記事

改良土とジオグリッドを組み合わせた
補強土壁の開発
伊藤秀行 1・斉藤知哉 2・佐藤文雄 3
筆者らは補強土壁の壁面部分に改良土を配置し、ジオグリッドと組み合わせる新しいタイプの補強
土壁の開発を進めてきた。改良土とジオグリッドの引抜き実験や模型載荷実験、現場施工実験などを
へて、実施工例も8例(平成 13 年 8 月現在)にのぼっている。ここでは模型実験や現場実験などで測
定されたデータから土圧や地盤反力の作用状態、ジオグリッドのひずみ分布などを示し、補強メカニ
ズム等を考察する。その結果、改良土は一体として挙動し、改良土の効果によりパネルにはほとんど
土圧が作用しないこと、また、ジオグリッドに発生するひずみより、改良土とジオグリッドを組み合
わせる補強効果が発揮されることなどが確認できた。またあわせて、実施工例を紹介する。
キーワード:改良土,ジオグリッド,計測,補強効果,施工
1.はじめに
改良土とジオグリッドを組み合わせた補強土壁の
概念図を図−1に示す。本工法の特長は以下の点が
挙げられる。
・改良土の強度を補強土の設計に取り入れる
・改良土の効果によりジオグリッドの使用量が減る
・盛土材は砂質土に限定されるものでなく、現地発
生土が有効利用できる
・パネルとジオグリッドは連結せず、ジオグリッド
は改良土中に定着させる
・改良土には短繊維を混合し、じん性や対浸食性の
向上を図る
開発に当たっては、短繊維を混合した改良土の強
度特性や改良土中のジオグリッドの引抜き試験など
の要素実験,模型載荷実験および現場での施工実験
などを進めると同時に、設計法の構築も進めてきた。
設計は基本的に、(財)土木研究センターの「ジオテ
キスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル
1)
改訂版」(平成 12 年 2 月) に準じて行うが、改
良土の効果を設計に取り入れる点などは「同マニュ
アル」の原理を応用して独自に構築している。
本稿では、模型載荷実験や現場施工実験および施
工事例での計測データから、改良土とジオグリッド
を組み合わせた補強効果や地盤内の応力状態につい
て検証する。その結果、改良土は一体として挙動し、
壁面パネル
ジオグリッド
補助
アンカー
パネル基礎
図−1
2
基盤
改良土を用いた補強土壁の概念図
改良土の効果によりパネルにはほとんど土圧が作用
しないこと、また、ジオグリッドに発生するひずみ
より、改良土とジオグリッドを組み合わせる補強効
果が発揮されることなどが確認できた。
2.模型載荷実験
(1)実験概要
a)土槽
実験土槽は幅 80cm ×長さ 200cm ×高さ 150cm
で模型盛土構築に当たっては土槽側面に小割のテフ
ロンシートおよび保護用ゴムを配し、摩擦除去に努
正会員,大日本土木(株)技術研究所 開発技術部,主任研究員
正会員,大日本土木(株)技術研究所 開発技術部,主任研究員
3
大日本土木(株)技術研究所 開発技術部,課長代理
1
改良土:短繊維混合安定処理土
(現地発生土+固化材+短繊維)
(〒 350-1331 埼玉県狭山市新狭山 1-1-1)
(
同上
)
(
同上
)
(2)実験結果および考察
a) 施工終了後
図−3(a)に施工終了直後と載荷試験直前(施工終
了後1週間後)に測定した壁面パネルおよび改良土
裏の土圧をまとめる。図中には同時に理論土圧(試
行くさび法により算出)を波線で示す。図−4(a)に
は同様にジオグリッドのひずみを示す。
改良土のない Case.1 の壁面パネル土圧は、最大
3.5kN/㎡程度であり、施工終了直後も1週間後も大
差ない(1週後の方が若干大きい)。これに対し、改
良土のある Case.2, Case.3, Case.4 では、改良土裏
土圧が相対的に大きいにもかかわらず、壁面パネル
土圧は小さく、さらに施工終了直後よりも1週間後
表−1
盛土材の物理特性
川 砂
2.757
8.5
0
90
6
4
A・C
1.521
21.7
3
土粒子の密度 ρs (g/cm )
自然含水比 ωn (%)
れき分(%)
砂分 (%)
粒度特性
シルト分 (%)
粘土分(%)
