祝 辞 - 全国書画展覧会

祝
辞
文部科学大臣
下 村 博 文
第81回全国書画展覧会が、「筆の都」である広島県
熊野町において盛大に開催されますことを心からお喜び
申し上げます。
また、このたび入賞されました皆様、誠におめでとう
ございます。
昭和6年に始められた全国書画展覧会は、今回で81
回を迎えます。この伝統ある全国書画展覧会は、我が国
の伝統文化である書写・書道及び図画工作・美術教育の
振興に寄与する展覧会として、多くの方から高い評価を得ています。本年度も全国の
小・中学校から多数の児童生徒が参加されたほか、海外21か国からの応募もあり、
書写の部及び画の部を合わせて計17万点もの力作が寄せられたと伺っております。
さて、一昨年の小学校に引き続き、昨年の中学校、そして今年4月からは高等学校
において、新学習指導要領が順次実施されております。
この新しい学習指導要領では、国語書写において、文字を正しく整えて速く書くこ
とができるようにするとともに、書写の能力を学習や生活に役立てる態度を育てるよ
う配慮することが示されています。また、美術においては、感性を働かせながら、創
り出す喜びを味わうようにするとともに、造形的な創造活動の基礎的な能力を培い、
豊かな情操を養うことなどが目標として示されています。
筆を使って正しく整った文字を書いたり、あるいは楽しく美しい絵を描いたりする
ことは、一人一人の豊かな文字感覚や情操を高めるとともに、我が国の伝統文化に対
する理解を深めることにつながります。
今回、この展覧会に多くの児童生徒の皆さんが、すばらしい書や絵の作品を出品さ
れたことは、書写・書道及び図画工作・美術の水準を一段と向上させることに大きく
寄与するものです。今後皆さんが、表現力や鑑賞する力を一層伸ばし、やがては新し
い時代の文化を創り出すようになっていただきたいと願っています。
結びに、長年にわたり書写・書道教育及び図画工作・美術教育の振興に貢献されて
いる熊野町の皆様の御尽力に心から敬意を表するとともに、本展覧会が今後とも我が
国の子供たちの豊かで健やかな成長を促し、ますますの発展を遂げられることを祈念
いたしまして、お祝いの言葉といたします。
祝
辞
広 島 県 知 事
湯 﨑 英 彦
「第81 回全国書画展覧会」が全国一の筆の生産量を誇る
熊野町において,今年も盛大に開催されますことを心から
お慶び申し上げます。
また,この度入賞された皆さん,誠におめでとうござい
ます。この受賞は皆さんの日頃の努力の賜物であるととも
に,熱心に指導に当たられた先生や家族の支えがあってこ
そだと思います。今後とも更なる精進を重ね,書画を通じて心豊かに成長され
ますことを期待しております。
全国書画展覧会は,長い歴史と伝統を重ねた,全国でも最大級の規模を誇る
書画展であり,近年では国内はもとより海外からも多くの作品が寄せられるな
ど,回を重ねるごとに規模,内容ともに充実し,高い評価を得ています。
日本の伝統文化である書や画は,次代を担う青少年の豊かな感性を育み,創
造力を養うものであり,本展覧会の開催は,青少年の健全育成にとりましても,
また,文化・芸術の振興にとりましても,誠に意義深いことでございます。引
き続き,御尽力を賜りますようお願い申し上げます。
終わりに,開催に御尽力されました関係者の皆様に深く敬意を表しますとと
もに,本展覧会の御盛会と,今後ますますの御発展を祈念いたしまして,お祝
いの言葉といたします。
祝
辞
広島県議会議長
林
正
夫
県議会を代表して,一言お祝いを申し上げます。
第81回全国書画展覧会が,「筆の都」熊野町において,盛
大に開催されますことを,心からお喜び申し上げます。
開催に当たって,御尽力いただいた運営委員会の皆様をはじ
め,関係各位に深く敬意と感謝の意を表します。
また,各賞を受賞されました皆様の御栄誉を称え,心からお
祝い申し上げますとともに,今後とも,一層御精励いただきますようお願い申し上
げます。
さて,書写・書道は,繰り返し練習することで忍耐力や集中力を養うとともに,
正しく美しい日本語を身に付けることによって,表現力や理解力が向上するなど,
様々な効果が期待されております。
また,書に親しむことは,伝統文化に対する理解を深める上で重要であり,日本
人としての心の教育においても効果が期待されるものであります。
こうした中,本年も,全国の小中学校や塾はもとより,海外21か国41地域の
日本人学校などから,約17万点の作品が寄せられましたことは,学校教育におけ
