高効率自動予備電離放電励起 XeCーレー 〝ー

(426)
高効率自動予備電離放電励起XeClレーザー
昭和59年8月
レーザーオリジナル
高効率自動予備電離放電励起XeC1レーザー
戸田裕三**・宮崎健創*・挾間寿文*
山田家和勝*・酒井広文*・佐藤卓蔵*
(1984年7月23日 受理)
Efficient Discharge−Pumped XeCl Laser with Automatic Preionization
Yuzo TODA**,Kenzo MIYAZAKI*,Toshifumi HASAMA誉
Kawakatsu YAMADA*, Hirofumi SAKAI*and Takuzo SATO*
(ReceivedJuly23,1984)
Considerabie improvements in e伍ciency of a compact UV−preionized dlscharge XeCHaser have been
achieved by posslble operation at re且atively』ow charging voltage V for樋gh pressure P of HCl/Xe/Ne gas
mixtures.An overall emciency of2.9%(output energy280mJ)has been obtained atレ7=18kV and P=4atm.
The maximum output energy of680mJ has been extracted with the overa且i ef5ciency ofI.8%in20ns(FWHM)
pulses at V=36kV and P=6atm.The simple design and rehable per飴rmance are described of the dlscharge
XeCI laser with no auxiliary preionization circuits.
加えて原理的な装置構成が簡単なこと,さらに
1.はじめに
レーザー媒質の取り扱いが容易なこと等のすぐ
エキシマレーザーは,紫外域で発振する高出
れた特徴を備えている。そのため最も信頼性の
力パルスレーザーとして,光化学,分光学,非
高いエキシマレーザーの1つとして,その有用
線形光学等の基礎分野だけでなく,半導体プロ
セス,材料・表面工学,化学物質の合成・精製
性が注目されており,より高性能な装置の開発
が望まれている。言うまでもなく,レーザーの
等の産業分野においても広く利用され始めてい
高性能化のためには,高効率な発振技術が不可
る1∼2}。
欠である。最近,ブルームライン回路4)や高電
実用的なエキシマレーザーとして種々の装置
圧プレパルス5愉採用した装置により,それぞれ
が考案されているが,なかでも,放電励起XeCl
1.7%,4.2%というXeClレーザーの高い発
レーザーは,高い効率での発振が可能であり,
振効率が報告されている。
*電子技術総合研究所電波電子部レーザ研究室(〒305 茨城県新治郡桜村梅園1−1−4!
**日本電池(〒601 京都市南区吉祥院西ノ庄猪之馬場町1)
*L&ser Research Section,Radio,and Opto・Electronics Divis ion,Electrotechnical Laboratory,
(1−1−4, Umezono, Sakura−mura,Niihari・gun,Ibaraki305,Japan.)
