超えており、さらに今後 20 年間で
多く被害のあった下水道管とマンホールの接続
新たに 6,500km が法定耐用年数を超過する。
そこで、施設の劣化状況を調査、評価し、適
部を柔軟な構造に改造する耐震化技術が TGS
切な維持管理を行いアセットマネジメント手法
や民間企業の連携で開発されたことから、その
を活用し効率的に再構築を進めている。事業平
技術を活用した対策工事を、平成 12 年度から
準化のため、区部を整備年代別に 3 つに分け、
実施してきた。
このうち、整備年代の古い都心部の 16,000ha の
平成 25 年度には、目標の 2,500 箇所を上回る
地域については、経済的耐用年数を考慮し平成
2,633 箇所で当初完了目標の 27 年度から 2 年前
41 年度までに再構築を完了させる計画として
倒しして完了した。現在はターミナル駅や災害
いる。また、規模の大きい下水道幹線について
復旧拠点となる官公庁など 1,000 か所を対象に
は、老朽化の進行などを考慮して、再構築を進
拡大し取組を進めている。
また、新潟県中越地震で液状化現象に伴いマ
めている。さらに、水再生センターやポンプ所
ンホールが浮上し道路交通に影響を与えた。マ
についても、計画的に再構築を進めている。
(3)浸水対策
ンホールの浮上を抑制する消散弁を TGS 及び
下水道の整備が進む中にあっても、土地の低
民間企業が連携して開発したことから、それを
い地区などで繰り返し浸水被害が発生してい
マンホールの壁面に設置する対策を進めてい
る。このような状況を踏まえ、下水道局は、平
る。液状化の危険性の高い地域にある緊急輸送
成 11 年に雨水整備クイックプランを策定し、
道路など 500km の対策を平成 20 年度からの 3
従来の浸水対策に加え、
「できるところから、
年間で完了し、現在は避難所と緊急輸送道路を
できるだけの対策を行い、浸水被害を軽減させ
結ぶアクセス道路 700km に対象を拡大し対策
る」という整備方針で貯留管の整備など緊急的
を進めている。
な対応を図る取組を進めた。
下水道管とマンホールの接続部の耐震化及
その後も平成 17 年には神田川流域などで甚
び、マンホールの浮上抑制対策のいずれも、
大な浸水被害が発生した。これを契機として、
2020 年東京大会前の平成 31 年度までに完了さ
東京都では「東京都豪雨対策基本方針」を平成
せる予定である。
19 年に策定し、豪雨対策を強化することとした。
さらに、平成 25 年に策定した
「経営計画 2013」
では、新たに「重点地区」を選定し、対策を進
めている。平成 25 年の豪雨による計 700 棟を
超える甚大な浸水被害などを踏まえ 、 新たな浸
水対策として 、 最大で時間 75 ミリの降雨まで
対応する「豪雨対策下水道緊急プラン」を策定
図–2 マンホールの浮上抑制対策
し雨水整備水準のレベルアップを含めた対策を
実施することとした。この緊急プランで設定し
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
(5)合流式下水道の改善対策
で導入する取組を進めている。特に、2020 年
東京都区部の 8 割の地域は合流式下水道で整
東京大会のトライアスロン等が開催されるお台
場など東京湾の水質改善に向けて、これらの合
備されている。
流改善の取組と次に述べる高度処理の取組の強
このような中、平成 12 年には、お台場海浜
化を進めている。
公園に白色固形物が漂着する旨の報道が契機と
(6)高度処理
なり、合流式下水道からの雨天時放流に対する
東京湾の富栄養化の一因であるちっ素やりん
問題がクローズアップされた。
そこで下水道局では、平成 12 年度に「合流
を削減するため、平成 8 年度から高度処理を順
改善クイックプラン」を策定し、短期間に効果
次導入してきた。現在、区部では 6 つの水再生
を発現可能な対策内容や対策地区を重点化し対
センターで計 51 万 m / 日の高度処理施設が稼
策を進めることとした。さらに平成 16 年には、
働している。一方で、高度処理の導入には新た
ごみやオイルボールの原因となる油などを下水
な施設整備が必要で、導入には長い期間と膨大
道に「入れない」
「ためない」
「出さない」ため
な事業費を必要とする。そこで、ちっ素やりん
の対策を充実させた「新・合流改善クイックプ
の除去率は若干劣るものの、既存施設の改造や
ラン」を策定した。
運転管理の工夫により早期に導入できる準高度
3
処理の導入を進めている。
対策の一例として、ごみなどの流出抑制対策
として、下水の流れから渦を発生させ、無動力
また、平成 25 年度末には、高度処理に匹敵
でごみなどを捕捉する水面制御装置を、平成
する水質改善効果が期待でき、かつ、高度処理
14 年に TGS や民間企業との連携により開発し
よりも省エネを図ることができる「新たな高度
た。現在までに区部の 733 か所の雨水吐き口の
処理技術」を開発した。今後、その導入を進め
ほとんどについて、水面制御装置等の整備が完
ていくこととしている。
了している。
水面制御板
流入管きょ
ガイドウォール
図–5 新たな高度処理の一例
越流ぜき
川や海へ放流
(7)エネルギー・地球温暖化対策
水再生セン
ターへ送水
下水道施設の運転には大量のエネルギーが必
要であり、下水道局は都内における年間電力使
図–3 水面制御装置
用量の 1 %強に相当する 9.8 億 kWh を消費して
また、現在は、雨水貯留施設の整備を進める
いる。今後、より一層の省エネが求められてい
とともに、従来の沈殿処理より除去率を 2 倍程
る。そこで、将来にわたり、下水道の機能を安
度に向上させる高速ろ過施設を水再生センター
定的かつ持続的に提供するため、下水道事業初
のエネルギー基本計画である「スマートプラン
高速ろ過施設の
処理イメージ
放流
2014」を平成 26 年 6 月に策定した。これに基
沈殿施設を改造
ろ材
雨天時の
流入下水 高速ろ過施設
放流
河川
など
雨天時の
流入下水
づき、かつ、温暖化対策との整合を図りつつ、
再生可能エネルギーの拡大、省エネルギーの更
ろ材で
汚濁物
を除去
なる推進、エネルギースマートマネジメントの
導入、エネルギー危機管理対応の強化の取組を
進めているところである。
図–4 高速ろ過施設の整備
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
4. 新たな時代を迎えた東京の下水道
出抑制対策を進めている。
流域下水道の普及率の向上に伴い、多摩地域
総合的な治水対策を円滑に進めるためには、
の水環境は大幅に改善されている。
下水道や河川の整備などを行う広域的自治体で
この下水道機能を将来にわたって安定的に発揮
ある都と、貯留浸透施設の設置指導などを行う
するため、老朽化施設の計画的かつ効率的な更新
基礎的自治体である区市町村が連携して対策を
や予防保全型の維持管理などに取り組んでいる。
進めていくことが今後も必要であると考えている。
また、多摩川をはさんで対面する 2 つの水再
6. 2020 年、その先に向けて
生センターを連結管で結ぶことで、水再生セン
ター間の相互融通機能を確保し、危機管理対応
2020 年オリンピック・パラリンピックでは、
を強化するとともに代替施設の共有化による効
都市のインフラ整備、更新を進め、成熟した都
率的な施設の更新や維持管理に努めている。
市東京のプレゼンスを高めていく必要がある。
また、都の流域下水道事業のスケールメリッ
そのためには、施設の老朽化対策、浸水対策、
トを活かし、施設の更新費や維持管理費を縮減
震災対策など、安全・安心の更なる確保に取り
するため、市単独処理区を流域下水道へ編入す
組むとともに、合流式下水道の改善、高度処理
る検討や具体的な協議などを進めている。
など、良好な水環境の形成に向けた取り組みを
スピードアップしていくことも重要である。
5. 貯留と浸透の取組みについて
現在、世界に向けて東京下水道の技術力の素
下水道整備の目的には、浸水の防止が含まれ
晴らしさを発信するなど、下水道局として何が
る。
「都市型水害」から都民生活を守るためには、
できるか検討している。例えば、人が多く集ま
雨水を速やかに排除するシステムを構築するだ
る場所などに、オリンピック・パラリンピック
けでなく、雨水の貯留・浸透も重要である。雨
仕様のデザインを施したマンホール蓋を設置す
水の貯留・浸透技術は、浸水の防除だけでな
れば、お客さまの目を引き、大会の開催に向け
く、合流改善や地球温暖化対策、地下水の涵養
た機運の醸成に貢献することが期待できる。各
など環境面の向上にも有益である。
大会会場施設近辺や、マラソンコースなどへの
設置を考えていきたい。
昭和 56 年度末、板橋・練馬の両区で約 2,000ha
の下水道未整備地域があり、このうち大部分の
今後も様々な課題の解決に創意工夫しながら
地域の雨水は白子川・石神井川へ放流する計画
取り組み、引き続き、質の高い下水道サービス
であった。このため、現況河川の改修事業との
を持続的、
永続的にお客様に提供していきたい。
整合を図りながら、下水道を整備していかなけ
ついては、
2020 年東京大会や、その先も見据え、
ればならなかった。それでは下水道の整備が進
人口減少に対応するとともに、次世代が明るい夢
まないため、汚水と雨水を宅地内も道路も区分
を描ける施設計画を検討し、現場で生ずる課題に
し、下水道管と道路雨水排水枡による「貯留」
迅速に対応していく。夢と希望に満ちあふれる世
と「浸透」を組み込んだ「雨水流出抑制型」の
界一の都市・東京を次世代の子どもたちに引き継
下水道システムを導入した。
いでいくよう、今後も着実に取り組んで参りたい。
雨水流出抑制施設が実際の現場でどのように
機能するか、昭和 56 年度に 2 件の実験工事を実
<参考文献>
施した。その結果を踏まえ、練馬区・板橋区に
・
「下水道東京 100 年史」
(1989 年)
おいて「雨水流出抑制型下水道」
の整備を進めた。
・
「第二世代下水道マスタープラン」
(1992 年)
東京都豪雨対策基本方針では、流域対策であ
・
「経営計画 2010」
(2009 年)
る雨水の貯留浸透については、東京都が区と連
・
「経営計画 2013」
(2012 年)
携して、民間の大規模施設への貯留浸透施設の
(2013 年)
・
「豪雨対策下水道緊急プラン」
設置指導を行うとともに、公共施設での雨水流
(いずれも東京都下水道局)
水循環 貯留と浸透
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特集/報文
この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
東京における河川改廃の歴史的背景に関する一考察
Historical background concerning urban river modifications in Tokyo
キーワード:河川改廃、36 答申、暗渠化、都市計画、区画整理
石原 成幸
Shigeyuki ISHIHARA
東京都土木技術支援・人材育成センター
兼 首都大学東京 客員研究員
1. はじめに
(1)市区改正条例と市制特例
これまでの東京における都市改造と河川改修
1889
(M22)
年、市制・町村制の施行に伴い、東
は緊密な連携のもとに進められてきましたが、
京市が設置されました。しかしながら、東京・
特にその制度面において他の都市とは異なる点
