19 - 都市環境学科・専攻 - 中央大学

GO18-Sat-AM-11
第 13 回日本地震工学シンポジウム(2010)
地震時斜面崩壊のエネルギー閾値についての模型実験
MODEL EXPERIMENT ON THRESHOLD ENERGY OF
SLOPE FAILURE EVALUATION DURING EARTHQUAKES
國生剛治1)、石澤友浩2)、長谷祐樹3)、山本祐美加4)、小栁智行5)
Takaji KOKUSHO1, Tomohiro ISHIZAWA2, Yuki HASE3,
Yumika YAMAMOTO4, Tomoyuki KOYASNAGI5
1) 中央大学理工学部都市環境学科、教授 工博
1
Professor, Chuo University, Dr. Eng
e-mail:[email protected].
2) 独立行政法人防災科学技術研究所、工博
2
Member, National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention, Dr. Eng.
3) 中央大学大学院理工学研究科土木工学専攻、学生
3
Graduate student,Faculty of Science&Engineering, Chuo University
4) 中央大学大学院理工学研究科土木工学専攻、学生
4
Graduate student,Faculty of Science&Engineering, Chuo University
[email protected]
5) 中央大学大学院理工学研究科土木工学専攻、学生
5
Graduate student,Faculty of Science&Engineering, Chuo University
t-koyanagi@ civil.chuo-u.ac.jp
ABSTRACT: So far, shake table tests have revealed that not only slope displacement but also the
initiation of slope failure can be uniquely determined by the earthquake shaking energy much better than
acceleration. However, the mechanism how the energy in place of the force controls the failure onset is
totally unknown. So we examine how the threshold energy of the slope failure is determined by performing
shaking table tests and static loading tests of a rigid block model resting on a sloping sand layer. As the
result, the threshold shaking energy increment for the block to start sliding may be identical to the work of
force~displacement curve of the block up to the peak force obtained from the static loading test.
キーワード: 地震、斜面安定、エネルギー
1. これまでの知見と本研究のねらい
これまで,地震による斜面安定は,一般的に土塊の力の釣り合いにより評価されてきた.これらの方
法では,崩壊の有無を判断するための滑り安全率を求めたり,Newmark 法 1)によって滑り土塊のすべり
面に沿った変位量を計算したりすることが可能である.しかし,一旦大規模な崩壊が起こった後の土塊
の変形量や流動量をこのような方法で評価することは困難である.本研究では,これまで斜面崩壊のエ
ネルギーバランス 2)を用いて,エネルギーの観点から流動変形量を定量的に評価することを目指し,振
動台を用いた模型実験を行い,単純な剛体ブロックモデルにより流動距離を評価できることを明らかに
してきた 2).さらに崩壊が始まる閾値についても通常使われている加速度よりも振動エネルギーの方が
適していることも明らかになった.その実験結果の概要を以下に述べる.
-3004-
図 1 に示すような板バネ支持式小型振動台の上に
矩形アクリル土槽を載せて模型斜面を作製し,振動台
を水平方向に初期変位 u0 まで引張り,切離すことによ
り模型斜面に自由減衰振動を与える.模型斜面は,土
槽内に豊浦砂を用い作製した.また斜面変形に使われ
るエネルギーだけを抽出するために,模型斜面と同じ
重量のコンクリート円柱からなる剛体モデルを用い同
様な実験を行った.これら 2 つの減衰振動波形を比較
することにより,斜面の滑動に使われる振動エネルギ
ーEEQ を算出した.
図 1 板バネ支持式小型振動台
図 2 は,模型斜面表面の水平変位δrs と振動エネル
ギーEEQ との関係を示している.図より,斜面変位が振動数 f にほとんどよらず,エネルギーにより 1
本のカーブでほぼ近似できることがわかる.また近似曲線は縦軸の原点より上を通り,斜面の変形が生
じ始める振動エネルギーの閾値が存在し、その値は f によらず一意的に決まることがわかった 2).
図 3 は,各試験での最大加速度(a)MAX(1 波目の値)と平均変位量δrs の関係を示している.加速度と
変位量の関係は入力振動数により変化し,崩壊が始まる閾値も加速度では一意的に決まらず,エネルギ
ーのように普遍的な関係は見られない.このように加速度よりエネルギーを用いることで,斜面の流動
変位だけではなく滑り始める閾値も一意的に評価できることがわかった 2).
しかし,斜面崩壊の閾値がなぜエネルギーで一意的に決まるのかその根拠は解明されていない.そこ
でここでは,
砂斜面上で剛体ブロックモデルを滑動させる振動台実験と,水平力による引張実験を行い,
両実験を比較することで斜面崩壊の閾値がどのような条件で決まるかを検討した.