**The Japan Storage Battery co.,(1,Inobaba−cho,Nishinosho,Kisshoin,Minαmi−ku,Kyoto601,
J亀pan。)
一24一
第12巻第8号
レ ザー研究
(427)
一方,このような独立した予備電離回路を必
anode
要としない小型の放電励起エキシマレーザーも
いくつか考案されている6一141。いわゆる自動予備
C22
電離放電励起エキシマレーザーでは,単一の回
cathode
路中に予備電離用アーク,あるいはコロナ放電
部が組み込まれているため,必要とされるレー
ザーの構成部品を著しく少なくでき,装置の小
型化をはかることができる。しかし,これまで
報告されているこの型切放電励起エキシマレー
C1丁
_ 「『
ザーの効率は1.4%以下であり,その高効率化
が重要な技術課題として残されている。
∠s
一般に,放電励起エキシマレーザーの高効率
十HV
化のためには,(1)安定で一様なグロー放電を生
(a)
成・維持すること,(2)放電電流の速い立ち上り
electrodesprelomzer
electrodes
回
を実現し,放電プラズマ中へ効率良くエネルギ
ーを注入すること,(3う高密度励起により,効率
5cm 」
お
E
qJ
的にレーザー準位密度を生成することが重要で
C
C
Q
/
ある。さらに,(4)レーザー媒質以外の不純物に
」
Φ
の
o
よる光吸収や脱励起等のプラズマ内原子過程を
抑制することも,装置設計において十分考慮さ
る
れねばならない。
自動予備電離型のエキシマレーザーでは,高
効率動作の報告されているパルス整形回路・レ
ールギャップスイッチ等を備えた放電励起レー
C C C C
ザー鵬と異なり,予備電離とそれに続く主放電
が自動的に進行するため,一定のレーザーガス
圧に対して,放電開始電圧を制御することは困
難である。このことは,この型のエキシマレー
ザーでの完全なアークフリーのグロー放電の形
成・維持を極めて難しくしている。
本論文では,自動予備電離放電励起XeC1レ
ーザーの高効率動作にっいて報告する。試作し
+HV
S
(b)
Fig.1 Schematic diagrams show三ng(a)the
laser drcuit with C、==59.4nF and
C2誕54nF,and(b)a cross−sectional
v量ew o{the laser geometry.S,spark
gap switch;C,capacitors.
た容量移行型のレーザーでは,この型のレーザ
ーが本質的に備えている特徴を考慮し,高効率
電回路を構成する。その際,(3)放電電流を大き
化のための上記(1)∼(4)の要請を満たすため,以
くするため,可能な限りそのコンデンサー容量
下の点に留意した。 すなわち,(1)高気圧のレ
を大きくする。また,(4)不純物の発生を最小限
ーザーガスに対しても,一様で安定なグロー放
に抑えるため,放電管と内部の主要部をアルミ
電を生成・維持するため,最も効果的なUV予
ニウムとテフロン製部品で構成する。その結果,
備電離用アークの配置を実験的に決定する。(2〉
Xe/HC1/Neの混合気体を用いた場合,全ガス
二次側コンデンサーを放電管内部に配置し,イ
圧P−4atm,充電電圧V=18kVにおいて,最
ンダクタンスができるだけ小さくなるよう主放
高効率2.9%(出力280mJ),p罵6atm,y一
一25一
(428)
高効率自動予備電離放電励起XeClレーザー
昭和59年8月
36kVにおいて,最高出力680mJ(効率1.8%)
端子は,電極の両側に6.2cmの間隔で,,9個が
が得られた。次章において,本装置の構造と,
対称に配置されでいる。
予備電離の方法にっいて,第3章では,XeC1
C、およびC2としてセラミック(SrTio3)コン
デンサー(TDK製)を用いている。C2は,主
レーザーの発振特性にっいて述べる。
放電回路のインダクタンスを小さくするため,
放電管の中に配置されており,そのため常にハ
2、レーザー装置
ロゲン雰囲気中に曝されているが,これまでの
2.1 回路と構造
Fig.1に試作したレーザーの(a)放電回路,
ところ劣化は全く認められていない戸スパーク
および,(b)装置断面を示す。 Bg.1(a)は,
ギャップスイッチSは,市販品(Physics Inter.
