ダウンロード - 新事業創出人材育成事業

農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
科目1 1・2・3次産業基本論
新事業創出事例パート
(12)物質・エネルギー利用型地域資源利用論
開発担当者 :
東京農業大学生物産業学部食品香粧学科 准教授 宮地竜郎
株式会社三菱総合研究所
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
この講義の3つの目標
テキスト
対応箇所
1
六次産業化において、「食品」以外の「物質・エネルギー」利
用が注目される背景・理由を理解してください。
I
物質・エネルギー利用を「産業」としてみた場合のポテン
シャル(成長性)と課題を理解してください。
II
実際に、物質・エネルギーとして利用している事例を知って
ください。
III
2
3
1
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
今回のテーマ
I.資源・エネルギー問題、環境問題と生物資源利用
II.生物資源を利活用する産業のポテンシャルと限界
III.具体事例の分析
2
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
I.資源・エネルギー問題、環境問題と生物資源利用
© 東京農業大学 宮地竜郎、三菱総合研究所 森卓也
3
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
なぜ農村に資源・エネルギー問題および環境問題の解決を求めるのか?
食品廃棄物
食品リサイクル
都市
農村
資源・エネルギーの大量消費
↓
資源・エネルギーの枯渇(資源・エネルギー問題)
都市ごみの発生(環境問題)
↓
持続可能な開発が必要
↓
省資源・省エネルギー
食品廃棄物の有効利用
農産・畜産・林産・水産廃棄物の恒常的な発生
↓
水質汚濁(環境問題)
↓
持続可能な農業の実践が必要
↓
生物系廃棄物のコンポスト化・バイオコンバージョン
↓
↓
農地還元(施肥)
バイオガス・バイオエタノール
食糧・バイオマスエネルギー
4
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
「廃棄物」は資源・エネルギー問題、環境問題のキーワード
 廃棄物の分類(赤字は生物系廃棄物)
放射性廃棄物
生活系
ゴミ
一
廃 般
棄 の
物 廃
棄
物
生活系
廃棄物
事
業
系
廃
棄
物
事業系
一般廃棄物
産業廃棄物
一
般
廃
棄
物
可燃物
一般
ゴミ
ゴミ
事業系
ゴミ
•
•
•
•
紙類
厨芥
木・竹類
繊維
不燃・燃焼
不適物
• プラスチック、ゴム、金属、ガラス・陶磁
器、雑物
粗大ゴミ
• 冷蔵庫等家電製品、テレビ、洗濯機、
机・タンスなど家具類、自転車、畳、厨房
用具など
• し尿
• 紙くず ・ 木くず ・ 動物性残渣 ・ 動物糞尿 ・ 動物の死体
• 燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、繊維くず、ゴムくず、金属
くず、ガラスおよび陶磁器くず、鉱さい、建築廃材、ばいじん類、上記18種類の産業
廃棄物を処分するために処理したもの
出典:廃棄物の分類(中山、1993)を改変
5
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
資源・エネルギーの枯渇
1973年 第四次中東戦争勃発→第一次オイルショック(石油危機)、トイレットペーパー騒動
1979年 イラン革命→第二次オイルショック
・多くの日本人が食料をはじめとする生活必需品も含め、我々の生活全てが化石燃料である石油に依
存していることを認識し、資源の有限性を実感。
⇒以後、商品包装の簡素化、省エネルギー、未利用バイオマス(有機資源)活用への取組が活発化
1980年代 石油需給の安定化と景気の回復→バブル経済期(1986-1991年)
大量の製品が生産・流通され、商品の高品質化と高付加価値の追求は大量のハネ品と期
限切れ商品の大量廃棄へとつながった。
・バブル崩壊後、オイルショック後のような局所的な資源利用や単なる環境対策だけでは対応不可能で
あることが認識された。
・持続的発展を伴ったリサイクル社会の達成が叫ばれる。
・廃棄物対策において、3R、Reduce(減量)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)の考え方が一般化
1994年 ゼロエミッションの提唱
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
都市の取組み1(ゼロエミッション)
 ゼロエミッションとは?
