2層の測域センサと立体高次局所自己相関特徴による歩行 - 今井研究室

2層の測域センサと立体高次局所自己相関特徴による歩行者の状態識別
(指導教員 今井 順一 准教授)
今井研究室 0731053 木内 貴和
1.
はじめに
3.
CHLAC 特徴
部分空間法はクラスごとにそのクラスを表現する低次元
近年,人間の生活空間の中で社会の一員として自然に行 の部分空間を用意し,未知パターンがどの部分空間で最も
動できる自律移動ロボットの研究が進められている.この よく近似表現できるかを比較することで識別を行う手法で
ような自律移動ロボットには,周辺歩行者が歩いているの ある.
か静止しているのか,あるいは一般の歩行者なのか車椅子
SVM は,学習データの中で最も他クラスに近いもの(サ
なのか等,その状態を正しく識別できることが求められる. ポートベクトル)を基準とし,マージン最大化という観点
そこで本研究では,自律移動ロボットへの応用を目的と から識別を行う手法である.本研究では多クラス識別に拡
した基礎研究として,2 層に配置された測域センサ(LRF) 張したものを利用する.
に よ り 取 得 し た デ ー タ か ら , 立 体 高 次 局 所 自 己 相 関 5. 実験
(CHLAC)特徴を求め,それを利用して歩行者の状態識別
部分空間法と SVM の 2 つの識別手法を用い,歩行者の状
を実現することを目的とする.また,識別手法として部分 態識別を行う実験を行った.
空間法とサポートベクターマシン(SVM)の 2 つを取り上
まず,歩行者が静止している状態,歩行している状態,
げ,その性能について検討を行う.
車椅子に見立てたキャスター付きの椅子に座ったまま移動
している状態,の 3 状態について LRF で計測し,CHLAC
2. 識別処理の流れ
特徴のデータセットを作成した.次に,3 状態それぞれの
図 1 に 2 層の LRF を搭載したロボットの外観を示す.上
データの一部を利用して,部分空間法及び SVM による学習
層(高さ 120cm)の LRF は歩行者の胸(車椅子の場合は頭
を行った.最後に,学習に用いたデータ及び学習には用い
部)を,下層(高さ 30cm)の LRF は歩行者の足を検出す
なかったテスト用のデータを利用して識別実験を行った.
る.LRF で得たデータから識別を行う流れを図 2 に示す.
それぞれの手法による状態ごとの識別率を表 1 に示す.
LRF からのデータ取得
表
1 から,CHLAC 特徴による歩行者の状態識別に対しては,
上層
部分空間法よりも SVM の方が優れた識別性能が得られる
ことがわかった.しかし,SVM による識別においても 60%
同じ層の LRF データの統合
程度の識別率しか得られない状態もあり,この点の改善は
今後の課題である.
CHLAC 特徴の計算
表 1. 識別結果(識別率[%])
下層
クラス
学習データ
テストデータ
歩行者の状態識別
静止
34.9
3.5
部分空間法
歩行
99.5
38.2
図 1. LRF を搭載した
図 2. 識別の流れ
車椅子
85.5
26.1
ロボット
CHLAC 特徴は動画像認識の手法の 1 つである[1].取得
データの差分画像の最新 3 フレーム分から成るボクセルデ
ータ上を合計 251 個あるマスクを移動させ,マスクパター
ンが一致する度に積和計算することによって特徴値を算出
する.本研究では,LRF によって取得した周囲の距離情報
をマップにし,その差分画像から CHLAC 特徴を計算する
(図 3)
.
歩行者
SVM
6.
静止
歩行
車椅子
99.1
91.4
86.6
92.7
57.6
80.5
おわりに
本研究では,LRF の取得データから求めた CHLAC 特徴
による歩行者の状態識別を実現した.また,2 つの識別手
法の性能比較を行った.
今後の課題として,識別精度向上のほか,提案手法を自
律移動ロボットに実装し,移動しながらの識別を可能にす
ることが挙げられる.
参考文献
[1]
(a) マップ画像 1
(b) マップ画像 2
(c)
(a)と(b)の
差分画像
図 3. 差分画像の例
4.
識別手法
3 節で求めた CHLAC 特徴の識別を行う.手法として,本
研究では部分空間法[1]と SVM[2]を検討する.
[2]
佐藤竜太, 亀田能成, 大田友一, “CHLAC 特徴量と部
分空間法による複数行動の分類,” 画像の認識・理解シ
ンポジウム 2009 論文集, pp. 1344-1349, 2009.
C.J.C.Burges, “A tutorial on support vector machines for
pattern recognition,” Data Mining and Knowledge Discovery 2, pp.121-167, 1998.