「レジャーホテルマネジメントセミナー 2013」報告 リニューアル、資金調達、ソフト強化、利益率アップ ホテル経営・運営に関する多彩な講座をラインナップ 編集部 江広が、 「レジャーホテル経営者・利用 ポレーション 代表取締役・美馬辰也氏 者アンケート分析」をもとに、業界の最 にご登壇いただいた。 新動向を解説(詳細は本誌8頁を参照) 。 レジャーホテル業界において長年にわ 一方、第二部では、レジャーホテルの たる経験と実績を有するお二方に、 「高 弊社主催によるレジャーホテル業界の 成長戦略に不可欠なリニューアルをテー 収益ビジネスモデル」としてのレジャー 設備機器展示会「レジャーホテルフェア マとして設定。 ホテル経営・運営の再構築について語っ 2013」は、今年は10月23、24日の両日、 「東 ㈱KOGA設計 代表取締役・古賀志雄 ていただいた。また、美馬社長には、レ 京ビッグサイト」にて開催し、トータル 美氏、㈱西岡裕二設計研究室 代表取締 ジャーホテルの「償却戦略」について、 2日間・8講座で 601人の受講者を数える で4,432人の来場者を数えた。 役社長・西岡裕二氏のお二方にご登場い グループホテルの具体的なデータをもと さらに、同時開催の「レジャーホテ ただき、 「リニューアル投資の検証」と に詳細に解説していただいた。 ルマネジメントセミナー 2013」は、2日 いう視点から、最新のリニューアル事例 初日最後の「LH−4」講座は、若手 間で8講座をラインナップ。トータルで を、具体的なコストおよびデザイン面の 経営者を中心としたパネルディスカッシ 601人のホテル関係者の方々にご受講い 「Before / After」を中心に紹介した。 ョンを実施。 ただいた。 「LH−2講座」は、戦略的なリニューア 「ウォーターホテルS」ブランドを展開 無料公開の初日の「LH−1」講座の ルを実現するための「資金調達」と「融 する㈱竹梅 代表取締役・清水祐侍氏、 第一部は、 「レジャーホテル経 営 動向 資条件」をテーマに、あすか信用組合 福岡県で5店舗を経営する㈲プランタン 2013 ∼ 2014」と題し、弊誌編集長・金 業務推進部部長・木村弘氏と、中央商銀 代表取締役・森藤紳介氏、東北を中心に 信用組合・業務部部長・ 4店舗を展開するアムリタホールディン 齋藤智成氏をお招きし グス㈱ 代表取締役・西間木 勉氏という、 2 日間・8講座で 601 人の受講者を数えた「レジャーホテルマネジ メントセミナー 2013」 32 レジャーホテル No.103 た。レジャーホテル融資 ホテル事業に積極的に取り組む二代目・ に多くの実績を有する両 若手経営者が登場。首都圏、地方都市な 行の考え方を中心に、と ど、マーケットが異なるなかでのホテル くに「4号 営 業 ホ テ ル 」 戦略について、具体的な取組みを中心に が融資を得るためのチ お話しいただいた。 ェックポイントなどにつ 2日目の「LH−5」講座は、 「リニュー いて解説していただい アル手法プレゼンテーション」として無 た。 料公開。 「LH−3講座」は、ビ ㈱アルメックス情報システム事業部 ッググループ 会長・金 課長・五十嵐修平氏、主任・佐藤美由紀 沢孝晃氏と、㈱ミマコー 氏のお二人が「集客マーケティング」に ついて、フォーラム フロンティア ネッ トワーク㈱代表取締役・渡邉敏樹氏が、 「エンターテインメントVOD・映像」に ついて、それぞれ最新情報を解説した。 また、 「LH−6」講座は、レジャーホ テルのスタッフ研修に多くの実績を有す る㈲セレネコーポレーション 代表・井上 房代氏がご登壇。 「自主的に動くパート・ アルバイトスタッフを育てる」というテ ーマのもとに、いかにスタッフのモチベ 懇親パーティにてご挨拶をいただいた(一社)日本自動車旅行 ホテル協会 会長・當麻勝敏氏 ーションアップを図るか、具体的なマネ ジメント事例を中心に講演した。 「LH−7」講座は、神奈川県で「くち ースワークについてビジュアルを中心に なし城」ブランドとして厚木店、伊勢原 解説していただいた。 体的な取組みについてご開示いただい 店を展開する㈲美樹土観光 代表取締役・ 最後の「LH−8」講座は、本誌で連 た。 市川春樹氏をお招きし、同氏が取り組ま 載をお願いしている㈱スパイラル 代表 また、初日の夕方5時45分から、東京 れた両ホテルのリニューアル戦略につい 取締役・平田壯吉氏がご登壇。 ベイ有明ワシントンホテル「アイリス」 てお話しいただいた。 益改善を図る」ソフト強化の考え方と具 同氏がコンサルティングを行なった において「レジャーホテルマネジメント さらに、両ホテルのリニューアルを担 「デ・ラ・ピエール」 (京都市)と「HOTEL セミナー 2013 懇親パーティ」を開催。 