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毅石
法律・財務ニュースレター
毅 石 法 律 事 務 所
YISHI LAW FIRM
毅石聯合会計士事務所
YISHI UNITED C.P.A
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Contents
2011 年 7 月号上(第 186 期)
目次
一、法令法規及び関係政策
1
2
3
4
5
6
中華人民共和国個人所得税法(2011 年改正)
中華人民共和国行政強制法
「中華人民共和国社会保険法」施行に関する若干の規定
特許使用許可契約届出弁法
浦東新区の多国籍企業地域統括本部の発展
促進に係る若干の意見に関する通知(上海)
その他最新の法令法規
1
1
2
2
3
3
二、毅石の視点
1
2
3
4
5
「国家税務総局の企業所得税に係る若干の問題に関する公告」の要点解説
退職者への給与や経済補償金の支払いを遅らせられるか
企業間取引における事前調査の重要性
上海市が社会保険政策を大きく改革
労務派遣の雇用形態に規範化の兆し
【弊所声明】
翻訳及び訳文校正の関係により、今期の『法律財税メールボックス』に不明な訳文若しくは誤りがあった場合は,
全て中文版を基準としてご理解ください。ご協力のほどお願い申しあげます。
版権が所有されているため、書面による許可なくして本文を
複製、保存、引用、リンク、転載、配布、編集、改編、翻訳、宣伝紹介することを禁ずる。
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YISHI
法律・財務ニュースレター
2011 年 7 月号上(第 186 期)
一、法令法規及び関係政策
1. 中華人民共和国個人所得税法(2011 年改正)
【公 布 機 関】
【公 布 日】
【施 行 日】
【内 容 の 要 約】
全国人民代表大会常務委員会
2011-06-30
2011-09-01
改正「個人所得税法」施行の趣旨は、徴税による所得分配の調整機能の強
化、中・低所得者の税負担の一層の軽減にある。具体的には次のとおり。
1) 給与・賃金所得については、毎月の給与所得額から基礎控除額 3,500
元を差し引いた残高を課税所得額とする。
2) 源泉徴収義務者が源泉徴収する税金、および自己申告納税者が納付
する税金は翌月 15 日までに国庫に納め、税務機関に納税申告書を提
出しなければならない。
3) 個人所得税の税率(給与・賃金所得にのみ適用)は、次のように改定さ
れる。
等級
月次課税所得額
税率(%)
1
1,500 元以下
3
2
1,500 元超 4,500 元以下
10
3
4,500 元超 9,000 元以下
20
4
9,000 元超 35,000 元以下
25
5
35,000 元超 55,000 元以下
30
6
55,000 元超 80,000 元以下
35
7
80,000 元以上の部分
45
【法 令 の 出 所】 下記の URL をクリックしてください
http://www.gov.cn/flfg/2011-07/01/content_1897307.htm
2. 中華人民共和国行政強制法
【公 布 機 関】
【公 布 日】
【施 行 日】
【内 容 の 要 約】
全国人民代表大会常務委員会
2011-06-30
2012-01-01
「行政強制法」の実施は、行政強制の設定と実施の規範化、行政機関が法
律に基づき職責を履行することの保障と監督に役立つ。行政強制の種類、
設定、実施の手続きなどにつき定めているが、特に注目される点は次のと
おり。
1) 強制執行の主体:法律に行政機関が強制執行できる旨の規定がない
場合、行政機関は人民法院に強制執行につき申請しなければならな
い。
2) 行政強制措置権は委託することができない。
3) 事前催告:行政機関は、強制執行を決定する前に、当事者に対し、書
面によって義務の履行につき催告していなければならない。
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執行協議書:「行政強制法」では、行政が強制執行するにあたり、行政
機関は、公共の利益及び他人の適法な権利を害しないことを前提に、