3.0
斜面角度θ :29°
f1≒2.7Hz
f2≒2.5Hz
f3≒2.2Hz
f4≒2.0Hz
2.5
:
:
:
:
斜面角度θ :29°
f1≒2.7Hz
f2≒2.5Hz
f3≒2.2Hz
f4≒2.0Hz
600
500
(a)MAX (gal)
EEQ (J)
2.0
700
1.5
1.0
0.5
:
:
:
:
f1≒2.7Hz
f2≒2.5Hz
400
f3≒2.2Hz
300
200
f3≒2.0Hz
100
斜面崩壊のエネルギー閾値
0.0
0
2
4
δ
6
rs
8
0
10
(cm)
図 2 振動エネルギーEEQ と変位量δr の関係
0
2
4
δ
6
8
10
(cm)
rs
図 3 最大加速度(a)MAX と平均変位量δrs の関係
2.実験方法
(ⅰ)振動台実験:図 4 に示す装置のアクリル製土槽の中に豊浦砂を用いて砂地盤を作成した.この砂
地盤の密度を一定とし実験の再現性を得るため,土槽と同じ大きさの板を介してランマーにより毎回
同じ方法で締め固めを行った.このようにして作成した層厚 0.5cm~6.5cm の地盤の上に鉄製の剛体ブ
ロック(質量 15kg、大きさ 30cm×20cm 厚さ 3.2cm)を載せ,地盤の傾斜角度を 13°,15°,17°,20°
と変化させた.この模型地盤を板バネ式振動台に載せ、振動台を水平方向に一定変位まで引張り切離
すことにより自由減衰振動を与え斜面上で剛体を滑らせる(試験条件 A).この剛体ブロックを横から
ビデオカメラで撮影し,1 波ごとの変位量を計測した.また,剛体ブロックの滑りによる損失エネルギ
ーを算出するため,同じブロックを斜面に固定したモデル(試験条件 B)との対比を行った.
(ⅱ)引張実験:振動台実験での慣性力による滑りを引張実験でなるべく忠実に再現するために,図 4 と
同様に砂斜面の上に剛体ブロックを置き、モーターにより一定速度で剛体ブロックの重心を水平に引
っ張る.引張力をロードセルにより測定し,モーターによるワイヤーの引張変位は接触型変位計によ
り計測した.また,剛体ブロックの変位を非接触型変位計により計測し,力~変位関係から剛体ブロ
ックを滑動させるのに費やすエネルギーを算出した.
-3005-
アクリル土槽
100c
剛体ブロック 加速度計
m
ハンドル式
引張り装置
矩形土槽
7cm
ロードセル
切離し装置
37 cm
変位計
板バネ
図 4 振動台実験装置
図 5 引張実験装置
3. 振動台実験の結果
3.1 エネルギー算出方法
図 6 は初期変位 2.0cm で,試験条件 A,B の減衰振動波形を示している。試験条件 A, B の減衰振
動の振幅に明らかに違いがあり、この違いから剛体の滑りに寄与する振動エネルギーを算出すること
ができる.結果の一例として,減衰振動波形より算出した 1 波ごとの損失エネルギーΔWと振動台振幅
の関係を図 7 に示す.試験条件 A と B の 1 波ごとの損失エネルギーΔWA,ΔWB,さらに剛体ブロック
の滑りで消費された 1 波ごとの振動エネルギーの増分ΔEEQ をΔEEQ=ΔWA-ΔWB で計算し,それらの
値を図中にプロットしている.また,図 7 に示した1サイクルごとのΔEEQ を合計し,EEQ を算定した.
試験条件A
試験条件B
2.0
1.2
⊿WA
⊿WB
⊿EEQ
1.5
⊿WA,⊿WB,⊿EEQ(J)
変位u(cm)
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
1.0
0.8
0.6
0.4
-1.5
0.2
-2.0
-2.5
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
0.0
0.0
2.0
0.2
0.4
時間 t(s)
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
振動台の平均変位振幅(ui+ui+1)/2(cm)
図 7 試験条件 A,B の損失エネルギーの比較
3.2 層厚による違い
図 8,9 は,斜面角度が 15°,20°の振動台実験に
おける初期変位と砂の層厚が異なる実験結果に基づき,
剛体ブロックの変形量δr に対する振動エネルギーEEQ
の関係を示している.斜面角度 15°については,0.5cm
から 6.5cm までの 6 種類の層厚について実験を行った.