当した㈱プラスエフ建築設計室 代表取 HANA GROUP」 (仙台市)の再生事例 レジャーホテル経営者や業界関係者130 締役・桑原義弘氏に、具体的なプロデュ を中心に、 「大きなコストをかけずに収 人が参加し、情報交換を行なった。 33 金沢孝晃氏 ビッググループ 会長 ■今回、 「日本中小ホテル旅館協同組合」として、毎日新聞(10月19 ていないのですが、店長には「徹底的 日土曜版)に一面広告を掲載しました。私が組合の理事として目指 に綺麗にすることだけを考えろ」と言 しているのは、業界を社会的にレベルアップさせることです。金融 い続けました。 “綺麗”ということには、 機関に対しても、社会的に認知されている業界なのだと積極的にア 清掃の徹底とともに、設備機器のメン ピールしていただきたい。 テナンスなども含まれます。サービス ■売上げ低下の要因は過当競争です。業界は二代目の時代になり、 業としての接客も大切です。内線でも、お客さまに対して頭を下げ 売上げが伸び悩み融資環境が厳しいなか、一部の経営者が“安売り” て対応しなさいと指導しています。そうしたスタッフ教育が今後さら の運営企業にホテルを運営委託している。そのためにダンピングが に求められているのです。 広がり、まともにやっているホテルが儲からなくなってしまっている。 ■レジャーホテルは非日常的な遊びの空間でもあるわけですから、 「4 これは大きな問題です。 号営業ホテル」は、もっと遊びの要素を盛り込んだデザイン演出を ■以前、月商800万円のホテルで、店長を替えただけで3か月後には 行なうべきでしょう。清潔かつ快適で、夢のある空間をお客さまに提 前年対比で200万円、売上げがアップしました。設備投資など何もし 供することが基本になるのです(抜粋) 。 美馬辰也氏 ㈱ミマコーポレーション 代表取締役 ■20年前にレジャーホテル業界に就職し、新宿のホテルを担当した つない清潔な客室空間を提供すること のですが、当時は60室で売上げは約9,000万円、客単価は9,000 ∼ 1万 に注力すべきです。そして、カップル 円です。休憩は2時間のみで、 サービスタイムなどもありませんでした。 がお帰りの際に「いいホテルだったね。 それに対して現在、 当社の直営ホテルの客単価は6,000 ∼ 7,000円です。 また利用したいね」と言ってもらうこ 客単価の低下の一方で、人件費や公共料金は上がり、ホテルの利益 とが、ホテル運営の究極の目的なので 率はどんどん下がっています。それでも、空けているよりもましだと す。 料金を下げて集客を図ろうとする。これでは、レジャーホテル本来 ■ホテル事業にとって重要なのが「償却」です。売上げから経費を の事業特性が失われてしまいます。ホテルは儲からなくなってしまっ 引いて、そこから償却を引いたものが課税対象額です。つまり、償 ている。 却とは実際の金額と同じです。たとえば「○○号室、クロス張替を ■お客さまは本当に安さだけを求めているのでしょうか?けっしてそ 実施。償却は○年」とデータ管理しておけば、お客さまがクロスを うではありません。 「あのホテルは清潔で安心して利用できる」と感 汚して張替える必要になっても、 「償却」から「除却」として処理で じていただければ、他のホテルよりも高くても利用してくださいま きるのです。こうした償却戦略も含めた長期的な事業展開が求めら す。料金の値下げや無料サービスを行なう前に、髪の毛やゴミひと れるのです(抜粋) 。 清水祐侍氏 ㈱竹梅 代表取締役 ■通常のレジャーホテルの場合、立地するマーケット内の利用客を っています。 いかに自ホテルに集客するかという発想になるわけですが、当社が ■こうした取組みを担っているのが現 手掛けた「ウォーターホテルS」ブランドの基本の考え方は“顧客 場スタッフです。試行錯誤を繰り返し の創造”です。 ながら、彼らの成長とともにウォータ ■顧客を創造するためには、徹底した差別化戦略が重要になります。 ーホテルSのブランド力も向上してい デザイン・設備はもとより、リネンやアメニティ、飲食、そして接 きました。スタッフ教育とは“スタッフを信頼し任せきる”ことにあ 客と、ホテル空間としての圧倒的な価値の訴求が求められるのです。 ります。多少の失敗には目をつむり、前向きな取組みをサポートして たとえばホテルで提供する飲食メニューにしても、 徹底した“手作り” いくことが、スタッフのレベルアップの最大のポイントだと認識して を追求するとともに、使用する食材も季節感とともに産地にもこだわ います(抜粋) 。 