ニュートリノ質量分光への道 岡山大量子宇宙研究センター 吉村 太彦 ミクロとマクロをつなぐスパン SPectroscopy of Atomic Neutrino • • • 共同研究者 中野逸夫、福見敦、中嶋享、(化学)川口建太郎、唐健、久保園芳博 京大 笹尾登、南條創、 谷垣勝巳、(化学)若林知成(近畿大)、百瀬孝昌(UBC) 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 1 ニュートリノ物理の残された課題 1. 質量タイプ マヨラナ型(レプトン数非保存)かディラック型か 2. 質量行列の決定 質量絶対値特に最小質量、 3. CP位相 4. 宇宙背景ニュートリノ検出 このうち、3以外に挑戦する 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 2 マヨラナ性発見と質量全体値測定の意義 レプトジェネシス理論の根幹部分を検証する particle = anti-particle missing partner responsible for leptogenesis シーソー機構を利用したGUTの理解を深める Neutrino mass via seesaw mν 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 = mq, l 2 Mnew physics 3 レプトジェネシスからの要請 Giudice et al. シーソー機構を通じて質量の上限値に制約 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 4 従来の実験手法と現状 • ニュートリノを伴わない2重ベータ崩壊 レプトン数非保存 の検出 マヨラナ質量の決定は容易でない • ベータ崩壊の終端エネルギー測定 混合角含みの電子 ニュートリノ質量 • 振動実験 残された振動角度の決定 マヨラナ性の確認 不可能 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 5 原子遷移の利用; 電子状態の変化 e- νe W - e- e- -ν Z0 e charged current e- neutral current νi -ν i MNS matrix elements 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 6 原子・分子標的の利点 • ニュートリノ質量ぐらいのエネルギーレベル間隔 が豊富 分子の振動レベルを利用した微細分光 • 長寿命励起状態の存在 スピン多重項等 • レーザー、マイクロ波による励起テクニック • リサイクリング可能 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 7 デメリットと克服法 • 小さなレート • レート増幅が最重要 標的のコヒーランス: 超放射 崩壊パスの増大: 電子・ホール消滅 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 8 新しい実験原理に基づく小規模素粒子実験 • 準安定(ミリ秒以上)励起原子集団からのコヒーラント、光子+ ニュートリノ対超放射放出 • 測定量 1.光子エネルギースペクトル 2.円偏光(パリティ非保存) 質量に依る6閾値 立ち上がり強度が 角度依存 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 spectrum Xeの場合 Parity odd quantity 9 M vs D • スピン1/2、中性粒子 粒子と反粒子は区別で きるか • マヨラナ粒子では区別できない。干渉効果の存在 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 10 マヨナラかディラックかの質量タイプ決定法 • 同種フェルミオンの干渉効果 マヨラナとディラックの差 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 Xeの場合 11 標的原子とその環境候補 • • 最大レート 縮退に近い、エネルギー差が大きいラムダ型3レベル系 希ガスXe 3重項分子 など 超放射を利用したレート増幅 N^2 コヒーランスが重要: 隔離・固定された孤立原子集団 • 高統計データ取得: アヴォガドロ数に近い標的数 我々の結論 1.ナノスペース固体環境(マトリックス等)に埋め込んだ 希ガス原子、 フラーレンへの内包など 2.p-n junction の空乏層でのドナー電子・ホール結合 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 12 超放射: 2レベル間遷移の場合 Maxwell-Bloch equation 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 13 MB方程式の数値解: 1+1次元 各場所での場の強度 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 状態占拠とコヒーランス 14 2光子マクロコヒーランスの成長 • Formalism: Maxwell-Bloch equation • Non-linear effects between matter and radiation • Seeds from quantum fluctuation or triggering laser 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 15 光ソリトン形成 • トリガーレーザー照射軸まわりにwinding number をもつ、凝縮場 による位相的ソリトン • コヒーランス因子 N^2 よりさらに10^4 程度の増幅 • 2光子遷移を抑制するが、ソリトン破壊により大強度放射 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 16 増幅レート、エネルギースペクトル m_3 依存性: 50 – 200 meV 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 依存性 Xeの場合 17 パリティ非保存効果 測定量 発生円偏光 偏極電子軸と放出光子方向の相関 • PVレート M1/E1 比 X 原子内電子速度/光速度 ぐらいPCより小さい • 2振幅の干渉効果 例えば、 • Circular polarization changes its sign. 