1 特色検査とはこういうものです 誰もが「?」と感じる4つの疑問に答えます Q1 学力検査と、どうちがいますか? A1 「一つ上」の力を試す検査です 学力検査と大きく異なる設問、あまり変わらない設問があります。特色検査をその内容で分類します。 1 論理型 純粋に思考力を問う設問 学力検査ではあまり見ないタイプ。知識をほとんど要求せず、論理的思考のみで解決する。 公立中高一貫校の「適性検査」をかなり複雑にしたものともいえます。 2 知識+論理型 学習した知識+思考力を用いる設問 中学までに得た知識を分野に関係なく自由自在に使いこなすことが求められます。高校入試、大学入 試の小論文・総合問題などに多少似たものがありますが、特色検査ならではのパターンです。 3 学力検査型 学習した知識を用いる設問 学力検査の問題とよく似たものです。単独の教科の設問そのものであったり、複数教科の横断型だっ たりします。これはかつての「独自問題」の代替という性格があります。 Q2 どのような力が求められますか? A2 すべてにわたる速さと正確さが必要です 《全方位的能力》 1 柔軟な理解力 教科・分野が特定できないので、まず「何が問われているのか」を正確に理解することが最初に必要 です。高度な言語能力が必要です。 2 幅の広い思考力 問題解決のために、これまでに学習したすべての事柄から、使える知識や方法を探し出し、問題にあ てはめます。単なる教科横断ではなく、総合的な思考・知識を生かすものになっています。 3 速く正確な処理・表現力 多くの高校で「時間が足りない」という悲鳴があがりました。じっくり考えればできるものが……。 「速く・正確に」計算や判断、表現などの処理ができると、高得点に結びつきます。 Q3 高校選びに影響が大きいと思いますが、あえて挑む価値がありますか? A3 大いにあります。難関が目標なら、まずは挑戦すべきです これまでに述べたような能力は、残念ながら学力検査の共通問題だけを目標に学習しても、なかなか 身につけられないものです。高校卒業後の進学や社会に出てからの知的能力による活躍を考えるならば、 特色検査実施校に挑戦することは大いに意味のある選択です。 Q4 どんな学習をすればよいのでしょうか? A4 まずは模試に挑戦し、特色検査を体感しましょう 何が出るかわからない問題に対し、思考力を養成することに特化したさまざまなメニューが役立った ようです。この対策メニューを今年度、さらに強化して実施します。スタートは3月の「第 1 回神奈川 県特色検査模試」(新中2・新中3対象)。ここで特色検査がどんなものか、経験により体感してくださ い。課題や目標がより明確になることでしょう。 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 2 学校ごとに見る特色検査の「特色」 それぞれの求める生徒像・学力像が読みとれます Q1 学校ごとにレベルや内容が異なりますか? A1 大きく異なります:次の三つのタイプに分類できます 1 思考力重視型 思考力を強く要求……「論理型」と「知識+論理型」の設問が多い □横浜翠嵐 高校入試として質・量ともに全国最高レベルの難問。時間内に解き終わる だけでも偉業といえる。 □湘南 身近な現象を深く掘り下げて問う、工夫を凝らした知識+思考複合問題。 技能教科を出題。 □横浜サイエンスフロンティア 素材は理工学的。思考は国語・英語の読解という、独特 の問題。やや小論文に近い。 2 バランス型 学力検査を土台に、独特の思考要素を加える……「知識+論理型」の設問が多い □希望ヶ丘 少ない問題に各教科の知識と様々な思考パターンを巧みに配合。形式・内 容ともに標準的(英語は無し) 。 □柏陽* 前半が学力型、後半が思考型に分かれる。あまり見なれない組み合わせで まとめた教科横断型。独自問題にかえて実施する意図が感じられる。 □小田原 量が多めで、変化に富んだ素材を次々と繰り出す、頭の体操的なもの。形 □西湘(理数) 前半は独特の論理パズル、後半は理科の応用問題で、大きく性格が異なる。 式・難易度は標準的。 記述・説明問題などは無し。 3 学力検査拡張型 学力検査の延長という性格が強い……「知識型」の設問が多い □平塚江南 文系理系が比較的はっきりわかれる。どの教科をもとにしたかわかりやす く、親しみやすいタイプ。 □厚木 語学色、計算色が強く、知識をあまり求めないコンパクトな問題。英語・ 数学・国語の論理的部分の発展型。 *柏陽高校は、前回、学力検査拡張型でしたが、チーム内で検討を重ね、バランス型に変更しました。ご了承ください。 Q2 選択から論述までバラエティ豊かな問題と聞きましたが? A2 形式の面でも、学校の個性が打ち出されています 別の角度からこれらの学校ごとの特徴をまとめましょう。解答形式別の出題数とその比率です。それ ぞれに重視する要素が異なることがわかると思います。 ※表は 2 月 18 日実施の問題を、湘南ゼミナール教務部が分類・整理した結果にもとづきます。 横浜翠嵐 総数 選択 記述 計算 説明 論述 設問数 10 1 0 2 6 1 比率 100% 10% 0% 20% 60% 10% 湘南 設問数 比率 総数 選択 記述 計算 説明 論述 14 4 4 5 1 0 100% 29% 29% 36% 7% 0% 希望ヶ丘 設問数 比率 総数 選択 記述 計算 説明 論述 9 4 2 1 1 1 100% 44% 22% 11% 11% 11% 平塚江南 総数 選択 記述 計算 説明 論述 設問数 19 5 6 4 3 1 比率 100% 26% 32% 21% 16% 5% 西湘(理数) 総数 選択 記述 計算 説明 論述 設問数 6 6 0 0 0 0 比率 100% 100% 0% 0% 0% 0% 柏陽 設問数 比率 総数 選択 作図 計算 説明 論述 11 3 2 2 3 1 100% 27% 18% 18% 27% 9% 厚木 設問数 比率 YSFH 設問数 比率 総数 選択 記述 計算 説明 論述 13 1 5 6 1 0 100% 8% 38% 46% 8% 0% 小田原 設問数 比率 総数 選択 記述 計算 説明 論述 15 2 8 5 0 0 100% 13% 53% 33% 0% 0% 総数 選択 記述 計算 説明 論述 6 0 3 0 2 1 100% 0% 50% 0% 33% 17% ※比率は四捨五入のため、合計が100%でない場合があります なお、表における問題の形式分類は、次のような意味です(柏陽以外は、作図問題を記述に含めています)。 選択 記号または語群などから選んで解答 記述 語句で解答(作図を含む) 計算 計算結果を記述 作図 図で解答 説明 一文以上の長さで説明する(意見や思想は加えない) 論述 意見または思想を述べる(解答の長さとは関係ない) 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 3 学校別特徴一覧 全高校を一目で比較 はじめに全体像をつかむことをお勧めします 地区 横浜東 横浜中 横浜南 鎌倉 藤沢 茅ヶ崎 平塚 秦野 伊勢原 目標 学校名 偏差値 64 60 62 64 59 横浜翠嵐 希望ヶ丘 柏陽 湘南 平塚江南 2013年度 内申:学力:面接 の比率 2:6:2 3:5:2 3:5:2 3:5:2 4:4:2 特色 配点 検査 総合的 概要 時間 難易度 200 60 今年も時間内では解ききれないほど出題された。と、いっても10問。一般的な 学力検査とは異次元の、計算・推論・説明などが複雑多彩に組み合わされた設 8.8 問群。1問ごとの密度が非常に高い。また、英文で語注にかわって「単語集」が 添付され、さらに手順が複雑化した。トータルで見て全国最高レベル。 200 50 教科を横断し、使い慣れない思考力を駆使させる設問と、学力検査の延長線 上にある応用問題がバランスよく出題されている。英語を使っておらず、暗記 6.3 型・知識型の要素が弱く、パズル的な比較的解きやすい論理型問題が多い。 「集合」の一風変わった問題に、数学の先生方のこだわりが感じられて興味深 い。 200 50 前半はほぼ学力検査型、後半で思考力を問う独特の問題が登場。その落差の 大きさが特徴。なお、データ読み取りの問題は学力検査の国語と内容的に重 5.9 複している。全体に、情報の入力(読解)部分が平易なため、シンプルで解きや すい問題が多い。 100 60 論理的思考を要求する傾向が強い。個々の問題はコンパクトだが、複雑に組 み立てられている。ミスや時間切れの可能性が大きい。また、新聞記事の情報 6.9 操作を検証するようなものや、携帯電話の通信料の計算・説明など、日常的な 素材を掘り下げるタイプのものが多い。