大阪・京都の三大都市では市制特例が敷かれ、
を有しており、そのことが過去における河川改
東京府知事が東京市長を兼任する変則形態とな
廃の大きな要因になったと考えられます。
りました。また、1888
(M21)年 8 月には、東京を
現在、東京都管理の中小河川の河道改修は、
対象とした市区改正条例が公布され、内務省が
河川法に定める河川整備計画に基づき事業化さ
都市計画の所管官庁となりました。市区改正条
れます。同時に、その事業は都市計画法に基づ
例は現在の都市計画の前身となる法律で、内務
く事業認可を受けて実施されており、他都市に
大臣が市区改正を決定し、内閣の許可を得て府
はあまり見られない事業手法となっています。
知事に告示を行わせると定められていました。
(2)法令に基づく河川改修計画の端緒
この河川改修を都市計画に位置づけ、都市改造
の一環として実施してきたことと、過去の河川
東京では、古く江戸時代の町会所における七
改廃の歴史が密接不可分の関係にあるのです。
分積金が東京会議所に引き継がれた区部共有金
2020
(H32)年の東京オリンピックの開催決定
などを以て運河や水路等の維持・補修を行って
を受けて、様々な都市施設の再改造計画が大き
きた経緯があります。一方、法令等に基づく計
く動き始めております。本報では 1964
(S39)年の
画的な河川改修としては、1889 年に告示され
第 18 回オリンピック東京大会から 50 年という
た市区改正設計(旧設計)が最初と考えられま
節目にあたり、改めて都市と河川との関係の見
す。
(図–1)
直すことにより、首都東京における水辺環境の
向上、ひいてはオリンピックを契機としたまち
づくりのあり方の一考察にしたいと考えます。
2. 過去における東京の都市改造と東京都制
東京における都市改造の沿革は、地方自治制
度の沿革と密接に関連してきました。首都東京
は政府との関係において、常に直轄指揮と独立
自治との間で揺れ動いてきた歴史があり、この
ことがまちづくりの様々な側面に影響を与え、
都市計画制度にも反映されてきております。
図–1 東京市区改正全図(旧設計)
所蔵 東京都公文書館(部分)
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
旧設計では、8 河川の新鑿(削)
・改修、並
川を神田川まで延伸する計画が検討されました。
びに 8 壕の埋立が決定されました。
(図–2)
しかし、衛生上の理由や地元の埋立要望に基づき
再検討した結果、東堀留川の改修と西堀留川の
埋立が決定されました。
(図–3)震災復興に際し
ては、将来も河川 ・ 運河として存続の必要性が
認められた河川 ・ 運河だけが改修されています。
なお、地元の埋立要望では、東京市が 1936
(S11)年発行した河濠埋立計画書に、
「大東京
の「シビックセンター」を構成する際に癌とな
る水の汚い外堀を埋立て、代わりに新しい建築
物を造って美観地区を拡大し、名実ともに大東
図–2 東京府公報(明治 22 年 5 月 20 日)
所蔵 都立中央図書館(加工)
京の中心地域に相応しい、真の都市計画百年の
ここで、なぜ河川法ではなく、市区改正条例
大計とするもの」
(原文のママ)との記述があ
による河川改修なのかという疑問が生じます。
るように、当時の東京中心部の水面の汚濁状況
その答えとして、最初の河川法が成立したのは
が極めて劣悪な状況であったことは事実です。
7 年後の 1896
(M29)年であり、東京ではそれ以
前から市区改正条例に基づき様々な都市施設の
改修を進めてきたことが一因です。また、都市
計画法には市街地における円滑な事業推進等を
考慮した計画段階での告示制度や建築制限、事
業協力に対するインセンティブなど、制度上の
多くの利点があることも現在まで継承されてき
た重要な要因と考えられます。このように、古
くからまちづくりと一体的に考えられてきた河
川改修ですが、どのような理由から多くの河川
が埋立られてしまったのかについて、以下に事
図–3 震災復興事業図
所蔵 首都大学東京付属図書館(部分・加筆)
実経緯に基づき考察を試みます。
(2)第二次世界大戦後の戦災復興計画
3. これまでの主な河川改廃の経緯
1946
(S21)年、戦争で一時的に減少していた
これまでの東京における中小河川の主な改廃
人口も復員等で再び増加し始めたことから、荒
時期は、次の三期に大別することができます。
廃した社会状況により一層の拍車が掛かりまし
(1)関東地震に伴う震災復興計画
た。さらに相次ぐ台風の襲来により、下町低地
最初の都市計画法が公布された 3 年後の 1923
部を中心に大規模な災害が頻発したため、戦災
(T12)年 9 月 1 日、関東地震が発生しました。こ
復興計画として 1947
(S22)
年 11 月、東京特別都
の地震では、東京においても甚大な被害が生じ
市計画による運河 ・ 河川 ・ 河川埋立および高潮
たことから、1924
(T13)年 3 月に帝都復興計画
防禦(御)施設が決定告示されました。
同計画における河川等の改修は、内川 ・ 古川
(運河の部)が告示されました。当時はまだ、
東京でも舟運による物資の運搬が活発に行われ
などの舟運河川の拡幅、渋谷川や神田川などの
ておりました。日本橋川筋の河岸があった堀留
中小河川の改修、河川埋立として 5 河川 ・5 壕
川の改修を例示すれば、次のとおりです。
が対象でした。当時の東京都の記録誌には、河
当時は、神田川と日本橋川を結ぶ河川がな
川埋立の主目的として、
「戦後市中の至るとこ
かったため、当初は東堀留川を廃止し、西堀留
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
ろに残焼、灰燼(かいじん)
、瓦礫(ガレキ)
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
が累々として人の目を蔽うものが多く復興途上
却益を事業費に充当する手法であったことが明
その除去は必要のみならず、民心の安定を得る
確に記されています。
(※新都市 2 巻 8 号)
ためにも又急を要するものであった。これがた
一方、これらは混乱した戦災復興期の GHQ 統
めに都は昭和 20 年から整地事業を急いでいた
制下にあって、時間と予算が限られた中で生じた
のであるが、都心より遠隔の地に灰燼、瓦礫を
非常に特殊なケースと考えられます。つまり、廃
運搬するためには予算がこれを許さずいろいろ
虚からの離脱のために面的な整備を最優先する
と研究の結果、不用河川の三十間堀川、東堀留
必要から区画整理部門が公物管理者との個別調
川、龍閑川、浜町川、六間堀川、東京駅前外
整に先行して、専管的に個別施設計画を決定し
濠、鍛冶橋際外濠、真田濠或いは海岸洲崎沖等
た事情があります。現在では、河川管理者が自ら
の都心に最も近い地を選びこれを埋立てその埋
計画を立案し、計画決定を行う組織体系となっ
立地処分の経費を以て事業費に充当する」とあ
ており、当時の状況とは全く異なります。
(図–4)
り、また「不用河川を埋立てることにより、衛
生上・美観上に資するとともに、埋立地を建築
敷地に利用すること」
(下線:筆者、不要の意)
とも記されています。
(写真–1)
図–4 計画設計に伴う責任処理
出典 東京都区画整理設計標準(昭和 25 年)
(3–1)1964 東京オリンピックと首都高速道路
昭和 30 年代からの河川改廃や上空占用は、首
都高速道路(首都高)の計画と密接な関係にあ
ります。東京都は、オリンピックを目前に控えた
1961
(S36)年、
「東京都における総合的な交通対
策について」
(会長:都知事)の審議会答申で、
先に決定した国の方針に基づき、高速道路対策
における整備上の考慮事項として「路線の選定
写真–1 三十間堀川(上)埋立前(下)施工中
出典 建設のあゆみ(東京都建設局)
にあたっては、市街地の土地利用を十分考慮
し、つとめて未利用地および治水、舟運上支障
さらに、当時の復興区画整理所長による専門
のない河川敷又は鉄道敷等公共用地、公用地を
誌 への投稿記事には、河川埋立に至るより詳
利用する。
」
ことを決定しました。
(下線:筆者)
しい実情が記述されています。
そのタイトルは、
現在、国土交通省の首都高速の再生に関する
※
「東京都戦災跡地清掃(灰燼処理)の経過並に
省内検討委員会等において首都高の更新事業と
現況」であり、戦災跡地の清掃として「三十間
都市開発の一体整備構想が検討されている日本
堀川外三河川を灰燼を以って埋立後此の土地を
橋川上空への首都高建設は、このような経緯で
売却し、清掃事業費の財源を捻出して本事業を
決定されました。
(写真–2)
推進する。」との記述に続き、
「埋立後の土地の
首都高の具体的な整備手法の検討について
価値が低く、工事費を土地売却代金でカバーす
は、1960
(S35)年にオリンピック準備局が発行
ると云う方法が採れないので、右三河川に三十
した広報誌「東京都オリンピック時報」が参考
間堀川を加えて埋立る」
(原文のママ)とあり、
になります。
(図–5)首都高における路線及び
不要河川の埋立だけが理由でなく、河川埋立が
工法選定の最大の理由は、オリンピックまでの
焼跡清掃という位置づけの事業であること、売
限定工期で完成でき、用地買収等の制約の少な
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
んでいます。2020 年の東京オリンピックを契機
とした再開発と連動し、楽しく親しめる水辺空
間としての河川を眺められる日も近いようです。
(3–2)
「36 答申」と高度経済成長期
1961
(S36)年は、道路行政のみならず河川行
政にとっても、特筆すべき年でした。
当時の東京都区部の下水道普及率は、未だ
20% という状況でした。この区部下水道の普及
促進を図るため、河川舟運等の利水面を考慮し
つつ日常の維持管理面の課題などを審議する場
写真–2 日本橋川と日本橋(首都高架設前)
所蔵 生活文化局 都民情報ルーム
として、東京都市計画地方審議会に「東京都市
計画河川下水道調査特別委員会」が設置されま
した。この審議結果は、昭和 36 年に特別委員会
報告書(通称、
「36 答申」
)として発表されました。
36 答申では、河川の次期整備水準(75mm/h )
に合わせた下水道整備に加え、衛生・公害対策
面から 14 河川の下水道幹線化・覆蓋化の方向
性が示されました。
(図–6)
図–5 高速道路の形態(小河川の場合)
出典 オリンピック時報 第 1 巻第 3 号
く、確実なルート設定が可能で線的かつ連続性
のある河川や路面電車敷地などを優先して線形
計画されたことが記されています。
また、当時の都市整備局長への聞き取り調査
資料「東京の都市計画に携わって」からは、東
京都の担当者らが日本橋付近での首都高の地下
図–6 36 答申の対象 14 河川
案と堀割案を検討したが、地下案は費用面にお
この答申の背景としては、都民から河川の下
いて、また堀割案は洪水時の安全対策に難があ
水道化を強く要望される劣悪な都市環境があり
り実現しなかったことも判っています。
当時の東京では交通渋滞が甚だしく、危機的
ました。これは、先のオリンピック時報でも
状態と云われる程でした。
(S36 年 東京都道路
「都市美化」として取り上げられており、1964
白書)このため、首都高の建設は直面する都内
オリンピックを「都市公害」改善の良い契機と
交通の危機解決に必要不可欠のものとされ、オ
捉えていたことが判ります。