いわゆる容量移行型の放電回路で,スイッチS
ぼationa1製)であるが,低電圧充電時において
が閉じるとコンデンサーC、に充電された電荷が,
も安定に動作させるため,電極間隔を6mmに短
コンデンサーC2に移行する。qとC2を結ぶ回
路の途中に小さなギャップを作っておくと,電
縮して使用している。低電圧時にはN、を,高電
荷の移行時に,そこでアーク放電が生じる。こ
入している。
のアークから放射されるUV光で主電極間のレ
ーザーガスが予備電離される・C2の電位が上昇
レーザー管の窓として,直径5cm,厚さ0.6
し,放電開始電圧に達すると,主電極問でグロ
つけられている。共振器は,一方の窓と外部鏡
圧時にはN,とSF、の混合気体を,1∼3気圧封
cmの合成石英板が,開口径2.5cmで垂直に取り
(誘電体多層膜コート,曲率半径20m)で構成
ー放電(主放電)が始まる。主放電は,C、→カ
ソード→放電→アノード→C2の閉回路によって,
した。共振器長は90cmである。レーザー出力は,
電流の立ち上り,初期電流等の特性が決定され
エネルギーメーター(GENTEC ED−500)と
ストレージオシロスコープ(TEKTRONIX464)
る。したがって,この閉回路のインダクタンス
をできるだけ小さくするとともに,一様で安定
なグロー放電を生成・維持するため,効率の良
で測定し,発振波形は,バイプラナー光電管
(浜松ホトニクス R1193U−02)とオシロス
コープ(TEKTRONIX7104)で観測した。
い予備電離をおこなう必要がある。また,C,に
蓄積されたエネルギーは,効率良くC、に移行さ
れねばならない。ここでは, そのため,C、=
2.2 予備電離
59.4nF, C2ニ54.OnFと, C,/C2(= 1.1) を
出力変動が少なく,高い効率でレーザーを発
比較的小さくするとともに12),主放電電流をで
振させるためには,予備電離の良否が大きく影
響する。Uゾ光で予備電離を行なう場合,主放
きるだけ大きくするため,C、を可能なかぎり大
レーザー管は,幅37cm,高さ17cm,全長80cm
電部は,できるだけ強く,かつ均一なUV光で
照射されるのが望ましいが,主電極と予備電離
のアルミニウム製で,6atmまでの使用に耐え
用アークピンとの相対的な位置関係によって,
られるように作られている。その有効体積は,
可能なピンの配置は制約を受けることが多い。
約151である。主電極は,幅4cm,全長60cm
本装置では,主放電電極の側面よりUV光照射
(有効放電長54cm)のアルミニウム製で,Chang
を行なうこととし,最も効果的なピンの配置を
きくした。
型16)に成形されており,その中心間隔は1.8cm
見出すため,Fig.2に示した構成について実験
である。予備電離用のピンは,黄銅とステンレ
的に検討した。
ス鋼で作られており,その一方は,テフロン製
Fig.2(a)では,予備電離用アークは,ピンと
の電流導入端子に取りっけられている。このピ
下の電極間で形成され,コンデンサーC2は,そ
ンは,円筒の中心を通るケーブルにより外部の
の電極を経由して充電される。ピンは電極の両
コンデンサーC1に結ばれている。この電流導入
側にそれぞれ9本対称に並べられており,隣接
一26一
第12巻 第8号
レ ザ
一研究 (429)
較的均一な放電を得るとともに,V>0に対し
てもレーザー発振可能であった。この場合,
Fig.2(a)におけるとほぼ同じ放電条件,p−
2atm(Pxe=20Torr,IPHcl鷺3.2Torr,He希
釈),y一一20kVにおいて,70mJの出力 (効
率0.59%)が得られた。しかし,同一のレー
ザーガスに対し,V=十20kVとすると, その
出力は44mJ(効率0.37%)に減少した。これ
(a)
(b)
は,Fig。2(a)における結果と同様, Vの極
(c)
性による予備電離の違いによるものと考えられ
Fig.2 Schematic diagrams showing three
configurations of the Preionization
る。ちなみに,Fig.2(a),(b)の配置では,
レーザーの出力変動が大きいこと,また,予備
pins.