横浜翠嵐高校が抽象的な思考を求め るのと好対照である。 200 50 もっとも学力検査的性格が強い。前半は事実上、国語の読解問題であり、独自 問題の国語とよく似た傾向ともいえる。同様の性格が後半の理科、密度関係の 5.8 問題にもある。飛躍した思考よりも、学習内容を着実に掘り下げることを重視す る方針がうかがえる。 全体的に学力検査の応用度を高めたものといえる。内容ははっきりと英数に絞 り込まれている。設問の意図はわかりやすいので、あまり混乱することはない。 6.3 事前に公表された出題例と比べて、日常的な学習の質を高めることで対応可 能といえる。計算過程なども含めた説明式の問題が多く、その点で難しい。 県央 61 厚木 3:5:2 200 50 県西 59 小田原 3:5:2 200 50 6.5 力検査とは異なる質の思考力を判定しようという、明確な方針が感じられる。特 2013年度の各高校中唯一、一貫したテーマを持つ問題(交通)。はじめて見る 素材を、学力検査ではあまり使わない思考パターンで解決する設問が多い。学 色検査の一つの標準を示すものといえるのではないか。 西湘(理数) 県西 56 専門 学科 横浜 59 サイエンス フロンティア 3:5:2 3:5:2 100 30 前半は純粋に論理思考を要求するある種のパズル(先生の採点ミスを追及す るという素材がユーモラス)。後半は日食を素材にした理科の応用問題。思考 6.5 型の前半、学力検査型の後半とくっきりと分かれているのが特徴。また、すべ て実質的な選択問題。前半のパズルの複雑さは県下一。大人でも時間的に苦 しい。 200 60 理数系の素材を用いた小論文的な設問である点は前期選抜の時代から変わ りない。今年から英語が加わり、より総合的な問題になった。内容的には、よく 8.0 読むと国語・英語の読解力と作文など表現力が中心で、計算などの比重はそ れほど重くない。説明記述や論述問題の比重は横浜翠嵐高校に次いで大き い。 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 4 学校別・設問別分析資料の見方 全設問を「何を読み」「どう考え」「どう表現するか」で分析します。 Point 1 設問ごとに「形式」「内容(教科)」を表示します まず、形式を「選択」 「記述」 「計算」 「作図」 「説明」 「論述」に分類します。 次に、使われる教科の学力を示します。教科と結び付けにくい思考は「論理」とします。 Point 2 「読解:入力」「思考・判断」「表現:出力」に分けます 問題を解くための過程は、次の 3 段階です。 「読解」⇒「思考」⇒「表現」 この 3 段階のそれぞれで、どれくらいの手間をかけるのか、また、特に難しいポイントがある かどうかを、下図のように「色つき枠と略号」で表します。特に「思考・判断パート」は、左か ら右に、標準的な解決手順で行われる思考パターンを、1ステップごとに1枠で示しています。 Point 3 表を見れば、設問の難易度と性格がわかります 上に書いたように、複雑な分析過程を図式化していますが、難易度のイメージをつかみたい人 のためには、次の見方を勧めます。 1)色つき枠の数が多いほど難しいまたは手間がかかる 2)右に、枠の数を数えた、かんたんな難易度値を用意しました。 まずはざっとイメージして、後で詳細な仕組みを見てください。他の学校との比較も容易です。 ■今回は、柏陽高校・厚木高校・小田原高校の分析です ■横浜翠嵐 ■希望ヶ丘 ■柏陽 ■小田原 ■西湘(理数コース) ■湘南 ■平塚江南 ■厚木 ■横浜サイエンスフロンティア 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 柏陽高校 設問分析① 詳細データ 学力検査型の前半+特色ならではの後半、の「2 段構成」 全体 前半と後半ではっきり異なる性格――全体には親しみやすい 前半は国語・英語ですが、学力検査と似た性質の問題です。特色検査実施高校では、平塚江南 高校の理科系の設問と並び、もっとも学力検査色が強いものでした。後半は論理思考を要求する 独特のものですが、あまり難解な設問ではなく、落ちついて考えれば解答可能なものが多数です。 前半のデータ読み取りは学力検査の国語とよく似た、解きやすい設問でした。