1 1.技術 1.4.1 生物処理と膜分離の組み合わせによる染色廃水の再生

1.技
術
2.事 業 名
1.4.1
生物処理と膜分離の組み合わせによる染色廃水の再生処理
高度循環システム開発
1997(H9)~1999(H11)年度
3.キーワード
染色廃水、廃水、再生利用、膜分離、精密ろ過、MF 膜、生物処理、逆浸透膜
4.目的背景
高度循環システムは、廃水の再生利用技術を開発することにより、工程用水の
水使用合理化を行おうとするものである。
廃水を再生利用することは、工業用水の使用量、下水放流費用の削減といった
直接的な効果のみならず、渇水対策、環境負荷物質の低減など社会的にも大きな
意義がある。
しかし、工場で使用される用水の要求水質は、業種、工程ごとに異なり、また
排出される廃水の水質も様々であり、さらに季節、時間変動も大きく、合理化の
実績が少なく、技術開発が遅れているのが実情である。
したがって、本技術開発事業では、ユーザからの要望が非常に強く、水使用量
の多い染色加工廃水を対象に、比較的安価で実現可能な技術開発を目標に、生物
処理と膜処理を組み合わせた実験装置を建設し、再生処理実験、再生水の染色適
性評価、実用化の実証及び経済性の評価を行うことを目的とした。
5.研究内容
システムの基本的な処理方式は、「生物処理―精密ろ過(MF)―逆浸透(RO)」であ
る。
染色工場廃水は、有機物、無機物を大量に含む廃水であり、通常有機物の処理に
は、生物処理を行っている。生物処理後は、沈殿池により汚泥や濁質を分離し、清澄化
した水を放流するが、沈殿地は大きな設置面積を必要とし、また濁質の分離能力にも限
界がある。
この固液分離操作を確実に行えるのが、分離膜を使用した精密ろ過法である。
本技術開発では、従来からの生物処理プロセスと膜ろ過技術を組み合わせることによ
り、廃水を再利用可能な水質まで浄化する技術を開発する。
染色廃水を対象とする場合、難分解性の色度、油分、界面活性剤などの処理も重要
であり、これらには凝集処理や吸着処理が必要である。
本システムでは、生物処理槽に凝集剤や活性炭を添加し、一括処理することにより、
システムの簡素化、省スペース化を図る。
(1)膜分離生物処理の運転条件確立
(2)色度、油分、界面活性剤の除去技術確立
(3)RO運転条件の確立
(4)処理水の再利用適性評価
(5)エンジニアリングデータの取得
(6)トータルシステムの検討
6.研究成果
3カ年にわたる装置設計・製作、実験を通じて、以下の点が明らかとなった。
1) 生物処理、MF 膜ろ過処理、RO 処理を行った再生処理水は、染色用水として充分
な性能を備えている。
2) 生物処理工程は、BOD 容積負荷 0.5kgBOD/m3・日で、運転を行い、除去率は不
充分ながら、MF 膜ろ過、RO 処理を行うことにより、再利用可能な水質を得ることが
できた。
3) MF 膜ろ過工程は、原水濃度が非常に高いこと、膜閉塞物質の発生により、凝集剤
を充分に添加できなかったことなどにより、膜ろ過流束が計画値より低くなったが、安
定した運転ができた。
4) 原水の COD は、1,000mg/L 以上と計画値の 5 倍以上であり、生物処理、MF 膜ろ
過処理を行っても、かなりの量が残留した。RO 処理を行うことにより 10mg/L 以下と
することができた。
また、MF 膜ろ過水を活性炭で吸着処理したが、吸着量は少なく、分解、吸着されにく
い物質が大量に含まれていた。
5) RO 処理まで行うと、約 660 円/m3 の処理コストとなり、現状では経済的に成り立たな
いが、目標値 500 円/m3 程度にまで低下させることは充分可能である。
今回の実験を通じてこれらの成果が得られたが、今後益々深刻化する水資源確保、
環境への負荷物質の排出削減の要請に対処するため、この実験成果を基に、より経済
的で確実な処理技術を確立する必要がある。
その際の課題は、以下の諸点である。
1) 染色工場では、非常に多くの種類の薬品を使用しており、また織物に付着して前加
工工程から持ち込まれる化学物質も多い。
したがって、排水の再生利用を行う場合には、これらを充分に検討し、曝気処理や凝
集剤の添加により予期しない膜閉塞物質が発生することがないようにするとともに、工場
の建設、改造時には、排水の再利用を前提とした配管系統の設計が必要である。
2) 維持管理コストの大半は膜交換費用である。膜の製造価格の低下、膜ろ過流束の
向上、長寿命化などを総合的に進める必要があるが、特に染色廃水の場合、原水の水
質によって膜ろ過流束、薬品洗浄間隔や生物処理槽の滞留時間が大きく異なる。
水質的には充分実用化可能と判断されたので、今後は経済性の面から原水の選択、
処理方式、処理水の利用先などを見直す必要がある。
7.事業分類
JKA 補助事業
共同・協力団体: 三菱レイヨン・エンジニアリング㈱