低温でのイオン注入によって化合物半導体 InSb 表面に - 高知工科大学

2005 年度 修士論文
低温でのイオン注入によって化合物半導体 InSb 表面に
形成されるセル状構造
The Cellular Structure on Compound Semiconductor InSb Surface Formed
by Ion-Implantation at Low Temperature
高知工科大学 大学院 工学研究科
基盤工学専攻 修士課程 物質・環境システム工学コース
大岡 由佳理
2006 年 3 月
「低温でのイオン注入によって化合物半導体 InSb 表面に
形成されるセル状構造」
目次
第1章
緒言
第2章
(111)B InSb に形成される欠陥構造
第3章
第4章
2-1
実験
2-2
実験結果および考察
2-3
結論
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
InSb における面方位依存性
3-1
はじめに
3-2
実験
3-3
実験結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
3-4
考察
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
15
3-5
結論
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
総括
参考文献
謝辞
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28
29
第1章 緒言
イオン注入法とは、数 kV-MV で加速したイオンを固体表面に照射し、固体表面の物性例えば
電気伝導の型や導電率などを制御する技術である。一般的な化合物半導体(GaAs、InP など)にイ
オン注入を行なうと表面に損傷領域が形成されるだけである 1)-4)。しかしながら、(100)GaSb に低温
でイオン注入を行なったところ、表面にセル状構造が形成されていることを新田等が発見した
5)-6)
。
この形成機構は、イオン注入によって導入された点欠陥の挙動によるものと考えられるが、そ
の詳細およびその他の要因についてはいまだ不明な点が残されている。形成された構造はナ
ノテクノロジーへの応用が考えられる。電子デバイスをはじめとして、セルのサイズから量子効
果の発現、フォトニック結晶としての利用が期待される。このような応用を考えて、意図的に構
造を作製するために、形成機構を明らかにすることを研究目的とする。
本研究では(100)GaSb と同様に異常な現象(盛り上がりや膨張)が報告されており 7)-9)、化合物半
導体として質量差の小さい元素の組み合わせである(111)InSb を用いて、表面に形成される構造を
調べた。注入中のアニーリングを避けるために、イオン注入は低温で行なった。注入イオン種は、
一般的なドーパントであり、照射効果を高めるため質量数の大きい Sn を選んだ。
1
第2章 (111)B InSb に形成される欠陥構造
2-1 実験
Te ドープ n 型化合物半導体(111)B InSb ウエファーの鏡面(Table 2-1)に 60 keV の Sn+イオンを
注入した。注入量は 1.0×1014 - 1.0×1015 ions/cm2、基板温度は約 150K である(Table 2-2)。表面
を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)、断面を電界放射型透過型電子顕微鏡(FE-TEM)、
結晶構造は X 線回折装置(XRD)、エネルギー分散型 X 線分光器(EDX)を用いて評価した。
断面 TEM 観察用のサンプルは以下のようにして作製した。試料を二つに切断し、注入面を向か
い合わせてエポキシ糊で貼りあわせた。その両側にさらに 0.5 mm 厚の Si 単結晶ウエファーを貼っ
た。超音波カッターで、貼りあわせ面が円の中心になるように、直径 2 mm の円柱に打ち抜き、これ
を内径 2 mm、外径 3 mm の真鍮円筒に埋め込み、エポキシ糊で固めた。それをダイヤモンドカッタ
ーで、1 mm 厚程度に切断し、手研磨によって、0.2 mm 厚にした。これをイオンミリングによって接
着部を薄膜化し、これを断面 TEM 観察用サンプルとした。
FE-TEM によって、イオン注入領域近辺断面の明・暗視野、制限視野回折像(SAED)を観察し、
これを通常 TEM フィルムに記録した。試料表面に形成された欠陥の局所的な組成を EDX で調べ
た。
2
2-2 実験結果および考察
Fig.2-1 に示す薄膜法(固定角度 1°)で測定した X 線回折結果から、イオン注入前後での結晶
構造の大きな変化は確認できなかった。
Fig.2-2 に表面の FE-SEM 像を示す。(100)GaSb と同様な組織が観察される。1.0×1014 ions/cm2
では所々に穴が形成されていた。注入量が増加すると表面全体に穴が開き、6.8×1014 ions/cm2
以上の注入量では穴同士が合体し、さらに大きな穴になっている。注入量増加に伴う形成された