る書画等の創作活動の必要性を訴えてこられた皆様方の取り組みの成果であり,ま
た伝統的な日本文化の承継を図るという意味においても,誠に意義深いことと存じ
ます。
私ども県議会といたしましても,書道芸術をはじめ,伝統文化の振興や生涯学習
の充実を通じて,次代を担う人材の育成と豊かな県民生活の実現に努めてまいりま
すので,皆様方におかれましても,より一層の御協力をいただきますようお願い申
し上げます。
終わりに,全国書画展覧会のますますの御発展と,皆様方の御健勝,御活躍を祈
念いたしまして,お祝いの言葉といたします。
祝
辞
広島県教育委員会教育長
下﨑 明
「第 81 回全国書画展覧会」作品集が刊行されますことに対
しまして,心からお慶び申し上げます。
また,日本一の筆の産地である「筆の都」熊野町において開
催される全国書画展覧会に,全国から約 17 万点もの作品が出
展されました。出品された作品の中から,このたび優秀作品を
はじめとする各賞を受賞されました皆様に,心からお祝い申し
上げます。
さて,書写の指導について,小学校学習指導要領では,日常生活や学習活動に役立
てる観点から,毛筆と硬筆を関連させた指導法を創意工夫することが求められていま
す。また,中学校学習指導要領では,文字文化に親しませる観点から,文字を手書き
することの意義に気付かせることや,文字の芸術性に関心をもたせることが求められ
ています。さらに,高等学校におきましても,芸術科(書道)では,書の文化の継承
と創造への関心を一層高める観点から,学習内容の改善が行われています。
熊野町におかれましては,
「熊野筆」の名で知られる筆の産地であり,
「筆の都」と
して町をあげて伝統文化の継承・発展に取り組んでおられます。その特色を生かし,
町内の小学校において,平成 22 年度から低学年に「書道科」の授業を導入し,伝統
文化に親しませ,児童の落ち着きや集中力などの資質を伸ばし,心の豊かさを育む取
組を進めておられます。
県教育委員会といたしましても,学習指導要領に基づいた指導の充実に努めるとと
もに,本県教育の目標である「広島で学んで良かったと思える日本一の教育県の創造」
に向けて,郷土愛の育成を図ることなどに重点的に取り組んでいるところです。
このような中で,我が国の伝統と文化のすばらしさにふれることのできる本展覧会
が開催されますことは,児童生徒に生涯にわたって書を愛好する心情を育て,書の文
化を尊重する態度を養うためにも,大変有意義なことと考えております。また,今回
も国内外から多数の応募がありましたことは,本展覧会が,81 年間にわたって書画の
魅力を世界に発信し続けてきた大きな成果であると考えております。
本展覧会の開催に向けて御尽力いただきました関係者の皆様に,心から敬意を表し
ますとともに,全国書画展覧会の今後益々の発展を祈念し,お祝いのことばといたし
ます。
祝
辞
熊野町長
三 村 裕 史
筆の都「熊野町」において、今年も多くの応募作品の出展を
頂き全国書画展覧会を開催することができますことを関係者の
一人として大変嬉しく存じます。
今回で第81回を迎えるこの展覧会には、全国の小・中学校、
海外の日本人学校等から約 17 万点もの応募があり、規模、内容
ともに充実した国内最大級の公募展として、熊野町民の誇りと
なっています。
日ごろの精進が実を結び、内閣総理大臣賞をはじめとする各賞を受賞されました皆
さんに対しまして、心からお祝い申し上げます。今後とも、この受賞を励みとされ、
より一層の研鑽を積み重ねられ、素晴らしい作品を創作されますことを期待しており
ます。
さて、本町では、毛筆・画筆・化粧筆の産地として筆に関わる教育の一環として、
学習指導要領で小学3年生から始まる書写教育を、小学1・2年生の低学年にも行っ
ています。これは、筆の町であります本町に親しみを持ってもらい、書道を通して姿
勢を正し、心を落ち着かせることで、集中力や持久力の向上を図るとともに、日本の
伝統文化の良さを認識させ、豊かな人間性の育成を願ってのものです。
また、日本一の筆産地としての特性を活かし、賑わいづくりや交流人口の拡大にも
努めてまいりました。こうした取り組みを背景とし、展覧会には全国から書画作品が
出品され、表彰式には全国各地から受賞者が集い、本町の筆文化事業の象徴的な催し
として定着しています。
筆を使って正しく整った文字を書いたり、美しい絵を描いたりすることは、子ども
たちの豊かな感性と鑑賞の力を伸ばすとともに、伝統文化に対する理解にもつながり