– 1994年、国連大学(東京)が提唱したもので、天然資源の有効利用を目的としている。
– 産業の生産過程を様々に組み合わせることにより、それぞれの過程で排出される廃棄物を別
の生産過程の原材料として再利用して、完全リサイクルの生産システムを実現し、すべての生
産過程から廃棄物を一切出さないことを目指す。
– ゼロエミッションのシステム化を通じて、資源の最大利用を図り、生産性を最大に上げるため
の技術開発を目指すものであり、これを通じて持続可能な開発を支援しようとするものである。
製品工場
製造
原料a
廃棄
加工
工程a1
廃棄物
加工
工程a2
廃棄物
製造原料b
製造原料c
最終製品B
最終製品C
最終
製品A
廃棄
7
農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
都市の取組み2(ライフサイクルアセスメント)
 ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?
– 対象とする製品あるいはサービスに対して、原料生産から製品製造、流通・使用、リサイクル・
廃棄物処分のライフサイクル(ゆりかごから墓場まで)にわたってインプットデータ(製品に使用
される資源やエネルギーの投入量)とアウトプットデータ(環境へ排出される汚染物質、固形廃
棄物などの環境負荷量)を分析し、製品やサービスの環境影響評価を総合的に行う手法
– ISO14004(環境マネジメントシステム)として認証化
製品のライフサイクル
原料生産→製品製造→流通→使用(消費)→リサイクル
→廃棄→廃棄物処分
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
ライフサイクルアセスメント(LCA)の対象としての食品産業の特徴
1.
食品原料生産において、単位面積当たりの生産性の低さや土壌生態系への直接影響など、環境への影響が
他の工業製品とは異なる。
2.
食品原料生産は、生産の時間的、空間的変動が大きく、エネルギー源としての機能以外に多様な機能がある。
3.
動植物は人に都合の良い役割を担うために存在しているわけではないため、食用に不必要な部分(不可食部
分)が多くあり他の産業よりも廃棄物が多い。
4.
嗜好性が強く影響し、原料・製品ともに寿命(ライフサイクル)が短く、そのためロスが大きく、副産物生産やリ
サイクルを伴っている。
5.
製品単価が安く、多品種尐量生産。
6.
他の製造業に比べ中小企業およびパートタイム労働の比率が高い。
7.
近年、消費者の食品の高品質へのこだわりや安全性への関心の高まりが、品質管理や賞味期限に対しての
厳正さを一層強くし、その結果としてハネ品や賞味期限切れ食品等の廃棄食品を大量に生んでいる。
車体
魚
廃棄
うろこ、ひれ、頭、
骨、内臓
タイヤ 窓ガラス
バス
食品(切り身)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
食品産業が環境に及ぼす影響(アウトプットデータ)
食品のライフサイクル
 製品製造
汚水・汚泥の発生
 流通
製品輸送(トラック、船、航空機等)から大量に発生するCO2、Nox(窒素酸化物)
 流通・使用 包装材等の産業廃棄物の発生
 使用(消費) 調理残渣等の一般廃棄物の発生
資源・エネルギー投入量を最大限に抑え、ライフサイクルの各段階からの廃棄物の放出を最小限に
するシステム形成が望まれる。
ゼロエミッション型の食品産業の推進が必要

食品製造工程の改良、生産方式の大幅な転換、生物系(有機性)廃棄物のコンポスト化、産業
廃棄物の減量化などのリサイクル技術開発が重要

我国の食料自給率は40%であり、食品産業に供給される食品原料の約60%は海外から輸入さ
れたものである。

日本では生物資源の輸入が多く生物資源生産が尐ないため、収穫段階で発生する穀物収穫残
渣等の比率が小さく、製造・消費段階で発生する廃棄物の比率が大きい。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