(写真–3)
リンピックのみならず、将来への最良の投資と
下水道・暗渠化の対象となった河川は、委員
いう共通認識がありました。そして現在に至る
会資料から 1950
(S25)年に当初告示された東京
まで、首都高が日本の経済発展の一端を支えて
都市計画下水道において「源頭水源を有する一
きたことも周知の事実です。
部準用河川を除き、全ての在来水路を下水道化
一方、最近では河川敷を占用している首都高
する計画」に基づき選定されました。これらの
の地下化検討などが、関係機関の協力のもと進
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
経緯により下水道幹線化された河川のひとつが、
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
4. これからの河川改修の方向性
ここでは、近年の沿川整備と一体となった河川
改修の一例として、都市計画道路・公園と河川
の連携によって整備中の事業を紹介します。当該
整備計画では、公園が道路トンネルの上空を利
用し、沿川の公園・緑地計画は河川水面や河川
管理用通路を考慮した都市計画決定が行われる
等の重層的な活用が進められ、みち、水と緑の
ネットワークの形成が図られています。
(写真–5)
左)不法投棄(古川)
右)水質汚濁(神田川)
写真–3 高度経済成長期の河川環境
出典 東京都環境局 HP
渋谷駅前より上流の渋谷川とその支流です。
現在、宇田川は東急本店方面への道路になっ
ており、また渋谷川(穏田川)はキャットスト
リートと呼ばれ、今ではブティック等が立ち並
ぶ洒落た小道に変貌しています。
(写真–4)
写真–5 みち、水と緑のネットワークの形成事例
5. おわりに
東京では現在、2020 年のオリンピックに向
けた数多くの再開発計画が進んでおり、隅田
川、日本橋川や渋谷川などでの河川空間との一
体的な利活用も着実に実施されてきておりま
す。都市における河川は、単に洪水の排水路と
しての機能のみならず、緑との結節点となる良
写真–4 暗渠化された穏田川の現況
好な水辺環境、貴重なオープンスペースといっ
さらに渋谷川では、沿川の再開発事業との整
た、そこに存在すること自体に意義のあるもの、
合を図った河川親水化計画も進行中です。
都市の良好な環境を形成する大切な要素・資源
下水道化河川の多くは、計画当初が普通河川
でもあります。この複合的な機能を有する河川
であり、その後に法定河川となった経緯等があ
環境を良好なまま将来に引き継ぎ、持続的発展
ります。一方、これらの経緯や当時の社会状況
が可能な都市を構築していくうえで、まちづく
が考慮されず、開渠の暗渠化を進めたと誤解さ
りと一体となった河川改修という言葉の持つ意
れている場合があります。過去の状況を理解す
味を改めて熟考し、望ましい河川環境の形成を
るには、当時の東京が高度経済成長に伴う市街
図ることが、官民を問わず何より重要なことで
化の発展に対して、河川や下水道整備が遅々と
あると考えます。さらに、次期オリンピックに向
して進まず、台風時の氾濫被害、晴天時の河川
けて、これら過去の教訓に学び、また成熟した
流水の欠如や水質汚濁・悪臭が社会問題化し、
豊かな社会が実感できる都市として、将来への
河川の暗渠・覆蓋化の要望が非常に強かった点
レガシーとなる基盤整備が待ち望まれています。
で、現代の市民意識と逆方向のベクトルが働い
本稿が関係者並びに産学官との協働による、河
ていたことに留意する必要があります。
川環境のさらなる向上の一助となれば幸いです。
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
特集/報文
■特集/この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
隅田川を中心とした魅力ある水辺整備
Creation of attractive riverfront mainly along Sumida River
キーワード:スーパー堤防、防災船着場、河川敷地占用許可準則、社会実験
岡上 樹
Tatsuki OKAJYO
東京都建設局 河川部
低地対策専門課長
1. 東京の東部低地帯について
2. 東部低地帯における「かわまちづくり」
(1)隅田川におけるスーパー堤防等の整備
東京区部の東側には、東京湾の海面高より低
い地盤が広がっている。これが所謂東部低地帯
隅田川では、昭和 50 年までに、伊勢湾台風
である。この地域は、元来低地帯であったこと
級の高潮に対応するためのコンクリート防潮堤
に加え、明治以降の産業の進展にともない地下
を整備した。その結果、治水上安全となったも
水や天然ガスをくみ上げたことが原因となり、
のの、防潮堤により川とまちとの結びつきが希
地盤沈下が急速に進んだ。江東区の南砂辺りで
薄となってしまったため、現在はスーパー堤防
は、明治後期以降、累計で 4.6m の沈下量を記
の整備を進めている。川沿いの再開発・民間開
録しているが、地下水のくみ上げを規制したこ
発等と一体的に幅の広い盛土を行う堤防であ
とにより、現在、地盤沈下は停止している。
り、
地震に対する安全性や水辺環境が向上する。
このことにより、東部低地帯では、これまで
高潮や洪水等の被害を幾度も受けてきた。都で
は、この東部低地帯を水害から守るため、防潮
堤や護岸、水門、排水機場の整備等を進め、既
に高潮や洪水に対する安全性は確保されてい
る。現在、最大級の地震や津波に対処するため
の耐震・耐水対策を進めているところである。
写真–1 中川の防潮堤
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
写真–2 スーパー堤防の整備前後
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
部では、地盤高が東京湾の干潮水面より、1m
低くなっている。また地盤が軟弱であることに
加え、進行する地盤沈下に対応するため度重な
る護岸のかさ上げが続いた結果、地震時におけ
る護岸の強度も心配された。
このため、特に地盤の低い東側地域について
は、常時地盤高程度まで水位を低下させ、万一
地震等で護岸が損傷しても、周辺に溢水しない
よう整備を進めている。
写真–3 テラスの整備例
また、川側では堤防の耐震補強と合わせて、
人々が水辺を散策できるようテラスの整備も進
めている。
写真–2 ように、スーパー堤防完成区間では、
水辺に親しめるうるおいある環境と優れた景観
が創出されるため、多くの方々が散歩やジョギ
ングを楽しみ、テレビ等のロケ地として利用さ
れるなど、幅広く活用されている。現在、隅田
川では、延長の約 3 割がスーパー堤防となって
いる。
また、大規模な再開発事業に合わせてスー
パー堤防化した白鬚西地区では、公園と一体的
に整備することにより、災害時には 12 万人を
収容できる広域避難広場として防災拠点の役割
も担っている。
図–1 江東内部河川の整備
○旧中川
江東内部河川の大部分は、江戸時代に開削
された直線的な堀であるが、その中にあっ
て、旧中川は唯一の自然河川である。
写真–5 は、水位低下前の状況であるが、河
写真–4 広域避難広場となっているスーパー堤防(白
鬚西地区)
(2)江東内部河川における水位低下等
東部低地帯の中でも、特に地盤が低い地域が
江東デルタ地帯である。江東区や江戸川区の一
写真–5 水位低下前の旧中川
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
写真–6 水位低下後の旧中川
川の水面が、隣接する家屋の 2 階の窓付近にあ
ることが確認できる。
図–1 に示すとおり、この地域の河川を水門
写真–8 北十間川
等で仕切り、常時水位低下させ、高水敷を人々
が散策できるよう整備した結果が、写真–6 で
3. 水辺のにぎわいの創出
ある。水辺に親しめる潤いのある河川空間が実
(1)防災船着場の平常時利用
現した。
○小名木川
防災船着場は、災害時に予測される陸上交通
網の寸断を補完し、帰宅困難者や復旧物資等を
運搬することを目的に整備している。
現在、都内に 61 箇所の船着場が完成して標
いる。その中でも、利便性の高い船着場につい
ては、水上バスや屋形船の発着などの平常時利
用を図っている。
写真–7 小名木川「塩の道」の再生
小名木川は、徳川家康入府の頃開削された堀
(当時は海岸線に近い)であり、江戸と行徳を
舟運で結ぶ「塩の道」と呼ばれていた。この歴
史を踏まえ、石積み風の護岸や柳の植栽等によ
り江戸情緒を醸し出す整備を行っている。
写真–9 防災船着場の水上バスによる利用
○北十間川
(2)河川敷地におけるオープンカフェ
北十間川は、東京スカイツリー横を流れる河
川である。東京スカイツリー建設時には水位低
平成 23 年に河川敷地占用許可準則が改正さ
下が完了していたものの、護岸は未整備であっ
れ、
イベント施設や船着場、
川床などを民間事業
た。隣接する東京ソラマチと合わせて整備する
者が河川敷地に設置することが可能となった。
際に、東京都と台東区が連携し、周辺の街並み
東京都においても、台東区二天門防災船着場
と調和した河川空間を創出した。
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
付近において、平成 25 年 10 月、河川敷地にお
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この 50 年の東京の水環境を振り返る~2020 東京オリンピックに向けて~
けるオープンカフェの第一号となるタリーズ
コーヒーと Cafè W.E が開店した。隅田川沿いで
東京スカイツリーが望める絶好のロケーション
で飲食を楽しむことができる。
写真–11 日本橋川かわてらす
則を適用した川床への移行を進めていく。
写真–10 河川敷地のオープンカフェ
4. 今後のかわまちづくりの方向
(3)「かわてらす」の社会実験
東京都では、平成 25 年度に、河川空間にお
河川敷地許可準則が改正されたものの、川沿
けるにぎわい創出に向けた社会基盤の整備や活
いの店舗が川床を設置するためには、協議会の
用、仕組みづくりなどについて検討するため、
設置など、実現に向けたハードルが高い。
有識者や行政関係者による「新たな水辺整備の
このため、隅田川と日本橋川の一部区間にお
あり方検討会」を開催した。
いて、「かわてらす」の社会実験を行っている。
この検討会からの最終報告を基に、河川に恒
「かわてらす」とは、川床の東京版の名称であ
常的なにぎわいを創出するため、ハード・ソフ
り、河川敷地の一時占用期間を 1 年から 2 年へ
トの両面から施策展開していく。
と延長し、要綱の条件を満たす事業者が川床を
現在、東京都長期ビジョン(仮称)の策定を
設置することを可能としたものである。平成
進めており、今後のかわまちづくりの具体策に
26 年 3 月、日本橋川において第 1 号店が誕生
ついても、この中に織り込まれる予定である。
した。「かわてらす」に対する事業者や地元の
2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに
理解を深めながら、今後、河川敷地占用許可準
向け、魅力ある水辺空間の創出を進めていく。
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
雨水貯留浸透に係わる事業及び制度紹介
シリーズ No.
