感染と感染性廃棄物のABC【39】

感染のしくみ
感染のしくみ 18 病原体について
病原体について 14 疾患の
疾患の分類 12 最新治療法ロボット
最新治療法ロボット手術
ロボット手術②
手術②
感染と
感染と感染性廃棄物の
感染性廃棄物のABC 第 39 回 感染の
感染の基礎 その 18
感染からみた
感染からみた食中毒
からみた食中毒について
食中毒について第
について第 16 回 カンピロバクター菌
カンピロバクター菌による食中毒
による食中毒 その 4
p5
感染症の理解のために、全身・各臓器・器官などの欠陥・損壊の疾患例として先天性
心疾患の解説をしてきましたが、この締め括りとして最新の治療法をご紹介しています。
処理業者の方々も廃棄物の処理という点でこの医学の進歩には大きく貢献しています。
処理業者の方々にこの医学の進歩についても知っていただくために、先天性心疾患の
心房中隔欠損症の最新の治療法である新たな手術支援ロボット ダ・ヴィンチを紹介して
おります。この特徴は、傷口が小さく、正確な切開を行うなどの概要が分かりました。
今回は、なぜこのような手術法が開発されてきたか、手術は極力小さく切るという低
侵襲心臓手術の観点から、その変遷もみてみます。
これは一面、ディスポーザブル製品の発明と似ています。注射針と注射器の代表され
るこれらの導入は、医学・医療に感染予防面で大きな恩恵をもたらしました。しかしそ
の反面、感染性廃棄物の大量の発生という新たな問題を産み出しました。
排出事業者である医療機関側からみれば、廃棄物処理費用という新たな出費を強いら
れるというデメリットもありましたが、感染予防という面からは、何者にも変えられな
い大きなメリットを得られた訳です。これに伴って感染性廃棄物処理業も、感染性廃棄
物という未知の分野への取り組みと新たな法令の理解などのデメリットもありましたが、
これを乗り越えて大きく進展してきた訳です。まずロボット手術のメリットに触れます。
なお食中毒は、カンピロバクター菌食中毒の後、稀に起こる難病のギラン・バレー症
候群をご紹介します。感染により感染以外の思いもよらない疾患が起こるという例です。
6.原因②
原因②の例示3
例示3:ファロー四徴症
ファロー四徴症を
四徴症を中心とした
中心とした先天性心疾患
とした先天性心疾患 ― 全身・
全身・各臓器・
各臓器・
器官 欠陥・
欠陥・損壊の
損壊の疾患例
6-3.原因②
原因②の例示3
例示3:先天性心疾患 - 治療方法の
治療方法の例② 内視鏡手術支援ロボット
内視鏡手術支援ロボット
ダ・ヴィンチによる
・ヴィンチによる治療法
による治療法②
治療法②
低侵襲手術 とは どのような 手術 ? 傷 が 小 さく 、 痛 みも 少 ない 手術 ?
前回、手術範囲を極力小さくという低侵襲手術が現在、進められているといいました。
外科全般で目標とされている低侵襲手術とは、どのようなものをいうのでしょうか?
