シティグループ証券寄附講座「グローバル金融市場論」 米国政治と産業 2012年12月6日 シティグループ証券株式会社 東京都千代田区丸の内1丁目5番1号 新丸の内ビルディング シティグループ証券株式会社取締役副会長 兼慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員 兼北京大学日本研究センター特約研究員 藤田 勉, Ph.D. +81-3-6270-4885 [email protected] 本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。 民主党と共和党の政策 共和党政権 1983-1989年レーガン、1989-1993年父ブッシュ、2001-2009年息子ブッシュ 1. 軍事力増強(1986年リビア攻撃、1991年湾岸戦争、2001年アフガン戦争、 2003年イラク戦争) 2. 小さな政府(大規模な減税、規制緩和)、ただし財政赤字拡大 3. 伝統産業重視(エネルギー、防衛など) 民主党政権 1978-1981年カーター、1993-2001年クリントン、2009-2017年オバマ 1. 貿易摩擦(1981年対米自動車輸出規制、円高、1995年1ドル80円) 2. 大きな政府(増税、医療制度改革) 3. ハイテク産業重視(IT、バイオなど、ベンチャー企業育成)、環境政策重視 2 産業政策と株価 1. クリントン政権の情報スーパーハイウェイ構想、ヒトゲノムの解読プロジェ クトは、株価に大きく影響。 2. ブッシュ政権は、2001年「国家エネルギー政策」発表。ブッシュ親子は、い ずれも中東で戦争。原油価格高騰。 3. 共和党政権時に、防衛費、財政赤字増大。軍事費は、2000年度の2,944 億ドル(30兆円弱)から2008年度には6,161億ドル(約60兆円)まで倍増。 S&P米国IT、エネルギー株価指数の推移(対米国相対) 350 IT(左軸) 300 エネルギー(右軸) 250 210 (10億ドル) 800 190 700 170 600 150 米国国防費の推移 (%) 6.5 6.0 5.5 5.0 500 4.5 130 200 110 150 90 100 50 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 400 4.0 300 3.5 国防費(左軸) 70 200 50 100 対GDP比(右軸) 3.0 2.5 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015E 3 注: 1989年末=100。 出所: S&P Global Equity Indices、シティグループ証券 注:予想は、米国政府。GDPは価格未調整ベース。 出所:Office of Management and Budget、シティグループ証券 米国企業の国際競争力と産業政策 航空宇宙 宇宙飛行士の服→ゴアテックス、宇宙船の耐熱素材→テフロン加工のフライ パン、偵察写真→コダックのフィルム、衛星ロケット技術→衛星放送、カーナビ 軍事技術 1960年代の軍事用暗号処理移動体通信→第三世代移動体通信技術CDMA 米国政府・非政府の研究開発費の構成比 (%) 80 70 研究開発費の国際比較(2009年) 米国 中国 日本 ドイツ フランス 韓国 英国 ロシア OECD合計 R&D(10億ドル) 401.6 154.1 137.9 82.7 48.0 43.9 40.3 33.4 965.6 対GDP(%) 2.9 1.7 3.3 2.8 2.2 3.4 1.9 1.2 2.3 60 国防(政府) 宇宙(政府) 民生(政府) 非政府 50 40 30 20 10 0 1953 1958 1963 1968 1973 1978 1983 1988 1993 1998 2003 4 注: 政府、民間を含む。 出所: NSF、シティグループ証券 注: 非政府には企業、大学、NPO等が含まれる。 出所: NSF、シティグループ証券 2008 米国の「ものづくり」は世界最強 1. 非製造業を含む世界時価総額上位100社以内に、日本の製造業企業は 32位トヨタ自動車のみ。 2. 半導体、半導体製造装置、コンピュータ、薬品、航空宇宙、インターネット など、ほとんどのハイテク分野では、米国企業が世界トップ。 3. S&P世界株式指数(製造業)時価総額上位20社に、日本は14位トヨタ自動 車のみ。上位100社中、米国は39社、日本は7社。 