52
大野市における地下水保全の取組み
帰山 寿章
Toshiaki KAERIYAMA
大野市産経建設部
建設整備課 湧水再生室 室長
1. はじめに
め、
「越前おおの湧水文化再生計画」を平成 23
大野市は、福井県の東部に位置し、総面積は
年 10 月に策定しました。
ここに、これまでの大野市の地下水保全の取
872.3km と県内最大で、その約 87 %を森林が
2
組みを紹介します。
占めており、市域の北西に位置する約 90km の
2
大野盆地に市街地があります。
2. これまでの取組みの系譜
1575 年、織田信長の武将である金森長近が京
都に似た碁盤目状(短冊型)の城下町を建設し、
大野市特有の水環境を取り戻し、地下水保全
以来豊かで良質な地下水を使いながら、この地
や湧水文化継承のための、
「地下水保全施策」、
「地下水のかん養対策」
、
「フォーラム等の情報
ならではの湧水文化を発展させてきました。
現在でも、市街地に住むほとんどの市民が家
発信」
、
「地下水監視体制の確立」など全国的に
庭用ホームポンプにより地下水を汲み上げて、
珍しい取り組みを行うに至った経緯を表–1 に
直接飲料水などの生活用水に利用しており、大
示します。
野市の上水道普及率は、平成 26 年 3 月末現在
表–1 地下水保全に向けた活動の経緯
で 21.1 %、簡易水道を含めた普及率でも 39.22
年月
%と全国的にも普及率が低い市となっています。
昭和 46〜
市街地で井戸枯れが多数発生(写真–1)
59 年
しかし、近年、市街地を中心に慢性的な地下
水位の低下が続いており、特に降雪期の水位低
昭和 48 年 大野市地下水対策審議会の設置し、地下水の
保全及び利用について調査審議
下に伴う井戸枯れ、湧水の枯渇などの地下水障
昭和 50 年 地下水の水質観測に着手。現在、年 1 回、市
度〜
内 42 箇所の水質検査を実施
害が発生してきており、貴重な資源である地下
水や古くから受け継がれてきた湧水文化を後世
昭和 51 年 簡易観測井での地下水観測開始。現在、地下
2 月〜
水表示板における地下水位表示と渇水時にお
ける地下水注意報及び警報の発令
に引き継ぐことが困難な状況になりつつあります。
このため、大野市では、地下水が地域特有の
昭和 52 年 「大野市地下水保全条例」の制定。融雪のた
11 月
めの地下水汲み上げ禁止及び抑制地域内で吐
出口直径 50mm 以上の揚水施設設置と地下水
採取量の報告を義務付け
地質および自然の水循環と人為的な水循環の巧
みな組合せによって成り立っている貴重な水資
源であること、この豊富な地下水も決して無限
にあるものではないこと、さらに地下水は地域
昭和 53 年 水田湛水事業に着手。10 月から翌年 2 月ま
度〜
での 5 か月間実施、実施面積は約 5ha から約
30ha までに拡大(写真–2)
共有の貴重な資源であることを認識し、その保
全対策を地域全体で取り組んでいくことを目的
平成 8 年
とした「大野市地下水保全管理計画」を平成
17 年 12 月に、また古くから受け継がれてきた
2015 vol.95
巣原地区の平家平で、自然環境の保全を目的
にブナ林 196ha を購入(写真–3)
平成 12 年 水環境を含めた環境全般の保全のための「越
前おおの環境基本計画」を策定
湧水文化を後世に引き継げる環境を創り出すた
水循環 貯留と浸透
取組み内容
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雨水貯留浸透に係わる事業及び制度紹介
年月
取組み内容
平成 12 年 市民の寄付からなる地下水保全基金を設立
12 月
し、地下水の保全に関する啓発活動や調査研
究事業、合理的利用のための施設整備補助事
業、地下水かん養事業などの活動を助成
平成 13 年 かん養域の保全対策として、丘砂利採取の抑
制地域、禁止地域を設定
平成 13〜 「大野市地下水総合調査」を実施して、将来
14 年
の地下水管理のために総合的な地下水調査を
行い、地下水の状況を再現できるシミュレー
ションモデルを作成
写真–2 水田湛水状況
平成 14〜
市内の井戸設置状況を調査
15 年
平成 17 年 「大野市地下水保全管理計画」を策定、持続
的な地下水の保全と利用の調和を目指し、地
下水の保全目標を設定
平成 17〜 浸透性農業排水路への改良、人工かん養池で
18 年
地下水かん養事業を実施
平成 18 年 「水のみえるまちづくり計画」を策定、水資
3月
源を有効に利用しつつ、
「名水のまち大野」
の文化や歴史、風土に根ざしたまちづくりを
計画した
平成 19 年 「湧水保全フォーラム全国大会 in 越前おお
の」開催
平成 23 年 地下水位を上昇させ、湧水文化を引き継げる
10 月
環境を創り出すために、市民だけでなく、
国・県の関係機関や団体、企業の役割も明示
し、連携して総合的な実効ある取組みを進め
ることを目的とした「越前おおの湧水文化再
生計画」を策定
平成 23 年 「湧くわく水サミット in 越前おおの」開催
写真–3 平家平のブナ林
3. 地下水の概況
3.1 気象
大野市は、内陸盆地型の気候で寒暖の差が大
きく、過去 10 年の年平均気温は 13.5 ℃、年間
平均降水量は 2,350mm で、全国平均降水量約
1,800mm を大きく上回る多雨多湿地域です。ま
た、典型的な日本海北陸型気候に属し、夏季に
平成 24 年 全国的に外国資本などによる水源地周辺の森
林買収が問題になっていることを受け、森林
の資源や水源かん養機能と水資源の保全を図
り、森林の売買相手の事前届け出を義務付
け、森林の適正な土地利用を確保するために
「大野市森・水保全条例」を制定
比べ冬季の降水量が多く、年間平均降雪量は
447cm に達する豪雪地帯になりますが、近年降
水量や降雪量の減少傾向が見られます。
平成 25 年 第 15 回日本水大賞環境大臣賞受賞
図–1 平均気温・降水量・降雪量の経年変化
(昭和 54~平成 25 年)
3.2 地下水の観測
写真–1 御清水の水枯れ
大野市では、御清水観測井、春日公園観測
井、菖蒲池(浅)観測井の 3ヵ所を基準観測井
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
(表–2)として定め、市内 29ヵ所、32 本の井戸
ついては、その揚水量を正確に把握しています
を用いて地下水位を観測しています。
が、住宅や一般事務所などの条例対象外の井戸
これら観測井の中で簡易観測井においては、
については、その揚水量を正確に把握することは
市民が毎日手計りで地下水位の観測を行い、そ
困難な状況にあります。このため、大野市では
の結果を表示板に掲示し、目で見ることのでき
様々な資料を用いて条例対象外の井戸の揚水量
ない地下水の情報を市民に提供しています。
を推計し、市域全体(和泉地区を除く)の地下水
の利用実態の把握に努めています。平成 25 年の
表–2 最終保全目標水位(GL-値)
観測井名
御清水
春日公園
菖蒲池
最終保全
目標数値
1.2m 未満
5.5m 未満
7.0m 未満
地下水の推計揚水量は、8,807 千 m で工業用が約
3
38 %、建築物用が約 10 %、水道用が約 46 %、
農業用が約 5 %、消雪用が約 1 %となっています。
写真–4 市民による地下水位計測と表示
図–3 地下水の推計揚水量の経年変動
3.3 地下水位の変動状況
4. おわりに
大野市の地下水位は、一般的に雪解け時期、
大野市における地下水や湧水地の再生や湧水
水田に水を張り始める時期、梅雨および台風時
文化の継承については、過去から今までも様々
期に大きく上昇し、8 月中旬頃に最高水位を記録
な活動を展開しているところでありますが、ま
します。その後、水田から水が落とされると地下
だ市民全体に保全意識が浸透している状況とは
水位は急激に低下し、11 月中旬頃に最低水位を
言えず、市民一人一人が、水循環や地下水の価
記録するという変動パターンを示します(図–2)
。
値を認識して、節水に取り組めるような機運を
平成 25 年は、前年末の降水量や当該年の降水量
作っていくことが重要であると考えています。
が多かった影響を受け、過去 10 年の平均地下水
このため、市民や地域住民が中心となって地
位より高い水準で推移する傾向を示しました。
下水や湧水地を守り育て、発展させることが出
来るよう、小学校や中学校の生徒に対して水に
関する学習会を開催するなど、地下水教育を継
続的に行っていくことが大切です。
地下水保全については、相当の事業費が必要
であり、地下水保全基金制度を拡大することは
もちろんのこと、国の補助制度などを活用して
いく必要があり、さらには、地下水の汲み上げ
図–2 地下水位の変動パターンの比較
(春日公園観測井:過去 10 年平均と H25 年)
量に応じて払う協力金制度や名水特産品などの
価格に湧水保全寄付金などを付加する新たな制
3.4 地下水揚水量の推計
度について、調査や検討が必要です。
