分割版1(PDF:1348KB) - 農林水産省

(資料2-4)
食料安全保障に関する資料
【目次】
1 食料・農業・農村基本法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2 情勢の変化等
(1) 国際的な食料需給の構造的要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(2) 食料をとりまく事情 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
3 主な制度等
(1) 食料の未来を描く戦略会議(概要) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
(2) 緊急事態食料安全保障指針について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(3) 不測時対応に係る現行法制度の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
4 講じた措置等
(1) 農林水産省における東日本大震災への対応
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 緊急時のサプライチェーン機能維持のための取組 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) 家庭備蓄の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) 我が国の農産物備蓄の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
20
22
23
5 輸入の安定に向けた取組
(1) 他国の農地取得の動き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2) 食料安全保障のための海外農業投資について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3) AMIS(農業市場情報システム) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) ASEAN+3緊急米備蓄(APTERR)による支援について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
24
25
28
29
6 食料安全保障上の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
7 平成26年度 関連予算 概算決定の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)
(食料の安定供給の確保)
第二条 食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充
実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な
食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。
2 国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安
定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本と
し、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行わなければならない。
3 食料の供給は、農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な発展
を総合的に図ることを通じ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即して行われ
なければならない。
4 国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内
における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合にお
いても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよう、
供給の確保が図られなければならない。
(不測時における食料安全保障)
第十九条 国は、第二条第四項に規定する場合において、国民が最低限度必要とする
食料の供給を確保するため必要があると認めるときは、食料の増産、流通の制限そ
の他必要な施策を講ずるものとする。
1
食料需給に影響を与える構造的な要因
