最適化した位相同期回路を組み込んだ タイムデジタイザ - Open-It

最適化した位相同期回路を組み込んだ
タイムデジタイザの開発
!
名大理A、Open-ItB、KEK素核研C
臼井主紀AB、戸本誠AB、堀井泰之AB、小野木宏太AB、
佐々木修BC、田中真伸BC、田内一弥BC
Introduction
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タイムデジタイザ(TDC)は、多くの物理実験で使用されている
要求時間分解能
・ATLAS MDT:約250 ps
・Belle ll TOPカウンター:50 ps
位相同期回路(Phase Locked Loop;PLL)を用いたTDCの構成
利点:ICプロセスの微細化に伴い、高速動作が可能
目標
・PLLを用いて、O(100) psの時間分解能を持つTDCをASICで開発する
・プロセスによる高速化の限界を調べる
- 使用プロセス:Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd(TSMC社)
180nm( Lmin=180nm)
PLLを用いたTDCの構成
!
!
!
!
!
インバータ2個分の遅延時間
!
= 刻み時間
!
!
!
!
!
!
!
利点:基準クロックに対して、周波数がN倍のクロック信号を生成できる
基準クロックで動作をモニターでき、温度変化や電源電圧変化に強い
→ 校正が簡単
多チャンネル化が容易
TDCの時間分解能には、電圧制御発振器のインバータの性能が大きく寄与する
3
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PLLの測定結果
制御電圧[V]
Vcon [V]
出力周波数[MHz]
out.clk[MHz]
前回の学会で報告した(2014年秋期学会 21aSG04)
!
500
1.8
! 450 測定値
測定値
1.6
! 400 期待される値
期待される値
1.4
350
!
300
1.2
! 250
1
! 200
0.8
150
!
100
0.6
! 50
0.4
! 00 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
50 100 150
ref.clk × 32[MHz]
!
入力周波数[MHz]
10
200
250
300
350 400 450
Frequency [MHz]
入力周波数[MHz]
!
・最小刻み時間 約83 ps(基準クロック11.5 MHz入力時)
・ジッタ 19 ps - 25 ps(基準クロック11.5 MHz入力時)
!
※約370 MHz以上(制御電圧:約0.72 V)で動作しない原因はレイアウト時の
寄生容量
5
TDCの測定結果
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信号検出部分は期待通りの出力波形を確認できた
データ信号
クロック信号
信号検出タイミング
問題点
デジタル出力が測定できない
原因
MOSFETのサイズを誤ったため、クロック信号がDFFに入力できていない
→ 信号検出部分の出力から時間分解能を導出する
6
時間分解能
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導出方法
データ信号をあるクロック信号の立ち上がり(A)まわりでスキャンして、検出するか
どうか調べる
データ信号
クロック信号
A
B
出力
(Aで検出)
出力
(Bで検出)
NB
NA + NB
検出回数 NA
検出回数 NB
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
DATA input timing [ns]
遅延時間[ns]
誤差関数をフィッティング
!
!
bが時間分解能
→ 134 4 ps
刻み時間(約83 ps)とジッタ(約20 ps)
に対して大きい
7
DFFのアナログ特性
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時間分解能悪化の一因として、DFFのアナログ特性が考えられる
DFFの構成
CK
!
データ信号
!
!
CK
CK
!
!
!
CK
!
データ信号のゆらぎ(10ps)が、
約100psのずれとして出力される場合
がある
改善策:
クロックドインバータの応答速度
を早くすれば、出力のずれを解消できる
注意点
消費電力、サイズ、レイアウト
CK
Q1
Q2
CK
CK
CK
Q1
Q2
約100 ps
Q1
Q2
約0 ps
電圧制御発振器の改良(差動型)
time step[ps]
刻み時間[ps]
さらに高時間分解能にするため、PLLの刻み時間を向上させる
1. 差動型電圧制御発振器
利点
・コモンモードノイズを打ち消せる
・偶数個のインバータで構成できるので、出力を8bitや16bitにしやすい
注意点
・信号線のレイアウト
・消費電力
100
通常型
差動型
90
80
70
60
50
40
最小刻み時間
30
53 ps→18 ps
20
10
0
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
Vcon[V]
制御電圧[V]
8
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電圧制御発振器の改良(抵抗挿入型)
time step[ps]
刻み時間[ps]
2. 抵抗挿入型電圧制御発振器
(L Perktold and J Christiansen 2014 JINST 9 C01060)
利点
・刻み時間の分割数を抵抗の数で決められる
注意点
・抵抗のサイズ
・レイアウト
100
90
通常型
抵抗挿入型
80
70
60
50
40
最小刻み時間
30
53 ps→26 ps
20
10
0
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
Vcon[V]
制御電圧[V]
9
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まとめ
10
10
位相同期回路を用いて汎用タイムデジタイザの開発を行なった
・位相同期回路
最小刻み時間:83 ps
ジッタ:19 ps - 25 ps
・タイムデジタイザ
時間分解能:134 4 ps
→ 様々な高エネルギー実験に使用できる可能性を示した
!
次期チップ製作に向けた提案
・Dフリップフロップのアナログ特性を考慮した設計
・電圧制御発振器の改良
- 差動型
最小刻み時間:18 ps
- 抵抗挿入型
最小刻み時間:26 ps
本研究を基礎とすれば、約20psの時間分解能をもつ汎用タイムデジタイザが開発
可能であることを明らかにした
backup
クロックドインバータ
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パラメータ(上のMOSから順に)
改良前
改良後
L=180nm
W=8um
L=240nm
W=60um
L=180nm
W=8um
変更なし
L=180nm
W=4um
変更なし
L=180nm
W=4um
L=240nm
W=30um
・電流量を増やすようにWを変更
・電源ノイズを考慮して、Lは最小値を避ける
240 nmは、電圧制御発振器のインバータ
を参考にした