大野市では、地下水保全条例に基づく地下水
これら個人、団体、企業、市の個々の取組み
採取量報告により吐出口断面積が 19.6cm (直
を実施し、時には協力し、なにより継続してい
径 50mm )以上の揚水施設を設置している井戸に
くことが最も重要であります。
2
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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水循環レポート
report
2 月 2 日に第 1 回実行委員会を大野市で開催し
第7回雨水ネットワーク会議全国大会
2014 in 福井を終えて
ました。
- HAPPY RAIN HAPPY SNOW、福井大会の軌跡 -
2. 実行委員会
笠井 利浩
実行委員会は、基本的に福井工業大学で開催
Toshihiro KASAI
されましたが、第 1 回目は記念として大野市の
福井工業大学工学部
経営情報学科 准教授
雨水ネットワーク会議全国大会 2014
in 福井実行委員会 事務局長
多田記念大野有終会館にて開催されました(図
–1)
。実行委員長には、福井工業高等専門学校
准教授 奥村充司先生にご就任頂き、総勢 17
名の実行委員会として大会開催に向けてスター
トを切りました。
「第 7 回雨水ネットワーク会議全国大会 2014
in 福井」は、2014 年 8 月 23 日、24 日に福井市
の福井工業大学福井キャンパスにて開催されま
した。全国大会には 309 名の方々が参加され、
今 回 の 大 会 テ ー マ で あ る「 ハ ッ ピ ー レ イ ン ハッピースノー ためて つかって まもる ちえ」に因んだ、講演やイベントで情報共有や
議論を行いました。大会終了後の交流会には
50 名の参加があり、福井の地酒を片手に和気
藹々とした交流が行われていました。また、24
日の 1 day ツアーは 2 コース設定され、合計で
37 名の方々にご参加頂きました。大会にご参
図–1 大野市で開催された第 1 回実行委員会記念写真
(後ろの雪だるま?は、皆で造った記念モニュ
メント)
加頂いた方々、また大会準備にご協力頂いた関
係者の皆様に御礼申し上げます。
本報では、「第 7 回雨水ネットワーク会議全
国大会 2014 in 福井」の大会開催のきっかけ〜
3. 大会の概要
大会準備〜大会内容〜今後の展開、についてレ
福井には、
「弁当忘れても傘忘れるな」とい
ポートさせて頂きます。
う言い伝えがあり、昔から雨や雪と密接に関わ
1. はじまり
りのある地域です。このように水に恵まれた地
2013 年の 7 月中頃から、福井市を中心に近
域である一方、どうしても水の有り難さを忘れ
隣市町の自治体、学校、NPO 等民間団体および
てしまいがちであり、頻繁な降雨や降雪から雨
企業へのネットワーク会議開催への協力要請を
や雪を厄介なものとして捉えがちであるという
行い、大会の開催準備に向けた体制作りを行い
問題があげられます。
このような意識を見直し、
ました。また、同時に開催内容案を作成して福
雨や雪の恵みを再認識すると共に水循環を踏ま
井大会開催の提案をさせて頂きました。8 月 1 日
えた雨水活用について参加者と共に学ぶ大会に
(水の日:偶然?)に、雨水ネットワーク会議世
する事になりました。大会テーマの「ハッピー
話人会から正式に 2014 年度福井大会決定の連
レイン ハッピースノー ためて つかって 絡を頂いた事を昨日のように記憶しています。
まもる ちえ」は、このような大会開催に向け
そ の 後、 雨 水 ネ ッ ト ワ ー ク 会 議 全 国 大 会
た思いを表したもので、大会ポスターも一般市
2014 in 福井実行委員会準備会を 10 月 29 日に開
民や子ども向けに柔らかなイメージで作成され
催し、その後月に一回の準備会で議論を重ね、
ました(図–2)
。また、今年 4 月には、
「水循環
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
基本法」と「雨水の利用の推進に関する法律」
報告して頂きました。その後、国土交通省の土
が公布され、前者は 7 月 1 日、後者は 5 月 1 日
屋氏には、5 月に施行された雨水の利用の推進
に施工されました。今回大会は、これらの法律
に関する法律について、制定の経緯や内容をご
が出来た記念すべき年の大会でもあり、この法
説明頂き、参加者全員で情報共有を行いまし
律についての情報共有も行うことにしました。
た。その後、福井市立東安居小学校 5 年生児童
さらに、今年は 2004 年 7 月に起こった福井豪
による雨水と緑のカーテンを使ったエコ活動に
雨から 10 年目の年であることから、近年の極
ついての発表がありました。この活動は、ライ
端な気候現象による豪雨災害の顕著化について
フサイクル思考に基づく環境教育プログラムの
も取り上げる事にしました。
一環として私の研究室と小学校が共同で実施し
ているもので、参加者の方々が熱心に発表を聞
かれていたのが印象的でした。最後は、大野市
の湧水 今昔と題して、大野市の行政や市民か
らの講演がありました。特に野田氏による講演
は、長年にわたる湧水保全活動に基づくもの
で、貴重な講演となりました(図–3)
。
◎基調講演:杉本亮氏(福井県立大学)若狭流
域の水循環と地下水保全の重要性
◎情報共有:土屋秋男氏(国土交通省水管理・
国土保全局)
「雨水の利用の推進に関する法
律」を知る
◎福井の取り組み:福井市立東安居小学校 5 年
生 雨水活用で育てる緑のカーテン
◎大野市の湧水 今昔:森誠一氏(本願清水イ
トヨの里)郷土財としての湧水環境とその保
全、帰山寿章氏(大野市)水と共に生きる大
図–2 大会ポスター
野市の活動、野田佳江氏(大野の水環境ネッ
本大会では、福井工業大学との共催プレイベ
トワーク)水環境の変遷と保全活動
ントとして 7 月 16 日に福井工業大学公開講座
未来塾「雨水活用から洪水対策を考える〜福井
豪雨から 10 年、いま私たちにできること〜」
と、7 月 26 日に子ども向け水循環学習プログ
ラム「大きなすごろくで水の循環を学ぼう!」
が開催されました。公開講座では、4 講演が行
われ、約 160 名の参加者がありました。講演後
のパネルディスカッションでは、様々な質疑や
意見が交わされ、豪雨対策や気候変動に関する
参加者の関心の高さが伝わってきました。
(1)全国大会
8 月 23 日午前中の全体会は、下記のプログ
図–3 全国大会の様子
ラムで行われました。福井県立大学の杉本氏に
午後からは、以下の 3 つの分科会に分かれて
は、嶺南若狭地域における山から海への地下水
の流れを解明し、その保全に向けた研究成果を
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
関連の講演と質疑が行われました。
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水循環レポート
◎分科会 1 「使う」
:伊藤親臣氏(雪だるま
ましたが、無事会場に 10 t ダンプ 2 台分の雪が
財団)雪利用の手法と課題、奥村充司氏(福
届けられました。
夏の炎天下に横たわる雪山に、
井工業高等専門学校)おいしい水の使い道
参加者の方々は驚き、その傍らで雪の涼しさを
◎分科会 2 「守る」
:白崎謙一氏(ドラゴン
楽しむ子どもたちの姿が印象的でした(図–4)。
リバー交流会)流域を守るドラゴンリバー交
製品展示ブースでは、約 20 社から雨水タン
流会の活動、平井享弥氏(九頭竜鳴鹿堰堤土
クや大規模雨水貯留システム等に関する展示が
地改良区連合)九頭竜川の用水 〜歴史と役
行われました。特に、普段雨水タンクを見る機
割〜
会が無い参加者の方々は、各社の雨水タンクを
◎分科会 3 「知る」
:原与志治氏(福井地方
興味深く見ておられました。また、今回雨を愉
気象台)気候変動と福井、中城智之氏(福井
しむ道具として究極の傘も展示され、その質感
工業大学)ピンポイント降雨予測に向けて
と傘のコンセプトに関心が集まりました。
(4)パネルディスカッション
(2)キッズ企画
福井における水の恵みの再認識が大きなテー
分科会終了後のパネルディスカッションは、
マになり、今後の社会を担う子ども向けの企画
下記のメンバーで行われ、福井大学の福原先生
を充実させるために、以下の三つのイベントが
による「福井豪雨映像アーカイブス」の放映後、
実施されました。各企画に参加した子どもたち
雨水活用についての講演がありました。この中
は、熱心に水車作りや実験等に取り組み、楽し
では、災害時の雨水活用の有効性や海外の事例
そうに水の学習をしていた様子が印象的でした。
が報告されました。その後、江成氏、橋本氏、
①大きなすごろくで水の循環を学ぼう!
誉田氏、浅利氏のお話を伺い、間に各分科会か
②手作り浄水器で雨水を飲んでみよう!
らの報告がありました。
(5)1 day ツアー
③雨のパワーで明るく照らそう!
