最 優 秀 賞 私の秘密 (中央大会奨励賞) 私は、他のみんなと少し違います。 学校法人山口学院埼玉平成中学校 一年 水 落 千 尋 小学生の時から、字を読んだり、書いたりすることが苦手です。思っていることや考えを話したり、 言葉や文章で表現することが上手くできません。 自分は仲よくしたくても友達にいやな思いをさせてしまうこともあります。自分は、それに気が付か なくて、仲が悪くなったこともありました。 小学一年生の時、ノートや連絡帳が早く書くことができなくて先生に注意されたこともありました。 音読すると、何度やっても文字や行を読み飛ばしたり、読み間違いが多いので、お母さんが心配になり、 専門の先生に相談をしました。それで、私は、眼からの情報と連動して手を動かす能力、 「眼と手の協応」 と「音韻意識」が弱いことがわかりました。 私はそれを聞いても、 「何、それ。 」と思いました。でもお母さんは、学校や友達に説明し続けてくれ ました。友達はお母さんの話を聞いて私の特性を知っても、今までと同じように友達のままでいてくれ ました。 けれど、少し違ったのは、私が板書が終わらない時には、文章を読み上げてくれたり、ノートを見せ てくれたり、書いてくれたりしてくれました。 私は手伝ってくれたみんなに、少しずつ手伝ってもらわなくてもいいように、そして、みんなに追い ついて同じようにしたいと思いました。毎日、お母さんといっしょに、何時間もかけて宿題の漢字練習 や音読、計算ドリルをしました。私がみんなと同じくできないことは、やり方をかえても、時間がかかっ ても、私がわかりやすいやり方でやれればいいと言って、私ができるやり方を考えてくれました。 「視力が悪い人が、メガネを使うと見えるようになるのと同じだよ。やり方はひとつじゃないよ。 」 と話してくれました。私は、自分も自分のやり方を見つけてやればできるんだ。可能性がゼロではない ことがわかりました。ゼロでなければ努力して、できるようになりたいと思いました。 自分のことだけならそれでいいのですが、学校や友達に自分の特性を理解してもらう必要があります。 そして、時には助けてもらわなければいけないこともあるのです。 私は、自分で話すことにしました。理解してくれる人が多くいました。理解してくれた人たちと、い ろいろ話をすることができて、わからないことは教えてもらい、私ができることはできない人に教えたり、 手伝うようにして、友達との仲が深まりました。 私の他にも、みんなと同じようにできない人がたくさんいると聞いています。みんながみんなと同じ ようにやろうと思っても、できるとは限りません。みんな、ひとりひとり違って、苦手なことがあります。 だいたいの人ができるから、みんなができて当たり前という考えを捨てて、一から考え直してみませんか。 一から考え直すとは何か?それは、その人その人の、得意なことも苦手なことも全部理解する必要だ と思います。その人の苦手なことは、どんな助けが必要か聞き、補えばいい。それが、お母さんの言っ ていた「メガネ」なんだと思います。やってあげるのではなく、手段です。みんなが自分のできること で補い合うことが当たり前になれば、得意なことを伸ばして、道を広げることができると思います。 金子みすゞさんの詩に、 「私と小鳥と鈴と」があります。私はその詩の「みんなちがってみんないい」 のところが大好きです。みんな得意なこと苦手なこと、全部違っていてもいいんだと教えてくれている ようだからです。 人を思う、または人に頼りにされたいと思うのは、何でもできる人ばかりではありません。私や、私 のようにみんなと同じようにできないことがある人たちも、同じように思うのです。たくさんのことは できないけれど、必要とされる人になりたいです。 私は、苦手なことを言えないで、やりたくてもやれないままで、あきらめてしまう人がいなくなれば いいと思います。 「私は〇〇ができないので〇〇が必要です。 」 と言える。何かできなくて困っている人には、 「あなたは、何が必要ですか。 」 と声がかけられるような世の中になってほしいと思っています。 あなたはどんな世の中にしたいですか?
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