ファンダメンタルズ
需
中国等の急激な
経済発展
所得の向上に伴う
畜産物等の需要増
加
収穫面積
の動向
単位面積当たり
収量の増加
供
要
バイオ燃料向け等
農産物の需要増加
異常気象
の頻発
給
砂漠化の進行
水資源の制約
家畜伝染病
の発生
穀物市場への投機資金流入
(金融資金の運用先)
世界人口の増加
自国の需給や物価安定が優先
(輸出国にお ける 輸出規制)
基 礎 的 な 要 因
近年、大きな影響を与えている要因
穀物等の国際価格高騰
2
(2050年の見通し) 開発途上国を中心に人口が増加するとともに経済が発展
1
2
3
4
世界の人口は、開発途上国を中心に2050年には92億人に達する見通し。
世界のGDPは、2000年比3.8倍の111兆ドルに達する見通し。
92億人を養うためには、食料需要全体が1.6倍(24.6億トン)に拡大する。
このうち、穀物は、29.3億トンとなり、1.7倍(11.5億トン)の需要拡大が見込まれる。
【図1】所得階層別の将来人口の変化
【図2】所得階層別のGDPの変化
(兆ドル)
途上国
1.9倍増
110.9兆ドル
120.0
途上国
1 6倍増
100.0
12.1
80.0
52.5
60.0
29.2兆ドル
40.0
0.8
5.8
22.6
20.0
0.0
46.3
2000年
先進国
【図3】世界全体の食料需要量の変化
開発途上国
【図4】所得階層別の需要量の変化
(億トン)
80.0
2050年
中間国
69.3億トン
70.0
60.0
44.7億トン
50.0
40.0
7.9
30.0
16.6
20.0
2.4
10.0
17.8
1.6倍
途上国では
2.1倍に増大
12.0
24.1
1.7倍
4.0
29.3
0.0
2000年
穀物
油糧種子
2050年
その他農産物
畜産物
資料:農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し」ベースライン予測結果
注:所得階層区分は、2000年の世銀データを基に、1人あたりGNIで、開発途上国(755ドル以下)、中間国(756‐9,265ドル以下)、先進国(9,266ドル以上)とした。
3
(2050年の見通し) 新興国の経済成長は継続、中国の肉類やとうもろこし・大豆の輸入拡大
1
成長著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国などの新興国では、今後も高い成長が継続する
見通し。
2 中国の1人当たり肉類消費量は、豚肉を中心として、既に日本、韓国を上回る水準である。
3 今後、豚肉を中心に肉類の消費量が引き続き増大するとともに、肉類やとうもろこし・大豆の輸入量が拡大
する見通し。
【図2】1人当たり肉類消費量の推移
【図1】BRICs諸国のGDPの見通し
(兆ドル)
資料:FAOSTAT「一人1年当たりの粗食料供給量」
【図4】中国のとうもろこし・大豆の需給の見通し
【図3】中国の肉類需給の見通し
(百万トン)
(百万トン)
豚肉、鶏肉
の輸入量が
大幅に増加
資料:農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し」ベースライン予測結果
大豆の輸入量
が大幅に増加
資料:農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し」ベースライン予測結果
4
バイオ燃料生産の拡大
1 近年の原油価格の高騰、国際的な地球温暖化対策、エネルギー安全保障への意識の高まりな
どを背景に、バイオエタノールとバイオディーゼルの世界全体の生産は2022年までにほぼ倍増の
見込み。その生産は、ブラジル、米国、欧州連合(EU)に極めて集中する。
2 米国のとうもろこしのエタノール向け需要は、とうもろこし需要の約4割を占める。
今後10年で80
百万kl増加(前
期の1.4倍)
(百万kl)
【参考1】 バイオエタノールの原料として用いられる主な農産物等
167 その他
インド
中国
EU-27
141
過去10年で59百万
kl増加
農産 物の燃料用需要は、今 後とも継続的に拡大
【図1】 世界のバイオエタノール生産量の見通し
国名
ブラジル
米国
EU-27
中国
インド
87
米国
63
28
主な原料農産物等
さとうきび
とうもろこし、ソルガム
フランス:てんさい、小麦 スウェーデン:小麦、木材
とうもろこし、小麦、キャッサバ
糖蜜(さとうきび)
ブラジル
(見込み)
(予測)
(予測)
【図2】 世界のバイオディーゼル生産量の見通し
【参考2】 バイオディーゼルの原料として用いられる主な農産物等
(百万kl)
今後10年で22百万kl
増加(前期の1.2倍)
41
その他
インドネシア
ブラジル
アルゼンチン
米国
33
19
8
国名
EU-27
米国
インドネシア
アルゼンチン
