ベンチャー企業のディスクロージャー機能のあり方に関する - 経済産業省

平成13年12月7日
プ レ ス 発 表
ベンチャー企業のディスクロージャー機能のあり方に関する研究会
∼提言の概要∼
平成13年12月
「ベンチャー企業のディスクロージャー機能のあり方に関する研究会」(座長:
宍戸善一成蹊大学法学部教授)は、ベンチャー企業の資金調達円滑化の観点から、
新規株式上場段階及び私募段階でのディスクロージャー制度に関して以下のよう
に提言をまとめた。
1.公募段階における開示規制・制度のあり方について
ベンチャー企業の新規株式上場(IPO)は事業発展のための重要なステップ。
上場時のディスクロージャー規制は、伝統的大企業を想定したものであり、ベン
チャー企業の特性(将来性等)に合わせて見直すことが必要。
「将来に関する情報」の開示奨励と投資勧誘の弾力化を図り、企業の『自律的
ディスクロージャーの促進』と『投資家に理解されやすい情報開示』に向けて、
あるべきディスクロージャー制度の実現を目指すべき。
また、無用な萎縮効果(チリング・エフェクト)防止のため、諸規制・基準を
明確化すべき。
(1)目論見書の記載事項の見直し
①過去情報偏重の制度を見直し、「将来に関する情報(経営方針、事業計画
等)」の開示を奨励する開示政策スタンスを明らかにすべき
(義務付けではなく選択利用の制度)
−同時に、民事責任範囲に対して一定のセーフ・ハーバー・ルール(責任免除
規定)の設定を行うべき
②その他の個別項目の見直し…株主上位100人の氏名・住所の記載を簡略化
すべき等
(2)効果的な投資勧誘の実現
○ 効果的な投資家説明会(ロードショウ)の開催を実現するため、投資勧誘時
に使用できる文書・資料等の範囲を明確化すべき
○ また、上記の明確化に向けて、発行者等も「ノーアクションレター制度」の
積極的活用に努めるべき
(3)「将来に関する情報」の開示促進に向けた制度整備
①適切な情報開示の確保
・開示情報の客観的分析を確保するため、アナリストの情報取得が円滑化され
るべき
1
・虚偽情報・恣意的開示を排除するため、証券会社による適正な審査と行政等
による事後監視機能の強化が図られるべき
②事後検証手続きの確保
・「将来に関する情報」の事後フォローを確実にするため「経営者による事後
分析(日本型MD&A)」の導入や適時開示・四半期開示の充実を図るべき
(4)公開審査プロセスに関する検討
①行政機関による審査への関与はできるだけ極小化すべき
②証券会社の多様な引受機能が発揮され、また、企業や投資家による業者の選別
を通じたレピュテーション(評判)の競争が促進されることを期待
(5)迅速な情報開示に向けた環境整備
○企業のウェブサイト上での情報開示を促進するため、閲覧者がインサイダー
規制における「第一次情報受領者」に該当しない措置、又は「公表」概念の見
直しを行うべき
2.私募制度の適正化について
企業の成長資金が円滑に調達され得るように、使いやすい私募制度の実現を図
るべき。
「投資家保護」の必要のないプロ投資家を相手とする場合の「公募」・「私募」
の境界を適正化して、本来自由であるべき私募手法による資金調達にまで開示規
制が課せられないようにすることが必要。
(1)募集・勧誘概念の見直し
①人数基準(50人のカウント方法)の見直し
・投資勧誘を広く行い調達機会を増大するため、
「少人数私募」の50人カウ
ントからプロ投資家を除く措置を講じるべき
・プロの範囲は、ベンチャーキャピタル、ベンチャーファンド、年金基金、
(個人エンジェル投資家)を追加して拡大すべき (従来は金融機関、一
部の事業会社に限定)
②プロ私募制度の拡充
・エクイティ関連証券に対する「プロ私募制度」の適用を解禁すべき
・この場合の転売制限は発行と流通の段階を区別した実効性ある制度とする
べき
③勧誘対象者の期間通算の見直し
・勧誘人数の期間通算は、発行目的毎に区別すべき、または通算期間を短縮
化すべき
④投資勧誘とされる行為の明確化
・投資勧誘とIR・情報提供行為の区別を明確化して企業の調達機会を拡充
2
すべき
(2)届出とする範囲の見直し
①届出義務の適用金額の見直し
・届出金額(現行1億円)の引上げ又は通算期間の短縮(2年間→1年間)を
行うべき
②インターネット等による多数者への勧誘行為に関する投資家保護策の検討
(3)適用除外措置の拡大
①ストックオプション付与に対する開示義務を免除すべき
②既存株主に対する株主割当、第三者割当に対する開示義務を免除すべき
(4)資金仲介機能の強化
○証券業としての「私募の取扱い」に係る見直し
・証券会社が投資勧誘できる有価証券を拡大すべき(証券業協会自主ルール
の見直し)
・エンジェルネットワーク運営者等が証券業とみなされない基準を明確化す
べき
(5)有価証券通知書制度の見直し
○未公開株の1億円以上の私募に対する通知書提出制度を廃止すべき
3.新たな有価証券に係る開示ルールの整備
今般の商法改正に伴い「新株予約権」が創設され、これを表示する証券が証券取
引法上の有価証券とされる。また、「各種の種類株式」の発行が認められる。
○新株予約権証券のストックオプション的利用及び多様な種類株式の発行が阻
害されないように開示ルールの整理を進めるべき
以 上
連絡先
経済産業省産業政策局
新規産業室
山崎、寺内
Tel 03-3501-1569
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ベンチャー企業のディスクロージャー機能のあり方に関する研究会
(委員)
宍戸善一・成蹊大学法学部 教授 (座長)
神作裕之・学習院大学法学部 教授 (座長代理)
伊藤穰一・株式会社ネオテニー 代表取締役社長
大崎貞和・株式会社野村総合研究所 資本市場研究室長
大杉謙一・東京都立大学法学部 助教授
下村昌作・東京証券取引所 上場部課長(第2回より)
(亀谷英敬・東京証券取引所 上場部課長(第1回まで))
静 正樹・東京証券取引所 上場部課長
川島隆明・シュローダー・ベンチャーズ株式会社ストラテジック・パートナー
北地達明・監査法人トーマツ 社員 公認会計士
小池基博・大阪証券取引所東京事務所 課長代理
佐藤淑子・日本インベスター・リレーションズ協議会 主任研究員
谷 正之・ナスダック・ジャパン株式会社上場推進担当シニア・ディレクター
棚橋 元・森綜合法律事務所 弁護士
出縄良人・ディー・ブレイン証券株式会社 代表取締役会長兼社長
早川 静・野村證券株式会社 企業金融六部(前公開引受部)次長
平田公一・日本証券業協会 市場本部市場部次長
荒木敏朗・株式会社ジャスダック 店頭上場部管理室課長代理
平野清久・株式会社大和総研 企業調査第一部フロンティア企業調査室長
前田 博・三井安田法律事務所 弁護士
増田健一・アンダーソン・毛利法律事務所 弁護士
三原秀哲・長島・大野・常松法律事務所 弁護士
村口和孝・日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合 ベンチャーキャピタリスト
山本 功・メリルリンチ日本証券株式会社 投資銀行部門マネージング・ディレクター
以上23名
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