渡邊 剛教授の功績は、単にダ・ヴィンチ手術の導入と普及に努めているだけではあり
ません。帰国以来地道に、この低侵襲手術に関する器具の開発・普及を含め、広く研究
を進めています。
手術は、ヒトの身体を傷つける(侵襲する)訳ですから、当然手術を受けるヒトは大
きなダメージがあります。これは傷が小さければ小さいほど、回復も早ければ、感染の
危険も小さくて済みます。
これが低侵襲手術といわれるもので、切開するという点では手術ですが、新たな切る
器具の開発や工夫によって傷を小さく済ませる手術法そのものの進歩もあります。
-1-
例えば、電気メスやレーザー手術も含めた切る器具そのものの進歩、これに加え内視
鏡手術、腹腔鏡手術など耳にすると思われますが、用い方の工夫をするなど近年急速に
普及した画期的な方法が次々と開発され、より侵襲の低い手術が可能となってきました。
小さな傷であれば、感染による合併症も少なく、当然手術後の痛みも減り、回復も早
い、すなわち退院も早いという、一石三鳥ものメリットが得られるわけです。
図2 心 房 中 隔 欠 損 の 手 術 法
●
心房中隔欠損の
心房中隔欠損の手術療法
心房中隔欠損
●
心房中隔欠損の
心房中隔欠損の手術法の
手術法の変遷
●
①
②
③
④
⑤
直接閉鎖
● バッチ閉鎖
バッチ閉鎖
傷口の
傷口の大きさ
20~
20~30cm
30cm
胸骨正中切開による
胸骨正中切開による方法
による方法
胸部切開・ポートアクセス
5~7cm
胸部切開・ポートアクセス法
・ポートアクセス法
内視鏡による
内視鏡による方法
による方法 1~2cm
カテーテルによるアンプラッツァー法
カテーテルによるアンプラッツァー法
太もも3
もも3~5mm
ダ・ヴィンチによる方法
ダ・ヴィンチによる方法
1~2cm
図 2 心房中隔欠損の
心房中隔欠損の手術法
低侵襲手術は、心臓疾患より他分野で先行しており、胆石症に対する「腹腔鏡下胆嚢
摘出術」などは標準手術法として定着しております。
心臓手術においては、特に低侵襲手術が求められますが、渡邊 剛教授が、わが国で
1993 年に始めて成功させた人工心肺を用いない、心臓が動いたままで冠動脈バイパス手
術(CABG)を行う「心拍動下バイパス手術;オフポンプ;off pump CABG」も、
この低侵襲手術の1つです。
ここでは、図
図 2 心房中隔欠損の手術法を例に、低侵襲手術の比較をしました。
標準の胸骨正中切開法以外は、低侵襲手術で、心臓に内視鏡を用いる初めての手術方
法として、胸部切開はするが、切開5~7cmと小さくしたポートアクセス法などです。
このように低侵襲手術とは、切開を小さく行う術法と他に人工心肺を用いない術法の
どちらかを行うか、あるいは両方を行うものの計3つを指していることになります。
渡邊教授は、これら低侵襲手術に用いる器具や装置の開発にも大きく貢献しています。
そして低侵襲手術の最たるものが、人工心肺を用いず、回復に3ヵ月かかった手術をわ
ずか、3ヵ日間での回復を可能にしたのが、手術支援ロボット ダ・ヴィンチによる内視
-2-
鏡手術ともいえます。前回も触れましたが、ダ・ヴィンチ手術は、胆嚢全摘出術には健
康保険の適用を受けました。残念ながら心臓手術としては、ダ・ヴィンチ手術の例数は
まだ少なく、冠動脈バイパス手術のみが先進医療として承認されているに過ぎません。
これらの問題は、ダ・ヴィンチ手術のメリット・デメリット、普及等将来の問題とし
て、次回、次回以降に解説予定です。
心房中隔欠損手術の
心房中隔欠損手術の変遷からみた
変遷からみたダ・ヴィンチ
からみたダ・ヴィンチ手術
ダ・ヴィンチ手術は
手術は?
ダ・ヴィンチ手術の最も大きなメリットは、冒頭に触れたように、傷が小さいために、
なにより患者への負担が少ないことと手振れを防ぐなど手術の正確性といえます。
ポートアクセス法という胸部切開を小さくした手術であっても5~7cmの切開があ
るのに対し、ダ・ヴィンチ手術では、1~2cmの切開で済むので術後の回復は、3ヵ
日間など驚異的です。
以下の従来行っていた胸骨正中切開法の説明をお読みいただき、比較していただくと
その大きな違いについてより理解が深まるかと思います。
社会復帰に
社会復帰に時間がかかる
時間がかかる胸骨正中切開
がかかる胸骨正中切開手術法
胸骨正中切開手術法とは
手術法とは?
とは?
一般的な心臓手術は、胸骨正中切開手術法で行われます。胸の中央に縦にメスを入れ、
ネクタイのような形の胸骨を縦に切開します。心臓が露出されるので、人工心肺を用い
て心臓を静止状態で行い、手術は安全かつ容易に行えますが、胸には 20〜25cm もの大き
な傷が残ります。その上、傷を閉じても胸骨の接合には2~3ヵ月間かかります。その
間、激しい運動を避けることはもちろん、性生活もできません。荷物を持つことや自動
車の運転といった普段当たり前にやっているようなことも控えなければなりません。先
の女性は、この手術法では出産ということで大きなハンディとなるために避けた訳です。
近年の外科手術は、あらゆる領域で患者をできる限り傷つけない「低侵襲」の手術が
行われるようになってきているといいました。このように傷の小さな手術の利点は見た
目の問題だけでなく、術後の社会復帰やクオリティ・オブ・ライフ(QOL=生活の質)
にとって極めて大きな意味があります。
低侵襲心臓手術・ポートアクセス
低侵襲心臓手術・ポートアクセス法
・ポートアクセス法とは?