全体的に、思考 の確実さを判定したい、という意思が感じられます。 詳細 シンプルで考えやすい問題 総合難度【5.9】 全体に、あっと驚かされたり、どうしてよいのか見当がつかなくてフリーズしてしまうような 要素はあまりありません。表のとおり、「読解:入力」パートがごくシンプルです。練習した成 果をストレートに出しやすい設問ともいえます。 大設問 設問 分類 使用教科 問1 ア 説明 国論 □ イ 論述 国論 □ ウ 説明 英国 □ 訳 デ 問2 読1 読2 読3 1 2 3 判 変 文 判 知 文 訳 推 文 4 意 5 6 7 選択 記述 説明 論述 □ □ □ □ □ □ □ □ □ エ a∼d 選択 数国論 □ 推 判 □ ア 計算 数 □ 式 算 □ イ 選択 数 □ 式 算 □ ウ 説明 数論 □ 知 推 問3 ア 記述 数 □ 知 図 文 イ 記述 数 □ 知 変 問4 ア 選択 数論 □ 算 判 □ イ 計算 数論 □ 式 算 □ 図 難度 内容概略 7 □ 9 8 5 □ 5 4 □ □ □ □ □ 5 □ □ 6 7 4 □ 5 科学者の「幸運」がわかる箇所を 本文から探して一文にまとめる 情報の受け取り方の影響につい て、本文を踏まえて意見を書く 英文が本文のどの部分を読んだも のかを判断して記述する メディア接触時間の表から、文章 に当てはまるものを記号で答える 縮図を利用して実際の長さを計算 する 縮尺を利用して、エベレストとマ リアナ海溝の高低差を計算する 描いた円を地球と見立ててよい理 由を説明 凹んだ四角形に死角なく監視カメ ラを置く位置と見える範囲を図示 死角なく監視カメラを置くときに2 台以上必要な六角形を作図 ルールにのっとって、数を計算し ていく ルールにのっとって、逆算する 内容 前半はほぼ「学力検査」後半で「特色独自のカラー」が強まる 前半、問1は学力検査的な問題。国語の説明的文章の読解問題に、英語およびデータの読み取 りがついたものでした。なお、英文の内容は、英語の読解問題としては珍しいものではありません。 また、次のデータの読み取りも、神奈川県の学力検査の問題とよく似ています。こちらのほうが、 読み取る情報の量は多いので、やや複雑化していますが、選択問題なので、最終的にそれほど難 問ではありません。素材は、偶然でしょうが「メディア・情報との接触」というメインテーマが 学力検査の国語と重なりました。この分野の重要度がよくわかります。 後半は特色検査ならではの思考型問題が増えます。問2は、比を用いた大がかりな計算と説明 の問題。問3は美術館に監視カメラを設置する仮定で、多角形の性質を考察するもの。作図問題 で、これは柏陽高校の出題例はもちろん、他のどれとも似ていない実に独特の「パズル」です。 最後の問4は、数値の計算をアルゴリズムのフローチャート風の図にまとめ、記号化された数値 を読むという、ひとひねりした代数の問題。 以上のような前半後半の差は、事前に公表された出題例と大きく異なるものでした。問題を見 て「予想と異なる」という点で驚いた受検者も多かったようです。 柏陽高校 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 柏陽高校 設問分析② 問題例 出題例 巨大な地球を自在に縮小する思考実験 問2で思考実験的な設問が登場しました。地球の大きさを、形態の比を保ったまま自在に縮小 し、検討するという興味深いものです。 ----導入部分の要約----水を取り除いた地球の表面は滑らかというのか凸凹といえるのか。それ は「程度」の評価で決まる。そこで、紙に縮小した地球を描いた。 (ア) 直径 13cm の円を描き、これを地球とみなすとき、その上で 1mm の長さは実際の地球 上ではどれだけの長さに相当するか。実際の地球の直径は 13,000km とする。 (イ) 最も高い山はエベレスト山で、山頂の高さは 8,848m、もっとも深い地点はマリアナ海 溝にあり、最深点の深さは 10,920m である。----後略----。 (ウ) コンパスで直径 13cm の円を描いたときの線の幅を 0.3mm とする。このとき、 「この円 が地球の表面の様子を表している。 」といってよい。それはなぜかを簡潔に説明しなさい。 「比」を正しくイメージできて、計算ができるかどうかという課題です。