31P1-am040

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20%自己血清点眼液の使用期限の検討 ― 含有されるEpidermal Growth Factor(EGF)
の生物活性を指標として ―
◯小谷 武志 1 ,
上岡 彩佳 1 ,
鎮西 礁子 1 ,
日浦 寿美子 1 ,
草野 歩 1 ,
加藤 裕芳 1 ,
3 1
東邦大学医療センター大橋病院薬,2 東邦大
浅山 亨 1 ,篠原 悦子 2 ,武藤 里志(
薬医療薬学教育センター 臨床薬学研究室,3 東邦大薬医療薬学教育センター 病態解
析学研究室)
【目的】自己血清点眼液は、重症角膜上皮障害等の治療を目的に調製される院
内無菌製剤であり、現在、大橋病院薬剤部(以下、当院)でも調製を行っている。
しかし、その安定性に関するデータが少ないため、使用期限については、現在の
ところ慣例により 1 週間となっている。そこで今回は、点眼液の使用期限の設定
を目的として、epidermal growth factor(EGF)を指標とし、安定性試験を実施した。
【方法】本実験の趣旨についてインフォームドコンセントを取得できた薬剤部
職員の血清を使用し、当院の調製手順に従い 20%自己血清点眼液を調製後、使用
するまで-20℃にて凍結保存した。この点眼液を解凍後、4℃遮光下または室温散
光下で 1 週間放置したのち、
点眼液中に残存する EGF 等の細胞増殖因子の活性を、
解凍直後の点眼液と比較した。活性測定には BALB/3T3 細胞を用い、各々の検体
を 0.1%BSA-RPMI 培地で倍々希釈し調製した培地中で細胞を 3 日間培養した後、
WST-8 assay により細胞増殖度を評価した。
【結果】BALB/3T3 細胞の増殖は、培養液中の点眼液の含量が低下するに従い減
少し、その減少曲線は、解凍直後の点眼液と 4℃または室温で1週間放置した点眼
液を用いた場合も全く同じであった。すなわち、今回の実験のように 1 週間程度
では、いずれの保存条件においても EGF の生物活性に低下は見られなかった。
【考察】20%自己血清点眼液は頻回に使用する点眼液であり、常に冷所保存す
る事は困難である。しかし今回の結果から、室温保存でも EGF としては期待した
作用が得られる可能性が示唆された。今後は、点眼液使用中に起こりえる細菌汚
染への対処法を検討するとともに、自己血清由来のフィブロネクチン等の創傷治
癒に有用な物質の生物学的安定性について、さらに検討を続けて行く予定である。