穴の密度変化を Fig. 2-3、直径の変化は Fig. 2-4 に示す。
断面 TEM 像とその制限視野回折像を Fig.2-5 に示す。表面欠陥構造は、注入量増加とともに
変化している。Fig.2-6 は、ボイドあるいはセルの直径、高さ、壁の厚さを注入量に対してプロットし
ている。以下、結果を注入量の小さい方から整理する。
1.0×1014 ions/cm2 では、TRIM より求めた Sn イオン飛程(Fig.2-7)に直径約 30 nm のボイドが形
成されている。面欠陥が表面に対して約 70∼80°の角度で一面に入っている。SAED より、[111]
晶帯軸に対称なエキストラスポットが観察され、この欠陥は(111)双晶であることが確認できる。
3.8×1014 ions/cm2 では、直径 30 nm、深さ40 nm のボイドに成長しているが、1.0×1014 ions/cm2
注入試料と同様な面欠陥が形成されている。SAED で観察されるリングは、金属 Sb 由来である。
6.7×1014 ions/cm2 では、直径 50 nm、高さ 180 nm、壁の厚さ 10 nm の筒状空洞の集合が形成さ
れており、結晶構造は多結晶であることが SAED より確認できる。
形成された構造は(100) GaSb と比較すると楕円球状に近い。
断面 TEM 観察によって InSb では双晶の形成が著しいことが分かる。双晶は、強いストレスが材
料にかかって変形したとき発生する(変形双晶)。InSb の場合でも注入された領域に強いストレスが
蓄積されていることの証明であり、GaSb で主張されているボイド形成機構(点欠陥の蓄積によるスト
レスを開放)が InSb でも成立することを示す。
3
Fig.2-8 は、6.7×1014 ions/cm2 注入試料に対しEDXで求めた局所的な元素組成(In、Sb、Sn)の
深さ方向分布である。Sn に関しては GaSb と同様にボイドの底と最表面で約 1%の Sn 濃度が検出
されている。(100) GaSb の場合と大きく異なる点は、Ga と Sb の濃度比にそれほど差はないが、表
面の In と Sb の組成比が大きく違う点である。深さ 200 nm ぐらいまで Sb 濃度が In よりもはるかに
高く、その比は深さ 100 nm で最大 4:1 である。
Sb 過剰の原因として考えられるのが、基板方位である。(111) InSb に垂直な[111]方向の原子の
並び方は、格子定数を a として 3a/4 ごとに(In、Sb、空、空)もしくは(Sb、In、空、空)の繰り返しであ
る(Fig. 2-9)。この実験で用いたサンプル(111)B InSb は後者の(Sb、In、空、空)の繰り返しで原子が
並んでいる。このサンプルにイオン注入された場合、後ろに In が存在する Sb より、後ろに空、空、
と続く In のはじき出しが起きやすい 10)。その結果表面の Sb と In の濃度比が大きくずれたものと考
えられたが、このことは次の章でさらに議論する。
2-3 結論
(111)B InSb に低温でイオン注入を行い、表面に形成される欠陥構造を調べた。表面の欠陥形成
挙動は GaSb と同様であったが、セル構造の形状は楕円球状である。また EDX による元素分析よ
り表面の組成は Sb 過剰であった。
4
Table 2-1 The experimental condition of implantation.
(111)B InSb
SumitomoElectiric Industries, Ltd.
Method of crystal growth LEC
Conductivity type
n-type
Dopant
none doped
Carier concentration
F: 2.0 × 10 ∼B:2.0 × 10 /cm
Electric resistivity
F: 4.6 × 10 ∼B:4.6 × 10 /cm
Mobility
F: 6.8 × 10 ∼B:/6.8 × 10 /cm
Thickness
604 μm
Diameter
40 mm
Process
surface
B-mirror
backside
wrap etch
(111)
Orientation
16
16
3
-3
-3
3
4
4
3
Table 2-2 Ion dose and substrate temperature.
2
14
14
14
14
14
15
Dose (ions/cm ) 1.0 × 10 2.0 × 10 3.8 × 10 4.7 × 10 6.8 × 10 1.0 × 10
Temperature (K)
145
142
141
164
143
134
5
500
400
(ions/cm2)
Intensity (a.u.)
1.0 × 1015
300
4.0 × 1014
200
1.0 × 1014
100
undope
0
20
30
40
50
60
70
2θ/degree, CuKα
80
90
100
Fig.2-1 X-ray diffraction patterns results of as implanted (111)B InSb surfaces.