都市の取組み3(食品リサイクル法)
 食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)
– 平成13年5月施行
– 食品廃棄物の排出量はおよそ1900万トン/年
– 食品関連事業者(食品メーカー、スーパー、外食産業、ホテル・デパート等)が対象
 食品廃棄物の分類
製造段階→動植物性残渣・ハネ品→産業廃棄物
食品廃棄物
流通段階→売れ残り→事業系一般廃棄物
消費段階(過程・外食)→調理くず・食べ残し→家庭系一般廃棄物
出典:「食品のゼロエミッション」幸書房を改変
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
食品廃棄物の発生量と処理状況
 家庭系廃棄物の再利用は極めて尐なく、多くが焼却や埋め立て処分されている。
 日本全体の食品廃棄物は9%が再利用されているにすぎない。
処分
項目
一般廃棄物
発生量
焼却
埋め立て
再利用
肥料化
飼料化
その他
計
1,600万トン
事業系
600万トン
家庭系
1,000万トン
1,595万トン
(99.7%)
5万トン
(0.3%)
5万トン
(0.3%)
産業廃棄物
340万トン
177万トン
(52%)
47万トン
(14%)
104万トン
(31%)
12万トン
(3%)
163万トン
(48%)
食品廃棄物
(合計)
1,940万トン
1.772万トン
(91%)
52万トン
(3%)
104万トン
(5%)
12万トン
(1%)
168万トン
(9%)
940万トン
775万トン
(83%)
49万トン
(5%)
104万トン
(11%)
12万トン
(1%)
165万トン
(17%)
事業系の合計
(食品廃棄物合計
から家庭系を除い
たもの)
出典:「食品のゼロエミッション」幸書房を改変(H8年厚生省資料等)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
農村の問題1(資源・エネルギー)
その他
資材・建物
燃料・電力
肥料・農薬
機械力
エネルギー収支バランスの悪化した我国の農業
農業は本来、太陽光以外のエネルギー投入は
僅かで良く、投入エネルギー以上のエネルギー
生産が期待できた
・限りある資源を大量に消費し、大量の廃棄物
を生むようになった
・我国の食料生産は廃棄物や廃熱問題を生じる
構造的欠陥を持つ
出典:水稲栽培に要する投入エネルギーと産出エネルギーの25年間の推移(「エネルギー工学総論」オーム社を改変)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
農村の問題2(環境)
 食品原料生産段階 ━ 農産物━栽培過程━ 農業機械の原動機用燃焼排ガス
━暖房・換気用燃料または電力に関するもの
━肥料製造・輸送に関するもの
━農薬製造・輸送及び残留農薬に関するもの
━収穫過程━洗浄汚水
━廃棄物
━冷蔵用動力に関するもの
━水産物━ 捕獲過程━ 漁船原動機用燃焼排ガス
━冷凍用動力に関するもの
━ 養殖過程━養殖漁場の飼料残渣、魚類の排泄物
━畜産物━飼育過程━飼育・輸送に要する動力に関するもの
━ 飼料製造・輸送に関するもの
━畜産動物の排泄物または処理に関するもの
━畜産品採取過程━搾乳動力に関するもの
食品原料生産段階における環境負荷
(出典:「食品産業におけるライフサイクルアセスメント(LCA)」食品需給レポートを改変)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
農村の問題3(廃棄物)
農業生産現場で発生する産業廃棄物
生物系廃棄物
・汚泥
・木くず
・動植物性残渣
・動物糞尿
・動物の死体
・廃油
・廃プラスチック類
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
農地への農産廃棄物(堆肥)の投入