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 Xeの場合 18 M/D ニュートリノ質量・混合角依存性 m_3 = 50 – 200 meV 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 Xeの場合 dependence 19 QEDバックグランド除去 • 1光子、3光子以上の過程: 増幅ニュートリノ対過程が速い (Xe 例では40秒より速い、トリガー条件より1光子増幅なし) • 2光子過程 トリガーによるニュートリノ対生成過程促進 光ソリトン形成による抑制 線スペクトルと連続スペクトルの違い 1方向への1光子放出 ・ 最も決定的なバックグランド除去 円偏光測定 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 23 宇宙背景ニュートリノ検出原理 パウリ排他効果による閾値付近のレート抑制 Relative rate Photon energy Threshold reduction 1/2x1/2 = 1/4 For m_1 < a few meV, temperature measurement is not difficult 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 24 実験セットアップ例(Xe 原子使用の場合) Schematic layout 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 自由原子レベル(マトリックス中ではシフト) 25 研究プロジェクト準備状況 • 理論 光ソリトン形成の影響を理論解析 Maxwell-Bloch eq. の数値解 進行中 p-n junctionにおける対消滅 • 超放射検出 • マトリックス作成 電圧・温度コントロール可 標的埋め込み(Rb, Ba,Xe)に成功 @岡山大(川口) Ar マトリックス @ 近畿大(若林) Ne/ Ar マトリックス /cc 可能 @ UBC(百瀬) マトリックス 100 g 母体作成可能 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 26 Rb原子超放射の観測 遅延時間 5~10ns 2.29μm 6 2S1/2 4 2D3/2 78.7 ns 51.3 ns 1.37μm 421.5 nm 5 2S1/2 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 5 1.47μm 2P 3/2 2P 1/2 5 795nm 780nm Pumping laser pulse SR signal Pulse signals (a.u.) 2.79μm ns laser pulse 6 2P 1/2110 0 5 10 15 20 Time (ns) 超放射を確認 ・パルス幅: 遅延時間 << 自然寿命 ・パルス高と遅延時間が逆相関 ・角分布が前後方に集中 27 Xe in Ar matrix Xe 0.7 ionization limit 13.4 108370.80 Xe in Ar 0.6 A1 11.0 Energy level (cm -1 ) 85000 10 0.4 0.3 5 p 5( 2P 3/2)7 s 2[3/2] 2 10.5 5 2 80000 5 2 5 2 2 5 p ( P 1/2)6 s [1/2] 1 75000 2 5 p ( P 3/2 )6 p [3/2] 1,2 5 p 5( 2P 3/2 )6 p 2[5/2] 2,3 5 2 2 5 p ( P 3/2 )6 p [1/2] 1,0 2 5 p ( P 3/2)5 d [5/2] 2,3 5 p 5 ( 2P 3/2)5 d 2[3/2] 2,1 5 p 5 ( 2P 3/2)5 d 2[7/2] 4,3 5 2 2 5 p ( P 3/2)5 d [1/2] 0,1 10.0 9.5 5 p 5( 2P 1/2)6 s 2[1/2] 0 9.0 Energy level (eV) 0 2 5 p 5( 2P 3/2)7 s 2[3/2] 1 0.5 -log (I/I ) 5 2 5 p ( P 1/2 )6 p [1/2] 1,0 5 p 5( 2P 1/2 )6 p 2[3/2] 1,2 90000 70000 0.2 5 p 5( 2P 3/2)6 s 2[3/2] 1 5 2 8.5 2 5 p ( P 3/2)6 s [3/2] 2 0.1 0 A1 0 10 9 6 1 5p S0 0.5 0 Energy (eV) 幅はニュートリノ対発見目的に対して、 十分に狭いことを確認 (0.1 eV 以下) 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 28 研究戦略 ; 超放射観測 ; マトリックス作成 トリガーによる加速機構の理論解析・シミュレーション、 マトリックス以外のナノ貯蔵可能性検討 マトリックスでの超放射観測 ニュートリノ対放出過程の発見(世界初演) 最大ニュートリノ質量の上限値 または その値確定 ニュートリノ質量精密分光 背景宇宙ニュートリノの検出 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 29 まとめ • 原子遷移を利用して組織的なニュートリノ質量分光を行 い、宇宙背景ニュートリノ検出へのステップとしたい • ナノ空間貯蔵でアヴァガドロ数程度の標的をコヒーラント 励起・トリガーする • パリティ非保存量も測定できる • 標的超放射の確認とニュートリノ対生成発見が最初の重 大ステップ 日本物理学会 09/03 立教大学 吉村太彦 30
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