当事者と執行協議を結ぶことができることが特に明確にされた。
【法 令 出 所】 下記の URL をクリックしてください
http://www.gov.cn/flfg/2011-07/01/content_1897308.htm
4)
3. 「中華人民共和国社会保険法」施行に関する若干の規定
【公 布 機 関】
【公 布 日】
【施 行 日】
【内 容 の 要 約】
人力資源・社会保障部
2011-06-29
2011-07-01
「規定」は「社会保険法」の具体的な手続き方法につき詳細な解説を加える
もので、年金保険、医療保険、労災・失業保険の基準、および個人と雇用主
の法的責任を明確にした。具体的には次のとおり。
1) 従業員基本年金保険に加入していた個人が、法定定年年齢に達した
時、保険料の納付年数が 15 年に満たない場合、満 15 年となるまで延
長して納付することができる。社会保険法の施行前に保険に加入した
者で、保険料の納付を 5 年間延長してもなお 15 年に満たない場合は、
満 15 年となるまでの保険料を一括して納付することができる。
2) 従業員基本医療保険に加入している個人が基本医療保険関係の移
転・継続をする場合、基本医療保険料の納付年数は累計で算出する。
3) 従業員(非全日性従業員を含む)が同時に 2 カ所以上の使用者の下で
就労するとき、各使用者はそれぞれ当該従業員のために労災保険料
を納めなければならない。当該従業員が労災により負傷したときは、そ
の従業員が負傷した時点で働いていた使用者が、法律に従い、労災保
険について責任を負う。
なお、「中国本土で就業する外国人の社会保険加入暫定弁法」(意見募
集稿)が人的資源社会保障部により公布され、意見公募中となっている。
【法 令 の 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.gov.cn/flfg/2011-06/30/content_1896608.htm
4. 特許使用許可契約届出弁法
【公 布 機 関】
【公 布 日】
【施 行 日】
【内 容 の 要 約】
国家知識産権局
2011-06-27
2011-08-01
本弁法は、特許権の確実な保護、特許権使用許可行為の規範化、特許権
の利用促進を目的としている。主な内容は以下のとおり。
1) 期限の制限
当事者は、特許権使用許可契約を発効した日から 3 カ月以内に届
け出なければならない。
2) 許可の延長についての規定
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当事者が使用許可期間を延長しようとする場合、元の実施許諾期間
が満了する 2 カ月前までに、変更協議書、届出証明書及びその他の関
連書類を持参して、国家知識産権局に変更を届け出なければならな
い。
3) 使用許可期間が満了し、または特許使用許可契約を繰り上げて終了
する場合、当事者は、期間満了後もしくは終了協議書締結後 30 日以
内に、届出証明書、終了協議書及びその他の関連書類を国家知識産
権局に持参して、届出抹消手続きを行わなければならない。
【法 令 の 出 所】 下記の URL をクリックしてください
http://www.sipo.gov.cn/zwgs/ling/201106/t20110629_609143.html
5. 浦東新区の多国籍企業地域統括本部の発展促進に係る若干の意見に関する通
知(上海)
【公 布 機 関】 上海市浦東新区人民政府等 5 部門
【公 布 日】 2011-06-17
【内 容 の 要 約】 本「通知」は、浦東地区において「本部経済」が発展するための経営環境を
改善し、浦東地区で行われている総合改革地点などの制度上の優位を生
かし、多国籍企業が地域統括本部を浦東地区に置くよう誘致することを目
的とする。ポイントは次のとおり。
1) 税関は、企業の申請に基づき、その企業の本部の信用情況について
評価した後、ランク付けして管理を行う。
2) 多国籍企業の地域統括本部によるサービス貿易の外貨収支の手続き
を利便化する。
3) 多国籍企業の地域統括本部が全世界で扱う製品・サービス、検査、研
究開発、データ処理などのサービス貿易の拡大、発展を支援する。