ブラジル
EU-27
主な原料農産物等
なたね油、パーム油
大豆油
パーム油
大豆油
大豆油
資料:FAOSTATをもとに農林水産省で作成
1
(見込み)
(予測)
(予測)
資料:OECD-FAO「Agricultural Outlook 2013-2022 Database」
5
米国とうもろこしのエタノール仕向け需給の動向等
1
2007年エネルギー法では、2022年までに「再生可能燃料基準」を360億ガロン(うち、とうもろこし由来バイオエ
タノールは150億ガロン)に拡大することを最終目標としている。(ただし、2013年11月米国環境保護局(EPA)
は、2014年の再生可能燃料の使用義務を181.5億ガロンから152.1億ガロンに引下げ提言。)
2 米国のとうもろこしのエタノール向け需要は、とうもろこし需要の約4割を占有。
<米国の再生可能燃料使用目標>
【図】米国とうもろこし需給の推移
(億ガロン)
(%)
(百万t)
エタノール向け需要等
飼料用等需要
生産量
400
350
300
250
その他国内需要
輸出量
期末在庫率
54
25
30
39
34
43
39
41
25
127
128
49
50
200
30
117
59
20
118
57
36
47
36
150
147
156
15
35
155
141
149
132
130
122
116
100
110
10.9%
135
48
46
54
54
47
50
46
39
0
03/04
04/05
05/06
06/07
07/08
08/09
09/10
資料:USDA需給報告(2014.3)をもとに農林水産省で作成
10/11
11/12
19
12/13
10
5
輸出増
50
62
再生可能バイ
オ燃料(とうもろ
こし由来)
2009年
111
105
2010年
130
120
2011年
140
126
2012年
152
132
2013年
166
138
2014年
182
144
2015年
205
150
2016年
223
150
2017年
240
150
2018年
260
150
2019年
280
150
2020年
300
150
2021年
330
150
2022年
360
150
35
エタノール向け
需要等増
94
77
再生可能燃
料基準合計
41
0
13/14
(年度)
出典:「バイオ燃料と国際食料需給-エネルギーと食料の
「競合」を超えて-」(農林統計協会)
6
穀物の需要量、生産量、期末在庫率の動向と見通し
1
世界の穀物の生産量は、作柄により変動するものの、主に単収の伸びにより増加し、需要量の増加に対応。
2
中長期的には、需要が生産をやや上回る状態が継続し、2022年には期末在庫率は16.8%まで低下する見通し。
(百万トン)
2,800
【図】 穀物の需給の推移
1,108百万トン
期末在庫率
(右目盛)
1,200
1,079百万トン
1,000
80
2,410百万トン
15.4%
800
2012 米国で高温・
乾燥
安全在庫水準(FAO1974)
全穀物 17~18%
1,400
(予測値)
2011米国で高温・
乾燥、タイで担保融資制度導入
2010 ロシア等で干ばつ
2009 世界のとうもろこし・
大豆の生産量が史上最高
需要量
90
2,443百万トン
2008 世界的な小麦等の豊作
2007 欧州天候不順・
豪州干ばつ
2006 豪州大干ばつ
1,600
消費量予測
2022年: 2,663百万トン
(FAO長期予測)
2030年: 2,677百万トン
2050年: 3,010百万トン
(実績値)
2004 世界の米在庫量が
約20年ぶりの低水準
2003 米国高温乾燥・
中国輸入急増
2002 米国・
カナダ・
豪州同時不作
生産量
1999 世界の米生産量が史上最高
1,800
1989 中国・
インドネシア等
の米の輸入需要増大
1988 米国大干ばつ
2,000
1973 米国大豆禁輸措置
1972 世界同時不作
2,200
1982 世界的な米の豊作
1981 中国・
イラン等の米の不作
によりタイ米需要急増
1980 米国熱波による不作
2,400
米国天候不順
1995 中国が米の輸出禁止措置
フィリピン・
インドネシア・
タイで洪水
1993 日本の冷害による米の緊急輸入
米国大洪水による不作
2,600
生産量予測
2022年: 2,662百万トン
(FAO長期予測)
2030年: 2,680百万トン
2050年: 3,012百万トン
期末在庫率
(%)
100
70
60
天候が平年並みに
推移した場合の予測
50
40
19.9%
30
2022年度在庫率予測
16.8%
20
10
1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022