(3)特別展示、製品展示
1 day ツアーは、①結の故郷 大野の湧水と
本大会では、冬の雪を貯蔵して 8 月の大会会
町並みを巡るツアー、②雨と雪のふるさとツ
アー の 2 コースが設定されました。
場で展示する「雪貯蔵プロジェクト」が行われ
ました。このプロジェクトは、冬期間は邪魔物
前者は湧水で有名な大野市を中心に幾つかの
扱いされる雪山を夏期に再現し、HAPPY な雪
御清水を巡るツアーで、その見学後には世界的
にしようという話から始まりました。2 月末、
にも有名な勝山市の福井県立恐竜博物館に立ち
大野市の林中に 10 t ダンプ 60 台分の雪を貯蔵
寄りました。参加者は御清水の水で喉を潤しな
して実現しましたが、大会まで残るかは未知数
がら見学すると共に、地下水保全の大切さを感
でした。全て無くなるのではないかと心配され
じておられました。後者は、福井工業大学あわ
らキャンパスにある、衛星電波受信用の 10m
パラボラアンテナと気象観測用のウインドプロ
ファイラレーダーといった最新の気象観測設備
の見学と説明を受けた後、加賀市にある中谷宇
吉郎雪の科学館の見学を行い、上空で繰り広げ
られている雪や雨の生成過程について学びまし
た。
(6)大会宣言
パネルディスカッションの内容や基調講演等
の全体会および分科会の内容を踏まえて、以下
のような大会宣言文が作成されました。
図–4 雪貯蔵プロジェクト
(HAPPY SNOW Project )
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
【大会宣言(福井宣言)
】
また、各地で起こった被害を見聞きするだけで
福井は、雨や雪の多い地域であり、水に恵ま
はなく、日常生活の中でも肌で感じるようにな
れた暮らしを育んできました。しかし、水に恵
りました。私たちは、このような被害を軽減す
まれているが故に、その有り難さを忘れてしま
ると共に雨の恵みを享受するために、
“水循環
いがちな側面があるのも事実です。
の保全”
、
“水資源の確保”
、洪水や地震といっ
本大会は、水やその源となる雨や雪の恵みを
た“災害発生時の減災対策”など、さまざまな
見直し、今後の雨水活用や雪の利活用について
雨水活用の可能性を追求します。そのために必
参加者全員で考えるために開催されました。大
要となる、気象予測や雨水活用の技術を研究
会で行われた情報共有や議論の中では、近年頻
し、新たな技術の実現に向けて取り組みます。
発する極端な気象現象や、今年 4 月に公布され
た「水循環基本法」
(7/1 施行)や「雨水の利
これら、新しい形での雨水活用や雪の利活用
用の推進に関する法律」
(5/1 施行)など、さ
の推進と、健全な水循環を守る取り組みの普
まざまな話題が取り上げられました。その内容
及・実現を目指し、参加者一人ひとりが行動を
を基に、私たちは次のような活動に取り組みま
はじめるとともに、さまざまな人たちと力を合
す。
わせて活動を継続します。
また、
“雨に恵まれても、雨の恵みを忘れる
◎知る(雨と水の環境教育)
水循環を包括的に捉え、雨と雪の恵みを日々
な”を合い言葉に、
「雨と雪の恵みを活かす社
の暮らしの中で活かせる“人づくり”を目指し
会づくり」に取り組み、HAPPY RAIN(ハッピー
ます。私たちの暮らしや街の中で、雨水活用や
レイン)
、HAPPY SNOW(ハッピースノー)の
雪の利活用が普通のこととして行われるように
実現に向けて歩みはじめます。
するためには、市民や今後の社会を支える子ど
4. 大会を終えて
もたちに向けた“雨と水の環境教育”が必要で
す。さらにその活動を継続させるためには、
“雨
大会の開催招致から現在まで、数多くの方々
を楽しむ文化”の復活が欠かせません。私たち
に支えられて第 7 回雨水ネットワーク会議全国
は、水循環を大切にし、自然と日常の中に雨や
大会 2014 in 福井を創り上げることが出来まし
雪の恵みが取り入れられた社会の実現に向けて
た。改めて、ご協力頂いた方々に心から感謝の
努力します。
意を表したいと思います。福井大会自体は終了
◎使う(雨と雪のエネルギー活用)
いたしましたが、大会終了はこれからの福井を
私たちは、雨や雪のエネルギー利用について
中心とした雨水活用に関する活動の始まりでも
考えます。冬期、雨が姿を変えて生まれた雪の
あります。現在、旧大会実行委員会実行委員を
“冷熱エネルギー”は、単なる電気などの代替
中心に、今後の活動内容や進め方について議論
エネルギーとしてだけではなく、利用したもの
しているところです。今回の大会で得られた雨
に“新たな価値”を生み出す可能性を持ってい
水関係者とのネットワークを生かし、水循環を
ます。また水は、私たちにとって非常に身近な
保全しつつ雨の恵みを生かす雨水活用に取り組
物質であるとともに、特殊な物質でもありま
んでゆきたいと思います。
す。その水の特性(比熱容量大、気化熱大など)
を活かした利用法について考え、普及させるこ
第 7 回雨水ネットワーク会議全国大会 2014
とで“水の持つ恵み”を最大限に引き出して活
in 福井の開催報告については、下記 URL にて
用します。
ご覧頂けます。
◎守る(極端気候、減災対策)
近年、気候変動が顕著化し、これまでの常識
http://www.rain–net.jp/past–2014/index.html
では考えられない豪雨などが頻発しています。
水循環 貯留と浸透
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トピックス
トピックス
■研究の現場を訪ねて
(39)
プラスチック業界のパイオニア TENSHO
天昇電気工業株式会社 営業本部
●インタビュアー
平田 京子
Kyoko HIRATA
公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会
総務部
今回は、営業本部の堀部副本部長、石川修一専任部長、竹春一課長代理に雨水協会にお越し頂き、会社の事業内容や
技術開発等の状況についてお話を伺いました。
【会社の歴史・特徴】
【プラスチック製貯留構造体の製造】
天昇電気工業は、創業者菊地五郎が昭和 11
当協会との関係は、雨水貯留(浸透)槽に利
(1936)年に成形加工及び絶縁材料を取り扱う
用する樹脂製ブロックをメーカから受託生産す
会社を「昇商会」の名称で個人創業したことが
ることが契機となり、平成 18(2006) 年に入会さ
始まりです。その後、松下電器のソケットなど
れました。現在ポリプロピレン樹脂を射出成形
の電気部品を製造し、昭和 15(1940)年に天
した「シンシンブロック」や「プラダムくん」
昇電気工業の商号にて株式組織に変更されたそ
を製造販売しており、国内 TOP クラスの市場
うです。戦後の高度経済成長時代に、電気部品
シェアを占めています。これらの樹脂製ブロッ
の製造部門が発展して合成樹脂加工業としての
クは、福島県にある福島工場(二本松市)と矢
地位を固め、昭和 36(1961)年に株式上場を
吹工場(西白河郡)で主に生産していますが、
果たしています。
西日本での販売強化のため、三重工場(伊賀市)
での生産を昨年より開始したとのことでした。
現在、豊富なプラスチック成形技術をもって
製品設計〜金型製作〜成形〜組立て、二次加工
までの一貫生産体制で、特に QCD を意識した
顧客サービスに努めています。
歴史的な家電、OA 機器、自動車の部品成形
加工事業と共にオリジナル製品である物流資材
のテンバコ他、医療向け感染対策容器のミッ
ペール、そして雨水貯留浸透槽向けの樹脂製ブ
ロックなどの産業資材事業に注力しております。
海外事業で は 生 産 拠 点( 中 国、 メ キ シ コ、
ポーランド)の運営にも積極的に進めています。
天昇電気矢吹工場と自社成形品
【インタビュアーの感想】
昨年、水循環基本法や雨水の利用の推進に関す
る法律が施行されましたので、今後も樹 脂 製 ブ
ロックの需要がさらに伸びてゆくことが予想され
ます。創業以来培ってきたプラスチック成形技術
を駆使して、高品質な製品を市場に提供していた
だきたいと思います。
堀部副本部長、石川専任部長、竹課長代理
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水循環 貯留と浸透
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■協会活動の紹介/技術評価認定(平成26年4月 雨水技評第20–2号)
プラスチック製雨水貯留浸透施設
プラダム工法
秩父ケミカル株式会社
◆問い合わせ先
秩父ケミカル株式会社 営業開発本部
〒101-0021 千代田区外神田5-2-3
TEL:03-3832-1617
FAX:03-3832-1681
1. はじめに
3. プラダム工法の特徴
近年、都市化の急激な進展に伴い、都市型洪
プラダム工法の特徴は以下の通りである。
水の発生、地下水位の低下、湧水の枯渇等多く
① 本体ブロックの空隙率が高く(95% 以
の問題が発生している。一方、ゲリラ豪雨と称
上)
、効率の良い貯留機能を有している。
される局所的な豪雨の発生も増加してきてお
② 1 ユニット 6.8kg と軽量で容易に迅速に
り、雨水流出抑制施設設置の必要性がますます
施工できる。
増してきている。
③ 輸送保管時は、重ねて収納でき輸送効率
プラダム工法は、このような社会的状況に対
が良い。
応し、都市化に伴う総合治水対策として流出抑
④ 実用上必要な耐圧強度、耐久性を有して
制および雨水利用を実現するため、経済的で施
いる。
工性が良く、貯留能力の高い雨水貯留浸透施設
⑤ 流入槽に沈砂槽を設けることにより、貯
を構築する工法として開発したものである。
留槽内への土砂の拡散、堆積を低減させ
ることができ、維持管理が容易に行え
2. 評価認定結果
る。但し設置条件により、設計者が、流
雨水貯留浸透技術評価認定に関する評価認定
入桝で充分機能を果たせると判断した場
項目に基づき審査され、総合治水対策および水
合は流入桝とする。
循環再生などに寄与すると認められた。評価結
果を以下に記す。
① 雨水の流出抑制及び有効利用施設として
必要とされる機能を有すると認められる。
② 実用上必要な強度、耐久性を有すると認
められる。
③ レベル 2 に相当する地震動において必要
な耐震性能を有していると認められる。
④ 軽量であり、施工が容易であると認めら
れる。
⑤ 維持管理が容易に行なわれると認められ
る。
⑥ 環境への負荷が少ないものと認められる。
写真–1 プラダム工法~組立状況~
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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協会活動の紹介
4. プラダム工法の構成部材
プラダムくん貯留槽は、主に図–1 の構成部材、図–2 の附帯施設より構成される。
図–1 プラダムくん貯留槽の構成部材
図–2 プラダムくん貯留槽の附帯施設
5. プラダム工法の構造例
プラダム工法は貯留施設と浸透施設の 2 種類に対応可能な工法である。双方の構造例を図–3 と図–4
に示す。なお、排水槽を流入桝と兼用する場合は、排水槽との接続管にもフィルターを設置する。
図–3 プラダム工法の貯留施設の構造例
図–4 プラダム工法の浸透施設の構造例
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
6. プラダム工法の施工方法
浸透型のプラダム工法の施工方法を図–5 に示す。掘削・基礎床均し後、シートの敷設、本体組立、
流入管・流出管取付、シート設置(被覆)の順で施工する。
図–5 プラダム工法の施工方法
7. おわりに
弊社では、プラダム工法の他に、浸透トレンチ型
のニュートレンチ工法(雨水技評第 12 号)を展開
している。双方の特長を活かした流出抑制型の雨水
排水システム(図–6)は、下水管路網が整備されて