そして最後の(ウ)は 特に興味深く、「程度」を判断するのは人間の主観であるという、ものの見方の本質に迫る内容 を含んでいます。 対策例 「比」は、多様な練習を通じて強固なイメージになる 算数・数学において「比」こそ最重要である、としばしばいわれます。たしかに「比」なくし ては代数学も幾何学(図形)も成り立ちません。ただし、日常のあらゆる場面で使う「比」だけ に、無意識のうちに流してしまうことが多いもの。きちんと練習して、自由に使いこなすまでに は至らないことが多いのです。入試の学習で「比」の応用を試みることはたいへん有意義です。 以下は、 「サンデーセミナー(特色検査対策講座) 」で使用した問題例です。 「すばる」望遠鏡の主鏡は、加工そのものの精度の高さと、アクチュエイターによる微調整に よって、空前の高精度が達成されている。主鏡の直径 8.2m に対し、表面の歪み(でこぼこ)の 許容範囲は 12nm(ナノメートル)である。 では、「すばる」の主鏡を関東平野(直径 80km)の大きさに拡大すると、歪みの許容範囲は どのくらいになるか。1nm は 10 億分の 1m として、計算過程を解答欄に書き、数値を求めなさ い。また、次の説明文の空欄[ A ]にふさわしい素材の名と、[ B ]にふさわしいでき るかぎり小さい数値を答えなさい。なお、 [ A ]の素材はあと語群から選ぶこと。 ■説明文 すばるの主鏡を関東平野だとすると、表面の歪みの許容範囲はおよそ[ [ B ]枚分である。 A ]の 一円玉(1.5mm) ・新聞紙(0.1mm)・セロハンテープ(0.05mm) ・金閣寺の金箔(0.0008mm) このような換算は、 「原子1個を東京ドームとすると、電子はグラウンドの真ん中に置いたピン ポン玉の大きさである」といったたとえでおなじみです。生徒たちは「金閣寺の……へぇ」と少々 驚き、笑いながら計算していました。 このような「比」の操作が自在にできる思考法を身につければ、難問である出題例(ウ)の解決 もできることでしょう。 柏陽高校 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 厚木高校 設問分析① 詳細データ 英語と数学に明確に分けられた学力検査型問題 全体 明確な「英数重視」の応用問題――記述中心の発展型学力検査 前半は英語、後半は数学を軸にした学力検査の発展型です。前半の最後で社会の知識を加えた 設問がある以外、ほとんど理科・社会の知識を問うものはなく、英数2教科にはっきりと絞り込ん だ設問です。旧「独自問題」にかわるもの、という性格が強い特色検査問題です。 詳細 入力は軽く出力は重い、考えやすい問題 総合難度【6.3】 まず、用いる教科の少ない点と、読解:入力パートのシンプルな点が特徴。とっつきやすい性 格といえます。思考過程のパートは標準的。表現:出力パートは記述重視です(説明は少数)。 つまり、学力検査では不足気味の「知識と思考結果を最後まで正しく記述する」点を重視してい るということです――それも、英数に絞り込んで――。 大設問 設問 分類 使用教科 読1 読2 読3 1 2 3 問題Ⅰ 問1 記述 英国 □ 訳 訳 推 文 問2 記述 英国 □ 訳 訳 問3 記述 英国 □ 訳 問4 説明 英国 □ 問5 ア 記述 英国 問5 イ 記述 問6 問題Ⅱ 問7 4 5 6 7 選択 記述 説明 論述 難度 内容概略 □ □ 7 動物が人里にやってくる理由 推 □ □ 6 ホタルについて祖父が話した内容 訳 推 □ □ 6 生態系に影響を及ぼすものを指摘 訳 文 訳 □ □ 8 さわやかな気分になる場面を英語 で書く □ 訳 訳 推 □ □ 6 風力発電の問題点 英国 □ 訳 訳 推 □ □ 6 風力発電のよい点 選択 社 □ デ 知 推 判 6 風力発電をあらわすグラフの選択 計算 数 □ 算 変 変 8 手数料ともらえる小判の額の計算 文 □ □ 算 □ □ □ □ □ 5 慶長小判と元禄小判の関係式 □ □ 6 慶長小判と元禄小判の関係式 問8 ア 計算 数 □ 変 立 問8 イ 計算 数 □ 変 算 問8 ウ 計算 数 □ 算 判 □ □ 5 慶長小判と元禄小判の数量 問9 ア 計算 数 □ 立 算 □ □ □ 6 小判の面積 問9 イ 計算 数 □ 変 立 □ □ □ 7 密度から小判の厚みを求める 立 算 内容 前半は拡大型英語、後半は拡大型数学:学力検査の発展型問題 前半、生態系と発電の問題をとりあげた英文が素材。