6
1.0 × 1014
2.0 × 1014
3.8 × 1014
7
100 nm
4.7 × 1014
6.8 × 1014
1.0 × 1015
(ions/cm2)
Fig.2-2 FE-SEM images of the (111)B InSb surface implanted with 60 keV Sn+ at a low templature.
Density( X 10 10 /cm 2 )
7
6
5
4
3
2
1
0
0
2
4
6
Dose ( X 10
14
8
10
12
2
ions/cm )
Fig.2-3 Dependence of the cavity density on ion dose for (111)B InSb surface.
60
Depth (nm)
50
40
30
20
10
0
0
2
4
6
8
10
12
Dose ( X 1014 ions/cm 2 )
Fig.2-4 Dependence of cavity diameter on ion dose for (111)B InSb surface
implanted by 60 keV Sn+ at low temperature.
8
9
30 nm
30 nm
1.0 × 1014
50 nm
3.8 × 1014
6.7 × 1014
(ions/cm2)
Fig.2-5 The cross-sectional TEM image (bright field) and diffraction pattern of (111)B InSb implanted with 60 keV Sn+
at low temperature.
200
Dimennsions (nm)
160
120
80
40
0
2
4
6
Ion dose ( x 1014 ions/cm2)
Fig.2-6 Dependence of defect dimensions on ion dose on InSb surface implanted
by 60 keV Sn+.
10
8
150
120
0.02
90
60
0.01
1
-
Target displavcements (nm・ion)
0.03
)
n
o
i
・
m
n
(
s
e
g
n
a
r
n
o
I
-1
180
30
0
0
0
20
40
60
Depth (nm)
80
100
Fig.2-7 Ion implantation simulation by TRIM.
11
120
Relative Concentration (%)
100
80
60
Sb
40
In
20
Sn
0
100
200
300
400
Depth (nm)
Fig.2-8 Composition obtained from the EDX spectra are shown against the depth.
12
(111) imprantation
(100) imprantation
Sb
Sb
Ga
In
13
empty
empty
Fig. 2-9 Atom arrangement in zinc-blend structure (110). projection).
第 3 章 InSb における面方位依存性
3-1 はじめに
低温で 60 keV Sn+を注入した (111)B InSb 表面にも特異なセル状構造が形成されることが断
面 TEM 観察、SEM および TEM-EDX によって判明した。この欠陥構造の注入後の組成など面
方位依存性について詳しく検討するために(111)A InSb にイオン注入を行なう。
3-2 実験
n 型化合物半導体(111)A InSb ウエファー鏡面(Table 3-1)に 60 keV の Sn+イオンを低温で注入
した。それぞれの注入量と基板温度は Table 3-2 に示す。
構造評価は第 2 章と同様である。
3-3 実験結果
薄膜法(固定角度 1°)X 線回折による結果を Fig. 3-1 に示す。イオン注入を行なうと(220)、
(331)、(511)で結晶構造がアモルファスになる可能性があることが分かる。
Fig. 3-2 に、注入量を変えて照射した表面の FE-SEM 像を示す。9.6×1013 ions/cm2 で表面全
体に穴が形成されている。(111)B InSb では、この注入量では表面に所々にしか穴が形成されて
いなかった。5.0×1013 ions/cm2 でも穴の形成されており、1.0×1013 ions/cm2 では穴が確認できな
かった。最大注入量では(111)B InSb 同様に穴と穴が合体して大きくなっている。注入量増加に
14
伴う形成された穴の密度変化を Fig. 3-3、直径の変化は Fig. 3-4 に示す。
断面 TEM 像とその制限視野回折像を Fig. 3-5 に示す。2.0×1014 ions/cm2 でセル状構造が形
成されている。この構造は直径 40 nm、高さ 80 nm、壁の厚さが 6 nm 程度である。4.0×1014
ions/cm2 では高さ約 140 nm、8.0×1014 ions/cm2 では高さ約 190 nm となっている。注入量に比
例して壁の高さつまりセルの深さは大きくなっている。しかしながら、壁の厚さ、穴の径はあまり変
化はなかった。その変化をグラフにしたものを Fig. 3-7 に示す。制限視野回折像より、双晶スポット
が観察された。8.0×1014 ions/cm2 のリングはサンプル補強のために用いた真鍮由来である。
注入量が 4.0×1014 ions/cm2 の高分解能像を Fig. 3-6 に示す。
Fig.3-8 は EDX による局所的な組成分析の結果である。注入初期の 2.0 × 1014 ion/cm2 注入
