アジアにおける競争政策の最近の動向(平成23年11 - 公正取引委員会

官房国際課
平成23年11月7日
独占禁止懇話会
アジアにおける競争政策の最近の動向
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独禁懇190-3
(1) 多国間の取組
(2) 二国間の取組
2 公正取引委員会によるアジア市場の
競争環境整備に向けた取組
(3) インド競争法(2002年競争法)の概要
(4) 中国競争法(独占禁止法)の概要
① ASEAN,②インドネシア, ③ベトナム,④マレーシ
ア,⑤フィリピン
(2) アジアにおける競争政策に係る主な動き
(1) アジアにおける主な国・地域の競争法の整備状況
1 アジアにおける競争政策の最近の動向
2
1 アジアにおける競争政策の最近の動向
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日本
インド
韓国
台湾
モンゴル
ン ル
タイ
インドネシア
ベトナム
シンガポール
ラオス
中国
マレーシア
1969
1980
1991
993
1993
1999
1999
2004
2004
2004
2007
2010
国名
1947
成立年
競争法2010
独占禁止法
取引競争令
競争法
競争法
独占的行為及び不公正な事業競争の禁止に
関する法律
取引競争法
不当競争禁止法
公平交易法
公正取引法
独占及び制限的取引慣行法
独占禁止法
法律名
(1) アジアにおける主な国・地域の競争法の整備状況
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2007年8月,ASEAN経済大臣会合において,ASEA
N競争法専門家グループ(AEGC)の設立が決定
ブループリントにおいて,2015年までに全加盟国が競
争政策・競争法を導入するよう努力するとの記載あり
2007年12月,ASEAN首脳会議において,AECブ
2007年12月
ASEAN首脳会議において AECブ
ループリントが採択
2015年に,経済共同体(AEC)等3つの共同体から成
るASEAN共同体の設立を合意
(2) アジアにおける競争政策に係る主な動き
① ASEAN
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ICN,OECD,APEC等の国際的活動に積極的に参加
2011年,AEGC議長国を務める。
2009年以降積極的にガイドラインを策定(2009年:6
本,2010年:7本,2011年8月まで:7本)
2010年7月 企業結合規制を開始
2010年7月,企業結合規制を開始
執行当局の事業競争監視委員会(KPPU)の執行活動
が近年活発化(2007年以降毎年20件以上の違反決
定,制裁金等の累計額が約166億円)
② インドネシア
6
企業結合規制
• 現行法:当事会社の合計シェアが50%超となる場合,当該企業
結合は禁止
• 改正案:「関連市場における競争を実質的に制限することとなる場
合」といったように,企業結合により市場支配力が獲得,維持,強
化される場合を禁止
競争制限協定規制
• 現行法:行為者の合計シェアが30%以上であること等が要件
• 改正案:(i)ハードコア型を当然違法とした上,非ハードコア型の効
改正案 (i)
ド ア型を当然違法とした上 非
ド ア型の効
果要件を「関連市場における競争を実質的に制限すること」とする,
(ii)リニエンシープログラムの導入等
ベトナム競争庁(VCA)は,2010年,競争法改正の必
要性に係る評価書を商工大臣及び司法大臣に提出
③ ベトナム
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改正刑法(1957年)及び価格法(1992年)においてカ
ルテルを規制
現在,包括的競争法案が議会において審議中
2011年6月,大統領令により司法省をフィリピンにお
ける競争当局として指定
⑤ フィリピン
2010年5月,「競争法2010」が成立(2012年1月施
行予定)
2011年4月,競争委員会が設立
「競争法2010」では,反競争的な合意,支配的地位の
濫用を規定。企業結合規制はない。
④ マレーシア
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2009年5月から企業結合規制を除いて施行
11年6月,企業結合規制が施行
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2003年1月,「2002年競争法」を制定。同年10月,
インド競争委員会(CCI)を設置
従来は「1969年独占及び制限的取引慣行法」によ
り規制 規制緩和等の進行により抜本的改正の必
要性を認識
(3) インド競争法(2002年競争法)の概要
①制定経緯
2 独占禁止法の概要(執行機関)
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(2011年9月末時点。出典:CCIホームページ)
2007年の競争法改正により設立
競争審判所は,CCIの指示,決定又は命令に係る提
訴につき審理を行う。競争審判所の判断に対しては,最
高裁判所に不服申立てを行うことが可能
競争審判所(Competition Appellate Tribunal)
委員長及び2名以上6名
以下の委員で構成,その下
に事務局が置かれる。
政府機関及び専門家等
により構成される選考委員
会が推薦した者の中から中
央政府により任命
インド競争委員会(CCI)
② 競争当局
2 独占禁止法の概要(執行機関)
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• 抱き合わせ販売,排他的供給,排他的流通,取引拒絶,