図 8 から分かるように,結果は層厚 0.5~1.5cm,2.0~
6.5cm という 2 つのグループに分けられる.さらに図
中の右の拡大図においても同様の 2 グループに分けら
れる.そこで,斜面角度 20°については層厚 1.0cm と
6.5.cm での実験を行った結果を図 9 に示す.両図から
分かるように,各層厚での変位とエネルギーの間に明
瞭な相関関係が見られる.さらに,図 8,9 の右側にあ
るのは各グラフの原点付近の拡大図であり,各層厚グ
ループごとに変位がゼロから崩壊が始まるエネルギー
閾値までのギャップを 2 種類の水平な帯で表している.
-3006-
1.5
0.4
層厚(0.5cm,1.0cm,1.5cm)
層厚(2.0cm,4.0cm,6.5cm)
振動エネルギーEEQ(J)
図 6 試験条件 A,B の減衰波形
0.3
1.0
0.2
0.5
0.1
斜面角度15°
0.0
0
1
2
3
4
0.0
0.0
0.2
0.4
水平変位δ r(cm)
図 8 15°における各層厚ごとの
剛体ブロックの水平変位量δr と
振動エネルギーEEQ の関係
0.6
これより,砂層が厚い方が,変位が 0 のエネルギー(ブロック滑り開始の閾値)が高くなっていくこと
がわかる.これは,層が厚い方が,ブロック滑りが起こる前に砂層内部で失われる内部エネルギーも大
きくなり,EEQ が増加していったためと考えられる.
図 10 は,斜面角度 15°,20°の振動台実験において,剛体ブロックの 1 波ごとの変位量Δδr と 1 波
ごとの振動エネルギーΔEEQ の関係を示している.横軸には動いた剛体ブロックが静止した時の変位量,
すなわちΔδr=0 と静止する一つ前の波数での変位量をとっており,縦軸にはそれぞれの波数での振動
エネルギーをとっている.この図より,15°においては 0.02J 付近が,20°においては 0.013J 付近が層
厚によらず滑り出し開始における振動エネルギーの閾値として現われていることがわかった.このよう
に,図 8,9 のように累積エネルギーに着目すれば層厚により差が生じるが,1 波ごとのエネルギーに着
目すれば層厚に関係なく滑り出し開始の閾値に差は無いことがわかる.これは滑り開始に関わるエネル
ギー損失が,剛体ブロック直下の極めて薄い砂の中で生じていることを示唆している.
3.5
振動エネルギーΔ EEQ(J)
0.3
2.5
2.0
0.2
1.5
1.0
0.1
0.08
0.08
0.08
0.08
0.06
0.06
0.06
0.06
0.04
0.04
0.04
0.04
0.02
0.5
0.0
斜面角度20°
(層厚6.5cm)
層厚1.0cm
層厚6.5cm
3.0
振動エネルギーEEQ(J)
斜面角度15°
斜面角度15°
斜面角度20°
(層厚0.5cm,1cm,1.5cm) (層厚2cm,4cm,6.5cm)
(層厚1cm)
0.10
0.10
0.10
0.10
0.4
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
0.02
0.0
0.0
0.2
0.4
0.02
0.02
層厚2cm
層厚4cm
層厚6.5cm
層厚0.5cm
層厚1cm
層厚1.5cm
斜面角度20°
層厚1cm
層厚6.5cm
0.00
0.00
0.00
0.00
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8
0.6
水平変位δ r(cm)
水平変位Δ δ r(cm)
図 9 20°における各層厚ごとの
剛体ブロックの水平変位量δr と
振動エネルギーEEQ の関係
図 10 15°,20°における1波ごとの
剛体ブロックの水平変位量Δδr と
振動エネルギーΔEEQ の関係
3.3 斜面角度による違い
図 11 は,層厚が 6.5cm での振動台実験における斜面角度ごとの変形量δr と振動エネルギーEEQ との関
係である.図 8,9 と同様に各ケースとも明瞭な相関関係が見られ,また角度が高くなるほど少ない振動
エネルギーで多く滑動することがわかる.これは重力による位置エネルギーが大きくなり滑りやすくな
るためと考えられる.またδr=0 付近の拡大図からわかるように滑り出しの閾値についても角度が高く
なるほど閾値が小さくなる傾向が見られた.図 12 は,同じく層厚が 6.5cm での 1 波ごとの変位量Δδr
と 1 波ごとの振動エネルギーΔEEQ の関係を示している.やはり重力の影響を受けて,図 11 での累積エ
ネルギーに着目したときと同様に、角度が高くなるほど閾値は小さくなる.