資料:USDA「World Agricultural Supply and Demand Estimates」(2014.2)、農林水産政策研究所「2022年における世界の食料需給見通し」、
FAO「World agriculture: towards 2030/2050」により農林水産省で作成。
7
穀物の収穫面積が横ばいの中、単収の伸びは鈍化
1 生産量の増加は、単収の向上で支えられてきたが、単収の伸びが鈍化。
2 中長期的には、単収は遺伝子組換え作物導入などで一定の伸びが期待されているが、地球温暖
化、水資源の制約、土壌劣化などが不安要素。
(1960年=100)
a/人
【図】 穀物の収穫面積、単収等の推移
340
25
320
300
(実績値)
21.1
280
(予測値)
340.0
296.7
290.2
1人当たりの収穫面積(右目盛)
20
260
270.1
生産量
240
220
15
単収
200
天候が平年並みに
推移した場合の予測
180
160
9.8
140
収穫面積
120
109.8
8.9
10
117.2
100
5
80
単収の伸び率
1960
1970
1980
1990
2000
2010
2020
2022
1960~69年度
1.42t/ha
1970~79年度
1.82t/ha
年率
2.78%
年率
1.90%
1980~89年度
2.21t/ha
1990~99年度
2.62t/ha
年率
2.17%
2000~09年度
2.99t/ha
年率
1.30%
2010~22年度
3.54t/ha
年率
1.51%
注:グラフの数値は、2012年までは実績値、2013年は見通し、2014年から2022年までは予測値。
資料:USDA「PS&D(2014.2)」、国連「World Population Prospects:The 2012 Revision」、農林水産政策研究所「2022年における世界の食料需給見通し」により農林水産省で作成。
8
地球温暖化の進展による農業生産等への影響
(構造的要因)
地球温暖化は、農業生産に対して、CO2の濃度上昇による収量増加というプラス面がある一方、気温の上昇
による農地面積の減少や異常気象の頻発による生産量の減少などのマイナスの影響を及ぼす懸念。
ヨーロッパ ※2
・北ヨーロッパでは、気候変化により、暖房需要の減少、農産物生
産量の増加、森林成長の増加が見られるが、気候変化が継続す
ると、冬期の洪水、生態系危機、土壌安定性減少による悪影響
が便益を上回る。
・中央ヨーロッパ、東ヨーロッパでは、夏の降水量が減少し、水ス
トレスが高まる。
・南ヨーロッパの一部で、高温と干ばつが農作物生産を減少させ
る。熱波が頻発し、森林火災が増加。
インド ※1
・1mの海面上昇で、
約6千km2が浸水し、
農地が失われたり、
塩類化が起こる。
・深刻な水不足によ
り、小麦やコメの生
産性が悪化。
アジア ※2
・2050年代までに10億人以上に水不足の悪
影響。
・南アジア、東アジア等の人口が密集している
メガデルタ地帯で、洪水が増加。
・21世紀半ばまでに、穀物生産量は、東・東
南アジアで最大20%増加、中央・南アジアで
最大30%減少。人口増加等もあり、いくつか
の途上国で飢餓が継続。
北アメリカ ※2
・今世紀早期の数十年間は、降雨依
存型農業の生産量が5~20%増
加するが、生育温度の高温限界に
ある作物や、水資源に依存する作
物には大きな影響。
ラテンアメリカ ※2
・今世紀半ばまでにアマゾン東部地
域の熱帯雨林がサバンナに徐々に
代替。
・より乾燥した地域では、農地の塩
類化と砂漠化により、重要な農作
物・家畜の生産力が減少し、食料安
全保障に悪影響。
・温帯地域では大豆生産量が増加。
日本 ※5
・水稲について、気温が3℃上
昇した場合、潜在的な収量が北
海道では13%増加、東北以南
では8~15%減少。
豪州・ニュージーランド
・降水量減少、蒸発量増加によ
り、オーストラリア南部・東部、
ニュージーランド北東、東部地
域で2030年までに水関連の
安全保障問題が悪化。 ※2
・オーストラリア南部・東部、
ニュージーランド東部の一部
で、増加する干ばつと火事の
ために、2030年までに農業・
林業の生産が減少。 ※2
・気温が4℃上昇で一部地域で
生産活動が不可能。 ※3
資料:IPCC「Summary for Policymakers ( Figure SPM.6. A1b)」
注:上記図は、100年後(2090~2099年)の予測である。
アフリカ
・2020年までに7,500万~2億5千万人に水ストレス。
※2
・いくつかの国で、降雨依存型農業の生産量が2020
年までに50%程度減少。 ※2
・気温が4℃上昇で農業生産が15~35%減少。 ※3
バングラデシュ
・1mの海面上昇で、約3万km2の国土が浸水
し、農地が失われたり、塩類化が起こる。 ※1