再販売価格維持に係る協定
垂直的協定
• 購入又は販売価格の決定
• 市場分割
• 入札談合
反競争的協定
・インド国内の競争に対する重大な反競争効果を生ず
る又は生ずるおそれのある水平的協定及び垂直的協
定を禁止
水平的協定
③ 規制行為
2 中国競争法の概要(規制行為-1)
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「濫用行為」
不公正又は差別的な条件又は価格設定
商品の生産又はサービスの提供の制限
市場へのアクセスの拒絶につながるような慣行 等
支配的地位
①関連市場に及んでいる競争力から独立して活動
できる,②競争者,消費者又は当該市場に影響を及
ぼすことができる地位
具体的には①事業者のシェア ②事業者の規模 ③
具体的には①事業者のシェア,②事業者の規模,③
競争者の規模,④市場構造等を考慮
支配的地位の濫用
2 中国競争法の概要(規制行為-2)
12
600
集団
資産
1800
450
インド国内
(億ルピー)
売上
90(※2)
30(※1)
売上
22.5(※2)
資産
インド国内外
(億米ドル)
7.5(※1)
(※1)うちインド国内で75億ルピー以上
(※2)うちインド国内で225億ルピー以上
150
単独
合併届出基準
取締役会による合併案の承認,又は取得のための合意文
書の締結日から30日以内に,結合案の詳細を開示してCC
Iに届け出なければならない。
届け出なければならな
企業結合
インド国内の関連市場における競争に対する重大な
反競争効果を生ずる企業結合は禁止される。
2 中国競争法の概要(規制行為-3)
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直近3会計年度の平均売上高の7%(63億ルピー)の罰金
の支払命令
インド最大の不動産ディベロッパーであるDLF Limitedがその
顧客に課した取引方法が支配的地位の濫用と認定
DLF Limitedに対する件
⑤ 最近の主要事例
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CCIは,競争法の施行以降,反競争的協定:4件,支
配的地位の濫用:2件に対して法的措置(2010年9
月30日現在)
企業結合については,これまで4件の承認事例(201
0年9月30日現在)
④ 法執行状況
2 中国競争法の概要(規制行為-1)
→独占的協定・支配的地位の濫用行為のうち価格に係るもの
以外を担当
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国家工商行政管理総局(SAIC)
→独占的協定・支配的地位の濫用行為のうち価格に係るもの
を担当
国家発展改革委員会(NDRC)
→企業結合規制を担当
商務部(MOFCOM)
(4) 中国競争法(独占禁止法)の概要
① 執行機関
2 独占禁止法の概要(執行機関)
2007年8月,包括的競争法が初めて採択され,
2008年8月1日に施行
1993年,「不正競争防止法」が成立し,不当廉売,
拘束条件付販売,不当景品,入札談合等が禁止され
る。
1997年には,「価格法」の制定により,価格カルテル
年 は 「価格法
制定
り 価格カ
も禁止される。
② 制定経緯
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価格の固定又は変更
生産数量又は販売数量の制限
販売市場又は原材料購入市場の分割 等
・事業者と取引先の間における独占的協定として規制
される行為
再販売価格の固定
再販売価格についての最低価格の設定 等
独占的協定の禁止
・競争者間の独占的協定として規制される行為
③ 規制行為
2 中国競争法の概要(規制行為-1)
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・「濫用」に関する具体的な行為
・不当高価販売/不当廉価購入
・略奪的廉売
・取引拒絶
・排他条件付取引 等
・市場支配的地位
事業者が,市場において,商品の価格,数量若しく
はその他の取引条件を支配することができる地位又
は他の事業者による市場への参入を阻害し,若しくは
参入に影響を与えることができる地位
市場支配的地位の濫用の禁止
2 中国競争法の概要(規制行為-2)
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また,競争阻害的な効果を軽減するために,合併に
ついて一定の条件を付加した上で認める旨の決定を
行うことができる。
ただし,事業者が,競争促進的な影響が競争阻害効
果を明らかに上回っていること又は社会的利益に適
合するものであることを証明できたときは,当該合併
を禁止しない旨の決定を行うことができる。
企業結合(事業者集中)
競争を排除又は制限し,そのおそれのある企業結合
は,禁止される。
2 中国競争法の概要(規制行為-3)
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・行政機関による以下の行為を禁止。
事業者に対し,特定の事業者の商品のみを取り
扱うよう制限すること
特定の地域の商品について差別的な価格を設
定したり検査基準を適用したりするなどにより 地
定したり検査基準を適用したりするなどにより,地
域間における商品の自由な流通を妨害すること
他の地域の事業者に対し,入札への参加や投
資又は支店の開設等を制限すること
競争を排除又は制限する内容を含む規制を制
定すること
・独禁法執行機関は,違反行為を行う行政機関の上
級機関に対し,処理に係る意見を提出。