試験方法
3
締固め
ρdmax(t/m )
特性
ωopt (%)
山 砂
2.679
3.8
28
58
10
4
A・C
1.909
12.0
コンクリートパネル
改良土(短繊維混合安定処理土)
コンクリートパネル
補助アンカー
500
500
1,190
500
500
1,500
500
500
1,500
ジオグリッド
1,640
440
(a)Case.1
コンクリートパネル
改良土(短繊維混合安定処理土)
750
コンクリートパネル
改良土(短繊維混合安定処理土)
750
500
補助アンカー
ジオグリッド
500
ジオグリッド
1,500
1,200
(b)Case.2
500
めている。
b)実験材料
①盛土材:盛土材には自然含水比状態の川砂(表−
1)を用いた。
②改良土:改良土は山砂(表−1)に、セメント系固
3
化材を 50kg/m ,ビニロン短繊維(長さ 30mm,太さ
3
約 43 μ m)を 0.05 %/m 混合した。改良土の強度は、
qu = 280kN/㎡(6日気中+1日水浸強度)である。
③ジオグリッド:実験に用いたジオグリッドは、目
合 166mm × 22mm の一軸延伸のジオグリッドであ
り、引張り強度 34.3kN/m(テンサー SR35)のものを用い
た。
c)盛土の施工
3
改良土は締固め密度がρt = 1.925t/m ( 1・Ec × 90
%)となるように、一層仕上り厚 6.25cm で人力によ
りランマーで締固めた。盛土は締固め密度ρt =
3
1.57t/m (ωn,1・Ec 突き固め結果)となるように、一
層仕上り厚さ 12.5cm でプレートコンパクタにより
転圧した。なお、盛土作製中にはRIでの密度およ
び含水比を測定し、各ケースともほぼ同様の盛土状
態となっているを確認している。
d)測定項目
施工中および載荷試験中にわたる測定項目は、壁
面パネル土圧,改良土裏土圧,土槽底面鉛直土圧お
よびジオグリッドのひずみである。載荷試験時には
これに加え、載荷重および壁面パネル水平変位,載
荷板鉛直変位,改良土天端鉛直変位を測定した。
e)載荷方法
載荷試験は盛土完成後1週間後に行った。載荷方
法は、幅 78cm ×奥行き 119cm の載荷板をのり肩か
ら 44cm 離した位置(改良土の幅)に設置し、2台の
油圧ジャッキで等圧力に載荷する応力制御式とし
た。荷重は段階的に加え、各荷重ステップでの荷重
保持時間は 10 分間とした。
f)実験ケース
実験ケースを図−2に示す。Case.3 と Case.4 の
違いは、改良土を用いた場合に、壁面パネルとジオ
グリッドを連結するかしないかの違いである。
440
1,200
440
(c)Case.3
1,200
(d)Case.4
図−2 実験ケース
の方が低減している。これは改良土が養生期間とと
もに強度発現し、自立性が高まることでパネルに作
用する土圧が低減するものと考えられる。
ジオグリッドのひずみは、改良土のない Case.1
では h = 25cm(下)と h = 75cm(中)に壁面パネル近
くで伸びひずみが生じている。これに対し、改良土
のある Case.3,Case.4 ではジオグリッド全長にわた
るひずみ分布は Case.1 と類似しているが、盛土中
のジオグリッドには伸びひずみはほとんど発生しな
い。これはある幅を持った改良土による壁に自立性
があり、盛土にはほとんど変形が生じていない結果
と考えられる。
b) 載荷試験
図−3(b),図−4(b)は載荷試験開始を初期値0
とした載荷試験中の測定値を示す。Case.1 では、壁
面の変形モードは中段のパネルがはらみ出すモード
となる。これに対し、Case.2 では、改良土が一体と
なり転倒していく変形モードとなり、さらにジオグ
リッドを敷設することでその変形量が抑制される結
果が得られた。この時、ジオグリッドに発生するひ
ずみを見ると、Case.1 ではジオグリッドの伸びひず
みの最大値の発生位置は各段で異なり、すべり面に
沿って最大の伸びひずみが発生していると考えられ
150
150
0
−5
0
5
100
50
50
0
5
10
0
−2.