3.0
θ =20°
0.07
0.07
0.07
0.07
0.06
0.06
0.06
0.06
0.05
0.05
0.05
0.05
0.04
0.04
0.04
0.04
0.03
0.03
0.03
0.03
0.02
0.02
0.02
0.02
0.5
0.01
0.01
0.01
0.01
0.0
0.00
0.00
0.00
0.00
0.0 0.1 0.2 0.3
0.0 0.1 0.2 0.3
0.0 0.1 0.2 0.3
0.0 0.1 0.2 0.3
2.0
=20°
=17°
=15°
=13°
0.3
1.5
振動エネルギーΔ EEQ(J)
2.5
振動エネルギーEEQ(J)
層厚6.5cm
θ =17°
θ =15°
θ =13°
0.4
θ
θ
θ
θ
0.2
1.0
0.1
0
2
4
6
8
10
水平変位量δ r(cm)
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
水平変位量Δ δ r(cm)
図 11 層厚 6.5cm における各斜面角度での
剛体ブロックの水平変位量δr と
振動エネルギーEEQ の関係
図 12 層厚 6.5cm における各斜面角度での
1波ごとの剛体ブロックの水平変位量Δδr と
振動エネルギーΔEEQ の関係
-3007-
4.引張実験の結果
4.1 力~変位カーブとエネルギー算出方法
実験結果の一例として,図 13 に力,剛体ブロックの水平変位,モーターの変位の時刻歴を,図 14
にワイヤーの力と剛体ブロックの水平変位の関係のグラフを示す.図 14 から,剛体ブロックが動き出
してからごくわずかな変位で引張力はピーク値に達し,その後徐々に低下することがわかる.また、図
15 は,層厚の違いに関するすべての引張実験結果の重ね書きであり、斜面角度θ=20°における力~変
位カーブを層厚,引張速度ごとに異なる色の線で表したグラフである.全てのカーブで剛体ブロック
が動き出してから 0.2~0.8mm のわずかな変位により一旦ピークを示してから低下しており,力がピー
クを示す変位を対応する色の矢印で示している.この図からわかるように,各層厚ごとに 5mm/s のケ
ースの方が,1mm/s のケースに比べ小さな変位で引張力が最大となる傾向が見られた.また,図 16 は層
厚 H=6.5cm における力~変位カーブを斜面角度,引張速度ごとに異なる色の線で表したグラフである.
斜面角度が大きくなるほど,ピークでの力の大きさは低下する傾向が見られる.この動き出してから
最大値に達するまでのエネルギーは,斜面上のブロックが振動時に滑動開始するエネルギー閾値に関係
していることが推察される.そこで,図 14 の斜線部分のエネルギーESE とし,これに着目して以後の検
討を行った.
70
50
引張力
剛体ブロックの水平変位
モーターの変位
60
70
60
40
40
30
20
引張力(N)
50
30
変位(mm)
引張力(N)
50
20
40
30
20
10
10
10
0
0
0
1
2
3
4
0
5
0
図 13 各計測値の時刻歴
2
3
図 14 剛体ブロックの水平変位と力の関係
70
70
15°層厚(0.5cm,1.0cm,1.5cm)
15°層厚(2.0cm,4.0cm,6.5cm)
20°層厚(1.0cm)
20°層厚(6.5cm)
60
斜面角度13°層厚6.5cm
斜面角度15°層厚6.5cm
斜面角度17°層厚6.5cm
斜面角度20°層厚6.5cm
60
50
引張力(N)
50
引張力(N)
1
剛体ブロックの水平変位(mm)
時間(s)
40
30
40
30
20
20
10
10
0
0
0
1
2
0
3
剛体ブロック変位(mm)
1
2
3
剛体ブロック変位(mm)
図 15 引張実験における力~変位関係
(層厚の違い)
図 16 引張実験における力~変位関係
(斜面角度の違い)
4.2 層厚による違い
次に,図 17,18 は斜面角度 15°,20°の場合についての引張実験より求めた静的エネルギーESE と,
力が最大値となった変位との関係を示している.力が最大となる変位 δp が大きくなるほど ESE がゆるや
かに増加する傾向が見られるが,以下では ESE のみに着目し,その値の範囲(上限~下限)を水平破線
で,平均値を矢印で図中に示している.これより,層厚にほとんどよらず,θ=15°においては 0.019 J
が,θ=20°においては 0.014 J が,静的エネルギーESE の平均値となる.
これを振動台実験結果と比較するために図 10 に示したθ=15°と 20°での 1 波ごとのエネルギー閾値
ΔEEQ を図 17,18 に水平な帯で重ね書きしている.これより斜面角度ごとに,振動台実験において滑り
出し開始の閾値となる 1 波ごとのエネルギーΔEEQ とほぼ同等な値となることがわかる.