 食料を作らずに農地を廃棄物の処理場にしたのでは物質循環にならず、水域の富栄養化や地下水
の汚染を引き起こす原因になる
 食品産業を急速に集約化させ高生産性を追求してきた結果、本来、農林水産業が持っていた自然循
環系が崩壊しつつある
 堆肥中の有機物の無機化(アンモニア態窒素・硝酸態窒素)に要する年数
よく腐熟した稲わら堆肥(窒素量100)を毎年同量施肥
↓1年後
無機態窒素量20/全窒素100 無機化20%
↓2年後
無機態窒素量56/有機態窒素200 無機化28%
↓3年後
無機態窒素量104.8/有機態窒素300 無機化34.9%
↓50年後
無機化90%(多くの有機物は長期運用を行った場合、見かけ上1年間で無機化されるようになる)
 有機物施用量には適正基準がある
– 10アール当たり堆肥1~2トン。
– 不足すると地力低下となり、過剰な場合は倒伏・品質低下・病気の多発を招く。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
農業生産に関わる産業廃棄物の種類別排出量
昭和55年
出典:「廃棄物のバイオコンバージョン」地人書館を改変
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
リデュース・リユース・リサイクル
 廃棄物の環境負荷レベルからみた食品廃棄物処理
小
大
環境負荷
リデュース
リユース
マテリアル・リサイクル
サーマル・リサイクル
発生させない
素材をそのまま活用
素材を原料として別の
ものに加工して活用
素材を燃料として活用
・おからの出
ない豆腐等
・飼料化
・形成化
・有価物抽出
・おから
・堆肥化
・炭化
廃棄
・直接燃焼
・RDF化
・メタン発酵
・バイオエタノール
出典:「食品のゼロエミッション」幸書房を改変
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
II.生物資源を利活用する産業のポテンシャルと限界
© 東京農業大学 宮地竜郎、三菱総合研究所 森卓也
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
用語の定義(あらためて)
動植物に由来する再生可能な有機性資源=バイオマス
「エネルギー」として利活用
サーマル
リサイクル
「製品原料(資源)」として利活用
バイオマス
事業
マテリアル
リサイクル
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマス事業の規模(国内市場)
問題
 バイオマス活用推進基本計画(平成22年12月17日閣議決定)*1
?
バイオマス新産業は2020年に 5,000億
円市場を目指す。
?
炭素量換算で約 2,600万
トンのバイオマスを活用。
(*1)http://www.maff.go.jp/j/biomass/b_kihonho/index.html
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマスの事業規模(国内・エネルギー)
 日本の電力供給の見直しで、更なる増加が期待できる?
– 日本におけるバイオマス発電量は、2035年には約2倍(2008年比)に増加(見込み)
日本におけるバイオマス発電量予測
50
44
40
発電量(TWh)
40
35
30
30
2.6%
20
4.0%
3.8%
3.5%
3.0%
2.5%
22
2.0%
2.0%
1.5%
11
10
2.9%
3.2%
3.5%
47
1.0%
1.3%
0.5%
0
0.0%
1990
2008
2015
2020
2025
2030
2035
年
※グラフ上の%表示の値は、国内総発電量に占めるバイオマス発電の比率 (出典)World Energy Outlook 2010
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマスの事業規模(国内・資源)
 プラスチック市場で化石資源(特に石油)の代替を狙う?