電離用アークにより下の電極が傷むこと等の欠
点を持っている。
するピンの問隔は6.2cmである。ピン上部に,
ピンと上の電極間の絶縁破壊を防止するため,
Fig.2(c)では,Fig.2(a),(b)における欠点
テフロン板が配置されている。このとき,全ガ
ス圧p=2atm(Xe分圧Px.=25Torr,HC1分
圧PHC1=3,2Torr,He希釈),C、の充電電圧
y一一20kVで,出力35mJ(効率0.29%)が
得られた。しかし,この配置のままV>0とす
は大きく改善できる。予備電離のためのアーク
放電を,電極とは独立した専用のピンの間で発
生させるため,アークの位置をFig.2・(a),(b)
のそれに比べて高くでき,V臼<OのときUV光
がカソード(下の電極)表面近傍を強く照射す
ると主電極間でグロー放電はほとんど生じず,
る.ようギャップ位置を調整することができる。
レーザー発振は観測されなかった。この結果は,
予備電離用ピンは直径2mmの黄銅棒と直径2mm
予備電離について次のことを示している。Fig.
のステンレス鋼棒で作られており,ギャップ間
2(a)の配置では,予備電離のためのアークは,
ピンの先端と,それに最も近い下の電極面との
隔が1mmになるよう配置されている。下のステ
ンレス鋼棒の先端はカソード表面の高さと一致
間で生じる。そのため,上の電極表面近傍はU させ,カソードから0.5cm離されているQ Fig.
V光によって照射されるが,下の電極表面近傍 2(b)の場合と同じ放電条件P−2atm (Px.
一20Torr,p冠c1−3.2Torr,He希釈),yニ
は全く照射されない・V<0では,上の電極が
20kVにおいて,出力106mJ (効率0.92%)
カソードとして,また,y>0では,下の電極
がカソードとして働くため,γの極性の違いに
よる上記実験事実は,予備電離のためのUV光
が得られた。この配置では,主電極間のグロー
放電中にアークの成長はほとんど認められず,
レーザーの出力変動も±1%と非常に小さかっ
が,カソード表面近傍を強く照射するほうが,
均一なグロー放電,したがって,レーザー発振
た。このことは,レーザー発振に必要な予備電
に効果的であることを示している。また,Fig.
離が,少なくとも,電界と垂直方向に均一に十
2(a)の配置では,予備電離用ピンの間隔が広
分強く行なわれていることを示している。さら
く,光軸方向に不均一な放電が生じた。このこ
に,Fig。2(c〉の配置では,予備電離用ギャッ
とは,電極表面に残された放電によるスパッタ
プがカソードに近く,予備電離の最も必要なカ
ソード表面近傍を強いUV光で照射できるため,
リングの痕跡から知ることができた。
Fig.2(b)の配置では,アークの位置は変化
しないが,Fig.2(a)に比べて,ギャップの数
は3倍になっている。その結果,光軸方向に比
y−14kVの低い充電電圧からのレーザー発振
が可能となった。 以下に示す実験データは,
Fig.2(c)の配置によって得られたものである。
一27一
(430)
高効率自動予備電離放電励起XeC1レーザー
昭和59年8月
UV予備電離による放電励起レーザーでは,
一般に予備電離のためのアーク放電と主放電と
Fig.4は,HC1の分圧に対するレーザー出力
の間に,一定の遅延時間(0.1∼1μs)が必要
に固定し,γ一20,28,36kVの場合の出力が
である。試作したレーザー装置におけるこの遅
延時間(アークの開始から主放電の開始までの
示されている。Vが高くなるほど,HC1の最適
値は増加することがわかる。Fig.5は, Xeの
時問)は,C,における電圧測定の結果,主にV
分圧に対するレーザー出力の測定結果である。
に依存し,100∼200nsであった。
DHc1=4.OTorr,P=4atmに固定されている。
の測定結果である。PXe=40Torr,』P=4.Oatm
レーザー出力に対するPx£の最適値もPHC1のそ
3.発振特性
れに似た傾向が見られ,yの上昇と共に,PXe
3.1 ガス条件の最適化
放電励起XeClレーザー用媒質として,Ne希
500
釈ガスがその出力の増大に著しく効果的である
ことが報告されている恥21}。本装置でも,この
効果はP>3atmの高圧時に特に顕著であった。
つ
36kV
E
>
Fig。3は, P=4atm(Pxe=40Torr, PHc1=
o
4.OTorr),y−28kVのとき,希釈ガスとして
用いたHeとNeの混合比を変化させた場合のレ
ーザー出力である。Heのみの場合に比べ,Ne
のみを希釈ガスとして使用すると,出力は約2
倍増加することがわかる。それゆえ,以下では
山
匡400
28kV
z
山
ト
⊃
し
ト300
⊃
O
20kV
Neのみを希釈ガスとして用い,出力,効率等
に対する混合気体の最適化を行なった。
2 4 6
HCl PRESSURE (Torr)
He(%)
100
Fig.4
O
50
Output energy as a functi on of HCl
pressure.pke=40Torr、P=4.Oatm.