-3008-
0.030
0.020
斜面角度15°
斜面角度20°
0.025
静的エネルギーESE(J)
静的エネルギーESE(J)
0.015
0.020
0.015
0.010
θ =15°
H=0.5cm,1.0cm,1.5cm
H=2.0cm,4.0cm,6.5cm
H=0.5cm,1.0cm,1.5cmにおけるΔ EEQの閾値範囲
H=2.0cm,4.0cm,6.5cmにおけるΔ EEQの閾値範囲
H=0.5cm,1.0cm,1.5cmにおけるESEの平均値
H=2.0cm,4.0cm,6.5cmにおけるESEの平均値
H=0.5~6.5cmにおけるESEの平均値
0.005
0.000
0.0
0.5
1.0
0.010
0.000
0.0
1.5
θ =20°
H=1.0cm
H=6.5cm
H=1.0cmにおけるΔ EEQの閾値範囲
H=6.5cmにおけるΔ EEQの閾値範囲
H=1.0cmにおけるESEの平均値
H=6.5cmにおけるESEの平均値
H=1.0cm,6.5cmにおけるESEの平均値
0.005
力の最大値における変位δ p(mm)
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
力の最大値における変位δ p(mm)
図 17 15°における力の最大値での
変位と静的エネルギーESE の関係
図 18 20°における力の最大値での
変位と静的エネルギーESE の関係
4.3 角度による違い
図19は斜面角度θをパラメータとした場合の層厚
0.040
層厚6.5cm
6.5cmでの引張実験における静的エネルギーESEと,
0.035
その最大値をとる点までの変位の関係を示している.
0.030
この図には,やはり矢印により4種類の斜面角度につ
0.025
いてESEの平均値を示しているが角度が高くなるほ
0.020
ど静的エネルギーESEは小さくなることがわかった.
0.015
また,図12に示す振動台実験での1波ごとの閾値Δ
0.010
0.005
EEQを帯により重ね書きしている.θ=13°について
0.000
は多少のズレが見られるが,ΔEEQと静的エネルギ
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
力の最大値における変位δ (mm)
ーESEが斜面角度ごとにほぼ対応する値となること
がわかった.
図 19 層厚 6.5cm における各斜面角度の
つまり,剛体ブロックの力~変位関係がピークを
力の最大値での変位と静的エネルギーESE の関係
示す点までに外力がなす仕事ESE を振動台実験1サ
イクル中の振動エネルギーΔEEQが越えれば,それ以降の変位増分に対する所要エネルギーは減少する
ため滑り破壊が容易となり,実際,ブロックの滑りはこのピークの時点で始まったと推定される.
静的エネルギーESE(J)
θ
θ
θ
θ
H=6.5cm
θ =13°
θ =15°
θ =17°
θ =20°
θ
θ
θ
θ
=13°におけるΔ
=15°におけるΔ
=17°におけるΔ
=20°におけるΔ
EEQの閾値範囲
EEQの閾値範囲
EEQの閾値範囲
EEQの閾値範囲
=13°におけるΔ EEQの閾値範囲
=15°におけるΔ EEQの閾値範囲
=17°におけるESEの平均値
=20°におけるESEの平均値
p
5. まとめ
本研究では,斜面崩壊開始の閾値が加速度ではなくエネルギーEEQ で一意的に決まるメカニズムを基
本的に明らかにするために,砂層斜面上の剛体ブロックの振動実験と静的引張試験を行った.その結果
として,以下のようなことがわかった.
1) 1 波ごとのエネルギーΔEEQ に着目すれば層厚に関係なく滑り出し開始の閾値に差は生じず,またΔ
EEQ の閾値は,力~変位関係がピーク値を示すまでの静的エネルギーESE と,ほぼ同等な値となるこ
とがわかった.
2) 累積エネルギーEEQ,1 波ごとのエネルギーΔEEQ 共に,滑り出しの閾値は斜面角度が高くなるほど
小さくなる傾向が見られた.またΔEEQ の閾値と静的エネルギーESE は,斜面角度ごとにほぼ同等の
値となった.
以上より,実際の斜面においても崩壊斜面ブロックの力~変位関係がピークを示す点までの地震エネ
ルギー増分ΔEEQ によって,地震時斜面崩壊が始まる閾値が決まる可能性があることがわかった.
参考文献
1)
Newmark,N.W.:Effects of earthquakes on dams and embank -ments, Fifth Rankine Lecture, Geotechnique Vol.
11, 139-119, 1965.
2)
石澤友浩,國生剛治:エネルギー法による地震時斜面変形量評価方法の開発,土木学会論文集 C,Vol.62,論
文 No.4,pp.736-746,2006
-3009-