– 日本のバイオプラスチックの市場規模は、2011年には約7倍(2007年比)に増加(見込み)
日本におけるバイオプラスチックの市場規模予測
2007年
化学
合成
系
5,782
2008年
6,212
2009年
4,150
2010年
6,350
2011年
備考
58,850
PLAに加え、バイオPE
(2011年)、バイオポリ
ウレタン(2009年)の利
用開始予定
天然
系
4,715
4,720
5,340
8,600
11,700
デンプン複合系・変性
系・修飾系に加え、バ
イオマス変性系・複合
系が増加見込み
合計
10,497
10,932
9,490
14,950
71,550
その他、バイオ合成系
等も利用開始見込み
単位:トン
(出典)日本バイオマス製品推進協議会/市場調査委員会 調べ(2009年11月時点)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマスの事業規模(世界)
 日本以上に世界ではバイオマス事業を成長市場と予想
– 全世界のバイオマス発電量: 2035年には約5倍(2008年比)に増加(見込み)
– 全世界のバイオプラスチック生産量: 2020年には平均約8.3倍(2008年比)に増加(見込み)
全世界におけるバイオプラスチック生産量予測
全世界におけるバイオマス発電量予測
1,200
1,048
4.3%
783
800
3.4%
565
600
410
400
200
0
308
208
117
2.7%
2.1%
1.8%
1,000メトリックトン/年
発電量(TWh)
1,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
1.5%
0
1.5%
2000
1990
2008
Outlook 2010
2020(出典)World
2025 Energy2030
2035
※グラフ上の%表示の値は、国内総発電量に占めるバイオマス発電の比率
年
2005
2015
企業公表データより
PRO-BIP2009LOW
2010
年
業界予測値
PRO-BIP2009HIGH
2015
2020
PRO-BIP2009BAU
(出典)Product overview and market projection of emerging bio-based plastics
(www.epnoe.eu/.../PROBIP2009%20Final%20June%202009.pdf )
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマスの事業規模(国内事例)
【サーマルリサイクル】
【マテリアルリサイクル】
木質ボイラーによる重油・燃料費の削減
樹皮リサイクルによる「環境緑化ボード」開発
 事業者:五味温泉(北海道下川町)
※町によるバイオマスタウン構想の中の取組
 年間利用者数:約11万人
 概要:温泉の加温・給湯、施設暖房に用いていた
重油ボイラー2台のうち1台を木質ボイラーに変更。
 事業者名:株式会社ジャパン緑化(鳥取県)
 資本金:4,500万円
 従業員数:12人(他事業も含む)
 概要:
地元(鳥取県鳥取市)の木材加工業者・森林組合
が廃材となる針葉樹皮を同社に供給し、廃棄資源
を大幅に減量。同社は、自社の持つ針葉樹皮リサ
イクル技術とフジ化成工業の合板プレス技術、竹
本園の苗生産技術といった経営資源を持ち寄り、
新素材「環境緑化ボード」を開発。
 売上高:平成19年度売上: 130万円
80万Kcal重油ボイラー+63万Kcal重油ボイラー
↓
80万Kcal重油ボイラー+15.5万Kcal木質ボイラー
 燃料費比較
発熱量
(100万Kcal)
重油換算金額
(千円)
経費削減額
(千円)
削減率
(%)
H17
821
6,124
3,506
57.3%
H18
882
7,171
4,118
57.4%
H19
917
8,257
4,996
60.5%
H20
923
8,793
4,893
55.6%
(出典)
バイオマスタウンアドバイザー要請研修テキスト(平成22年3月)
農林水産省. 農商工連携88選
株式会社ジャパン緑化HP(http://www.japanryokka.co.jp/material/)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマスをめぐる政策(国内)
 農林水産省、経済産業省(資源エネルギー庁)、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)が
各種施策を実施。
平成14年1月
平成13年
平成14年12月
平成15年4月
平成17年1月
平成18年3月
平成18年5月
平成19年2月
平成20年3月
平成20年5月
平成21年6月
平成21年7月
平成22年12月
新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法の政令改定
「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発プロジェクト」開始/ NEDO
「バイオマス・ニッポン総合戦略」策定/農林水産省
電気事業者による新エネ利用制度(RPS)/経済産業省(資源エネルギー庁)
「バイオマスエネルギー地域システム化実験事業」開始/ NEDO
「バイオマス・ニッポン総合戦略」見直し/農林水産省
新・国家エネルギー戦略/経済産業省(資源エネルギー庁)
国産バイオ燃料の大幅な生産拡大/農林水産省
バイオ燃料技術革新計画/経済産業省(資源エネルギー庁)
農林漁業バイオ燃料法/農林水産省
バイオマス基本法
エネルギー供給新法
バイオマス活用推進基本計画
(出典)バイオマスタウンアドバイザー要請研修テキスト(平成22年3月)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマスをめぐる政策(海外)
 問題
バイオマス推進に熱心な国はどこでしょうか?