ます。今後もこの展覧会を通じて、筆の都「熊野町」から国内外へ、筆から始まる文
化の創造を発信してまいりたいと存じます。
結びに、この展覧会の開催に当たり、内閣府をはじめ、文部科学省、広島県、広島
県教育委員会その他関係諸団体から御支援、御協力をいただきましたことに深く感謝
を申し上げまして、お祝いの言葉といたします。
ご
挨
拶
全国書画展覧会運営委員会
委員長
宗 盛 勝 則
今年で81回の歴史と伝統を誇る全国書画展覧会が、全国の
児童生徒の皆さんのご努力と先生方のご理解とご協力また保
護者の皆様方のご支援により盛大に開催されますことに、まず
もってお礼申し上げます。
今回も全国の多くの小中学校そして塾等3,100余りの団
体、また海外からも21カ国41地域の日本人学校などから合
わせて約17万点もの作品を出品していただきました。
この度、栄えある賞に入賞されました児童生徒の皆さん、誠
におめでとうございます。
全国書画展覧会は、教育の基礎基本である国語の文字教育と日本の伝統的な文化で
ある書写・書道、また美術造形教育の振興を目的に運営を進めてまいりました。
審査につきましては、現在の教育課題に適応した内容などを審査とするため、学校
での指導を公平に下審査した後、最終審査では、審査長として毎年文部科学省の教科
調査官の先生方にお願いし、学習指導要領に則した教育本位の審査をしていただいて
います。
受賞された皆さんは、今回の受賞を励みとし今後も一層精進していただきたいと思
います。また、優秀校に選ばれました学校におかれましては、校長先生をはじめ諸先
生方の熱心なご指導と児童生徒の努力の賜物で、深く敬意を表し、お慶びを申し上げ
ます。
熊野町は、毛筆・画筆・化粧筆の国内生産日本一を誇る筆の町で、日本の文字が
書きやすい筆の作り方の伝統技術があり、長年培ってきたそれぞれの職人の熟練の技
と熱意によって、子どもたちにも書きやすい筆を作っています。
終わりになりましたが、この展覧会の開催にあたり、内閣府、文部科学省、広島県
を始め、共催やご後援とご協力をいただきました関係各機関・団体・事業所に対し、
厚くお礼を申し上げまして、ご挨拶といたします。
全国書画展覧会について
日本一の筆産地「筆の都」広島県熊野町における全国書画展覧会は、
昭和6年に全国書き方展覧会として始まり、以来毎年開催され古い歴史
と伝統があり、今回で81回を数えます。
国語教育の基礎基本であり、伝統的な日本文化で心の教育の一環とし
ても期待が大きい毛筆書写教育を守る立場から、この展覧会を運営して
まいりました。幸い全国の多くの学校の先生方や保護者の皆様に支えら
れ、今回は全国の小・中学校及び塾など3,100余りの団体から書写
の部、画の部合わせて約17万点もの作品が集まりました。
この展覧会の特徴は、授業(学校行事)の一環として取り組みやすい
ようにしていることです。書写の部は学校で使用している書写の教科書
から課題が選択できるようにし、画の部は課題・用紙の大きさを自由と
し、絵手がみも受け付けています。こうした応募規定から、1学期の代
表作品や夏休みの課題として出品していただいています。また、学校か
らと塾などからの応募は、下審査の時から本審査まで一貫して別審査と
し、学校での指導に公平を期しています。
5月、全国すべての小・中学校に展覧会の案内を送付しています。
審査長は、現在の教育課題に適応した内容を審査とするため、文部科学
省初等中等教育局教育課程課の教科調査官の先生にお願いし、学習指導
要領に則した教育本意の公正な審査をしていただいています。
11月中旬、優秀作品の展覧会を開催するとともに表彰式を行い、全国
各地から受賞者が集まります。
応募者全員に賞状を授与しており、金賞以上の入賞者には本人の作品
画像入り賞状としています。
この展覧会は、国内だけでなく海外21カ国41地域の日本人学校な
どから約3,100点の力作が寄せられ、また、中国四川省内江市から
は、永年青少年の書画作品が賛助出品されています。海外から出品され
た作品は、優秀作品と一堂に展示披露しており、国際色豊かな展覧会と
なっています。
審査経過報告
◆
応募総数 169,809点
書の部 158,333点
画の部
11,476点
全国2,306校(書画延べ2,524校)というたくさんの小・中学校から、ま
た、831団体の書道塾・個人、それから海外の日本人学校を含め約17万点もの作
品を出品していただきました。
5月に全国の小・中学校や書道塾等に募集要項をお届けし、7月からエントリーが
始まり、作品が届き始めました。審査は9月下旬から1点1点、多くの先生方の目を