試料では、表面で In 過剰であるが、注入量が増加すると(111)B InSb と同じ様に Sb 過剰となって
いる。注入量が増加するとその濃度差は大きくなっている。
3-4
考察
SEM および TEM の結果より、(111)B InSb と同様に注入量を増加させるとそれに比例して欠陥
構造は大きくなるが、(111)B InSb よりもボイドが形成されやすく、注入量に対してセル成長が早か
った。これを確認するために室温 FIB で簡易的な実験を行なった。(111)A InSb、(111)B InSb、
(100) InSb 基板に 1015 – 1017 ions/cm2 の注入量で 50 keV Ga+を照射すると、5.0 × 1015、1.0 ×
1016 ions/cm2 注入試料で面方位による違いが見られる(Fig. 3-9)。(111)A InSb 表面に多くのボイド
が形成していることを確認できる。
15
(111)A InSb においてボイドが形成されやすい、すなわち点欠陥形成に有利である要因として 2
つ挙げられる。拡散係数(Table 3-1)をみると In よりも Sb の方が拡散しやすい。In のはじき出しが
起きやすい(111)B InSb よりも、Sb の方がはじき出されやすい(111)A InSb の方が点欠陥の拡散が
大きいので、ボイドの形成に有利であったと考えられる。
TEM-EDX の結果より、欠陥構造の組成は注入量によって変化している。注入初期では原子
の並びに依存し、Sb のはじき出しがおきやすいために In 過剰となる。さらに注入を続けると Sb 過
剰となっていることより、注入量が増加してアモルファスになると[111]方向の原子の並びに関係な
く In が拡散しやすくなることが分かった。
3-5 結論
セル成長様式において(111)B InSb と同様であったが、セル成長が早く、ボイドの形成に有利
であった。また、注入後の組成は、注入初期では原子の並びに依存し、注入量が多くなって結晶
性が失われると In が拡散しやすくなる。
16
Table 3-1 The experimental condition of implantation.
(111)A InSb
MATERIAL - TECHNOLOGY & KRISTALLE GMBH
Diameter
50.8 ± 0.5 mm
Thickness
450 ± 15μm
Surface orientation
(111)A ±0.5 -2pcs
Conductivity type
n
Carrier concentration
3-7 × 10 cm
o
14
14
-3
15
-3
Carrier concentration (77K) 2.10 - 2.10 cm
EPD
Surface
<200 cm
face side
back side
-2
polished
lapped and etched
Table 3-2 Ion dose and substrate temperature.
2
13
13
13
14
14
Dose (ions/cm ) 1.0 × 10 5.0 × 10 9.6 × 10 2.0 × 10 4.0 × 10 8.0 × 10
Temperature (K)
149
165
140
148
158
17
14
Intensity (a.u.)
600
(511)
(331)
(220)
800
(ions/cm2)
8.0 × 1014
4.0 × 1014
400
1.0 × 1014
5.0 × 1013
200
1.0 × 1013
undope
0
20
30
40
50
60
70
2θ/degree, CuKα
80
90
100
Fig.3-1 X-ray diffraction patterns results of as implanted (111)B InSb surfaces.
18
1.0 × 1013
5.0 × 1013
9.6 × 1013
19
100 nm
2.0 × 1014
4.0 × 1014
8.0 × 1014
(ions/cm2)
Fig.3-2 FE-SEM images of the (111)A InSb surface implanted with 60 keV Sn+ at a low templature.
Density (× 10 10 /cm 2 )
10
8
6
4
2
0
0
2
4
6
Dose (× 1014 ions/cm 2 )
8
10
Fig.3-3 Dependence of the cavity density on ion dose for (111)A InSb surface.
60
Diameter (nm)
50
40
30
20
10
0
0
2
4
Dose ( ×10
6
14
8
10
2
ions/cm )
Fig.3-4 Dependence of cavity diameter on ion dose for (111)A InSb surface implanted
by 60 keV Sn+ at low temperature.
20
21
50 nm
2.0 × 1014
4.0 × 1014
8.0 × 1014
(ions/cm2)
Fig.3-5 The cross-sectional TEM images (bright field) and diffraction pattern of (111)A InSb implanted
with 60 keV Sn+ at cryogenic temperature.
10 nm
Fig.3-6 HRTEM image (bright field) of (111)A InSb implanted with 60 keV Sn+
at low temperature to a dose of 2.0 × 1014 ions/cm2.
