22-1 - 国立精神・神経センター

研究課題番号 22-1
研究課題名:わが国における低強度認知行動療法の実施マニュアルの開発と地域への応用可能性に関す
る研究
主任研究者:大野裕
分担研究者:堀越勝、金吉晴、大塚耕太郎
1. 昨年度および本年度(あるいは2年間の)の研究成果
本年度は簡易型認知行動療法を地域で実践するための基本的面接技法とうつ状態への対処マニュアル
を作成して、そのマニュアルに準拠した研修を試行し、マニュアルの有用性に関する検証を行うととも
に、保健師の面接や電話対応などの地域保健現場で活用するための体制作りを行った。対象地域は、大
野は鹿児島県姶良保健所および宮城県女川町、大塚は岩手県久慈市等である。このほか、堀越は看護師
向けに認知行動療法を活用した面接技法マニュアルを準備し、国立精神・神経医療研究センター病院の
看護師の協力の下有用性の検証を開始した。金は、持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure
Therapy: PE)を集団で簡便に施行するためのマニュアルを Pennsylvania 大学精神科 Foa 教授の協力により
日本語化し導入した。大塚は、精神科救急領域で精神療法が行われている割合を調査して、認知行動療法
導入の可能性を探った。
2.3年間の研究目標
低強度(簡易型)認知療法・認知行動療法を用いた地域の精神保健・医療・福祉活動に活用するための仕
組み作りと、それを実効のあるものにするための研修方法、実施方法、及び効果を評価するアウトカム
指標の作成を目的とした研究を行う。本研究によって、以下の成果が期待できる。①地域における精神
保健・医療・福祉が一体化した仕組みのなかで認知療法・認知行動療法を活用する基盤作りができる。
②地域の心の健康施策に生かせる認知療法・認知行動療法の技法を明らかにして、それを実践するため
のマニュアルの作成と研修方法、及び実践方法を明らかにすることができる。③被災地への効果的な介
入方法を検証できる、④地域介入の成果を評価する指標を作ることができる。
3.今後の研究の進め方について
大野は、大塚、宇田(姶良保健所長)の協力の下、今年度作成したマニュアルをさらに多くの地域で使
用し、普及のための方法論を研究するとともに、教育場面や職域での活用可能性を検証する。また、こ
うした研究活動に参加した地域の協力を得て、杠(肥前精神医療センター院長)等と、認知行動療法を
活用した節酒プログラムの地域での活用可能性を明らかにする。堀越と大野は、センター病院で IT を
利用しながら、これらのマニュアルを他職種で活用する可能性を検証する。金は、集団に対する持続エ
クスポージャー療法(Prolonged ExposureTherapy: PE)の効果的な研修・スーパーバイズ方法を検討し、特
に被災地等での普及、指導者の養成方法について研究する。大塚は、精神科救急領域における調査結果を
基に、救急場面で試行できる低強度認知行動療法の内容を精査し、適切なアプローチを選択し実施する。
4.研究成果の発表(原著論文、学会発表他)
特記すべきことはない。