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行政権力の濫用による競争の排除及び制限の禁止
2 中国競争法の概要(規制行為-4)
(禁止決定)
○ カ
○コカコーラ・匯源買収審査(2009年3月18日決定)
ラ 匯源買収審査(2009年3月18日決定)
(条件付承認決定)
○インベブ・アンハイザーブッシュ買収審査(2008年11月18日決定)
○三菱レイヨン・ルーサイト買収審査(2009年4月24日決定)
○ゼネラルモーターズ・デルファイ買収審査(2009年9月28日決定)
○ファイザー・ワイス買収審査(2009年9月29日決定)
○パナソニック・三洋買収審査(2009年10月30日決定)
○ノバルティス・アルコン買収審査(2010年8月13日決定)
○ウラルカリ・シルビニット買収審査(2011年6月2日決定)
企業結合関係
・法施行以降全267件中,禁止決定:1件,条件付承
認決定:7件
④ 法執行状況
2 中国競争法の概要(規制行為-1)
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(国家発展改革委員会の研究会において公表(2010年12月)
○遼寧省における民用爆発物品協会による価格引上げ事件
○江蘇省、湖北省における塩業会社の市場支配的地位を濫用した抱き合わ
せ販売事件
○広東省における肇慶バドミントン協会による事件及び珠海保険協会が実施
した独占協定事件
独占協定事件
○広西チワン自治区南寧市及び柳州市における米粉メーカーによる価格引上
げ事件
○江蘇省鎮江市所在のネットカフェ事業者による価格カルテル事件及び茶業
協会による価格引上げ事件
○福建省アモイ市における飲食器具用消毒製品取扱業者による価格引上げ
事件
○新疆ウイグル自治区所在の乳製品会社11社による共同購入カルテル事件
価格独占規制関係
2 中国競争法の概要(規制行為-1)
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非価格独占規制関係
・国家工商行政管理総局から事件処理の委託を受け
た江蘇省工商局が,江蘇省連雲港市建築材料・建築
機器業協会コンクリート委員会及び同地区のコンク
リート事業者5社が行った生コン取引に係る市場分割
協定に対し 制裁金等 行政処分(
協定に対して制裁金等の行政処分(2010年)
年)
2 中国競争法の概要(規制行為-1)
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2 公正取引委員会によるアジア市場の
競争環境整備に向けた取組
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第7回東アジア競争政策トップ会合
(2011年9月 シンガポール)
東アジア競争政策カンファレンス
• 東アジア競争当局トップに加え,開催国の学識経
験者,産業界,他省庁の参加を得て,公開で競争
政策に係る意見交換を行う。
東アジア競争政策トップ会合
• 東アジア競争当局のトップ同士が,競争政策に対
する理解・認識を共有し,各国が直面する課題等
について自由に討論することを目的
(1) 多国間の取組
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ICN (International
(I t
ti l Competition
C
titi Network)
N t
k)
• AISUP(Advocacy and Implementation Network
Support Program)を活用
• 既存のICN成果物を活用し, 合計13回の電話セ
ミナーをVCAに実施
APEC競争政策・競争法グループ
• 競争関連当局により構成。競争法・政策に関する
意見交換,トレーニングコースを実施
• 2006年以降,当委員会が議長を務める。
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2009年5月
2009年11月
2011年6月
2011年9月
バンコク(タイ)
ジャカルタ(インド
ジ
カ タ(イ ド
ネシア)
ジャカルタ(インド
ネシア)
時期
クアラルンプール
(マレーシア)
開催地
国境を跨ぐ競争に係る問題
競争当局の設立及び組織改革
競争法の執行に係る課題
競争政策・競争法・取締機関の費用と便益
テーマ
ASEAN競争法専門家グループ(AEGC)
• AEGC主催のワークショップにスピーカーを派遣
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技術支援
• JICAの技術支援の枠組みを活用し,競争法の導
入・執行にあたっての我が国の経験・ノウハウの提
供等を目的に,訪日研修,現地セミナー,長期専門
家派遣等を実施
(2) 二国間の取組
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・日シンガポール経済連携協定(平成14年1月署名,同年11月発効)
・日マレーシア経済連携協定(平成17年12月署名,平成18年7月発効)
・日フィリピン経済連携協定(平成18年9月署名,平成20年12月発効)
・日タイ経済連携協定(平成19年4月署名,同年11月発効)
・日インドネシア経済連携協定(平成19年8月署名,平成20年7月発効)
・日ASEAN経済連携協定(平成20年4月署名,一部発効)
・日ベトナム経済連携協定(平成20年12月署名,平成21年10月発効)
・日インド経済連携協定(平成23年2月署名,同年8月発効)
経済連携協定の枠組みにおける競争政策分野での協
力
• 経済連携協定において競争政策を重要な要素と位
置付け,競争分野における協力条項等を規定
(2) 二国間の取組