スウェーデン
• EU内最高水準の再生可能エネルギー利用率
• バイオマスエネルギーに対する<CO2、SO2、NOxの税、エネル
ギー税>の控除
• 一般電力法による、再生可能エネルギー利用への投資補助金と
研究開発プログラム支援金の割り当て
• グリーン電力購入の義務化
アメリカ
• バイオエタノールの生産量は世界第1位
• バイオ燃料普及を2022年までに消費量を1.3億キ
ロリットル(現状の約4倍)まで増やす目標設定
ドイツ
• 1992年~1999年でバイオマスによる発電量
は4倍の12億KWhに増加
• バイオマス発電所数は500から1,100に増加
• 再生可能エネルギー法改正により、買取条
件の見直し、ボイラー設備導入助成金支給
ブラジル
• バイオエタノールの生産量は世界第2位
• 未利用地が多いため、環境保護と農地拡大が可能
な地として、今後一層の拡大を政府が見込んでいる
(出典)バイオマスタウンアドバイザー要請研修テキスト(平成22年3月)
バイオマス白書2010年(http://www.npobin.net/hakusho/2010/trend_03.html)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
バイオマス事業の課題
事業者の課題
原料の収集システムが確立されていない
輸入木材の方が国内バイオマスよりも調達コストが安い
バイオマス燃焼後に発生する燃焼灰の処分施設の未整備
バイオマス調達の際に各種法律との調整が必要
(食品リサイクル法、家畜排せつ物法、廃掃法、高圧ガス保安法等)
発電事業参入の手続きが複雑
送電費用が高い
電力会社への売電価格が安い
行政の課題
国の政策としてバイオマスエネルギー利用に対する優遇制度がない
(出典)バイオマスタウンアドバイザー要請研修テキスト(平成22年3月)
バイオマス白書2010年(http://www.npobin.net/hakusho/2010/trend_03.html)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
III.具体事例の分析
© 東京農業大学 宮地竜郎、三菱総合研究所 森卓也
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(機能性材料)の事例 I-1
(サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンの応用利用による商品開発 )
 廃棄していたサケの頭部に含まれる機能性材料「プロテオグリカン」に着目し、高付加価値かつ多分
野に展開可能な製品の開発に成功。廃棄物の減尐にも貢献した。
株式会社角弘
(建設資材・燃料等の販売/青森県)
… 新事業としてプロテオグリカンの製造およびプロテオグ
リカンを利用したリンゴ酢の販売(明治16年創業)
プロテオグリカンとは?
・コラーゲンやヒアルロン酸とならぶ動物の軟骨の主成分(複合糖質の一種)
・経口摂取も可能な素材で、保水機能、EGF(上皮細胞成長因子)機能などをもつ
・かつては非常に高価(1gで3000万円)であったが、弘前大学の高垣教授が新たな量産技術を開発
原料(動物の軟骨)
プロテオグリカン
食品・化粧品など
サケ鼻軟骨
プロテオグリカン(高純度粉末)
PG in リンゴ酢(500ml 1,890円)
(出所:株式会社市丸ファルコスHP)
(出所:弘前大学HP)
(出所:株式会社角弘HP)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(機能性材料)の事例 I-2 (サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンの応用利用による商品開発 )
事業のポイント
・BtoBのビジネスを志向(化粧品用と食品用の原料の供給)し、プロテオグリカンを利用した商品開発を
検討する企業へのPRを目的としてリンゴ酢を製品化
・弘前大学との共同研究がきっかけ(専門的な研究は外部の機関と連携)
・稼働率を優先した設備投資(設備の稼働率が見込めない加工は外部と連携)
地域とのつながりのポイント
・サケの頭から鼻軟骨を摘出する加工と冷凍保存を県内の加工業者に委託
・リンゴ酢の製造は、県内の企業(カネショウ株式会社)に委託
県内加工業者
県内の漁連
の倉庫等
角弘
食品・化粧品
の製造企業
へ出荷
地元産
サケ
鼻軟骨の摘出
冷凍保存