4) 浦東新区への貢献の度合いに応じ、一定年度内において、多国籍企
業の地域統括本部内の人材に対し、一定額の補助金を支給する。
5) 多国籍企業の地域統括本部の外国籍の法定代表者、上級管理職及
び高度な技術を持つ技術者に対し、出入国上の便宜を与える。
【法 令 の 出 所】 下記の URL をクリックしてください
http://gov.pudong.gov.cn/govOpen_GUIFANXWJ1/Info/Detail_373868.htm
6. 社会保険の個人権益記録に対する管理弁法
【公 布 機 関】人力資源・社会保障部
【公 布 日】2011-06-29
【施 行 日】2011-07-01
【法 令 の 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.gov.cn/flfg/2011-07/01/content_1897671.htm
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7. 社会保険基金による先行払いに関する暫定弁法
【公 布 機 関】人力資源・社会保障部
【公 布 日】2011-06-29
【施 行 日】2011-07-01
【法 令 の 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.gov.cn/flfg/2011-07/01/content_1897681.htm
8. 一部商品の輸入関税の調整に関する通知
【公 布 機
【公 布
【施 行
【法 令 出
関】国務院関税税則委員会
日】2011-06-24
日】2011-07-01
所】下記の URL をクリックしてください
http://gss.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/zhengcefabu/201106/t20110624_56672
5.html
9. 人民元建てクロスボーダー取引に係る問題の明確化に関する中国人民銀行の通
知
【公 布 機 関】中国人民銀行
【公 布 日】2011-06-03
【法 令 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.gzboftec.gov.cn/article.jsp?id=2c90aa9c308676530130bf945b40
2069
10. 生産・経営を行う組織の事故隠蔽および虚偽報告行為に対する処罰弁法
【公 布 機 関】国家安全監督管理総局
【公 布 日】2011-06-15
【法 令 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.gov.cn/zwgk/2011-06/20/content_1888219.htm
11. 2011 年度上海市住宅積立金の納付基数と月次納付額の上限および下限の調整
に関する通知
【公 布 機 関】上海市積立金管理センター
【公 布 日】2011-06-16
【法 令 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.shgjj.com/gjjcms/html.do/29391.html
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12. 浦東新区における本部経済発展促進のための財政支援弁法(上海市)
【公 布 機
【公 布
【施 行
【法 令 出
関】上海市浦東新区人民政府
日】2011-06-24
日】2011-06-24
所】下記の URL をクリックしてください
http://www.pudong.gov.cn/website/html/shpd/govOpen_GUIFANXWJ1/Info/
Detail_374021.htm
13. 北京市の 2011 年度企業賃金ガイドラインの公表に係る問題に関する通知
【公 布 機
【公 布
【施 行
【法 令 出
関】北京市人力資源・社会保障局
日】2011-06-28
日】2011 年度
所】下記の URL をクリックしてください
http://www.bjld.gov.cn/xwzx/zxfbfg/201106/t20110629_25676.html