5
100
50
50
5
10
150
5.
0
50
50
0
5
10
50
50
6
4
2
0
0
0 −20 0 20 40 60 80 −20 0 20 40 60 80
パネル土 圧( kN/㎡)
150
50
100
50
50
6
4
2
0
0
0 −20 0 20 40 60 80 −20 0 20 40 60 80
パネル水 平変位(mm )
パネル土 圧( kN/㎡)
150
改良 土 裏 土 圧 (k N / ㎡ )
150
C a se . 4
50
Case.4
100
100
50
50
C a se . 4
0
10 8
10.
0
Case.3
100
C a se . 3
100
5.
0
改良 土 裏 土 圧 (k N / ㎡ )
150
C a se . 3
0
10 8
6
4
2
0
0
0 −20 0 20 40 60 80 −20 0 20 40 60 80
パネル水 平変位(mm )
改良 土裏土 圧(kN/㎡ )
Case.2
100
C a se . 2
150
0
−2.
5
150
(cm)
(c m)
100
パネル土 圧( kN/㎡)
100
パネル水 平変位(mm )
10.
0
Ca se.4
100
50
150
改良 土裏土 圧(kN/㎡ )
150
パネル土圧(kN/㎡)
0
0 −20 0 20 40 60 80
C a se . 2
100
0
−2.
5
Case.4
0
−5
2
(cm)
Ca se.3
100
0
4
150
0
10 8
10.
0
盛 土 高 さ
(cm)
Case.3
パネル土圧(kN/㎡)
6
(cm)
5.
0
改良 土裏土 圧(kN/㎡ )
150
0
−5
50
100
盛 土 高 さ
盛 土 高 さ
100
盛 土 高 さ
(cm)
Ca se.2
○: 59 kN/m 2
△:137 kN/m 2
□:196 kN/m 2
---:試行くさび土圧
(196 kN/㎡)
C a se . 1
パネル水 平変位(mm )
Case.2
パネル土圧(kN/㎡)
50
150
150
150
100
0
10 8
10
パネル土圧(kN/㎡)
150
0
−5
盛 土 高 さ
盛 土 高 さ
●: 施工終了時
▲:1週間養生後
---: 試行 くさび 土圧
50
盛 土 高 さ
C a se . 1
100
100
3.施工実験
150
(cm)
(cm)
Case.1
盛 土 高 さ
る。これに対し、 Case.3, Case.4 では改
良土との境界で最大の伸びひずみが発
生し、上部ほど大きく、壁面変形量の
抑制にジオグリッドの効果が発揮され
ていることがうかがえる。
改良土の強度が発現し、載荷試験直
前にはほとんど作用していなかった
Case.3, Case.4 の壁面パネルに作用する
土圧は、載荷試験においても、改良土
裏に作用する土圧に比較して小さく、
改良土の効果によりパネルへの土圧の
影響は小さいことが確認できた。また、
改良土とジオグリッドを組み合わせる
構造で、ジオグリッドをパネルと連結
することの有無による差異はほとんど
ないことが確認できた。
(a) 施工終了後
パネル土 圧( kN/㎡)
改良 土 裏 土 圧 (k N / ㎡ )
(b) 載荷試験時
(1)実験概要
図−3 測定結果−1(パネル土圧,改良土裏土圧,パネル水平変位)
a)施工図
施工概要図を 図−5 に、断面図を 図
●: 施 工終 了 直後
Case.1
Case.3
Case.4
▲: 1 週養 生 後
−6に示す。
h=125cm
b)実験材料
改良対象土にはまさ土、盛土材には
再生砕石を用いた。また改良材には、
h=75cm
固化材(タフロック TL-3)と短繊維(ビ
