「研究者であり、実践者として歩むための哲学―」 塾生登録

「研究者であり、実践者として歩むための哲学―」
塾生登録番号 7700160002
東洋大学文学部教育学科
泉 光太郎
1.はじめ
「哲学塾で様々な先生や学生、社会人との交友を通して自分の教育活動や社会貢献への
価値観を見直し、新たにチャレンジできるきっかけの場にしたい。
」そんな思いを掲げて私
は 7 月 30 日に井上円了哲学塾(哲学塾)の門を叩いた。実を言うと、3 期生の先輩から勧
められたこともあったが、最初のきっかけは入学式のムービーを見て 1 年生の頃から興味
を持ち、入塾意欲はあった。
そして 3 年生になった私は「社会貢献の在り方」に疑問を持ち、2 年生まで活動していた
NPO を離れ、この 1 年はアカデミックな世界で骨を埋めることにし、春学期は様々なアカデ
ミックなイベントやコンクールに参加し、教育学やその他社会科学に関する知見を広げ、
秋学期からは哲学塾に入塾をした。
哲学塾を通して行われた講義、ワークショップ、フィールドワークはどれも自分にとっ
ては今までの授業とは違う濃い学びになり、自分が掲げるテーマという木に実が一つずつ
増えていくような感じで、新しい私に出会い、そして自分に自信が持てたと考えている。
本レポートは哲学塾での学びを個人で振り返ると共に、そこでの学びを自分の中で内省
したものを述べるとする。そして、最後に今後の私の活動について述べてみようと思う。
2.私が影響を受けた授業
(1)第 1 回:井上円了先生の生き方の基軸となるものは何か、自分の生き方の基軸とな
るものはあるか、今はないとしても、今後どのようなものが基軸となりうるか。
第一回は竹村学長による「井上円了の生涯」を塾生と共に読み、円了の哲学思想・教育
思想に触れることをした。哲学を日本の大衆に広めるとともに日本を欧米列強国から自立
した日本をつくるために円了は哲学館大学で一般民衆への教育をノンフォーマルに行って
いたことを学んだ。円了は日本の独立という目的対して、
「哲学教育」という手段を用いた
ことで、近代日本の教育においてイノベーションを起こしたと私は考えている。私は円了
が目指した社会とは日本人一人一人があらゆる物事・問題について深く考え、行動できる
ことであり、教育を通した民主主義の実現ではないかと私は考える。
後半のディスカッションでは初対面の人と「自分たちは何のためにこの命を使い切るの
か」を議論し、お互いの生き方の基軸を考えることができた。私が基軸になったことにつ
いては「3.哲学塾を通して哲学したこと、変わったこと、基軸になったこと」で述べて
いきたいと思う。
(2)第 2 回:国際化ないしはグローバル化という問題と自分はこれまでどのように関係
してきたか、国際化・グローバル化の中で自己を確立するためには何が必要か。
第 2 回では山口先生による円了の世界旅行について講義を受け、円了の「西洋への意欲」、
「東洋及び日本文化の継承」、「国際化への対応」の重要性に触れることで、円了の教育理
念についてより深く考えることできた。そして現在、スーパーグローバル創成大学として
様々な新しい取り組みをしている東洋大学のグローバル教育について考えることができた。
グローバル化が進むこの世界では物事に対する価値観が多様化しているため、教育にお
いては一つのものを平面的にみることではなく、立体的かつ多面的に見ていくことが必要
になり、パズルのように定められたところにしか当てはまらない正解を探すのではなく、
ブロックや粘土のように様々な色・形を組み合わせていく思考つまり、クリエイティビテ
ィが必要であると私は考えた。円了も哲学館の発展のために日本で学んだ哲学や東洋思想
だけではなく、世界旅行を通して東洋思想、宗教、大学経営、教育などの比較分析をし、
常に広い視野を持って取り組んでいた。
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円了はグローバルな視野を持つことで、ローカルな世界観の良さに気付くことで、世界
でただ一つの日本主義の大学を構築することができたのだろう。
私もグローバルとローカルな両方の視野を持って、行動していきたいと思っている。
(3)第 6 回:
「迷い」ということをこれまでどのようにとらえてきたか、今後、「迷い」
というものにどのように向き合っていくか。
ミラー和空先生の「迷悟」の授業ではビジネスや人間関係を例にモノの表現、発現をし
ていくことは「迷い」と「悟り」が欠かせないことを学んだ。
私は哲学塾で「本当の社会貢献の在り方」に疑問を持っていた。自分が今までしていた
社会貢献の在り方に迷っている自分に対してミラー先生はその「迷い」こそに悟りがあり、
自分の目的があり、それをし続けることが自分の「社会貢献観」を磨くことができると言
われ、今の自分を素直に受け入れ、自らをより磨くためにも迷悟し続けたいと思えるよう
になった。
(4)第 8 回:これまで日本とアジア諸国との文化的結びつきについてどう考えてきたか、
