[4] 知識ベースのゲート・システム設計と解析の連携 鹿取事務所 鹿取 貞夫 はじめに Cast-Designer は有限要素法(FEM)による、精度の高い、複数の方案を短時間に作成して比 較検討し、ダイカスト設計と解析を高速化するソフトウエアである。設計初期段階で、下流工程の 情報をゲート・システム設計に反映できる。Cast-Designer はそれを可能にする設計と解析の連携シ ステムを持つ、業界唯一のソフトウエアである。 Cast-Designer は①ゲート・システムを設計する CAD 機能「Cast-Designer Basic」と、②高度の ダイカスト解析機能「Cast-Designer CPI」の 2 つのプログラムから成る。それぞれを別々に提供するこ とも可能である。 Cast-Designer “Basic”は高圧ダイカスティングのゲート面積と配分を知識ベースに基いて自動的 に計算する。次いで、オーバフロー、ベント、ランナ、スプルーの設計を行う。 今回はこのゲート・システム設計機能について説明する。 設計の基本的な手順 Cast-Designer Basic による、ゲート・システム(ゲート、ランナ、スプルー、オーバフロー、ベント)設 計は、次の基本的な基準と手順に従う。 作成された初回のゲート・システム方案を、解析システム Cast-Designer CPI で高速に解析する。 結果を Cast-Designer Basic に再帰して修正を加える。この時、後工程で予想される問題の解消 を図る。その連携を実際に可能にするため、複数回の解析を短時間で遂行できる高速のファスト・メ ッシュ解析法が Cast-Designer にある。 ダイカスト・システム解析の目的は最適加工条件の探索にある。それは結局、加工設定とゲート・ システム設計の間でする試行錯誤のプロセスなのである。 ゲート・システムを設計する カスティングの重量、肉厚からインナゲート(湯口)の面積が自動的に算出され、分岐に従って適 正配分される。材質、マシン、プランジャ直径、肉厚にもとづく速度が考慮されている。オーバフロー、 ベントは標準モデルを修正して配置する。ランナ、スプルーには線描のドラフト設計、および、断面サイ ズ、形状等を自在に修正、移動できる弾力的な CAD 機能がある。 以上の設計は初心者も 10 分以内で完了できる。既存方案のテンプレート集を利用すれば数分 で全ての設計を完了する。別途提供されているワンボタン設計テンプレート集は、新規方案を瞬時 に試作するツールである。パラメトリックに修正して数分で方案を完成する。 ランナ・システムを設計する ランナ・デザインは、プランジャ、ショット・スリーブ、圧力を参照する。ホットチャンバの場合はノズル・ サイズを参照する。マシン条件の適否検討またはマシンの選択は P-Q プロット(図 1)を利用して「プロ セス・ポイント(赤線ボックス内)」を求める。殆んどのメーカーのマシンのデータがライブラリにある。無い 場合は、類似マシンから数値を利用する。 Cast-Designer は P-Q プロットによる速度、圧力、マシンの検討を推奨する。 カステ スティング図形 形を考慮: カス スティング・シス ステムの設計は、コア・スラ イド、冷 なカステ 却チャ ャネル、特に肉 肉厚、形状と位置が微妙な ィング グ・フィーチャ、キ キャビティ数、取出しのそれ れぞれを 考慮する必要があ ある。カスティン ング終了後の の、操作、 バリ除 除去、ゲート外 外しも考慮する必要がある る。このた め、設 設計と解析の間を迅速に往 往復する必要 要がある。 にこれらの往復 復と調整 Caast-Designer には短時間に の完了 了する十分な な速度がある。 。設計者はこ この時、 次のこ ことに留意する る必要がある る。 ラン ンナは均一なフロー・レート トを確実にする る。ベスト の加圧 圧、安定的な なメタル圧およ よび速度を維 持するこ とを目 目指す。 ベン ントとオーバフ フローは充填状 状態に直接影 影響する ので設 設計段階で十 十分検討する る。コストにも影 影響する。 図 1 PQ プロ ロット マシン ンの制御特性 性を考慮してエ エアとガスのコン ントロー ルをは はかる必要があ ある。これらの の全てを Castt-Designer CPI C で解析し して設計に反映 映する。 ーザーは、製品 品の外観また たは機械的特 特性のいずれか か、またはその の間の比重を を考慮し、たとえば、 ユー ①でき きるだけ高い金 金型温度、② ②できるだけ高 高い鋳造温度 度、③できるだ だけ速い射出 出速度を試行 行し、 関連するゲート・シ システム、たとえ えば、ゲートの の厚さを即刻変更する。あ あるいは、加工 工条件の一部 部を再 検討することになる る。 特 特色あるドラ ラフト設計機 機能 これ れは他の CAD D システムには は無い、Castt-Designer の新しいコンセ の セ プトで である。 設計者はアイデ デアの線を紙の の上に描き、ス スキャンしてコ コンピュータに 送るか か、ペイント・ソ ソフトを使って てコンセプトを Cast-Design ner に送る。 (図 22) Bittmap またはベ ベクタで作成し したドラフトを C CAD ベクタとしてシステムに に 読み込 込んだ後は自 自由変形、移 移動、ズーム/パ パンなどを実行する。 