とは?
傷を極力小さくというのが、低侵襲心臓手術の1つの条件でしたが、これを実現させ
たのが、ポートアクセス法(MICS)で、低侵襲心臓手術のことをMICSと呼んで
いるぐらい、胸骨正中切開手術と比べれば画期的なものといえます(次頁 図3 参照)
参照)。
胸部の側面を5~7cm切開して手術するというもので、傷口は小さい上、肋骨の間
から操作するので、胸骨の切開をする必要がなくなりました。
手術する部分は、内視鏡を用いて見るという方法です。
胸の横から心臓を手術するために、心臓に届く途中の長い器具を開発し可能にしまし
たが、離れて操作するために特殊な技術の修練が必要です。また人工心肺は用います。
この手術法は、現在も画期的なものとして行われていますが、今後は、ダ・ヴィンチ
手術などに取って代われて行くものと思われます。
-3-
低侵襲心臓手術の
低侵襲心臓手術の2つの条件
つの条件を
条件を兼ね備えたダ・ヴィンチ手術
えたダ・ヴィンチ手術とは
手術とは?
とは?
このように傷口をいかに小さくするか、人工心肺を用いないという低侵襲心臓手術の
観点からみてくるとダ・ヴィンチ手術は、その全てを満足しているといえます。傷口は、
内視鏡と手術用のアーム3~4本の孔、1~2cmを胸部の横に開けるのみです。その
上、人工心肺は用いません。低侵襲内視鏡手術のいわば最新鋭機器です。
図3
ダ ・ ヴ ィ ン チ 手 術 の メ リ ッ ト
A:胸骨正中切開の
胸骨正中切開の術後の
術後の傷跡
C:ダ・ヴィンチ手術
ダ・ヴィンチ手術の
手術の傷跡
B:内視鏡による
内視鏡による手術
による手術の
手術の傷跡
C:ダ・ヴィンチ手術
ダ・ヴィンチ手術の
手術の傷跡
術後慢性期
A:従来の
従来の胸骨正中切開による
胸骨正中切開による手術
による手術では
手術では、
では、通常の
通常の日常
生活に
生活に戻るのに約
るのに約2ヵ月かかります。
かかります。
B:内視鏡による
内視鏡による手術
傷跡はAに比べ、
による手術では
手術では、
では、傷跡は
極端に
極端に小さくなります。
さくなります。
C:ダ・ヴィンチ手術
ダ・ヴィンチ手術では
手術では、
では、傷跡は
傷跡は数箇所で
数箇所で、
その後
その後は、ほとんど痕跡
ほとんど痕跡がありません
痕跡がありません。
がありません。
⇒ 傷跡が
傷跡が小さいということは、
さいということは、患者の
患者の負担も
負担も小さいです。
さいです。
図 3 心 房 中 隔 欠 損 各 種 手 術 法 の 傷 口 比較
4本のアームが、図
図 3 の写真のように胸部横の孔から心臓に達し、1本のアームには
写真
高精細カメラが取り付けられ、3Dの視野を大きな画面に映し出し、執刀医の目となり
ます。残る3本は7つの関節を持ち、繊細な手指となって、心臓の裏側からでもどこか
らでも、鉗子(ピンセット様の医療器具)や超音波メスを次々に装着して縦横自在な手
術を可能にしました。人間の手指に匹敵する動きと、
「自然に近い直感的な手術ができる」
と渡邊教授が、語っています。このアームは、手ぶれ補正やセンサースイッチ式のセキ
ュリティシステムを備えるなどの安全面も保障されています。
渡邊教授のインタビューの話では、
「ある日、入院患者専用ラウンジの光景に目を見張
った。前日に自分がダ・ヴィンチ手術で冠動脈バイパス手術を執刀したばかりの 70 代の
女性が、看護師と談笑していました。声を掛けると“病室から歩いてきた”とニコニコ
しています。胸骨を切り開く標準的な手術なら、痛みで身体も起こせない時期であると
いうに…。」これがロボット手術普及の可能性を確信させる瞬間だったということです。