通して、各団体ごとに一次審査を行いました。熊野町近隣の学校現場の先生方にもご
協力をいただき、教室での現場指導に評価の観点をおきながら、授業にまじめに取り
組んでいる熱心な書きぶりの作品をなるべく取り上げていただきました。学習指導要
領に示された目標に沿って、相対評価に配慮しながらも基礎基本の徹底という観点で
は絶対評価が大きなウエイトを占めました。実生活に生きてはたらく書く力という意
味では、名前も大きなポイントです。自分の名前はきちっと正しく丁寧に書くことが
大切です。
まず、書の部、画の部それぞれ全体から金賞以上の割合を出し、金賞以上に選り分
け、残りを銀賞、銅賞、入選に按分しました。次に、金賞以上の作品の中から特選以
上の作品、書の部では約4,400点、画の部では約900点を選び出し、更に筆都
大賞以上を絞り込んでこれを本審査にかけることとしました。
今年度、書の部の審査長は昨年度と同様、文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官の
冨山
調査官
京子先生にお願いして、10月13日、熊野第一小学校体育館におい
岡田
哲也先生と
加藤
泰弘先生に、また、画の部では同じく教科
て厳正かつ公平に審査が行われました。最終選考では作品をすべて体育館の広いフロ
アーに並べ、吟味に吟味を重ね、熟考して特別賞を選びました。
書の部では、
画の部
内閣総理大臣賞以下特別賞76点、筆都大賞747点
特別賞20点、筆都大賞116点
が選ばれました。特選、金賞、銀賞、銅賞、入選の数や都道府県別の出品数は別紙の
とおりです。
また、審査長の先生方の審査講評は別紙のとおりです。
入賞された皆さんはどうかこの度の受賞を大きな励みとされまして、ますます書や
絵画の作品づくりを続けていただきたいと思います。
第81回全国書画展覧会
書
の
審査長
紹介
部
文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官
冨
山
哲
也
先生
文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官
加
画
の
藤
泰
弘
先生
部
文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官
岡
田
京
子
先
生
全国書画展覧会(書写の部)
平成 25 年度の審査を終えて
文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官
冨山哲也
第 81 回全国書画展覧会・書写の部の審査が無事に終了いたしました。
本年度も,レベルの高い作品が全国から集まりました。審査に当たっては,例年同様,
「用
紙に対する文字の大きさ・配列」
,
「点画の種類の意識」,
「点画のつながりの意識」,
「(行書の
場合は)行書の特徴」等を主な観点にしました。入賞された作品は,どれもこれらの点につ
いて優れたものばかりでした。本冊子に作品の写真が多数掲載されていますので,全国の小・
中学校における書写の学習の際に,参考にしていただきたいと思います。
さて,中学校では新しい学習指導要領が全面実施になって2年目を迎えています。この学
習指導要領では,第2学年の国語科の授業時数が週3時間から4時間に増えました(年間 140
時間)。これを受け,第2学年でも年間 20 時間程度の書写の指導が位置付けられています。
この 20 時間を年間のどの時期に実施するかは各学校の判断ですが,私は個人的には,一年間
を通してバランスよく実施してほしいと考えています。
「書初め」の時期等に集中して指導す
ることも考えられますが,やはり,文字を書く学習は繰り返し行われてこそ効果があると思
うからです。
そして,書写の指導に当たっては,毛筆を用いることが欠かせません。特に中学校では行
書の基礎を学びますから,毛筆で行書を書くときの筆の運びが,硬筆による書写につながっ
ていきます。国語科全体の学習や日常生活とも関連を図りながら,毛筆と硬筆の両方につい
て計画的に指導することが必要です。
さらに,中学校の書写の学習では,多様な文字に関心をもつことを求めています。先日,
新潟県に行った際に,たくさんの日本酒が試飲できるコーナーを訪ねることがありました。
そこの壁には,100 を超えると思われる日本酒の銘柄が並んでいましたが,改めて見ますと,
そのほとんどが毛筆の文字でした。漢字も仮名も使われていましたが,個性的な文字の一つ