ラフト・デザイン ンをベ 図 2:ドラ クタでロー ードして CAD D 部品 に変換 ゲ ゲート・システ テム・アドバイ イザ ート・システム ム設計インタフェース(図 3) には、メイン・インタフェース スと、いくつかの のサブ・メニュー ーがあ ゲー る。ゲ ゲート設計、ラ ランナ設計、ス スプルー・ランナ ナ設計、ショッ ック・アブソーバ バ設計、プロジ ジェクト管理オ オプシ ョンお およびワンボタン ン設計モジュー ールである。こ これら全部を使 使う必要はな ないが、設計ア アドバイザは全 全ての 点である。 新規設計の開始点 設計アドバイザは充填時間とゲート断面面積計算に使う。また、ショット・マシン選択と P-Q 評価 を支援する。充填時間決定の計算は良く知られている J.F.Wallace と E.A.Herman の NADCA 充填 時間方程式である。 最終設計結果は(図 4)の設計シートに抽出される。キャビティ数と各ランナに対する速度比率は さらに調整できる。 (左)図 3:ゲート設計インタフェースとウィザード (右)図 4: アドバイザの結果を示す設計シート カスト・ゾーン定義 カスト・ゾーン定義は便利なツールである。カスティング図形の詳細を必要とせず、充填パターンを 表わす。複数ゲートまたは複数キャビティの充填バランスを検討できる。(図 5) 図 5: カスト・ゾーン定義 (左) カスト・ゾーン設計テーブル (中)メッシュ・モデル (右)ユーザー定義のカス・ゾーン色分け ランナ設計 一つのカスティング・システムに複数のランナを付けることができる。ランナはゲート・ランナと複数のメ イン・ランナを結合することができる。(図 6)を参照。 たとえば、一つのランナに 6 個のセグメントがある(色分け表示)。各セグメントには多数の断面があ る。これらは次のように樹状に構成される:コントロール点/断面/セグメント/ランナ/ランナ・システム/ ゲート・システム/カスティング・システム。 全ての断面のパラメタは図形テーブルでコントロールできる。ランナ設計のインタフェース(図 7)はフ ル・パラメトリックで設計されている。最初のテーブルは複数ランナ設計をサポートするためのランナのリ ストである。ユーザーは以下の操作ができる。移動/回転/ミラー/押出、ランナを結合、ランナを分割、 セグメントを結合。 図 6 のランナ構造表示 Cast-Designer は四辺形と台形の 2 種類の断面プロファイルをサポートしている。さらに複雑な形 状に調整できる。点のリストにランナ断面の全てのパラメタがある。これは Excel 表のように自由に編 集できる(図 8)。 図 8 ランナの断面プロファイル 図7 ランナ設計インタフェース ワンボタン・ゲート・システム 以上の説明はゲート・システムの標準設計法である。これに対して、Cast-Designer は別途、全く 新しい設計方法を提供する。ワンボタン設計である。豊富なゲート・システム・テンプレート・ライブラリ があり、ここから最も近いデザインをピップアップして設計を開始する。主要寸法を入力するとゲート・シ ステムが自動的に生成される。設計は非常に簡単、迅速に完了する。通常の 5 倍から 10 倍速い。 設計されたシステムは標準設計と全く同質である。 テンプレート・ライブラリ ワンボタン設計用のテンプレート・ライブラリ(図 9)は CDGL (Cast-Designer Gating system Language)で作成されている。Cast-Designer ユーザーが通常の操作結果を再使用のため保存して おくテンプレートとは別であることに注意。 HPDC と重力カスティングの両方が用意されている。 Step 1: 設計ウィザードを使う ゲート面積、ピストン直径、一般的加速比を標準設計インタフェースで定義する(図 10)。 Step 2: ライブラリからテンプレートを選択 適切なゲート・システムをライブラリから選択。複数の案を選択して、それぞれを Cast-Designer CPI(解析機能)で検討評価する。非常に複雑なゲート・システムには、複数のゲート・システムまた はテンプレートを結合することができる。 Step 3: 図形パラメタを修正 寸法を編集する方法は普通の CAD と全く同じ。リアルタイムのプレビューができる(図 11)。 Step 4: 結果を一般設計環境に送ってさらに修正 これはオプションである。そのゲート・システムが特殊か、特別な修正が必要な場合、クリック一つで 標準設計環境に送ることができる。 図 9 ワンスボタン設計用の HPDC ゲート・システム・テンプレート 図 10 ワンボタン 設計パラメタ 図 11 ワンボタン設 計パラメタ・テーブル おわりに 現在、殆どのユーザーがゲート・システムを自社所有の CAD で行っている。その CAD システムには ダイカスト・ゲート・システム設計の支援機能は無い。CAD データには多くの欠陥があって、再三の手 戻りを要し、解析への準備時間を延々と長引かせる。これを Cast-Designer による設計に置き換え れば、時間と労力を大きく節減できる。 初心者が設計し、熟練者がその先に進めれば、人員の養成と効率化を図れる。電卓片手の設 計ははるか前時代のものとなった。 鹿取事務所: 〒222-0002 横浜市港北区師岡町 1062-3 メール:[email protected] 開発元(資料提供): C3P International Software Co., Ltd. USA, Hong Kong, Quanzhou
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