34 レジャーホテル No.103 森藤紳介氏 ㈲プランタン 代表取締役 ■地方マーケットの場合、 “安売りホテル”との競合が大きな問題に の徹底は当然のことですが、美味しい なるのですが、価格の安さの訴求では、安定した売上げ確保は見込 飲食メニューの提供や内線電話なども めません。以前、福岡市内の高級シティホテルのラウンジを利用した 含めたキメ細かな対応など、サービス のですが、オシャレなカップルがカクテル片手に会話を楽しみ、どこ 業としてのホスピタリティの創出が求 かへ消えていきました。そうした需要もあるのだなと痛感し、昨年11 められます。そのために現在、スタッ 月にリニューアルオープンした「HOTEL NEST」では、 “男性が女 フとのコミュニケーションを重視しながら接客レベルアップに取り組 性に対して見栄を張れるような”高級感のある空間・サービスの構 んでいます。マーケットは小さいわけですから、いかにホテルのファ 築を目指しました。 ンをつくり出すかということが、地方における生き残りのカギだと考 ■繁盛ホテルづくりの基本は高品質な接客にあると思います。清掃 えています(抜粋) 。 西間木 勉氏 アムリタホールディングス㈱ 代表取締役 ■今年4月にリニューアルオープンした「HOTEL SPICE」 (青森県三 ら「企業」への転換を目指しているわ 戸郡)では、まず、ホテルのキャラクターの公募を行ない、次に選 けですが、そのためには、関わりをも ばれたキャラクターの人気投票を実施し、さらに決定したキャラクタ つすべての人が幸せになれるような経 ーのネーミングを募集するという段階的なイベント展開で「ホテルの 営基盤の構築が求められます。まず組 熱狂的なファン化」を図っています。こうした参加型イベントは、お 織をひとつにすることが大切であり、 客さまに喜んでいただけるとともに、スタッフ自身が考え取り組むこ そのためには、経営者である私自身の経営理念、社是、目標を明確 とでスタッフの成長という面でも大きな効果が期待できます。 化し、それをスタッフへの道標として的確に伝え、共有・共感して ■ホテル事業発展の基本となるのはスタッフです。現在、 「家業」か もらうことが最大のポイントになると認識しています(抜粋) 。 市川春樹氏 ㈲美樹土観光 代表取締役 ■三代目として継承した「4号営業ホテル」のリニューアルに取り組 素材を活かしたホテル空間のブラッシ みました。施設の老朽化が進み低価格帯層を中心に集客していたの ュアップを実現していただきました。 ですが、小さなマーケットでも、高客単価層は確実に存在します。 ■看板規制の影響もあり当初は苦戦し そこで、そうした客層に訴求する高品質な空間・サービスの構築を ましたが、 “来店されたお客さまを固定 目指しました。 客化する”という視点から、徹底した ■㈱竹梅の清水社長が経営されている「ウォーターホテルS」ブラ ソフト強化に注力し、客単価の大幅アップとともに、口コミなどを中 ンドに衝撃を受け、自分自身のなかにあったレジャーホテルに対する 心に組数も伸び、現在も右肩上がりで売上げは伸びています。価格 既成概念を打ち破る新しいチャレンジでした。設計を依頼した㈱プ の安さではなく、宿泊空間としての高品質のアピールこそが繁盛ホテル ラスエフ建築設計室の桑原先生には、4号営業ホテルとしての特性と の基本だと思います(抜粋) 。 平田 壯吉氏 ㈱スパイラル 代表取締役 ■レジャーホテルにとってリニューアルなどの設備投資は売上げアッ 境の整備です。スタッフが楽しく働き プに不可欠です。ただ、売上げが低迷しているホテルの多くは、リ やすい環境を整備することは、作業効 ニューアルを行なう前にもっと“やるべきこと”があるのではないで 率の向上とともに、効果的なコスト削 しょうか。このやるべきことをしっかりと徹底させてからリニューア 減を実現します。 ルを行なうことで、投じたコストが売上げとして何倍にもなって返っ ■私が独自に行なった利用者アンケー てくるのです。 トで、ホテルを選ぶ際のポイントで「価格の安さ」の回答は全体の ■無駄なコストを絞り込み、マーケット内の利用客の特性や生活スタ 12%にすぎません。お客さまがホテルに求める最大の要素は「清潔 イルを精査し、それに合致したサービス・システムの提供が求めら で素敵な空間」です。集客が落ちたからと料金の値下げに走る前に、 れるのです。そして何よりもポイントとなるのが、スタッフの作業環 そうした空間づくりを目指すことを考えるべきでしょう(抜粋) 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