おらず浸水被害が発生している地域への適用が効果
的なシステムと考えている。
限られた土地を有効に活用し、総合治水対策およ
び健全な水循環系の構築に寄与できるよう、弊社も
尽力する所存である。
図–6 流出抑制型の雨水排水システムのイメージ
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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雨水技術コーナー
雨水技術コーナー
■若手の声(37)
「雪貯蔵プロジェクト~ハッピーなスノーへ~」
前川 翔太
Shota MAEGAWA
福井工業大学 工学研究科
笠井研究室
2014 年 8 月 23 日、24 日に開催された、第 7
ろで 20〜30 cm 低くなっており、緩んだブルー
回雨水ネットワーク会議全国大会 2014 in 福井
シートと遮光シートをかけ直しました。大会前
では、2014 年 2 月から貯蔵してきた“雪”を
日には、10 t ダンプ 2 台分の雪が大会会場であ
展示しました。これまで、この会議では雨や流
る福井工業大学に運び込まれました。雪は固く
域などを中心に取り上げてきましたが、日本海
氷のようでしたが、その状態でも冷熱エネル
側初の開催となる福井大会では、雨が季節に
ギーを十分に感じることができました。この冷
よって姿、形を変えた“雪”もメインテーマに
熱エネルギーを来場者に、より感じてもらうた
含めることにしました。福井の雪は、日常生活
めに塩ビパイプを雪に埋めて、送風機で冷風を
の中では積雪があればすぐに除雪する排除の対
送る仕組みを作りました。大会当日には、子ど
象でしかありません。しかしながら、水に恵ま
もから大人まで多くの方々が冷熱エネルギーを
れた生活は、雪の恵みによって支えられていま
体感し、夏場の雪を楽しんでいました。
す。そのため、雪の恵みを再認識するためのイ
このような雪貯蔵は福井県内でも複数行われ
ベントとして、雪貯蔵プロジェクトがスタート
ており、小浜市では野菜や果物、お米などを雪
しました。
中に保存し、品質や味の変化が調査されまし
雪の貯蔵は、福井県大野市で 2014 年 2 月末
た。その結果として、果物は甘みや瑞々しさが
から始めましたが、今年の積雪は異常に少な
増し、お肉や魚の干物は腐敗しており、雪中保
く、大野市六呂師高原(元スキー場)から雪を
存には向き不向きがあるとわかったようです。
集めることになりました。今年の雪について、
また、大野市のお酢屋さんでは、お酢作りに必
豪雪地帯である大野市のお年寄りに伺ったとこ
要な野菜の保存に雪利用が計画されています。
ろ、今までにない小雪だったそうです。そのた
雪貯蔵の目的は地域活性化、食品の品質向上
め、スキー場から 10 t ダンプ 60 杯分の雪を集
など様々ですが、この雪貯蔵プロジェクトに
め、日陰になる雑木林の中に貯蔵しました。こ
よって雪が邪魔者からハッピーなスノーへ変わ
の雪は、畳を 2 重に敷き詰めた約 70 m 上にま
ればと思います。
2
とまるよう、ホイールローダーで固めました。
また、雪が雨、風に当たらないように畳を雪の
側面に、もみ殻は雪表面にかけて雪を覆いまし
た。もみ殻については、小さく量も多いため手
作業ではなく、除雪機を使って雪表面にかけま
した。また、もみ殻を入れたビニール袋約 50
個を畳と雪の隙間につめ、最後にブルーシート
と遮光シートをかけて、太陽光や風雨を防ぐよ
うにしました。
5 月初旬には、雪融けによって一番高いとこ
雪貯蔵の様子(2014 年 5 月)
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水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
雨水技術コーナー
出版物・文献紹介コーナー
「流域地図」の作り方
雨のことば辞典
~川から地球を考える~
講談社学術文庫
岸 由二[編]
倉嶋厚 原田稔 編著
ちくまプリマ /2013 年 11 月発刊
講談社 /2014 年 6 月発刊
まず、
川を軸に自分の居場所を把握するために
気象庁出身の倉嶋氏と郷土史研究家でエッセ
流域地図をつくってみようと提案、次に川が源流
イストの原田氏による、雨に関することばを集め
から河口まで流れていく中で、侵食・運搬・堆積
た読む辞典である。日本には四季があり、そのう
の作用を介して様々な地形をつくりだしているこ
つろいとともに、様相が千変万化していく雨、そ
と、そしてこの流域という大地のデコボコの中で、
のさまざまな雨の姿をとらえ、雨のことばが生ま
人間は多くの川の恵みによって生かされているこ
れている。本書には約 1190 語が収録されており、
と、川が自然の賑わいを育み、地球の水循環の一
その数の多さ、多彩さに驚かされる。中には、馴
要素であることなどをわかりやすく説いている。
染みのないことばもあり、例えば「沙乱(さらん)
」
一方で、普段使っている行政区分を基にした
梅雨時の荒れ模様の風雨、
「廉繊(れんせん)
」細
地図は、大地のこのデコボコを意識させなくなっ
かい雨脚の雨、
「私雨(わたくしあめ)
」限られた
ている、
「自分は自然とつながっていない」とい
区域に降る局地的な雨など、日本のことばの繊細
う錯覚、つまり「地球忘却」
「自然忘却」の傾向
な表現に感心する。また今では当たり前のように
を強めていると嘆く。
使われる「ゲリラ豪雨」は 2008 年の流行語大賞
「洪水は行政区を超えて流域という大地のデ
に選ばれたとして、あとがきで掲載されている。
コボコで起こる」、しかし行政区単位での対策
文中に点在するコラムでは気象用語を取り上げ
しかとられていない。
「温暖化被害への適用策
ており「水蒸気の大循環」
「雨の降るしくみ」
「水
や生物多様性の保全回復にかかる政策を相変わ
資源としての日本の雨」等、一般の人にも分か
らず行政区主義で行っている私たちの社会の常
りやすい解説が記載されている。その他「四季
識は、いってみれば 19 世紀半ば以前の医療と
の雨の本意」
「雨の季語」では俳句、詩歌、連歌
「地球環境時代に直面す
変わりがない。」とし、
で詠まれている雨の表現があったり、
「五月雨と
る産業文明の人類社会は、流域地図・流域思考
恋の歌」のように文学的見地から見た雨のこと
の普及で大地に根差した生命圏文明に転じてい
ばや、
「梅雨明けの雷」のような伝承もあり、面
く必要がある」とうったえる。前書きに「本書
白く読む工夫がされている。また「水上は夕立
は、現在、そして未来世代が環境危機の地球を
すらし見るがうちに一すぢにごる里のなか川」
(荷
それぞれの足元で明るく見通しを持って生き抜
田春満)古歌ではあるが現代に通じる歌なども
くための環境革命の地図の本、大変貌していく
紹介されている。普段、雨を科学的、数量的に
地球に再適応していくために必要な足元の大地
考察することが多い者にとって、雨を情緒的に
のデコボコ世界を再獲得するた
捉え、雨とのふれあいを楽しむ
めの入門書」と書かれている。
ことが出来る本書は、常に傍ら
「水循環基本法」の基本理念に
において置きたい一冊である。
「流域の統合管理」があるが、
「な
雨の日に、雨の音に耳を傾けな
ぜ流域か」を明確に教えてくれ
がら、雨のことばに親しむのも、
る著書である。(H.K )
また一興であろう。
(H.Y )
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
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雨水協会のページ
雨水協会のページ
□雨水協会の動き
〔2014.9.16~2014.12.15〕
■国際交流、国際会議等
変動に適応した持続的な防災・減災対策」を特
集テーマとし、降雨の変化要因と予測技術、海
外での対応事例に続いて、各自治体での防災及
び減災に向けた雨水対策の現状と課題を発表し
ていただく企画とした。また、翌日 18 日には
施設見学会を開催。柏市豊四季台団地、吉川市
調整池、越谷レイクタウンの雨水貯留浸透施設
等の見学を行った。
(講習会参加者:
93 名、見学会参加者:35 名)
*‌第 1 回日韓 LID&GI 研究会セミナー
(2014.12.11~12.15)
釜山大学と雨水協会との技術交流に関する
MOU(覚書)及び釜山大学と法政大学との共
同研究に関する MOU に基づく上記セミナー
(参加者約 30 名)が釜山大学にて開催され、屋
井部長が「日本における LID 動向と雨水利用
推進法について」と題して口頭発表を行った。
また、第 7 回世界水フォーラム(平成 27 年 4
月 12 日~17 日、韓国大邱市及び慶州市)での
成果発表内容についての打合せや、釜山の都市
3
河川である温泉川の再生(洛東江から毎秒 5m
導水)状況等の視察を実施した。
* JICA 施設見学(2014.12.11)
JICA からの申し入れで、地球環境部の水資
源・防災関係の担当者 4 名、東南アジア・大洋
州部インドネシア担当 1 名、国内事業部中小企
業支援担当 1 名の計 6 名の JICA 職員向けに、
千葉商業高校で建設中のプラスチック製地下貯
留施設の現地見学会が開催された。
■普及啓発のための各種事業等
*‌「雨水利用推進法」周知シンポジウム
(2014.10.8)
“雨活新時代を迎えて”~雨水とその利用推
進法の活用を考える~と題したシンポジウムが
雨水ネットワーク会議主催により、中央大学駿
河台記念館で開催された。当協会はネットワー
ク会議世話人会メンバーとして開催運営に協力
し、また屋井技術部長が雨水事業の視点から講
演した。
(参加者:91 名)
*社外講演
① 下水道事業団研修(2014.10.8)
‌ 平成 26 年度計画設計コース総合的な雨水
対策において、屋井部長が「雨水流出抑制の
解説」と題して、地方公共団体の下水道担当
職員に対して講演した。 (研修生:36 名)
② 会員企業への出前講座(2014.10.10)
‌ 会員企業であるホクコンの社内講習会にお
いて、屋井部長が技術系職員に対し「総合的
な雨水対策」と題して講演を行った。
(参加者:40 名)
* JICA キューバ研修生来協(2014.10.16)
「キューバ地下帯水層への塩水侵入対策・地
下水管理能力強化プロジェクト」
(JICA )の一
環で、キューバから 6 名が来協し、忌部常務理
事が「日本における雨水貯留浸透施設の歩みと
展望」と題して、講義を行った。
■協会の行事
*第 7 回理事会(2014.10.14)
定款第 23 条第 4 項の規定に基づき理事会を
開催し、平成 26 年度第 1 回目の役職理事の職
務執行状況の報告を行った。
本雨水資源化システム学会(2014.11.1~11.2)
*‌日
福井工業大学で開催された日本雨水資源化シ
ステム学会の第 22 回研究発表会(参加者約 60
名)において、屋井部長が「個人住宅での 30
年間の雨水活用実践における水収支に関する考
察」と題して口頭発表を行なった。
*常設委員会
・企画委員会(2014.10.2)
・編集委員会(2014.12.4)
・編集小委員会(2014.11.25)
・事業活性化委員会(2014.10.30)
*日本緑化工学会シンポジウム(2014.11.12)
日本緑化工学会都市緑化技術研究部会が主催
する「グリーン・インフラを活用した豪雨対策
の潮流」シンポジウムが新木場タワー1F ホー
ルで開催され、当協会の屋井技術部長が「日本
における豪雨対策のこれまでとこれから」につ
いて講演した。
(参加者:約 240 名)
*その他の会議、委員会等
・雨水ネットワーク会議世話人会(2014.11.5)
・BGM 研究会(2014.9.29 、10.27 、11.20)
・雨水活用建築技術規準策定小委員会
(2014.9.16 、12.16)
・‌プラスチック製地下貯留共同研究会
(2014.9.24)
*第 30 回雨水貯留浸透技術講習会(2014.11.17)