400
6QO
う
ε
36kV
>
需
o 山300
Z山
E
28kV
0>400
匡
←
⊃
ユ
←
⊃
山
Z
]
0
記200
200
5
0
0
50
20kV
100
O
Ne l%1
50 電00 150
Xe PRESSURE (Torr)
Fig.3
Output energy as a function of the
ratio of He and Ne pressure.pヌe=
40Torr,pHc1ニ4.O Torr,Pニ4.O atm,
V篇28kV.
Fig.5 0utput energy as a funct量on of Xe
pressure.PHcユ=4.O Torr,P=4。O atm.
一28一
第12巻 第8号
ザ 研究
レ
(431)
500
3.O
ヨ
E
600
400
訳
2,0
>
り
z巴
2ヒ
あ
缶400
孟
5
隻
⊃
○
]
Ne dUuent
「
>
o
匡
ロ
z
山
300一
⊃
」
←
8200
1.0
200
0
100
20 30
He diluent
2 4 6
TOTAL PRESSURE latm)
C日ARGING VOLTAGE (kV)
Fig.6 0verall efficiency and output energy
Fig.7 0utput energy as a function of total
aS a 壬UnCt呈On O∫ Charging vOltage.
pgc1罵2.O Torr,pxe=40Torr, P=
pressαre. pHc1/Pxe/PNe識0.09%/1.3
%/98,6%, y=36kV for Ne diluent
4.Oatm.
gas.PHc1/Pxe/PHe−O.13%/1,3%/
98。6%, ▽F罵28kV for He diluent gas.
の最適値も高くなる。特に,V−36kVでは,PXe
=120Torr という比較的高い値で最大出力
開始電圧が低く,同時に,放電中へ効率の良い
(580mJ)が得られている。
エネルギー注入が行なわれていると考えてよい。
3.2 高効率化と高出力化
この放電開始電圧は,同一のレーザーガスに対
しては,yが高くなっても大きくは変化しない。
Fig.4およびF量g.5の結果から,試作した
それゆえ,Fig.6において,高い・Vに対して発
レーザー装置の高効率発振および高出力発振の
振効率が低下するのは,C、からC2への初期エネ
ためのガス混合比を推定することができる。ま
ルギー移行効率が,yとともに相対的に低下し,
ず,高効率発振のためには,yは比較的低い値
そのため,C1から放電中へのエネルギー移行効
に設定する。このことは,Fig.4およびFig.5
率が,全体として低下するのが主な原因と考え
で,yの上昇に対し,出力がy2以下の依存性し
られる。
か持たないことから容易にわかる。また,PHq
=1。5∼3Torr,Px.=30∼60Torrが高効率
電流の立ち上りの速い一様なグロー放電が可
能であるならば,全ガス圧Pを高くするほど出
発振のための最適値であろう。
力の増加が期待できる。Fig.7は,Px./PHC1/
Fig.6に,レーザーの効率と出力のV依存性
PN.=1.3%/0.09%/98.6%,y−36kVにお
を示す。ここで,P=4atm,』Px.一40Torr,
けるレーザー出力の全ガス圧依存性である・圧
PHC1=2.O Torrである。レ「=15kV以下の低電
力の上昇と共に出力はほぼ直線的に増加し,
圧時からレーザーの発振が可能で,出力はVと
ともに増加するが,効率は,V−18kVで最大と
ニ6atmのとき,最大出力680mJが得られてい
る。Fig.7中には,比較のため,He希釈ガス
なり,2.9%(出力280mJ)に達している。また,
を用いた場合のレーザー出力が示されている。
y隷15∼26kVの広い範囲で,2%以上の高い
この場合,P−3.5atmで出力は最大に達し,
効率が得られている。このような低電圧充電時
Pがそれ以上では出力は低下する。これは,He
における高効率動作は,UV予備電離が極めて
効率良く行なわれていること,その結果,放電
希釈ガスの場合,高気圧下では,一様で安定な
グロー放電が得られにくいことに主な原因があ
一29一
(432)
高効率自動予備電離放電励起XeClレーザー
昭和59年8月
の
⊆
⊃ 10
0’
お
>
ト
あ
之
山
〔⊃
>
(a)
o【
田
Z
(b)
u』
1・tc酬。Dξ ・ λNQDEい・
Fig,8 Temporal history of the Xeα1αser
pulses.10nsec/div.