・1mの海面上昇で年間80万トンから290万トン
のコメ生産が失われる。 ※4
注)赤字はマイナス影響予測、
青字はプラスの影響予測
資料:※1 IPCC3次評価報告書WG2、※2 IPCC4次評価報告書WG2、※3 スターンレビュー(2006)、※4 アジア開発銀行、※5 (独)農業環境技術研究所
水資源の制約による農業生産等への影響
1
2
9
(構造的要因)
世界の年間水使用量は、増加傾向で推移。財政的な制約や水資源量が開発の限界にある地域も存在。
帯水層への地下水かん養量を超えて揚水を行う例も見られ、地下水位の低下等影響が懸念。
【図1】目的別の世界の水使用量の推移(1960~2025) 【表】年間の地下水かん養量に対し揚水量の方が多い事例
帯水層
資料:UNESCO「World Water Resources at the Beginning of the 21th Century」(2003年)
【図2】世界の水資源の制約状況
国 名
かん養量① 揚水量② ②/①
(k㎥/年) (k㎥/年) (%)
年
サハラ北部盆地
アルジェリア、チュニジア
0.58
0.74
127
1992
Saq Aquifer
サウジアラビア
~0.3
1.43
477
1984
ボルカニック
スペイン
0.22
0.22
100
1980
海岸平野
イスラエル
0.31
0.50
160
1990
Alluvial Aquifers
ガザ地区
0.37
3.78
1,022
1990
セントラルバレー
アメリカ
~7
~20
~280
1990
オガララ
アメリカ
6~8
22.2
~300
1980
資料:WMO「I.A.Shiklomanov,Assessment of Water Resources and Water
Availability
in the World」(1996年)
【図3】米国の降水量分布とオガララ帯水層の位置
(センターピボットによる潅漑風景)
資料:服部信司「先進国の環境問題と農業」、
1992年(財)富民協会
資料:平成13年度 千葉県情報教育
センター ソフトウェア開発
(安藤清氏提供)
10
穀物等の国際価格の動向と見通し
○ 穀物等の国際価格は、2010年7月以降再び上昇し、現在は、2006年秋頃に比べ1.5~2.5倍の水準。
・ 大豆は、12月以降の南米の高温・乾燥、中国の輸入需要期待から、高値で推移し、2012年6月以降の米国の高温乾燥の影響から、7月
以降最高値を更新。9月4日に史上最高値(650.7ドル/トン)をつけた後、米国の生育の回復、南米の増産見込み等から低下。とうもろこし
は、2012年6月以降、米国の高温乾燥の影響から、7月以降最高値を更新し、8月21日に史上最高値(327.2ドル/トン)。その後は、南米の
増産見込みから大豆・とうもろこしは共に低下したものの、依然高値を維持。2013年7月以降、大豆・とうもろこし共に、米国産の豊作見込み
から低下。小麦は、世界の在庫水準は大きく下がってはいないものの、とうもろこしに追随して上昇。その後値を戻したものの、依然高値を
維持。
・ 米は、2011年6月以降、タイで担保融資制度(実質的な国の買上げ制度)の再導入等により上昇。一方、輸出需要は、安価なインド産米
等へシフト。2013年7月以降、タイで担保融資制度の見直しの動き、政府在庫米の一部放出等から低下。
2012 米国で高温・
乾燥
2011 米国で高温・
乾燥 タイで担保融資制度導入
2009 世界のとうもろこし・
大豆の生産量が史上最高
2010 ロシアで干ばつ
2008 世界的な小麦等の豊作
2006 豪州大干ばつ
2007 欧州天候不順・
豪州干ばつ
2002 米国・
カナダ・
豪州同時不作
2004 世界の米在庫量が約20年ぶりの低水準
2003 米国高温乾燥・
中国輸入急増
大豆
1999 世界の米生産量が史上最高
300
米国天候不順
米
フィリピン・
インドネシア・タイで洪水
400
1995 中国が米の輸出禁止措置
500
米国大洪水
600
日本の冷害による米の緊急輸入
700
1993
800
1988 米国大干ばつ
900
1982 世界的な米の豊作
1981 中国・
イラン等の米の
不作によりタイ米需要急増
1980 米国熱波
1973 米国大豆禁輸措置
1972 世界同時不作
1000
1989 中国・
インドネシア等の米の輸入需要増大
【図】 穀物等の国際価格の動向と見通し
(ドル/トン)
(予測値)(名目価格)
米(対2010年:39%
増)
大豆(36%増)
567
503.7
469.0
小麦(33%増)
295
264
224.0
200
178.3
小麦
100
774
とうもろこし(37%増)
天候が平年並みに推移
した場合の予測価格
とうもろこし
0
1970
1972
1974
1976
1978