一つが,お酒の名称と相まって実に印象的で味わい深く感じられました。このように,私た
ちの周りには様々な文字があります。そして,その中には,毛筆による文字がたくさん含ま
れています。そこには,日本人の毛筆の文字に対する思いが反映されていると思います。
皆さんも,毛筆で文字を書くとともに,身の回りの文字を改めて注意して見てみてくださ
い。文字を味わうことは,皆さんが文字を書く際にも,きっとよい影響を与えてくれるはず
です。
本年度も,本会が日本の書画に関する教育の発展に多大な貢献を続けられていますことに,
深い敬意を表します。そして,参加した児童生徒の皆さん,指導に当たられた全国の先生方
やご家族,大会運営にご尽力いただいた関係各位に心より感謝申し上げます。次年度も,多
くの方の参加を期待いたします。
第81回全国書画展覧会「書写の部」 の審査を終えて
文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官 加藤泰弘
第81回展の「書写の部」において各賞を受賞された皆さん,本当におめでとうご
ざいます。どの作品も基本点画が,しっかりとしており,練度が極めて高く,練習量
の多さを感じました。今回は158,333点の出品があり,この全国書画展は,出
品点数そして81回という歴史からみても日本を代表する作品展といえます。作品の
レベルも毎年のように向上しており,特別賞を選考するのは本当に苦労しました。
審査にあたりましては,字間・行間,余白,文字の中心,名前など,まず全体構成
を確認していきました。どんなに筆使いが優れていても,文字が小さかったり,名前
の位置がぴったりときまっていないと全体感に課題が感じられてしまいます。次に,
作品の一点一画を指でゆっくりとたどり,皆さんが作品を書いている過程をしっかり
と確認するようにしています。そうすることで,たとえば,一画目の始筆に入る筆の
力,速度,角度,また送筆で筆の穂先がどこを通ったのか,終筆における筆の動き等
がまざまざと立ち上がってくるからです。小学校学習指導要領の国語科「書写」の指
導事項においても,第 3 学年及び第 4 学年では,筆圧などに注意して書くこと,また
第 5 学年及び 6 学年では、穂先の動きや点画のつながりに注意して書くことが示され
ています。文字は、決して線で構成されているものではありません。始筆・送筆・終
筆をもった点画が一連の動きの中で書かれていくことによって字形として現れてく
るものです。作品の書字過程をていねいにたどれば,皆さんのすばらしい筆使い,苦
心した様子,緊張感がまざまざと目の前に浮かんでくるのです。今回,特別賞に選ば
れた作品は,心を込めて書かれているばかりでなく,筆の動きが自然で、心地よいリ
ズムが感じられた作品ばかりでした。
小学生の皆さんは,このすばらしい書写力を日常生活や学習活動に生かしてくださ
い。普段から文字をていねいに,正しく整えて書くことを心がければ確実に毛筆と硬
筆の書写力は相乗効果をあげるはずです。また,中学生の皆さんは,学校では点画を
連続・省略して速く書くことができる行書という書体を学習します。この行書と楷書
を場面によって使い分けるなど,常に目的意識,相手意識をもつようにするとよいで
しょう。さらに,日常生活に広がる手書き文字などの文字文化に目を向けるようにし
てください。
最後に本展覧会に参加した児童・生徒の皆さん,指導にあたられた先生方,またご
家族の皆様,そしてこの展覧会の運営に当たられました皆様に敬意を表し,この展覧
会の今後のさらなる発展を祈念致しまして審査講評と致します。
審 査 講 評
文部科学省初等中等局教育課程課
教科調査官
岡田
京子
「全国書画展覧会」の審査をさせて頂くことを、毎年楽しみにしています。今年も、
どの作品からも子どもたちの楽しそうな声が聞こえてきました。そこに子どもたちが
実際にいるようでした。ここでは、内閣総理大臣賞と文部科学大臣奨励賞の 3 点の作
品を見ながら、子どもの絵について考えてみたいと思います。
(1)
内閣総理大臣賞
一番左側に、うずくまっている少年がいます。首の角度、組まれた手の感じ、何か
考え込んでいるのか無気力なのか、いずれにしても沈んだ感じの印象です。その左側
には片足を立てた少年がいます。無表情ですが、顔を上げて前を見ています。そして、
立って一歩踏み出している少年。立ち上がってはいますが、胸をはっているという感
じではありません。肩や腕の感じから、どこかまだ不安そうです。着ている服が同じ
