2014 年 - 四ツ井 健

2014 年
春号
染帯「雲海」
小松空港から搭乗した飛行機の小さな
窓から眼下に拡がる雲海を見ていまし
た。特に冬空は、空気が澄んでいる事
と、日本海側と太平洋側との空の差が
顕著です。
雪の降る空を飛び立ち、雲の中を通り
抜けると、真っ青な空。飛行機がぐっ
と右に旋回した時、小さな窓から見え
る眼下には、果てしなく続く雲海が見
えました。どこまでも続くその白い海
は、とても穏やかに見えます。しかし
その雲の下では冷たい雪が降っていま
す。しばらく経つと雲が切れ始め、山
や川、町が見え始めます。名古屋上空
に差し掛かり、知多半島や太平洋がハ
ッキリと見えてきます。なぜこんなに
も違うのかといつも思ってしまいま
す。そんな小さな旅のひとときを切り
取り、帯にデザインしてみました。
写真左下:濃い茶の地色の着物に合わせてみました。
写真中:真綿紬の質感が柔らかい。
写真右下:前柄部分です。
染帯「しだれ桜」
石川県に津幡というところがありま
す。その津幡に有名なしだれ桜があ
り、25年程前に友人と観に行った
ことがあります。その時には既にそ
の桜は老木で、花も咲き茂るとはい
かず、まばらに咲いていました。薄
いピンクが優しく見上げた青い空に
揺れていたのを、今でもはっきりと
覚えています。写真を撮っている間
に時間が経ち、夕暮れ時のライトア
ップが始まりました。すると、昼間
よりも一層寂しい気配になった事を
記憶しています。
そんな桜も若き日があったはずで、
何十年もその地域で愛され続けてい
たに違いない。あの桜は、今でも花
を咲かせているのだろうか?日本に
は「しだれの美学」というものがあ
る。そんな思いを描いてみました。
Vol.1
ご挨拶
四ツ井キモノデザイン研究所の
工房ニュースを始めました。不定期発行に
なりますが新作の紹介や工房の事、石川県
の最新情報を紹介したいと思っています。
今後共よろしくお願い致します。
糊づくりの話
友禅染になくてはならない材料に
糸目糊があります。毎年冬の季節
に翌々年に使う分の糊づくりを致
します。我が工房では友禅染の作
業のほぼ全てを工房内で行ってお
り、この糊づくりも大切な作業に
なります。
金沢市内にあるお米屋さんで買っ
てくる餅米粉に糠、塩、石灰を混
ぜ、水で練ります。その後蒸し器
で約 30 時間程蒸します。これが糸
目糊として使える元糊となり、冷
凍保存しておき必要な分だけ解凍
して使っていきます。市販もして
いる糊ですが、自ら作ることで当
工房作業に最適な糊になり、良い
作品づくりに繋がります。
北陸新幹線開通まで 1 年
来年、平成 27 年 3 月に東京と
金沢が新幹線で結ばれます。東
京から金沢まで最短で 2 時間半
となります。これまでは新潟・
越後湯沢経由で 4 時間掛かって
いますから、随分早くなります。
既に新型車両も公開され、3 列
シートの最上級グランクラスも
あるようです。あと一年が待ち
遠しい北陸です。 (写真引用)
家の庭に椿(西王母)の花が咲い
ています。昨年の秋から咲き始め、
一旦終わり、今また多くの蕾を持
ち始めこれからもしばらく楽しめ
そうです。
昨夏から飼い始めたオカメインコの「ピッチ
ー」です。居間に置いたカゴで飼っていますが
カゴから出せ出せといつもうるさくせがむの
で 1 日2回程カゴの扉を開けると、居間中を飛
び回ります。子どもたちが教えたトトロの口笛
曲も上手に歌っていますよ。上手に飼うと10
年以上は生きるようです。家中の人気者です。
写真右:薄茶の地色の着物に合わせてみました。
写真中:柄の UP
写真左下:塩瀬の艶やかな質感があります。
日頃お世話になっている方々への繋がりを
大切にしたいと思っていました。近年はインターネットの出現で世の
中が随分変わり、Facebook や Twitter などいつでもどこでも瞬時にわ
かる情報が飛び交っています。しかし、電子情報では伝わらないスロ
ーでアナログな心の情報が届けばいいなと思いこの新聞を始めてみま
した。これからもどうぞ宜しくお願い致します。
四ツ井 健