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
2018
2020
2022
資料:シカゴ商品取引所、タイ国貿易取引委員会、農林水産政策研究所「2022年における世界の食料需給見通し」
注1:小麦、とうもろこし、大豆の実績値は、各月ともシカゴ商品取引所の第4金曜日の期近価格である。
注2:米の実績値は、タイ国貿易取引委員会公表による各月第1水曜日のタイうるち精米100%2等のFOB価格である。
注3:予測値の名目価格は、小麦、とうもろこし、大豆は米国のCPI、米はタイのCPI(いずれもIMFによる)を用いて算定している。2013~2022年までは推計値。
11
農産物の輸出規制の現状
【モロッコ】
小麦、米等:輸出
ライセンス制導入
(2008年7月~)
【ヨルダン】
砂糖、米(2008年
~)、小麦(2010年
~)等:ライセンス制
導入
【レバノン】
小麦:輸出禁止
(2010年8月~)
は輸出禁止、
【イラン】
小麦等:輸出禁止
米等:輸出税賦課
(2012年10月~)
【キルギス】
小麦:輸出禁止
(2012年10月~)
【ネパール】
米、小麦(2008年4月
~) 豆類(2009年7月
~):輸出禁止
【ミャンマー】
米:輸出許可制
(2008年~)
【ナイジェリア】
とうもろこし:輸
出禁止(2008年~)
【バングラデシュ】
米等:輸出禁止
(2008年5月~)
【ケニア】
とうもろこし:輸出
禁止(2008年9月~)
【台湾】
米:輸出許可制
(2008年4月~)
【フィリピン】
米、とうもろこし:
輸出許可制(2005年~)
【エジプト】
米:輸出禁止
(2013年11月~)
【ザンビア】
とうもろこし:輸出
禁止(2013年10月~)
は輸出税の賦課、輸出枠設定等
【インド】
食用油:輸出禁止
(2008年3月~)
米、小麦:輸出枠設
定(2011年9月~)
【インドネシア】
米:輸出禁止(2008
年4月~2009年3月,
2009年7月~)
【ラオス】
米:輸出許可制
(2010年~)
【ボリビア】
小麦:輸出禁止
(2008年2月~)
とうもろこし(2012年3
月~)、米(2009年12月
~)等:輸出枠設定
【アルゼンチン】
小麦、とうもろこし、大
豆、牛肉等:輸出枠設
定、輸出税賦課等
資料:農林水産省作成(平成26年2月15日現在)
注:過去に実施
された措置
:① 輸出禁止:カンボジア(コメ)、ベトナム(コメ)、ラオス(コメ)、インド(コメ、小麦、とうもろこし)、パキスタン(小麦)、アルゼンチン(小麦等)、
ブラジル(政府米)、ボリビア(とうもろこし、コメ等)、エクアドル(コメ)、ホンジュラス(豆類、とうもろこし)、ロシア(小麦等)、
カザフスタン(小麦)、セルビア(小麦等)、ベラルーシ(菜種等)、モルドバ(小麦)、ブルキナファソ(穀物)、コートジボワール(カカオ)、
エチオピア(小麦等)、ギニア(農林水産物)、マラウイ(とうもろこし)、タンザニア(穀物、砂糖)、
② 輸出税賦課:ロシア(小麦、大麦)、ウクライナ(小麦等)、ベトナム(コメ)、キルギス(小麦等)、中国(小麦、大豆、コメ等)、アルゼンチン(乳製品)
③ 輸出枠:カンボジア(コメ)、ウクライナ(小麦、大麦等)
12
食品価格高騰等を巡る各国の抗議運動や暴動
13
食料の未来を描く戦略会議(概要)
食料をめぐる世界情勢の変化の兆しが見られる中で、毎日の生活に欠くことのできない食料につい
て、世界の状況を正確に把握した上で、国民に対する食料の安定供給の確保を図るための方向性に
ついて議論し、食料問題に関する認識を国民全体で共有するため、農林水産大臣主催による「食料の
未来を描く戦略会議」を開催
【平成19年7月11日食料・農業・農村政策推進本部長(内閣総理大臣)決定】
【会議開催】
平成19年7月~平成20年5月(5回開催)
食料の未来を
【委員】
大木 美智子
川勝 平太
木場 弘子
佐々木 孝治
澤浦 彰治
(座長)生源寺 眞一
高田 万由子
ももせ いづみ
養老 孟司
米倉 弘昌
取りまとめられたメッセージ
消費科学連合会会長
静岡文化芸術大学学長
キャスター、千葉大学特命教授
ユニー(株)取締役会長
グリンリーフ(株)代表取締役社長
東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長
タレント、女優
生活コラムニスト
東京大学名誉教授
住友化学(株)代表取締役社長
豊かなものにするために
(平成20年5月7日)
国民の皆さまのご理解とご関心をさらに深めて
いただくことを目的とし、食料問題に関する映像
資料DVDを作成
(五十音順、敬称略)
※会議開催時の役職を記載
農林水産省の体制についても強化
食料をめぐる課題への対応(食料自給率、食料安全保障対策、食料情報の分析)を強化する観点から、各局庁を
