sequence capture によるがんゲノム変異解

癌学会セミナー抄録
アジレント・テクノロジー
【演題】
sequence capture によるがんゲノム変異解析
Mutation detection in the cancer genome using sequence capture technology
【演者】
東京大学先端科学技術研究センター
ゲノムサイエンス部門教授
油谷
浩幸先生
近年の分子標的薬の登場によりがん治療のコンセプトが変遷しつつあり、
trastuzumab(抗 HER2 モノクローナル抗体)、imatinib(Bcr-Abl キナーゼ阻害剤)、
gefinitib(EGF 受容体キナーゼ阻害剤)などに代表される癌細胞のみが有する遺伝子
変異を標的とする薬剤開発が進んでいる。このような分子標的医薬の開発、個別化医
療の実践を進めるためには、がんゲノムに蓄積した遺伝子変異を同定して最適の治
療法を選択することが求められる。
最近の次世代シーケンシング技術の進歩により個人のゲノム配列解析が現実化して
きており、ゲノム配列解析がいずれは「臨床検査」となることが予想される。もっとも次世
代シーケンサーによって配列解析コストが大幅に低減したとはいえ、全ゲノム配列を決
定するコストは依然として高額であり、当面は蛋白質をコードする領域、すなわちエク
ソン配列に生じた変異の解析を中心にゲノム解析が進むと予想される。
特定のゲノム領域を選択的に解析するためには従来多数のプライマーセットによる
PCR 増幅が用いられてきたが、極めて面倒な作業であった。マイクロアレイあるいは合
成プローブプールを用いた配列捕捉は、最大数十メガベースに及ぶゲノム領域から
効率よく標的とする配列を濃縮することが可能である。Agilent 社の SureSelect 法は米
国 Broad 研究所の Gnirke、Nusbaum らが開発した長鎖オリゴによる捕捉法(Nature
Biotech. 2009)をベースにしており、本セミナーではがんゲノムのエクソン配列解析の
実際について紹介する。