これらメリットについてはさらに次回再度まとめて解説し、渡辺教授のご紹介もしま
す。次回以降には、デメリット、今後の普及などもさらに解説します。
〔参考・
参考・引用文献等〕
引用文献等〕は、次回以降に一括して掲載いたします。
-4-
感染からみた
感染からみた食中毒
からみた食中毒について
食中毒について 第16回 カンピロバクター菌
カンピロバクター菌による食中毒
による食中毒
その4
その4
「カンピロバクターの感染予防も、他の感染型食中毒と大きく異なることはなく、ほ
ぼ同様の注意となっております。
」としました。そこでの注意事項としては、家畜などの
生体に最初から菌を持っているために生肉などが要注意であり、中心部までの十分な加
熱が必要で、75℃1分以上を徹底することにあります。またカンピロバクターは、少な
い菌数で感染するということは、少ない菌が体内に侵入すると腸内で菌が急増して感染
に繋がる可能性が高い食中毒の仲間であり、ノロウイルスと双璧で感染力も強いです。
したがって、そこまでと思われるかもしれませんが、焼肉などの際も、生肉と焼いた
肉とは、別々の箸を用い、生肉には自分の箸を用いないなどを励行しませんと、これも
感染を引き起こす原因になります。
このような結果を表すものとして、カンピロバクターは、統計や年度によって多少異
なりますが、食中毒の感染者数からみると通年でノロウイルスと1位、2位を取り合う
ほどの食中毒の代表ともいえます。
カンピロバクターと他の食中毒と大きく異なるところは、ごく稀ですが食中毒の下痢
など胃腸炎症状が治まって 10~30 日の回復後に末梢神経※麻痺を主な症状とする神経疾
患の難病であるギラン・バレー症候群の発症が分かっております。今回と次回で、この
ギラン・バレー症候群を中心にカンピロバクターとの関係も併せて解説していきます。
※ 末梢神経:手足など身体の末端部分の神経をさします。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群とは
症候群とは?
とは?
急性、または亜急性と割合急に末梢神経に障害が起こります。急速に手足等の筋肉に
麻痺が生じ、力が入らなくなり動けなくなるなども起きる疾患です。さらに症状がひど
いと呼吸器が麻痺して呼吸ができなくなるなども起こり、患者の驚きは大きいです。
子どもも高齢者も罹りますが、年間 10 万人に1~2人り患する程度と稀な疾患です。
カンピロバクターに感染の後に起きることが、1つの原因であると判っております。
一般に予後は良好といわれ
ていましたが、カンピロバ
クターから罹った場合など
いくつかの条件によっては、
回復が良くない場合もある
ことが分かってきました。
なお遺伝性の疾患ではないです。また感染に起因しますが、感染はしません。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群の
症候群の名称は
名称は?
ギラン・バレーと変わった疾患名ですが、これは医師の名前から取られています。
1859 年、すでにフランスの神経学者ランドリーが下肢から上肢などの麻痺の疾患とし
て報告がありました。今から約 100 年前の 1910 年代になり、疾患の原因を明らかにした
のが、フランスの内科医ギランとバレー、ストールの3人で、長いためか2人だけの名
-5-
前をとってギラン・バレー症候群(Guillain-Barre Syndrome;GBS)といわれて
います。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群の
症候群の症状は
症状は?