上記講習会を 11 月 17 日新木場タワー1F 大
ホールにて開催した。今回の講習会は、「気候
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水循環 貯留と浸透
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会員名簿
[正会員] 22 社
株式会社アートンシビルテクノ
株式会社IHIインフラシステム
いであ株式会社
株式会社エイト日本技術開発
エバタ 株式会社
共和コンクリート工業株式会社
株式会社建設技術研究所
清水建設株式会社
積水化学工業株式会社
タキロン株式会社
秩父ケミカル株式会社
東急建設株式会社
株式会社東京建設コンサルタント
日本工営株式会社
日本ヒューム株式会社
パシフィックコンサルタンツ株式会社
物林株式会社
株式会社ホクコン
前澤化成工業株式会社
丸栄コンクリート工業株式会社
三井共同建設コンサルタント株式会社
三井住友建設株式会社
中央開発株式会社
鶴見コンクリート株式会社
帝人フロンティア株式会社
天昇電気工業株式会社
株式会社トーテツ
東邦レオ株式会社
鳥居化成株式会社
株式会社日東
日東商事株式会社
日本雨水浸透施設工業会
日本道路株式会社
株式会社 NIPPO
株式会社ハイクレー
パスキン工業株式会社
株式会社林物産
日之出水道機器株式会社
有限会社プラネッツ
平和コンクリート工業株式会社
株式会社ホクエツ
北海道ポラコン株式会社
ポラコン工業会
松岡コンクリート工業株式会社
三井住建道路株式会社
ミニゲート研究会
株式会社明治ゴム化成
株式会社ヤマックス
リス興業株式会社
リプロントーワ株式会社
集水軒工程顧問有限公司(台湾)
道峰コンクリート(韓国)
[賛助会員]46 社
秋田エコプラッシュ株式会社
アロン化成株式会社
雨水貯留浸透製品工業会
株式会社エコマック
株式会社オーイケ
関西ポラコン株式会社
株式会社コクカコーポレーション
株式会社佐藤渡辺
株式会社サムシング
サントップエンジニア株式会社
スピーダーレンタル株式会社
世紀東急工業株式会社
積水テクノ成型株式会社
株式会社ソイルリサイクル工業
大成ロテック株式会社
一般社団法人地下貯水工法協会
「水循環 貯留と浸透」 投稿のご案内
「水循環 貯留と浸透」編集委員会では会員・非会員を問わず、以下のコーナーに掲載する原稿
を募集しています。
コーナー名
募集対象者
頁数
文字数・写真図表等の枚数の目安
2 頁:3250 字
3 頁:5000 字
4 頁:6800 字
*写真、図表は 1 点 250 字に相当
雨水貯留浸透に係わる事
業への取り組み
自治体職員
3-4
水循環レポート
自治体職員、一
般読者、NPO 関
係者等
2-3
内容
雨水貯留浸透に係わる自治
体の事業紹介
水循環に係わる活動報告
・原稿は「横書き」とし、電子データでご提出ください。
・掲載にあたっては、委員会にて原稿を確認して修正のお願いをすることがあります。
また、場合によっては掲載をお断りすることがあります。
・紙面のデザインは、編集の都合上、事務局が行います。
なお、ご不明の点がございましたら、事前に以下へお問い合わせもしくはご相談下さい。
〒 102-0083 東京都千代田区麹町 3 − 7 − 1 半蔵門村山ビル 1F
公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会 技術第二部 屋井裕幸
TEL:03-5275-9591 FAX:03-5275-9594
E-Mail:[email protected]
ホームページ:http://www.arsit.or.jp
水循環 貯留と浸透
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雨 水 協 会 の 刊 行 物 案 内
□ご希望の方は、下記申込様式により FAX または E-mail でお申込みください。
平成 26 年 4 月 1 日より改訂
○お問い合わせ・お申込み先
平成 年 月 日
公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会 総務部 宛
TEL:03-5275-9591 FAX:03-5275-9594 E-mail:[email protected]
購 読 申 込 書
*概要は http://www.arsit.or.jp「書籍」を御覧下さい。
図 書 名
判型・頁
単価(税込)
円
雨水浸透施設技術指針(案)
−調査・計画編−(増補改訂版)
A4・146
5,400
雨水浸透施設技術指針(案)
−構造・施工維持管理編−(増補改訂版)
A4・120
5,400
流域貯留施設等技術指針(案)
−増補改訂版−(CDR 付)
A4・101
4,320
戸建住宅における雨水貯留浸透施設
設置マニュアル(簡易製本)
A4・127
2,160
雨水利用ハンドブック
A4・380
6,480
雨水貯留浸透施設−製品便覧−
A4・150
2,700
雨水活用建築製品便覧(CD 版)
A・115
1,620
雨水活用建築製品便覧(簡易製本)
A・115
2,160
雨水貯留浸透施設総覧(簡易製本)
A4・429
4,320
都市の水循環再生に向けて(簡易製本)
A4・136
3,240
都市域における水循環系の定量化手法
−水循環系の再生に向けて−
A4・139
2,160
エコロジカルポンド
−計画・設計の手引−
A4・227
3,240
コミュニティポンド
−整備事例集−
A4・174
3,240
コミュニティポンド
−計画・設計の手引−
A4・188
3,240
雨水技術資料(VOL.1 〜 40)
B5
原則非売品
水循環 貯留と浸透(VOL.41 〜 95)
A4
原則非売品
数量
冊
金 額(税込)
円
合 計
◎別途送料が必要となります。
送 付 先(請求先)
住 所
お名前
または会社名
〒
ふりがな
所属部署
担当者名
(会社の場合)
TEL
FAX
E − mail
右の書類が必要な際は を付けて下さい。
(請求書等は図書に添付します)
見積書
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納品書
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
次号内容予告(第 96 号)
特集:都市水害対策の新たなステージ
■水循環レポート
□ NPO 活動紹介「空堀川に清流を取り戻す会」
■特集/報文
■トピックス
□ 次号の特集は都市水害対策をテーマに、人口減少、施設の
老朽化、豪雨の頻発、内水被害の拡大等の社会的背景を踏
まえ、今後の都市水害対策はどうあるべきかをハード面・
ソフト面から各専門分野の方々にご執筆いただく内容とし
た。
□ 研究の現場を訪ねて(40)
□ 第 1 回日韓 LID&GI 研究会セミナー(釜山大学)参加報告
■協会活動の紹介
□ 技術評価認定「ハイドロスタッフ R 工法」リプロントーワ(株)
■雨水技術コーナー
■雨水貯留浸透に係る事業及び制度
□ 若手の声(38) 前澤化成工業(株)
□ 出版物・文献紹介コーナー
(シリーズ NO.53) □ 名古屋市における浸水対策 名古屋市下水道計画課(予定)
「水循環
編集委員長
守 田 優
編集副委員長
二 瓶 泰 雄
アドバイザー
梅 田 和 男
委
員
貯留と浸透」編集委員会
「水循環
委
芝浦工業大学
工学部 土木工学科 教授
員
長
委
員
グエン・ソン・フン
酒 入 修
川 崎 将 生
国土交通省 国土技術政策総合研究所 水循環研究室 室長
本 庄 正 良
久 保 田 勝
東北電力(株)顧問
三 好 祥 太
栗 原 秀 人
メタウォーター(株)技監
吉 田 寿 人
小 林 一 浩
東京都 建設局 河川部 計画課 課長
中 嶋 規 行
日本工営(株) 国内事業本部 事業企画室長
日本下水道事業団 理事
編集後記
山 下 武 宣 (独)都市再生機構 都市施設部 部長
若 山 清 海 (公社)日本河川協会 嘱託
(敬称略 五十音順)
VOL.95
水循環 貯留と浸透
Journal of HydrologicalSystem
(株)建設技術研究所
東京本社 国際部 顧問
三井住友建設(株)土木本部
営業推進部 副部長
(公社)雨水貯留浸透技術協会
水循環アドバイザー
(株)ホクコン 技術開発チーム サブリーダー
秩父ケミカル(株)
専務取締役 営業開発本部長
(敬称略 五十音順)
長 島 修 一 (財)日本建設情報総合センターコリンズ・テクリスセンター 参事
森 岡 泰 裕
三井共同建設コンサルタント(株)
大 久 保 純 一 東京事業本部 河川計画グループ 主任技師
国土交通省 水管理・国土保全局 治水課
堤防構造分析官
元清水建設(株)技術研究所
日本工営(株)
国内事業本部 事業企画室長
中 嶋 規 行
東京理科大学
土木工学科 准教授
三 宅 紀 治
貯留と浸透」編集小委員会
今年の干支は未(ヒツジ)
、
“家族の安泰と平和の象徴”と言
われる。
十二支の動物にまつわる逸話は結構面白い。動物たちに元旦
の朝に挨拶に来るよう神様がお触れを出した。良くある逸話は、
子(ネズミ)は一番早く着いた丑(ウシ)の背中に乗って神様
の前でヒョイと飛び出し一番乗りとなった。猫はネズミに騙され
1 日遅れで到着し、神様から「何を今頃、顔でも洗って出直し
て来い!」と言われ十二支からは外れた。それ以来ネズミを追
いまわし、よく顔を洗うようになったとか。亥(イノシシ)は一
番早く着いたが、猪突猛進で神様の前で止まりきれず行き過ぎ
てしまい、慌てて引き返したが、結果はビリ
(12 番目)となった。
申
(サル)と戌
(イヌ)は途中喧嘩ばかりし酉
(トリ)が仲裁に入っ
たが、結局三者とも遅れ、申
(9)
・酉
(10)
・戌
(11)の順番となっ
た…等々。
発行日:2015 年 1 月 16 日(通巻 95 号/年 4 回発行)
編 集:公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会
「水循環 貯留と浸透」編集委員会・編集小委員会
発行人:公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会 忌部 正博
〒 102 ー 0083 東京都千代田区麹町3丁目7番1号(半蔵門村山ビル1階)
TEL:03 ー 5275 ー 9591 FAX:03 ー 5275 ー 9594
E - mail:[email protected] URL:http://www.arsit.or.jp
国際標準逐次刊行物番号 ISSN 1346 − 6089
水循環 貯留と浸透
2015 vol.95
ASSOCIATION FOR RAINWATER STORAGE AND INFILTRATION TECHNOLOGY
3-7-1,Kouji-Machi Chiyoda-Ku,Tokyo Japan 102-0083
- 60 -
ISSN 1346-6089
水循環
貯留と浸透
第
号
95
水循環 貯留
と浸透
特 集 / この
Journal of Hydrological System
ARSIT
Association for Rainwater Storage
and Infiltration Technology
年の東京の水環境を振り返る∼2020東京オリンピックに向けて∼
50
特集/この50年の東京の水環境を振り返る
∼2020東京オリンピックに向けて∼
Special Edition : Look back on the last 50 years of the Water environment in Tokyo
∼towards the Tokyo Olympic 2020∼
http://www.arsit.or.jp
公益社団法人
雨水貯留浸透技術協会
15
’
2015
VOL.
95
公益社団法人 雨水貯留浸透技術協会
ASSOCIATION FOR RAINWATER STORAGE
AND INFILTRATION TECHNOLOGY