ニロン製,長さ 30mm,太さ約 43 μ m)
h=25cm
を用いた。改良土の設計強度(6日気中
+1日水浸強度)は qu=290 kN/㎡であ
ジ オ グリ ッ ド 敷 設 長 お よ び ひ ず みゲ ー ジ 位 置
3
(a) 施工終了後
り、配合試験では最低混合量 30kg/m 以
○:q= 59 kN/m
下でも満足する結果となった。しかし、
△:q=137 kN/m
Case.1
Case.3
Case.4
3
□:q=196 kN/m
本工法では最低混合量を 50kg/m として
h=125cm
いるため、固化材の設計混合量は
3
50kg/m とした。短繊維は乾燥重量比で
3
0.05 %/m とした。現場混合量は割増係
h=75cm
3
数を 1.5 として、固化材 75kg/m ,短繊
3
維 0.075 % /m とした。実験に用いたジ
オグリッドは、目合 166mm × 22mm の
h=25cm
一軸延伸のジオグリッドであり、引張
ジオグリッド敷設長および ひずみゲージ位置
り強度 34.3kN/m(テンサー SR35)のものを用
(b) 載荷試験時
い、壁面材にはプレキャストコンクリ
図−4 測定結果−2(ジオグリッドのひずみ)
ートパネルを用いた。
c)測定項目
(2)実験結果および考察
本工法の応力状態を確認するため、施工中におけ
a) 施工状況
る底面,改良土裏,パネルに作用する土圧をそれぞ
施工は、パネルの設置、改良土の混合・施工、盛
れ3点ずつ、および各段におけるジオグリッド,補
土の施工、ジオグリッドの敷設を順次繰り返しなが
助アンカーに発生するひずみの計測を行った(図−
ら補強土壁を構築していく。写真−1に施工状況を
5,6参照)。
示す。改良土の混合がクリティカルになるものの施
工上は特に問題は生じなかった。
ジオ グ リ ッ ド の ひ ず み ( 施 工 終 了 後 ) ( % )
1.
00
1.
00
0.
75
0.
75
0.
50
0.
50
0.
25
0.
25
0.
25
0.
00
0.
00
0.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
0.
75
0.
75
0.
75
0.
50
0.
50
0.
50
0.
25
0.
25
0.
25
0.
00
0.
00
0.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
0.
75
0.
75
0.
75
0.
50
0.
50
0.
50
0.
25
0.
25
0.
25
0.
00
−0.
25
0
ジオ グリ ッド の ひず み( 載 荷試 験) (% )
1.
00
0.
75
0.
50
0.
00
20
40
60
−0.
25
80 100 120
0
0.
00
20
40
60
−0.
25
80 100 120
0
1.
00
1.
00
1.
00
0.
75
0.
75
0.
75
0.
50
0.
50
0.
50
0.
25
0.
25
0.
25
0.
00
0.
00
0.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
0.
75
0.
75
0.
75
0.
50
0.
50
0.
50
0.
25
0.
25
0.
25
0.
00
0.
00
0.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
−0.
25
1.
00
0.
75
0.
75
0.
75
0.
50
0.
50
0.
50
0.
25
0.
25
0.
25
0.
00
−0.
25
0
0.
00
20
40
60
−0.