ことから、この少年は同一人物だということが想像できます。
少年の周りに目を向けてみましょう。ポツンと制服が壁にかかっています。窓の外
には人がいます。こちらを見ているような感じがします。扉のところには、木の幹と
根っこのようなものがあります。光に照らされた鳥や蝶がはばたいています。外から
光が差し込んで、花が咲き乱れています。扉の外の世界に行くのは不安です。でもも
う一歩踏み出せばそこに行けるのです。
描かれているものをつなぎあわせると、中尾さんが私たちに何を伝えたかったのか
がわかってきます。自分の表したいことのために構図を考え、表し方を工夫していま
す。見事です。全体的にとても丁寧に心を込めて描いているので、この絵を見る人に
何か伝えたいという中尾さんの強い思いも伝わってきます。感情や内面に心を向け、
様々な思いや感じ取ったことから主題を生み出している、じっくり、ゆっくり見て、
考えたくなる作品です。「大丈夫、支えてあげる」というやさしい中尾さんの声も聞
こえるようです。
(2)文部科学大臣奨励賞 小学生の部
バスケットボール大好きということが、しっかり伝わってくる作品です。ユニフォ
ームの色の違い、二人の表情から、真剣勝負だということが想像できます。
白いユニフォームの人のぐっと伸ばした左腕、青いユニフォームの人のボールをつ
かんだ手と腕の感じは、自分でこのポーズをしてみたり、自分の体を見たりしなけれ
ば表せない形です。動きを表そうとして「こんな感じかな」「いや違う。もっとこう
だな。」と形や色を探りながらかいている中田さんの様子が目に浮かびました。足の
方はかかれていませんが、ジャンプしている膝の形やつま先まで想像できる、素晴ら
しい作品です。
心が動き、手や体全体を動かし、様々なことを考えながら、一枚の絵はつくりださ
れます。構図や筆遣いから、中田さんがいろんなことに真剣に向き合っていることも
感じ取ることができるようでした。
(3)文部科学大臣賞 中学生の部
男の子と女の子が手をつないで歩いています。女の子は歩道の縁石の上を歩いてい
ます。車道側を男の子が歩いているので、小さい女の子のことを気遣っていることが
わかります。でも二人とも前を見ています。楽しく話しながら歩いているというより、
ちょっぴり不安げな様子の二人です。奥の方は街灯が多いので、住宅街から商店街へ
と向かう道なのでしょう。お使いにいくところでしょうか。それにしても、道の感じ
を見事に表しています。アスファルトの感じが一部違うところ、縁石、道と縁石の間、
少し草が生えている道ばた、どれをとっても、この絵に必要な要素です。二人の子ど
も、町並み、道路、この絵に描かれているもの全てに対しての作者の気持ちが伝わっ
てきます。秋か春の夕方のような,少しひんやりした空気も感じました。
対象を見つめ主題を生みだし、構成を工夫して、絵の具の特性を生かし、自分の表
現意図に合う新たな表現方法を工夫しながら制作している山本さんの姿が目に浮か
びました。山本さんから、大事なものは近くにあると教えてもらえました。
内閣総理大臣賞、小学校中学校の文部科学大臣奨励賞を受賞した三つの絵を見てみ
ました。今回紹介した三つの作品は、何度も何度も見たくなる、見るたびに新たな発
見がある作品でした。
絵を描くとき、子どもは、様々な能力を発揮しています。たとえば、形や色、イメ
ージなどを基に想像をふくらませたり、表したいことを考える能力、材料や用具を用
いたり表現方法をつくりだしたりするなど自分の思いを具体的に表現する能力、よさ
や美しさを感じ取る能力、そしてこれらの能力を発揮しながら、意欲的に活動する能
力などです。
私たちは、子どもたちが絵を描くその場に立ち会い、発揮している能力を直接とら
えることは、なかなかできません。しかし、絵から聞こえてくる子どもの声「私は、
こんなことを表したかったの」
「こんな工夫をしてみたよ」
「この色、いい色でしょ。」
を、形や色を通して聞くことができます。その声を聞きながら、活動で発揮された能
力、子どもそれぞれのよさをとらえることができるのです。
子どもの声がよく聞こえる作品からは、
「それが表したかったのね」
「よく思い付い
たね」という周りにいる大人の声も聞こえてきます。そんな言葉をかけてあげられる
ような指導をお願いしたいと思います。
今後も「全国書画展覧会」で、このような作品がたくさん集まることを期待してお
ります。
最後に参加した児童・生徒の皆さん、保護者の皆様、指導にあたられた先生方、展