14. 浙江省人民政府のサービス業の更なる発展促進に関する若干の政策意見
【公 布 機 関】財浙江省人民政府
【公 布 日】2011-06-07
【法 令 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.zj.gov.cn/gb/zjnew/node3/node22/node167/node360/node368/us
erobject9ai125410.html
15. 2011 年全省企業賃金ガイドラインの公表に関する通知(江蘇省)
【公 布 機 関】江蘇省人力資源・社会保障庁
【公 布 日】2011-06-27
【法 令 出 所】下記の URL をクリックしてください
http://www.jiangsu.gov.cn/shouye/wjgz/bmwj/201107/t20110701_610947.ht
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二、毅石の視点
1. 「国家税務総局の企業所得税に係る若干の問題に関する公告」の要点解説
このほど、国家税務総局が「企業所得税に係る若干の問題に関する公告」(国家税務総局公告
2011 年第 34 号)(以下、「公告」という)を公布し、企業所得税法及びその実施条例の施行に関す
る若干の問題について明らかにされた。
金融企業の同期・同類の貸付金利の確定方法を明確化
「中華人民共和国企業所得税法実施条例」第 38 条の規定によると、「非金融企業が非金融企業
から借り入れた資金に係る支払利息のうち、金融企業の同期・同類の貸出金利で算出される金額
を上回らない分は、課税所得から控除することができる」とされる。
今回公布された「公告」ではこれを明確化し、企業が契約の定めに従い、初回の利息を支払い、
かつこれを損金算入するときは、「金融企業の同期・同類の貸出金利に係る説明」を提出し、その
支払利息(課税所得控除)の合理性を証明しなければならないとした。「金融企業の同期・同類の
貸出金利についての説明」では、当該貸付契約の締結当時、同じ省内の金融企業のいずれか一
社の同時期・同類の貸出金利について言及しなければならず、ここでいう金融企業とは、政府の関
係部門の許可を受けて設立され、貸付業務に従事できる企業(銀行、金融会社、信託会社などの
金融機関を含む)でなければならない。「同期・同類の貸出金利」は、貸付期限、貸出金額、貸付担
保及び企業の信用などの条件が基本的に同一のとき、金融企業が提供する貸付金の金利を指す。
これは、金融企業が公表する同期・同類の平均金利や、金融企業が実際に企業に貸し付ける際の
利率とすることができる。
なお、「公告」によって、「金融企業の同期・同類の貸出金利」の判断基準が緩和された。
a)
金利の判断基準とする企業は、同じ省内の金融企業のいずれか 1 社でよく、銀行に限ら
れない。
b)
参考にする金利は、同期・同類の貸出金利の平均、または特定の企業に貸し出す際の個
別金利のどちらでもよい。
これは、合理的な根拠さえあれば、貸付金の支払利息を企業所得税の課税所得から控除できる
ことを意味している。
1)
作業服などの服飾費の損金算入について明確化
「公告」は、企業が作業の性質と特徴に基づいて作業服を統一的に作成し、作業時に従業員に
統一的に着用させる場合、その作業服代は企業の合理的な支出として損金算入できるとした。
「公告」により、同時に次の二つの条件を満たす作業服代は、企業の合理的な支出として損金算
入することが許される。
a) 企業によって統一的に作成された作業服であること
b) 従業員に対し、作業時の着用を統一的に求めるものであること
この条件を満たさない作業服代は、従業員の福利厚生費として、従業員の福利厚生に関する規
定に従って控除しなければならない。
2)
家屋、建築物などの固定資産の増改築時における税務処理を明確化
「公告」では、企業が減価償却未了のうちに家屋・建築物などの固定資産の増改築を行う場合に
ついて、次のように規定している。例えば、取り壊して新たに建設するときは、当該資産の原価から
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原価償却累計額を差し引いた後の帳簿残高を新たに取得する固定資産の損金算入が可能な原価