4. ITではキヤノンがセクター順位19位、日立製作所同29位、ヘルスケアでは 武田薬品同20位 。 S&P世界株式指数(製造業) 時価総額上位10社 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 銘柄 国 アップル GE ネスレ ジョンソン・エンド・ジョンソン P&G ファイザー サムスン電子 コカ・コーラ ノバルティス フィリップモリス・インターナショナル 米国 米国 スイス 米国 米国 米国 韓国 米国 スイス 米国 時価総額 (百万ドル) 557,850 222,369 204,667 195,254 190,706 185,766 176,932 167,381 162,889 149,288 5 注: エネルギー除外。2012年10月末現在。 出所: S&P Global Equity Indices, シティグループ証券 世界のM&A上位20件 1. 米国企業同士が圧倒的に多い。 2. 大型案件の成功例は、エネルギー、素材、通信。川上産業のM&Aは成功 しやすい。商品の親和性、規模の経済、リスク分散。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 完了日 2000/6/19 2001/1/12 2007/11/2 2000/6/19 1999/11/30 2000/12/27 2005/7/20 2006/12/29 1998/10/8 2002/11/18 2009/10/15 1999/10/8 1998/9/30 2008/7/22 1999/6/30 2004/8/20 2003/4/15 2004/7/1 2000/6/30 2005/10/1 被買収企業 マンネスマン タイムワーナー ABNアムロ ワーナーランバート モービル スミスクライン・ビーチャム シェルトランスポート ベルサウス シティコープ AT&Tブロードバンド ワイス アメリテック バンカメリカ スエズ エアタッチコミュニケーションズ アベンティス ファルマシア バンクワン USウェスト ジレット 注: 完了案件ベース。スピンオフ、倒産案件除外。 出所: トムソン・ロイター、シティグループ証券 国 ドイツ 米国 オランダ 米国 米国 英国 英国 米国 米国 米国 米国 米国 米国 フランス 米国 フランス 米国 米国 米国 米国 買収企業 ボーダフォンエアタッチ AOL RFSホールディングス ファイザー エクソン グラクソウェルカム ロイヤルダッチペトロリアム AT&T トラベラーズ コムキャスト ファイザー SBCコミュンケーションズ ネーションズバンク GDF ボーダフォングループ サノフィサンテラボ ファイザー JPモルガンチェース クウェストコミュニケーションズ P&G 国 英国 米国 英国 米国 米国 英国 オランダ 米国 米国 米国 米国 米国 米国 フランス 英国 フランス 米国 米国 米国 米国 金額(百万ドル) 202,785 164,746 98,189 89,168 78,946 75,961 74,559 72,671 72,558 72,041 67,286 62,593 61,633 60,856 60,287 60,243 59,515 58,761 56,307 54,907 対価 株式 株式 株式、現金 株式 株式 株式 株式 株式 株式 株式 株式、現金 株式 株式 株式 株式、現金 株式、現金 株式 株式 株式 株式 6 日本のM&A歴代金額上位20件 1. 日本のM&Aは規模が小さい。大型M&A案件のほとんどが銀行。 2. 国内企業同士(除く金融、公益)の戦略的M&Aは上位20件にはない。 3. 日本企業はM&Aが苦手。TOBと敵対的買収はほとんどない。政策保有株比 率が30%以上。M&A法制が未整備。事実上、株式対価のTOBができない。 (太字は銀行) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 完了日 被買収企業 国 買収企業 国 2001/4/1 2005/10/1 2000/9/29 1996/4/1 2000/9/29 1990/4/2 2003/7/1 2000/10/1 2001/4/1 2007/4/18 2006/4/24 2011/9/30 2005/9/1 2007/4/26 2000/10/1 2001/4/1 2001/1/22 2011/4/1 2010/12/1 1991/4/1 さくら銀行 UFJ ホールディングス 第一勧業銀行 東京銀行 日本興業銀行 太陽神戸銀行 りそな銀行 KDD 東海銀行 ガラハー ボーダフォン ナイコメッド セブン-イレブン・ジャパン 日興コーディアル IDO 三菱信託銀行 AT&Tワイヤレス 住友信託銀行 JAL 埼玉銀行 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 英国 日本 スイス 日本 日本 日本 日本 米国 日本 日本 日本 住友銀行 MTFG 富士銀行 三菱銀行 富士銀行 三井銀行 預金保険機構 DDI 三和銀行 JT BBモバイル 武田薬品 イトーヨーカ堂 シティグループ DDI 東京三菱銀行 NTTドコモ 中央三井トラストHD 企業再生支援機構 協和銀行 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 日本 米国 日本 日本 日本 日本 日本 日本 金額 (百万ドル) 45,494 41,431 40,097 33,788 30,760 23,017 16,650 15,822 14,984 14,684 14,332 13,683 12,483 12,388 10,659 10,373 9,805 9,149 8,174 8,093 7 出所:トムソン・ロイター、シティグループ証券 結論:グローバル時代には規模が重要 1.米国の産業政策は国防政策と関係が深い 軍事技術開発が、ハイテク産業の基礎を築く。 M&Aを交えた弱肉強食の世界。コダック、モトローラなど、世界でもトップクラス の会社が淘汰される。経営者の流通市場の発達(例:IBMガースナー元CEO)。 2. 時価総額日本1位のトヨタ自動車ですら世界32位 各業種の世界1位企業の時価総額を100とすると、電機*(世界1位はアップル) は、日立製作所4、ソニー2、富士通1、NEC1。資本財(同GE)では三菱重工が6。 食品(同ネスレ)ではキリンHDが6、トイレタリー(同P&G)では花王が8。 2. 新興国企業と比較しても日本企業は小さい 電機のサムスン電子を100とすると、リコー4、シャープ1、エネルギーは、ペトロ チャイナ100対国際石油開発帝石9。 金融の中国建設銀行(世界17位)は日本2位MUFG(同94位)の2.8倍、通信の チャイナモバイル(同6位)は同3位NTTドコモ(同91位)の3.5倍。 8 *IT+家電 注:時価総額は、2012年10月末、出所:S&P Global Equity Indices 本資料は本資料は当社内のシティ資本市場研究所が作成したものであり、他の第三者に過去に提供された他の資料の抜粋を含む可能性がありま す。本資料は、当社又はその関係会社が作成配布したリサーチレポートに言及している可能性がありますが、本資料は調査部門が作成したもので なく、本資料に記載された情報は、適用される規制当局により定義された「アナリストレポート」及び「リサーチレポート」に該当することを意図してい るものではありません。本資料に記載された情報は、一般的に入手可能な情報であり、信頼に足ると思われる情報源から入手したものですが、正確 性及び完全性を保証するものではありません。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の利用者の投資目的、財務状況、資力を考慮してお りません。本資料は、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘ではありません。先物、オプション、高利回り証券を含む特定の取引又は取引 戦略は、相当のリスクを内包しており全ての投資家に適したものではありません。直接、間接、派生的を問わず、本資料に記載された情報の使用に より又は本資料に起因する損失に対して、当社は一切の責任を負いません。当社は、税務及び法律の助言を行うものではありません。お客様にお かれましては、ご自身の税務及び法務アドバイザーより助言を受けた上で、ご自身の目的、経験、資力に基づく投資判断をなさるようお願いいたしま す。本資料に含まれる資料、記述、情報は当社に帰属するものであり、著作権その他の知的財産に関する法律によって保護されます。いかなる目 的においても他者への転送、再配布を行うことはできません。 Copyright © Citigroup Global Markets Japan Inc. 2011. 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