成分の抽出
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(機能性材料)の事例 I-3
(サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンの応用利用による商品開発 )
プロテオグリカン(リンゴ酢)事業のバリューチェーン【参考】
企画・設計・開発
企画・設計・開発
支援活動
主活動
・地元大学(弘前大学)のシーズを活用
-世界発の研究に着目
・リスクを抑えた設備投資
-稼働率を考慮して自社でもつ設備を限定
・自社にない技術をもつ人材を雇用
-大学から研究者をスカウト
原材料・生産
原材料・生産
・原材料の入手
-地元産のサケの頭を再利用
【県内加工メーカー】
・サケの鼻軟骨摘出を委託
【県内漁連】
・冷凍庫が空く時期を活用して冷凍保存
物流
加工・製造
加工・製造
物流 販売・サービス
販売・サービス
【角弘】
・プロテオグリカンの抽出処理
【一丸ファルコス】
・食品向け、化粧品向けの後処理
・研究開発型原料メーカーとの協業により、自
社の投資を抑える。
【カネショウ】
・リンゴ酢の製造
・製品の高付加価値に成功
-通常のリンゴ酢の2倍以上の価格で販売(840円→1890円)
・売上高は堅調に推移
-リンゴ酢(2010年度:約900万円(目標の5倍))
-原料販売(2010年度: 約1000万円(2011年は前年3倍ペース))
・設備投資の回収は2020年を予定
-一過性で終わらないビジネスを志向(事業の持続性を重視)
【角弘】
・ プロテオグリカンを利用した商品開発を検討
する企業へのPRの目的で酢を製品化
・自社のチャネルでのみで販売
- 自社の営業所での販売
- WEBによる通信販売(関東からの注文も)
- 物産イベント等での直売
【今後の課題】
・コストの削減
-プロテオグリカンの製造は誰でも可能であり、さらなるコスト削減が必要
・差別化のための機能性の評価
-類似の機能(保水性など)をもつヒアルロン酸などとの差別化が課題
-大学だけでなく、協業企業とも協力して、様々な機能性について評価研究を実施
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(バイオマス)の事例 II -1
(木質系バイオマスを活用した電力事業と、木質ペレット製造事業)
 発電、木質ペレット製造により、地域内の廃棄物(木屑、樹皮等)の活用に成功。自社の生産性向上
のみならず、地域全体で廃棄物を減らすプロセス構築に貢献した。
銘建工業株式会社
(集成材・ペレットの製造・販売/岡山県)
… 木材加工業が盛んな真庭市で、集成材製造及び木
質系廃棄物の有効活用に取り組む(大正12年創業)
【取り扱い品目】
【事業部門】
構造用小断面集成材
集成材部門
製材部門
構造用中断面集成材
構造用大断面集成材
杉・桧製材
エネルギー部門
集成材部門
製材部門
電力事業(平成9年~)
木質ペレット(平成16年~)
 木質バイオマス発電施設を自社内に有し、工場内の電力供給を確保
し、余剰分は電力会社に売電している。
 さらに木質ペレットの加工、販売を行っている。
– 一般に、採算性確保が困難と言われる木質バイオマスの活用で
あるが、安定して事業を継続している。電力およびペレット燃料
による売上高は2008年に2億円を超え、売上の1%超になった。
エネルギー部門 電力事業
エネルギー部門 木質ペレット
※銘健工業株式会社 ウェブサイトより引用
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(バイオマス)の事例 II -2(木質系バイオマスを活用した電力事業と、木質ペレット製造事業)
事業理念のポイント -「目の前にあるものを使い切る」
– 事業の拡大につれて増えた、木質バイオマスの利用を考えた結果として始まった。
– 工場内では木材の加工に大量の電力を消費するため、木質バイオマスを電力に活用できな
いかと考えた。
事業環境活用のポイント -地域全体の農林水産資源の活用
– プレーナー屑、樹皮等の木質バイオマス資源を、自社工場に加えて地域全体から効率的に回
収し、燃料化に至るしくみが構築されている。
– 地域全体でのバイオマス資源活用の意欲は高く、農業用ハウス、市庁舎の冷暖房など、地域
での熱利用も尐しずつ広がりつつある。
地域の製材事業者等(約30社)
真庭バイオマス集積基地
林地残材(買取)
銘建工業
電力事業