日本とアジア諸国との相互理解を促進するためには、どのような交流の在り方が望ましい
か。
箕面先生によるスタディツアーを通した日本とアジアとの異文化交流と新たなに学びに
ついて考えることができた。重要なのは誰かと連帯していくにはまずは現場に入り、現状
を知り、そこのコミュニティで暮らすことで、新たな学びを創出し、つながりをつくって
いくことで、新たな学びを創出することに共感した。
普段いるコミュニティであるコンフォートゾーンからラーニングゾーンに行くにはまず
は違った環境であるところに入り込むフィールドワークが大切だと感じ、私は良質な学び
をしていくにはまずは現場から知ることを知ったので、自ら何かを学びいくときは、まず
は現場から入ってみようと考えることができた。また、他の人の学びを創出させるために
もスタディツアーやフィールドワークは重要なリソースだと思うので、活用していきたい。
(5)第 12 回:
「国際協力」についてこれまでどのようなイメージを持っていたか、真の
意味での「国際協力」とはどういうものか。
北脇先生による「国際協力のおもしろさ」の授業では青年海外協力隊の活動を通して国
際協力活動について触れるとともに協力隊の活動をイメージしたワークショップをして、
将来、協力隊で活動したい自分にとっては充実した授業になった。
これから国際経験していく私だが、国際協力へのイメージは先進国で成功した事例をそ
のまま開発途上国に導入しやすくするという「押し付ける」感じのイメージが少しあった
が、真の国際協力とはまずは現地の人たちと仲良くなり、困っていることや、そこの土地
の文化や伝統を知ったうえで、彼らのニーズを聞き出し、彼らとともに新たなモノ、サー
ビスを創出していくことであることに気付くことができたので、今後協力隊での選考で活
かしていきたい。
3.哲学塾を通して哲学したこと、変わったこと、基軸になったこと、今後について
私は哲学塾を通して今後の自分の生き方について深く考えることができた。そして行き
ついた答えは「走りながら考えること」の重要性である。よく「考える」と同じような表
現で「悩む」という言葉がある。私がなぜ「考える」方が大事にしているかというと、
「悩
む」とは自分が持っている問題の構造を複雑化しているものである。一方は「考える」と
は物事をシンプルに捉えるために知恵の輪のように凝り固まった問題を紐解いていくよう
にする行為だと考えている。
私は哲学塾で様々な先生や塾生と話し、自分のテーマだった「社会貢献の本質」につい
て多面的に考えられるようになった。最初は自分の経験談をもとにしか話せなかったのが、
枯れ木に少しずつ葉が出てくるように様々な価値観やアイデアから物事を複眼的に考えら
れるようになったと思っている。
そんな私は将来、教育社会学の研究者として活躍していきたいと思っていたが、哲学塾
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を通して教育活動などを通して自分の五感で感じて日本の教育を改良していく実践者とし
ても生きていきたいと考えるようになった。それには上記にも書いた「走りながら考える」、
あるいは、第 14 回の福川先生の「考動力」をもって今後も学業及び活動に自分の命を燃や
していきたいと考えている。
私は 1 月 21 日から内閣府の「世界青年の船」に乗って海外青年と共に 1 か月間様々なプ
ロジェクトをしていく予定である。まずは洋上でもこの哲学塾で身につけた「考動力」を
もって哲学し、活動していきたいと思っている。そして日本の夜明けをこの目でしっかり
と見たいを思う。
以上、
*参考文献
・竹村牧男『東洋大学史ブックレット1 井上円了の生涯』
(東洋大学、2014 年)
・竹村牧男『東洋大学史ブックレット2 井上円了の哲学・思想』(東洋大学、2014 年)
・竹村牧男『東洋大学史ブックレット3 井上円了の教育理念』
(東洋大学、2014 年)
・三浦節夫『東洋大学史ブックレット4 人間・井上円了―エピソードから浮かびあがる
創立者の素顔』
(東洋大学、2014 年)
・柴田隆行『東洋大学史ブックレット5 著作を通して見る井上円了の学問』(東洋大学、
2014 年)
・三浦節夫『東洋大学史ブックレット6 井上円了の妖怪学』
(東洋大学、2014 年)
・白川部達夫『東洋大学史ブックレット7 井上円了の全国巡行―旅する創設者 国内編』
(東洋大学、2014 年)
・渡辺章悟『東洋大学史ブックレット8 井上円了の全国巡行―旅する創設者 海外編』
(東
洋大学、2014 年)
・東海林克彦『東洋大学史ブックレット9 哲学のテーマパークとしての哲学堂公園―井
上円了の哲学の具現化―』
(東洋大学、2014 年)
・内田祥士『東洋大学史ブックレット10 建築史から見た東洋大学の変遷』(東洋大学、
2014 年)
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