ここに読解やデータの読み取りなどの要 素が配置されます。特徴的なのは英文を読んで、そこから読み取れることを二つ、または三つ、 日本語で書かせる設問がいくつもあること。条件を厳しくして、正確に書くことを求めています。 後半は数学です。江戸時代の通貨に関する説明を読み、通貨の単位を別のものに変換(換算) したり、金の含有量をとりあげるなど、ひとひねりした数学の応用問題と思って見ると、なかな か興味深い素材と設問です。また、計算過程を求めているので、正確に書き切る練習も欠かせま せん。 以上のとおり、厚木高校の特色検査は、英語・数学の学力検査の発展型という性格の強い問題 でした。多彩な内容の問題で「幅の広さ」や「柔軟さ」を問うのではなく、教科を絞り込み、記 述および説明型の問題を増やすことで、受検者の学力の「質」をより精密に判定しようという意 図が感じられます。 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 厚木高校 厚木高校 設問分析② 問題例 出題例 異なるシステムへの「変換」――思考の柔軟さと作業の正確さ 問題 II で、江戸時代の通貨を素材にして、貨幣単位の変換(換算)を行い、質量や面積なども 求めます。 ----慶長小判について----両替商は、両替する際に、まず先に2分5厘(2.5%)の手数料を取っ てから両替するものとします。銀 7500g を両替商に持っていき、この中から手数料を支払うこ ととしたとき、慶長小判何両分と両替できますか。手数料と、両替できる慶長小判の金額を求め なさい。ただし、1匁=3.75g として、答えを求める過程も書きなさい。 われわれの生活の中には本当に無数の「単位」が存在します。わが国の単位のほとんどは「メー トル法」によっていますが、自転車のタイヤやテレビの画面(インチ)、部屋などの面積(畳、 坪)のように、そうでない分野も多数存在します。 このような変換(換算)問題は、説明をストレートに受け入れ、しかもよく読みこみ、正確に 計算し、変換しなくてはいけません。計算問題における全方位的学力を要求するのです。 対策例 「変換問題」は、教科も分野も軽々と越境する 次の例は「サンデーセミナー(特色検査対策講座) 」の問題です。 19 世紀初頭のロンドンにおける茶は、現在と比較にならないくらい高価な商品であった。正 確な計算はできないが、紅茶 1 キログラムで、印刷工場に勤める労働者がおよそ何日くらい生活 できるかを、次のデータに基づいて答えなさい。なお、下にあるとおり、単位「ポンド」には、 重量を表すためのものと通貨(£)の2種類がある。 茶葉1ポンド(重量)の価格 印刷工場の1日の平均的賃金 1ポンド(重量) 1£(通貨ポンド) 約 1.35£(ポンド=通貨の単位) 約 15 シリング 約 450 グラム 20 シリング。 歴史の問題と思わせて、実は数学という点はまったく同じです。ポンドという単位が、重量ポン ドと通貨の£の二つあり、同時に扱わなければいけません。複雑きわまりない設問です。このレ ベルに慣れていれば、変換問題を恐れることはないでしょう。 次は『神奈川県特色検査模試』です。 フランス革命においては、あらゆる改革が急激に、徹底して行われた。 「10 進法」日時の表示 もその一つである。1 年の日数と月数を変えることはさすがに不可能なので、そのままとしたが、 各月をすべて 30 日とし、余った日は年末に集め、休日とした。各月には新しい名が与えられ、 すべての月は 3 週間にわけられた。1 週間は 10 日とし、第一曜日から第十曜日と名づけられた。 さらに、1 日を 10 時間とし、1 時間を 100 分とし、1 分を 100 秒とする計時法が定められた。 このような 10 進時間による「2時」は、現在の 24 進法と 60 進法を併用した方法によると、 何時何分になるか。午前または午後も加えた 12 時間制で書きなさい。 一見すると異なる問題に見えますが変換(換算)という視点で読めばまったく同じ原理で作ら れていることがわかります。