25
80 100 120
0
20
40
60
80 100 120
2
2
2
0.
00
20
40
60
−0.
25
80 100 120
0
20
40
60
80 100 120
3
一軸圧縮強さ(kN/m2)
3
0
30
(3)まとめ
施工実験により以下の点が確認できた。
・改良土による壁には、鉛直・水平とも施工状況に
応じた土圧が作用し、その土圧はほぼ理論値と整
合した値となった。
50
○
70
50
TL-3E
10分
50分
Case.1
50
高炉
室内混合:設計混合量として50kg/m 3 を選択
試
験
条
件
コア
Case.2
現場混合:割り増し係数
=1.5→ 75kg/m 3
図−7 現場混合した改良土の一軸圧縮試験結果
1,000
1,000
250
1,000
125 375
250250
100
3,000
1,000
500
3m
0.5m
375 625
11m
A−A断面
100
1,600
b) 改良土の強度確認
壁面パネル
改良土
本工法では施工に先立ち、
補助アンカー L=1.0m
ジオグリッド L=3.7m
改良土の配合試験を実施し、
設計により設定された改良土
土圧計設置位置
水平排水材
の必要強度を満足する固化
A
1:0.5
材,短繊維の混合量を求める
必要がある。現場では、求め
1,000
2,700
土圧測定位置
25m
られた配合量に割増係数を乗
650
A
図−5 施工概要図
図−6 施工断面図
じた量を混合するが、現地で
施工された改良土の強度発現
性やばらつきがどの程度となるかを確認する必
要がある。そこで本実験において、現場で施工
された改良土の強度発現性およびばらつきを一
軸圧縮強度により確認した。
バックホウにより現場混合した改良土の一軸
圧縮試験結果を 図−7 にまとめる。現場混合の
試料を採取して作製した供試体の一軸圧縮強度
は、室内の配合試験の強度より大きく、試料の
(a)改良土撹拌,混合
(b)パネル設置状況
採取を混合時間によって変化させた場合は、混
合時間が長いほど強度は大きくなり、バラツキ
も小さくなった。また、現場転圧後、コア抜き
して作製した供試体でも、供試体の乱れが考え
られるにもかかわらず、概ね現場必要強度を満
足することから、改良土の強度安定性を確認で
きた。
c) 測定データ
(c)連結金具,補助アンカー設置状況 (d)改良土投入,敷き均し
①施工中の土圧
底面土圧および改良土に作用する土圧は盛土
構築にともない増加するが、パネルに作用する
土圧は計測位置での施工時に土圧が大きく作用
するものの、改良土が固化するとほとんど作用
しないことが確認できた。
②内部応力状態
図−8に 7 層目(盛土 1.75m)完了時点および
(e)改良土転圧
(f)ジオグリッド敷設状況
施工終了時の盛土内部の応力状態を示す。改良
写真−1 施工状況
土により一体化した壁には、鉛直(改良土背面),
水平(改良土底面)とも施工状況に応じた土圧
2500
短繊維混合量(TL-3E,高炉は無し)
が作用している。パネルに作用する土圧は、改良土
:室内0.05%/m →現場0.075%/m
2000
の敷均し,転圧時(未固化時)に一時的に土圧を受
けるものの、その後改良土の固化が進むことで、パ
15 0 0
ネルにはほとんど土圧は作用しなくなる。また、ジ
オグリッドには全般に引張り力が作用し、その中で
実際 の混 合量 として の現 場必 要強度
10 0 0
○
も、改良土と盛土の境界に引張り力のピークが見ら
れ、安定に寄与しているものと考えられる。その値
500
はそれほど大きいものではなく、安定状態あるもの
設計強度290kN/㎡→
と言える。
パネルに作用する土圧 改良土に作用する土圧 ジオグリッドに発生するひずみ
(kN/㎡)
(kN/㎡)
(%)
3 .0
盛土高さ (m)
・壁面パネルには、施工状況に応じた土圧が一時的
に作用したが、改良土が固化することにより土圧
は作用しなくなった。
・ジオグリッドには全体的に引張り力が作用し、本
工法の安定性に寄与した。
4.現場計測
0
10