VERTICAL POS『TION lmml
(a)
る。実際,放電を肉眼で観察すると,P−4atm
以上では,グロー放電の一部に,アークの混在
しているのが認められた。
の
崔 10
⊆
コ
ーΩ
ロコ
>
ト
あ
Fig.8にレーザーの発振波形を示す。(a),
Z 5
UJ
出力,最高効率の得られた時のものである。レ
o
>
oに
山
Z田
ーザーパルスの半値全幅は,(a),(b)ともに20
0
(b)はそれぞれ,Fig。7とFig.6にお・ける最大
10
nsである。最大出力から計算される最大尖頭出
力は34MWである。パルス幅は,ガスの混合比
およびPやyにほとんど依存せず約20nsであっ
た(ただし,レーザーの発振しきい値に近い
0 10
HO印ZONTAL POSITION (mm}
(b)
Fig.9
Spatial output−energy distributions
along (a) vertical and (b) hor圭zontal
direct三〇ns. PHc1=4.O Torr,Pxe=60
∼14kVのときは10∼15ns)。
Torr,P=6.O atm,y=32kV.
Fig.8(a)と(b)の発振波形には,特徴的な差
が見られる。(a)は比較的滑らかな波形を示
した。Fig.9に結果を示す。 (a)が垂直方向
し,その発振持続時間は約40nsである。一方,
(放電方向),(b)が水平方向(主電極間の中心)
(b)では,発振開始後53nsのところで再び出力
の強度分布である。垂直方向は中心部で広い均
の極大が現れ,80ns以上続いている。この波形
一な強度分布を示し,電極表面近傍で急激に強
を,発振開始後孟一35nsで2分割し,2つの極
度が変化している。これに対し,水平方向は緩
大に対応する波高値を積分して相対的な出力エ
やかな強度変化を示し,中心部が最も強くなっ
ネルギーを評価すると,0<孟<35nsと35<孟
<80nsにおける出力の比は3対1となる。この
ことは,安定で一様なグロー放電が長く維持さ
均一な励起が行なわれていることを示している。
れ,そのことが,発振効率の改善に大きく寄与
ている。得られた強度分布は,ビーム断面内で
なお,主電極は,計算上,水平方向2cmにわた
り,ぽぼ一様電界が得られるよう設計されてい
るが,Fig.9(b)より得られた発振幅は, 1.2
していることを示している。
cmであった。このことは,少なくとも本装置に
お・いて,Chang型の電極が,放電断面を拡大す
3.3 強度分布
レーザービームの形と有効放電断面積を調べ
る目的のためには理想的なものではないことを
るため,空問強度分布を測定した。出力窓から
オ≒している。
2cm離れた位置に,直径500μmのアパーチ
Fig.9より有効放電体積は,電極の有効放電
ャーを置き,レーザー光の透過出力をエネルギ
長(54cm)を考慮して,1.8×1.2×54=116cm3
ーメーター(MOLECTRON J3−05)で測定
となる。したがって,本装置によって得られた
一3Q一
第12巻第8号 レーザ
単位体積当りの最大出力は5.8J/1となる。パル
ス幅を考慮すると,単位体積当りの最大尖頭出
力は290MW/1に達し,XeCl*の高密度な励起
がおこなわれていることがわかる。なお,強度
分布の半値全幅で有効放電体積を定義すると,
研究 (433)
edlted by Ch。K。Rhodes,、2nd ed.(Springer−Verlag,
Berlin,1984)p.229.