に合算し、当該固定資産の使用を開始した翌月以降、税法に規定する耐用年数に従って減価償却
する。あるいは、機能を高めたり、面積を拡張したりするために固定資産の増改築を行うときは、そ
の支出を当該固定資産の課税基礎額に算入し、増改築が完了し使用を開始した翌月から、改めて
税法に規定する固定資産の耐用年数に従って減価償却する。増改築後の固定資産については、
実際の使用可能年数が税法に規定する耐用年数より短い場合には、実際の使用可能年数によっ
て減価償却することができる。
なお、「公告」では、「取り壊して建設」か「機能の向上・面積の拡張」かを問わず、家屋・建築物の
増改築を行う前の固定資産の帳簿価額を新しい家屋・固定資産の帳簿価額に計上し、あわせて減
価償却すべきであるとしている。
企業が有効な証憑を提示すべき期限の明確化
「公告」は、企業が当年度内に実際に発生した原価・費用について、さまざまな原因により当該
原価・費用についての有効な証憑を適時に取得できていない場合、四半期の企業所得税予納の
際は、暫定的に帳簿上発生している金額で計算できるとした。ただし、企業所得税の確定申告時に
は、当該原価・費用に係る有効な証憑を追加で提出しなければならない。
「公告」に基づき、企業は企業所得税の確定申告時に、原価・費用などの証憑を追加提出するこ
とができる。よって、企業に発生した原価・費用は、翌年の 1 月 1 日から企業所得税の確定申告締
切日(通常は 5 月 31 日)までの間に有効な証憑を取得して提出すれば、企業所得税計算時に損金
算入できることになる。
企業の皆様におかれては、「企業所得税に係る若干の問題に関する公告」に対応し、自身の実
情に合わせて、適切に会計処理を行っていただきたい。
4)
(毅石聯合会計士事務所 丁玉倩 編集)
2. 退職者への給与や経済補償金の支払いを遅らせられるか
どんな企業にも多かれ少なかれ、人々に知られていない、企業に経済的利益をもたらす営業秘
密が存在する。例えば、管理技法、販売戦略、顧客リスト、サプライヤー情報などの経営に関する
情報、および生産・配合、工程、技術・ノウハウ、設計図などの技術情報などがこれにあたる。こうし
た秘密に接する職務にある従業員をどう管理するか、特に、そうした従業員が退職する際に、掌
握・保持していた秘密の資料の返却や引継ぎが重要となる。このとき、会社の人事部が給与や経
済補償金の支払いを遅らせることによって、当該従業員に秘密の資料をもれなく返還するよう求め
ることは可能だろうか。
まず、従業員への賃金の支払いは、業務の引継ぎを前提としていない。労働報酬は労働者が提
供した肉体労働と頭脳労働の対価であり、労働者が生み出した社会的価値を具現化したものであ
る。換言すれば、労働者が労働契約の約定どおりに労働を提供したのであれば、使用者は契約の
約定または国が定める規定に従い、遅滞なく相応の労働報酬を全額支払わなければならず、上前
をはねたり、理由なく支払いを遅らせたりしてはならない。違反した場合は、法律に基づき相応の賠
償責任を負うことになる。
次に、会社は、業務の引継ぎをしない者に対して経済補償金を支払わない権利を有する。労働
契約法第 50 条は、「労働者は双方の約定に従い、業務の引継ぎをしなければならない。会社は、
本法の関連規定に従って労働者に経済補償金を支払う必要がある場合、業務の引継ぎを完了し
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た後に支払うものとする」と規定している。これにより、遅滞なく業務の引継ぎを行うことは、労働者
にとって義務であるだけでなく、自らの権利を守るための措置にもなっている。
このように、従業員が退職するときの業務の引継ぎについて、会社は引継ぎに関する詳細なリス
トを作成し、引継ぎの具体的な方法や内容を明確にしておかねばならない。これには主に、引き継
ぎの対象となる業務内容、業務の手順、および資料、物品、金銭の返還などが含まれる。いったん
規定が明確にされたら、労働者は引継ぎを行う義務を履行しなければならない。でなければ、経済
補償金の受け取りに影響する可能性がある。一方、会社は、遅滞なく退職者に賃金を支払い、自
己にとって不利な法的効果を生じないよう注意しなければならない。