このように、教科や分野の枠をとびこえて考える経験も、特色検査 の学習の価値の一つです(事実、このときの模試は、特に、解いていて面白かったという感想が 多く寄せられました) 。 厚木高校 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 小田原高校 設問分析① 詳細データ いつもとちがう思考力を試す力作――特色検査の標準となるか? 全体 一貫したテーマ+はじめての素材=特色検査らしさ満点の力作 全体を一貫するテーマを持つ県下唯一の問題。今回は「交通」。地味ながら、内容はよく工夫 されています。特徴は「はじめて出会う素材・内容」であること。教科書にはない事象(一部高 校内容)の説明を読み、その上で思考・判断・解答するもの。学力検査と異なりつつも、中学の レベルから離れすぎず、しかも解くことが発見につながるものです。このような解きがいのある 問題が今後、特色検査の標準となっていってほしいと思わせる力作です。 詳細 意表をつく素材をシンプルに加工:記述重視 総合難度【6.5】 素材、テーマが高度な分「読解:入力パート」はシンプルです。ただし、思考∼解答までは手 順が多く、設問数(特に記述)も多いので、時間との戦いはかなりシビアです。各分野のバラン スがよく、地理の問題で県下唯一、ローカル色が見られたのも興味深い点でした。 大設問 設問 分類 使用教科 1 2 問1 1 記述 国社 □ 図 判 □ □ 5 神奈川県の宿場の数 2 記述 国社 □ 図 判 □ □ 5 河川の名前と渡り方 3 記述 国社 □ 推 変 判 □ □ 6 問2 問3 問4 読1 読2 読3 3 4 5 6 7 選択 記述 説明 論述 難度 内容概略 4 a-c 記述 国社 □ 図 判 □ □ 5 1 記述 英国 □ 訳 訳 知 文 □ □ 7 2 記述 英国 □ 訳 訳 推 文 □ □ 7 3 ア-カ 選択 英国 □ 訳 訳 訳 推 1 時速1 計算 数 □ デ 算 判 1 時速2 選択 数 □ デ 図 立 算 判 □ 2 計算 数 □ デ 推 立 算 判 □ 3 ①-③ 記述 数理 □ デ 知 推 文 難 変 □ □ 7 □ 橋のかかっている河川をすべて書 く 絵の内容にあう河川と宿場を答え る 文意に合う慣用句を答える 英文で書かれた対話文の空欄を日 本語で書く 古文を読んで英文の空所を語群か ら選択 6 時速の計算 7 作図および時速の計算 □ 8 到着予想時刻を求める □ □ 7 エネルギーの変換 1 ①-③ 計算 数理 □ 立 算 判 □ □ 7 風と空気抵抗の関係 2点 計算 数理 □ 図 算 変 判 □ □ 7 物体の速さと空気抵抗の関係 2 作図 作図 数理 □ 算 変 判 図 □ □ 7 物体の速さと空気抵抗の関係 3 ア-ウ 計算 数理 □ 推 立 算 判 □ □ 7 空気抵抗の立式および計算 内容 前半は国・英・社、後半は理・数……いずれも教科書にない素材 総合テーマは交通。前半が文系、後半が理系の順です。 問1は江戸時代の東海道を素材にした、ある種のパズル的問題。これは読解と推論を組み合わ せたものです。なお、最後の浮世絵の問題は、複数の解法があります。①本文を読んで推測。② 切り立った山(箱根)の景色は県内では小田原くらいしかないという地理的知識で判断。③「絵 そのもの」を知っている(小田原市民の常識?)。独特の味わいがあります(不公平という声が 出るかも?) 。 問2は古文と英語の横断型。普通は、古文に現代語訳がついているものです。つまり、古文読 解を訳がサポートします。一方、これは英文に古文が添えられ、英文解釈を古文がサポートする という、先ほどのものを1段階ずらした設定になっているのが特徴です。ただし、英文は平易な ので、古文のサポートは蛇足ともいえますが……。 問3は鉄道の運行を素材にした速さの応用問題。作図もあります。 問4が今回のヤマ場。空気抵抗の説明を読み、空気抵抗のエネルギーの計算、向かい風の有無 を速度の一部として計算するなど、はじめての内容を解きながら学ぶというもの。この点で横浜 翠嵐高校の問題に近い性質です。 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム 小田原高校 小田原高校 設問分析② 問題例 出題例 空気抵抗のしくみを理解し、問題を解決する 空気抵抗自体は身近なものですが、その物理的な意味を知っている受検者は少ないはず。