「哲学塾最終レポート」 塾生登録番号 7700160010 東洋大学経営学部経営学科 萩原 裕也 私は何をしに哲学塾に入ったかと言うと「絶対に正しいこと」を探しにきたのである。 哲学塾のパンフレットを見つけた時、私は如何に平和を達成するかというテーマをもって 生きていた。そこで私が思い至ったのは、いつもどこでも誰もがどんな状況でも共感でき るような絶対に正しいことが存在し、周知されたら良いのではないかということだ。なぜ なら、その「絶対」に対して各々の行動を比較し、反省し、改善し、生きることで平和を 築けると考えたからだ。その絶対的な正しさを、哲学塾を通して見つけることが出来るの ではないかと期待して入塾した。 そんな中で第一回目、第二回目、第三回目の授業を受けた。井上円了が世界中を一人で 旅したことや迷信と向き合っていったこと、またフィールドワークでその世界観に触れた とき、衝撃を受けた。その衝撃とは内向性と周りからの厚い信頼を同時に持っていたこと である。内向性とは一人で旅するところや盛んな自己対話、小さな建物に現れている。そ の一方で教え子や大学を運営する人たちからの信頼も厚かった様に感じた。自分なりに分 析してみると、円了先生には研究者のような知識と熱量そして高い志があったように思え た。それが、ついていきたい尊敬できるリーダーであったように感じた。それに加えて、 世界を巡り書かれた本の中で垣間見られる鋭い観察眼と直線的な表現で世界を見ていた。 更に、国というものを意識したものの見方で、これから日本を作っていくという気概が感 じられるものが多くあった。二元論というよりかは、実益を兼ね備えるような現実的なも のの捉え方も好感が持てた。尊敬される人であろうとすることは、自分の探している答え に近いと感じた。これは第一候補になった。 第四回目と第五回目は伝えるということに着目して授業が行われた。伝えると言うのは 難しいもので、伝えたつもりや分かったつもりになりがちで誤解がよくおこる。そこで話 の構成や論理性、感情を読み取ることなどを学んだ。教育やコミュニケーションといった 目には見えにくいものも、学問的に測ることが出来ることに驚き、新しい領域を知って興 味深く思った。また、人と中身のある会話をすることの難しさを改めて認識した。これと 先ほど挙がった尊敬される人を絡めて考えてみると、尊敬されるということは理解されて いることだともいえる。自分のやりたいことや志に賛同を得ていなければ、協力してもら うことも尊敬されることも無い。尊敬されるには尊敬されるような信念などを持ち、それ を伝えられ共感を得られることだと痛感した。思えば尊敬される人物というのは、身近に も世界にも歴史上にもたくさん居るのであって、自分がその人物に出会うか出会わないか の違いである。幸い自分には尊敬できる友人や先輩や後輩がたくさん居ているので、なぜ 尊敬しているのかを思案すると、その人たちが今まで積み上げてきた結果を尊敬している ということがわかった。人としてその信念を尊敬するというのと、日常の尊敬は違うこと を理解した。 第六回目は迷悟という題で、アメリカ人禅僧のミラー和空さんからお話いただいた。仏 教の天台宗をかじったこともあったので、それを思い出しながら授業を受けた。この授業 の結論は、迷いを楽しみなさいということだったと受け止めている。自分は、迷ってもす ぐに答えを出してしまうというか、とりあえず答えを出して修正したり、答えを正解にし ていくように努力していったりする人だ。しかし、ああでもない、こうでもないと考えあ ぐねることも好きで、迷うことに楽しみを見出すには共感をした。今もこうして数々の授 業を振り返りながら、うねうねと私のたどった道を見るのもまた楽しい。答えを探してこ の塾には行ったものの、日々いろんなものに出会い、答えを二転三転させながらいること、 問いを持ち答えを求めようとすること自体がより良い学びをさせてくれるということは、 確かな事実だった。 27 第八回目から第十四回目は世界を知るという事で、グローバル化を日本が実現していく 上で、大切なお話を聞かせていただいた。アジアを知ること、世界を知ることでまた自己 を客観的に比較して知ることが出来た。中でもコミュニケーションはツールであってその 先の文化や価値観に触れるべきだと言う主張がいくつもの授業で言われていて、理解する ことの価値と難しさを考えさせられた。世界中の人を尊敬できる人にするには、そういっ た文化面や性格の違いなどを分かっていかなくてはならないと感じた。世界共通で尊敬さ れうる人とはどんな人であろうか。信念や偉業というのは様々あって明確でない。そこで 自分が最終的に辿り着いたのは、人を幸せにすることができる人間というものだった。 改めて入塾の理由に立ち返ってみると、世界共通の正しさを軸に平和を達成すると言う 壮大な目標であった。第一候補に挙がった尊敬される人を少しづつ、少しづつ分解して理 解して、最終的には人を幸せにすることが世界共通の正しさの度合であるという結論に至 った。 この結論が今後どのような人生に関連してくるのかを考えると、これが自分の人生のテ ーマとして、いつも自分の行動を照らし合わせうる自分の理念になったので、自分の考え 方・行動は共に変わってくると思われる。自分の中には、もともともう一つの基軸が存在 した。それは、自分の背負っているものに対して恥じないかということである。それと併 せて使っていくことで、過去の人にも未来の人にも誇れる自分になっていきたい。 以上、 28
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