(毅石法律事務所 朱暁萍 編集)
3. 企業間取引における事前調査の重要性
合併や買収、資産の譲渡、重要な取引を行う際は、取引の安全確保のために、事前に取引先の
現状や資産の状況について十分に理解しておかなければならない。取引の種類によって、その調
査は簡易調査とデューデリジェンス(DD)に分けることができる。
事前調査には、次のような役割がある。
1) 譲渡側が提出する書類の真実性、正確性と網羅性を確かめ、対象企業の組織構造、資産の
状況、経営状態、法的な状態などを十分に把握する。
2) リスクを発見し、その性質、程度、および譲渡により被る影響や結果を判断し、譲り受ける過
程で発生しうるリスクの最大限の防止および軽減により、トラブルの発生を回避し、取引価格
の確定に役立てる。
3) 譲受側が取引対象物や対象企業の状況についてより直接的に理解することにより、取引の成
功率を高める。
一般的に、事前調査には、対象企業の適法性、発展の過程・歴史・沿革、主要な財産とその財
産権の状況、対象企業の偶発負債、企業内の規則制度、従業員の状況、重要な契約の履行状況
と重要な債権債務の状況、対象企業の訴訟・仲裁または行政処罰に関する状況の調査などが含
まれる。
中国でこれらの事前調査を行う際は、一定の国際儀礼とは別に、“中国的要素”に注意する必要
がある。西洋諸国では、買収・合併時に決定要素となるのは各種の財務データだが、中国ではさま
ざまな“人脈”から生まれるチャンスが極めて重要となる。このため、中国でデューデリジェンスを行
う際には、一般的な調査内容に加え、企業のバリューチェーン全体を深く調べあげることが求めら
れる。例えば、企業の重役の政治的背景から企業の実力を判断すること、市場におけるさまざまな
要素をふまえて対象企業の事業計画をテストすること、対象企業の取引先から対象企業の業務の
持続性を判断すること、対象企業のサプライヤーから対象企業の供給持続性を判断すること、対
象企業の競合他社の調査を通じて対象企業の市場における地位を判断すること、対象企業の上
級管理職への調査により企業運営・意思決定に影響する要素を理解することなどが必要となる。
(毅石法律事務所 張舒萌 編集)
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4. 上海市が社会保険政策を大きく改革
7 月 1 日の「社会保険法」の正式施行に伴い、上海市の社会保険政策に大きな変化が生じてい
る。
今後は、雇用主と労使関係を結んだ出稼ぎ労働者は、すべて城鎮労働者社会保険に加入しな
ければならなくなる。このうち、都市戸籍を持つ出稼ぎ労働者が加入できる保険の種類と納付に関
する規則は、上海市の戸籍を持つ労働者とまったく同じだが、都市戸籍を持たない出稼ぎ労働者
は、現在のところ、規程に従って年金、医療、労災保険の 3 つの社会保険にのみ加入することがで
きる。また、郊外に位置する雇用主や上海戸籍を持つ労働者も城鎮労働者社会保険に加入しなけ
ればならなくなる。このように、戸籍の壁は徐々に取り除かれ、社会保険における扱いは次第に統
一されていくものとみられる。
このほか、上海市は 7 月 1 日から年金保険、医療保険、失業保険、労災保険及び出産・育児保
険に関する政策を調整している。雇用主にとって比較的影響が大きいのは、「社会保険法」、「労災
保険条例」の規定により、これまで企業から支払っていた一部の費用(冠婚葬祭補助金、直系親族
扶養救済金、労災にあった従業員の食事補助、社会保険統一計画地区外で診療を受ける際の交
通費・宿泊費・食事代、および労使関係の終了または解除の際に一回のみ支払う身体障害補助金
など)について、今後は社会保険基金から支出されるという点だろう。
外国籍の労働者が上海市の社会保険に加入しなければならないか否かについては、国から具
体的な規則が出されるまでは、上海市では従来の規定に従うとしている。つまり、上海市の城鎮基
本年金保険に加入している雇用主と労使関係を結んでおり、かつ規定に従って「外国人就業証」を
取得した外国人は、年金保険、医療保険、労災保険に加入することができる。
新政策の施行により、企業の人件費が大きな影響を受けるとみられることから、人件費削減の