22
200
Dimensions (nm)
160
120
80
40
0
0
2
4
6
Ion dose (×1014 ions/cm2)
Fig.3-7 Dependence of defect dimensions on ion dose on InSb surface implanted
by 60 keV Sn+.
23
8
24
Relati ve Concentration (%)
100
80
60
40
20
0
100
200
300
400
0
100
200
300
400
0
100
200
300
Depth (nm)
2.0 × 1014 (ions/cm2)
4.0 × 1014 (ions/cm2)
8.0 × 1014 (ions/cm2)
Fig.3-8 Composition obtained from the EDX spectra are shown against the depth.
400
1.0 × 1015
5.0 × 1015
1.0 × 1016
5.0 × 1016
(111)A InSb
(111)B InSb
25
(100) InSb
Fig.3-9 FIB images of InSb implanted with 50 keV Ga+.
1.0 × 1017
(ions/cm2)
Table 7-2 Self-and impurity – diffusion coefficients.11)
Diffusant
In (in InSb)
Sb (in InSb)
Ga (in GaSb)
Sb (in GaSb)
2
D0 (cm /sec)
1.76x10
3.1x10
13
Q (ev)
4.3
13
4.3
3
3.15
3.45
3.2x10
4
3.4x10
26
第3章 総括
第4章
低温で(111)A InSb、(111)B InSb に 60 keV Sn+をイオン注入するとセル構造が形成されることを
確認した。セル成長様式において(100)GaSb と同様であった。(111)A、(111)B InSb に形成された
構造の比較をすると、(111)A InSb はセル成長が早く、ボイドの形成に有利であった。また、注入
後の組成は、注入初期では原子の並びに依存し、注入量が多くなって結晶性が失われると In が
拡散しやすくなる。
これらの結果は、考えられているセル状構造の形成機構の裏づけとなり、形成機構の詳しい解
析に繋がると考えられる。
27
参考文献
[1] M. Taniwaki, H. Koide, N. Yoshimoto, T. Yoshiie, S. Ohnuki, M. Maeda and K. Sassa: J. Appl.
Phys., 67(1990)4036
[2] M. Taniwaki, H. Koide, T. Yoshiie, Y. Hayashi and H. Yoshida, J. Non-Cryst. Solids,
117/118(1990)745.
[3] M. Taniwaki, M. Yanaba, T. Yoshiie and Y. Hayashi, Defect Diffus. Forum,
95/98(1993)989.
[4] M. Taniwaki, T. Yoshiie, H. Koide, M. Ichihasi, N. Yoshimoto, H. Yoshida and Y. Hayashi, J.
Appl. Phys., 66(1989)161.
[5] N. Nitta, M. Taniwaki, T. Suzuki, Y. Hayashi, Y. Satoh and T. Yoshiie, Mater. Trans.,
43(2002)674.
[6] N. Nitta, M. Taniwaki, Y. Hayashi and T. Yoshiie, J. Appl. Phys., 92(2002)1799.
[7] D. Kleitman and H. J. Yearian, Phys. Rev., 108(1957)901.
[8] G. L. Destefanis, J. P. Belle, J. M Ogier-Collin and J. P. Gaillard,Nucl. Instrum. Methods.,
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[9] M. Shaana, R. Kalish and V. Richter, Nucl. Instrum. Methods., B7/8(1985)443.
[10] F.H. Eisen, Phs. Rev., 135(1964) A1394
[11] J. W. Corbett et.al, Defect creation in semiconductor, Ed. By J. W. corbett and L.
M. Slifkin, Point Defect in Solids vol. 2, Plenum Press (1975)34
28
謝辞
本研究を遂行するにあたり、御指導・御鞭撻を賜りました高知工科大学工学部物質・環境システ
ム工学科 谷脇雅文教授に深く敬意と感謝の意を表します。
イオン注入実験およびその他に関して多くのご援助を頂いた、京都大学原子炉実験所 林禎彦
技官、義家敏正教授に感謝の意を表します。
FE-SEM の実験において、高知カシオ株式会社と同社 TFT 製造部プロセス技術課 馬場延明氏、
小松志麻氏のご厚意で行ないました。両氏に深く感謝致します。
多くの助言・協力を頂いた高知工科大学工学部物質・環境システム工学科 新田紀子氏に心より
お礼申し上げます。
高知工科大学工学部物質・環境システム工学科物質工学講座谷脇研究室のみなさまには実験、
その他において協力を頂きました。深く感謝致します。
29