2 0 30
改良土
盛土
0 .5
補助アンカーに作用する力
(N)
2 .5
500
0 .1
2 .0
-1 0 0
-0 .3
1.5
500
0 .1
1.0
-1 0 0
-0 .3
0 .5
500
0 .1
-1 0 0
-0 .3
0 .5
0 .5
0 .0
底面土圧(kN/㎡)
20 30
(欠測)
-0 .5
●:7層目終了時
○:施工終了時(11層)
- - - -:施工終了時理論値
0
10 0
200
図−8
施工中の補強盛土内部の応力状態
改良土
c=160kN/m2
γ= 19kN/m3
ひずみ測定箇所
▽310.000
改良土裏土圧計
5,000
12層目
パネル裏土圧計
4層目
測定装置
200 500
削
(2)計測結果および考察
図−10に、施工中および施工終了後の各土圧の経
時データを示す。図−11には、各土圧ならびにジオ
グリッドに発生するひずみを施工段階および経時日
毎にまとめる。この現場で骨材投入設備が本格稼働
したのは5月中旬からであり、それまでは施工終了
後から各土圧ならびにジオグリッドのひずみはほぼ
安定した状態にあることがわかる。ただ、パネル水
10
.5掘
1:0
(1)概要
a)適用断面
図−9に適用断面を示す。壁の直高さは H = 5.5m
である。適用現場は岡山県のダム建設現場であり、
工事中は骨材投入設備として(写真−2)使用され、
工事完了後はダムの整備用道路の一部として供用さ
れる。場所はダム湖内であり、一時的に水没する予
定もあり、設計では盛土に残留水位が残った状態の
設計を行っている。
b)使用材料
①盛土材:盛土材には現場内で掘削された岩塊混じ
り粘性土を用いた。
②改良土:改良対象土は現場内で掘削された砂質土
3
に、高炉セメントB種を設計混合量 60kg/m (現場
3
混合量= 84kg/m )混合した。改良土の目標設計強
度は、qu = 320kN/㎡(6日気中+1日水浸強度)で
ある。
③ジオグリッド:使用するジオグリッドは、目合
166mm × 22mm の一軸延伸のジオグリッドであり、
設計より、引張り強度 34.3kN/m(テンサー SR35)のもの
を用いた。
c)盛土の施工
3
改良土は締固め密度がρd = 1.48t/m ( 1・Ec × 90
%)以上となるように、一層仕上り厚 25cm で 1t ハンド
ガイド式振動ローラーおよびプレートコンパクタにより転圧し
た。施工途中の現場密度試験の結果、改良土の締固
3
め密度はρd > 1.5t/m 以上を得ていることを確認し
た。背面の盛土も一層仕上り厚 25cm で、改良土と
同時に敷均し・転圧を行った。
d)測定項目
施工中および骨材投入設備として供用中の測定項
目は、壁面パネル土圧,改良土裏土圧,改良土底面
鉛直土圧およびジオグリッドのひずみである。
0
▽304.300
500
1,000
図−9
写真 −2
底部土圧計
2,600
適用断面
供用状況
平土圧が 4/21 頃まで土圧を測定しているように見
えるが、これは土圧ではなく計測時刻の影響による
コンクリートの温度応力であると考えられる。4/21
以降、計測時刻を変えてコンクリートの温度応力の
影響を避けるとパネル水平土圧はほぼゼロで推移し
ている。
骨材投入設備が本格始動を始めた、すなわち、壁
面近傍において 10t ダンプトラックによるコンクリ
ート用砕石の荷下ろし作業(ダンプアップ作業 ---写真−2)が頻繁に行われるようになった5月中旬
パネル下鉛直土圧
改良土下鉛直土圧
改良土裏水平土圧(H=1.0m)
改良土裏水平土圧(H=3.5m)
パネル水平土圧(H=1.0m)
15.0
盛土高さ
土圧経時データ
260
240
220
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
13.0
9.0
7.0
5.0
3.0
1.0
7/28
7/14
図−10 計測値経時データ
5.0
パネルに作用する土圧
(kN/㎡)
改良土に作用する土圧
(kN/㎡)
ジオグリッドに発生するひずみ
(%)
改良土