覧会の運営にあたられた皆様に敬意を表し、「全国書画展覧会」のいっそうのご発展
を祈念いたしまして、審査講評と致します。
第81回全国書画展覧会入賞者一覧
【書の部】
賞
総数
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3
内閣総理大臣賞
1
文部科学大臣奨励賞
2
広 島 県 知 事 賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
広島県議会議長賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
広島県教育委員会賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
特別賞 中国四川省内江市長賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
N H K 会 長 賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
熊
賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
熊野町議会議長賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
熊野町教育委員会賞
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
海外特別奨励賞
1
9
9
野
町
長
1
1
1
小計
76
筆都大賞
747
全体の約 0.5%
特 選
3,582
全体の約 2.3%
金 賞
43,547
全体の約 27.5%
銀 賞
67,365
全体の約 42.5%
銅 賞
35,985
全体の約 22.7%
入 選
7,031
全体の約 4.4%
計
8
8
8
8
8
9
158,333
全国書画展覧会表彰式
書の部審査風景
書の部 展示会場
1
9
第81回全国書画展覧会入賞者一覧
【画の部】
賞
総数
小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3
内閣総理大臣賞
1
文部科学大臣奨励賞
2
広 島 県 知 事 賞
2
広島県議会議長賞
2
広島県教育委員会賞
2
特別賞 中国四川省内江市長賞
2
N H K 会 長 賞
2
熊
賞
2
熊野町議会議長賞
2
熊野町教育委員会賞
2
1
海外特別奨励賞
1
1
野
町
長
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
小計
20
1
1
1
2
3
筆都大賞
116
全体の約 1.0%
特 選
758
全体の約 6.6%
金 賞
1,429
全体の約 12.5%
銀 賞
2,538
全体の約 22.1%
銅 賞
4,013
全体の約 35.0%
入 選
2,602
全体の約 22.7%
計
11,476
1
1
2
3
全国書画展覧会表彰式
画の部審査風景
画の部 展示会場
3
4
県別出品団体数一覧
書 の 部
県名
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
計
小学校
出品数
団体数
1,425
49
2,763
49
998
26
2,290
47
84
16
890
27
1,634
29
1,396
17
175
5
2,351
22
1,935
14
2,608
35
1,912
24
1,819
26
1,512
22
18
254
331
698
1,423
642
915
382
2,297
1,208
687
4,492
1,583
744
140
130
408
16,698
16
361
89
1,431
1,650
1,230
119
847
1,220
57
52
1,910
6,612
72,436
2
7
2
16
26
10
14
8
25
24
12
62
17
25
5
9
16
151
2
12
4
22
29
24
5
22
26
5
2
40
79
1,111
中学校
出品数
団体数
669
30
643
17
496
15
1,624
68
739
11
33
3
3,109
51
1,266
9
276
6
2,074
21
2,062
68
2,449
47
6,763
84
4,232
52
64
8
314
7
221
6
424
1
1,430
1,132
1,617
553
