大学 IR インターンシップ・ワークショップ 主催:大学情報・機関調査研究集会 大学情報・機関調査研究集会では、九州大学のご協力により、大学 IR インターンシップ・ワークショップを開催して おります。このインターンシップの目的は、意思決定に資するデータ分析をレポート形式で作成する作業を課題としてお ります。インターンシップ・ワークショップは、中2週間ほど空けて2日に分けて行います。第1日目は課題とデータ分 析の確定、その後、作業を行っていただき、第2日目に発表会といった手順です。作業中はメールや電話等での相談に応 じます。 受講前にお願いしたい事は次の3つです。 1. 課題の策定。 2. 課題に対する分析データの明確化。 3. 上記の事を記載した事前レポートの提出。 1.課題の策定 受講者は、次ページ以下に挙げる例(事前レポートのフォーマット)に習い、インターンシップで行いたい分析課題を 予め作ってきてください。分析手法については、詳しいものを挙げる必要はありません。わからなければ、打ち合わせ時 に議論しましょう。必要なことは、何が課題でどんな答えを示したいか、どんな提案をしてどのような意思決定を してほしいか、を具体的に以下のフレームに従って明確にしておいてください。また、課題が抽象的であっても、打ち 合わせの時に皆さんで深めて行って明確にして行く可能性もあります。 フレームは以下のとおりです。 ◯ この機関調査の目的 ◯ 問いの設定 ◯ 用いるデータ ◯ 予想される結論(問の回答) ○ 提案 2.分析データの明確化 用いるデータの仕様には制約があると思われますが、わかる範囲でデータを挙げてください。このとき、次の2点に注 意してデータを列挙してください。以下では、英語カリキュラムの見直しを行うための機関研究のデータ分析の例です。 1. 使用するデータは最低3項目挙げる事。 例)①平成 20~25 年に入学した学生の英語授業の成績情報、②同学生の入試成績(英語) 、③同学生の単位修得率。 2. 分析の観点については最低2項目挙げる事。この数が、レポートに付すグラフや表の数になります。 例)①英語授業の平均得点と入試時の英語得点に関する散布図および相関係数、②英語の平均得点と単位修得率の散布図と相関。 3.事前レポートの提出 上 記 2 つ を 、 次 ペ ー ジ 以 下 の フ ォ ー マ ッ ト に 習 っ て 作 成 し て い た だ き 、 第 2 日 目 の 4 日 前 ま で に [email protected] へ、件名「大学 IR インターンシップ課題」としてお届けください。 (10/10, 10/25, 11/7) 注)本来、このインターンシップは大学院共通科目の1つであり、15 コマのものを圧縮してご提供しております。よって、 この短い期間では成果を出し切れない事も想定されます。その場合は、終了後のケアも可能ですので、ご相談ください。 IR インターンシップ 課題例その1 自習時間の確保のための施策について この機関調査の目的 平成 21 年の中教審答申で指摘されている単位制度の実質化において、重視される事項の一つに授業外学習時間の確保 があげられる。以下に提示するデータを用いて、学生の自習時間がどのように確保されているか分析を行い、施策を提案 する。特に、図書館の利用を勧めて、学生の自主学習を促進したい。 問いの設定 「学生に自習学習を促す一つの施策として、図書館の利用を推進したい。以下の問いに答えよ。 」 1. 成績と図書館の利用に相関関係が見られるか(施策の妥当性) 。 2. 図書館の利用を勧めるには、どのようなことを行えば良いか(施策の具体化) 。 用いるデータ 〔客観的なデータ〕 ・ 教務データ ‥‥ 各学生の単位修得率と平均点(学生 ID 付) 。 ・ 図書館利用データ ‥‥ 認証システムによる入館時間と退館時間データ(利用時間) 。 ・ 食堂利用データ ‥‥ 学食では学生 ID カードでの支払いが可能であるので、日毎の昼食、夕食の利用データ。 〔主観的なデータ〕 ・ 学生生活調査(学生アンケート) ‥‥ 学習時間、図書館の利用、食堂の利用に関する調査結果(学生 ID 付き) 。 