盛土
0 .5
4 .5
0 .1
4 .0
-0 .3
0 .5
3.5
0 .1
3.0
-0 .3
0 .5
2 .5
0 .1
2 .0
-0 .3
0 .5
1.5
0 .1
1.0
-0 .3
0 .5
0 .5
0 .1
-0 .3
0 2 0 4 0 6 0 8 0 10 0
0 2 0 4 0 6 0 8 0 10 0
0
50
底面土圧10 0
(kN/㎡)150
200
2 50
(1)その1----橋台袖部土留め適用例
本適用例は現場計測を行った現場と同じ現場で、
橋台袖部の土留めに適用された事例である。最大高
さは 7.5m で、写真−3に完成後の供用状況を、図
−12に適用断面および展開図を示す。写真のように、
供用時には 180t クラスのクローラクレーンが天端
を移動するため、設計時にはこの上載荷重を見込ん
6/30
6/2
経時日
-0 .5
ここでは、改良土とジオグリッドを組み合わせた
補強土壁の適用事例の一部を紹介する。
6/16
5/5
5/19
4/7
4/21
3/24
3/10
2/24
2/10
1/27
-1.0
0 .0
5.施工事例
▲:01 7/25測定(施工終了後173日後)
■:01 6/ 4測定(施工終了後122日後)
●:01 3/29測定(施工終了後 55日後)
- - - -:5m盛土時理論値
□:5m盛土時
△:3m盛土時
○:1m盛土時
図 −11 土圧およびジオグリッドのひずみ
で設計を行った。写真の反対側(上流側)の土留め
にも本工法を適用している。施工状況を写真−4に
示す。
B
A
A
B
B−B
A−A
改良土
c=130kN/㎡
改良土
c=220kN/㎡
▼ 29 5.00
500
500
▼ 29 5.00
ジオグリッド(SR55HB)
l=4.0m
500
6,500
3,500
ジオグリッド(SR70HB)
l=5.1m
3,000
500
1,800
▼ 287 .5 0
2,400
写真−3
適用事例その1
盛土高さ (m)
11.0
1/13
土圧 (kN/㎡)
以降は、改良土裏の土圧が下部,上部とも激しく変
動しながら徐々に大きく測定されてきている。これ
とともに、改良土下の鉛直土圧はわずかに漸増して
いるものの、パネル下の鉛直土圧が6月下旬より低
下してきていることが特徴的である。ただし、ジオ
グリッドのひずみは大きな変動はなく、ほぼ安定状
態にあることがわかる。現時点ではこれらの原因に
ついては考察できないが、今後の計測を継続して検
討資料とするつもりである。
現在までの計測データより以下の点が確認でき
た。
・壁面パネルには施工中も含め、ほとんど土圧が作
用しない。
・パネル下および改良土下の鉛直土圧の測定結果よ
り、改良土の自重だけでなく、改良土が一体とな
って背面の盛土からの土圧を受ける挙動を示して
いる。
・パネル下に地盤反力が応力集中しない。
・ジオグリッドには全般に引張りひずみが発生し、
補強材として機能していることがうかがえる。特
に、上部のジオグリッドほど相対的に大きな引張
りひずみが発生しており、模型載荷実験などで確
認された補強効果が実規模の盛土からも確認でき
た。
3,900
図 −12 適用事例その1
展開図,断面図
(a)ジオグリッド敷設
(b)盛土敷均し,改良土転圧
写真−4 施工事例その1
施工状況
用しないテンサー工法で施工された。施工状況を写
真−6に示す。
26,000
補強土工法
a
3,429
4,500
(2)その2----既設道路の拡幅工事
本工事は既設道路の拡幅工事に用いられた事例
で、のり面勾配が1:0.5 である。完成後の供用状
況を写真−5に、展開図と断面図を図−13に示す。
河川構造物(ボックスカルバート)上への設置とな
るため、カルバート回りはコンクリート製品を使
(c)盛土敷均し
▽28.472
a
a−a断面
1,750
既設道路面
1:
0.5
ジオグリッド(SR35HB)
現況地盤線
▽28.472
テンサー工法
改良土とジオグリッドを
組み合わせた補強土壁
改良土
c=125kN/㎡
写真−5
適用事例その2