筋肉を動かす運動神経が侵され、急に手や足に力が入らなくなるとしましたが、しば
しば知覚神経も侵され、手足のしびれを伴います。手足の麻痺の程度は発症してから2
週以内に最もひどくなり、他の症状も数日あるいは2~4週間以内にピークに達します。
表1 ギ ラ ン ・ バ レ ー 症 候 群 の 主 な る 症 状
運動神経とともに
運動神経とともに知覚神経
とともに知覚神経の
知覚神経の障害(
障害(約7~8割)
:最初は
最初は痺れ、びりびりする痛
びりびりする痛み、皮膚の
皮膚の下で蟻が這う感じ、電流の
電流の流れる
感じ、振動感など
振動感など 足から手
から手、さらには顔面
さらには顔面にも
顔面にも生
にも生じる・身体
る・身体の
身体の両側
知覚神経は
知覚神経は正常なまま
正常なまま、
なまま、運動神経に
運動神経に障害(
障害(2~3割)
:筋力が
筋力が低下・
低下・脱力感、
脱力感、一般的に
一般的に下肢の
下肢の筋肉に
筋肉に障害が
障害が起こると、
こると、階段の
階段の昇降
や椅子から
椅子から立
から立ち上がれない、
れない、歩行が
歩行が難しい。上腕に
上腕に障害が
障害が起こると、
こると、
重いものを持
いものを持ち上げられない
げられない。指や手に障害⇒
障害⇒物を掴むことができない
むことができない。
重症の
重症の場合、
場合、麻痺が
麻痺が全身に
全身に及ぶ。しばしば筋肉自体
しばしば筋肉自体の
筋肉自体の痛みや筋痙攣伴
みや筋痙攣伴う
筋痙攣伴う。
運動神経障害が
運動神経障害が強い場合、
場合、呼吸筋に
呼吸筋に障害⇒
障害⇒呼吸困難:
呼吸困難:死に至る場合もある
場合もある
:嚥下(
嚥下(えんげ=
えんげ=飲み込むこと)
むこと)をする筋肉
をする筋肉に
筋肉に障害が
障害が起こると、
こると、唾液で
唾液で咳き
込んだり、
んだり、食物が
食物が飲み込めなくなる
めなくなる。表情筋に
表情筋に障害⇒
障害⇒能面のように
能面のように表情
のように表情
が表せなくなり、
せなくなり、頬の部分に
部分に食物が
食物が留まったり、
まったり、口から出
から出たりする
たりする。
する。
舌に障害が
障害が起こると、
こると、呂律(
呂律(ろれつ)
ろれつ)が回らなくなり、
らなくなり、うまく話
うまく話せない
せない。
さらに、
さらに、眼球筋に
眼球筋に障害が
障害が起こると、
こると、物が二重に
二重に見えたりする(
えたりする(複視)
複視)
まれに
まれに、排尿障害や
排尿障害や尿失禁が
尿失禁が起こることがある
こることがある。
自律神経障害が
自律神経障害が起こる場合
こる場合もある
場合もある。
もある。高血圧・
高血圧・低血圧、
低血圧、頻脈・
頻脈・不整脈、
不整脈、体温異常
図4 ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群の
症候群の主なる症状
なる症状
当初は、突然下肢から麻痺や力が入らず動かないなどが起き、発症に驚ろかされます
が、その後は次第に回復していきます。
重症の場合には呼吸もできなくなり、死に至ることもあります。
このように症状の程度は様々ですが、多くの場合、6ヵ月以内に完全に回復し元の生
活に戻れる例が多く、再発など無く予後は良いとされておりました。
ところが最近、ギラン・バレー症候群には、2つの型があることが分かってきまして、
中にはリハビリが長期に亘たり、5~20% に後遺症が残る場合もあり、ごく一部には合
併症で死亡することもあるなどが分ってきました。
この2つの型については、次回に触れます。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群の
発症率は?
症候群の発症率は
発症率は年間 10 万人に1~2人に発症する稀な疾患です。赤ちゃんからお年寄りまで、
どの年齢層でも発症することが知られていますが、平均発症年齢は 39 歳です。
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慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの自己免疫疾患は女性の方が多
いのですが、ギラン・バレー症候群に限っては、男女比は3:2と、男性に多くみられ
ます。
日本では、毎年、2,000 人ぐらいが、り患しているといわれています。
世界中あらゆる地域で発生し、人口 10 万人の年間発生率は 0.6~1.9 人前後です。
有名人や芸能関係では、川口順子元外相、女優の大原麗子や釈由美子が罹ったことで
知られています。その他では、俳優の安岡力也、元浦和レッズ・福永泰、サンフレッチ
ェ広島・佐藤寿人、アメリカでは、第 32 代アメリカ大統領のフランクリン・ルーズベル
トなどが知られています。
先の大原麗子、安岡力也などは、先述の2つの型のうち、予後が良くないタイプだっ
たようで、その後も歩行困難など悩まされていたようです。
いずれにしても、り患した人の名前が分かっている疾患ということは患者数が少ない
疾患であるともいえます。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群の
症候群の発症原因は
発症原因は?
自分を守る免疫である抗体が、誤って自分の末梢神経を攻撃することが発症原因です。
実際には、いろいろのことが発症の引き金になっています。多くの患者(約 70%程度)
は、細菌やウイルス感染症が起こって、数日から数週間後に発症します。この感染症は、
下痢を伴う胃腸疾患であったり、かぜであったり、咽頭痛であったりします。下痢など
のカンピロバクターは、これに該当します。
ギラン・バレー症候群とカンピロバクターとの
症候群とカンピロバクターとの関係
とカンピロバクターとの関係
図5 ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群
感染 !