28
1,185
859
1,662
1,342
221
22
43
304
10,784
387
1,582
151
254
1,326
4,733
909
145
1,666
26
64
1,754
2,250
63,888
2
1
55
34
40
24
5
20
28
38
22
11
3
7
25
84
18
22
7
11
15
45
12
7
15
6
3
29
48
1,140
塾・個人
出品数
団体数
63
6
293
8
128
10
186
12
18
4
22
3
292
14
731
19
130
6
91
3
601
22
478
22
568
29
807
49
18
1
53
3
187
5
159
5
138
3
24
3
528
54
721
24
772
32
304
15
26
4
669
26
842
36
771
37
337
13
401
27
94
4
84
4
690
25
2,413
99
619
11
672
21
693
18
167
14
88
2
1,635
62
221
6
286
12
228
16
243
6
45
3
149
7
420
11
19,105
816
計
出品数
2,157
3,699
1,622
4,100
841
945
5,035
3,393
581
4,516
4,598
5,535
9,243
6,858
1,594
367
426
413
893
723
3,381
2,495
3,304
1,239
2,351
3,062
2,388
6,925
3,262
1,366
256
257
1,402
29,895
1,022
2,615
933
1,852
3,064
7,598
1,249
1,278
3,114
326
161
3,813
9,282
155,429
団体数
85
74
51
127
31
33
94
45
17
46
104
104
137
127
31
10
13
12
7
20
135
68
86
47
34
70
76
137
52
63
12
20
66
334
31
55
29
47
46
131
23
41
57
17
8
76
138
3,067
県別出品団体数一覧
画 の 部
県名
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
石川県
福井県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
計
小学校
出品数
団体数
1
1
321
10
27
2
356
3
1
93
10
1
3
2
18
8
79
105
11
1
2
1
6
2
79
50
60
3
3
6
1
7
2
2
1
2
1
2
14
103
中学校
出品数
団体数
89
6
14
1
2
3
1
32
1
1
1
5
10
3
5
213
23
1
237
2,130
7,325
2
5
2
1
7
35
163
団体数
海外 書 計
出品数
2,904
出品数
178
団体数
海外 画 計
65
1
470
60
7
3
1
1
519
99
57
46
422
48
342
21
6
19
6
3
4
3
7
4
4
4
3
1
2
45
1
1
2
1
1
4
3
1
1
1
3
1
18
59
70
5
3
9
3
3
1
1
1
1
2
27
16
2
2
3
3
2
4
2
3
1
17
53
3
4
3
1
10
5
1
1
3
1
2
1
227
38
6
1
35
2,558
20
2
17
238
457
41
塾・個人
出品数
団体数
1
1
768
7
3
3
1
2
53
52
7
2
1
1
39
46
271
3,653
6
1
7
110
計
出品数
90
400
27
827
60
1
614
154
58
46
441
60
424
127
17
19
79
50
81
62
72
7
2
4
30
30
107
8
1
52
3,379
20
5
20
241
457
104
52
12
214
23
43
284
2,401
11,205
41
書の部 合計
出品数
158,333
11
画の部 合計
出品数
11,476
団体数
7
12
2
11
3
1
10
7
5
3
9
7
8
11
5
1
3
3
12
4
11
2
1
4
4
5
6
2
1
4
43
1
2
2
7
10
10
1
3
6
2
9
9
42
311
団体数
3,108
団体数
322