さら に、相対速度の概念も説明を受け、具体的な問題をいくつも解きます。「発見」と「解決」を実 感できる、特色検査ならではの「理科的な面白さ」にあふれた問題です。 ----運動する物体と空気抵抗がどのような関係にあるかを、物体の形や数式を用いて説明する およそ1ページ半の記述。その中には向かい風の速度は運動の速度と結果的に同じであることも 説明される---- その後に設問群。 図3(新幹線のようなくさび形の先端を持つ車両)と図4(在来線の列車のような直方体の車 両)のそれぞれの物体が、同じ速さ x(m/s)で動いているとする。図3の物体に対しては、速さが 2m/s の向かい風が吹いており、図4の物体に対しては、風がなかったとする。このとき、それ ぞれの空気抵抗の大きさが同じになる x の値を下の文のように求めた。----後略---- 対策例 あの星までの距離を具体的に計算してみよう! 出題例のような問題は、何が素材なのか、ということはあまり重要ではありません。大切なの は「考え方」。そして、示されたものを、速く、正確に解決することです。したがって、過去に 出た問題の「内容」を学習するのではなく、 「考え方」を身につけるよう練習すべきです。 次の例は『神奈川県特色検査模試』の問題。このようなパターンの典型です。テーマは天体間 の距離を求める方法です。 比較的近い天体との距離の測定には、「年周視差」を用いる。視差とは、同じものを2つの観 測点から見たときの方向、つまり見える角度の差のことである。 地球は、太陽の周りを1年かけて公転しているので、夏と冬とで 見える恒星の視差の半分を年周視差とする。年周視差がわかれば、 三角測量の要領で恒星までの距離を割り出すことができる。 具体的には次のように計算する。 ある恒星の年周視差が p 秒角(3600 分の 1 度が1秒角である) とわかる。そのとき、その恒星までの距離を「p 分の1パーセク」 とするのである。つまり、年周視差を逆数にすることで、距離を 求 め る こ と が で き る 。「 パ ー セ ク 」 と は 視 差 (parallax) と 秒 (second)の合成語である。1パーセクは約 31 兆キロメートル(約 3.26 光年)である。なお、現在わかっている、太陽から最も近 い恒星はケンタウルス座のアルファ星である。この星の年周視差 は 0.76 秒 角 で あ る 。 し た が っ て ア ル フ ァ 星 ま で の 距 離 は ( ① )光年と求めることができる。 ※ 1 光年とは、光が 1 年間かけて進む距離を表す。 問1 次の文の( )にあてはまる数値に最も近いものを、1∼4の選択肢から選び、記 号で答えなさい。 1パーセクはおよそ( )天文単位である。 1.2,000 2.20,000 3.200,000 4.2,000,000 問2 文中の( ① )にあてはまる数字を求めなさい。ただし、小数点以下第2位を四捨五入 して小数点以下第1位まで求めること。また、計算過程も記すこと。 こういった問題の練習を積み重ねることで、中学校で習う各分野の知識や経験が、それぞれ深 いところでつながっていることが実感できれば申し分ありません。特色検査の学習の価値は、そ のような体験を通じて学ぶ世界を自由に拡大すること、といってよいのです。 小田原高校 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム その他の情報提供 あわせてご覧ください それぞれのタイトル文字の部分をクリックすると、該当ページに移動します ■ 神奈川県公立高校 新入試制度のご案内 新しい入試のしくみをわかりやすく解説します ■ 2013 年度 神奈川県特色検査模試のご案内 ■ 2012 年度 第2回特色検査模試 解説と指南 こんなに差がつく特色検査・楽しい試験!? ■ 2012 年度 第3回特色検査模試 解説と指南 思考に慣れる・もっと増やしてほしい!? ■ 2013 年度 公立高校入試学力検査の講評 今年の入試はこう変わりました ■ 2013 年度 特色検査対策特訓講座のお知らせ 2014 年度特色検査のための対策を開始します 湘南ゼミナール 神奈川県特色検査対策チーム
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