木質ペレット加工
樹皮・端材
(買取)
※林地残材、樹皮・端材は、本来産業廃棄物
として事業者負担で処理されている。
プレーナー屑(自社)
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(バイオマス)の事例 II -3 (木質系バイオマスを活用した電力事業と、木質ペレット製造事業)
バリューチェーンのポイント(エネルギー事業参入のポイント)【参考】
企画・設計・開発
企画・設計・開発
支援活動
主活動
原材料・生産
原材料・生産
物流
・原材料の入手の安定性
- 本業が好調であることにより、定常的に原材
料を得られている。
- 通常は産業廃棄物として逆有償で処理される
樹皮を買い取り、集積基地を活用して地域全
体から効率的に収集している。
加工・製造
加工・製造
物流 販売・サービス
販売・サービス
・原材料量の変化への柔軟な対応
-原材料の余剰分に柔軟に対応し、発電とペ
レット製造の2事業の実施体制を採用してい
る。
・人的ネットワークの活用
- 地元企業の若手経営者が中心となって結成
した「真庭塾」を中心とした人的ネットワークを
活用し、地域のビジョンを明確化した。
・優良事例との比較による客観的分析
- 他国の事例と比較することで、日本での事業
の意義及び障壁を的確に把握している。
・設備投資の実施、設備管理体制の整備
- 思い切った投資により社内に発電や加工の
設備を有し、社内の人材により維持管理して
いる。
・本業を主軸とした現実的なビジョン
- 本業における課題(廃棄物処理、電力補給)へ
の対処が基本姿勢であり、過大なビジョンを
持たない。
・社外の購買力に対する低依存
- 発電した電力については社内利用が前提で
あり、売電等による外部への販売を主目的と
していない。
・販路の開拓
-高品質なペレットを低価格で安定供給できるこ
とをアピールし、地道に営業活動を展開。現
在でも、ニーズの所在の的確な把握を怠らず、
昨年から輸出も始めている。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
6次産業化(バイオマス)の事例 II -4 (木質系バイオマスを活用した電力事業と、木質ペレット製造事業)
事業の現状と今後の課題
事業の現状
 バイオマス事業による売り上げは増加傾向にある。
 バイオマス事業による売上高は2008年に2億円を超え、売り上げの1%を超えるようになった。【再掲】
 木質ペレットの販売についても、年々増加を続けている。
 2005年の販売は2500トン、2010年は11,000トンと大幅に増加している。
今後の課題
 エネルギー効率の向上
 現在発電などに利用しきれない木質バイオマスの燃焼によって大気中に放出している熱を、「目の前にある
ものを使い切る」ことを目指して効果的に利用する仕組みの構築を目指す。
 供給するためのインフラの構築
 生成した熱は、ニーズのあるところまで自社から運ばなければならないため、配管設備等のインフラを構築
する必要がある。
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農林水産省 平成23年度新事業創出人材育成事業
まとめ
1
農山漁村の資源を物質・エネルギーとして利用するという流れ
の背景には、資源・エネルギー問題、環境問題があります。
2
「課題解決型産業」=「今後の成長産業」として着目されていま
すが、ビジネスとしてみると解決すべき課題があります。
3
「物質・エネルギー利用」を単独事業として考えるのではなく、既
存事業との相乗効果を狙うこと、各種政府施策(補助金)の活
用がポイントです。
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農林水産省 新事業創出人材育成事業
教材利用条件
この教材は以下で公開されている、農林水産省「平成22~23年度新事業創出人材育成事業」で開発された成果を
利用しています。
http://www.6ji-biz.jp/kyozai/
「クリエイティブコモンズ・ライセンス 表示 - 非営利 - 継承 2.1」に従う限り、自由に利用・改変することができます。
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.1/jp/
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