顔が麻痺・
麻痺・食べ物が飲込みにくい
飲込みにくい
声が出にくい・物
にくい・物が二重に
二重に見える
呼吸が
呼吸が苦しいなど
両手など
両手など上
など上に
力が入らない・痺
らない・痺れる(
れる(異常感覚)
異常感覚)
その約
その約70%
70%は
両足から
両足から
インフルエンザなど
のワクチン接種
のワクチン接種
かぜ・発熱
かぜ・発熱
メガロウイルス・EB
メガロウイルス・EBウイルス
EBウイルス
・マイコプラズマ
下痢
カンピロバク
ターバクター・
ジェジュニ菌菌菌菌
その数日
その数日から
週間前に下記症状など
下記症状など:
先行感染がある
数日から3
から3週間前に
など:先行感染がある
カンピロバクター感染
カンピロバクター感染
図5 ギラン・
ギラン・バレー症候群
バレー症候群とカンピロバクターバクターとの
症候群とカンピロバクターバクターとの関係
とカンピロバクターバクターとの関係
なお、約 30%程度の患者は、下痢やかぜ症状がはっきりせず、最初から下肢の麻痺な
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どの症状から始まります。
正常であれば、ヒトは、感染症の細菌やウイルスや異物(抗原)が侵入した場合、免
疫防御システムが働き、白血病の中の抗体がそれらの微生物(抗原)を攻撃します。
この免疫防御システムが正常に機能し、抗体が、体内に侵入してきた自分にとって外
敵とみなされる抗原だけを攻撃すれば問題はありません。ところが発症するヒトは、抗
体が外敵であるカンピロバクター菌などの抗原と分子構成などが類似している自分の身
体の末梢神経を抗原とみなして、誤って攻撃してしまうことが、ごく稀に起こります。
しかもその誤って自分の末梢神経を攻撃する抗体を産生し続けることが、ギラン・バレ
ギラン・バレ
ー症候群の発症のしくみです。これにより、先の症状が起きてきます。
症候群
疾患分類からみた
疾患分類からみた自己免疫疾患
からみた自己免疫疾患
これらの自分を外敵から守る免疫が、自分の身体を攻めるような疾患を自己免疫疾患
といいます。
食べ物により起こるアレルギー反応も、本来身体にとって栄養分となるものを外敵と
みなして過剰に反応し攻撃することから起きますので、自己免疫疾患の仲間といえます。
感染と感染性廃棄物のABCとして、現在連載中の前半では、疾患分類として、「外
部からの細菌などの病原体により起こる感染症」と「内部に原因がある非感染性疾患」
と大きく2つに分けました。このうち、現在解説中のものは、「内部が原因の全身・各
臓器・器官 欠陥・損壊の疾患例」として、先天性心疾患について解説している訳です。
この内部が原因の疾患としては、まだ解説をしていないものとして、2つの種類があ
り「糖尿病の代謝や甲状腺といった、臓器などでなく、機能そのもの故障や損壊などの
類」や「細胞の損壊などがんといわれる新生物の類」です。
この自己免疫疾患は、免疫という機能の故障、損壊といえる疾患です。
自己免疫疾患には、約 40~50 疾患ぐらいがありますが、大きく分けると2つになりま
す。全身に起こる類で、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)に代表され
る膠原病などと特定の臓器・組織に起こる類で末梢神経他で起きるギラン・バレー症候
群や甲状腺で起きるバセドー病、気管支で起こる喘息などのように限定されて発症する
ものです。
自己免疫疾患そのものについての詳しい解説は、また他の機会にしたいと思います。
次回は、このギラン・バレー症候群とカンピロバクター食中毒の関係についてさらに
詳細に解説します。
いずれにしろ、肉の生焼きなどからカンピロバクターに感染し、このギラン・バレー
症候群を引き起こすことなどは、ぜひ避けたいものです。しかしカンピロバクターは、
流行の季節がありません。夏場の7~8月がピークではなく、前述のとおり、ノロウイ
ルスと同様に、少ない菌数で感染する通年で患者数が多い食中毒ですので十分な注意が
必要です。
〔参考・
参考・引用文献等〕
引用文献等〕は、次回以降に一括して掲載いたします。
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