予想される結論(問の回答) 問への回答(分析方法)として、以下が考えられる。 1. 図書館の利用頻度と学生の成績とを散布図を示し、双方に対する回帰分析と回帰係数(場合によっては検定も行う) を示す(問1への回答) 。 2. 成績の良い学生の図書館利用時間の分布を示し、成績と利用時間の回帰を示す(問い 1 への回答) 。 3. 図書館開館時間における利用者数分布を示し、利用時間延長の検討材料とする(問2への回答) 。 4. 図書館の利用と学食の利用に相関があるか。例えば夕方から夜間にかけて、もしくは土曜日に図書館を利用した学 生が学食を利用しているかを分析し、学食の営業時間延長、拡張が有効かどうかの判断材料とする(問2への回答) 。 以上の分析を踏まえ、次のような施策を提案する。 提案例 「学生の授業外学習時間を確保する施策の一つとして、図書館の利用を促進する。その理由は、上述した IR 分析において 図書館の利用と成績には強い相関が見られるからであり、また他の分析からも図書館の利用が生活の一部となることは、 成績の向上に強く寄与できると思われる。よって、具体案としては、 (1)図書館の利用時間の延長を従来の◯時から△時 に延長する、 (2)土日の食堂の利用ができるように業者に働きかける、を提案する」 IR インターンシップ 課題例その 2 成績評価基準を標準化するためのデータ分析について この機関調査の目的 大学教育の成績評価の標準化は、そもそも教育内容の専門性と相反しており、非常に困難な課題である。しかしながら、 平成 21 年の中教審答申でも指摘されている成績評価の厳格化を実現するためには、標準化への努力は必須である。この 調査の目的は、教授会等で成績評価の標準化をすすめる議論のきっかけを作るために、学生の履修成績データを多角的に 分析・可視化する手法を提示することである。 問いの設定 「学部および全学について、成績評価の分布や単位取得状況を多角的に比較する分析を行い、その意味を示せ」 仮説を指示する分析ではなく、本課題を普遍的に観測できるような指標や分析手法を提示し、成績評価の標準化をすす めるきっかけを作ることが問への答えとなる。 用いるデータ 〔客観的データ〕全て学生 ID および所属(学部学科)付き、のデータ。 1. GPA 2. 平均得点 3. 単位修得率(=認定単位数/登録単位数×100) 〔主観的データ〕 (できれば学生 ID 付きの、もしくは学部学科別で) 1. 授業評価アンケート 2. 学習達成度アンケート 予想される結論(問の回答) 問への回答としては、データ分析の結果(グラフ)を示すこととなる。 1. 2. 3. GPA、平均得点、単位修得率の度数分布表(グラフ)‥‥階級の幅は、特異性が見える範囲で設定。 Ø グラフの一峰性‥‥でなければ、偏りが強いので、成績評価の標準化が必要。 Ø 学部ごとに層化して平均や偏差を比較。 各データを学生 ID で結合した散布図‥‥全学の傾向、および学部ごとに層化して特徴を示す。 Ø 相関係数やその検定を行い、学部ごとの回帰の傾向を示す。 Ø 多変量データがあれば主成分分析や数量化Ⅲ類で傾向を把握する。 アンケート結果と成績データの比較 Ø 可能であれば、アンケート結果と成績の相関や層別分析を行う。 提案例 「データ分析に示されたように、本学の基礎科目(英語、数学)の評価について、学部ごとにばらつきが際立っている。 分野ごとの特性もあるので、幾分かの偏りは仕方ないが、初年次の英語については成績評価の全学基準をある程度定め、 それに沿って成績評価をすべきである。これは、本学全体の教育目的に掲げている「国際化教育」の水準を全学的に挙げ ていく取組みの一つに他ならない。具体的には、TOEIC や TOFLE など外部の英語資格試験を学内に部分導入すること が考えられる。希望学生を募り、無償で受験させるなどである。ちなみに、もし、学生 20%が年に1回 TOEIC を受験し た場合受験費用は○●万円である。 」
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