通じた食料問題に関する省の司令塔として大臣官房に「食料安全保障課」を設置(平成20年4月)
14
基本計画における不測時のマニュアル策定の位置付け
食料・農業・農村基本計画(抜粋)(平成12年3月24日閣議決定)
第3 食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策
1 食料の安定供給の確保に関する施策
(4)不測時における食料安全保障
食料供給に影響を及ぼすおそれのある不測の事態には、国内外の不作等の短期的なもの
から、食料輸入の継続的かつ大幅な減少や途絶といったものまで、さまざまなレベルのものが
想定される。このような不測の事態に的確に対処するため、我が国の食料供給力の確保及び
向上に平素から努めることに加え、さまざまなレベルに応じて食料供給の確保を図るための対
策を講ずることとし、対策を機動的に発動するためのマニュアルの策定等を行う。
特に、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ
迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においては、国民が最低限度必要とする食料の供給
を確保するため、必要があるときは、熱量効率の高い作物への生産転換等による食料の増
産、流通の制限その他必要な施策を講ずる。
15
機密性○情報
不測時の食料安全保障マニュアルについて
○○限り
農林水産省では、不測の要因により食料の供給に影響が及ぶおそれのある事態に的確に対処するため、関係省庁と連携し、「不測時の
食料安全保障マニュアル」(平成14年3月農林水産省決定)を策定し、政府として講ずべき対策の基本的な内容、根拠法令、実施手順等を
示しており、平成24年に策定した「緊急事態食料安全保障指針」においても同内容となっている。
○食料の供給に影響を及ぼす不測の要因
○不測時の食料安全保障対策の概要
事態の深刻度(レベル)、に応じ国民が最低限必要とする
食料の供給の確保が図られるよう、以下の取組などを実施。
(1)国内における要因
① 異常気象等による大不作
② 突発的な事件・事故等による農業生産や流通の混乱
③ 安全性の観点から行う食品の販売等の規制
(2)海外における要因
① 主要生産国・輸出国における異常気象等による大不作
② 主要輸出国における港湾ストライキ等による輸送障害
③ 地域紛争や突発的な事件・事故等による農業生産や
貿易の混乱
④ 主要輸出国における輸出規制
⑤ 安全性の観点から行う食品に対する我が国の輸入規制
レベル0 レベル1以降の事態に発展するおそれがある場合
•
•
•
•
レベル1 特定の品目の供給が、平時の供給を2割以上下回 ると
予測される場合を目安
○不測の事態に対する体制
食料安全保障課
・レベル1以降の事態が発生又は当該
事態に発展するおそれがあるとの判断
・危機管理体制検討チームを開催
農林水産省対策本部
•
•
•
•
(本部長:大臣、本部長代理:副大臣、副本部長:大臣政務官)
・不測時のレベル(0、1、2)について省として判断
・農林水産省が実施すべき対策の協議・決定
・政府対策本部の設置要請(レベル1又は2と判断される場合)
政府対策本部
・不測の事態のレベルの判定
・政府一体となって取り組むべき対策を決定
食料供給の見通しに関する情報収集・分析・提供
備蓄の活用と輸入先の多角化、代替品の輸入
規格外品の出荷、廃業の抑制などの関係者の取組の促進
食料の価格動向などの調査・監視
緊急の増産(国民生活安定緊急措置法)
生産資材(種子・種苗、肥料、農薬)の確保(国民生活安定緊急措置法)
買い占めの是正など適正な流通の確保(買い占め等防止法など)
標準価格の設定などの価格の規制(国民生活安定緊急措置法)
レベル2 1人1日当たり供給熱量が2,000kcalを下回ると予測
される場合を目安
•
•
•
•
熱量効率が高い作物などへの生産の転換(国民生活安定緊急措置法)
既存農地以外の土地の利用
食料の割当て・配給及び物価統制(食糧法など)
石油の供給の確保(石油需給適正化法)
16
機密性○情報
○○限り
「不測時の食料安全保障マニュアル」から「緊急事態食料安全保障指針」見直しのポイント
○ 農林水産省では、不測の要因により食料の供給に影響が及ぶおそれのある事態に的確に対処するため、関係省
庁と連携し、「不測時の食料安全保障マニュアル」(平成14年3月農林水産省決定)を策定。
○ 震災・原発事故の教訓を将来に生かす観点から、「局地的・短期的事態編」を追加し、「緊急事態食料安全保障指
針」として再編。
局地的・短期的事態
平素からの取組
• 食品産業事業者における事業継続計画の策定や緊急時における食品産業事業者間の協力方針の取決め締結の推進。
• 物流ネットワークの在り方の検証、訓練・演習の実施等による緊急時におけるサプライチェーンの機能維持の確保。