ために、労働者と協議書を締結し、現金の支払いをもって社会保険料の納付に代えることを約定す
る企業が現れるかもしれない。労働法は民事に属すため、労使双方で約定しておけば問題ないと
勝手に考えている経営者は少なくないからだ。
しかし、この考え方は間違っていると言わざるを得ない。労使関係において労働者は常に弱い立
場にあるため、国は双方の利益の均衡を図るべく、労働者保護に偏重する傾向にある。この考え
方は、立法時に、法律が雇用主に比較的多くの法的義務が科していることにも現れており、社会保
険料の納付もその義務の一つである。よって、労使双方は、労働契約の変更や協議書の締結によ
って、強制力のある法的義務を免れることはできない。
企業にとっては、人件費削減と引き換えに大きな法的リスクを負うことのないよう、法律に従い、
労働者のために社会保険料を納付するのが得策である。でないと、“一文惜しみの百失い”になり
かねない。
(毅石法律事務所 邵偉艶 編集)
5. 労務派遣の雇用形態に規範化の兆し
今年 4 月、「2011 年 6 月から、人的資源・社会保障部が先頭に立ち、全国総工会、国資委(国有
資産管理委員会)、全国工商連合会などが共同参画して、国内の労務派遣会社の全面的な実態
調査を行う。規則違反が発覚した派遣元または使用者は、法律に従って処分を受ける」という記事
を読んだ。その後、各省、市が相次いで通知や指導意見を公布しており、労務派遣による雇用につ
いての調査が全面的に展開されている。
毅石法律事務所&毅石聯合会計士事務所
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YISHI
法律・財務ニュースレター
2011 年 7 月号上(第 186 期)
労務派遣には、派遣元となる派遣会社、派遣先となる使用者、派遣労働者の 3 人の当事者がお
り、三者間には複雑な法律関係が存在する。派遣会社は派遣労働者と労働契約を締結し、双方で
労働関係を形成し、労働関連法律・法規の規制を受ける。そして、派遣会社が使用者と労務派遣
契約を結び、双方で労務派遣関係を形成すると、一般の民事の法律・法規の規制を受ける。派遣
労働者は使用者といかなる契約も締結しないが、使用者の指揮監督の下、使用者のために労働を
提供する。「労働関係はあるが労働を提供せず、労働を提供しているのに労働関係がない」、これ
が労務派遣の典型的な特徴となっている。
「労働契約法」第 66 条では、労務派遣は、通常、臨時の、補助的または代替的な職種でのみ用
いることができると定められている。しかし、実際はほとんどすべての職種で派遣労働者が用いら
れている。こうした雇用形態を利用し、労動法が規定する義務を回避しようとする企業は少なくない。
一部の企業では、派遣労働者が従業員全体の 9 割以上を占めるまでに至っている。
実は、かつて「労働契約法実施条例」の草案では、「臨時性、補助性、代替性」のある職種につ
いて定義が定められていた。(その原文は次のとおり。「一般に、雇用者は、主な業務でない職種で
あって、存続期間が 6 カ月を超えず、あるいは在職者が社外研修や休暇によって一時的に出勤す
ることができず、臨時で代替の従業員を必要とする職種において、派遣労働者を使用することがで
きる」)。しかし、「労働契約法実施条例」の正式施行時には、同規定は削除されていた。法律上の
不備と監督管理上の不十分さにより、労務派遣という雇用形態は、どんどんあるべき姿から遠ざか
ってきてしまった。
正しい位置に戻るには、かなり時間がかかるだろう。労務派遣という雇用形態が直面している最
大の難題は、「臨時性、補助性、代替性」を持つ職種の認定、同一労働同一報酬の問題、派遣労
働者の民主的管理への参画問題などである。現在、各地で規範の尺度が異なっているが、認定、
判断、処罰にあたって統一的な基準を欠くと、各利益集団が自らの利益のために関連規定を無視
するという事態を招きかねない。このため、長く棚上げされてきた「労務派遣条例」が公布されるこ
とも考えられる。
一度にすべてを改革することは難しい。今後、比較的長い時間をかけて、企業内の派遣労働者
の利用は減少していくだろう。
(毅石法律事務所 邵偉艶 編集)
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