2)T。McKee and J.A.Nilson l Laser’Focus18(1982)
51.
3)佐藤:応用物理52(1983)749.
4)J.Chen,S.Fu and M。Liu:Appl.Phys.Lett,37
(1980)883.
その断面積は, 1.65×0.96cm2となり,単位
5)W。H。Long,Jr.,M J。Pummer and E.A.Stappaerts:
体積当りの最大出力は,7.9〃Z,最大尖頭出力
AppL Phys.Lett.43(1983)735.
は400MW/1になる。
6)T。S.Fablen:IEEE J.Quantum Electron・Q】E−15
(1979)31L
7)T.J.McKee,」.Banic,A.Jares and B.P。Stoiche∬:
4.まとめ
IEEE J.Quantum Electron。QE45(1979)332.
実用的な小型高効率エキシマレーザーの開発
を目的として,自動予備電離放電励起XeC1レ
ーザーを試作した。得られた実験結果は,試作
した装置が,高効率化のための設計指針をほぼ
満足していることを示している。P濫2∼6atm,
y−14∼36kVの動作範囲において,得られた
最高効率は2.9%(出力280mJ),最高出力は
8)V.Hasson and H,M.von Germaml Rev.Sci。
Instrum.50(1979)1542.
9)E,Amlandillo,R Bonanni and G Grasso:Opt
Commun.42(1982)63.
10)A.J.Kearsley,A.」.Andrews and C.E.Webbl
Opt.Commun.31(1979)18L
.11)K.Fujii,A.J.Kearsley,A.」.Andrews,K、H.Errey
and C。E.Webb:IEEE J.Quantum Electron.QE−17
(1981)1315.
12)K.H.Hohla:Laser Focus18(】982》67,
680mJ(効率1.8%)であった。
13)岸本,藤原,加藤,山中:レーザー研究9(1981)682・
試作した装置は,放電回路,構造とも簡単で,
14)桜井:レーザー研究11(1983)694,
サイラトロン等のスイッチを使用することによ
り,高くり返し動作も可能である。また,低電
圧高効率発振の実現により,充電電源等を小型
化できるとともに,電子・電気部品への負担も
軽減でき,レーザー装置自身の長寿命化をはか
れるものと思われる。
王5)M.R.Osbome and M.H.R。Hutchinson:CLEO
’84Tec難n藍cal Digest(1984)p.204.
i6)T.Y。Chang:Rev.Sci.Instrum.44(1973)405,
17)R.C。Sze:J.AppL Phys。50(1979)4596。
18)R.c.sze:IEEE J。Quantum Electron.QE−15(1979)
1338.
19)S.Watanabe,A.J.Alcock,K.E.Leopold and
R.S.Taylof:AppL Phys.Lett.38(1981)3.
20)M.Maeda,A。Takaぬashi,T.Mizunami and Y.
参 考 文 献
Miyazoe:Japan.J.AppL Phys.21(1982)1161.
21)H.Hokazono,K.Mido貞kawa,M Obar&and T。
1)K.Hohla, H.Pummer and Ch,K。Rhodes:In
Fujioka:J.AppL Phys.56(1984)680。
療6〃n6〆∠〃3θ〆&Topics in ApPlied Physics,VoL30,
一31一