• 家庭における食料備蓄の推進。
局地的・短期的事態における対策
• 規格外品の出荷促進や容器包装の統一化の要請等による円滑な流通等の確保。
• 検疫・食品輸入手続きの迅速化。
• 食品表示規制の弾力的な運用。
• 食料の需給・価格動向の情報の収集・分析・提供の実施。
• 国民生活安定緊急措置法その他の法令による価格・流通の安定対策等の実施。
• 地域のニーズや食事状況の把握とともに食料の各品目について供給可能な事業者に関する情報の提供。
17
不測時対応に係る現行法制度の概要
法令名
措置の概要
国民生活安定緊急措置法
(S48年制定)
・生産を促進すべき食料等の物資の指定
・生産計画の変更指示
・標準価格、特定標準価格の設定(これを超えて販売す
る事業者に対する物価の引下げの指示)
・生産・輸入・売渡し・輸送・保管等の指示
・割当て又は配給等
生活関連物資等の買占め及び売
惜しみに対する緊急措置に関する
法律
(S48年制定)
・買占め又は売惜しみを行う事業者に対する売渡しの
指示・命令
主要食糧の需給及び価格の安定
に関する法律
(H6年制定)
・米穀の出荷又は販売の事業を行う者に対する命令
・米穀の生産者に対する命令
・米穀の割当て又は配給等
※この他、物価統制令(S21年制定)により価格の統制、石油需給適正化法(S48年制定)により石油の供給の
確保を実施
18
農林水産省における東日本大震災への対応
震災発生初期には、被災地域で不足していた食料品や配合飼料、燃料等を被災地に輸送。
被災地域の飼料不足への対応
被災地域への食料供給
○
今回の震災では、200社を
超える食品メーカー等の協力
の下、食料2,584万食、育児
用調整粉乳5.3万缶、飲料762
万本を調達。ピーク時には1
日で約154万食分の食料を調
達。
水産庁の漁業取締船等の
計10隻が民間漁船と協力し
て海上から物資(食料、燃料
日用品、医薬品)を輸送。
○ 工場の被災により、供給不足と
なった配合飼料の供給確保を支援
船舶輸送
するため、
○
福貴浦漁港における水産庁漁
業取締船による救援物資の引
き渡し(宮城県石巻市)
北海道から
運搬船で輸
送
①飼料関係団体に対し、九州や北
海道等からの配送(内航船運
搬、トラック輸送)の要請、 九州地方等から
運搬船で輸送
②備蓄飼料穀物(35万トン)の無
償・無担保での貸付
等を措置。
○ H23年3~6月にかけて、他
地域から約40万tの飼料が供給。
被
災
中部、中国、関東
地方から陸路で輸
送
被災した配合飼料工場
(石巻市)
その他の応急対応
【資金調達の円滑化】
○ 被災した農林漁業者等が資金を調達できるよう、円滑な融資等を関係団体に依頼。
○ 農業共済掛金の払込期限等の延長・共済金の早期支払いに向けて共済団体に指導。
【排水設備の貸出】
○ 農地等の湛水排除や応急的な取水に対応するため、災害応急用ポンプを地方農政局土地
改良技術事務所から搬送し供用。宮城県、福島県、栃木県の3県で延べ90台を供用。
【手続きの簡素化】
○ 救援活動等に最優先で取組めるよう、農業者戸別所得補償制度の申請期限等を延長。
【燃料用物資の供給】
災害応急用ポンプによる排水作業
(宮城県名取市)
○ 東北森林管理局から大船渡市、陸前高田市、釜石市、大槌町等へ薪ストーブ113台を提供。
○ 関係団体等の協力の下、宮城県、福島県へ木炭26t、木炭コンロ1,300個を供給。
19
機密性○情報
不測時の食料の安定供給のための対策事業(平成22~26年度)
○○限り
新型インフルエンザ等の新型感染症や大規模事故災害等が発生した場合においても、国民に対して食料の安定供給が確保でき
るよう、食品産業事業者における事業継続計画(BCP)策定や食品産業事業者間における協定締結等の促進を図っているところ。
平成22年度~平成23年度
平成24年度
研修会を開催し、食品産業事
業者のBCP策定を推進
食品産業事業者間の
連携を促進するための
指針を策定
基礎的なBCPの整備拡大
平成25年度
食品産業事業者間の
連携を図るための訓
練・演習マニュアルの
策定
食品産業事業者間の連携により、緊急時においても
サプライチェーンが自立的に対応できる仕組みを構築
【目標】
食品産業事業者のBCP策定促進
【実績】
研修会参加者に対しアンケートを実施した結果、新型インフルエンザに対しては約5割、
地震に対しては約3割の事業者がBCPを策定済又は策定中
平成26年度
BCPや事業者間連携
等の優良事例を周知・
普及することにより、緊
急時に備えた食料の安
定供給の確保に資する
取組の定着・強化
取組の定着・強化
【目標】
食品産業事業者間で協定を結び、緊急時においてもサプライチェーンが
自立的に対応できる仕組みを構築
食
料
の
安
定
供
給
を
確
保
【実績】
研修会参加者に対しアンケートを実施した結果、14%の事業者が
事業者間連携に係る協定を締結
20