図−13
(a)パネル設置
(b)ジオグリッド敷設,盛土敷均し
写真−6 施工事例その2
(3)その3----仮設道路への適用事例
本工法は改良土とジオグリッドにより構造安定性
を保つ工法であり、壁面パネルは構造安定上は必要
ない。ただし、美観や浸食防止,また、施工時の改
良土の転圧用型枠としての役目をもたせることか
ら、永久構造物として用いる場合には壁面パネルを
使用することが基本である。
適用事例その2
展開図,断面図
(c)施工状況遠景
施工状況
仮設構造物として本工法を用いる場合には、コス
ト抑制の面から壁面パネルを使用せず、代わりに大
型土のうを使用するような適用方法も可能である。
本適用事例は、災害復旧工事現場において、本道の
復旧に際し、切り回し道路として仮設的(供用約1
年)に用いられた事例である。図−14に断面図を、
写真−7に施工状況を示す。のり面勾配は2分勾配
であり、壁面パネルと代わりに用いた大型土のうは
施工性に極めて優れ、工期短縮にも寄与している。
№33+10.000
GH=129.52
9,670
1,000
4,000
200
1.500%
800
ガードレール位置(固定位置)
700
4,670
6,400
5,700
大型土のう
写真−7
ジオグリッド SR35HB
1,000
1,500
適用事例その3
施工状況
800
改良土(c=155kN/m2)
図−14
適用事例その3
断面図
6.おわりに
参考文献
改良土を補強土の壁面部分に用いる全く新しい発
想の補強土工法の開発を進め、施工事例も徐々に増
加している。施工状況や供用状況から、急勾配盛土
としての安定性も十分であり、特に壁面部分の安定
性は当然ながら非常に優れていると考えている。ま
た、施工性も従来工法と比較して何ら変わるもので
ないことが明らかとなっている。今後も、技術の研
鑽や普及に努めていく所存であるが、現時点での課
題のひとつとして地震時挙動の明確化が挙げられ
る。この点については平成 13 年度より振動台実験
を行い、
地震時挙動を明らかにしていく予定である。
1)(財)土木研究センター:「ジオテキスタイルを用いた補
強土の設計・施工マニュアル
改訂版」, 2000.2.
DEVELOPMENT OF A NEW TYPE REINFORCED EARTH WALL
USING IMPROVED SOILS COMBINED WITH GEOGRID.
Hideyuki ITO,Tomoya SAITO and Fumio SATO
A new type of reinforced earth wall was developed , using improved soils combined with geogrid.
It had been carried out pull-out tests of the geogrid in improved soils , loading tests on the model and
the trial construction of a new type of reinforced earth wall. In this papers, we report the distribution
of earth pressures, subugrade reactions and the strain of geogrid of its wall.
As a result, it was confirmed that the earth pressures acting on the concrete panel are negligible due
to the effect of the improved soils. In addition, geogrid was found to be subjected to tensile strains,
indicating that it is effective in contributing the stability of its wall of this kinds.